患者さん向け 子宮頸がんのスクリーニング(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、子宮頸がんのスクリーニングに関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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スクリーニングとは

スクリーニングとは、症状が現れてくる前にがんを発見しようとする試みのことです。実際にがんの早発見に役立つ場合もあります。異常組織やがんも、早期に発見されれば治療が容易になる場合があります。症状が現れる頃には、がんが増殖し拡がり始めていることもあります。

ある種類のがんにかかりやすいのはどのような人々なのか、ということをより深く理解しようと科学者たちは挑み続けています。さらに、がんの原因となりうる生活習慣や環境についても研究が重ねられています。こうして得られた情報は、どういった人ががんのスクリーニングを受けるべきか、どのスクリーニング検査を用いるべきか、そしてその検査をどのくらいの頻度で受けるべきかについて、医師が患者さんに助言をしていく際に役立てられています。

担当の医師からスクリーニング検査を勧められたとしても、必ずしもがんの存在を疑ってそうしているわけではないということを覚えておくことが重要です。スクリーニング検査はがんの症状が現れる前に実施されるものなのです。

スクリーニング検査の結果が異常であれば、がんの存在を確認するために、さらなる検査が必要になる場合もあります。こうした検査は診断検査と呼ばれます。

子宮頸がんについての一般的な情報

子宮頸がんは、子宮頸部に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

子宮頸部とは、子宮胎児の成長の場となる、洋ナシの形をした中空の臓器)の下の方の狭くなった部分のことをいいます。子宮頸部は子宮から(産道)への移行部にあたります。

女性生殖系の解剖図:図は、子宮、子宮筋層(子宮の外側の筋層)、子宮内膜(子宮内腔を覆う膜)、卵巣、卵管、子宮頸部、膣を示している。

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女性生殖系の解剖図。女性生殖系の臓器には、子宮、卵巣、卵管、子宮頸部、膣などが含まれます。子宮には、子宮筋層と呼ばれる筋肉の外層と子宮内膜と呼ばれる内膜があります。

子宮頸がんは通常ゆっくりと進行します。がんが現れる前の子宮頸部には、異常な細胞組織の中に現れ始める異形成と呼ばれる変化が起きています。その後、がん細胞が増殖を開始して、子宮頸部のより深い部分や周辺部へと拡がっていきます。

子宮頸がんに関する詳しい情報については以下のPDQの要約をご覧ください:

1950年以来、パパニコロウ試験による子宮頸がんのスクリーニングの実施により、子宮頸がんの新規症例数と子宮頸がんによる死亡者数は減少を続けています。

子宮頸部異形成は20歳代と30歳代の女性に多くみられます。30歳未満の女性と、パパニコロウ試験によるスクリーニングを定期的に受けている全年齢層の女性では、子宮頸がんでの死亡はまれなことです。パパニコロウ試験はがんやがんに発展しうる変化を検出するのに用いられます。子宮頸がんによる死亡の危険性は年齢とともに増加していきます。近年、子宮頸がんによる死亡者数は、50歳未満の白人女性よりも50歳未満の黒人女性のほうがわずかに高くなっています。60歳以上の黒人女性では、子宮頸がんによって死亡する可能性が、60歳以上の白人女性のほぼ2倍近く高くなります。

ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染は子宮頸がんの主要なリスク因子です。

子宮頸がんの女性の大部分がヒトパピローマウイルス(HPV)に感染していますが、HPVに感染している女性の全員が子宮頸がんを発症するわけではありません。子宮に影響を及ぼすHPVには数多くの種類がありますが、細胞の異常を引き起こしてがんの原因となりうるものは、そのうちのごく一部に限られます。 HPV感染症の中には、治療なしで自然に治っていくものもあります。

HPV感染症は主として性的接触により伝染します。若年で性活動を開始した女性や、セックスパートナーを多くもつ女性では、HPVの感染リスクが高くなります。

子宮頸がんのリスク因子としては、この他にも以下のものがあります:

子宮頸がんのスクリーニング

各種のがんを見つけるために、症状が現れていない人を対象として検査を実施し選別を行います。

最も害が少なく最も有益な方法を発見すべく、科学者によりスクリーニング検査の研究が行われています。また、がんスクリーニングの臨床試験を行う目的には、早期発見(症状が現れる前にがんを発見すること)によって寿命が延びるか、あるいは疾患により死亡する確率が下がるかどうかを明らかにすることも含まれています。一部の種類のがんでは、早のうちに発見し治療することで、回復の見込みが高まる場合があります。

子宮頸がんのスクリーニングを実施することでこの疾患による死亡者の数を低減できるということが、複数の研究から明らかにされています。

パパニコロウ試験によるスクリーニングを定期的に受けている21~65歳の女性では、子宮頸がんによる死亡の可能性が低減します。

パパニコロウ試験は子宮頸がんのスクリーニングで広く用いられている手法です。

パパニコロウ試験とは、子宮頸部の表面から細胞を採取する検査法です。まず脱脂綿、ブラシ、木べらなどで子宮頸部と膣の細胞を優しくこすり取ります。そして採取された細胞を顕微鏡で観察して、異常がないかを調べます。この検査法はパパニコロウ塗抹検査とも呼ばれます。ここで細胞を採取して観察するための新たな方法として、細胞をスライドガラスに載せる前にある液体の中に入れておくという手法が考案されています。ただし、子宮頸がんによる死亡者数の減少という点で、この新しい方法が標準的な方法より優れているかについてはまだ分かっていません。

