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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

鍼灸(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2015-11-20
    翻訳更新日 : 2017-02-17

PDQ Integrative, Alternative, and Complementary Therapies Editorial Board

 このPDQがん情報要約では、がん患者さんに対する治療での鍼灸の使用に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

 PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Integrative, Alternative, and Complementary Therapies Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

鍼療法

概要


  • 鍼灸では、鍼療法のツボとして知られる皮膚上の経穴の1ヵ所または数ヵ所に針、温熱、圧迫、その他の治療を施します(詳しくは質問1を参照してください)。

  • 鍼灸は中国伝統医学の一部として、中国やその他のアジア諸国で数千年間用いられています(詳しくは質問2を参照してください)。

  • 鍼灸は米国では約200年間用いられています(詳しくは質問2を参照してください)。

  • 鍼灸は様々な病気や慢性疾患の治療に用いられ、がん患者さんにも施されています。患者さんの間で痛みの制御に利用されるほか、吐き気嘔吐疲労ほてり口腔乾燥神経障害不安抑うつ、睡眠障害の緩和を目的として用いられています。(詳しくは質問2を参照してください)。

  • 鍼灸は、神経細胞下垂体、および脳の各部で身体的反応を引き起こし、血圧や体温を変化させることにより作用すると考えられています(詳しくは質問4を参照してください)。

  • がん治療を対象に実施された鍼灸の基礎研究動物試験で、鍼灸には化学療法中に免疫系を補強する場合もあることが示唆されています(詳しくは質問7を参照してください)。

  • 鍼灸の効果に関する最も有力な根拠は、吐き気と嘔吐の緩和を目的とした鍼灸使用についての臨床試験から得られていますが、鍼灸は吐き気の軽減よりも嘔吐の予防に効果的であるようです(詳しくは質問8を参照してください)。

  • 鍼灸では、資格を持った施術者が、患者さんごとに新しい使い捨ての(1度だけしか使わない)針を使用して施術することが重要です(詳しくは質問9を参照してください)。

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鍼灸についての質問と解答

1.

鍼灸とはどのようなものですか。

 

  鍼灸では、体の身体機能に変化をもたらすために、鍼療法のツボと呼ばれる皮膚上の特定箇所に鍼(針)、温熱、圧迫などの治療法を用います。鍼灸の使用は、中国伝統医学(TCM)の一部をなしています。TCMは、病気の予防、診断、治療を目的として数千年間用いられてきた医学体系です。

 鍼灸は、(生命エネルギー)が経絡と呼ばれる経路の網に沿って体内を流れるという考え方に基づきます。気は人の霊的、情緒的、心理的、身体的な状態に影響を及ぼすと言われています。TCMによると、気は陰と陽という2つの力を備えています。陰と陽は相反する力であり、万物を形成するために共に作用します。陰と陽の力は、熱と寒、昼と夜、健康と病気のように、終わりのないサイクルにおいて互いに依存しあい、互いから作り出されています。全てが陰、または全てが陽という状態はなく、人間を含む万物に陰陽の両方が存在します。体の主要な器官の多くは陰陽のペアであると考えられ、このバランスが保たれていることが健康には不可欠とされています。人の陰と陽のバランスが保たれていないときに、気が滞ることがあります。滞った気は痛みや病気、その他の健康上の問題を引き起こします。TCMでは、人体の気の滞りを解消し、陰と陽のバランスを正すことで健康を回復させるために、鍼灸、食事生薬を使った療法瞑想、運動、マッサージなどが用いられます。

 米国では、鍼療法師のほとんどが、伝統中国医学に基づいて鍼灸を行っています。しかしながら、この他にも、医学的な治療に用いられ、経絡と経穴について異なった理論をもつものなど、タイプの異なる鍼灸もあります。

2.

がんに対する補完療法としての鍼灸の発祥と使用には、どのような経緯がありますか。

 

 中国で紀元前2世紀に書かれた最古の医学書と言われる書物には、医学的な問題の治療を目的とした鍼の使用に関する記述があります。鍼灸の使用は他のアジア諸国に普及し、1700年代までにはヨーロッパなど、アジア以外の他の地域にも広がりました。米国では、鍼灸は約200年間用いられています。

 米国での鍼灸の研究は1976年に始まりました。20年後、米国食品医薬品局(FDA)は、鍼療法の針医療器具として承認しました。鍼灸により様々な疾患が治療されています。がん治療では、主に以下の症状の管理に用いられています:


 がん患者さんに対し、鍼灸は補完療法として、従来療法(標準治療)に追加する形で使用されます。

3.

がんの治療に鍼灸が有効であるという主張の背景にはどのような理論があるのですか。

 

 TCMによると、経穴(ツボ)という皮膚上の特定箇所に鍼灸を行うことで、気の滞りは解消(疎通)されます。経穴は経絡が体表に到る箇所にあります。人体には360以上の経穴があり、治療される各状態に特定の経穴があります。

4.

鍼灸をがん患者さんに施すと、どんな身体的効果が考えられるでしょうか。

 

 鍼灸を行うことで、神経細胞下垂体、脳各部に身体的反応が起きる可能性があります。これらの反応が起きることで、様々な身体機能を調節する蛋白ホルモン、脳内化学物質を体が分泌するようになります。このように鍼灸によって、血圧や体温に効果が現れ、免疫系の機能が活発化するとともに、エンドルフィンのように、体が本来持っている痛み止め成分を分泌されると言われています。

5.

鍼灸はどのように施術されますか。

 

 鍼灸のうちで最も知られている方法は、針を用いるものです。人の頭髪よりもやや太い使い捨てのステンレス製の針を、皮膚の経穴に刺入します(刺します)。鍼灸の施術者は、対象となっている問題の治療に用いる適切な経穴を特定します。刺入した針を回したり、速度や深さを変えながら上下に動かしたり、温めたり、微弱の電流を流したりします。針を使用しない他の鍼灸の手法もあります。

 鍼灸の技法には下記のようなものがあります:


  • 鍼治療:体の特定の部分に対応する外耳上の経穴に鍼治療用の針を刺入する療法。

  • 電気鍼灸:微弱な電流のパルスを針を通して皮膚の経穴へと通電する方法。

  • トリガーポイント鍼治療:痛みを感じる体の部分から離れた皮膚上の箇所に針を刺入する方法。トリガーポイントとは、関連痛、つまり患部における痛みではなく、神経を伝わって他の身体部位で感じる痛みに関係しています。

  • レーザー鍼治療:針の代わりに微弱のレーザー光線を用いて経穴を刺激する方法。

  • 経穴注射注射器と針を用いて、薬物ビタミン、生薬エキス、またはその他の液体を経穴から体内に注入する方法。

  • マイクロ波鍼灸:針に取り付けたマイクロ波装置を用いて、経穴にマイクロ波放射を行う方法。

  • 指圧マッサージ療法の一種で、手指で経穴を押す方法。指圧は、がん患者さんにおいて、痛み、吐き気、嘔吐といった症状を緩和させるために用いられます。

  • :温熱療法の一種であり、体の上でハーブ(もぐさ)を燃焼させることにより、経穴を通じて経絡を温めて血液や気の流れを増加させる方法。もぐさは皮膚上に直接乗せたり、皮膚に数分間近づけたり、針の柄に取り付けたりします。経穴を温めるために、赤外線ランプが用いられる場合もあります。

  • 吸角法:ガラス製の丸いカップを熱し、カップの口を下にして体の治療箇所に置き、カップを真空状態にして皮膚に吸着させる方法。吸角法は血液と気の流れを増やすために用いられます。毛穴を開き、毒素を体から除去することができると考えられています。

6.

鍼灸の施術中、患者さんにはどのような感覚が生じますか。

 

 施術を受けている患者さんは、得気と呼ばれる刺入感と、それに伴う重だるさ、しびれ、チクチク感を覚えます。

7.

