患者さん向け 硫酸ヒドラジン(PDQ®)

    • 原文更新日:2015-12-11
    • 翻訳更新日:2020-03-12

ご利用について

このPDQがん情報要約では、がん患者さんに対する治療での硫酸ヒドラジンの使用に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Integrative, Alternative, and Complementary Therapies Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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概要

注:この要約の情報は現在更新されておらず、参照用としてのみご利用いただけます。

硫酸ヒドラジンに関する質問と回答
1.硫酸ヒドラジンとは何ですか。

硫酸ヒドラジンは、がんならびにがんに伴う食欲不振食欲の喪失)および悪液質(筋肉と体重が減少する病態)に対する治療薬として研究されている化合物です。

2.がんに対する補完代替治療としての硫酸ヒドラジンの発見および使用には、どのような経緯があったのですか。

ヒドラジン化合物には動物やヒトに対する毒性があるということが1900年代の始めごろから知られていました。これまでに400種類以上のヒドラジン系化合物について、がん細胞を殺傷する能力があるかを確かめるための検証が行われてきました。そのうちの1つであるプロカルバジンは、1960年代からホジキン病黒色腫、および肺がんの治療に使用されています。

このプロカルバジンの抗がん作用が注目され、1970年代になると、がん治療における硫酸ヒドラジン(プロカルバジンに類似した化合物)の有効性を調べる研究が開始されました。さらに、がんに伴う悪液質に対する治療薬としての硫酸ヒドラジンの研究もこの頃から行われるようになりました。

ヒドラジン化合物はまた、ロケット燃料や除草剤(植物を駆除するための化学物質)として、また、ボイラーや冷却塔システムに用いる化学薬品としても使用されています。多くの科学者は、硫酸ヒドラジンや他の類似物質を発がん性物質と考えており、これらの化合物を使用することの安全性について懸念を抱いています。

3.がん治療に硫酸ヒドラジンが有用であるという主張の背景にはどのような理論があるのですか。

がんおよび悪液質に対する硫酸ヒドラジンの作用については以下の2つの仮説が示唆されてきました:

4.硫酸ヒドラジンはどのようにして投与されますか。

硫酸ヒドラジンは錠剤またはカプセル剤として経口で投与されます。標準の用量や治療期間は存在しません。

5.これまでに硫酸ヒドラジンを使用した前臨床研究(基礎研究や動物での研究)は実施されていますか。

研究室での研究や動物を使った試験は、ある薬物、処置、治療法などがヒトにおいて安全かつ役に立つ可能性があるかどうかを明らかにするために行われます。こうした前臨床研究は、ヒトを対象とした試験が開始される前に実施されます。硫酸ヒドラジンの前臨床研究からは以下のようなことが明らかにされています:

以上の前臨床研究に関する詳しい情報については、PDQ硫酸ヒドラジンに関する医療専門家向けの要約をご覧ください。

6.これまでに硫酸ヒドラジンを使用した臨床試験(ヒトを対象とした研究)は実施されていますか。

臨床試験は、新しい薬やその他の治療法がヒトに対してどのような効果を示すかを検証するための調査研究の一種です。硫酸ヒドラジンの臨床試験としては、進行がんの患者さんを対象とした研究が数多く実施されてきました。これらの研究では以下の項目が検討されました:

硫酸ヒドラジンの臨床試験からは以下のような報告がなされています:

7.硫酸ヒドラジンについて副作用や何らかの危険性は報告されていますか。

一般に、これまでに報告されてきた硫酸ヒドラジンによる治療の副作用は、軽度から中等度のものでした。こうした副作用のほとんどが硫酸ヒドラジンによる治療を中止するのと同時に消失すると報告されています。しかしながら、一部の動物での研究の結果から、アルコールまたはバルビツレート鎮静および催眠作用を有する薬)と併用した場合には硫酸ヒドラジンは強い毒性(有害な作用)を示すという可能性が示唆されています。

硫酸ヒドラジンによる副作用として報告されてきたものは、そのほとんどが神経系消化管に関係するものです。そうした副作用としては以下のものがあります:

これまでに致死的な不全と腎不全を起こした症例と脳に重度の損傷が生じた症例が1例ずつ報告されており、硫酸ヒドラジンの使用との関係性が指摘されています。

8.硫酸ヒドラジンは、米国においてがんの治療薬として使用することに関して米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けていますか。

FDAは米国において硫酸ヒドラジンをがんの治療薬として使用することを承認していません。

FDAは臨床試験において硫酸ヒドラジンの研究を行うことを承認しています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

栄養補助食品は食事に追加されることを想定した製品です。これらは薬物ではなく、病気の治療や予防、または治癒を目的としたものではありません。製造者は、製品が安全であること、および正確かつ誤解を招かないラベル表示を記載することに責任を負います。FDAは栄養補助食品の安全性と有効性に関する販売前承認を行いません。

