
肝臓は体内で最も大きな臓器のひとつです。4つの葉から構成され、胸郭の内部に位置し、右上腹部の空間の大部分を占めています。肝臓は数多くの重要な機能を果たしており、具体的には以下のものがあります:
| 肝臓の解剖図。肝臓は、上腹部の胃、腸、胆嚢、膵臓の近くに位置しています。肝臓には4つの葉が存在します。肝臓の前面に2つの葉があり、後面に2つの小さな葉(示されていない)があります。 |
10代まで(19歳まで)の子供さんに肝がんが発生するのはまれです。小児肝がんの代表的なものには次の2種類があります:
あまり一般的ではない以下の2種類の小児肝がんに対する治療法も、本要約で扱っています:
類上皮型血管内皮腫は、まれな血管のがんで、肝臓やその他の臓器に発生します。(詳しい情報については、小児軟部肉腫の治療に関するPDQ要約の血管内皮腫をご覧ください)。
本要約は、原発性肝がん(肝臓に発生したがん)の治療法について記載されています。転移性肝がん(他の部位から発生したがん細胞が肝臓に転移してできたがん)の治療法については、本要約では扱われていません。原発性肝がんは成人にも小児にも発生します。しかし、小児の場合の治療法は成人の場合のものとは異なります。(詳しい情報については、成人原発性肝がんの治療に関するPDQ要約をご覧ください。)
特定の疾患や障害をもつ小児では、小児肝がんの発生リスクが高くなります。疾患が発生する可能性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。リスクが高いと思う人は、そのことについて担当の医師と話し合ってください。肝芽腫のリスク因子には以下のものがあります:
肝細胞がんのリスク因子には以下のものがあります:
腫瘍が大きくなるほど症状が多くみられるようになります。ただし、別の病態が原因で同様の症状が現れてくる場合もあります。以下のような症状がある場合は医師の診察を受けてください:
以下のような検査法や手技が用いられます:
予後(回復の見込み)と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:
予後を左右する因子には以下のようなものもあります:
小児肝がんは、腫瘍が小さくて手術によって完全に切除できる場合は、治癒も望めます。肝芽腫では、肝細胞がんと比べて、完全摘出が可能な場合が多くなります。
がんの肝臓内での拡がりや他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。
病期分類の過程では以下のような検査法や手技が用いられます:
小児肝がんでは、以下の2つの病期分類システムが使用されています:
肝臓を縦の線で4つの区域に分けています。
PRETEXT 1| PRETEXT 1.肝臓の1つの区域のみにがんが認められます。そこと隣接している肝臓の3つの区域にはがんがありません。 |
PRETEXT 1では、肝臓の1つの区域のみにがんが認められます。そこと隣接している肝臓の3つの区域にはがんがありません。
PRETEXT 2| PRETEXT 2.肝臓の1つないし2つの区域にがんが認められます。そこと隣接している肝臓の2つの区域にはがんがありません。 |
PRETEXT 2では、肝臓の1つないし2つの区域にがんが認められます。そこと隣接している肝臓の2つの区域にはがんがありません。
PRETEXT 3| PRETEXT 3.肝臓の3つの区域にがんが認められ、1つの区域にはがんが認められません。あるいは、肝臓の2つの区域にがんが認められ、そこと隣接している肝臓の2つの区域にはがんが認められません。 |
PRETEXT 3では、以下の条件のいずれかが満たされます:
| PRETEXT 4.4つの区域のすべてにがんが認められます。 |
PRETEXT 4では、肝臓の4つの区域のすべてにがんが認められます。
手術後には以下の病期分類が用いられます:I期では、腫瘍が肝臓にしか認められず、がんのすべてが手術によって摘出されています。
II期II期では、腫瘍が肝臓にしか認められず、顕微鏡でなくても確認できるがんのすべてが手術によって摘出されています。少量のがんが肝臓内に残存していますが、顕微鏡でないと確認できないくらいか、その腫瘍細胞が、手術前ないし手術中に腹部に漏れ出していた可能性があります。
III期III期では以下の条件が満たされます:
体内でのがんの拡がり方には以下の3種類があります:
がん細胞が原発腫瘍(最初にできた腫瘍)を離れ、リンパ液や血液を介して体内の他の部位に移動すると、新たな腫瘍(続発性腫瘍)が形成されることがあります。このプロセスは転移と呼ばれます。続発性(転移性)腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、乳がんが骨に転移する場合、その骨のがん細胞は、実際は乳がんの細胞です。この疾患は転移性乳がんであり、骨がんではありません。
小児肝がんの患者さんは様々な治療を受けることができます。そのなかには標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、がん患者さんのために、既存の治療法の改善に役立てたり、新しい治療法に関する情報を得たりするための調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。
小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討すべきです。ただし臨床試験のなかには、まだ治療を開始していない患者さんだけを対象としたものもあります。
肝がんの子供さんは、必ずこのまれな小児がんの治療に精通した医療提供者チームに治療計画を立ててもらってください。この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が統括します。小児腫瘍医は、小児肝がんの治療に精通し、特定の医療分野を専門とした他の医療提供者と協力しながら治療に取り組んでいきます。さらに、肝臓 手術の経験豊富な小児外科医が治療に参加することが特に重要です。他にも以下のような専門家が治療に参加することがあります:
がん治療による副作用のうち、がんの治療中または治療後に初めて認められ、数ヵ月ないし数年間続くものは、晩期障害と呼ばれます。がん治療の晩期障害には以下のものがあります:
晩期障害には治療や制御することが可能なものもあります。がん治療によって子供さんに発生する可能性がある晩期障害について、担当の医師とよく相談することが大切です。(詳しい情報については、PDQの小児がん治療の晩期障害に関する要約をご覧ください)。
標準治療としては、以下の5種類が用いられています:可能な場合は、手術によるがんの摘出が行われます。
採用する手術の種類に影響するいくつかの因子として、以下のものがあります:
腫瘍を小さくして摘出しやすくするために、手術の前に化学療法を行うこともあります。このような治療は術前補助療法と呼ばれます。手術の際に医師が確認できるがんをすべて切除した場合でも、残っているがん細胞をすべて死滅させるために、手術後に化学療法または放射線療法を受ける患者さんもおられます。がんが再発するリスクを抑えるために手術の後に行う治療は、術後補助療法と呼ばれます。
