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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

小児肝がんの治療(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2016-06-30
    翻訳更新日 : 2017-02-17

PDQ Pediatric Treatment Editorial Board

 このPDQがん情報要約では、小児肝がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

 PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

小児肝がん 小児肝芽腫 小児肝細胞がん 小児肝未分化胎児性肉腫 乳児性肝絨毛がん 小児肝類上皮血管内皮腫

小児肝がんについての一般的な情報

小児肝がんは、肝臓の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

肝臓は体内で最も大きな臓器の1つです。4つのから構成され、胸郭の内部に位置し、右上腹部の空間の大部分を占めています。肝臓の多くの重要な機能のうち、主なものは以下の3つです:


  • 血液ろ過して有害物質を取り除き、それを便尿として体外に排泄できるようにする。

  • 食物中の脂肪の消化を助ける胆汁を分泌する。

  • 身体がエネルギーを得るために使用するグリコーゲン(糖質)を貯蔵する。



肝臓の解剖図:図は、肝臓前面の右葉と左葉、胆管、胆嚢、胃、脾臓、膵臓、結腸、小腸を示す。肝臓の後面にある2つの葉は示されていない。



肝臓の解剖図。肝臓は、上腹部の胃、腸、胆嚢、膵臓の近くに位置しています。肝臓には4つの葉が存在します。肝臓の前面に2つの葉があり、後面に2つの小さな葉(示されていない)があります。



肝がんは、小児や青年ではまれながんです。

数種類の小児肝がんがあります。

小児肝がんの代表的なものには次の2種類があります:


  • 肝芽腫:肝芽腫は最もよくみられる小児肝がんです。通常は3歳未満の小児に発生します。

     肝芽腫では、組織型顕微鏡で観察したときのがん 細胞の外見)が、がんの治療法を左右します。肝芽腫の組織型は、以下のいずれかに分類されます:


    • 胎児型。

    • 未分化小細胞型。

    • 非純胎児型、非未分化小細胞型。


  • 肝細胞がん:肝細胞がんは通常、年長児や青年に発生します。米国内よりも、肝炎 感染率が高いアジアの地域で多くみられます。

あまり一般的ではない以下の2種類の小児肝がんに対する治療法も、本要約で扱っています:


  • 肝未分化胎児性 肉腫:通常、5~10歳の小児に発生する肝がんです。肝臓全体に拡がっていることが多く、に達することもあります。

  • 乳児性肝絨毛がんは、極めてまれな腫瘍で、最初に胎盤で発生し、胎児へ拡がります。この腫瘍は、生後数ヵ月で発見されるのが普通です。また、患者さんの母親も絨毛がんと診断されることがあります。絨毛がんは妊娠性絨毛疾患の一種で、治療が必要です。絨毛がんの治療に関する情報については、妊娠性絨毛疾患の治療に関する要約をご覧ください。

類上皮血管内皮腫は、まれな血管がんで、肝臓やその他の臓器に発生します。詳しい情報については、PDQ小児軟部肉腫の治療に関する要約の類上皮血管内皮腫をご覧ください。

本要約は、原発性肝がん(肝臓に発生したがん)の治療法について書かれたものです。転移性肝がん(他の部位から発生したがん細胞が肝臓に転移してできたがん)の治療法については、本要約では扱われていません。原発性肝がんは成人にも小児にも発生します。ただし、小児に対する治療法は、成人に対する治療法と異なります。成人の治療法については、PDQの成人原発性肝がんの治療に関する要約をご覧ください。

特定の疾患や障害をもつ小児では、小児肝がんのリスクが高くなります。

病気になるリスクを増大させるものは、全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。お子さんのリスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。

肝芽腫のリスク因子には、以下の症候群病態があります:


肝細胞がんのリスク因子には、以下の症候群や病態があります:


チロシン血症または進行性家族性肝臓内疾患の患者さんは、がんの徴候症状がみられる前に肝移植を受けることがあります。

小児肝がんの徴候や症状には、腹部のしこりや痛みなどがあります。

腫瘍が大きくなると、症候や症状がみられることが多くなります。ただし、別の病態が原因で同様の徴候や症状が現れてくる場合もあります。お子さんに以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:


  • 痛みを伴うことのある腹部のしこり。

  • 腹部の腫れ。

  • 原因不明の体重減少。

  • 食欲の減退。

  • 吐き気嘔吐

小児肝がんの発見と診断、および転移の有無の確認には、肝臓と血液を調べる検査法が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:


  • 身体診察と病歴 聴取:しこりなどの通常みられない疾患の徴候に注意しながら、総体的に身体を調べる診察法。患者さんの健康習慣、過去の病歴、治療歴なども調べます。

  • 血清腫瘍マーカー試験 :採取した血液を調べて、臓器や組織、腫瘍細胞などから血液中に放出された特定の物質の量を測定する検査法。特定の物質の血中濃度が上昇している場合には、その物質と関連性のある特定の種類のがんの存在が疑われます。このような物質は腫瘍マーカーと呼ばれます。肝がんのお子さんでは、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)というホルモンの血中濃度またはα-フェトプロテイン(AFP)という蛋白の血中濃度が上昇することがあります。ただし、AFPの値は、他の種類のがんやがん以外の一部の病態(肝硬変肝炎など)でも上昇することがあります。

  • 全血球算定(CBC):血液を採取して以下の項目について調べる検査法:

  • 肝機能検査 :採取した血液を調べて、肝臓から血液中に放出される特定の物質の濃度を測定する検査法。ここで、ある物質の値が正常値よりも高く出るということは、肝臓の損傷または肝がんの徴候である可能性があります。

  • 血液生化学検査 :採取した血液を調べて、体内の臓器や組織から血液中に放出されるビリルビンまたは乳酸脱水素酵素(LDH)などの特定の物質の濃度を測定する検査法。ある物質で異常な値(正常値よりも高い値や低い値)が出るということは、疾患の徴候である可能性があります。

  • エプスタイン-バーウイルス(EBV)検査:EBVに対する抗体とEBVのDNA マーカーを調べる血液検査。これらは、EBVに感染している患者さんの血液中に認められます。

  • 肝炎検査 :採取した血液を調べて、肝炎ウイルスの断片がないか調べる検査法。

  • ガドリニウムを使用するMRI(磁気共鳴画像法):磁気、電波、コンピュータを用いて、肝臓内の精細な連続画像を作成する検査法。まずガドリニウムと呼ばれる物質を静脈内に注射します。ガドリニウムにはがん細胞の周辺に集まる性質があるため、撮影された画像ではがん細胞が明るく映し出されます。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。

    腹部の磁気共鳴画像法(MRI):小児は図のように台に横たわり、この台がMRIスキャナ内を水平に移動するうちに体内の画像が撮影される。小児の腹部に置かれたパッドは画像をより鮮明にするためのもの。
    
    


    腹部の磁気共鳴画像法(MRI)。小児の患者さんは台の上に横たわり、この台がMRIスキャナ内を水平に移動するうちに体内の画像が撮影されます。小児の腹部に置かれたパッドは画像をより鮮明にするためのものです。




  • 超音波検査:高エネルギーの音波(超音波)を内部の組織や臓器に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法。このエコーを基にソノグラムと呼ばれる身体組織の画像が描出されます。この画像は後で見られるように印刷することもできます。小児肝がんでは通常、大血管を調べるために腹部超音波検査が実施されます。

    腹部超音波検査:診察台の上に横たわり腹部超音波検査を受けている小児の様子が示されている。技師は、小児の腹部表面に振動子(音波を発生させ、体内の組織で反射させる装置)をあてている。コンピュータの画面にはソノグラム(画像)が描画されている。
    
    


    腹部超音波検査。コンピュータに接続された超音波振動子を腹部の皮膚に押しあてます。振動子から出た音波は体内の臓器および組織で反射してエコーを生じ、そのエコーからソノグラム(コンピュータ画像)が作成されます。




  • CTスキャン(CATスキャン):体内の領域を様々な角度から撮影して、精細な連続画像を作成する検査法。この画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに造影剤を飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影法(CT)やコンピュータ体軸断層撮影法(CAT)とも呼ばれます。小児肝がんでは通常、胸部と腹部に対するCTスキャンが実施されます。

    腹部のコンピュータ断層撮影(CTスキャン):図のように小児は台の上に横たわり、この台がCT装置内を水平に移動するうちに腹部のX線写真が撮影される。
    
    