参考文献
  1. Loprinzi CL, Goldberg RM, Su JQ, et al.: Placebo-controlled trial of hydrazine sulfate in patients with newly diagnosed non-small-cell lung cancer. J Clin Oncol 12 (6): 1126-9, 1994.[PUBMED Abstract]
  2. Chlebowski RT, Bulcavage L, Grosvenor M, et al.: Hydrazine sulfate in cancer patients with weight loss. A placebo-controlled clinical experience. Cancer 59 (3): 406-10, 1987.[PUBMED Abstract]
  3. Tayek JA, Heber D, Chlebowski RT: Effect of hydrazine sulphate on whole-body protein breakdown measured by 14C-lysine metabolism in lung cancer patients. Lancet 2 (8553): 241-4, 1987.[PUBMED Abstract]
本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、がん患者さんに対する治療での硫酸ヒドラジンの使用に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Integrative, Alternative, and Complementary Therapies Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Integrative, Alternative, and Complementary Therapies Editorial Board.PDQ Hydrazine Sulfate.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: http://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/cam/patient/hydrazine-sulfate-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389475]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。

補完代替医療(CAM)についての一般的な情報

補完代替医療(CAM)は、統合的医療とも呼ばれ、ヒーリングに関する原理やアプローチ、治療法などを幅広く意味します。従来の治療に加えて実施する場合は補完療法と呼ばれ、また、従来の治療の代わりに実施する場合は、よく代替療法と呼ばれます(従来の治療とは医学界で広く受け入れられ、かつ主流となっている治療を意味します)。どのように用いられるかによって、補完療法とみなされる場合と、代替療法とみなされる場合があります。補完代替療法は、病気の予防やストレスの軽減、副作用や症状の予防と軽減、そして疾患の管理や治癒を目的として用いられます。

がんの従来の治療とは異なり、補完代替療法は保険が適用されないことが多くあります。患者さんは加入保険会社に、補完代替医療が保険の適用対象となっているかどうかを確認することをお奨めします。

補完代替医療の中には、標準治療を妨げたり、従来の治療と併用した場合に有害となりうるものがあるため、補完代替療法を検討されているがん患者さんはどんな治療法でも必ず、担当医や看護師、薬剤師と相談して意思決定を行ってください。

補完代替医療(CAM)のアプローチの評価

補完代替医療の治療についても、従来の治療の評価と同様、厳格な科学的評価を行うことが重要です。米国国立がん研究所および米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)は医療施設において、がんに対するCAM療法の評価を行うための臨床試験(調査研究)を数多く主催しています。

一般的に、がんの治療における従来のアプローチは、多数の患者さんを対象とした臨床試験の実施など、厳格な科学的プロセスを経て、安全性や有効性が検討されています。それに比べ、補完代替医療の安全性や有効性についてはあまり知られていません。厳格な評価を経たCAM療法はごくわずかです。はじめは純粋に代替アプローチとみなされていた少数のCAM療法が、治癒を求めるものではなく、患者さんをより楽にし回復を早める手助けとなる補完医療として、がんの治療で用いられつつあります。1つの例が鍼療法です。1997年11月に開催された米国国立衛生研究所(NIH)の専門家委員会の会合によると、鍼療法は化学療法に関連した吐き気や嘔吐、そして手術に関連した疼痛の管理に有効であることがわかりました。対照的に、レートリルの使用などのいくつかのアプローチは、検討の結果、無効であるか、または有害となりうることがわかりました。

1991年に始まったNCIのBest Case Series Programは、臨床で用いられているCAMアプローチの評価を行うプログラムの1つです。このプログラムはNCIのがん補完代替医療オフィス(OCCAM)の監視下で進められています。がん代替医療を行う医療専門家は、患者さんのカルテや関連資料をOCCAMに提出します。OCCAMではそれらの資料を厳密に精査し、NCI主導の研究を正当化するであろう治療アプローチについては、フォローアップ研究の戦略を立てています。

補完代替医療(CAM)について医療提供者に質問すべきこと

補完代替療法を受けることを考えている場合、患者さんは主治医などの医療提供者に次の質問を行ってください。

補完代替医療(CAM)についてさらに知るには

米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)

米国国立衛生研究所(NIH)の国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、補完代替医療の研究および評価を促進し、医療専門家や一般の方を対象に様々なアプローチについての情報を提供しています。

CAM on PubMed

NCCIHおよびNIH国立医学図書館(NLM)は共同でCAM on PubMedを開発し、CAMに関連するジャーナルの記載内容を無料かつ簡単に検索できる機能を提供しています。NLMの図書目録データベースのサブセットとして、CAM on PubMedには様々な科学ジャーナルのCAMに関連する論文から、230,000を超える文献や抄録が登録されています。このデータベースはさらに、1,800を超えるジャーナルにリンクしており、ユーザーが論文全文を参照できるようになっています(論文全文を参照するには、購読料などの費用が発生する場合があります)。

がん補完代替医療オフィス

NCIのがん補完代替医療オフィス(OCCAM)は、補完代替医療(CAM)の分野におけるNCIの活動をコーディネートしています。OCCAMはCAMのがん研究をサポートし、がんに関連するCAMについての情報を、NCIのウェブサイトを通して医療提供者や一般の方に提供しています。

米国国立がん研究所(NCI)のがん情報サービス

米国にお住まいの方は、NCIがん情報サービスフリーダイヤル+1-800-4-CANCER(+1-800-422-6237)に電話をすることができます(月曜日から金曜日の午前8時から午後8時まで)。訓練を受けたがん情報スペシャリストが質問にお答えします。

食品医薬品局

食品医薬品局(FDA)は、薬物や医療機器を規制し、それらの安全性と有効性を確保しています。

連邦取引委員会

連邦取引委員会(FTC)は消費者保護法を施行しています。FTCから入手可能な出版物は以下の通りです: