患者さん向け 副甲状腺がんの治療(PDQ®)

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このPDQがん情報要約では、副甲状腺がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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副甲状腺がんについての一般的な情報

副甲状腺がんは、副甲状腺の組織の中に悪性(がん)細胞ができるまれな疾患です。

副甲状腺とは、頸部の甲状腺に隣接する4つの豆粒大の臓器のことです。副甲状腺は副甲状腺ホルモン(PTHまたはパラソルモンとも呼ばれる)を作ります。このPTHは、体がカルシウムを消費したり、貯蓄したりするのを助け、血液中のカルシウム濃度を正常なレベルに維持します。

甲状腺と副甲状腺の解剖図:図は咽頭基部の気管付近に位置する甲状腺を示している。拡大図は甲状腺の正面図と背面図である。正面図からは甲状腺が蝶のような形状であること、右葉と左葉が峡部という細い組織で連結されていることがわかる。背面図は4つの豆粒大の副甲状腺を示している。喉頭も示されている。

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甲状腺と副甲状腺の解剖図。甲状腺は咽頭基部の気管付近に位置しています。蝶のような形状であり、右葉と左葉が峡部という細い組織で連結されています。副甲状腺は4つの豆粒大の器官で、頸部の甲状腺の近くに存在します。甲状腺と副甲状腺はホルモンを産生します。

ときに副甲状腺の働きが活発になり過ぎて過剰な量のPTHが分泌される場合がありますが、この病態副甲状腺機能亢進症と呼ばれます。この副甲状腺機能亢進症は、副甲状腺のいずれかに腺腫と呼ばれる良性腫瘍(がんではない腫瘍)が発生し、その腫瘍によって副甲状腺が増大しその機能が活性化されることによっても発生することがあります。一部には副甲状腺がんが原因となって副甲状腺機能亢進症が発生する場合もありますが、これは非常にまれな場合です。

PTHが過剰になると、以下を引き起こします:

高カルシウム血症という病気(血液中のカルシウムの量が増えすぎた状態)が引き起こされる。

副甲状腺機能亢進症によって引き起こされる高カルシウム血症は、副甲状腺がん自体よりも深刻で生死に関わる病気であることから、この高カルシウム血症に対する治療はがんに対する治療と同じくらいに重要です。

特定の遺伝性疾患をもつ人では、副甲状腺がんの発生リスクが高くなります。

疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。副甲状腺がんのリスク因子としては以下のような遺伝性疾患(親から子どもへと遺伝する病気のこと)が挙げられます:

放射線療法の実施によって副甲状腺腺腫の発生リスクが高まることもあります。

副甲状腺がんの徴候や症状には、筋力低下、疲労感、頸部のしこりなどがあります。

副甲状腺がんの徴候症状のほとんどは、高カルシウム血症によるものです。高カルシウム血症の徴候や症状には以下のようなものがあります:

副甲状腺がんのその他の徴候や症状には以下のものがあります:

ただし、別の病態が原因で副甲状腺がんと同様の徴候や症状が生じてくる場合もあります。このような問題が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください。

副甲状腺がんの発見と診断には、頸部と血液を調べる検査法が用いられます。

血液検査によって副甲状腺機能亢進症が診断されると、機能が活性化している副甲状腺を特定するために画像検査が実施されることがあります。副甲状腺は患者さんによってはなかなか見つからないことがあるため、その正確な位置を特定するために画像検査が実施される場合もあります。

副甲状腺の腫瘍では、良性の副甲状腺腺腫と悪性の副甲状腺がんの細胞の外観がよく似ているため、副甲状腺がんの診断は難しくなる場合があります。その診断では、患者さんの症状、血液中のカルシウムと副甲状腺ホルモンの濃度、腫瘍の特徴などが参考にされます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

予後回復の見込み)と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:

副甲状腺がんの病期

副甲状腺がんの診断がついた後には、がん細胞が体の他の部位に拡がっていないかを明らかにするために、さらに検査が行われます。

他の部位へのがんの転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。肝臓、骨、心臓、膵臓リンパ節などの他の部位にがんが転移していないかを明らかにするために、以下のような画像検査法が用いられます:

