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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

人生の最後の数日間(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2016-04-08
    翻訳更新日 : 2016-06-29

PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Board

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、人生の最後の数日間から数時間に実施されるケアについて包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。


本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

終末期治療/管理

概要

進行がんの患者の余命を改善する治療法の発達が進んでいるにもかかわらず、米国がん協会によると、2016年のがんの死亡者数は595,690人に上ると推計されている。 [1] がん患者の死亡を取り巻く状況はさまざまである。Dartmouth Atlas Projectの報告で、診断後1年以内に死亡した65歳以上のがん患者に関する2003年から2007年のメディケアのデータが分析された。 [2] 米国全体で、患者の29%が病院で死亡し、61.3%が人生の最後の月に少なくとも1回は入院していた。さらに、患者の24%が集中治療室に少なくとも1回は入室していた。全国的に見て約6%の患者が人生の最後の月に化学療法を受けていた。反対に、死亡した患者の約55%はホスピスサービスを利用していた;しかし、平均滞在期間はわずか8.7日で、患者の8.3%は最期の3日間に登録していた。終末期(EOL)ケアの記述語における有意な地域差は不明である。

患者と家族の好みは、EOLに観察されるケアパターンの一因になっている可能性がある。ただし、EOLの話し合いを患者が想起すること、霊的ケア、または早期の緩和ケアが、積極性の低いEOL治療および/またはホスピス利用の増加に関連している。 [3] [4] [5] [6] [7] さらに、病院での死亡は、死別した介護者におけるより低い生活の質と精神疾患のリスク増大に関連している。 [8] (詳しい情報については、進行がんにおける終末期ケアへの移行計画に関するPDQ要約を参照のこと。)したがって、患者と家族がEOLを前にしてケアの目標と好みを表現できるよう支援することが重要である。

本要約では、EOLに予想されること;最期の数日から数時間を含む終末期に患者が経験する一般的な症状;治療またはケアに関する考慮事項についての情報を臨床医に提供する。患者、家族、臨床医が一般的に下す意思決定についても焦点を当て、アプローチの提案も行う。本要約の目的は、質の高いEOLケアに不可欠の情報を提供することである。

特に明記していない場合、本要約には成人に関する証拠と治療について記載している。小児に関する証拠と治療は、成人の場合とかなり異なる可能性がある。小児の治療に関する情報が入手できる場合は、小児に関する情報であることを明記した上でその内容を要約する。


参考文献
  1. American Cancer Society: Cancer Facts and Figures 2016. Atlanta, Ga: American Cancer Society, 2016. Available online. Last accessed January 14, 2016.[PUBMED Abstract]

  2. Goodman DC, Fisher ES, Chang CH, et al.: Quality of End-of-Life Cancer Care for Medicare Beneficiaries: Regional and Hospital-Specific Analyses. Lebanon, NH: Dartmouth Institute for Health Policy & Clinical Practice, 2010. Available online. Last accessed April 7, 2016.[PUBMED Abstract]

  3. Wright AA, Zhang B, Ray A, et al.: Associations between end-of-life discussions, patient mental health, medical care near death, and caregiver bereavement adjustment. JAMA 300 (14): 1665-73, 2008.[PUBMED Abstract]

  4. Mack JW, Cronin A, Keating NL, et al.: Associations between end-of-life discussion characteristics and care received near death: a prospective cohort study. J Clin Oncol 30 (35): 4387-95, 2012.[PUBMED Abstract]

  5. Balboni TA, Paulk ME, Balboni MJ, et al.: Provision of spiritual care to patients with advanced cancer: associations with medical care and quality of life near death. J Clin Oncol 28 (3): 445-52, 2010.[PUBMED Abstract]

  6. Temel JS, Greer JA, Muzikansky A, et al.: Early palliative care for patients with metastatic non-small-cell lung cancer. N Engl J Med 363 (8): 733-42, 2010.[PUBMED Abstract]

  7. Hui D, Kim SH, Roquemore J, et al.: Impact of timing and setting of palliative care referral on quality of end-of-life care in cancer patients. Cancer 120 (11): 1743-9, 2014.[PUBMED Abstract]

  8. Wright AA, Keating NL, Balboni TA, et al.: Place of death: correlations with quality of life of patients with cancer and predictors of bereaved caregivers' mental health. J Clin Oncol 28 (29): 4457-64, 2010.[PUBMED Abstract]

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終末期に予想されること

人生の最後の数週間~数日間

終末期(EOL)に良質のケアを提供するには、疾患の治療から、症状の緩和と生活の質に重点を移す時期を予測できなければならない。 [1] 食欲不振やせん妄などの特定の症状は、患者の余命が数週間または数ヵ月に限られていることを示す。 [2]

別の戦略としては、経時的に患者の機能的状態を確認し、その変化に応じて緩和を増やし、疾患の治療を減らす時期を決定することもできる。例えば、研究者のあるグループ [3] は、がんの成人外来患者11,374人のコホートから、来院時に医師または看護師により評価された約71,000のPalliative Performance Scale(PPS)スコアを得て、レトロスペクティブに解析した。PPSは患者の歩行レベル、活動レベル、疾患の証拠、セルフケアの実行能力、栄養摂取、意識レベルを表す11段階の尺度である。

