患者さん向け 小児脳腫瘍および脊髄腫瘍の治療の概要(PDQ®)

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このPDQがん情報要約では、小児の脳腫瘍および脊髄腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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小児脳腫瘍および脊髄腫瘍についての一般的な情報

小児脳腫瘍または脊髄腫瘍は脳や脊髄の組織に異常な細胞が形成される病気です。

小児の脳腫瘍および脊髄腫瘍には多くの種類があります。これらの腫瘍は、細胞異常な増殖により形成され、脊髄の様々な領域から発生することがあります。

この腫瘍は、良性のがんではない)場合もあれば、悪性の(がんである)場合もあります。脳腫瘍は良性であっても増殖して脳内で周辺の領域を圧迫することがあります。まれに他の脳組織に拡がることもあります。悪性脳腫瘍には低悪性度のものと高悪性度のものがあります。高悪性度の腫瘍は増殖が速く、他の脳組織に拡がる傾向がみられます。それに比べて、低悪性度の腫瘍は増殖が遅く、ゆっくり拡がる傾向にあります。腫瘍が脳内で増殖したり、脳を圧迫したりすると、その部分の脳が果たすべき機能が阻害される場合があります。脳腫瘍が良性でも悪性でも、治療が必要な徴候症状が現れることがあり、再発する(再び現れる)こともあります。

脳と脊髄は共に中枢神経系(CNS)を構成します。

本要約は、良性と悪性の原発脳腫瘍および原発脊髄腫瘍について書かれたものです。

脳は多くの重要な身体機能を制御します。

脳には次のような3つの主要部分があります:

脳の解剖図:右図はテント上領域(脳の上部)と後頭蓋窩/テント下領域(脳の下部後方)を示している。テント上領域には、大脳、側脳室、第3脳室(青色は脳脊髄液)、脈絡叢、松果体、視床下部、下垂体、視神経が含まれる。後頭蓋窩/テント下領域には、小脳、視蓋、第4脳室、脳幹(中脳、脳橋、髄質)が含まれる。テントと脊髄も示されている。左図は、大脳、脳室(液体で満たされた空間)、髄膜、頭蓋、小脳、脳幹(脳橋と髄質)、脊髄を示している。

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脳の解剖図。テント上領域(脳の上部)には、大脳、側脳室、第3脳室(青色は脳脊髄液)、脈絡叢、松果体、視床下部、下垂体、視神経が含まれます。後頭蓋窩/テント下領域(脳の下部後方)には、小脳、視蓋、第4脳室、脳幹(中脳、脳橋、髄質)が含まれます。テントにより、テント上とテント下が区切られています(右図)。頭蓋と髄膜は脳と脊髄を保護しています(左図)。

脊髄は脳と体のほとんどの部分の神経を接続します。

脊髄は柱状の神経組織で、脳幹から始まり、背中の中心を下っています。脊髄は3層の「」と呼ばれる薄い組織で覆われています。脊髄とこれらの膜は椎骨(背骨)に包まれています。脊髄の神経は、筋肉を動作させる脳からのメッセージや皮膚からの触覚を脳に伝えるメッセージなど、脳と体の他の部位との間でメッセージを伝達します。

脳腫瘍と脊髄腫瘍は、頻繁にみられる種類の小児がんです。

小児がんはまれにしかみられませんが、脳腫瘍と脊髄腫瘍は白血病に次いで2番目に多くみられる小児がんです。脳腫瘍は小児と成人のいずれにも発生する可能性があります。小児に対する治療は通常、成人に対する治療とは異なります。(成人向けの治療法に関する詳しい情報については、PDQ成人中枢神経系腫瘍の治療に関する要約をご覧ください。)

転移性腫瘍は、体の他の部位に発生したがん細胞により形成され、脳や脊髄に拡がります。転移性の脳腫瘍と脊髄腫瘍の治療については、本要約では扱っておりません。

ほとんどの小児脳腫瘍および脊髄腫瘍の原因は不明です。

小児脳腫瘍および脊髄腫瘍の徴候や症状は、全ての患者さんで同じとは限りません。

徴候や症状は以下の因子に左右されます:

徴候や症状は小児脳腫瘍や脊髄腫瘍により引き起こされることもあれば、他の病態によって引き起こされることもあります。お子さんに以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:

