ページの先頭へ

最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

乳がんの治療と妊娠(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2015-10-21
    翻訳更新日 : 2017-02-17

PDQ Adult Treatment Editorial Board

 このPDQがん情報要約では、乳がんの治療と妊娠に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

 PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

乳がん

乳がんと妊娠についての一般的な情報

乳がんは、乳房の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

乳房と乳から構成されています。乳房には葉と呼ばれる組織の集まりが左右それぞれで15~20個存在しています。さらにそれぞれの葉は小葉と呼ばれる多数の小さな組織から構成されています。小葉の先には小さな腺房という構造が多数存在しており、そこで乳汁が作られています。これらの葉、小葉、腺房は乳管と呼ばれる細い管でつながっています。

女性の乳房の解剖図:リンパ節、乳頭、乳輪、胸壁、肋骨、筋肉、脂肪組織、葉、乳管、小葉を示す。



女性の乳房の解剖図。乳頭と乳輪は乳房の外表面に示されています。リンパ節、葉、小葉、乳管などの乳房内の各組織も示されています。



乳房の中にはさらに血管リンパ管が通っています。リンパ管にはリンパ液と呼ばれるほぼ無色の液体が流れています。リンパ管はリンパ節の間でリンパ液を運びます。リンパ節は小さな豆のような形をした臓器で、全身に分布しています。リンパ液のろ過、感染や病気に対する防衛などの役割を果たしています。腋窩(わきの下)の乳房付近や鎖骨の上、胸部などには、このリンパ節が群れを成すように存在しています。

乳がんは、妊娠中の女性や出産後間もない女性にも発生することがあります。

妊娠中の女性では3000人中に1人の割合で乳がんが発生しています。そうした乳がんは、特に32~38歳の患者さんに多くみられます。

乳がんの徴候には、乳房におけるしこりや異常があります。

こうした徴候は、乳がんによるものもあれば、他の病態によるものもあります。以下のような変化がみられる場合は担当の医師にご相談ください:


  • 乳房やその近く、あるいは腋の下に、しこりや皮膚が厚くなったところがある。

  • 乳房の大きさや乳房の形が以前と違う。

  • 乳房の皮膚にくぼみやしわが寄ったところがある。

  • 乳頭が乳房の中へ陥没している。

  • 乳頭から母乳以外の分泌物が出ることがある(特に血が混ざっている場合)。

  • 乳房、乳頭、または乳輪(乳頭を取り囲む浅黒い皮膚の部分)の皮膚が、うろこ状、赤みを帯びている、あるいは腫れている。

  • オレンジの皮のようなくぼみ(橙皮状皮膚と呼ばれる)が乳房にみられる。

妊娠中や授乳期の女性では、乳がんを検出(発見)しにくい場合があります。

妊娠中や授乳期の女性や、出産後間もない女性では、乳房が大きくなったり、敏感になったり、でこぼこしたりするのが普通です。こうした変化は、妊娠中に起こる正常なホルモンの変化によるものです。このように乳房の状態が変わると、小さなしこりを見つけにくくなる場合があります。またその時期には、乳房の密度が高まることがあります。そのように女性の乳房が高密度になると、乳腺X線撮影で乳がんを発見しにくくなります。これらの乳房の変化により診断が遅れることがあるため、該当する時期の女性では、しばしばより進行した病期の乳がんが発見されます。

出産前と出産後のケアに乳房の検査を組み込むことが重要です。

妊娠中の女性と授乳期の女性は、乳がん発見のために自身で乳房のチェックを行うようにすべきです。さらに、出産前と出産後に行われる通常の検査の際に、臨床的乳房検査を受けることも必要です。乳房に予想しない変化や気がかりな変化がみられる場合は、担当の医師にご相談ください。

乳がんの発見と診断には、乳房を調べる検査法が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:


  • 身体診察と病歴聴取:しこりなどの通常みられない疾患の徴候に注意しながら、総体的に身体を調べる診察法。患者さんの健康習慣、過去の病歴、治療歴なども調べます。

  • 臨床的乳房検査(CBE):医師やその他の医療専門家が行う乳房の診察。医師が乳房とわきの下の触診を入念に行って、しこりなどの異常がないかを調べます。

  • MRI(磁気共鳴画像法):磁気、電波、コンピュータを用いて、両側の乳房の精細な連続画像を作成する検査法。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。

  • 超音波検査:高エネルギーの音波(超音波)を内部の組織や臓器に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法。このエコーを基にソノグラムと呼ばれる身体組織の画像が描出されます。この画像は後で見るために印刷することもできます。

  • 乳腺X線撮影(マンモグラフィ):乳房のX線検査。乳腺X線撮影には、胎児への悪影響はほとんどありません。ただし、妊娠中の女性が乳腺X線撮影を受けると、実際にはがんが存在していても陰性とされることがあります。

    乳腺X線撮影:左の乳房を2枚のプレートで挟んで圧迫している。X線装置により、乳房の画像が撮影される。拡大図は、X線フィルムを使用した画像であり、矢印で異常な組織が示されている。
    
    


    乳腺X線撮影。乳房を2枚のプレートで挟んで圧迫しています。X線を用いて、乳房組織の画像が撮影されます。




  • 血液生化学検査 :採取した血液を調べて、体内の臓器や組織から血液中に放出される特定の物質の濃度を測定する検査法。ある物質で異常な値(正常値よりも高い値や低い値)が出るということは、疾患の徴候である可能性があります。

  • 生検 細胞や組織を採取する手技のことで、採取されたサンプルは病理医によって顕微鏡で観察され、がんの徴候がないか調べられます。乳房内にしこりが発見された場合は、生検が行われることがあります。

     4種類の乳房生検があります:


    • 摘出生検 :しこりの組織全体を摘出する。

    • 切開生検 :しこりの組織の一部を採取する。

    • コア生検 :太い針を用いて組織を採取する。

    • 穿刺吸引生検(FNA生検) : 細い針を用いて組織または体液を採取する。


ここでがんが発見された場合は、検査を行ってがん細胞が調べられます。

最善の治療法は、これらの検査結果と妊娠週数に基づいて決定されます。これらの検査から以下の情報が得られます:


  • がんが増殖する場合の速さ。

  • がんが体の他の部位に拡がる可能性。

  • 特定の治療法の有効性。

  • がんが再発する(再び現れる)可能性。

以下のような検査があります:


  • エストロゲン受容体検査とプロゲステロン受容体検査 :がん組織の中に含まれるエストロゲン受容体プロゲステロン受容体の量を測定する検査法(エストロゲン(薬剤詳細へ)とプロゲステロンはホルモン)。エストロゲン(薬剤詳細へ)受容体とプロゲステロン受容体が通常より多いと、がんはエストロゲン受容体陽性またはプロゲステロン受容体陽性と呼ばれ、その両方に当てはまる場合もあります。この種の乳がんはより急速に増殖することがあります。これらの検査結果から、出産後にエストロゲン(薬剤詳細へ)とプロゲステロンを遮断する治療法でがんの増殖を阻止できるかどうかが分かります。

  • ヒト上皮成長因子受容体2(HER2/neu)検査:組織サンプル中のHER2/neu遺伝子の数とHER2/neu蛋白の量を測定する臨床検査。通常よりHER2/neu遺伝子が多い、またはHER2/neu蛋白の量が多いと、がんはHER2/neu陽性と呼ばれます。この種の乳がんは増殖が速く、体の他の部位に転移する可能性が高いがんです。そうしたがんは、HER2/neu蛋白を標的としたトラスツズマブペルツズマブなどの薬剤で治療する場合があります。

  • 多重遺伝子検査:組織サンプルを調べて、多くの遺伝子の活性を同時に測定する検査。これらの検査は、がんが体の他の部位に転移するかどうか、あるいは再発する(再び現れる)かどうかを予測するのに役立つ場合があります。
    • Oncotype DX :この検査は、エストロゲン受容体陽性リンパ節転移陰性I期またはII期の乳がんが、体の他の部位に転移するかどうかを予測するために実施されます。がんが転移するリスクが高い場合は、リスクを抑えるために化学療法を実施することが考えられます。