研究者は患者に以下のような4つの状態のいずれかを割り当てた:


  • 安定(PPSスコア、70~100)。

  • 移行(PPSスコア、40~60)。

  • EOL(PPSスコア、10~30)。

  • 死亡。

研究期間中に死亡した患者4,806人のうち、49%は移行状態と記録され、46%は安定状態と記録されていた。移行状態の患者が1ヵ月以内に死亡する確率は24.1%であり、これはEOL状態の患者の確率(73.5%)よりも低かった。この結果は、PPSの連続的な測定が、患者と臨床医にとってEOLの切迫を把握するために有用であることを示している。

死期切迫

死期切迫、または死を迎えつつある状態とは、患者が症候群を呈し、3日以内に死亡すると予測されている状況のことである。 [4] 最期の数日間に、患者の神経認知的、心血管系、呼吸器系、消化器系、泌尿生殖器系、筋肉系の諸機能は徐々に低下していくことが多く、これは死の過程に特徴的な変化である。きわめて特異的な臨床徴候が多く存在し、臨床医はそれらを利用して、死期切迫(すなわち、数日以内の死亡)の診断を下すことができる。 [5] [6]

死期切迫は、不可逆の生理的過程であるため、予後に起こる現象というよりむしろ診断上の問題である。死期切迫を確実に診断できるかどうかは、患者および家族とのコミュニケーションに影響を及ぼす可能性があり、退院や処方薬物の中止、人工栄養、生命維持手段の使用、臨床ケア経路への登録など、複雑な医療に関する意思決定を左右するため、臨床医にとってきわめて重要である。 [7] [8] 臨床医は生存を過大評価しがちであるため [9] [10] 、適切な裏付けとなる証拠がない場合に、死期切迫の診断を躊躇することが少なくない。

1件の研究で、死を迎えつつある時期のがん患者に現れる5つの徴候が調査された。研究者らが報告した死亡までの時間の中央値は、死前喘鳴の開始から死亡までが23時間;下顎呼吸の開始からが2.5時間;四肢のチアノーゼの発現からが1時間;橈骨動脈の無脈からが2.6時間であった。 [11]

Investigating the Process of Dying研究では、一連のがん患者357人の身体的徴候が系統的に調査された。 [6] 対象とされた10の身体的徴候のうち、早期徴候は3つ、後期徴候は7つであった。早期徴候は発生頻度が高く、死亡の1週間以上前に発現し、3日以内の死亡に関する予測値は中等度であった。早期徴候には以下のものがあった:


  • 意識レベルの低下(Richmond Agitation Sedation Scaleスコアが-2以下)。

  • パフォーマンスステータスの低下(Palliative Performance Scaleスコアが20%以下)。

  • 液体の嚥下困難。

後期徴候はほとんどが最期の3日以内に発現し、発生頻度は低く、3日以内の死期切迫に対して非常に特異度が高かった。後期徴候には以下のものがあった: [6]


  • 橈骨動脈の無脈。

  • 下顎呼吸。

  • 尿量減少。

  • チェーン-ストークス呼吸。

  • 死前喘鳴。

  • 無呼吸期間。

  • 末梢性チアノーゼ。

特に、橈骨動脈の無脈(陽性LR、15.6)、下顎呼吸(陽性LR、10)、尿量減少(200cc/d以下)(陽性LR、15.2)、チェーン-ストークス呼吸(陽性LR、12.4)、死前喘鳴(陽性LR、9)の陽性尤度比(LR)が高く、これらの身体的徴候が死期切迫の診断に有用であることが示唆される。 [6] 感度が低いため、これらの徴候の欠如によって、死期切迫を除外することはできない。人生の最後の7日間のバイタルサインについて調査した1件のプロスペクティブ観察研究により、死が近づくにつれて血圧および酸素飽和度が低下したことが報告された。しかしながら、大部分の患者では人生の最後の12時間においてでさえバイタルサインが正常であった。ベースライン時と比較したバイタルサインの中等度の変化により、3日以内に死が差し迫っていると断定的に判定するまたは除外することはできなかった。したがって、観察を注意深く繰り返した場合でも死の予測は困難である。 [12]

死期切迫の診断に有用であることが判明している後期徴候には、他に次のようなものがある: [13]


  • 非反応性の瞳孔(陽性LR、16.7;95%信頼区間[CI]、14.9-18.6)。

  • 言語刺激に対する反応の低下(陽性LR、8.3;95%CI、7.7-9)。

  • 視覚的刺激に対する反応の低下(陽性LR、6.7;95%CI、6.3-7.1)。

  • 眼瞼を閉じられない(陽性LR、13.6;95%CI、11.7-15.5)。

  • 鼻唇溝の下垂(陽性LR、8.3;95%CI、7.7-8.9)。

  • 頸部の過伸展(陽性LR、7.3;95%CI、6.7-8)。

  • 声帯の呻吟(陽性LR、11.8;95%CI、10.3-13.4)。

  • 上部消化管出血(陽性LR、10.3;95%CI、9.5-11.1)。

結論として、ベッドサイドで把握される身体的徴候は、臨床医が死期切迫を診断する際に有用となるほか、臨床的な意思決定と家族とのコミュニケーションを支援するのにも役立つ。

