患者さん向け 胆管がんの治療

ご利用について

このPDQがん情報要約では、胆管がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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胆管がんとは

胆管がんは、胆管に悪性(がん)細胞ができるまれな疾患です。胆管がん(bile duct cancer)は、英語で「cholangiocarcinoma」とも呼ばれます。

肝臓胆嚢小腸は管のネットワークによってつながれています。このネットワークが始まる肝臓の内部では、多数の小さな管から胆汁(肝臓から分泌され消化中の脂肪を分解する液体)が集められます。この複数の小さな管は次第に合流していき、右管と左肝管になってから、肝臓の外部へと出ていきます。この2つの肝管は肝臓の外で合流して、総肝管になります。胆嚢管は胆嚢と総肝管をつないでいます。胆汁は肝臓から肝管、総肝管、胆嚢管を通り、胆嚢に蓄えられます。

食物を消化する際に、胆嚢に貯蔵されていた胆汁が放出され、再び胆嚢管を通って総胆管に流れ、小腸に入ります。

胆管がんの種類

胆管がんには次の2種類があります:

肝外胆管がんの症状と徴候

以下のような徴候や症状が胆管がんが原因で起こることがあります(他の病態が原因で起こることもあります)。以下の問題がみられる場合は担当の医師にご相談ください:

徴候や症状が現れる前に胆管がんかどうかを調べるために決まって行われるスクリーニング検査はありません。胆管がんの診断に用いられる検査についての詳細は、胆管がんの診断(英語)をご覧ください。

胆管がんの原因とリスク因子

疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。胆管がんに関連するいくつかのリスク因子があります。これらのリスク因子を1つ以上もつすべての人が発症するわけではなく、既知のリスク因子がない人でも発症することがあります。リスクが高いと思う人は、そのことについて担当の医師と話し合ってください。

胆管がんのリスク因子には、以下のような病態があります:

がんにかかるリスクを減らすためにできることがあります。がんを予防する方法についての詳細は、がんの予防法の概要をご覧ください。

胆管がんの診断

胆管と周辺領域の画像を作成する検査は、胆管がんの診断に役立ち、がんの拡がりの程度を明らかにします。がん細胞の胆管内や周囲での拡がりや他の部位への転移の有無を調べるプロセスは、病期分類と呼ばれます。

治療計画を立てるためには、胆管がんを手術で切除できるかどうかを把握することが重要です。胆管がんの発見、診断、病期分類に用いられる検査と手技は、多くの場合、同時に行われます。具体的には以下のような検査が行われますが、ここに記載されている検査が常にすべて行われるわけではありません。

以下のような検査法や手技が用いられます:

組織のサンプルを採取し、胆管がんの診断を下すために、様々な手技が用いられます。生検で細胞や組織を採取した後、病理医がそれらを顕微鏡で観察して、がんの徴候がないかどうかを調べます。使用する手技は、患者さんが手術に十分耐えられるかどうかによって異なります。

生検の手技には以下のような種類があります:

胆管がんの予後に影響を与えるもの

胆管がんと診断された場合、予後(回復の見込み)と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:

治療の選択はがんの症状によっても左右されます。胆管がんは通常、周囲に拡がってから発見され、手術で腫瘍を完全に切除できる症例はごく少数に限られます。緩和療法によって症状を緩和し生活の質を向上させることができる可能性があります。

胆管がんの病期

このページでは成人の胆管がんの病期について説明しています。病期は体内におけるがんの程度を表すものです。病期を知ることは、最善の治療を計画する役に立ちます。胆管がんの病期分類はTNM病期分類システムを用いて行われます。TNMやがんの病期分類がどのように行われるかについては、がんの病期分類(英語)をご覧ください。

胆管がんの診断と病期分類に用いられる検査や手技に関する詳細については、胆管がんの診断(英語)をご覧ください。

肝内胆管がん

肝門部胆管がん

遠位胆管がん

胆管がんでは以下のグループに分けて治療計画が立てられます:

切除可能な(限局性の)胆管がん

このがんは、総胆管の下部や肝門部周囲など、手術によって完全に切除できる位置に存在します。

切除不能の胆管がん(転移性または再発がんを含む)

切除不能がんは手術で完全に切除することができません。胆管がんの患者さんの大半は、手術で完全には切除できないがんを患っています。

がんが原発部位(がんが最初にできた場所)から体の他の部位に拡がることを転移といいます。転移性胆管がんは、肝臓や腹内の他の場所、または体の他の部位に拡がっている可能性があります。転移がんの詳細については、転移がん:がんが拡がる場合(英語)をご覧ください。

