ご利用について
このPDQがん情報要約では、男性乳がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- 男性乳がんについての一般的な情報
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男性乳がんは、乳房の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。
乳がんは男性にも発生します。乳がんはあらゆる年齢の男性に発生しますが、通常は60~70歳の男性に生じます。男性乳がんの症例数は乳がん症例全体の1%にも及びません。
男性に発生する乳がんとしては以下の種類のものが挙げられます:
女性の乳がんには非浸潤性小葉がん(葉という乳腺区域の1つに異常な細胞が発生する疾患)という種類もありますが、これが男性に発生したという報告は未だありません。
乳がんの家族歴などの要因が、男性の乳がんのリスクを高める可能性があります。
疾患が発生する危険性を増大させるものは全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。リスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。男性における乳がんのリスク因子には以下のものがあります:
男性乳がんの一部には、遺伝によって親から受け継がれた変異遺伝子がその原因となっているものも含まれます。
細胞内に存在する遺伝子には、両親から受け継がれた遺伝情報が保持されています。乳がん全体の約5~10%は遺伝性の乳がんが占めています。乳がんと関係のある変異遺伝子には、BRCA2などのように、特定の民族集団に多く認められるものがあります。 遺伝子に乳がんに関係する突然変異がある男性では、乳がんのリスクが高くなります。
突然変異遺伝子を検出(発見)できる検査がいくつかあります。このような遺伝子検査は、がんの発生リスクが高い家系の人に対して時折実施されています。詳しい情報については以下のPDQの要約をご覧ください:
男性における乳がんの診断には、乳房を調べる検査法が用いられます。
以下のような検査法や手技が用いられます:
ここでがんが発見された場合は、検査を行ってがん細胞が調べられます。
最善の治療法は、これらの検査結果に基づいて決定されます。これらの検査から以下の情報が得られます:
- がんが増殖する場合の速さ。
- がんが体全体に拡がる可能性。
- 特定の治療法の有効性。
- がんが再発する(再び現れる)可能性。
検査には以下のものがあります:
- エストロゲン受容体検査とプロゲステロン受容体検査:がん組織の中に含まれる、エストロゲンとプロゲステロン(それぞれホルモンの一種)に対する受容体の量を測定する検査法。エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体が通常より多いと、がんはエストロゲン受容体陽性またはプロゲステロン受容体陽性と呼ばれ、その両方に当てはまる場合もあります。この種の乳がんはより急速に増殖することがあります。これらの検査結果から、エストロゲンとプロゲステロンを遮断する治療法でがんの増殖を阻止できるかどうかが分かります。
- HER2検査:組織サンプル中のHER2/neu遺伝子の数とHER2/neu蛋白の量を測定する臨床検査。通常よりHER2/neu遺伝子が多い、またはHER2/neu蛋白の量が多いと、がんはHER2/neu陽性と呼ばれます。この種の乳がんは増殖が速く、体の他の部位に転移する可能性が高いがんです。そうしたがんは、HER2/neu蛋白を標的としたトラスツズマブやペルツズマブなどの薬剤で治療する場合があります。
- 男性乳がんの病期
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乳がんの診断がついた後には、がん細胞の乳房内での拡がりや体の他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。
乳がんの診断がついた後には、がん細胞の乳房内での拡がりや他の部位への転移の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。こうした検査の過程は病期分類と呼ばれます。この過程で集められた情報を基にして病期が判定されます。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。男性の乳がんの病期分類は、女性の乳がんの場合と同じです。乳房からリンパ節や体内の他の部位へのがんの拡がり方についても、男性の場合と女性の場合で違いはありません。
病期分類の過程では以下のような検査法や手技が用いられます:
- センチネルリンパ節生検:手術中にセンチネルリンパ節を採取する手技。センチネルリンパ節とは、リンパ節群のなかで原発腫瘍からのリンパ節ドレナージ(リンパ液の流れ)を最初に受けるリンパ節です。これは原発腫瘍中のがん細胞が最初に転移する可能性の高いリンパ節です。まず、放射性物質や青色の色素を腫瘍の付近に注入します。注入された放射性物質や色素は、リンパ管を通ってリンパ節へと流れ込みます。そうして、放射性物質や色素が最初に到達したリンパ節が切除されます。採取された組織を病理医が顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調べます。そこでがん細胞が発見されなければ、それ以上のリンパ節の切除が不要になる場合もあります。ときに、複数のリンパ節群で1つのセンチネルリンパ節が見つかることがあります。
- 胸部X線検査:胸部の臓器と骨のX線検査。X線は放射線の一種で、これを人の体を通してフィルム上に照射すると、そのフィルム上に体内領域の画像が映し出されます。
- CTスキャン(CATスキャン):体内の領域を様々な角度から撮影して、精細な連続画像を作成する検査法。この画像はX線装置に接続されたコンピュータによって作成されます。臓器や組織をより鮮明に映し出すために、造影剤を静脈内に注射したり、患者さんに造影剤を飲んでもらったりする場合もあります。この検査法はコンピュータ断層撮影法(CT)やコンピュータ体軸断層撮影法(CAT)とも呼ばれます。
- 骨スキャン:骨の内部に活発に分裂している細胞(がん細胞など)が存在していないかを調べる検査法。まず、ごく少量の放射性物質を静脈内に注入し、血流に乗せて全身に巡らせます。この放射性物質にはがんが生じている骨に集まっていく性質があるため、これをスキャナを用いて検出します。
- PETスキャン(陽電子放射断層撮影):体内の悪性の腫瘍細胞を検出するための検査法。まず、放射性のあるブドウ糖の溶液を少量だけ静脈内に注射します。その後、周囲を回転しながら体の内部を調べていくPETスキャナという装置を用いて、ブドウ糖が消費されている体内の領域を示す画像を作成していきます。悪性腫瘍細胞は、正常な細胞よりも活発でブドウ糖をより多く取り込む性質があるため、画像ではより明るく映し出されます。
体内でのがんの拡がり方は3種類に分けられます。
がんは発生した場所から体内の他の部位に拡がることがあります。
がんが体内の他の部位に拡がることを転移と呼びます。がん細胞は発生した場所(原発腫瘍)から分離し、リンパ系や血液を介して移動します。
転移性腫瘍は、原発腫瘍と同じ種類のがんです。例えば、乳がんが骨に転移した場合、骨にできたがん細胞は、実際は乳がんの細胞です。このような疾患は、転移性乳がんであって、骨がんではありません。
乳がんの病期は、原発腫瘍の大きさと位置、周辺リンパ節や他の部位への転移、腫瘍の悪性度、特定のバイオマーカーの有無に基づいて決定されます。
最適な治療計画を立て、予後を理解するには、乳がんの病期について知ることが重要です。
乳がんの病期グループには以下の3種類があります:
- 最初に臨床的予後病期として、全ての患者さんに、病歴、身体診察、画像検査(実施される場合)、生検に基づく病期が割り当てられます。臨床的予後病期は、TNM病期分類システム、腫瘍悪性度、バイオマーカーの状態(ER、PR、HER2)により表されます。臨床病期分類では、乳腺X線検査または超音波検査でリンパ節を調べ、がんの徴候がないか確認します。
- 続いて、最初の治療で手術を受けた患者さんに病理学的予後病期が適用されます。病理学的予後病期は、全ての臨床情報、バイオマーカーの状態、手術時に採取された乳房組織とリンパ節に対する臨床検査の結果に基づきます。
- 解剖学的病期は、TNMシステムで表されるがんの大きさと拡がりに基づきます。解剖学的病期はバイオマーカー検査を行うことができない地域で使用されます。米国では用いられていません。
TNMシステムは、原発腫瘍の大きさと周辺リンパ節や他の部位へのがんの拡がりを表現するために使用されます。
乳がんの場合は、TNMシステムで腫瘍が以下のように表されます:
腫瘍(T)。腫瘍の大きさと位置。
- TX:原発腫瘍の評価が不可能。
- T0:乳房に原発腫瘍の徴候が見られない。
- Tis:非浸潤性乳がん。非浸潤性乳がんには以下の2種類があります:
- Tis(DCIS):DCISは乳管の内側を覆う組織の中に異常な細胞が認められる病態です。この異常細胞が乳管の壁を越えて乳房内の周辺組織に拡がることは、通常はありません。しかし場合によっては、DCISが他の組織に拡がる浸潤性乳がんに変化することもあります。現在のところ、浸潤がんになる可能性のある病変を予測することはできません。
- Tis(乳頭のパジェット病):乳頭のパジェット病は、乳頭の皮膚細胞に異常な細胞が認められ、乳輪に拡がることもある病態です。TNMシステムによる病期分類は行われません。パジェット病と浸潤性乳がんがともに認められる場合は、浸潤性乳がんの病期分類にTNMシステムが使用されます。
- T1:腫瘍の大きさが20mm以下。T1腫瘍は腫瘍の大きさに応じて4種類に分けられます:
- T1mi:腫瘍の大きさが1mm以下。
- T1a:腫瘍は1mmより大きく、5mm以下。
- T1b:腫瘍は5mmより大きく、10mm以下。
- T1c:腫瘍は10mmより大きく、20mm以下。
- T2:腫瘍は20mmより大きく、50mm以下。
- T3:腫瘍の大きさが50mmを超えている。
- T4:腫瘍は以下のいずれかに当てはまります:
リンパ節(N)。がんが転移したリンパ節の大きさと位置。
手術で切除されたリンパ節を病理医が顕微鏡で検査して、病理学的にリンパ節の病期を分類します。リンパ節の病理学的な病期分類は以下のように表されます。
- NX:リンパ節の評価が不可能。
- N0:リンパ節にがんの徴候が見られない、またはリンパ節内に0.2mm以下の微小ながん細胞の塊が存在する。
- N1:がんは次のいずれかに当てはまる:
- N1mi:がんは腋窩(わきの下の)リンパ節に転移しており、大きさは0.2mmを超えるが、2mm以下。
- N1a:がんは1~3個の腋窩リンパ節に転移しており、少なくとも1個のリンパ節に存在するがんの大きさが2mmを超える。
- N1b:がんは原発腫瘍と同じ側の胸骨付近に位置するリンパ節に転移しており、がんの大きさは0.2mmを超え、センチネルリンパ節生検で発見される。がんは腋窩リンパ節には認められない。
- N1c:がんは1~3個の腋窩リンパ節に転移しており、少なくとも1個のリンパ節に存在するがんの大きさが2mmを超える。さらにがんはセンチネルリンパ節生検により、原発腫瘍と同じ側の胸骨付近に位置するリンパ節で発見される。
- N2:がんは次のいずれかに当てはまる:
- N2a:がんは4~9個の腋窩リンパ節に転移しており、少なくとも1個のリンパ節に存在するがんの大きさが2mmを超える。
- N2b:がんは胸骨付近のリンパ節に転移しており、画像検査で発見される。センチネルリンパ節生検またはリンパ節郭清で、腋窩リンパ節にがんが認められない。
- N3:がんは次のいずれかに当てはまる:
- N3a:がんは10個以上の腋窩リンパ節に転移しており、少なくとも1個のリンパ節に存在するがんの大きさが2mmを超えている、またはがんは鎖骨下方のリンパ節に転移している。
- N3b:がんは1~9個の腋窩リンパ節に転移しており、少なくとも1個のリンパ節に存在するがんの大きさが2mmを超える。がんは胸骨付近のリンパ節にも転移しており、画像検査で発見される。
または
がんは4~9個の腋窩リンパ節に転移しており、少なくとも1個のリンパ節に存在するがんの大きさが2mmを超える。さらにがんは原発腫瘍と同じ側の胸骨付近に位置するリンパ節にも転移しており、がんの大きさは0.2mmを超え、センチネルリンパ節生検で発見される。
- N3c:がんは原発腫瘍と同じ側の鎖骨より上に位置するリンパ節に転移している。
乳腺X線撮影または超音波検査でリンパ節を調べた場合の病期分類は、臨床病期分類と呼ばれます。リンパ節の臨床病期分類についての説明は、ここでは省略します。
悪性度分類法は、乳房腫瘍が増殖または拡がる速さの見込みを表すために用いられます。
悪性度分類法では、顕微鏡でがん細胞と組織がどのくらい異常に見えるか、およびそのがん細胞がどのくらい速く増殖または拡がりそうかという点に基づいて腫瘍を表現します。高悪性度のがん細胞に比べて、低悪性度のがん細胞は外観が正常な細胞に似ており、増殖や拡がりも緩やかに進む傾向があります。がん細胞と組織の異常度を表すために、病理医は以下の3つの特徴について評価を行います:
- 腫瘍組織に正常な乳管がどのくらい含まれているか。
- 腫瘍細胞の核の大きさと形状。
- 腫瘍細胞が増殖し分裂する速さの指標となる、分裂中の細胞の数。
病理医はそれぞれの特徴に対して1~3のスコアを割り当てます。スコア「1」は細胞や腫瘍組織の外観が正常な細胞や組織に近い場合を表し、スコア「3」は細胞や組織の外観が著しく異常である場合を示します。特徴ごとのスコアを足し合わせると、合計でスコアは3~9になります。
次の3種類の悪性度に分けられます:
乳がん細胞が特定の受容体を持っているかどうかを明らかにするために、バイオマーカー検査が行われます。
健康な乳腺細胞や一部の乳がん細胞は、エストロゲンとプロゲステロンというホルモンに結合する受容体(バイオマーカー)を持っています。これらのホルモンは健康な細胞や一部の乳がん細胞が増殖または分裂するために必要です。これらのバイオマーカーの検査を行うには、生検や手術により、乳がん細胞が含まれる組織のサンプルを採取します。このサンプルは検査室で調べられ、乳がん細胞にエストロゲン受容体とプロゲステロン受容体が存在するかどうかが調べられます。
また、全ての乳がん細胞の表面には、HER2と呼ばれる別の種類の受容体(バイオマーカー)が存在します。HER2受容体は乳がん細胞の増殖や分裂に必要になります。
乳がんで用いられるバイオマーカー検査には以下のものがあります:
- エストロゲン受容体(ER)。乳がん細胞にエストロゲン受容体があれば、そのがん細胞はER陽性(ER+)と呼ばれます。乳がん細胞にエストロゲン受容体がなければ、そのがん細胞はER陰性(ER-)と呼ばれます。