最期の数時間におけるケア

死期切迫が把握できれば、家族はそれを受けて、患者の親しい知人に「別れを告げる」ときの訪れを知らせることもできる。最期の数時間におけるケアは、患者と患者の愛する人々に向けられるべきである。患者が経験している症状に、慎重かつ思慮深く対応し続けることに加え(本要約の最期の数ヵ月、数週間、数日にみられる症状最期の数ヵ月、数週間、数日にみられる症状のセクションを参照のこと)、家族や友人が患者の死に備えることも重要である。そうした備えには、以下のようなものがある:


  • よく起こる症状について知っておく。

  • 症状に対応する計画を明確にしておく。

  • 家族の恐怖や懸念を取り除く。

  • 患者の人生がこの時点で終結することを惜しみつつ、受け入れられるよう覚悟しておく。

「何かしたい」という意向をもつ家族に、患者のケア(例、口内を湿らせる)をしてもらうことは有用である。最期の数日から数時間にかけて、患者はしばしば、限られた時間だけ一過性の意識清明な状態になる。家族はこうした状態を想定しておき、これが死に際した一過程であり、必ずしも症状に対する投薬の結果でもなければ、患者の状態が予測より良化している徴候でもないことを理解しておくべきである。やりとりに支障が出ている患者でも、他人の存在を認識していることがある。したがって、患者に聞こえているものとして、親密な間柄の人が患者に話しかけることは望ましい。

特定の徴候に関する家族の教育が必要不可欠である。最期の数時間になると、歯ぎしりや差し出された食物や飲料から顔を背けるなどの動作から証拠付けられるように、患者はしばしば飲食の欲求が減弱するのを経験する。我々の社会における食物のもつ意味や患者が「空腹」であろうという推定のために、この行動は家族にとっては許容困難なものとなりうる。家族には、食物や飲料を強制的に与えると誤嚥という結果につながるということを忠告しておくべきである。再構成には、患者の口腔および口唇を保湿するための氷片または湿らせた口腔用塗布具の与え方の教示が含まれる。最後に、死前喘鳴は家族に特に強い苦痛を感じさせる。(詳しい情報については、本要約の最期の数ヵ月、数週間、数日にみられる症状最期の数ヵ月、数週間、数日にみられる症状セクションの死前喘鳴死前喘鳴セクションを参照のこと。)家族に死前喘鳴は自然な現象であり、患者の体位変換に十分注意することを理解させるとともに、気管内吸引が妥当でない理由を説明することが重要である。 [14]

病院で死を迎える患者の場合は、臨床医は剖検に関する家族の意向を確認しておき、その際は遺体が丁重に扱われることと、要望があれば開棺での葬式も可能であることを伝えて、安心させる必要がある。

医療従事者は、なるべく患者および/または家族が指定した牧師または宗教指導者に相談した上で、死の訪れに関して家族が恐怖を抱いていないかどうかと、家族にとって重要な文化的または宗教的儀礼があるかどうかを調べておく必要がある。そのような儀礼としては、遺体の安置方法(例、イスラム教徒の患者では頭をメッカの方角に向ける)や遺体の清拭には同性の介護者または家族のみが加わること(多くの正統派宗教で実践されている)などが挙げられる。死が訪れたときのそれを看取った人々の悲嘆の表現は非常に多様であり、それは一部には文化に、また一部にはその死に対する準備によって決まってくる。家族が支援を受け入れる場合は、できる限り早期のうちに病院付き牧師に相談すること。医療提供者は、他の愛する人々への連絡やその他の手配(葬儀業者への連絡など)の中で、家族に支援を提供することが可能である。(詳しい情報については、がん医療における霊性に関するPDQ要約を参照のこと。)


参考文献
  1. Lorenz K, Lynn J, Dy S, et al.: Cancer care quality measures: symptoms and end-of-life care. Evid Rep Technol Assess (Full Rep) (137): 1-77, 2006.[PUBMED Abstract]

  2. Maltoni M, Caraceni A, Brunelli C, et al.: Prognostic factors in advanced cancer patients: evidence-based clinical recommendations--a study by the Steering Committee of the European Association for Palliative Care. J Clin Oncol 23 (25): 6240-8, 2005.[PUBMED Abstract]

  3. Sutradhar R, Seow H, Earle C, et al.: Modeling the longitudinal transitions of performance status in cancer outpatients: time to discuss palliative care. J Pain Symptom Manage 45 (4): 726-34, 2013.[PUBMED Abstract]

