患者さん向け 喫煙:健康リスクと禁煙方法(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、喫煙予防と禁煙およびタバコ使用の制御に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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予防とは

がん予防とは、がんになる可能性を減らすためにとる対策です。がんを予防することで、集団または人口におけるがんの新規症例の数が減少します。うまくいけば、それによって、がんによる死亡者の数が減ることにもつながります。

新たながんの発生を予防するため、科学者たちはリスク因子防御因子に注目します。がん発生の可能性を高めるものは全てがんのリスク因子と呼ばれ、がん発生の可能性を低減させるものは全てがんの防御因子と呼ばれます。

がんのリスク因子には回避できるものもありますが、回避できないものも数多くあります。例えば、喫煙の習慣と特定の遺伝子をもっていることは、どちらもある種のがんのリスク因子ですが、避けることができるのは喫煙だけです。普段から運動や健康的な食事を心がけることは、いくつかの種類のがんに対する防御因子となります。リスク因子を避けて防御因子を増やすことはリスクの低減につながりますが、それでがんにかからなくなるということではありません。

タバコ使用についての一般的な情報

喫煙は、米国におけるがんの原因の第1位です。

喫煙により、様々な種類のがんのリスクが高まります。具体的には、以下のものがあります:

喫煙者ががんになるリスクは、喫煙したことがない人より2~10倍高い可能性があります。このリスクは、その人がどれだけ多く喫煙したかや、どれだけ長く喫煙したかで決まります。

肺がんは、男女ともにがんによる死亡原因の第1位を占めています。2014年時点での喫煙者は、成人男性が約19%、成人女性が約15%でした。ここ30年間では、喫煙者の総数は減少しており、特に男性では大きく減少しました。1980年代以降、男性の肺がんによる死亡は減少してきています。

2011年から2014年にかけて、ミドルスクールと高校生の間で喫煙が減少しました。すべての民族集団における高校生の男女の喫煙は、90年代初頭の間に著しく増加し、その割合は20%~30%でした。2019までにこの集団における喫煙は6%に減少しました。タバコ製品の購入と使用が合法になる年齢の引き上げは、若者の喫煙やその他のタバコ使用を防止し減少させる方法として研究されています。

喫煙は他にも多くの健康問題を引き起こします。

喫煙はがん以外にも多くの疾患の原因となります。具体的には、以下のものがあります:

その他に、以下のような喫煙に関係すると考えられる健康問題があります:

妊娠中の喫煙は、胎児の成長遅滞や低出生体重などの問題を引き起こす可能性があります。

副流煙に曝されることで、がんやその他の疾患のリスクが高まります。

喫煙はタバコを吸わない人の健康をも害します。タバコ製品の燃焼による煙、あるいは喫煙者が吐き出す煙は、副流煙と呼ばれます。副流煙を吸い込むことは、無意識喫煙または受動喫煙と呼ばれます。

タバコの喫煙者が吸い込んだがん誘発化学物質と同じものを、量は少なくともタバコの副流煙に曝された人も吸い込むことになります。非喫煙者が副流煙に曝されると、肺がんや冠動脈心疾患のリスクが高くなります。お子さんがタバコの煙に曝されると、以下の疾患のリスクが高くなります:

喫煙の健康リスクと禁煙方法

喫煙者の年齢を問わず、禁煙により健康が改善します。

がんや心疾患、疾患など、喫煙によるほとんどの健康問題のリスクが、禁煙によって低減できます。年齢を問わず、禁煙すれば健康を改善できます。禁煙する年齢が若いほど、健康の改善度は高くなります。禁煙した人では、喫煙を続けた人と比べ、10年後の肺がんのリスクが30%~50%低減し、禁煙から5年以内に口腔がんや食道がんが発生するリスクが半減します。

がんになると、喫煙により生じた障害がさらに悪化します。がんになった人は、がんの再発や新たながんのリスクの他に、がん治療による長期的な副作用のリスクも高くなります。禁煙するとともにその他の非健康的な習慣を断つことで、長期的な健康と生活の質(QOL)を高めることができます。

米国の公衆衛生局は、タバコ使用と依存の治療(Treating Tobacco Use and Dependence)と呼ばれるガイドラインを提供しています。医療従事者には、喫煙に起因する健康問題や禁煙の重要性について患者さんと話し合うことが求められています。

これまで、様々な禁煙方法が研究されてきました。禁煙を支援するために、最もよく用いられている方法は、以下のものです:

カウンセリング

たとえ1回の短い面談だけでも、医療専門家によるカウンセリングを受けた人では禁煙を達成できる可能性が高くなります。担当の医師や他の医療専門家は、禁煙を支援するために、以下の対策を取る場合があります:

Lung Health Study(肺の健康に関する研究)では、重度喫煙者が医師のカウンセリングを受け、行動を変える目的で他の喫煙者とのグループセッションに参加し、ニコチンガムを使用した場合は、カウンセリングもグループセッションもニコチンガムも利用しなかった喫煙者に比べて禁煙する割合が高いという結果が得られました。さらに、それらを利用した人は肺がん、その他のがん、心疾患呼吸器疾患のリスクが低いことも明らかになりました。