鍼灸を用いた前臨床研究(基礎研究や動物での研究)は実施されていますか。

 

 がんとその副作用を治療するための鍼灸使用に関する科学的研究は、近年始まったばかりです。基礎研究動物試験の結果から、鍼灸を行うことで化学療法によって引き起こされる嘔吐を減らすことができ、化学療法中の免疫系の機能を強化するのに役立つ可能性があることが示唆されています。動物での研究によると、がんの疼痛緩和に電気鍼灸の使用が支持されています。基礎研究や動物試験では、神経細胞を刺激して血液中へのホルモン放出を起こさせる効果や、血球数を増やしたり、リンパ球ナチュラルキラー細胞の活性を高めたりといった免疫機能を刺激する効果など、がん治療における鍼灸の有効性についても調べられています。

8.

鍼灸の臨床試験(ヒトに対する研究試験)は行われていますか。

 

  1997年、米国国立衛生研究所(NIH)は、がん関連の症状とがん治療の副作用を緩和する補完医療としての鍼灸の安全性と有効性の評価を開始しました。

 がんに対する鍼灸の研究は、中国をはじめ、イギリス、フランス、オーストラリア、日本、スウェーデンの各国でも実施されました。


  • 免疫系に対する鍼灸の効果についての研究

     ヒトの免疫系に対する鍼灸の効果に関する研究が実施され、鍼灸が免疫反応を改善する可能性が示唆されています。


  • 痛みに対する鍼灸の効果についての研究

     いくつかの臨床研究において、鍼灸によって一部のがん患者さんの痛みが軽減しました。ある研究では、鍼灸による治療を受けた患者さんのほとんどが、痛みを緩和する薬物の服用をやめる、または用量を減らすことができました。これらの研究から得られた知見は、研究の計画や規模の面で不十分な点があるため、有力な根拠とはみなされていません。鍼灸が痛みに及ぼす影響を明確に示すには、厳密な科学的方法を用いた研究が必要です。

     手術後の痛みに関する5件のランダム化臨床試験のうち4件で、鍼灸により痛みが軽減されました。これらの試験は対象となった患者さんの数が少なく、追加治療について不明であり、いくつかの試験ではプラセボ治療が行われていませんでした。全ての疑問に答を出すには、さらなる試験が必要です。


  • アロマターゼ阻害薬による筋肉痛や関節痛に対する鍼灸の効果についての研究

      アロマターゼ阻害薬は、ホルモン依存性乳がん閉経後の女性に対するホルモン療法の1つで、筋肉痛や関節痛を引き起こす場合があります。

     アロマターゼ阻害薬による痛みに対する鍼灸については、以下の研究があります:


    • 4件のランダム化比較試験で、これらの症状の軽減に関して真の鍼灸と鍼による鍼灸とが比較されました。偽鍼による鍼灸では、針を深部まで刺し込まず、刺す場所も別の部位を使用します。4件の試験全てにおいて、真の鍼灸にも偽鍼による鍼灸にも副作用はみられませんでした。うち1件の試験では、真の鍼灸の方が偽鍼による鍼灸よりも、関節痛と筋肉痛を和らげる効果がはるかに大きいことが示されましたが、他の3件の試験ではそうした効果はみられませんでした。また、1件の試験では、後で治療を受けるとして待機していた対照群の患者さんよりも、真の鍼灸を受けた患者さんにおいて大きく痛みが軽減されたという結果が得られました。

    • 1件の観察研究では、鍼灸が安全であること、真の鍼灸と偽鍼による鍼灸のいずれも患者さんの助けになること、真の鍼灸と偽鍼による鍼灸はどちらも標準治療より痛みを軽減する可能性があることが示されました。

    • 17,922人の患者さんについて検討した1件のレビューでは、真の鍼灸が偽鍼による鍼灸に比べて大幅に痛みを軽減したことが報告されました。

     現在実施中のあるランダム化臨床試験で、アロマターゼ阻害薬により筋肉痛と関節痛が生じている乳がん生存者228人を対象に、真の鍼灸、偽鍼による鍼灸、標準治療の比較検討が行われています。