  4. Hui D, Nooruddin Z, Didwaniya N, et al.: Concepts and definitions for "actively dying," "end of life," "terminally ill," "terminal care," and "transition of care": a systematic review. J Pain Symptom Manage 47 (1): 77-89, 2014.[PUBMED Abstract]

  5. Domeisen Benedetti F, Ostgathe C, Clark J, et al.: International palliative care experts' view on phenomena indicating the last hours and days of life. Support Care Cancer 21 (6): 1509-17, 2013.[PUBMED Abstract]

  6. Hui D, dos Santos R, Chisholm G, et al.: Clinical signs of impending death in cancer patients. Oncologist 19 (6): 681-7, 2014.[PUBMED Abstract]

  7. Ellershaw J, Ward C: Care of the dying patient: the last hours or days of life. BMJ 326 (7379): 30-4, 2003.[PUBMED Abstract]

  8. Hui D, Con A, Christie G, et al.: Goals of care and end-of-life decision making for hospitalized patients at a canadian tertiary care cancer center. J Pain Symptom Manage 38 (6): 871-81, 2009.[PUBMED Abstract]

  9. Lamont EB, Christakis NA: Prognostic disclosure to patients with cancer near the end of life. Ann Intern Med 134 (12): 1096-105, 2001.[PUBMED Abstract]

  10. Hui D, Kilgore K, Nguyen L, et al.: The accuracy of probabilistic versus temporal clinician prediction of survival for patients with advanced cancer: a preliminary report. Oncologist 16 (11): 1642-8, 2011.[PUBMED Abstract]

  11. Morita T, Ichiki T, Tsunoda J, et al.: A prospective study on the dying process in terminally ill cancer patients. Am J Hosp Palliat Care 15 (4): 217-22, 1998 Jul-Aug.[PUBMED Abstract]

  12. Bruera S, Chisholm G, Dos Santos R, et al.: Variations in vital signs in the last days of life in patients with advanced cancer. J Pain Symptom Manage 48 (4): 510-7, 2014.[PUBMED Abstract]

  13. Hui D, Dos Santos R, Chisholm G, et al.: Bedside clinical signs associated with impending death in patients with advanced cancer: preliminary findings of a prospective, longitudinal cohort study. Cancer 121 (6): 960-7, 2015.[PUBMED Abstract]

  14. Shimizu Y, Miyashita M, Morita T, et al.: Care strategy for death rattle in terminally ill cancer patients and their family members: recommendations from a cross-sectional nationwide survey of bereaved family members' perceptions. J Pain Symptom Manage 48 (1): 2-12, 2014.[PUBMED Abstract]

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最期の数ヵ月、数週間、数日にみられる症状

概要

終末期(EOL)の最期の数ヵ月から数週間にみられる複数の症状の頻度を一般的に示す証拠が入手可能である。しかし、進行がん患者が経験する症状に関する発表済み研究の結果を解釈し、比較する場合は、以下の方法論的課題を考慮する必要がある: [1]


  • 症状および/または症状の重症度の評価に用いられた器具のばらつき。

  • 症状の評価時期のばらつき、および一定期間にわたって評価を反復するかどうかの相違。

  • 研究対象が特定のがんに関する集団か、がん患者に限定される度合いの低い集団か。

  • 外来または入院のいずれの状況で患者を募集したか。

  • 専門の緩和ケアサービスが利用できるかどうか。

大規模でより包括的な1件の研究で進行がんの外来患者にみられる症状が調査され、その結果が報告された。 [2] 死亡の6ヵ月前に少なくとも1つのEdmonton Symptom Assessment System(ESAS)を受けていた進行がんの外来患者が研究に含まれた。ESASは9つの症状(不安、食欲減退、抑うつ、嗜眠、吐き気、疼痛、息切れ、疲労、健康感)の重症度を患者が判定する尺度である。患者10,752人にみられた症状の強さの平均(56,759個の評価に関連)について、経時的な変化を分析したところ、次の2つのパターンが明らかになった: [2]


  • 疼痛、吐き気、不安、抑うつの平均スコアは、死亡前の6ヵ月間に比較的安定していた。

  • 息切れ、嗜眠、健康感、食欲減退、疲労は時間とともに重くなり、特に死亡前1ヵ月はその傾向が強かった。

よりEOLに近い時期の症状について、1件のプロスペクティブ研究が、急性期緩和ケア病棟で死亡したがん患者203人の最終週にみられた症状プロフィールを記録した。 [3] [証拠レベル:II]コミュニケーションがとれる患者の割合は、人生の最後の7日間に80%から39%に減少した。ESASの食欲不振、嗜眠、疲労、低い健康感、呼吸困難は、死亡が近づくにつれて増強した。対照的に、ESASの抑うつは時間の経過とともに低下した。固形物および液体の嚥下困難と尿失禁を呈した患者の割合は、人生の最後の数日間に増加した。頻度は低いものの最期の数時間に起こる可能性があって同程度の問題となる症状としては、死前喘鳴と出血が挙げられる。

