患者さん向け 小児胃がんの治療

ご利用について

このPDQがん情報要約では、小児胃がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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小児胃がん

小児胃がんは、胃の内側を覆う膜の細胞で発生する非常にまれながんです。胃は腹部の左上に位置し、食物を消化する働きがある臓器です。胃は消化管の一部です。消化管は、口から肛門にいたるまで、筋肉でできた中空の臓器が連なって形成されている、長く曲がりくねった一本の管です。消化管は食べ物に含まれる栄養素を処理して、廃棄物を体外に排出する役割を担います:

消化管の解剖図:図は、口腔、咽頭(喉)、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門を示す。

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消化管の解剖図。消化管は、食物や液体が飲み込まれ、消化・吸収され、体外に便として排出されるまでに通過する臓器で構成されます。これらの組織には、口腔、咽頭(喉)、食道、胃、小腸、大腸、直腸、肛門が含まれます。

小児胃がんの原因とリスク因子

小児胃がんは、胃の細胞の挙動が変化することで発生し、特に細胞が成長して新しい細胞に分裂する仕方が変わると、大きな原因になります。多くの場合、細胞の変化を引き起こした正確な原因は不明です。がんの発生の詳細については、がんとは何か(英語)をご覧ください。

リスク因子とは、疾患が発生する可能性を増大させるあらゆる要因のことです。リスク因子を持つ小児が必ず胃がんになるわけではありませんし、既知のリスク因子を持たない小児が胃がんになることもあります。

小児胃がんのリスク因子には以下のようなものがあります:

お子さんの胃がんリスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。

胃がんの小児を対象とした遺伝カウンセリング

胃がんになった小児が、胃がんの発生リスクを高める遺伝性疾患を抱えているかどうかは、家族歴からはわかりません。遺伝子検査を受けると、なぜお子さんがまれながんになったのか、あるいはなぜ胃がんのような、通常は大人がなるがんになったのかの理由がわかることがあります。遺伝カウンセラーやその他の特別な訓練を受けた専門家は、小児の診断や家族歴について保護者と話し合い、以下の点について説明することができます: 

遺伝カウンセラーは遺伝子検査の結果について家族と話し合う方法を助言するなどして、保護者が検査結果に対処するための支援を行います。

小児胃がんの症状

多くの小児では、胃がんが拡がるまで症状は現れません。担当医とともに、小児に以下の症状があるかどうかを確認することが重要です: 

これらの症状は、小児胃がん以外の病態により引き起こされることもあります。実態を把握する唯一の方法は、担当医の見解を聞くことです。担当医は、診断に向けた第一歩として、小児の症状がいつ始まったか、どのくらいの頻度で起きているかという質問をするでしょう。

小児胃がんの診断

小児に胃がんを示唆する症状がみられる場合、医師はその原因ががんなのか、それとも他の状態なのかを確認する必要があると考えます。それを調べるために、医師は保護者に小児の病歴や家族歴をたずね、身体診察を行います。その結果によっては、医師が小児に胃がんがあるかどうかを調べる検査を勧めることがあります。

胃がんの診断には、以下の検査と手技が使用されます。これらの検査の結果は、保護者と担当医が治療の計画を立てる際にも役立ちます。

CTスキャン(CATスキャン)

CTスキャンは、コンピュータに接続されたX線装置を使用して、体内の領域を様々な角度から撮影し、精細な連続画像を作成します。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに造影剤を飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影法(CT)やコンピュータ体軸断層撮影法(CAT)とも呼ばれます。

詳細については、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンとがん(英語)をご覧ください。 

コンピュータ断層撮影(CTスキャン):図のように小児が台の上に横たわり、この台がCT装置内を水平に移動するうちに、体内の精細なX線画像が連続で撮影される。

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コンピュータ断層撮影(CTスキャン)。小児の患者さんが台の上に横たわり、この台がCTスキャナ内を水平に移動するうちに、体内の精細なX線写真が連続で撮影されます。

上部内視鏡検査と生検

上部内視鏡検査は、食道、胃、十二指腸(小腸の最初の部分)の内壁を観察して、異常な部分がないかを調べる検査法です。内視鏡を口から挿入し、喉を経て、食道に到達させます。内視鏡とは、観察用のライトとレンズを備えた細いチューブ状の器具のことです。リンパ節などの組織のサンプルを採取するための器具が付いているものもあり、それで切除された組織は、顕微鏡での観察によってがんの徴候がないか調べられます(生検)。

組織のサンプルは、バイオマーカー検査に使用されることがあります。

生検時やその後にどのようなことが起きるかを、小児の担当医に尋ねてみてください。

生検で採取された細胞や組織に関する病理医の報告書にどのような情報が記載されているかを理解するには、病理報告(英語)をご覧ください。

食道造影

食道造影は、食道と胃のX線画像を連続で撮影する検査法です。まずバリウム(銀白色の金属化合物)を溶かした液体を患者さんに飲み込んでもらいます。この液体が食道壁と胃壁を覆ったところでX線撮影を行います。この検査法は上部消化管撮影とも呼ばれます。

セカンドオピニオンを受けるには

小児の胃がんの診断を確定し治療計画を立てるにあたって、保護者はセカンドオピニオンを求めることができます。セカンドオピニオンを求めるときは、最初の担当医に重要な医学的検査の結果と報告書を出してもらい、それを別の医師に見せる必要があります。2番目の医師は、病理報告、スライド、検査画像を確認して、推奨を行います。セカンドオピニオンを行う医師は、最初の医師に同意することもあれば、アプローチの修正や別のアプローチの提案をしてくれたり、お子さんのがんについてより多くの情報を提供してくれることがあります。

医師を選んでセカンドオピニオンを受けることについては、医療サービスを探す(英語)をご覧ください。セカンドオピニオンを提供できる医師や病院の情報については、NCIのCancer Information Serviceまで、チャット、電子メール、電話(英語とスペイン語に対応)でお問い合わせください。面会時に聞いておきたい質問内容については、がんについて主治医に尋ねる質問(英語)をご覧ください。

小児胃がんの予後因子

小児が胃がんの診断を受けた場合に、保護者はがんの深刻度や生存の確率について疑問を抱くことがあるでしょう。それ以降、がんがどうなっていくかの見通しは、予後と呼ばれます。予後は、診断時にがんが体の他の部位に転移しているかどうかや、がんが治療にどの程度反応するかに応じて変わることがあります。小児のがん治療チームは、小児の予後について、最も的確に保護者と話すことができる存在です。

小児胃がんの病期

がんの病期は、腫瘍の大きさ、転移の有無、最初に発生した部位からどれほど離れて転移しているかといった、体内におけるがんの程度を表します。小児胃がんに適用される病期分類システムはありませんが、がんを診断するために行われる検査や手技が、治療計画の作成にも利用されます。

小児胃がんの治療の種類

胃がんの小児と青年には様々な治療法が存在します。保護者は小児のがん治療チームと協力して、治療法を決定します。小児の全体的な健康状態や、がんが新たに診断されたものかそれとも再発したものかなど、数多くの要因が検討されます。

小児がんの治療を専門とする小児腫瘍医が治療を監督します。小児腫瘍医は、小児がんの治療に精通し、特定の医療分野を専門とする他の小児医療専門家と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門家が挙げられます:

小児の治療計画には、がんについての情報、治療の目標、治療選択肢、起こりうる副作用などが含まれます。治療に先立って、保護者が小児のがん治療チームと今後の見通しを話し合うための資料になります。実際の進め方については、NCIのがんの小児:ご両親のための手引き(英語)というダウンロード可能な小冊子をご覧ください。

手術

腫瘍を切除する手術は胃がんの主な治療法です。

放射線療法

放射線療法では、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図ります。胃がんの治療では、外照射療法が用いられることがあります。この放射線療法では、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射します。放射線療法は単独で施行されることもあれば、化学療法などの他の治療法と併用されることもあります。 

詳しい情報については、がんの外照射療法(英語)および放射線療法の副作用(英語)をご覧ください。

化学療法

化学療法(ケモと呼ばれることもある)は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法は単独で施行されることもあれば、放射線療法などの他の治療法と併用されることもあります。

胃がんの治療では、化学療法薬が静脈に注入されます。このように投与された薬剤は、血流に入って、全身のがん細胞に届けられます。小児胃がんの治療には、以下のような化学療法薬が用いられます:

がんの小児はほとんどが、臨床試験に参加して治療を受けるか、臨床試験の治療と類似した化学療法レジメンによる治療を受けます。これらの薬剤は併用されることがあります。ここに挙がっていない化学療法薬が使用されることもあります。

化学療法の効果、投与方法、よく発生する副作用などについては、化学療法によるがん治療(英語)をご覧ください。

臨床試験

治療法の臨床試験とは、がんの患者さんを対象に、既存の治療法を改良したり、新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討すべきです。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

詳しい情報については、患者さんと介護者向けの臨床試験の情報(英語)をご覧ください。

標的療法

標的療法では、薬物などの物質を使用して、がん細胞の増殖と転移に関連する酵素、蛋白、またはその他の分子の働きを阻害します。標的療法は再発した(再び現れた)小児胃がんの治療法として臨床試験で研究されています。

詳しい情報については、標的療法によるがん治療(英語)をご覧ください。

新たに診断された小児胃がんの治療

新たに診断された小児胃がんの治療法には、以下のようなものがあります: 

再発小児胃がんの治療

再発小児胃がんの治療法には、以下のようなものがあります: 

臨床試験の詳しい情報については、治療の種類のセクションをご覧ください。

治療の副作用

がんの治療中に発生する副作用の詳しい情報については、がん治療の副作用(英語)をご覧ください。

がんの治療の副作用のうち、治療後に始まり、何ヵ月または何年も続くものは、晩期合併症(晩期障害)と呼ばれます。がん治療の晩期合併症(晩期障害)には以下のようなものがあります:

晩期合併症(晩期障害)には治療や制御することが可能なものもあります。治療によってお子さんに生じうる晩期合併症(晩期障害)について担当の医師とよく相談することが重要です。

詳しい情報については、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)をご覧ください。

フォローアップ検査

がんの診断のために実施される検査は、治療の効果を確認するために繰り返し行われることがあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、お子さんの状態の変化やがんの再発の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。 

がんへの対処法

子供ががんになったときは、家族全員にサポートが必要になります。がんになった子にも兄弟姉妹にも、保護者が正直に落ち着いて話をすることで、信頼が生まれます。この大変な時期を過ごす間、保護者が自身の健康に配慮することも重要です。お子さんの治療チームとの連絡を欠かさず、家族やコミュニティの人々に支援を求めるようにしてください。詳細については、がんの子供がいる家族に対するサポート(英語)という記事、ならびにがんの小児:ご両親のための手引き(英語)という冊子をご覧ください。