    腹部のコンピュータ断層撮影(CTスキャン)。小児の患者さんは台の上に横たわり、この台がCTスキャナ内を水平に移動するうちに腹部のX線写真が撮影されます。




  • 腹部 X線検査 :腹部の臓器のX線検査。X線は放射線の一種で、これを人の体を通してフィルム上に照射すると、そのフィルム上に体内領域の画像が映し出されます。

  • 生検 :細胞や組織を採取する手技のことで、採取されたサンプルを顕微鏡で観察し、がんの徴候がないかを調べます。腫瘍を切除または観察するための手術の際に組織サンプルの採取が行われることがあります。採取されたサンプルは、病理医が顕微鏡で観察して、それにより肝がんの種類が特定されます。

     採取された組織サンプルについて、以下の検査を実施する場合があります:


    • 免疫組織化学検査 抗体を利用して、組織のサンプルに含まれる特定の抗原を調べる検査。この抗体には通常、放射性物質または色素が結合されており、その作用によって顕微鏡で観察したときに組織が明るく見えます。この種の検査は特定の遺伝子突然変異を調べたり、様々な種類のがんを判別したりするために用いられます。


特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

肝芽腫の予後回復の見込み)と治療の選択を左右する因子には、以下のものがあります:


  • PRETEXTまたはPOSTTEXTグループ。

  • がんがなどの他の部位に転移しているかどうか。

  • 手術によって腫瘍を完全に摘出できるかどうか。

  • 化学療法に対するがんの反応。

  • 顕微鏡で観察したがん細胞の外観。

  • 治療後にAFPの血中濃度が低下するかどうか。

  • 新たに診断されたがんか、再発したがんか。

肝細胞がんの予後(回復の見込み)と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:


  • PRETEXTまたはPOSTTEXTグループ。

  • がんが肺などの他の部位に転移しているかどうか。

  • 手術によって腫瘍を完全に摘出できるかどうか。

  • 化学療法に対するがんの反応。

  • 顕微鏡で観察したがん細胞の外観。

  • 小児がB型肝炎ウイルスに感染しているかどうか。

  • 新たに診断されたがんか、再発したがんか。

最初の治療後に再発した小児肝がんの予後と治療選択肢は、以下の因子に左右されます:


  • 腫瘍が再発した部位。

  • 最初のがんの治療に用いた治療法。

小児肝がんは、腫瘍が小さくて手術によって完全に切除できる場合は、治癒も望めます。肝芽腫では、肝細胞がんと比べて、完全摘出が可能な場合が多くなります。

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小児肝がんの病期

小児肝がんの診断がついた後には、がん細胞の肝臓内での拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。

がん肝臓内での拡がりや、周辺の組織または臓器、もしくは他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。小児肝がんでは、病期分類の代わりにPRETEXTグループとPOSTTEXTグループを用いて治療計画を立てます。がんの発見や診断、あるいは転移の有無を明らかにするための検査や手技の結果を用いて、PRETEXTとPOSTTEXTのグループを判定します。

小児肝がんには、2つのグループ分類体系があります。

小児肝がんでは、次の2つのグループ分類体系が用いられます:


  • PRETEXTグループは、患者さんが治療を受ける前の 腫瘍について表します。

  • POSTTEXTグループは、患者さんが治療を受けた後の腫瘍について表します。

4つのPRETEXTグループとPOSTTEXTグループがあります:

肝臓は4つの区域に分けられます。PRETEXTとPOSTTEXTのグループは、肝臓のどの区分にがんが存在するかによって決まります。

PRETEXTまたはPOSTTEXTのグループI


肝のPRETEXT I;2種類の肝臓を示す。それぞれ、縦の点線で肝臓を4つの区画に分けて、ほぼ同じ大きさになるようにしている。1番目の肝臓では、左端の区域にがんがある。2番目の肝臓では、右端の区域にがんがある。



肝のPRETEXT I。肝臓の1つの区域のみにがんが認められます。そこと隣接している肝臓の3つの区域にはがんがありません。



グループIでは、肝臓の1つの区域のみにがんが認められます。そこと隣接している肝臓の3つの区域にはがんがありません。

PRETEXTまたはPOSTTEXTのグループII


肝のPRETEXT II;5種類の肝臓を示す。それぞれ、縦の点線で肝臓を4つの区画に分けて、ほぼ同じ大きさになるようにしている。1番目の肝臓では、左側の2つの区域にがんがある。2番目の肝臓では、右側の2つの区域にがんがある。3番目の肝臓では、左端と右端の区域にがんがある。4番目の肝臓では、左から2番目の区域にがんがある。5番目の肝臓では、右から2番目の区域にがんがある。