パパニコロウ試験:パパニコロウ試験中の女性生殖器を側面から見た解剖図。膣鏡による膣口の拡張を示している。ブラシを膣の開口部に挿入し、子宮の底部に位置する子宮頸部に触れている様子が示されている。直腸も示されている。拡大図は、子宮頸部中央にブラシが接触しているところを示している。左の小さい図では、ドレープで覆われた女性が診察台の上で足を足置きに乗せて両脚を開いている。

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パパニコロウ試験。膣口に膣鏡を挿入し、拡張します。次にブラシを膣に挿入し、子宮頸部から細胞を採取します。それらの細胞を顕微鏡で観察して、疾患の徴候がないか調べます。

パパニコロウ試験で陽性の結果が出た後に、HPV検査が行われる場合があります。

HPV検査は、DNAまたはRNAを調べて、ある型のHPVへの感染が起きていないかどうかを確認する臨床検査です。採取した子宮頸部の細胞からDNAまたはRNAを取り出して、子宮頸がんに関係する種類のヒトパピローマウイルス感染が生じているかどうかを調べます。この検査は、パパニコロウ試験の際に採取された細胞サンプルに対して行われることがあります。また、この検査は、パパニコロウ試験で子宮頸部の細胞に特定の異常が認められた場合に行われることもあります。パパニコロウ試験で採取されたサンプルの細胞を使用して、HPV検査とパパニコロウ試験の両方を行う検診は、Pap/HPV併用検査と呼ばれます。

子宮頸がんのスクリーニングで、HPV検査が単独で、またはパパニコロウ試験と組み合わせて行われることがあります。

30歳以上の女性に対して、パパニコロウ試験とHPV検査の両方を用いるスクリーニングを5年ごとに実施する方法は、パパニコロウ試験だけでスクリーニングを行う場合よりも、がんにつながる可能性がある子宮頸部の異変を多く発見できます。パパニコロウ試験とHPV検査の両方によるスクリーニングによって、子宮頸がんの発生件数は減少します。

25歳以上の女性に対する子宮頸がんのスクリーニングで、パパニコロウ試験を行わずにHPV DNA検査が行われることもあります。

HPV検査のサンプルは自己採取のことがあります。

HPV検査のサンプルは、患者さんが書面による指示に従って採取するか、クリニックで採取されます。自己採取の選択肢は、特に医療提供者へのアクセスが制限されている地域において、子宮頸がんスクリーニングへのアクセスを改善する可能性があります。

現在、子宮頸がんのスクリーニング検査法が臨床試験で検証されています。

NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

子宮頸がんのスクリーニングのリスク

スクリーニング検査にはリスクが伴います。

スクリーニング検査に関する判断は難しくなる場合があります。全てのスクリーニング検査が役に立つわけではなく、ほとんどはリスクを伴います。スクリーニング検査を受けようとする場合は、その前に検査について担当の医師とよく話し合っておくのがよいでしょう。検査に伴うリスクを把握し、さらにがん死亡のリスク低減という効果が実際に証明されているのかを知っておくことが重要です。

子宮頸がんのスクリーニングのリスクとしては以下のものがあります:

不要なフォローアップ検査が行われることがあります。

21歳未満の女性では、パパニコロウ試験によるスクリーニングを受けることで、子宮頸部細胞にがんではない変化が認められる場合があります。これが不要なフォローアップ検査を招き、必要のない治療につながるかもしれません。この年齢層の女性は、子宮頸がんのリスクが非常に低く、異常細胞が発生しても自然に消失する可能性が高いと考えられます。

偽陰性の検査結果が出る可能性もあります。

実際には子宮頸がんが存在しているのにもかかわらず、スクリーニング検査の結果が正常と出る場合もあります。偽陰性の検査結果(実際にはがんが存在しているのに存在しないと判定された検査結果)を受けた女性では、たとえ症状が現れていても、医師の診察を受けるのが遅くなる場合があります。

偽陽性の検査結果が出る可能性もあります。

実際にはがんが存在していないにもかかわらず、スクリーニング検査の結果が異常となる場合もあります。また、子宮頸部に発生する異常細胞のなかには決してがんにならないものもあります。パパニコロウ試験で偽陽性の検査結果(実際にはがんは存在しないのに存在すると判定された検査結果)が得られた場合、患者さんに不安を感じさせるだけでなく、その後もさらに検査や手技(膣鏡検査凍結療法LEEPなど)が実施されるのが通常で、そうした検査や手技にはリスクもあります。これらの処置が妊孕性妊娠に及ぼす長期的な影響についてはよく分かっていません。

特に30歳未満の女性では、HPV検査により、子宮頸部異形成や子宮頸がんに至ることのない多くの感染が発見されることもあります。

パパニコロウ試験とHPV検査の両方を実施すると、偽陽性の検査結果が多く出るようになります。

ご自身に関する子宮頸がんのリスクやスクリーニング検査の必要性については、担当の医師にご相談ください。

パパニコロウ試験によるスクリーニングによって子宮頸がんの症例数と死亡者数が大幅に減少するということが、複数の研究から示されています。多くの医師が1年ごとにパパニコロウ試験を受けることを推奨しています。新たな研究では、パパニコロウ試験を受けた女性が異常細胞の徴候が見られない場合には、パパニコロウ試験は2~3年ごとに繰り返し受けることができると示されています。

次のような女性グループの場合には、パパニコロウ試験が子宮頸がんのスクリーニングに役立ちません。

パパニコロウ試験を受ける頻度については、担当の医師と話し合って決めるのが最良の選択です。

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、子宮頸がんのスクリーニングに関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Screening and Prevention Editorial Board.PDQ Cervical Cancer Screening.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/cervical/patient/cervical-screening-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389215]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

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