  • がん治療により引き起こされる吐き気と嘔吐に対する鍼灸の効果についての研究

     鍼灸の効果に関する最も有力な根拠は、吐き気と嘔吐の緩和を目的とした鍼灸使用についての臨床試験から得られています。

      化学療法、手術、つわりによる吐き気と嘔吐:


    • 2013年のあるレビューで、41件のランダム化比較試験を検討したところ、化学療法による吐き気と嘔吐の補完療法として鍼灸が有用であったことが判明しました。

    • 1987~2003年に発表された11件のランダム化臨床試験を対象とした他のレビューでは、化学療法を受けた鍼灸群の患者さんには嘔吐が少なかったという結果が得られました。これらの試験の一部は、対照として偽鍼による鍼灸群を設定していませんでした。

    • 複数の試験を比較した結果からは、使用する鍼療法のツボにより、化学療法が原因で生じる吐き気を軽減する効果が異なることが示唆されています。

      放射線療法により生じる吐き気と嘔吐:


    • 吐き気と嘔吐を予防するために、真の鍼灸または偽鍼による鍼灸を受けた患者さんと標準治療のみを受けた患者さんとが比較されました。この研究から、真の鍼灸または偽鍼による鍼灸のどちらを受けた患者さんも、吐き気や嘔吐の頻度が標準医療を受けた患者さんより少なかったことが明らかになりました。


  • がん治療を受けている患者さんのほてりに対する鍼灸の効果についての研究

      乳がんの女性や前立腺がんの男性に対するホルモン療法では、ほてりが生じる場合があります。


    • 6件のランダム化臨床試験で、乳がん生存者のほてりの予防を目的とした鍼灸の使用が調査されました。これらの試験では、鍼灸が安全であること、ならびにほてりを有意に減少させることが示されました。真の鍼灸が偽鍼による鍼灸より効果が高いかどうかは、これらの試験では不明です。

    • 2015年の電気鍼灸に関するランダム化試験では、ほてりがみられる乳がん生存者を電気鍼灸、偽の鍼灸、投薬、プラセボの4つの治療群に割り当てました。試験では、偽鍼による鍼灸がプラセボと比較してどのくらい効果があるかを検討し、全ての群間でほてりの緩和効果を比較しました。その結果、偽鍼による鍼灸は投薬またはプラセボよりもはるかに効果的であり、電気鍼灸と偽鍼による鍼灸は投薬に比べて緩和効果が長時間持続することが明らかになりました。

    • 数件の試験は、鍼灸がアンドロゲン除去療法を受けている前立腺がんの患者さんのほてりを緩和する可能性があることを報告しています。


  • がん治療を受けている患者さんの疲労に対する鍼灸の効果についての研究

     疲労はがん患者さんに多くみられる症状であり、化学療法や放射線療法の副作用として頻繁に発生します。


    • 数件のランダム化臨床試験で、がん関連疲労の軽減を目的とした鍼灸の使用が調査されました。これらの試験では、鍼灸が標準治療単独と比較して疲労を有意に改善したことが示されました。真の鍼灸が偽鍼による鍼灸より効果が高いかどうかは不明です。


  • がん治療を受けている患者さんの口腔乾燥(ドライマウス)に対する鍼灸の効果についての研究

     複数の臨床試験で、上咽頭がん頭頸部がんの患者さんを対象として、放射線療法により生じた口腔乾燥症(ドライマウス)の治療と予防に鍼灸が及ぼす効果が検証されました。


    • 2件の試験で、放射線療法を受けている患者さんの口腔乾燥症に対する治療法として、鍼灸と標準治療が比較されました。その結果、いずれの研究でも、放射線療法中に鍼灸による治療を受けた患者さんでは症状の出現が少なく、唾液量が多かったことが示されました。

    • 放射線療法が原因で生じた口腔乾燥症の治療に関して鍼灸と標準治療を比較した研究では、鍼灸の方が標準治療よりも口腔乾燥症の症状をよく改善しました。

    • 2件のランダム化比較試験で、口腔乾燥症の予防と治療に関して真の鍼灸と偽鍼による鍼灸とが比較されました。これらの試験では、真の鍼灸も偽鍼による鍼灸も唾液量を増加させることが示されました。

