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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

吐き気と嘔吐(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2015-09-02
    翻訳更新日 : 2017-02-17

PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Board

 このPDQがん情報要約では、吐き気と嘔吐(N&V)の原因および治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

 PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

吐き気と嘔吐

一般情報

吐き気と嘔吐はがん治療の重篤な副作用です。

吐き気嘔吐がん 療法の非常に苦しい副作用で、化学療法を受けるほとんどの患者さんに影響があります。

吐き気とは、の背部やに生じる波打つような不快感のことで、嘔吐に至る場合もあります。嘔吐とは、胃の内容物が口から排出されることをいいます。むかつきとは、嘔吐を伴わない胃と食道の動きのことで、空吐きとも呼ばれます。治療法は改良されてきたものの、吐き気と嘔吐は今もがん治療の深刻な副作用です。吐き気は、患者さんにとって嘔吐以上の苦痛となる場合もあります。

吐き気と嘔吐は、患者さんの治療を継続し生活の質をより高く保つために制御すべきです。

がんの患者さんが治療を継続し、日常生活を営むうえで、吐き気と嘔吐を予防し制御することは非常に重要です。吐き気と嘔吐を制御しないと、以下の事象が生じる場合があります:


がん治療によって生じる吐き気と嘔吐には、次のように多くの種類があります:


急性の吐き気と嘔吐:化学療法の開始後24時間以内に起こる吐き気と嘔吐。

遅発性の吐き気と嘔吐:化学療法後24時間以上が経過してから起こる吐き気と嘔吐。晩発性の吐き気、嘔吐とも呼ばれます。

予測性の吐き気と嘔吐:化学療法の開始前に起こる吐き気と嘔吐。以前の化学療法治療の後に吐き気や嘔吐を体験した患者さんには、次の治療前に予測性の吐き気と嘔吐が起こる可能性があります。これは通常、3回目または4回目の治療後に始まります。治療室の匂い、光景、音などが患者さんに以前の症状を思い出させ、化学療法の前に吐き気と嘔吐を引き起こす誘因となります。

突出性の吐き気と嘔吐:制吐治療を受けてから5日以内に起こる吐き気と嘔吐。以降の吐き気と嘔吐を予防するために、別の薬剤用量が必要です。

難治性の吐き気と嘔吐:予防のために投与された薬剤に反応しない吐き気と嘔吐。

慢性の吐き気と嘔吐進行がんの患者さんでは、放射線療法により慢性の吐き気と嘔吐が生じる場合があります。慢性の吐き気と嘔吐には、他にも以下のような原因があります:


吐き気と嘔吐が管理されていない患者さんでは、全体的な医療コストがより高くなります。

がん治療により重度の吐き気と嘔吐が生じている患者さんにかかる医療コストは、以下の原因で高くなることがあります:


  • 入院期間の長期化。

  • 日常活動に対する支援の必要性。

  • 労働時間の喪失。

  • うつ病

吐き気と嘔吐を予防または管理できれば、医療コストは下がります。ただし、吐き気と嘔吐に対する予防的治療を行っても、多くの患者さんには制御されない症状が現れ、そのために医療費がかさみ、生活の質(QOL)が低下することがあります。

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原因

化学療法は、がん治療を受けている患者さんで最も一般的な吐き気と嘔吐の原因です。

吐き気は、無意識に働く身体機能を調節している中枢神経系の一部によって制御されています。嘔吐は脳の嘔吐中枢によって制御される反射現象です。匂い、味、不安、痛み、便通、行不良、いらだち、炎症による体の変化などが嘔吐の誘因になります。

多くの要因が吐き気や嘔吐のリスクを高めます。

患者さんが以下のような状態にある場合には、吐き気や嘔吐が起こりやすくなります:


放射線療法も吐き気と嘔吐を引き起こす場合があります。

放射線療法、特に消化管や肝臓、または脳への放射線照射を受けている患者さんでは、吐き気嘔吐が起こることがあります。放射線線量が多く、治療範囲が広いほど、吐き気や嘔吐の起こる危険性は高まります。放射線療法が原因で生じる吐き気や嘔吐は通常、治療後30分から数時間で発生します。放射線療法を受けない日には症状が和らぐ場合もあります。

