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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

せん妄(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2016-03-09
    翻訳更新日 : 2017-02-17

PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Board

 このPDQがん情報要約では、せん妄の原因と治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

 PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

せん妄

せん妄についての一般的な情報

せん妄は精神状態の混乱であり、がんの患者さんに起こることがあります。

せん妄は精神状態の混乱であり、がん(特に進行がん)の患者さんに起こることがあります。せん妄状態の患者さんでは、以下の項目に問題がみられることがあります:


  • 注意。

  • 思考。

  • 意識。

  • 行動。

  • 感情。

  • 判断。

  • 記憶。

  • 筋肉の制御。

  • 睡眠と覚醒。

せん妄には次の3種類があります:


  • 低活動型:患者さんは活動的でなく、眠そうだったり、疲れているようだったり、抑うつ状態にあるようにみえます。

  • 過活動型:患者さんに、不穏(落ち着きのない状態)や、激越が認められます。

  • 混合型:患者さんは低活動型と過活動型の状態を交互に繰り返します。

せん妄は1日の間に発生し消失することがあります。

通常、せん妄の症状は突然起こります。多くの場合、数時間から数日にわたって発生し、症状の出現と消失が繰り返されることもあります。せん妄の多くは一時的で、治療が可能です。しかし、終末期の最後の24~48時間では、臓器不全などのためにせん妄が持続する場合もあります。進行がんの患者さんの大半は、死の数時間~数日前にせん妄状態になります。

本要約は、成人に起こるせん妄について書かれたものです。

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せん妄の原因

せん妄の原因には、がんやがん治療、他の病態などがあります。

がん患者さんに生じるせん妄には複数の原因があることが多く、特にがんが進行している場合や患者さんが多くの病態を抱えている場合には、その可能性が高くなります。せん妄の原因には以下のものがあります:


せん妄のリスク因子を把握することが重要です。

がん患者さんの多くは、せん妄に関する複数のリスク因子を持っていると考えられます。早期にリスク因子を特定しておくと、せん妄の予防に役立ち、発生した場合にも速やかに対処できることがあります。リスク因子には以下のものがあります:


  • 重篤な疾患。

  • 複数の疾患にかかっていること。

  • 高齢。

  • 認知症

  • 血液中のアルブミン蛋白)の濃度が低いこと(しばしば肝障害を引き起こす)。

  • 感染症。

  • 血液中の窒素老廃物の濃度が高いこと(しばしば腎障害を引き起こす)。

  • 精神や行動に影響を及ぼす医薬品を使用していること。

  • オピオイドなどの鎮痛薬を高用量で服用していること。

患者さんが複数のリスク因子を持っている場合は、リスクが高くなります。高齢で進行がんを患っている入院患者さんでは、多くの場合にせん妄のリスク因子が複数認められます。

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患者さんやご家族、医療提供者に対するせん妄の影響

せん妄によって生じた患者さんの変化が、家族や介護者を動揺させることがあります。

せん妄によって判断力が影響を受ける場合は、患者さんにとって危険です。せん妄によって、患者さんが異常な行動をとることがあります。物静かで穏やかな患者さんでも、突然気分が変化したり激越(興奮状態)に陥ったりすることがあり、より多くのケアが必要です。

せん妄は家族や介護者を動揺させることがあります。患者さんが激越状態にあるとき、家族は患者さんが痛みに苦しんでいるのだと考えがちですが、実際にそうであるとは限りません。せん妄の症状と痛みの違いを理解しておくことは、家族や介護者が必要な鎮痛の量を把握するのに役立ちます。医療提供者は、家族と介護者がこの違いを学ぶための手助けをすることができます。

せん妄は、身体面の健康やコミュニケーションの能力にも悪影響を及ぼします。

せん妄がみられる患者さんに、次の影響が及ぶことがあります:


  • 転倒しやすくなる。

  • 排尿と排便のコントロールができなくなることがある。

  • 脱水(水分摂取量が減って健康を維持できなくなった状態)を起こしやすくなる。

せん妄のある患者さんでは、そうでない患者さんよりも長期の入院が必要になることが少なくありません。

こうした患者さんに精神状態の混乱が生じると、以下の事態が起きることがあります:


  • 家族や介護者に自身の要望や気持ちを話すことができなくなる。

  • ケアに関する意思決定を実施できなくなる。

このような状況下では、医療提供者が患者さんの症状を評価することは難しくなります。場合によっては、家族が患者さんの代わりに意思決定を行う必要が生じるでしょう。

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せん妄の診断

突然の人格の変化、思考力の障害、異常なまでの不安や抑うつは、せん妄の徴候かもしれません。

以下の症状が突然生じた場合は、せん妄の徴候である可能性があります:


  • 激越

  • 非協力的な態度。

  • 性格や行動の変化。

  • 思考力の障害。

  • 注意力の障害。

  • 異常に強い不安抑うつ

せん妄の症状はうつ病や認知症の症状によく似ています。

せん妄の早期症状はうつ病や認知症の症状に似ています。せん妄で患者さんの活動性が低下している場合は、うつ病であるかのようにみえることもあります。せん妄と認知症はいずれも記憶、思考、判断の障害をもたらします。認知症は、アルツハイマー病などの多くの病態により引き起こされます。せん妄と認知症の症状には、以下のような違いがあります:


  • せん妄の患者さんでは、意識の明瞭さや覚醒の度合いに変化がみられることがよくあります。一方、認知症の患者さんでは、一般的に病状がかなり進行するまで意識が鮮明で、覚醒状態も保たれています。

  • せん妄は突然発生します(数時間または数日内)。一方、認知症は徐々に(数ヵ月~数年かけて)現れ、時間の経過とともに悪化していきます。

高齢のがん患者さんは、せん妄と認知症の両方を発症していることがあります。この状態では、医師による診断が困難です。せん妄の治療を行っても症状が続く場合は、認知症と診断される可能性が高くなります。 しばらくの間、患者さんの健康状態と症状を観察することで、せん妄と認知症の診断がつきやすくなる場合があります。

せん妄の原因を診断するために、身体診察や他の臨床検査が行われます。

医師は次の方法でせん妄の原因を特定しようとします。


  • 身体診察と病歴聴取:しこりなどの通常みられない疾患の徴候に注意しながら、総体的に身体を調べる診察法。患者さんの健康習慣やうつ病などの過去の病歴、治療歴なども調べます。身体診察によって、症状の原因となりうる肉体的な状態を除外できる場合があります。

  • 臨床検査 組織血液尿などの身体から得られる検査材料を調べる医学的な検査法。こうした検査は疾患の診断、治療計画、治療効果の確認、長期的な病状のモニタリングなどに有用です。

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せん妄の治療

治療では、せん妄の原因と症状の特定が行われます。

せん妄の原因と症状の両方が治療の対象となります。以下の点を考慮して治療法が決定されます:


  • 自宅、病院、療養施設など患者さんが居住または滞在している場所。

  • がん進行の程度。

  • せん妄の症状が患者さんに及ぼしている影響。

  • 患者さんと家族の希望。

せん妄の原因に対する治療法には、以下のものがあります:


終末期疾患の患者さんにせん妄が生じた場合は、症状に対する治療のみが行われることもあります。治療中、医師は患者さんの状態を綿密に観察します。

薬剤を使用しない治療も症状の軽減に役立つことがあります。

軽度のせん妄では、患者さんの周囲の環境を調節することが症状の軽減に役立ちます。以下の対策が有用です:


  • 患者さんのいる部屋を静かで適度に明るくし、見慣れた物を配置する。

  • 患者さんが見える所に時計やカレンダーを配置する。

  • 近くに家族がいるようにする。

  • できるだけ同じ介護者がつくようにする。

自身や他人に危害を加える可能性のある患者さんには、身体拘束が必要になることがあります。

薬剤による治療が行われることもあります。

患者さんの病態と心臓の健康状態に応じて、せん妄の症状を治療する薬剤が使用される場合があります。これらの薬物には重篤な副作用があるため、投薬を受けた患者さんの状態は綿密に監視されます。治療で用いられる薬剤には、以下のものがあります:


終末期にせん妄が生じた場合やせん妄が治療で改善されない場合には、鎮静が行われることがあります。

せん妄の症状が標準治療で緩和されず、患者さんに死が迫っている、あるいは痛みや呼吸困難が生じている場合には、他の治療が必要になります。場合によっては、患者さんを鎮静する(落ち着かせる)薬剤が用いられます。家族と医療チームが相談して、実施の決定を下します。

せん妄に対して鎮静を行うかどうかの決定は、以下のような指針に沿って行われます:


  • 専門家が患者さんの状態を何度も評価したうえで、せん妄が難治性(治療に反応しない病態)であると判断する。

  • 鎮静の実施の決定は、一名の医師ではなく、医療専門家のチームによる検討を受ける。

  • 継続的な鎮静を実施する前に、一晩などの短期間に限って、一時的に鎮静を行うことを検討する。

  • 医療専門家のチームは家族と話し合い、家族の意向を正確に把握するとともに、家族が緩和療法による鎮静について理解していることを確認する。

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現在実施中の臨床試験

NCI支援のがん臨床試験リストから、現在患者さんを受け入れている米国内のせん妄認知/機能的影響についての支持療法と緩和ケアの試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験の場所、治療のタイプ、薬剤の名前など、他の検索要素を用いて絞り込み検索を行うと、より具体的な結果が得られます。

臨床試験に関する一般情報は、NCIのウェブサイトからも入手することができます。

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本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、せん妄の原因と治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board. PDQ Delirium. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: http://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/side-effects/memory/delirium-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389165]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。

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