    • MammaPrint :この検査は、リンパ節転移陰性のI期またはII期の乳がんが、体の他の部位に転移するかどうかを予測するために実施されます。がんが転移するリスクが高い場合は、リスクを抑えるために化学療法を実施することが考えられます。


特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

予後回復の見込み)と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:


  • がんの病期(腫瘍の大きさ、がんに侵されているのは乳房だけか、または体の他の部位にも転移しているか)。

  • 乳がんの種類。

  • 妊娠週数。

  • 徴候または症状の有無。

  • 患者さんの健康状態。

 | 

乳がんの病期

乳がんの診断がついた後には、がん細胞の乳房内での拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。

がん乳房内での拡がりや他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。

一部の手技では、胎児が有害な放射線や色素にさらされる可能性があります。これらの手技は、明らかに必要な場合にのみ実施されます。例えば、鉛入りシールドで腹部を覆うなど、胎児が受ける放射線を可能な限り少なくする対策をとることができます。

妊娠中の乳がんの病期分類には、以下のような検査法や手技が用いられます:


  • センチネルリンパ節生検 手術中に実施されるセンチネルリンパ節の摘出。センチネルリンパ節とは、腫瘍からのリンパ液の流れを最初に受けるリンパ節のことです。これは、腫瘍中のがん細胞が最初に転移する可能性の高いリンパ節です。まず、放射性物質や青色の色素が腫瘍の付近に注入されます。すると、この放射性物質や色素はリンパを通ってリンパ節に流れ込みます。そうして、放射性物質や色素が最初に到達したリンパ節が切除されます。切除された組織病理医顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調べます。そこでがん細胞が発見されなければ、それ以上のリンパ節の切除が不要になる場合もあります。

  • CTスキャン(CATスキャン):体内の領域を様々な角度から撮影して、精細な連続画像を作成する検査法。この画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。この検査法はコンピュータ断層撮影法(CT)やコンピュータ体軸断層撮影法(CAT)とも呼ばれます。

  • 骨スキャン :骨の内部に活発に分裂している細胞(がん細胞など)が存在していないかを調べる検査法。まず、ごく少量の放射性物質を静脈内に注入し、血液に乗せて全身に巡らせます。この放射性物質にはがんが生じている骨に集まる性質があるため、これをスキャナを用いて検出します。

  • PETスキャン(陽電子放射断層撮影):体内の悪性腫瘍細胞を検出するための検査法。まず、放射性のあるブドウ糖の溶液を少量だけ静脈内に注射します。その後、周囲を回転しながら体の内部を調べていくPETスキャナという装置を用いて、ブドウ糖が消費されている体内の領域を示す画像を作成していきます。悪性腫瘍細胞は、正常な細胞よりも活発でブドウ糖をより多く取り込む性質があるため、画像ではより明るく映し出されます。

  • MRI(磁気共鳴画像法):磁気、電波、コンピュータを用いて、脳などの体内領域の精細な連続画像を作成する検査法。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。

  • 超音波検査:高エネルギーの音波(超音波)を内部の組織や肝臓などの臓器に反射させ、それによって生じたエコーを利用する検査法。このエコーを基にソノグラムと呼ばれる身体組織の画像が描出されます。この画像は後で見られるように印刷することもできます。

  • 胸部X線検査 :胸部の臓器と骨のX線検査。X線は放射線の一種で、これを人の体を通してフィルム上に照射すると、そのフィルム上に体内領域の画像が映し出されます。

体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。

がんは組織リンパ系血液を介して拡がります:


  • 組織。がんは発生した場所から隣接する領域に拡がります。

  • リンパ系。がんは発生した場所からリンパ系に侵入して拡がります。がんはリンパ管を介して体内の他の部位へ移動します。

  • 血液。がんは発生した場所から血液に侵入して拡がります。がんは血管を介して体内の他の部位へ移動します。

がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。

がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。


  • リンパ系。がんがリンパ系に侵入し、リンパ管を通って体内の他の部位へ移動して、そこで腫瘍転移性腫瘍)を形成します。

  • 血液。がんが血液中に侵入し、血管を通って体内の他の部位へ移動して、そこで腫瘍(転移性腫瘍)を形成します。

転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類の腫瘍です。例えば、乳がんが骨に転移した場合、骨にできたがん細胞は、実際は乳がんの細胞です。このような疾患は、転移性乳がんであって、骨がんではありません。

乳がんでは以下の病期が用いられています:

このセクションでは、乳がんの病期について説明します。乳がんの病期は、手術や他の検査中に採取された腫瘍やリンパ節に対する検査の結果を基に判定されます。

0期(非浸潤性がん)

非浸潤性乳がんには以下の3種類があります:


  • 非浸潤性乳管がん(DCIS): の内側を覆う組織の中に異常な 細胞が発生する非浸潤性病態。この異常細胞が乳管の壁を越えて乳房内の周辺組織に拡がることはありません。場合によっては、非浸潤性乳管がんが浸潤性のがんに変化して他の組織に拡がっていくことがあります。しかし、現在、どの病変が浸潤性のがんになるのかを予測する方法は知られていません。

    非浸潤性乳管がん(DCIS):乳房の断面図は、葉、乳管、脂肪組織を示している。拡大図は、正常な乳管と異常な細胞を含む乳管を示している。
    
    


    非浸潤性乳管がん(DCIS)。乳管の内壁を覆っている組織に異常な細胞が認められます。




  • 非浸潤性小葉がん(LCIS)は、乳房の小葉に異常な細胞が発生する病態です。この病態が浸潤がんになることはめったにありません。しかし、片方の乳房に非浸潤性小葉がんが発生した女性では、いずれかの乳房で乳がんが発生するリスクが高くなります。

    非浸潤性小葉がん(LCIS):乳房の断面図は、葉、乳管、小葉、脂肪組織を示している。3つの拡大図は、それぞれ正常な葉、正常な小葉、異常細胞を含む小葉を示している。
    
    


    非浸潤性小葉がん(LCIS)。乳房の小葉に異常な細胞が認められます。




  • 乳頭のパジェット病は、乳頭にのみ異常な細胞が認められる病態です。

I期


I期乳がん。左図はIA期を示している;腫瘍は2cm以下で、乳房の外には拡がっていない。中央と右の図はIB期を示している。中央の図では、乳房内に腫瘍は認められないが、がん細胞の小さな塊がリンパ節に存在している。右図では、2cm以下の腫瘍が存在し、リンパ節にがん細胞の小さな塊が認められる。



I期乳がん。IA期では、腫瘍は2cm以下で、乳房の外には拡がっていません。IB期では、乳房内に腫瘍は認められないか、2cm以下の腫瘍が存在しています。がん細胞の小さな塊(0.2mmより大きく2mm以下)がリンパ節に認められます。



I期では、すでにがんが形成されています。I期は、IA期とIB期に分けられます。


  • IA期では、腫瘍の大きさは2cm以下である。がんは乳房の外には拡がっていない。

  • IB期では、リンパ節乳がん 細胞の小さな塊(0.2mmより大きく2mm以下)が認められ、さらに次のいずれかに該当する:
    • 乳房内に腫瘍が認められない;または

    • 腫瘍の大きさが2cm以下。


II期

II期は、IIA期とIIB期に分けられます。


  • IIA期では、以下の条件が満たされます:


    IIA期乳がん。左図は、乳房内に腫瘍は認められないが、3個の腋窩リンパ節にがんが存在していることを示している。中央の図は、腫瘍の大きさが2cm以下で、3個の腋窩リンパ節にがんが存在していることを示している。右図は、腫瘍が2cmより大きく5cm以下であり、リンパ節には拡がっていないことを示している。
    
    


    IIA期乳がん。乳房内に腫瘍は認められないが、1~3個の腋窩リンパ節、または胸骨付近のリンパ節にがんが存在しています(左図);または2cm以下の腫瘍が認められ、1~3個の腋窩リンパ節、または胸骨付近のリンパ節にがんが存在しています(中央の図);または腫瘍が2cmより大きく5cm以下で、リンパ節には拡がっていません(右図)。