- プロゲステロン受容体(PR)。乳がん細胞にプロゲステロン受容体があれば、そのがん細胞はPR陽性(PR+)と呼ばれます。乳がん細胞にプロゲステロン受容体がなければ、そのがん細胞はPR陰性(PR-)と呼ばれます。
- ヒト上皮成長因子受容体2(HER2/neuまたはHER2)。乳がん細胞の表面に通常より多くのHER2があれば、そのがん細胞はHER2陽性(HER2+)と呼ばれます。乳がん細胞の表面にあるHER2が通常量であれば、そのがん細胞はHER2陰性(HER2-)と呼ばれます。HER2+乳がんは、HER2-乳がんより速く増殖または分裂する傾向があります。
乳がん細胞は、トリプルネガティブまたはトリプルポジティブと呼ばれることがあります。
- トリプルネガティブ。乳がん細胞にエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、通常より多量のHER2受容体がいずれも認められなければ、そのがん細胞はトリプルネガティブと呼ばれます。
- トリプルポジティブ。乳がん細胞にエストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、通常より多量のHER2受容体が全て存在する場合は、そのがん細胞はトリプルポジティブと呼ばれます。
エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2受容体の状態を把握することは、最適な治療の選択に重要です。いくつかの薬物は、エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンと受容体との結合を遮断して、がんの増殖を阻止できる可能性があります。また、乳がん細胞の表面に存在するHER2受容体を遮断してがんの増殖を阻止する別の薬物が使用されることもあります。
TNMシステム、悪性度分類法、バイオマーカーの状態を組み合わせて、乳がんの病期を分類します。
以下では乳がんに対する最初の治療として手術を受けた女性の3例を取り上げ、TNMシステム、悪性度分類法、バイオマーカーの状態を組み合わせて、乳がんの病理学的予後病期を判定します:
腫瘍の大きさが30mm(T2)で、周辺リンパ節に転移しておらず(N0)、体内で遠隔部位に転移しておらず(M0)、さらに以下の状態である場合:
- 悪性度1
- HER2+
- ER-
- PR-
この乳がんはIIA期です。
腫瘍の大きさが53mm(T3)で、4~9個の腋窩リンパ節に転移しており(N2)、体内で遠隔部位に転移しておらず(M0)、さらに以下の状態である場合:
- 悪性度2
- HER2+
- ER+
- PR-
この腫瘍はIIIA期です。
腫瘍の大きさが65mm(T3)で、3個の腋窩リンパ節に転移しており(N1a)、肺に転移しており(M1)、さらに以下の状態である場合:
- 悪性度1
- HER2+
- ER-
- PR-
この乳がんはIV期です。(転移性乳がん)
乳がんがどの病期に該当し、それを踏まえてどのように最適な治療を計画するのかを担当医と話し合ってください。
患者さんの担当医が手術後に受け取る病理報告には、原発腫瘍の大きさと位置、周辺リンパ節へのがんの転移、腫瘍の悪性度、特定のバイオマーカーの有無が記されています。病理報告や他の検査結果を参照して、乳がんの病期が判定されます。
患者さんが多くの疑問を持つことは珍しくありません。担当医に質問し、最適ながんの治療法を決定するうえで病期の情報をどのように使用するのか、またご自身に適しているかもしれない臨床試験があるかどうかについて説明を受けてください。
男性の乳がんの治療法は、病期によってある程度決まります。
I期、II期、IIIA期、および手術可能なIIIC期の乳がんの治療法については、早期/限局性/手術可能な男性乳がんの治療をご覧ください。
最初に発生した部位の付近に再発した(再び現れた)がんの治療法については、局所領域再発男性乳がんの治療をご覧ください。
IV期(転移性)乳がんまたは体の他の部位で再発した乳がんの治療法については、転移性男性乳がんの治療をご覧ください。
- 男性の炎症性乳がん
炎症性乳がんでは、がんが乳房の皮膚まで拡がっていて、乳房が赤く腫れあがり、熱感を生じます。この赤みと熱感は、がん細胞により皮膚中のリンパ管が塞がれることによって生じます。また、乳房の皮膚に、橙皮状皮膚(オレンジの皮のような皮膚)と呼ばれるくぼみが認められることもあります。乳房に触知できるしこりが1つも存在しない場合もあります。炎症性乳がんの病期は、IIIB期、IIIC期、IV期のいずれかです。
- 治療選択肢の概要
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男性乳がんの患者さんには様々な治療法が存在します。
男性乳がんの患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。
患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。
患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。
ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。
臨床試験は米国各地で行われています。臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。がん治療の選択では、患者さんとご家族に医療チームが加わって最適な治療法を決定していくのが理想的な形です。
男性の乳がんの治療では、標準治療として以下の5種類が用いられています:
手術
男性の乳がんに対する手術は、非定型的根治的乳房切除術(乳房、わきの下のリンパ節多数、胸部の筋肉の表面を覆う組織を切除し、場合により胸壁の筋肉も切除する手術)となるのが通常です。
がんを摘出しつつ乳房を残しておく手術法は乳房温存手術と呼ばれ、乳がんの男性に適用される場合もあります。乳腺腫瘤摘出術では、腫瘍(腫瘤)とともにその周囲の正常組織を少量だけ切除します。放射線療法は、手術後に残存しているがん細胞を殺傷するために実施されます。
化学療法
化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。
詳しい情報については、乳がんに対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。
ホルモン療法
ホルモン療法は、ホルモンを体内から除去したりその働きを阻害したりすることによって、がん細胞の増殖を阻止する治療法です。ホルモンとは、体内の内分泌腺で作られて血流内を循環する物質のことです。ホルモンの中には一部のがんを増殖させるものがあります。がん細胞内にホルモンが結合する分子(受容体)が存在するということが検査によって判明した場合は、薬物投与や手術、放射線療法などの手段を用いて、そのホルモンの分泌を抑制したり、作用を阻害したりする治療を行います。
タモキシフェンを使用するホルモン療法は、エストロゲン受容体陽性およびプロゲステロン受容体陽性の乳がんの患者さんによく使用されるほか、転移性乳がん(体の他の部位に転移したがん)の患者さんにも用いられます。
アロマターゼ阻害薬を使用するホルモン療法は、転移性乳がんの男性の一部に対して行われます。アロマターゼ阻害薬は体内において、アンドロゲンをエストロゲンに変換するアロマターゼと呼ばれる酵素の働きを阻害することで、体内のエストロゲンの量を減らします。アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンはいずれもアロマターゼ阻害薬です。
黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニストを使用するホルモン療法は、転移性乳がんの男性の一部に対して行われます。LHRHアゴニストは、精巣で作られるテストステロンの量を調節する下垂体に働きかけます。LHRHアゴニストを摂取している男性では、下垂体から精巣にテストステロンの分泌を抑える指令が送られます。リュープロリドとゴセレリンはどちらもLHRHアゴニストです。
他のホルモン療法には酢酸メゲストロールを使用するものや、フルベストラントなどの抗エストロゲン療法があります。
詳しい情報については、乳がんに対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。
標的療法
標的療法とは、特定のがん細胞だけを認識し攻撃する性質をもった薬物やその他の物質を用いる治療法です。標的療法では一般に、化学療法や放射線療法に比べて、正常な細胞に及ぼす害が少なくなります。男性の乳がんの治療で使用される標的療法には、モノクローナル抗体療法、チロシンキナーゼ阻害薬療法、サイクリン依存性キナーゼ阻害薬療法、哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)阻害薬療法などがあります。
モノクローナル抗体療法:モノクローナル抗体は製造ラボで作られ、がんなどの様々な疾患に対する治療に用いられる免疫系蛋白です。がんの治療薬として、これらの抗体は、がん細胞や他の細胞上に存在してがん細胞の増殖に関与する特定の標的に結合する性質をもちます。これにより、抗体はがん細胞の死滅、増殖の阻止、転移の抑止などの効果を発揮できるようになります。モノクローナル抗体は点滴によって投与されます。単独で使用されることもありますが、薬や毒素、放射性物質などをがん細胞に直接送り届けるという用途でも用いられます。
モノクローナル抗体療法には以下の種類があります:
チロシンキナーゼ阻害薬は、腫瘍の増殖に必要となる指令を妨害する標的療法薬の一種です。ラパチニブは、転移性乳がんの男性の治療に用いられることのあるチロシンキナーゼ阻害薬です。
サイクリン依存性キナーゼ阻害薬は、がん細胞の増殖を引き起こすサイクリン依存性キナーゼという蛋白の作用を阻害する標的療法薬の一種です。パルボシクリブは、転移性乳がんの男性の治療に用いられるサイクリン依存性キナーゼ阻害薬です。
哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)阻害薬は、mTORという蛋白の働きを阻害することで、がん細胞の増殖を防ぎ、腫瘍の増殖に必要な新しい血管の成長を妨げます。
詳しい情報については、乳がんに対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。
- 早期/限局性/手術可能な男性乳がんの治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
早期/限局性/手術可能な乳がんの治療法には以下のようなものがあります:
術後補助療法
手術の実施後にもはやがん細胞が認められなくなった時点で行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。たとえ医師が手術の際に確認できるがんを全て切除したとしても、患者さんによっては、手術後に残存している可能性のあるがん細胞を全て死滅させるために、放射線療法、化学療法、ホルモン療法、標的療法などを実施する場合があります。
こうした治療にはその対象が男性の場合でも、女性の場合と同等の生存率の向上が見込まれます。患者さんのホルモン療法に対する反応(ホルモン療法の効き目)は、腫瘍組織の中にホルモン受容体(蛋白の一種)が存在しているかどうかに左右されます。男性の乳がんの大半にはこのホルモン受容体が存在しています。そのため男性乳がんの患者さんにはホルモン療法が勧められるのが通常ですが、この治療法にはほてりや勃起不全(勃起を達成または維持できず性交が不可能になった状態)などの数多くの副作用のリスクがあります。
- 局所領域再発男性乳がんの治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
局所再発(治療後に限られた領域のみにがんが再び現れること)を起こした男性に対する治療法には以下のようなものがあります:
- 転移性男性乳がんの治療
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以下の治療法に関する情報については、治療選択肢の概要のセクションをご覧ください。
転移性乳がん(体内の遠隔部位に拡がったがん)の治療選択肢には以下のようなものがあります:
ホルモン療法
ホルモン受容体陽性またはホルモン受容体の状態が不明な転移性乳がんと診断された男性の治療法には、以下のようなものがあります:
ホルモン受容体陽性の腫瘍またはホルモン受容体の状態が不明な腫瘍を有し、骨または軟部組織にのみ転移がみられ、すでにタモキシフェンによる治療を受けた男性には、以下のような治療が行われます:
標的療法
ホルモン受容体陽性で他の治療に反応しなかった転移性乳がんの男性には、標的療法を含む以下のような治療法が用いられます:
HER2/neu陽性の転移性乳がんの男性には、以下のような治療法が用いられます:
- トラスツズマブ、ペルツズマブ、ado-トラスツズマブ エムタンシン、ラパチニブなどによる標的療法。
手術
放射線療法
- 症状を軽減し生活の質を改善するための骨、脳、脊髄、乳房、胸壁に対する放射線療法。
- 全身の骨に転移したがんによる痛みを軽減するために、ストロンチウム-89(放射性核種)。
- 男性の乳がんについてさらに学ぶために
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米国国立がん研究所が提供している男性の乳がんに関する詳しい情報については、以下をご覧ください:
米国国立がん研究所が提供している一般的ながん情報とその他の資源については、以下をご覧ください:
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、男性乳がんの治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
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臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Male Breast Cancer Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/breast/patient/male-breast-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389417]
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免責事項
PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。
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