    • 1件の予防研究で口腔乾燥症に対する鍼灸と標準治療が比較され、鍼灸治療を受けた患者さんは標準治療群よりも症状の報告が少なく、唾液量も多かったことが示されました。

    • 口腔乾燥症に対する鍼灸の長期効果を調べた1件の試験では、治療前に比べて6ヵ月時点の患者さんの唾液量が増加しました。また、3年が経過した時点でみると、追加の鍼灸治療を受けた患者さんの唾液量は、鍼灸治療を継続しなかった患者さんよりも多くなっていました。

     他にも実施中の試験があります。


  • 抗がん剤により引き起こされる末梢神経障害に対する鍼灸の効果についての研究

      末梢神経障害は、体の様々な部位に痛み、しびれ、刺痛、腫れ、筋力低下が生じる神経の問題です。通常は手や足から始まり、時間とともに悪化します。末梢神経障害は化学療法などの治療や病態が原因で発生することがあります。ときには、がん治療を弱めるか中止しなければならないほどに重症化します。治療せずに放置すると、患者さんの身体動作が制限され、生活の質が低下します。

     化学療法や他の抗がん剤による末梢神経障害の治療における鍼灸使用は、数件の小規模な研究で検討されています。これらの研究のほとんどで鍼灸は痛みを軽減し、神経機能を改善しました。しかし、1件のランダム化対照試験で、鍼灸はプラセボより高い効果を上げませんでした。より大規模なランダム化対照試験が必要です。


  • 乳がん患者さんのリンパ浮腫に対する鍼灸の効果についての研究

      リンパ浮腫リンパ液組織に貯留し、腫れを起こす病態です。腕や脚のリンパ管が塞がったり、傷ついたり、手術で除去されたりすると発生することがあります。リンパ浮腫は多くの乳がん患者さんにとって生涯の懸念になっています。

     これまでに発表された多数の症例報告と研究では、鍼灸が安全であること、ならびに腕や脚に生じたリンパ浮腫の腫れを縮小し、症状を緩和できる可能性があることが示されています。1件のランダム化臨床試験では、鍼灸がリンパ浮腫の悪化を防いだものの、腫れや症状を和らげることはありませんでした。さらなる研究が必要です。


  • がんの手術により引き起こされるイレウスに対する鍼灸の効果についての研究

     がんの手術後に、消化管の筋組織が機能せず、食物が消化管を通過できなくなるイレウスという病態が発生することがあります。3件のランダム化臨床試験でこの病態に対する鍼灸の使用が調査され、いくつかの異なる結果が得られました:


    • 鍼灸と標準治療を比較した1件の試験によると、鍼灸は有効ではありませんでした。

    • 1件の試験で真の鍼灸と偽鍼による鍼灸を比較したところ、2つの間に差はみられませんでした。

    • 真の鍼灸、偽鍼による鍼灸、鍼灸なしの治療法を比較する1件の試験では、真の鍼灸がイレウスの継続期間を短縮したことが示されました。


  • 睡眠障害に関する鍼灸の効果についての研究

     ある試験で鍼灸とフルオキセチンという薬物を比較したところ、鍼灸は抑うつの緩和と睡眠の改善により高い効果を発揮しました。別の研究では、鍼灸が標準治療よりもわずかに睡眠を改善する効果が高かったことが示されました。さらなる研究が必要です。


  • がんの症状やがん治療による副作用に対する鍼灸の効果についての研究

     がんの患者さんを対象とした鍼灸の臨床観察や臨床試験のほとんどは、体重減少、咳、喀血、発熱、不安、抑うつ、直腸炎、会話障害、食道閉塞、しゃっくりなどのがんの症状やがん治療によって生じる副作用に対して、鍼灸の効果を検証することを目的としています。複数の研究が、多くの患者さんにおいて鍼灸治療が症状を緩和する、または悪化を防止することを示しています。


9.

