患者さん向け がん疲労

ご利用について

このPDQがん情報要約では、疲労の原因と治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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がん疲労とは

がん疲労とは、がんまたはがん治療によって引き起こされる病態で、患者さんは疲弊したり極度の疲労を感じたりします。がんの患者さんの一部は、ほとんど常に極度の疲労を感じており、日常生活を営むことができません。単に非常に疲れているだけの人もいます。がん疲労は、がん関連疲労、またはがん治療に関連する疲労と呼ばれることもあります。

がん疲労は、患者さんが過去に経験した疲労とは異なります。健康な人が疲れている場合、通常、疲労は活動によって引き起こされ、休息または睡眠をとれば消失します。しかし、がん疲労は睡眠や休息をとっても完全には回復せず、ちょっと活動した後や全く活動をしなくても生じることがあります。

がん疲労はよくみられる病態です

がん疲労は、最も一般的ながん治療の副作用の1つです。がんの患者さんの80%以上が化学療法や放射線療法を受けている際に疲労を感じます。

がん疲労はいつでも起こりうる病態です

疲労は、がん治療の前、最中、後のいずれにおいても起こりえます。ときに、がんの初期症状として生じることもあれば、がんと診断されたことによるストレスが原因である可能性もあります。疲労は、治療を受けている間に徐々に悪化することもあれば、突然生じることもあります。通常、がんの治療が終了すれば患者さんの疲労は軽くなりますが、その後、数カ月から数年にわたって疲労が残る場合もあります。 

がん疲労は生活の様々な面に影響を及ぼす可能性があります

疲労は日常活動だけでなく、家庭や職場、社会での生活にも影響を及ぼす可能性があります。がん疲労は耐え難いものと感じられることがありますが、医療チームは、患者さんに合わせて疲労を管理、治療、対処する方法を見つける手助けをすることができます。

がん疲労の症状

疲労の有無や、疲労の感じ方は、がんの種類、がんの病期、受けているがん治療、身体的および情緒的な健康全般、栄養状態、睡眠パターンなどの要因によって異なります。

がん疲労の症状には以下のようなものがあります:  

がん疲労の原因

がん自体、がん治療、および治療の副作用が疲労の原因となる可能性があります。疲労のその他の原因としては、ストレス、スケジュールの変更、その他の病態があります。

がんによる疲労

ときに、がん自体ががんの患者さんの疲労の原因であることがあります。体のエネルギーのために必要なカロリーや栄養素をがん細胞が消費するため、患者さんは疲労を感じます。がんは、サイトカインという、正常時から生産されていて、体が感染やがんに抵抗するのを助ける物質の分泌を引き起こすこともありますが、サイトカインは、大量に分泌されると疲労を引き起こすことがあります。がんの患者さんの一部で、筋肉や体重の減少を引き起こす消耗性症候群の1つである悪液質が疲労につながることもあります。

特定の種類のがんは、他のものより疲労を引き起こす可能性が高いです。

がん治療による疲労

多くのがん治療により活動水準が低下する可能性があります。それぞれの治療が疲労に及ぼす影響は異なる場合があり、治療のスケジュールや用量が疲労の程度や最も疲労を感じる時期に影響する可能性があります。複数の治療を受けると疲労が増大する可能性があります。

がん治療の副作用による疲労

がん治療の副作用の中には、疲労を引き起こしたり悪化させたりするものがあります。

がんの情緒的影響による疲労

がんなどの重大な病気にかかっていると、患者さんは不安や心配、恐怖を感じることがあります。強い苦痛は疲労、不眠症、食欲減退などの身体的な問題につながる可能性があります。がん患者さんによくみられる感情と対処法(英語)についてご覧ください。

ときに疲労を感じている人がうつ病を発症することがあります。気分が落ち込むことがあるのは普通のことですが、うつ病はより深刻な状態です。苦痛と不安およびうつ病の症状と治療のセクションをご覧ください。

がん疲労について医師に相談する

非常に衰弱して疲れていると感じた場合(特に日常の活動を行うことができない場合)や、休息や睡眠をとってもひどい疲れがとれない場合は、そのことを医療チームに伝えましょう。 

毎日の活動水準と疲労を記録するのに役立つチャート、日誌、または疲労日記を医師からもらえることがあります。この情報は、医学的検査とともに、疲労を管理または対処するのに患者さんにとって最善の方法を医師が決定するのに役立つ可能性があります。 

がん疲労について医師、看護師、またはソーシャルワーカーに尋ねるべき質問

疲労の評価に用いられる医学的検査

医療チームは疲労の原因となっている病態がないか調べることがあります。身体診察と血液検査を行って、貧血や感染の有無を調べます。

医療チームは、疲労がどの程度であるか、また日常生活にどのような影響を及ぼしているかについて、一連の標準的な質問をすることもあります。これを疲労の評価といいます。医療チームはこの評価を繰り返し行い、疲労が始まったり悪化したりするパターンはないか、またそれを予防、管理、治療する最善の方法は何かを確認します。疲労は毎回同じ方法で測定します。これは時間の経過に伴う疲労の変化を明らかにするのに役立ちます。

がん疲労の治療

医療チームは疲労に関連する病態を和らげることで治療を行うことが多いです。患者さんの症状と疲労の原因が分かっているかどうかに基づいて治療を選択します。疲労の原因が明らかでない場合、医師は症状を治療し、疲労を管理または対処する方法を患者さんに指導します。

がん関連疲労の治療

がん疲労の管理

疲労を完全に消失させることは必ずしも可能というわけではありませんが、がん関連疲労を軽減または管理するのに役立つ方法があります。試してみることができる方法について医療チームと話し合いましょう。可能性としては以下のようなものがあります:

がん疲労がみられる場合は支援を受ける

がんによる疲労がみられる場合には、対処するための支援が患者さんや介護者に必要となることがあります。自分は一人ではないということを認識し、家族や友人、医療チームに支援を求めましょう。