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予測性の吐き気と嘔吐

予測性の吐き気と嘔吐は数回の化学療法後に生じることがあります。

予測性の吐き気嘔吐は、患者さんが一連の治療を何回か受けた後に起こることがあります。これは治療室の匂いなどが誘因となって起こります。例えば、化学療法の開始と同時にアルコール綿の匂いをかいだ患者さんが、後日アルコールの匂いを嗅いだだけで吐き気や嘔吐を経験することがあります。化学療法の回数を重ねるほど、予測性の吐き気や嘔吐を起こしやすくなります。以下の要因がある場合も、予測性の吐き気や嘔吐が起こりやすくなります:


  • 50歳未満であること。

  • 女性であること。

  • 前回の化学療法期間の終了後に、次の症状を経験したこと:
    • 吐き気と嘔吐。

    • ほてりや熱感。

    • ふらつきやめまいの感覚。


  • 乗り物酔いの病歴があること。

  • 強い不安を感じていること。

  • ある種の化学療法(吐き気や嘔吐をより起こしやすい種類のもの)。

  • 過去の妊娠中につわりがあったこと。

予測性の吐き気と嘔吐の発見が早ければ早いほど、治療効果が高くなる可能性があります。

予測性の吐き気と嘔吐の治療は、症状への対処が早いほど成功しやすくなります。予測性の吐き気と嘔吐に制吐を投与しても、効果は得られないようです。しかし、以下の治療法で症状が和らぐ場合があります:


これらの治療に関する専門的な訓練を受けた心理学者や他のメンタルヘルス専門家は、様々な機会に予測性の吐き気と嘔吐がみられる患者さんを支援することができます。

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急性または遅発性の吐き気と嘔吐

急性または遅発性の吐き気と嘔吐は、がん治療を受けている患者さんによくみられます。

化学療法は、がん治療に関係する吐き気嘔吐の原因のなかでも最も一般的なものです。

吐き気と嘔吐の頻度と重症度は、次の要因に左右されます:


  • 特定の薬物

  • 薬物の投与量または他の薬物と併用されたか否か。

  • 薬物の投与頻度。

  • 薬物の投与方法。

  • 個人差。

以下の要因があると、化学療法に伴う急性または遅発性の吐き気や嘔吐が起こりやすくなります:


  • 以前の化学療法期間の終了後に吐き気や嘔吐を経験したこと。

  • 女性であること。

  • 50歳未満であること。

  • 化学療法歴があること。

  • 乗り物酔いの個人歴があること。

  • つわりの個人歴があること。

  • 脱水

  • 栄養失調

  • 最近の手術歴。

  • 放射線療法

化学療法で急性の吐き気や嘔吐を起こしている患者さんには、遅発性の吐き気や嘔吐も起こりやすいと考えられます。

通常、急性および遅発性の吐き気と嘔吐は薬物で治療します。

通常、急性および遅発性の吐き気と嘔吐は制吐薬で治療します。化学療法のなかには、急性の吐き気や嘔吐を起こしやすいものがあります。毎回の治療前に、吐き気と嘔吐を予防する薬が投与される場合があります。また、化学療法後に遅発性の嘔吐を防止する薬が投与される場合もあります。一部の薬は体内での作用時間が短く、頻繁な投与が必要です。一方、長時間持続するため、それほど頻繁に投与しなくてもよい薬もあります。

次の表は、がん治療によって生じる吐き気と嘔吐の治療によく使用される薬を示しています:



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薬物を使用しない吐き気と嘔吐の治療

吐き気と嘔吐の制御を目的として、薬物を使用しない治療が行われることがあります。

薬物を使用しない治療法は、吐き気嘔吐を軽減し、制吐薬を効きやすくする効果があります。以下の治療法があります:


吐き気と嘔吐の治療に生姜が研究されています。

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本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、吐き気と嘔吐(N&V)の原因および治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board. PDQ Nausea and Vomiting. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: http://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/side-effects/nausea/nausea-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389289]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。

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