脳腫瘍と脊髄腫瘍のこれらの徴候や症状に加えて、小児によっては座る、歩く、文を発話するといった特定の成長と発達のマイルストーンに到達できないことがあります。

小児脳腫瘍および脊髄腫瘍を発見するには、脳と脊髄を調べる検査法が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

ほとんどの小児脳腫瘍の診断は手術の際になされ、そのまま摘出まで行われます。

医師は脳腫瘍の可能性があると考えた場合、生検を行って組織のサンプルを採取します。脳腫瘍の場合は、頭蓋骨の一部を切除し、針を使用して組織のサンプルを採取します。コンピュータによる誘導の下で針が挿入される場合もあります。切除された組織を病理医顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調べます。ここでがん細胞が発見された場合には、そのまま手術が継続され、安全を確保できる範囲内で可能な限りの腫瘍の摘出が行われます。病理医はがん細胞を調べて脳腫瘍の種類と悪性度を判別します。腫瘍の悪性度は、がん細胞を顕微鏡で観察したときの異常の度合いと、腫瘍の増殖や拡がりの速さに基づいています。

開頭術の図:頭皮の一部を切り取り、頭蓋骨片を切除し、脳を覆う硬膜を切開して脳を露出させている。頭皮の下の筋層も示されている。

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開頭術:頭蓋骨に開口部を設け、頭蓋骨片を切除して脳の一部を露出させる手技。

切除された組織のサンプルに対して、以下の検査が行われることがあります:

一部の小児脳腫瘍と脊髄腫瘍は画像検査により診断されます。

脳内または脊髄内での腫瘍の位置によっては、生検や手術が安全に実施できない場合があります。これらの腫瘍は画像検査や他の手技の結果に基づいて診断されます。

特定の要因が予後(回復の見込み)に影響を及ぼします。

予後を左右する因子には以下のものがあります:

新たに診断されたか再発した小児の脳腫瘍と脊髄腫瘍の治療

脊髄は様々な種類の細胞から構成されています。小児の脳腫瘍と脊髄腫瘍良性の場合もあれば悪性の場合もあり、腫瘍が発生した細胞の種類と腫瘍が最初に発生した中枢神経系(CNS)の場所により分類され、それに基づいて治療が行われます。腫瘍の種類によっては、顕微鏡で腫瘍を観察した結果と特定の遺伝子変異の有無に基づいて、いくつかの亜型に細分する場合もあります。新たに診断された、または再発した小児の脳腫瘍と脊髄腫瘍の病期分類と治療については、以下のリストをご覧ください。

小児星細胞腫

星細胞腫グリオーマ、黄色星細胞腫、神経線維腫症1型(NF1)に関する詳しい情報については、PDQ小児星細胞腫の治療に関する要約をご覧ください。

小児脳幹グリオーマ

びまん性内在性橋グリオーマ限局性グリオーマに関する詳しい情報については、PDQの小児脳幹グリオーマの治療に関する要約をご覧ください。

小児CNS非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍

詳しい情報については、PDQの小児中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍の治療に関する要約をご覧ください。

小児CNS胚細胞腫瘍

ジャーミノーマ、胎児性がん卵黄嚢腫瘍絨毛がん成熟奇形腫未熟奇形腫、悪性転換を伴う奇形腫、混合型胚細胞腫瘍に関する詳しい情報については、PDQの小児中枢神経系胚細胞腫瘍の治療に関する要約をご覧ください。

小児頭蓋咽頭腫

詳しい情報については、PDQの小児頭蓋咽頭腫の治療に関する要約をご覧ください。

小児上衣腫

詳しい情報については、PDQの小児上衣腫の治療に関する要約をご覧ください。

小児髄芽腫とその他の小児CNS胚芽腫

髄芽腫胚芽腫松果体芽腫に関する詳しい情報については、PDQの小児髄芽腫およびその他の小児中枢神経系胚芽腫の治療に関する要約をご覧ください。

小児脳腫瘍および脊髄腫瘍についてさらに学ぶために

小児脳腫瘍および脊髄腫瘍に関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

小児がんに関する情報と一般的ながんに関するその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児の脳腫瘍および脊髄腫瘍の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Brain and Spinal Cord Tumors Treatment Overview.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/brain/patient/child-brain-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389351]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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