鍼灸による副作用やリスクは報告されていますか。

 

 ごく少数の合併症が報告されています。滅菌状態(菌がいない状態)でない針の使用や間違った箇所への刺入、患者さんの動作、針の欠損といった原因で問題が生じます。問題には、治療中のひりひりする感覚や痛み、疲労感、頭のふらつき、眠気、感染などがあります。化学療法や放射線療法は体の免疫系の働きを弱めるため、がん患者さんに鍼灸治療を施す場合は、完全に清潔な針を用いるべきです。各患者さんに対し新しい使い捨ての(一回だけ用いる)針を用いて施術を行う有資格者から治療を受けることが重要です。

10.

米国食品医薬品局(FDA)は、米国内におけるがん治療での鍼灸の使用を承認していますか。

 

 FDAは1996年、有資格の施術者が使用するための鍼灸用の針を承認しました。FDAは、滅菌された無毒の針の使用を義務付けるとともに、資格をもつ施術者専用の使い捨ての針である旨を明記することを要求しています。

 40以上の州およびワシントン市には、鍼治療を規制する法律があります。The National Certification Commission for Acupuncture and Oriental Medicine(www.nccaom.org)は、鍼灸および中国伝統医学(TCM)の施術者を認定する組織です。米国ではほとんどの州でこの認定が必要です。

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現在実施中の臨床試験

NCI支援のがん臨床試験リストから、現在患者さんの登録を行っている鍼療法鍼治療類似の経皮的電気神経刺激電気鍼療法、および指圧療法のがんCAM臨床試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。

NCIのウェブサイトから臨床試験についての一般的な情報をご覧いただけます。

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本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、がん患者さんに対する治療での鍼灸の使用に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Integrative, Alternative, and Complementary Therapies Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Integrative, Alternative, and Complementary Therapies Editorial Board. PDQ Acupuncture. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: http://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/cam/patient/acupuncture-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389264]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。

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補完代替医療(CAM)についての一般的な情報

補完代替医療(CAM)は、統合的医療とも呼ばれ、ヒーリングに関する原理やアプローチ、治療法などを幅広く意味します。従来の治療に加えて実施する場合は補完療法と呼ばれ、また、従来の治療の代わりに実施する場合は、よく代替療法と呼ばれます(従来の治療とは医学界で広く受け入れられ、かつ主流となっている治療を意味します)。どのように用いられるかによって、補完療法とみなされる場合と、代替療法とみなされる場合があります。補完代替療法は、病気の予防やストレスの軽減、副作用や症状の予防と軽減、そして疾患の管理や治癒を目的として用いられます。

がんの従来の治療とは異なり、補完代替療法は保険が適用されないことが多くあります。患者さんは加入保険会社に、補完代替医療が保険の適用対象となっているかどうかを確認することをお奨めします。

補完代替医療の中には、標準治療を妨げたり、従来の治療と併用した場合に有害となりうるものがあるため、補完代替療法を検討されているがん患者さんはどんな治療法でも必ず、担当医や看護師、薬剤師と相談して意思決定を行ってください。

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補完代替医療(CAM)のアプローチの評価

補完代替医療の治療についても、従来の治療の評価と同様、厳格な科学的評価を行うことが重要です。米国国立がん研究所および米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)は医療施設において、がんに対するCAM療法の評価を行うための臨床試験(調査研究)を数多く主催しています。

一般的に、がんの治療における従来のアプローチは、多数の患者さんを対象とした臨床試験の実施など、厳格な科学的プロセスを経て、安全性や有効性が検討されています。それに比べ、補完代替医療の安全性や有効性についてはあまり知られていません。厳格な評価を経たCAM療法はごくわずかです。はじめは純粋に代替アプローチとみなされていた少数のCAM療法が、治癒を求めるものではなく、患者さんをより楽にし回復を早める手助けとなる補完医療として、がんの治療で用いられつつあります。1つの例が鍼療法です。1997年11月に開催された米国国立衛生研究所(NIH)の専門家委員会の会合によると、鍼療法は化学療法に関連した吐き気や嘔吐、そして手術に関連した疼痛の管理に有効であることがわかりました。対照的に、レートリルの使用などのいくつかのアプローチは、検討の結果、無効であるか、または有害となりうることがわかりました。