以下のセクションでは、いくつかの一般的な症状について要約し、利用可能な証拠に基づいて、症状を軽減しうるアプローチを示す。ただし、最終的な確認は必要である。症状は多くの場合に群発するため、ある症状が存在するときは、同じ群に属する別の症状をうっかり悪化させないよう、他の症状についても留意するべきである。例えば、複数の観察研究に対する系統的レビューは、4つの一般的な症状群(不安-抑うつ、吐き気-嘔吐、吐き気-食欲減退、疲労-呼吸困難-嗜眠-疼痛)が存在すると結論している。 [4]

せん妄

患者の50~90%で、死亡前に終末期のせん妄が生じる。 [5] ほとんどの患者は、意識レベルの低下を伴う低活動型せん妄を経験する。激越、幻覚、不穏は、過活動型および/または混合型せん妄を来したごく一部の患者にみられることがある。せん妄は短い生存期間に関連し、症状の評価やコミュニケーション、意思決定を複雑にする。さらに、介護者と医療専門家に極度の苦悩をもたらす場合がある。 [6] [7] [8] 終末期せん妄に関連する危険因子には、低酸素性脳症、代謝的要素、向精神薬や脱水などの可逆性の要因の欠乏などがある。 [9] 安全対策には、不穏または激越時の事故または自傷行為からの患者の保護が含まれる。身体拘束の使用は最小限に留めるべきである。見当識障害を是正することは最期の数時間にはほとんど役に立たない。愛する人のせん妄状態を目にする家族への教育および支援は正当とされている。

終末期患者のせん妄の管理に関するランダム化比較試験は存在しない。 [10] (完全なレビューについては、せん妄に関するPDQ要約を参照のこと。)せん妄患者のケアには、不必要な投薬の中止、代謝異常の是正(ケア目標と矛盾しない場合)、せん妄症状の治療、および安全な環境の提供が含まれうる。せん妄を引き起こすことが知られている薬物としては、コルチコステロイド、化学療法薬、生体応答調節薬、オピオイド、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン系、抗コリン薬などが挙げられる。モルヒネによる治療期間中にせん妄を発症した患者20人を対象としたオープンラベルの小規模プロスペクティブ研究では、フェンタニルへのローテーションにより18人の患者でせん妄の減少と疼痛管理の改善がみられた。 [11] [証拠レベル:II]

EOLのせん妄治療で薬物を選択する場合は、作用の発現時間と経口以外の投与様式が検討される。せん妄の管理に使用できる薬物にハロペリドールがあり、1~4mgを経口、静脈内、皮下のいずれかで投与する。 [12] 通常はこの用量を4~6時間ごとに繰り返し投与するが、重症例では1時間ごとに投与してもよい。クロルプロマジンが使用可能であるが、静脈内投与では重度の低血圧につながる可能性がある;したがって、使用には慎重を要する。 [13] 有効となりうるその他の薬物にはオランザピンがあり、2.5~20mgを夜間に経口投与する(嚥下不能の患者には口腔内崩壊錠が利用可能); [14] [証拠レベル:II]ほかに、クエチアピン; [15] およびリスペリドン(0.5~2mg)もある。 [16] 何らかの薬剤がハロペリドールより優れていることを実証したランダム化臨床試験は存在しないが、複数の小規模な(検出力の低い)研究で、オランザピンがハロペリドールと同等である可能性が示唆されている。最後に、ベンゾジアゼピン系(ロラゼパムなど)または非定型抗精神病薬は典型例ではせん妄を悪化させるが、アルコール離脱に関係するせん妄と、抗精神病薬およびその他の支持的方策で制御できない過活動型せん妄には有用となりうる。せん妄の難治例では、緩和的鎮静が正当化されうる。

死にゆく患者においては、既に死亡した愛する人々に関する幻聴および/または幻視を経験するという、せん妄とは別のものと考えられる、あまりよく理解されていない現象がみられる(終末期体験とも呼ばれる)。患者はときにこれらの幻覚を心地よく感じる場合もあるが、混乱というレッテルを貼られるという恐怖心から、その経験を医療従事者と共有できない場合もある。 [17] 患者のそばにいる家族は、心を乱すものとしてこれらの幻覚を捉えることもあり、支援と再保証が必要となろう。患者または家族の宗教指導者や霊的指導者、または病院付き牧師へのコンサルテーションが、しばしば有益となる。

疲労

疲労は、EOLに最もよくみられる症状の1つであり、最期の数日間が迫るにつれて有病率が高くなり、強度も強くなることが多い。 [18] EOLの疲労は多次元的であり、根底にある病態生理学はほとんど解明されていない。 [19] 嗜眠、脱力、睡眠障害に関連することがある。最期の7日間には、Palliative Performance Scaleのスコアも急速に低下する。 [20] 余命がわずか数日の患者を対象とした臨床試験は実施されていない。メチルフェニデートは余命数週間の患者の一部に有用となる場合がある。 [21] (詳しい情報については、疲労に関するPDQ要約を参照のこと。)