肝のPRETEXT II。肝臓の1つないし2つの区域にがんが認められます。そこと隣接している肝臓の2つの区域にはがんがありません。



グループIIでは、肝臓の1つないし2つの区域にがんが認められます。そこと隣接している肝臓の2つの区域にはがんがありません。

PRETEXTまたはPOSTTEXTのグループIII


肝のPRETEXT III;7種類の肝臓を示す。それぞれ、縦の点線で肝臓を4つの区画に分けて、ほぼ同じ大きさになるようにしている。1番目の肝臓では、左側の3つの区域にがんがある。2番目の肝臓では、左側の2つの区域と右端の区域にがんがある。3番目の肝臓では、左端の区域と右側の2つの区域にがんがある。4番目の肝臓では、右側の3つの区域にがんがある。5番目の肝臓では、中央の2つの区域にがんがある。6番目の肝臓では、左端の区域と右から2番目の区域にがんがある。7番目の肝臓では、右端の区域と左から2番目の区域にがんがある。



肝のPRETEXT III。がんが肝臓の3つの区域に認められ、かつ1つの区域にはがんが認められないか、またはがんが肝臓の2つの区域に認められ、かつ隣り合わない肝臓の2つの区域にがんが認められません。



グループIIIでは、以下の条件のいずれかが満たされます:


  • がん肝臓の3つの区域に認められ、1つの区域にはがんが認められない。

  • がんが肝臓の2つの区域に認められ、そこと隣接する肝臓の2つの区域にはがんが認められない。

PRETEXTまたはPOSTTEXTのグループIV


肝のPRETEXT IV;2種類の肝臓を示す。それぞれ、縦の点線で肝臓を4つの区画に分けて、ほぼ同じ大きさになるようにしている。1番目の肝臓では、4つの区域全てにがんがある。2番目の肝臓では、左側の2つの区域にがんがあり、右側の2つの区域には塊状のがんがある。



肝のPRETEXT IV。肝臓の4つの区域の全てにがんが認められます。



グループIVでは、肝臓の4つの区域の全てにがんが認められます。

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:


  • 組織。がんは発生した場所から隣接する領域に拡がります。

  • リンパ系。がんは発生した場所からリンパ系に侵入して拡がります。がんはリンパ管を介して体内の他の部位へ移動します。

  • 血液。がんは発生した場所から血液に侵入して拡がります。がんは血管を介して体内の他の部位へ移動します。

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。


  • リンパ系。がんがリンパ系に侵入し、リンパ管を通って体内の他の部位へ移動して、そこで腫瘍転移性腫瘍)を形成します。

  • 血液。がんが血液中に侵入し、血管を通って体内の他の部位へ移動して、そこで腫瘍(転移性腫瘍)を形成します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、小児肝がんがに転移した場合、肺にできたがん細胞は、実際は肝がんの細胞です。この疾患は転移性肝がんであり、肺がんではありません。

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再発小児肝がん

再発小児肝がんとは、治療後に再発した(再び現れた)がんのことをいいます。再発は、肝臓内に起こることもあれば、体の他の部位に起こることもあります。治療中に増殖したり悪化したりするがんは進行性疾患です。

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治療選択肢の概要

小児肝がんの患者さんには様々な治療法が存在します。

小児肝がんの患者さんは、様々な治療を受けることができます。そのなかには標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、がん患者さんのために、既存の治療法の改善に役立てたり、新しい治療法に関する情報を得たりするための調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。

小児肝がんの患者さんは全員が、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

肝がんのお子さんは、必ずこのまれな小児がんの治療に精通した医療提供者チームに治療計画を立ててもらってください。

この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が統括します。小児腫瘍医は、小児肝がんの治療に精通し、特定の医療分野を専門とした他の医療提供者と協力しながら治療に取り組んでいきます。特に、肝臓 手術の経験が豊富で、必要であれば肝移植プログラムに患者さんを紹介できる小児外科医が治療に参加することが重要です。他にも以下のような専門家が治療に参加することがあります:


がんの治療のなかには、治療が終わってから何ヵ月または何年もたって副作用が現れるものがあります。

がん治療による副作用のうち、がんの治療中または治療後に初めて認められ、数ヵ月ないし数年間続くものは、晩期障害と呼ばれます。がん治療の晩期障害には以下のようなものがあります:


  • 身体的問題。

  • 気分、感情、思考、学習、記憶における変化。

  • 二次がん(新しい種類のがん)。

晩期障害には治療や制御することが可能なものもあります。がん治療によってお子さんに発生する可能性がある晩期障害について、担当の医師とよく相談することが大切です。(詳しい情報については、PDQ小児がん治療の晩期障害に関する要約をご覧ください)。