  • IIB期では、腫瘍について以下の条件が満たされます:
    • 2cmより大きく、5cm以下である。乳がん 細胞の小さな塊(0.2mmより大きく2mm以下)がリンパ節に認められる;または

    • 2cmより大きく、5cm以下である。がんが1~3個の腋窩リンパ節に拡がっている、または胸骨付近のリンパ節に拡がっている(センチネルリンパ節生検で発見される);または

    • 5cmを超えている。がんはリンパ節には拡がっていない。



    IIB期乳がん。左図では、腫瘍が2cmより大きく5cm以下であり、がん細胞の小さな塊がリンパ節に存在している。中央の図では、腫瘍が2cmより大きく5cm以下であり、がんが3個の腋窩リンパ節に存在している。右図は、腫瘍が5cmより大きいが、リンパ節には拡がっていないことを示している。
    
    


    IIB期乳がん。腫瘍は2cmより大きく5cm以下であり、がん細胞の小さな塊(0.2mm~2mm)がリンパ節に存在しています(左図);または腫瘍が2cmより大きく5cm以下であり、がんが1~3個の腋窩リンパ節、または胸骨付近のリンパ節に認められます(中央の図);または腫瘍が5cmより大きく、リンパ節には拡がっていません(右図)。




IIIA期


IIIA期乳がん。左図は、乳房内に腫瘍が認められないが、8個の腋窩リンパ節にがんが存在していることを示している。中央の図では、5cmを超える腫瘍が存在し、複数のリンパ節にがん細胞の小さな塊が認められる。右図では、腫瘍が5cmより大きく、3個の腋窩リンパ節にがんが存在している。



IIIA期乳がん。乳房内に腫瘍が認められないか、または腫瘍の大きさは様々であり、4~9個の腋窩リンパ節または胸骨付近のリンパ節にがんが存在しています(左図);または腫瘍が5cmより大きく、複数のリンパ節にがん細胞の小さな塊(0.2mmより大きく2mm以下)が認められます(中央の図);または腫瘍が5cmより大きく、1~3個の腋窩リンパ節または胸骨付近のリンパ節にがんが認められます(右図)。



IIIA期では、以下の条件が満たされます:


  • 乳房腫瘍が認められない、または腫瘍の大きさは様々である。がんが4~9個の腋窩リンパ節に認められるか、または胸骨付近のリンパ節に認められる(画像検査または身体診察で発見される);または

  • 腫瘍の大きさが5cmを超えている。乳がん 細胞の小さな塊(0.2mmより大きく2mm以下)がリンパ節に認められる;または

  • 腫瘍の大きさが5cmを超えている。がんが1~3個の腋窩リンパ節に認められるか、または胸骨付近のリンパ節に認められる(センチネルリンパ節生検で発見される)。

IIIB期


IIIB期乳がん。左図は、胸壁にがんが転移した乳房の断面図を示している。肋骨、筋肉、脂肪組織も示されている。右図は、乳房の皮膚に拡がった腫瘍を示している。拡大図は炎症性乳がんを示している。



IIIB期乳がん。腫瘍の大きさは様々で、がんが胸壁や乳房の皮膚に転移しており、腫脹または潰瘍を引き起こしています。がんは最大9個の腋窩リンパ節または胸骨付近のリンパ節に転移していることがあります。乳房の皮膚へ転移したがんは炎症性乳がんになることがあります。



IIIB期では、腫瘍の大きさは様々で、がん胸壁および/または乳房の皮膚に転移しており、腫脹または潰瘍を引き起こしています。さらに、がんが以下の部位に拡がっている場合があります:


乳房の皮膚に拡がったがんは、炎症性乳がんになることもあります。詳しい情報については、炎症性乳がんのセクションをご覧ください。

IIIC期


IIIC期乳がん。左図は、腋窩リンパ節に存在するがんを示している。中央の図は、鎖骨上のリンパ節に存在するがんを示している。右図は、腋窩と胸骨付近のリンパ節に存在するがんを示している。