呼吸困難

呼吸困難は、息切れや空気飢餓感などとも表現され、非常に強い苦痛を患者にもたらす症状の1つであり、最期の数日間ないし数週間のがん患者でよくみられる症状である。 [2] [22] がんと診断された成人における呼吸困難の有病率は21~90%の範囲をとり、肺がんおよび進行がんと相関する。 [23] [証拠レベル:II]呼吸困難は余命が短いことを予測させる。

呼吸困難の病因は進行した悪性疾患であるのが通常だが、危険因子にはこの他にも腹水、慢性閉塞性肺疾患、筋力低下、肺炎などもある。呼吸困難は、閉塞性または拘束性疾患を克服するのにより多くの呼吸努力が必要になったとき(例、腫瘍、胸水)、十分な呼吸を維持するのにより多くの呼吸筋が必要になったとき(神経筋衰弱、悪液質)、もしくは換気必要量が増加したとき(例、高炭酸症、代謝性アシドーシス)に発生する。 [24] 胸腔穿刺など、回復の可能性がある原因を治療する侵襲性の高い介入が適切かそうでないかは場合による;患者の予後、ケアの目標、ロジスティックスを最初に考慮する必要がある。

人生の最後の数日間で、多くの患者は錯乱状態に陥ることがあり、その場合、呼吸困難の評価はさらに困難になる。呼吸数、酸素飽和度、呼吸補助筋の使用などの客観的な基準は、患者の主観的な呼吸困難の感覚と限定的にしか関連しない。 [23] 介護者は代わりに別の反応を報告することができる。 [25] Respiratory Distress Observation Scaleは自己報告できない患者用に開発された尺度である;ただし、患者が呈した呼吸困難との相関は、弱い相関から中程度の相関であった。 [26]

余命数日の患者における呼吸困難の緩和に関する原則と実践は、より長い余命の患者に対するものに類似している。経口、静脈内、または皮下のいずれかによるオピオイドの投与は、第一選択の治療選択肢として検討される。 [27] 気管支収縮の証拠を呈する患者には、気管支拡張薬を投与することもできる。

明らかに禁忌である患者を除き、コルチコステロイド系薬剤を検討してもよい。低酸素血症の患者には、酸素補給の使用が有益な場合がある。重度の呼吸困難の患者および高酸素血症/高炭酸ガス血症性の呼吸不全を呈する患者には、二相性陽圧呼吸および/または高流量の酸素が必要となることがあり、これらは挿管と機械的人工呼吸の非侵襲的な代替手段になる。 [28] [29] 抗生物質は呼吸困難に感染性の原因がある場合はその除去を可能にするが、こうした薬物の使用は患者のケア目標と一致した形で実施されるべきである。呼吸困難に伴って気管支痙攣がみられる場合は、グルココルチコイドか気管支拡張薬によって緩和が可能である。気管支拡張薬は、不安を増強することがあり、それにより呼吸困難感の増悪を招くこともあるため、その使用には注意が必要である。

まれな状況ではあるが、呼吸困難が以上の治療法のすべてに抵抗性となる場合がある。そのような場合には、緩和的鎮静が適応となることもあり、ベンゾジアゼピン系、バルビツレート系、または神経弛緩薬が用いられる。実際、難治性呼吸困難は、激越を呈するせん妄に次いで二番目に多くみられる緩和的鎮静の適応症である。 [30] (詳しい情報については、本要約の緩和的鎮静緩和的鎮静のセクションを参照のこと。)

疼痛

人生の最後の数日間における疼痛の有病率は30~75%である。 [18] [31] 疼痛の評価は、せん妄によって複雑化する場合がある。多くの患者は最期の数日間にコントロールできない疼痛に襲われることを恐れるが、経験から示唆されるところによると、大部分の患者で最期の数時間は疼痛緩和が達成されており、非常に高用量のオピオイドが適応となるのはまれである。 [32] 実際に、平均的な疼痛の強さは患者の死期が迫るにつれて低下していくことが多い。 [2]

患者、家族、医療従事者が、オピオイドの使用により死期が早まるかもしれないと懸念することがある。数件の研究は、オピオイド使用に関連した死の早期化の恐れに対して異議を唱えている。ホスピスまたは緩和ケアにおけるオピオイドの高用量使用に関する数件の研究では、オピオイドの投与量と生存期間との間には関連性は一切認められなかった。 [32] [33] [34] [35]

依然として、疼痛管理の原則はより早期の疾患の患者に対する原則と同様であり、オピオイドは標準的な選択肢である。(オピオイドの非経口投与とオピオイドローテーションに関するより完全なレビューについては、がん性疼痛に関するPDQ要約を参照のこと。)この時期には意識の低下がみられ、嚥下も困難となることから、医師は経口に代わる経路でのオピオイド投与を予想しておく必要がある。1件の研究では、患者の死期が近づくにつれて、間欠皮下注射と静脈内または皮下注入の使用が増加していた。 [36] 静脈内および皮下の両経路は、ともに入院または在宅の状況においてオピオイドやその他の薬物の送達に有効である。アクセスポートまたはカテーテルが留置されていない患者では、間欠または連続での皮下投与により無痛で効果的な送達経路が確保される。 [37]

