患者さん向け 子宮肉腫の治療(PDQ®)

ご利用について

このPDQがん情報要約では、子宮肉腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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子宮肉腫についての一般的な情報

子宮肉腫は、子宮の筋肉組織や子宮のその他の支持組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

子宮は女性の生殖系の一部です。子宮は骨盤内に存在する洋ナシの形をした中空の臓器で、胎児の成長の場となります。子宮頸部とは、子宮の下の方の狭くなった部分のことで、その下はにつながっています。

女性生殖系の解剖図:図は、子宮、子宮筋層(子宮の外側の筋層)、子宮内膜(子宮内腔を覆う膜)、卵巣、卵管、子宮頸部、膣を示している。

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女性生殖系の解剖図。女性生殖系の臓器には、子宮、卵巣、卵管、子宮頸部、膣などが含まれます。子宮には、子宮筋層と呼ばれる筋肉の外層と子宮内膜と呼ばれる内膜があります。

子宮肉腫は、非常にまれながんの一種で、子宮の筋組織を始めとする子宮の支持組織から発生するものです。(他の種類の肉腫に関する情報については、PDQ軟部肉腫の治療に関する要約をご覧ください。)

子宮肉腫は、子宮内膜組織からがん細胞が発生する疾患である子宮内膜がんとは別のものです。がん肉腫は子宮内膜がんのサブタイプで、子宮内膜がんの定義を用いて病期分類されます。(詳しい情報については、子宮内膜がん(子宮体がん)の治療をご覧ください。)

子宮肉腫には、平滑筋肉腫、子宮内膜間質肉腫、および腺肉腫が含まれます。

過去に骨盤への放射線療法による治療を受けた場合は、子宮肉腫のリスクを増大させる可能性があります。

疾患が発生する危険性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。リスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。子宮肉腫のリスク因子には以下のものがあります:

子宮肉腫の徴候には、異常出血などがあります。

膣からの異常出血などの徴候症状は、子宮肉腫により引き起こされることもあれば、他の病態によって引き起こされることもあります。以下の問題がみられる場合は担当の医師にご相談ください:

子宮肉腫の診断には、子宮を調べる検査法が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:

特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

予後と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:

子宮肉腫の病期

子宮肉腫の診断がついた後には、がん細胞の子宮内での拡がりや体の他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。

がん子宮内での拡がりや他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。病期分類の過程では、以下のような検査法が用いられます:

子宮肉腫では、診断、病期分類、治療の全てを1回の手術で行うことがあります。

子宮肉腫では、診断、病期分類、および治療を目的として手術が行われます。この手術では、医師は可能な限り多くのがんを切除しようとします。子宮肉腫の診断、病期分類、および治療に用いられる手術法には以下のものがあります:

さらに手術以外の治療が追加される場合もありますが、そうした治療法については、この要約の治療選択肢の概要のセクションで紹介されています。

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、子宮肉腫がに転移した場合、肺にできたがん細胞は、実際は子宮肉腫の細胞です。この疾患は転移性子宮肉腫であり、肺がんではありません。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:

平滑筋肉腫および子宮内膜間質肉腫には、以下のFIGO病期分類システムが用いられます:

I期

I期では、腫瘍子宮内にのみ認められます。I期は、IA期とIB期に分けられます:

図は、様々な腫瘍の大きさをセンチメートル(cm)で表した円形と豆(1cm)、ピーナッツ(2cm)、ブドウ(3cm)、クルミ(4cm)、ライム(5cm)、卵(6cm)、桃(7cm)、グレープフルーツ(10cm)とを比較している。10cmと4インチのそれぞれを表す目盛りも示されている。

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腫瘍の大きさはセンチメートル(cm)やインチで表されることがよくあります。次のような身近な食べ物と比較して、腫瘍の大きさをcm単位で表すことができます:豆(1cm)、ピーナッツ(2cm)、ブドウ(3cm)、クルミ(4cm)、ライム(5cmまたは2インチ)、卵(6cm)、桃(7cm)、グレープフルーツ(10cmまたは4インチ)。