標準治療として以下の5種類が用いられています:
手術

可能な場合は、手術によるがんの摘出が行われます。


  • 部分的肝切除術:がんが認められる部分の肝臓だけを切除する手術。切除範囲は、がん周辺の少量の正常組織を含めて、楔状組織、全、または肝臓の大部分とする場合があります。

  • 全肝切除術と肝移植:肝臓を完全に切除して、ドナーの健康な肝臓と取り換えます。肝移植は、がんが肝臓の外部には拡がっておらず、なおかつ肝臓のドナーがみつかった場合に行われます。肝臓の提供を待たなければならない場合は、必要に応じて他の治療が実施されます。

  • 転移切除:肝臓の外部(周辺組織や、脳など)に転移したがんを切除する手術。

採用する手術の種類に影響する因子として、以下のものがあります:


  • PRETEXTグループとPOSTTEXTグループ。

  • 原発腫瘍の大きさ。

  • 肝臓に腫瘍が2ヵ所以上あるかどうか。

  • がんが周辺の大血管まで拡がっているかどうか。

  • 血液中のα-フェトプロテイン(AFP)の値。

  • 腫瘍を手術で切除できる大きさまで、化学療法により小さくできるかどうか。

  • 肝移植が必要かどうか。

腫瘍を小さくして摘出しやすくするために、手術の前に化学療法を行うこともあります。このような治療は術前補助療法と呼ばれます。

手術の際に医師が確認できるがんを全て切除した場合でも、残っているがん細胞を全て死滅させるために、手術後に化学療法または放射線療法を受ける患者さんもおられます。このようにがんの再発リスクを低減させるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。

注意深い経過観察

注意深い経過観察とは、徴候症状の出現や変化がみられるまで、治療を一切行わずに患者さんの状態を注意深く監視していくことです。肝芽腫では、この治療法は腫瘍が小さく手術で完全に切除できた場合にのみ用いられます。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脳脊髄液内や臓器内、あるいは腹部などの体内に薬剤を直接注入する化学療法では、その領域にあるがん細胞に薬が集中的に作用します(局所化学療法)。複数の抗がん剤を用いる治療法は併用化学療法と呼ばれます。

肝動脈(肝臓に血液を供給している主要な動脈化学塞栓療法は局所化学療法の1つで、小児肝がんの治療に用いられます。この方法では、カテーテル(細い管)を介して抗がん剤を肝動脈の中に注入します。その薬剤には動脈を詰まらせる物質が混ぜられていて、これによって腫瘍への血液の供給が遮断されます。その結果、抗がん剤の大半が腫瘍の近くにとどまり、体内の他の部位に送られる抗がん剤の量が少なくなります。動脈を遮断するのに使用する物質の種類に応じて、動脈の閉塞は一時的なものにも永久的なものにもできます。腫瘍の増殖に必要となる酸素栄養素が供給されないようになります。一方で肝臓への血液供給は、から血液を運んでくる肝門脈によって維持されます。この療法は経動脈化学塞栓またはTACEとも呼ばれます。

化学療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類とPRETEXTまたはPOSTTEXTのグループに応じて異なります。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。放射線療法には2種類のものがあります:


放射線療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類とPRETEXTまたはPOSTTEXTのグループに応じて異なります。肝動脈(肝臓に血液を供給している主要な動脈)の放射線塞栓術は内照射療法の1つで、肝細胞がんの治療に用いられます。この方法では、ごく少量の放射性物質を微小なビーズに結合させ、カテーテル(細い管)を介して肝動脈に注入します。そのビーズには動脈を詰まらせる物質が混ぜられていて、これによって腫瘍への血液の供給が遮断されます。放射線の大半が腫瘍付近にとどまり、がん細胞を殺傷します。この方法は、肝細胞がんの小児に対して、症状を和らげ生活の質を改善するために行われます。外照射療法は、手術で切除できない、または他の部位に転移した肝芽腫の治療に用いられます。

抗ウイルス治療

B型肝炎ウイルスに関連する肝細胞がんに対しては、抗ウイルス薬による治療が行われます。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のウェブサイトから入手することができます。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。詳しくは、治療選択肢のセクションにある現在進行中の治療臨床試験へのリンクを参照してください。そこで検索された情報はNCIの臨床試験一覧のものです。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断や治療グループの特定のために実施される検査のなかには、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんの再発(再び現れること)の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