IIIC期乳がん。乳房内に腫瘍が認められないか、または腫瘍の大きさが様々で、胸壁や乳房の皮膚に転移している場合があり、腫脹または潰瘍を引き起こしていることがあります。さらに、がんが10個以上の腋窩リンパ節に転移しています(左図);または鎖骨上方または下方のリンパ節に転移しています(中央の図);または腋窩リンパ節および胸骨付近のリンパ節に転移しています(右図)。乳房の皮膚へ転移したがんは炎症性乳がんになることがあります。



IIIC期では、腫瘍乳房内に認められないか、または腫瘍の大きさは問われません。がんは乳房の皮膚に転移して腫脹または潰瘍を引き起こしている場合がある、または胸壁に拡がっている、もしくはその両方です。さらに、がんは以下の部位に拡がっています:


乳房の皮膚に拡がったがんは、炎症性乳がんになることもあります。詳しい情報については、炎症性乳がんのセクションをご覧ください。

治療法の決定に際して、IIIC期の乳がんは、さらに手術可能なIIIC期と手術不能のIIIC期に分けられます。

IV期


IV期乳がん:図は、乳がんが転移する可能性のある脳、肺、肝臓、骨などの部位を示している。拡大図は、がん細胞が血液やリンパ節を介して体の別の部位に移動し、転移がんを形成する様子を示している。



IV期乳がん。がんは、脳、肺、肝臓、骨など、体内の他の部位に転移しています。



IV期では、体の他の臓器(ほとんどは骨、肝臓、または脳)にがんが転移しています。

 | 

炎症性乳がん

炎症性乳がんでは、がんが乳房の皮膚に拡がっていて、乳房が赤く腫れあがって熱感が生じます。発赤と熱感が生じるのは、がん細胞によって皮膚内のリンパ管が塞がれるためです。また、乳房の皮膚が、橙皮状皮膚(オレンジの皮のような皮膚)と呼ばれるくぼみ状の外観を呈してくる場合もあります。さらに、乳房に触知できるしこりが1つも存在しない場合もあります。炎症性乳がんの場合の病期は、IIIB期IIIC期IV期のいずれかです。



発赤、橙皮状皮膚、および陥没乳頭を伴う左胸の炎症性乳がん。



橙皮状皮膚および陥没乳頭を示す左胸の炎症性乳がん。



 | 

治療選択肢の概要

妊娠中の女性に対する治療法の選択は、がんの病期と妊娠週数に左右されます。
標準治療として以下の3種類が用いられています:
手術

妊娠している乳がん患者さんの大部分は、乳房を切除する手術を受けます。その際には、わきの下のリンパ節を一部だけ採取して、顕微鏡で観察し、がん徴候を調べます。

がんを切除する手術法には以下のものがあります:


  • 非定型的根治的乳房切除術:がんに侵された側の乳房全体とともに、わきの下の多数のリンパ節、胸部の筋肉を覆う組織、さらに場合により胸壁の筋肉の一部を併せて切除する手術法。この手術法は妊娠している女性に対して非常によく用いられます。

    非定型的根治的乳房切除術。左図は、乳房、わきの下のリンパ節の大半または全部、胸筋を覆う膜、胸壁の筋肉の一部(場合による)の切除範囲を示している。右図は乳房の断面図で、胸壁(肋骨と筋肉)、脂肪組織、腫瘍を示している。
    
    


    非定型的根治的乳房切除術。乳房全体と切除対象となるリンパ節が点線で示されています。さらに胸壁の筋肉を切除する場合もあります。




  • 乳房温存手術:がんと周囲の正常組織の一部を摘出するものの、乳房自体は残しておく手術。がんの位置が胸壁に近い場合は、胸壁を覆う組織の一部を併せて切除することもあります。この種の手術法は、乳腺腫瘤摘出術、乳房部分切除術、乳管腺葉区域切除術、1/4切除術、乳房温存手術とも呼ばれます。