喫煙習慣のある小児がん生存者は、ピアカウンセリングを利用した禁煙プログラムに参加することで禁煙する可能性が高まる場合があります。これらの禁煙プログラムでは、小児がん生存者は、喫煙習慣があり禁煙を望んでいる別の小児がん生存者に対して支援する形で訓練を受けます。こうしたピアカウンセリングでは、自助プログラムによる場合より多くの人が禁煙できます。小児がん生存者で喫煙習慣があれば、ピアカウンセリングの禁煙プログラムについて担当の医師にご相談ください。

薬物治療

薬物を用いた治療も禁煙を支援するために使用されています。これらの薬には、ニコチン補充製品やニコチンを含まない医薬品があります。何らかの薬物治療を受けた人は、プラセボを投与された人や薬物治療を全く受けなかった人と比べて、6ヵ月後に禁煙できる確率が高くなります。

ニコチン補充製品はニコチンを含んでいます。体内に取り込むニコチンの量を減らすために、ニコチン補充製品の使用を徐々に減らしていきます。ニコチン補充製品の使用は、ニコチンに対する嗜癖を断ち切るのに有用となる可能性があります。ニコチン補充製品を使用することで、憂うつになったり、神経質になったり、あるいは秩序立てて考えることや睡眠に問題が生じたりするニコチン中断の副作用が抑えられます。ニコチン補充製品は、単独でも他の手段との併用でも、禁煙を補助することが示されています。具体的には、以下のものがあります:

特に以下のような人では、ニコチン補充製品の使用により問題が生じることがあります:

他にも、ニコチンを含んでいない薬が禁煙中の人を支援するために使用されています。具体的には、以下のものがあります:

これらの薬により、ニコチンへの強い欲求が抑えられ、ニコチン離脱症状が緩和されます。

ブプロピオンやバレニクリンは重度の精神医学的問題を引き起こす可能性があることを認識しておくことが大切です。具体的には、以下の症状が考えられます:

バレニクリンは重篤な心臓障害を引き起こす可能性があります。

ブプロピオンやバレニクリンの服用を開始する前に、禁煙による重要な健康上のメリットと、これらの薬の使用に伴う問題の小さくても重大なリスクについて、担当の医師とよく話し合ってください。

減煙

喫煙者が完全に喫煙をやめることができなくても、喫煙するタバコの本数を減らす(減煙)ようにすれば、そのほうがまだ有益でしょう。喫煙量が多ければ多いほど、喫煙と関係がある肺がんなどのがんのリスクが高くなります。また、減煙した喫煙者では将来的に禁煙を達成できる可能性がより高くなるということが、研究より明らかになっています。

しかし、減煙には完全に禁煙するほどの効果はありませんし、ニコチンへの強い欲求を満たそうとタバコの煙を深く吸い込んだり、1本のタバコを使い切るまで喫煙したりすると、減煙はかえって有害となります。完全に禁煙しようとは考えていない喫煙者には、ニコチン補充製品が喫煙本数の節減に有用であることが示されていますが、この効果はそれほど長く続かないようです。

以下の資料は、禁煙に役立つ可能性があります:

各種の新しいタバコ製品やニコチン製品が存在します。

ニコチン摂取に用いられる各種のタバコ製品と器具は、米国では新しいものも含め急速に増加しており、なかでも成人および青年による電子タバコの使用が広まっています。

各種の新しいタバコ製品やニコチン製品と器具には、次のようなものがあります:

これらの製品を使用するリスクと有益性を明らかにするには、さらに研究が必要です。

がんを予防する方法を検証するために、がん予防の臨床試験が実施されています。

特定のがんの発生リスクを低下させる方法を検証するために、がん予防臨床試験が実施されています。がん予防の臨床試験の中には、今はがんではないものの、がんのリスクが高い健康な人を対象に実施されるものがあります。その他の予防試験として、すでにがんになったことがあり、同じ種類のがんの再発を予防しようとする人、あるいは新たな種類のがんが発生する可能性を減らそうとする人を対象に実施されるものがあります。さらに、がんのリスク因子があるかどうか判明していない健康な志願者を対象に実施される試験もあります。

一部のがん予防の臨床試験の目的は、何らかの行動によってがんを予防できるかどうかを検証することです。これらの対応策としては、果物や野菜が豊富な食事、運動、禁煙の他、特定の医薬品、ビタミンミネラル栄養補助食品の摂取などがあります。

現在、喫煙者に対する新たな禁煙の支援方法が臨床試験で検証されています。

NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、喫煙予防と禁煙およびタバコ使用の制御に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Screening and Prevention Editorial Board.PDQ Cigarette Smoking.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/about-cancer/causes-prevention/risk/tobacco/quit-smoking-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389305]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。