1991年に始まったNCIのBest Case Series Programは、臨床で用いられているCAMアプローチの評価を行うプログラムの1つです。このプログラムはNCIのがん補完代替医療オフィス(OCCAM)の監視下で進められています。がん代替医療を行う医療専門家は、患者さんのカルテや関連資料をOCCAMに提出します。OCCAMではそれらの資料を厳密に精査し、NCI主導の研究を正当化するであろう治療アプローチについては、フォローアップ研究の戦略を立てています。

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補完代替医療(CAM)について医療提供者に質問すべきこと

補完代替療法を受けることを考えている場合、患者さんは主治医などの医療提供者に次の質問を行ってください。


  • どのような副作用が予想されますか。

  • この治療に伴うリスクは何ですか。

  • 既知の有益性はそれらのリスクに勝っていますか。

  • この治療からどのようなメリットが期待できますか。

  • この治療は従来の治療の妨げになりますか。

  • この治療は臨床試験の一部として実施されますか。

  • もしそうなら、誰がその試験を主催しますか。

  • この治療には健康保険が適用されますか。

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補完代替医療(CAM)についてさらに知るには

米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)

米国国立衛生研究所(NIH)の国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、補完代替医療の研究および評価を促進し、医療専門家や一般の方を対象に様々なアプローチについての情報を提供しています。


    NCCIH Clearinghouse
    Post Office Box 7923 Gaithersburg, MD 20898–7923
    電話:+1-888-644-6226 (フリーダイヤル)
    テレタイプライター付の電話(耳が聞こえないか聴覚に障害のある方用):+1-866-464-3615
    E-mai:info@nccih.nih.gov
    ウェブサイト:https://nccih.nih.gov

CAM on PubMed

NCCIHおよびNIH国立医学図書館(NLM)は共同でCAM on PubMedを開発し、CAMに関連するジャーナルの記載内容を無料かつ簡単に検索できる機能を提供しています。NLMの図書目録データベースのサブセットとして、CAM on PubMedには様々な科学ジャーナルのCAMに関連する論文から、230,000を超える文献や抄録が登録されています。このデータベースはさらに、1,800を超えるジャーナルにリンクしており、ユーザーが論文全文を参照できるようになっています(論文全文を参照するには、購読料などの費用が発生する場合があります)。

がん補完代替医療オフィス

NCIのがん補完代替医療オフィス(OCCAM)は、補完代替医療(CAM)の分野におけるNCIの活動をコーディネートしています。OCCAMはCAMのがん研究をサポートし、がんに関連するCAMについての情報を、NCIのウェブサイトを通して医療提供者や一般の方に提供しています。

米国国立がん研究所(NCI)のがん情報サービス

米国にお住まいの方は、NCIがん情報サービスフリーダイヤル+1-800-4-CANCER(+1-800-422-6237)に電話をすることができます(月曜日から金曜日の午前8時から午後8時まで)。訓練を受けたがん情報スペシャリストが質問にお答えします。

食品医薬品局

食品医薬品局(FDA)は、薬物や医療機器を規制し、それらの安全性と有効性を確保しています。


    食品医薬品局
    10903 New Hampshire Avenue
    Silver Spring, MD 20993
    電話:+1-888-463-6332 (フリーダイヤル)
    ウェブサイト:http://www.fda.gov

連邦取引委員会

連邦取引委員会(FTC)は消費者保護法を施行しています。FTCから入手可能な出版物は以下の通りです:


  • Who Cares: Sources of Information About Health Care Products and Services

  • Fraudulent Health Claims: Don't Be Fooled


    消費者センター
    連邦取引委員会
    600 Pennsylvania Avenue, NW
    Washington, DC 20580
    電話:+1-877-FTC-HELP(+1-877-382-4357)(フリーダイヤル)
    テレタイプライター付の電話(耳が聞こえないか聴覚に障害のある方用):202-326-2502
    ウェブサイト:http://www.ftc.gov
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