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小児肝がんの治療選択肢

肝芽腫

診断時に手術で切除可能と判断された肝芽腫の治療選択肢には、以下のようなものがあります:


診断時に手術で切除できないと判断された肝芽腫、または切除されない肝芽腫の治療選択肢には、以下のようなものがあります:


  • 腫瘍を縮小する併用化学療法と、その後の腫瘍を切除する手術。

  • 併用化学療法とその後の 移植

  • 肝動脈化学塞栓により腫瘍を小さくした後に、腫瘍切除手術。

診断時に他の部位に転移している肝芽腫では、併用化学療法を用いて、肝臓内のがんと他の部位に転移しているがんを小さくします。化学療法の後に、画像検査を行って、手術でがんを切除できるかどうか調べます。

治療選択肢には以下のようなものがあります:


  • 肝臓や他の部位のがんを切除できる場合は、手術で腫瘍を切除し、その後、残存している可能性のあるがん細胞を死滅させる化学療法を行います。

  • 手術で肝臓のがんを切除できず、他の部位にがんの徴候が認められない場合は、肝移植が行われることがあります。

  • 他の部位のがんを切除できない場合、または肝移植が不可能な場合の治療法には、化学療法、肝動脈の化学塞栓、放射線療法があります。

新たに診断された肝芽腫の臨床試験では、以下の治療選択肢があります:


  • 初回治療後にがんが再発する可能性に基づく新しい治療レジメンの臨床試験への参加。

肝細胞がん

診断時に手術で切除可能と判断された肝細胞がんの治療選択肢には、以下のようなものがあります:


診断時に手術で切除不可能と判断された肝細胞がんの治療選択肢には、以下のようなものがあります:


  • 腫瘍を縮小する化学療法と、その後の腫瘍を完全に切除する手術。

  • 腫瘍を小さくする化学療法。手術で腫瘍を完全に切除できない場合は、さらに以下のような治療が行われます:
    • 移植

    • 腫瘍を縮小する肝動脈の化学塞栓と、その後の腫瘍を可能な限り切除する手術または肝移植。

    • 肝動脈の化学塞栓単独。


  • 症状を軽減し生活の質を改善する緩和療法としての肝動脈の放射線塞栓術

診断時に他の部位に転移している肝細胞がんの治療法には以下のものがあります:


  • 腫瘍を縮小する併用化学療法と、その後に肝臓または転移した部位の腫瘍を可能な限り切除する手術。この治療法の効果は研究で実証されていないものの、一部の患者さんで多少の有益性が得られる可能性があります。

B型肝炎ウイルス(HBV)感染に関連する肝細胞がんの治療法には、以下のようなものがあります:


  • 腫瘍を切除する手術。

  • B型肝炎ウイルスによる感染症を治療する抗ウイルス薬

肝未分化胎児性肉腫

未分化 胎児性 肉腫(UESL)の治療選択肢には以下のようなものがあります:


  • 併用化学療法を行って腫瘍を小さくした後に、手術で腫瘍を可能な限り摘出。腫瘍を切除する手術の後に化学療法が行われる場合もあります。

  • 腫瘍を切除する手術と、その後の化学療法。2回目の手術を行って残存している腫瘍を切除した後に、さらに化学療法を続けることもあります。

  • 腫瘍が手術で切除できない場合は、 移植

乳児性肝絨毛がん

乳児の肝臓絨毛がんの治療選択肢には以下のようなものがあります:


再発小児肝がん

再発 肝芽腫の治療法には以下のようなものがあります:


進行性または再発肝細胞がんの治療法には、以下のようなものがあります:


  • 肝移植前に腫瘍を小さくする、肝動脈化学塞栓

  • 肝移植。

  • 新しい治療法の臨床試験への参加。

臨床試験における治療選択肢

NCI支援のがん臨床試験リストから、小児肝がんの患者さんを現在受け入れている臨床試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験の場所、治療のタイプ、薬剤の名前など、他の検索要素を用いて絞り込み検索を行うと、より具体的な結果が得られます。お子さんに適した臨床試験については、担当の医師にご相談ください。米国国立がん研究所(NCI)のウェブサイトから臨床試験についての一般的な情報をご覧いただけます。

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本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児肝がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board. PDQ Childhood Liver Cancer Treatment. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: http://www.cancer.gov/types/liver/patient/child-liver-treatment-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389318]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。

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