患者さん向け 上咽頭がんの治療(成人)(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、成人上咽頭がんの治療法に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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上咽頭がんについての一般的な情報

上咽頭がんは、上咽頭の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

上咽頭とは、鼻の後方に位置する、咽頭(のど)の上部のことをいいます。咽頭は全長約13cm(約5インチ)の中空の管で、鼻の後方から始まって気管食道(咽頭からまで続く管)の上端まで続きます。空気や食べ物が気管や食道に送られる際には、この咽頭の中を通過していきます。鼻の孔は上咽頭に通じています。上咽頭には左右に開口部があり、それぞれ左右の耳につながっています。上咽頭がんは、上咽頭の表面を覆う扁平上皮細胞の層に最も多くみられます。

咽頭の解剖図:図は上咽頭、中咽頭、下咽頭を示す。鼻腔、口腔、舌骨、喉頭、食道、気管も示している。

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咽頭(喉)の解剖図。咽頭は鼻の後方から始まり、頸部を下って気管と食道の上端まで続く中空の管です。咽頭は上咽頭、中咽頭、下咽頭の3つの部分から成ります。

上咽頭がんは頭頸部がんの一種です。

上咽頭がんのリスクに影響を及ぼす要因に、民族的背景とエプスタイン-バーウイルスへの曝露があります。

疾患が発生する危険性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。リスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。上咽頭がんのリスク因子として、以下のものがあります:

上咽頭がんの徴候には、呼吸障害、発話障害、聴力障害などがあります。

こうした徴候症状などは、上咽頭がんや他の病態によって引き起こされます。以下の問題がみられる場合は担当の医師にご相談ください:

上咽頭がんの診断、病期分類には、鼻腔や咽頭、周辺の器官を調べる検査法が用いられます。

上咽頭がんの診断には、鼻腔と咽頭の画像の撮影法が利用されます。他の部位にがん細胞が転移しているかどうかを調べるプロセスは、病期分類と呼ばれます。 治療計画を立てる前に、上咽頭がんを発見、診断し、病期を分類するための検査と手技が行われます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

予後と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:

以下の要因も予後に影響する可能性があります:

上咽頭がんの病期

上咽頭がんの診断がついた後には、がん細胞の上咽頭内での拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。

がん上咽頭内での拡がりや体の他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。上咽頭がん診断に用いた検査の結果が、そのまま病期分類に使用されることもよくあります。(一般的な情報のセクションをご覧ください。)

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、上咽頭がんがに転移した場合、肺にできたがん細胞は、実際は上咽頭がんの細胞です。この疾患は転移性上咽頭がんであり、肺がんではありません。

上咽頭がんでは、以下のような病期が用いられます:

0期

0期では、上咽頭の表面を覆う組織に異常な細胞が認められます。こうした異常細胞は、がん化して周辺の正常組織に拡がっていく可能性があります。0期は上皮内がんとも呼ばれます。

I期

I期では、すでにがんが形成されており、がんについて以下の条件が満たされます:

図は、様々な腫瘍の大きさをセンチメートル(cm)で表した円形と豆(1cm)、ピーナッツ(2cm)、ブドウ(3cm)、クルミ(4cm)、ライム(5cm)、卵(6cm)、桃(7cm)、グレープフルーツ(10cm)とを比較している。10cmと4インチのそれぞれを表す目盛りも示されている。

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腫瘍の大きさはセンチメートル(cm)やインチで表されることがよくあります。次のような身近な食べ物と比較して、腫瘍の大きさをcm単位で表すことができます:豆(1cm)、ピーナッツ(2cm)、ブドウ(3cm)、クルミ(4cm)、ライム(5cmまたは2インチ)、卵(6cm)、桃(7cm)、グレープフルーツ(10cmまたは4インチ)。

II期

II期のがんは、以下のいずれかを満たします:

III期

III期のがんは、以下のいずれかを満たします:

IV期

IV期は、さらにIVA期とIVB期に分けられます。

手術後にがんの病期が変更され、より多くの治療が必要となることがあります。

手術でがんを切除した場合は、病理医顕微鏡でそのがん組織のサンプルを検査します。病理医による検査の結果を踏まえてがんの病期が変更され、手術後にさらに治療が行われることがあります。

上咽頭がんは治療後に再発する(再び現れる)ことがあります。

再発は、上咽頭に生じることもあれば、体の他の部位に発生することもあります。

治療選択肢の概要

上咽頭がんの患者さんには様々な治療法が存在します。

上咽頭がんの患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

標準治療として以下の3種類が用いられています:

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。放射線療法には2種類のものがあります:

放射線療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。上咽頭がんの治療には外照射療法と内照射療法が用いられます。

甲状腺下垂体に対して外照射療法が行われた場合には、甲状腺の機能に変化が生じてくることがあります。そのためこの治療の前後には、甲状腺が正常に機能しているか確認するために、血液検査を行い、血液中の甲状腺ホルモン濃度を調べることがあります。さらに、歯科医師による歯、歯ぐき、口腔の診察を受けて、何か問題がある場合は放射線療法を開始する前に治療しておくことも重要です。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。

放射線療法後に残存しているがん細胞を殺傷するために、化学療法が実施されることがあります。このようにがんの再発リスクを低減させるために放射線療法の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。

詳しい情報については、頭頸部がんに対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。(上咽頭がんは頭頸部がんの一種です。)

手術

手術とは、がんの存在を確かめたり、がんを体内から取り除いたり、体の一部を修復したりするための手技のことをいいます。外科手術とも呼ばれます。上咽頭がんでは、放射線療法に対して反応がみられない場合に手術が行われることがあります。がんがリンパ節に転移している場合には、リンパ節とその他の頸部組織を切除することもあります。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

上咽頭がんの治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療によって引き起こされる副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんの再発(再び現れること)の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

I期の上咽頭がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

I期の上咽頭がんの治療法は、腫瘍と頸部リンパ節に対する放射線療法となるのが通常です。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

II期の上咽頭がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

II期の上咽頭がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

III期の上咽頭がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

III期の上咽頭がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

IV期の上咽頭がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

IV期の上咽頭がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発上咽頭がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

再発上咽頭がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

上咽頭がんについてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している上咽頭がんに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、成人上咽頭がんの治療法に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Nasopharyngeal Cancer Treatment (Adult).Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/head-and-neck/patient/adult/nasopharyngeal-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389409]

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