咳嗽

咳嗽はEOL間際の進行がん患者に比較的多くみられる症状である。1件の小規模な研究では、ホスピスに登録し、Memorial Symptom Assessment Scaleを完了した進行がん患者の33%が苦痛を伴う症状として咳嗽を報告した。 [38] これはエネルギーの欠乏(68%)、疼痛(63%)、呼吸困難(60%)の有病率に近い水準である。最期の数週間から数日に差し掛かった患者の厄介な咳嗽の治療は、大部分が経験的なものであるが、画像診断または診断的評価が有用な場合もある。急性期の緩和ケア病棟に入院した進行がん患者を対象に実施された別の研究では、最期の数週間で咳嗽の有病率は10~30%であった。 [3] (評価と的を絞った介入が適応となりうる咳嗽の一般的な原因に関する詳しい情報については、心肺症候群に関するPDQ要約を参照のこと。)ただし、一部の薬剤(例、アンジオテンシン変換酵素阻害薬)が咳嗽を引き起こす場合や、制酸薬の処方で緩和される場合があるため、投薬を見直したり、胃食道逆流症に適合する症状の既往を除外したりするなどの簡単な調査も必要である。さらに、患者は咳嗽の原因となる合併症を有している可能性がある。

咳嗽反射は有害物質から肺を保護し、過剰分泌物を除去する。反射は、まず末梢の咳嗽受容体の刺激により開始され、この刺激は迷走神経を通じて脳幹に伝達される。中枢にある「咳中枢」機構の活性化により深吸気が引き起こされ、続いて閉鎖した声門部に対する呼気が生じる;その後、声門部が開き、呼気の排出が可能になる。 [39] 咳嗽に対する経験的アプローチは以下のようにまとめることができる:


  • 去痰薬

    は、気管支液を増加させるとともに分泌物の粘度を下げることにより、分泌物の除去を成功させる可能性を高める。グアイフェネシンは市販の風邪薬や咳止め薬に一般的に使用されている。妥当な用量は4~6時間ごとに200~400mgである。

  • 抗ムスカリン薬

    は口腔分泌物を減らし、それにより適切に嚥下できない患者で咳嗽反射が開始される場合がある(詳しい情報については、本要約の死前喘鳴死前喘鳴のセクションを参照のこと)。

  • 中枢作用性の鎮咳薬

    は、脳幹に存在すると推定される咳中枢を抑制する。すべてのオピオイド薬は鎮咳薬の特性を備えている。デキストロメトルファンは市販の鎮咳薬に含まれている。コデインは多くの場合、最初に処方される;それが奏効しない場合は、モルヒネなどのより強力なオピオイドが投与される。しかし、証拠はモルヒネ [40] またはヒドロコドン [41] が望ましいことを示唆している。

本要約の呼吸困難呼吸困難のセクションで述べたように、気管支拡張薬、コルチコステロイド薬、またはステロイド吸入の使用は、特定の適応症以外では潜在的なリスクがあり、有益性の証拠が不足しているため、そうしたいくつかの適応症に制限される。

便秘

最期の数日間における便秘の有病率は30~50%である。 [3] [31] 死期が切迫している患者に対する緩下薬の使用は、有益性が限定される場合がある。そうした患者では、多くの場合に嚥下困難が生じ、経口摂取が非常に困難になる。期待余命がわずか数日の患者における便秘の治療法は、症状によって決まる。適応であれば、緩下薬を経直腸的に投与してもよい(例、ビサコジルまたは浣腸)。

嚥下困難

機能性嚥下困難および構造性嚥下困難は、最期の数日間を迎えたがん患者の大部分に生じる。特に、患者は頻繁に液体と固形物の両方の嚥下困難を経験し、多くの場合に食欲不振と悪液質を伴う。がん患者を対象としたある研究では、経口でのオピオイド投与が継続されていた患者の割合は、死亡の4週間前の患者で62%、1週間前の患者で43%、24時間前の患者で20%であった。 [36] 状況に応じて必須の薬剤を静脈内、皮下、経直腸、経皮などの他の経路で投与することには、臨床的意義がある。必須ではない薬剤は中止される。

補助栄養には既知の有益性がなく、誤嚥や感染のリスクを増大させる場合がある。経管栄養または口からの摂取を中止する代わりに、楽しみのために少量の食物を与えることは、患者が食べたいという要望を表明しているのであれば妥当である。

死前喘鳴

死前喘鳴は、過剰分泌とも呼ばれ、衰弱のために気道分泌物の喀出が不能となった患者において、中咽頭および上気道内に唾液やその他の体液が蓄積することによって生じる。喘鳴は患者本人には苦痛ではないようである;しかし、家族は死前喘鳴が未治療の呼吸困難の存在を示しているかのように感じる場合がある。したがって、家族がこの症状の特徴について学び、死前喘鳴は呼吸困難に関連しないという認識を得ておくことは有益である。