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、副甲状腺がんが肺に転移した場合、肺にできたがん細胞は、実際は副甲状腺がんの細胞です。この疾患は転移性副甲状腺がんであり、肺がんではありません。

副甲状腺がんには、病期分類システムがありません。

副甲状腺がんについては、限局性転移性に分けて考えることになっています。

再発副甲状腺がん

再発副甲状腺がんとは、治療後に再発した(再び現れた)がんのことをいいます。再発は患者さんの半数以上に起こります。副甲状腺がんの再発は、最初の手術の2~5年後に起こるのが通常ですが、20年も経ってから起こる場合もあります。再発部位は頸部の組織か頸部のリンパ節となるのが通常です。治療後のカルシウム濃度の再上昇は、再発の最初の徴候です。

治療選択肢の概要

副甲状腺がんの患者さんには様々な治療法が存在します。

副甲状腺がんの患者さんは、様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

副甲状腺の機能亢進がみられる患者さんの治療には高カルシウム血症(血液中のカルシウムの量が増えすぎた状態)の管理も含まれます。

副甲状腺ホルモンの分泌量を低下させて血液中のカルシウム濃度をコントロールするために、腫瘍を可能な限り多く切除する手術が行われます。手術を受けられない患者さんには、医薬品が使用されることもあります。

標準治療として以下の4種類が用いられています:

手術

手術(がんを外科的な方法で取り除く治療法)は、がんが副甲状腺内にとどまっているか体の他の部位に転移しているかに関係なく、副甲状腺がんに対して最も多く用いられている治療法です。副甲状腺がんは増殖のペースが非常に遅いため、すでに体の他の部位に転移している場合でも、疾患の治癒や症状の長期的な沈静化を目標として、手術による腫瘍の摘出が行われることがあります。手術の実施までは、高カルシウム血症をコントロールするための治療が施されます。

以下のような手術法が用いられます:

副甲状腺がんの手術では、ときに声帯の神経を傷つける場合があります。この神経の損傷によって起こる発声の問題については有用な治療法が存在します。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。放射線療法には2種類のものがあります:

頭頸部の体外照射療法:図は、高エネルギー放射線をがんに照射する装置の下で、台に患者が横たわっているところを示している。拡大図は、施術中に患者の頭頸部が動かないように固定するメッシュマスクを示している。マスクには小さい印が記された複数の白いテープが付いている。この印は、毎回の施術前に放射線装置を同じ位置に合わせるためのものです。

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頭頸部の体外照射療法。高エネルギー放射線をがんに照射する装置を使用します。この装置は患者の周囲を回転し、様々な角度から放射線を照射することで、病巣の形状に精細に沿った照射を行います。メッシュマスクを使用して、施術中に患者の頭頸部が動かないように固定します。マスク上に小さい印が付けられています。この印は、毎回の施術前に放射線装置を同じ位置に合わせるためのものです。

放射線療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。副甲状腺がんの治療には外照射療法が用いられます。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脳脊髄液内や臓器内、もしくは腔などの体内に薬剤を直接注入する化学療法では、薬はその領域にあるがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。

支持療法

支持療法とは、疾患や治療が原因で生じた問題を軽減するために行われる治療です。副甲状腺がんによる高カルシウム血症に対する支持療法には以下のものがあります:

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

副甲状腺がんの治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療によって引き起こされる副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんの再発(再び現れること)の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

副甲状腺がんは再発することの多い腫瘍です。そのため再発を早期に発見し治療するために、治療終了後も生涯にわたって定期的な検査を受けていくことが必要です。

副甲状腺がんの治療選択肢

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

限局性副甲状腺がん

限局性副甲状腺がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

転移性副甲状腺がん

転移性副甲状腺がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発副甲状腺がん

再発副甲状腺がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

副甲状腺がんについてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している副甲状腺がんに関する詳しい情報については、副甲状腺がんについてのホームページ(英語)をご覧ください。

米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、副甲状腺がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

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本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Parathyroid Cancer Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/parathyroid/patient/parathyroid-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389349]

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