    乳房温存手術:左図は、腫瘍とそれを取り囲む若干の正常細胞に対する切除を示している。右図は、わきの下にある数個のリンパ節の切除と、腫瘍および近接する胸壁を覆う組織の一部の切除を示している。脂肪組織も示されている。
    
    


    乳房温存手術。腫瘍と周囲の若干の正常組織を切除しますが、乳房そのものは切除しません。同時にわきの下のリンパ節を部分的に切除する場合もあります。がんの位置が胸壁に近い場合は、胸壁を覆う組織の一部を併せて切除することもあります。




たとえ医師が手術の際に確認できる全てのがんを切除したとしても、患者さんによっては、残存している可能性のあるがん細胞を死滅させることを目的として、術後に放射線療法または化学療法が実施される場合があります。早期乳がんの妊婦さんには、出産後に放射線療法とホルモン療法が行われます。がんの再発のリスクを抑えるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞を死滅させる治療法です。放射線療法には2種類のものがあります。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、放射性物質を針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの中に封入し、それをがん組織の内部または周辺に直接留置する方法です。放射線療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。

放射線療法は胎児に有害な影響を及ぼす危険性があるため、妊娠中の早期(I期II期)乳がんの女性には実施されません。また、進行期(III期IV期)の乳がんの女性についても、妊娠初期の3ヵ月間は実施されず、可能であれば出産まで延期します。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脳脊髄液内や臓器内、あるいは腹部などの体内に薬剤を直接注入する化学療法では、その領域にあるがん細胞に薬が集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療対象となるがんの種類と病期に応じて異なります。

通常、化学療法は妊娠初期の3ヵ月間は実施されません。この期間を過ぎてからの化学療法は、通常、胎児に悪影響を及ぼしませんが、早産や低体重での出生などの原因となる場合があります。

詳しい情報については、乳がんに対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。

人工妊娠中絶については、その実施によって母親の生存の可能性が高まることはないと考えられています。

人工妊娠中絶については、その実施によって母親の生存の可能性が高まるとは考えられないため、治療選択肢となることは通常ありません。

 | 

病期ごとの治療選択肢

早期乳がん(I期およびII期)

早期乳がんI期II期)の治療法には以下のものがあります:


進行期乳がん(III期およびIV期)

進行期 乳がんIII期IV期)の治療法には以下のものがあります:


放射線療法と化学療法は、妊娠初期の3ヵ月間は実施すべきではありません。

 | 

妊娠と乳がんについての他の情報

手術や化学療法が計画されている場合には、体内での乳汁分泌を停止させて授乳を中止するべきです。

手術を受ける予定がある場合は、乳房を小さくしておくために、授乳を中止して乳房内の流量を低下させるべきです。また、化学療法が計画されている場合にも、授乳は控えなければなりません。抗がんの多く(特にシクロホスファミドメトトレキサート)は高濃度で乳汁中に混入してくるため、乳児がその乳汁を飲めば何らかの悪影響が生じてきます。したがって、化学療法を受けている女性は授乳を行ってはなりません。乳汁分泌を停止させても、母親の予後は改善しません。

母親の乳がんが胎児に悪影響を及ぼすことはないと考えられています。

乳がん 細胞が母親から胎児に移行することはないようです。

かつて乳がんだった女性が妊娠したとしても、その生存が危うくなるといったことはないようです。

かつて乳がんを患っていた女性が妊娠しても、それにより自身の生存に悪影響が及ぶことはないようです。ただし、医師によっては、がんの再発を早期に発見するために、乳がん治療の終了後の2年間は子供をもつことを控えるように推奨しています。このことが女性の妊娠に関する決断に影響を及ぼす場合もあります。しかし、母親に乳がんの病歴があったとしても、そのことによって胎児に悪影響が及ぶことはないようです。

 | 

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、乳がんの治療と妊娠に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Adult Treatment Editorial Board. PDQ Breast Cancer Treatment and Pregnancy. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: http://www.cancer.gov/types/breast/patient/pregnancy-breast-treatment-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389161]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。

 |