患者さん向け 下垂体腫瘍の治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、下垂体腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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下垂体腫瘍についての一般的な情報

下垂体腫瘍は、下垂体の組織で異常な細胞が増殖したものです。

下垂体腫瘍は、下垂体の中央部で鼻腔後部のすぐ上にあるエンドウ豆大の器官)に発生します。下垂体は、体の多くの部分が機能する方法に影響を及ぼすホルモンを作っているため、「マスター内分泌」と呼ばれることがあります。また、下垂体には、体内にある他の多くの腺で作られるホルモンを調節する働きもあります。

脳内部の解剖図で、脳室(液体で満たされた空間)、脈絡叢、視床下部、松果体、下垂体、視神経、脳幹、小脳、大脳、髄質、脳橋、脊髄を示す。

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脳内部の解剖図で、松果体、下垂体、視神経、脳室(青色の部分が脳脊髄液)などの脳の各部分を示しています。

下垂体腫瘍は以下のような3つのグループに分類されます:

下垂体腫瘍は機能性の場合と非機能性の場合があります。

下垂体で作られるホルモンは体内にある他の多くの腺を調節します。

下垂体では以下のようなホルモンが作られます:

特定の遺伝性疾患のある人では、下垂体腫瘍の発生リスクが高くなります。

疾患が発生する危険性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。リスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。下垂体腫瘍のリスク因子となる遺伝性疾患として、以下のものがあります:

下垂体腫瘍の徴候には、視覚に関する問題と特定の身体的変化があります。

徴候や症状は、腫瘍の増殖や腫瘍が作り出すホルモン、または他の病態が原因で発生することがあります。腫瘍の中には、徴候や症状を引き起こさないものもあります。これらの問題がみられる場合は担当の医師にご相談ください。

非機能性下垂体腫瘍の徴候と症状

下垂体腫瘍によって下垂体の一部が圧迫されたり損傷を受けたりすると、1種類以上のホルモンの生成が停止することがあります。特定のホルモンが不足すると、そのホルモンによって制御されている腺や臓器の機能に影響が及びます。以下のような徴候や症状が発生します:

LHとFSHを作る腫瘍の大半は、徴候や症状を引き起こすほどにはホルモンを過剰産出しません。このような腫瘍は非機能性腫瘍とみなされます。

機能性下垂体腫瘍の徴候と症状

機能性下垂体腫瘍でホルモンが過剰に作られる場合、そのホルモンの種類に応じて異なる徴候や症状が現れます。

プロラクチンの過剰により生じる症状:

ACTHの過剰により生じる症状:

成長ホルモンの過剰により生じる症状:

甲状腺刺激ホルモンの過剰により生じる症状:

下垂体腫瘍のその他の一般的な徴候と症状:

下垂体腫瘍の診断には、画像検査法と血液や尿を調べる検査法などが用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

予後は腫瘍の種類や、腫瘍が中枢神経系(脳および脊髄)内の他の領域に拡がっているか、または中枢神経系の外部に位置する他の部分に拡がっているかどうかによって異なります。

治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:

下垂体腫瘍の病期

下垂体腫瘍の診断がついた後には、腫瘍が中枢神経系(脳と脊髄)内部や体の他の部位に拡がっていないかを明らかにするために、さらに検査が行われます。

がんの拡がりの程度は通常は病期で表現されます。下垂体腫瘍には、標準的な病期分類システムはありません。下垂体腫瘍が発見されると、腫瘍内または体の他の部位に拡がっているかどうかを明らかにするために、検査が行われます。以下のような検査法が用いられます:

下垂体腫瘍はいくつかの方法で表されます。

図は様々な腫瘍の大きさと豆(1cm)、ピーナッツ(2cm)、ブドウ(3cm)、クルミ(4cm)、ライム(5cm)、卵(6cm)、桃(7cm)、グレープフルーツ(10cm)とを比較して、腫瘍のサイズをセンチメートルで示している。10cmものさしと4インチものさしも示されている。

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腫瘍のサイズは多くの場合、センチメートル(cm)またはインチで測定される。腫瘍のサイズをセンチメートル単位で表わすために使用する一般的な食品は次のとおり:豆(1cm)、ピーナッツ(2cm)、ブドウ(3cm)、クルミ(4cm)、ライム(5cmまたは2インチ)、卵(6cm)、桃(7cm)、グレープフルーツ(10cmまたは4インチ)。

下垂体腫瘍は、大きさや悪性度、過剰なホルモン生産の有無、体の他の部位への転移の有無などにより分類されます。

以下のサイズが用いられます:

下垂体腺腫の大半は微小腺腫です。

下垂体腫瘍の悪性度は、トルコ鞍下垂体が収まっている頭蓋底部の骨)などの脳の周辺領域のどのくらい離れた場所にまで腫瘍が拡がっているかに基づきます。

下垂体腫瘍は治療後に再発(再び現れる)ことがあります。

このがんの再発は、下垂体に起こることもあれば、体の他の部位に起こることもあります。

治療選択肢の概要

下垂体腫瘍の患者さんには様々な治療法が存在します。

下垂体腫瘍の患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

標準治療として以下の4種類が用いられています:

手術

多くの下垂体腫瘍は以下のような手術法によって摘出されます:

手術の際に確認できる全てのがんを切除した後に、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させることを目的として、術後に化学療法放射線療法が実施される場合があります。このようにがんの再発リスクを低減させるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。特定の方法で放射線療法を実施すると、周辺の健康な組織の損傷を防ぐことができます。そうした放射線療法には、以下の種類のものがあります:

薬物療法

機能性の下垂体腫瘍による過剰なホルモンの産出を止めるために、薬物が投与される場合があります。

化学療法

化学療法は、下垂体がんに対する緩和療法として、症状を和らげ、患者さんの生活の質を高めるために実施されます。化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したり細胞分裂を妨害したりすることで、がん細胞の増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脳脊髄液内や臓器内、もしくは腔などの体内に薬剤を直接注入する化学療法では、薬はその領域にあるがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類に応じて異なります。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

下垂体腫瘍の治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療によって引き起こされる副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんの再発(再び現れること)の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

非機能性下垂体腫瘍の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

治療法には以下のようなものがあります:

黄体形成ホルモン産生腫瘍と卵胞刺激ホルモン産生腫瘍に対する治療では、通常、経蝶形骨洞手術による腫瘍の摘出が行われます。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

プロラクチン産生下垂体腫瘍の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

ACTH産生下垂体腫瘍の治療

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治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

成長ホルモン産生下垂体腫瘍の治療

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治療法には以下のようなものがあります:

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甲状腺刺激ホルモン産生腫瘍の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

下垂体がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

下垂体がんに対する治療は、症状を和らげ生活の質を高めることを目的とした緩和療法です。治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発下垂体腫瘍の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

下垂体腫瘍についてさらに学ぶために

下垂体腫瘍に関する詳しい情報については、NCIのウェブサイトが提供している下垂体腫瘍についてのホームページ(英語)をご覧ください。

米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、下垂体腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

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本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Pituitary Tumors Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/pituitary/patient/pituitary-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389369]

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