再発胆管がんとは、治療後に再び現れたがんのことです。このがんは胆管内や肝臓、胆嚢で再発することがあります。また、それより頻度は少ないものの、体内の遠隔部位で再発することもあります。 再発がんの詳細については、再発がん:がんが再び発生する場合(英語)をご覧ください。

治療法の選択肢の詳細については、胆管がんの治療(英語)をご覧ください。

胆管がんの治療

このページでは胆管がんの様々の種類の治療について説明しています。どの治療を受けるかについては、がんが完全に手術で切除できるのか(切除可能)、または手術で切除することができないのか(切除不能)によって決まります。詳細については、切除可能な胆管がんの治療(英語)、または切除不能な胆管がんの治療(英語)をご覧ください。

治療の種類

手術

胆管がんの治療では、以下のような手術法が用いられます:

手術の際に確認できる全てのがんを切除した後に、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させることを目的として、術後に化学療法や放射線療法が実施される場合があります。このようにがんの再発リスクを低減させるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。手術後の化学療法または放射線療法ががんの再発を予防するかどうかは、まだわかっていません。

以下の緩和手術は、閉塞した胆管によって引き起こされる症状を軽減して生活の質を向上させるために行われます:

放射線療法

放射線療法では、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図ります。胆管がんの治療には以下のような方法で放射線療法がおこなわれます:

胆管がんを治療するため、また、症状を軽減し生活の質(QOL)を改善する緩和療法として、外照射療法または内照射療法が用いられます。

放射線療法とその副作用に関する詳しい情報については、放射線療法によるがん治療(英語)および射線療法の副作用(英語)をご覧ください。

化学療法

化学療法では、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止します。胆管がんの治療には主に2種類の化学療法が用いられます。

全身化学療法が切除可能な胆管がんの治療に有効かどうかは、まだわかっていません。

化学療法がどのようにがんに対抗するかや、化学療法を受けると何が起こるか、化学療法の副作用にどのように対処するかの詳細については化学療法によるがん治療(英語)をご覧ください。

肝移植

肝移植では、肝臓全体を切除して、ドナーから提供された健康な肝臓を移植します。肝移植は肝門部胆管がんの患者さんに施行されることがあります。患者さんが肝臓の提供を待たなければならない場合は、必要に応じて他の治療が行われます。

標的療法

標的療法とは、特定のがん細胞を認識し攻撃する性質をもった薬物やその他の物質を用いる治療法です。標的療法では一般に、化学療法や放射線療法に比べて、正常な細胞に及ぼす害が少なくなります。以下の標的療法が、局所進行して手術で切除できない胆管がん、または体の他の部位に転移した胆管がんの患者さんに対する治療法として研究されています:

標的療法がどのようにがんに対抗するかや標的療法を受けると何が起きるか、あるいは標的療法の副作用についての詳細は、 標的療法によるがん治療(英語)をご覧ください。

免疫療法

免疫療法は、患者さんの免疫系を利用して、がんと戦う治療法です。体内で生産された物質や製造ラボで合成された物質を用いることによって、体が本来もっているがんに対する抵抗力を高めたり、誘導したり、回復させたりします。

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫療法の一種です。胆管がんの治療では、以下のような免疫チェックポイント阻害薬が用いられます:

免疫療法がどのようにがんに対抗するかや、免疫療法の副作用の詳細については、がん免疫療法(英語)および 免疫療法の副作用(英語)をご覧ください。

臨床試験

治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

臨床試験の詳細については、患者さんと介護者向けの臨床試験の情報(英語)をご覧ください

切除可能な(限局性の)胆管がんの治療

がんが拡がっておらず、手術が安全に行える場所にある場合は、腫瘍とその周囲の組織の一部を切除します。これによって、がんが再発する可能性を低くします。手術の後に、化学療法または放射線療法、もしくはその両方が行われることがあります。

切除可能な肝内胆管がんの治療法には以下のようなものがあります:

切除可能な肝門部胆管がんの治療法には以下のようなものがあります:

切除可能な遠位胆管がんの治療法には以下のようなものがあります:

切除可能な胆管がんに対する術後補助療法には以下のようなものがあります:

切除不能な胆管がん(再発または転移したがんを含む)の治療

胆管がんの患者さんの大半では、手術でがんを完全に切除できません。がんが遠くまで拡がっている場合や、手術で完全に取り除くことが困難な場所にがんがある場合、手術ができるほど患者さんが健康でない場合などがこれにあたります。

切除不能な胆管がん(転移または再発したがんを含む)の治療には以下のようなものがあります: