ご利用について
このPDQがん情報要約では、小児と青年における治療に関連する支持療法の問題に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 概要
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注:今後本要約に、成長と発達および学校と課題に関する情報を追加します。
支持療法の目的は、若年のがん患者さんとその家族の生活の質を向上させることです。
がんにかかっている小児のほとんどは、治癒可能です。患者さんには個人差があり、がんの種類や年齢などの要因が治療の有効性に影響します。若年の患者さんに対するがん治療では、治療中および治療後に望ましくない副作用や他の問題が生じることがあります。がんの症状および治療による副作用を早期に対処することで、患者さんはより快適になり、しっかりとして、治療後の生活に対応できるようになります。支持療法は患者さんの身体的、心理的、社会的、および精神的な生活の質を向上させます。
支持療法は、乳児、小児、青年、および若年成人を含む全年齢のお子さんに対して行われます。
小児がんは成人のがんとは異なります。
小児および若年成人のがんは、後年に発症するがんとは異なります。小児がんは通常、成人のがんのようにはふるまわないので、同じ方法では治療できません:
年齢が異なれば、必要となる治療法および支持療法も異なります。
治療法および支持療法は年齢によって異なるので、子供の成長と発達に合わせて変化していきます。がんによっては、予後(回復の見込み)や晩期合併症(晩期障害)の危険性が、診断時または治療時の子供の年齢によって変わる場合もあります。年齢別の治療法および支持療法に関する詳しい情報は、CureSearch(英語)をご覧ください。
子供にとっての家族や友人の輪は、通常、大人にとってのそれよりも大きいものです。
がんと診断されてからも、その子はまだ学校に行き、友達や家族と時間を共有し、そしてがんになる前から生活の一部となっていた多くの活動を楽しむことでしょう。子供の家族や友達の輪は大きいものです。両親、兄弟姉妹に加えて、多くの人達がその子の毎日の生活に密接にかかわっているでしょう。この輪には、祖父母、叔母、叔父、いとこ、先生、同級生、そして友達が含まれます。子供を取り巻く家族や友達の輪の中にいる全員が、その子のがんの診断や治療、また、起こりうる治療の副作用に影響を受けます。
ケアに関する大多数の決断は、子供の親または後見人によって行われます。
18歳未満の子供には、治療に関して自ら決断する法的権利がありません。彼らの親または後見人が、子供に代わって法的に決断を行うのです。このため、治療に関する決断が難しいことがあります。インフォームドコンセント(治療を決断する前に、可能な治療法およびその危険性と有益性に関する情報を与える過程)について、倫理的な懸念があります。小児治療では、親に情報が提供され、親が治療に関する許可を下します。可能であれば、その子が治療に関する決断に関与し、同意することが最善です。
- 心理的な適応
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がんにかかっている大多数の子供達は、うまく適応します。
がん治療は子供およびその家族にとって非常にストレスを感じます。しかし、研究によって、がん治療を受けた大多数の子供達、およびがんの長期生存者の子供達には、深刻な心理的な問題がほとんどないことが示されています。
通常、治療開始からの数日間というのは入院していることが多い時期ですが、その頃がその子や家族にとって最もストレスが高くなります。家から離れ新しい治療を受けることに、子供は不安を感じることがあります。この不安は普通、時間と共に薄れていきます。研究では、自尊心、希望、うつ病、不安、または孤独感において、一般にがんの治療を受けている子供達と他の子供達との間に違いはないと報告されています。
家族から多くの支援を受けている子供では、適応に関する問題が起きにくい傾向があります。
がんの種類と用いる治療法が適応に影響することがあります。
社会面、感情面、または行動面の問題が起きる危険性が増す要因には、以下が含まれます:
うつ病と自殺
少数ですが、子供がうつ病や自殺につながる問題を抱えることがあります。
複数の研究で、ある種の小児がん生存者において、がんおよびその治療に関連する身体的・感情的苦痛がメンタルヘルス面の問題を引き起こす可能性があることが示されています。これらの問題には、うつ病があり、この病気は自殺につながる可能性があります。うつ病の徴候には以下が含まれます:
特定の抗うつ薬は、小児や若者、若年成人の自殺思考や自殺行動を引き起こすことがあります。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる薬物は若年者のうつ病を減少させることが分かっています。通常、SSRIにはほとんど副作用がありませんが、SSRIは若年者(小児や若者、若年成人)の自殺思考や自殺行動を引き起こすことがあります。米国食品医薬品局(FDA)は、SSRIを服用している25歳までの若年者にうつ病の悪化の徴候(特に自殺思考や自殺行動)がないか注意深く観察すべきであると警告しています。注意深い観察が特に重要なのは、治療開始後の4~8週間です。患者さんや家族、医療提供者は、うつ病の治療にSSRIを用いることの危険性と有益性について話し合うべきです。
がんの小児、青年、または若年成人におけるSSRIの副作用は研究されていません。
心的外傷後ストレス障害と症状
心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは、重度の身体的損傷または深刻な精神的・感情的な苦痛の後に生じる不安障害のことです。
生命を脅かす病気と診断され、その治療を受けることは、しばしば心的外傷となります。このような心的外傷は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と呼ばれる一連の症状を引き起こすことがあります。PTSDは、死や死の恐怖、重篤な損傷、自分自身や他人への恐怖といったストレスを強く感じる出来事を経験した後に特定の症状を認めること、と定義されています。
