患者さん向け メルケル細胞がんの治療(PDQ®)

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このPDQがん情報要約では、メルケル細胞がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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メルケル細胞がんについての一般的な情報

メルケル細胞がんは、皮膚組織の中に悪性(がん)細胞ができる非常にまれな疾患です。

メルケル細胞は、皮膚の最も外側の層に存在します。この細胞は、触覚を伝える神経の末端部に非常に接近して存在しています。メルケル細胞がんは、「皮膚の神経内分泌がん」、「trabecular cancer」とも呼ばれ、メルケル細胞が際限なく増殖することによって発生する非常にまれな種類の皮膚がんです。メルケル細胞がんはほとんどの場合、日頃から日光に曝されている部位(特に頭部と頸部)や、腕、脚、体幹から発生してきます。

メルケル細胞を含む皮膚の解剖図:図は正常な皮膚の解剖図であり、表皮、真皮、毛包、汗腺、毛幹、静脈、動脈、脂肪組織、神経、リンパ管、油腺、皮下組織が含まれる。四角で囲まれた拡大図は、静脈や動脈が通っている真皮と、その上の表皮とメルケル細胞を示している。神経はメルケル細胞に接続している。

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表皮、真皮、皮下組織を示す皮膚の解剖図。メルケル細胞は表皮底部の基底細胞層にあり、神経と接続しています。

メルケル細胞がんは増殖のペースが速く、早の段階から転移を起こす傾向があります。通常はまず周辺のリンパ節に転移し、続いて遠く離れた部位にあるリンパ節や皮膚、、骨などの臓器に転移していきます。

メルケル細胞がんとは、皮膚がんによる死因として黒色腫の次に多くみられるがんです。

メルケル細胞がんの発生リスクに影響を及ぼす要因に、日光への曝露と免疫力の低下があります。

疾患が発生する危険性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。リスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。メルケル細胞がんのリスク因子には以下のものがあります:

メルケル細胞がんは通常、痛みを伴わない単一のしこりとして皮膚の露光部に発生します。

これに加え、別の皮膚の変化がメルケル細胞がんにより引き起こされることがありますが、その他の病態によって生じることもあります。皮膚に何らかの変化がみられる場合は担当の医師にご相談ください。

メルケル細胞がんは通常、以下のような単一のしこりとして皮膚の露光部に発生してきます:

メルケル細胞がんの診断には、皮膚を調べる検査法が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

予後と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:

予後は皮膚内での腫瘍の増殖深度にも左右されます。

メルケル細胞がんの病期

メルケル細胞がんの診断がついた後には、がん細胞が皮膚以外の部位に転移していないかを明らかにするために、さらに検査が行われます。

他の部位へのがんの転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。

病期分類の過程では以下のような検査法や手技が用いられます:

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、メルケル細胞がんが肝臓に転移した場合、肝臓にできたがん細胞は、実際はメルケル細胞のがんです。この疾患は転移性メルケル細胞がんであり、肝がんではありません。

メルケル細胞がんでは以下のような病期が用いられます:

図は、様々な腫瘍の大きさをセンチメートル(cm)で表した円形と豆(1cm)、ピーナッツ(2cm)、ブドウ(3cm)、クルミ(4cm)、ライム(5cm)、卵(6cm)、桃(7cm)、グレープフルーツ(10cm)とを比較している。10cmと4インチのそれぞれを表す目盛りも示されている。

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腫瘍の大きさはセンチメートル(cm)やインチで表されることがよくあります。次のような身近な食べ物と比較して、腫瘍の大きさをcm単位で表すことができます:豆(1cm)、ピーナッツ(2cm)、ブドウ(3cm)、クルミ(4cm)、ライム(5cmまたは2インチ)、卵(6cm)、桃(7cm)、グレープフルーツ(10cmまたは4インチ)。

0期(上皮内がん)

0期では、異常なメルケル細胞が皮膚の最も外側の層に認められます。これらの異常細胞がんになって周辺の正常な組織に拡がる場合があります。

I期

I期では、腫瘍の大きさが2cm以下です。

II期

II期メルケル細胞がんはIIA期とIIB期に分けられます。

III期

III期メルケル細胞がんはIIIA期とIIIB期に分けられます。

IIIA期では以下の条件のいずれかが満たされます:

IIIB期では、腫瘍の大きさを問わず、以下の条件のいずれかが満たされます:

IV期

IV期では、腫瘍原発腫瘍から離れた場所の皮膚に転移しているか、または肝臓、骨、といった体の他の部位に転移しています。

メルケル細胞がんは治療後に再発する(再び現れる)ことがあります。

再発は、皮膚に起こることもあれば、リンパ節や皮膚以外の部位に起こることもあります。メルケル細胞がんの患者さんでは再発がよくみられます。

治療選択肢の概要

メルケル細胞がんの患者さんには様々な治療法が存在します。

メルケル細胞がんの患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

標準治療として以下の4種類が用いられています:

手術

メルケル細胞がんの治療には以下のような外科的手技が用いられます:

手術の際に確認できる全てのがんを切除した後に、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させることを目的として、術後に化学療法放射線療法が実施される場合があります。このようにがんの再発リスクを低減させるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんのある領域に放射線を照射する方法です。メルケル細胞がんの治療に用いられるほか、症状を和らげ生活の質(QOL)を高める緩和療法としても用いられます。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。

免疫療法

免疫療法は、患者さんの免疫系を利用して、がんと戦う治療法です。体内で生産された物質や製造ラボで合成された物質を用いることによって、体が本来もっているがんに対する抵抗力を高めたり、誘導したり、回復させたりします。このようながんの治療法は生物学的療法の一種です。

T細胞などの免疫細胞や一部のがん細胞では、その表面にチェックポイント蛋白と呼ばれる免疫反応を抑止する蛋白が存在しています。これらの蛋白を大量に持つがん細胞は、T細胞による攻撃を受けず殺傷されません。免疫チェックポイント阻害薬はこれらの蛋白を阻害し、T細胞ががん細胞を殺傷する働きを促します。

免疫チェックポイント阻害薬療法には次の2種類があります:

免疫チェックポイント阻害薬:左図はPD-L1(腫瘍細胞上)とPD-1(T細胞上)という蛋白間の結合を示しており、この結合によってT細胞が体内の腫瘍細胞を殺傷する働きが抑制されている。腫瘍細胞の抗原とT細胞の受容体も示されている。右図は免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1と抗PD-1)がPD-L1とPD-1の結合を阻害し、T細胞が腫瘍細胞を殺傷できる状態になっているところを示している。

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免疫チェックポイント阻害薬。腫瘍細胞上のPD-L1とT細胞上のPD-1などのチェックポイント蛋白は、免疫反応の抑制に関与します。PD-L1とPD-1が結合すると、T細胞による体内の腫瘍細胞の殺傷は抑制されます(左図)。免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1または抗PD-1)でPD-L1とPD-1の結合を阻害すると、T細胞が腫瘍細胞を殺傷できるようになります(右図)。

詳しい情報については、メルケル細胞がんに対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

メルケル細胞がんの治療は副作用を引き起こすことがあります。

がん治療による副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんの再発(再び現れること)の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

I期とII期のメルケル細胞がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

I期II期メルケル細胞がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

III期のメルケル細胞がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

III期メルケル細胞がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

IV期のメルケル細胞がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

IV期メルケル細胞がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発メルケル細胞がんの治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

再発メルケル細胞がんの治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

メルケル細胞がんについてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供しているメルケル細胞がんに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:

米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、メルケル細胞がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

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本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Merkel Cell Carcinoma Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/skin/patient/merkel-cell-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389202]

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