II期

II期では、腫瘍子宮を越えて拡がっていますが、骨盤外までは拡がっていません。II期は、IIA期とIIB期に分けられます:

III期

III期では、腫瘍腹部内の組織に拡がります。III期は、IIIA期、IIIB期、IIIC期に分けられます:

IV期

IV期は、IVA期とIVB期に分けられます:

腺肉腫には以下のFIGO病期分類システムが用いられます:

I期

I期では、腫瘍子宮内にのみ認められます。I期は、IA期、IB期、IC期に分けられます:

II期

II期では、腫瘍子宮の外まで拡がり、骨盤内にも拡がっています。II期は、IIA期とIIB期に分けられます:

III期

III期では、腫瘍腹部内の組織に拡がっています。III期は、IIIA期、IIIB期、IIIC期に分けられます:

IV期

IV期は、IVA期とIVB期に分けられます:

子宮肉腫は治療後に再発する(再び現れる)ことがあります。

再発は、子宮や骨盤内に生じることもあれば、体の他の部位に発生することもあります。

治療選択肢の概要

子宮肉腫の患者さんには様々な治療法が存在します。

子宮肉腫の患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

以下のような治療法が用いられます:

手術

手術は子宮肉腫に最も多く用いられている治療法で、その内容については、この要約の子宮肉腫の病期のセクションで紹介されています。

手術の際に確認できる全てのがんを切除した後に、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させることを目的として、術後に化学療法放射線療法が実施される場合があります。このようにがんの再発リスクを低減させるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用して、がん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。放射線療法には2種類のものがあります:

放射線療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。子宮肉腫の治療には外照射療法と内照射療法が用いられ、それらが症状を和らげ生活の質を高める緩和療法として行われることもあります。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。

ホルモン療法

ホルモン療法は、ホルモンを体内から除去したりその働きを阻害したりすることによって、がん細胞の増殖を阻止する治療法です。ホルモンとは、体内の内分泌で作られて血流内を循環する物質のことです。ホルモンの中には一部のがんを増殖させるものがあります。がん細胞上にホルモンが結合できる部分(受容体)が存在することが検査によって判明した場合は、ホルモンの分泌量の低下やその作用の阻害を狙って、薬物投与や手術、放射線療法などが行われます。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

子宮肉腫の治療は副作用を引き起こすことがあります。

がんの治療によって引き起こされる副作用に関する詳しい情報については、副作用(英語)のページをご覧ください。

患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施される検査の中には、繰り返し行われるものがあります。治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも度々受けることになる検査もあります。こうした検査の結果から、患者さんの状態の変化やがんの再発(再び現れること)の有無を知ることができます。こうした検査はフォローアップ検査または定期検査と呼ばれることがあります。

I期の子宮肉腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

I期の子宮平滑筋肉腫I期の子宮内膜間質肉腫、およびI期の子宮腺肉腫の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

II期の子宮肉腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

II期の子宮平滑筋肉腫II期の子宮内膜間質肉腫、およびII期の子宮腺肉腫の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

III期の子宮肉腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

III期の子宮平滑筋肉腫III期の子宮内膜間質肉腫、およびIII期の子宮腺肉腫の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

IV期の子宮肉腫の治療

IV期の子宮平滑筋肉腫IV期の子宮内膜間質肉腫IV期の子宮腺肉腫では標準治療がありません。その治療としては、化学療法を用いる臨床試験への参加などが考えられます。

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

再発子宮肉腫の治療

以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。

再発子宮肉腫には標準治療がありません。その治療としては、化学療法を用いる臨床試験への参加などが考えられます。

再発したがん肉腫腫瘍の一種)の治療法には以下のようなものがあります:

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

子宮肉腫についてさらに学ぶために

米国国立がん研究所が提供している子宮肉腫に関する詳しい情報については、子宮がんについてのホームページ(英語)をご覧ください。

米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、子宮肉腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

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本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Uterine Sarcoma Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: https://www.cancer.gov/types/uterine/patient/uterine-sarcoma-treatment-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389379]

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