戦闘や天災など、極めて強いストレスを感じる状況から助かった人々も、PTSDを発症することがあります。PTSDはがん生存者の方々に対して次のような影響を与えます:
家族に問題がある場合や、家族や友人からの社会的支援が少ない、もしくは全くない場合、また、がんとは関係ないストレスがある場合は、PTSDの発症率が高くなります。
がんにまつわる場所や人との接触を避けることがPTSDの症状の1つであるため、PTSDを発症した生存者の方々は、必要な治療を受けないことがあります。
PTSDと診断された小児がん生存者の方々はうつ病になりやすく、また、学校生活、社会活動への参加、およびキャリア目標の達成など早期成人期によくある局面で困難を伴う傾向があります。
がんにかかっている子供達および10代の方々だけでなく、親や兄弟姉妹も心的外傷後ストレス障害になる危険性があります。
がんにかかっている子供達および10代の方々では、治療中または治療終了後にPTSDの症状が生じることがあります。病気や将来に関して確信がもてないという不安が大きい人に、PTSDの症状は出やすいようです。小児がん生存者の方々の親や兄弟姉妹もまた、PTSDになる危険性が高いと考えられています。
がんの生存者およびその家族は、自らのがん体験が心理的に影響する可能性について、また、PTSD症状の早期治療について情報を入手することが重要です。
がんの経過観察は、がんの治療を行った医師、または主な医療提供者であるかかりつけのお医者さんが行うこともあります。メンタルヘルスに関する定期検査が経過観察の一部になることが重要です。経過観察中にPTSDまたは他のメンタルヘルス面の徴候を示す患者さんは、療法士または他のメンタルヘルス専門家に紹介されることがあります。多くの生存者の方々が、がんから回復中の人々を助ける専門家である療法士の支援を受けています。
- 家族
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子供ががんになると、家族全員が影響を受けます。
子供が生命を脅かす病気であると診断されると、親は非常に大きな苦痛を感じます。時間と共に、苦痛のレベルは軽減するかもしれません。家族一人一人への影響はそれぞれ異なり、また、それに対する反応も異なるでしょう。
家族の苦痛レベルが上がる要因としては以下のものがあります:
例えば、親が子供の治療に対処したり、情報を探したり、また、兄弟姉妹らの世話もしなければならないように、家族全体で日常生活における変化に適用していかなくてはなりません。親の注意はがんにかかった子供に集中します。
がん患者さんの兄弟や姉妹には、自身の不安、孤独感、および恐怖の感情に対処する助けが必要です。がん患者さんへの骨髄(幹細胞)ドナーとなった兄弟姉妹も不安を抱くことがあります。骨髄ドナーではない兄弟姉妹でも、学校に関係する問題が生じることもあります。
小児がんの患者さんの兄弟姉妹では、ストレス関連の症状はよくあることですが、彼らは時に、自らの経験によってより哀れみ深くなったこと、また、がんの経験が家族同士の絆を強めたことを報告しています。
- 終末期ケア
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親は、医師と協力しながら子供の終末期ケアに関する判断を下します。
新しい、より良い治療法によって治癒や寛解の可能性は高まってきましたが、それでも一部の種類の小児がんは良くなりません。子供のがんが良くならないか再発した場合、親は治療を続けるべきかどうか、また、続ける場合はどのような種類の治療が適切であるか分からなくなることがあります。
終末期に子供のケアを行っている親は、家族や子供の医療チームなどから多くの支援を必要とします。医療チームは、各種の治療法によって子供の生活の質(QOL)にどのような影響があるかを親が理解できるように手助けします。親は、がんへの影響が見込まれなくても子供に対する治療を続けるべきか判断を下すべきです。また、終末期ケアに関する判断を子供と共に行うかどうかも決めるべきです。
がん治療担当医からの支援として、親が最も評価しているのは以下の点です:
子供の終末期ケアに役立つサービスを利用できることがあります。
小児のがん医療を専門とする医療センターのなかには、緩和ケアや終末期ケアに役立つサービスを提供しているところがあります。これらの支援サービスには以下のものがあります:
この他、数は少ないものの役立つサービスとして、以下のものがあります:
緩和ケアや終末期ケアの支援サービスが利用できない場合でも、親はがん治療担当医から他の選択肢について提案を受けられることがあります。在宅医療サポートが利用可能であれば、多くの場合、親が自宅で子供の終末期ケアを計画して行うことができます。これにより、以下のような効果が得られることがあります:
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、小児と青年における治療に関連する支持療法の問題に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board.PDQ Pediatric Supportive Care.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: http://www.cancer.gov/types/childhood-cancers/pediatric-care-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389483]
本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。
免責事項
PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。
お問い合わせ
Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。