注意深い経過観察注意深い経過観察とは、症状の出現や変化がみられるまで、治療を一切行わずに患者さんの状態を注意深く監視していくことです。
化学療法化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脳脊髄液内や臓器内、あるいは腹部などの体腔内に薬剤を直接注入する化学療法では、その領域にあるがん細胞に薬が集中的に作用します(局所化学療法)。
肝動脈(肝臓に血液を供給している主要な動脈)化学塞栓療法は局所化学療法のひとつで、小児肝がんの治療に用いられます。この方法では、カテーテル(細い管)を介して抗がん剤を肝動脈の中に注入します。その薬剤には動脈を詰まらせる物質が混ぜられていて、これによって腫瘍への血液の供給が遮断されます。その結果、抗がん剤の大半が腫瘍の近くにとどまり、体内の他の部位に送られる抗がん剤の量が少なくなります。動脈を遮断するのに使用する物質の種類に応じて、動脈の閉塞は一時的なものにも永久的なものにもできます。腫瘍の増殖に必要となる酸素や栄養素が供給されないようになります。一方で肝臓への血液供給は、胃や腸から血液を運んでくる肝門脈によって維持されます。
複数の抗がん剤を用いる治療法は併用化学療法と呼ばれます。化学療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。
放射線療法放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。放射線療法には2種類のものがあります。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、放射性物質を針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの中に封入し、それをがん組織の内部または周辺に直接留置する方法です。放射線療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。
経皮的エタノール注入経皮的エタノール注入は、がん治療法のひとつで、がん細胞を殺傷するために、細い針を用いてエタノール(アルコール)を腫瘍内に直接注入します。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。本項では、臨床試験で研究されている治療について説明しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
標的療法標的療法とは、正常な細胞には害を及ぼすことなく、特定のがん細胞だけを認識し攻撃する性質をもった薬物やその他の物質を用いる治療法です。血管新生阻害薬は標的療法の一種で、小児肝がん治療の分野で研究されています。血管新生阻害薬は、新たな血管の成長を阻止する物質です。がん治療における血管新生阻害薬は、腫瘍の増殖に必要となる新たな血管の成長を妨げます。
患者さんは臨床試験への参加を考えてもよいでしょう。患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。
今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。
患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。
患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。
臨床試験は米国各地で行われています。詳しくは、治療選択肢のセクションにある現在進行中の治療臨床試験へのリンクを参照してください。そこで検索された情報はNCIの臨床試験一覧のものです。
フォローアップ検査が必要となることもあります。がんの診断や病期判定のために実施される検査のなかには、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。これはときに再病期分類と呼ばれます。
治療が終ってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんの再発(再び現れること)の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。
それぞれの治療のセクションには現在実施中の臨床試験の一覧へのリンクが張られています。がんの種類や病期によっては、臨床試験の掲載が1件もない場合もあります。ここに掲載されていない臨床試験でご自身に適したものがないかは、担当の医師にご確認ください。
I期とII期の肝芽腫に対しては、以下の治療法が考えられます:
III期の肝芽腫に対しては、以下の治療法が考えられます:
IV期の肝芽腫に対しては、以下の治療法が考えられます:
I期とII期の肝細胞がんに対しては、以下の治療法が考えられます:
III期の肝細胞がんとPRETEXT 4期の肝細胞がんに対しては、以下の治療法が考えられます:
手術後の病期がIV期の肝細胞がんに対しては、併用化学療法を行って腫瘍を小さくした後に、手術で腫瘍を可能な限り摘出する治療法が考えられます。
肝 未分化 胎児性 肉腫に対しては、以下の治療法が考えられます:
乳児性肝絨毛がんに対しては、併用化学療法を行って腫瘍を小さくした後に、手術で腫瘍を可能な限り摘出する治療法が考えられます。
再発肝芽腫に対しては、以下の治療法が考えられます:
再発肝細胞がんに対しては、以下の治療法が考えられます:
NCIのがん臨床試験リストから、小児肝がんの現在患者さんを受け入れている米国内の臨床試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験の場所、治療のタイプ、薬剤の名前など、他の検索要素を用いて絞り込み検索を行うと、より具体的な結果が得られます。米国国立がん研究所(NCI)のホームページから臨床試験についての一般的な情報をご覧いただけます。
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For more information, U.S. residents may call the National Cancer Institute's (NCI's) Cancer Information Service toll-free at 1-800-4-CANCER (1-800-422-6237) Monday through Friday from 8:00 a.m. to 8:00 p.m., Eastern Time. A trained Cancer Information Specialist is available to answer your questions.
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