死前喘鳴は死期の切迫を示すものであり、人生の最後の数日間を迎えた時期にある人の約50~60%に発生し、発症時期の中央値は死亡の16~57時間前である。 [20] [42] [43] 次の2種類の死前喘鳴が同定されている: [44] [45]


  • 真性死前喘鳴または1型。唾液分泌が原因と考えられるもの。

  • 偽性死前喘鳴または2型。感染症、腫瘍、体液貯留、誤嚥などによる、より深部の気管支分泌物が原因と考えられるもの。

あるレトロスペクティブなカルテレビューでは、唾液分泌が原因の患者では90%以上で死前喘鳴の緩和が得られていたが、肺由来の分泌物のある患者では治療に反応する可能性がはるかに低かった。 [45]

数件の臨床試験で、死前喘鳴の治療に用いられる種々の薬理学的薬剤に関する検討が行われたが、現在のところ、結果は否定的である。 [46] ある小規模な二重盲検ランダム化比較試験でスコポラミンと生食水が比較されたが、統計的有意差は認められなかった。 [47] また、別のランダム化研究ではアトロピンとプラセボに差が認められなかった。 [48] 別の複数のランダム化比較試験では、オクトレオチド [49] 、グリコピロレート [50] 、ヒヨスチンブチルブロミド [51] とスコポラミンが比較されたが、これらの試験でも否定的な結果が得られた。

明確な証拠がないにもかかわらず、薬理的治療は実地臨床で頻繁に使用されている。 [52] [53] 上記の薬剤選択肢では、中枢神経系に浸透する可能性が低く、他の抗ムスカリン薬と比べて有害作用の報告も少ないグリコピロレートが好まれる場合があるものの、この薬剤はせん妄を増悪する可能性がある。グリコピロレートは非経口剤と経口錠が利用できる。用量は経口で1~2mgまたは静脈内もしくは皮下で4時間ごとに0.1~0.2mgが典型的であり、持続静注の場合は1日当たり0.4~1.2mgである。体位変換が有用な場合がある。一部の患者では、過剰分泌物の吸引を検討してもよい。

ミオクローヌス

医療従事者は、ミオクローヌス、幻覚、錯乱を引き起こし、終末期せん妄に酷似することがあるオピオイド誘発性の神経毒性の患者を監視する必要がある。オピオイド誘発性の神経毒性が疑われる場合は、オピオイドローテーションを検討できる。 [11] これらの患者には、出血と腎不全のリスクがあるため、多くの場合に非ステロイド性抗炎症薬が禁忌である。

ミオクローヌスは、局所性または全身性の筋収縮によって引き起こされた突発的な不随意運動として定義される。収縮の期間は短く、ショック様と表現されることもある。ミオクローヌスには多くの潜在的な原因が存在し、それらのほとんどはおそらく、終末期に予測される代謝異常から生じる。特に、多くの投薬が中止されることになるため、投薬は重要な病因である。オピオイドはおそらく、ミオクローヌスの薬剤関連の原因として最も多くみられるものである。オピオイド誘発性のミオクローヌスについて報告されている有病率は2.7~87%と非常に幅広い。 [54]

ミオクローヌスの発生にオピオイドの関与が疑われる場合は、他のオピオイドへのローテーションが一次治療となる。急速に死期が迫ってきている患者の場合は、最期の数時間には医療提供者はオピオイドの変更でなくミオクローヌスへの対症治療を選択してもよい。クロナゼパムやジアゼパム、ミダゾラムなどのベンゾジアゼピン系の薬物が推奨されてきた。 [54] [55] [56] 抗痙攣薬のガバペンチンもオピオイド誘発性のミオクローヌスの軽減に有効であるとの報告がなされたが [57] 、他の報告ではガバペンチンはミオクローヌスの原因の1つとして関係付けられている。 [58] [59] [証拠レベル:III]1件のランダム化研究では、水分補給によってミオクローヌスが軽減されることが示されている。 [60] [証拠レベル:I]

発熱

発熱の頻度に関する信頼性の高いデータは存在しない。台湾のホスピスおよび緩和ケア病棟に入院していた末期がんの成人232人を対象とした1件のプロスペクティブ研究では、発熱は一般的でなく中等度の重症度であったこと(1~3のスケールで平均スコア0.37)が示された。 [61] 最期を目前にした死の2日前に発熱は増加していなかった。診断的評価と治療的介入の考慮に加えて、臨床医は発熱によって患者が苦悩していないか、または悪影響が出ていないかどうかを注意深く評価する必要がある。

発熱が死にゆく患者の経験の質に実質的な影響を及ぼすことを示すデータは存在しない。感染が発熱を引き起こすこともあるが、投薬や基礎にあるがんなどの他の病因が強く考慮される。抗菌薬使用の決定の主目的は、緩和またはホスピスケアを受けている患者における臨床的に疑いのある感染症の治療であるが、 [62] [63] [64] [証拠レベル:II]より新しい情報によると、経験的抗生物質を使用するリスクは、死期の迫った患者に対する潜在的な有益性によって正当化されないようである。 [65]

破滅的な出血

出血は一般的ではない(6~14%)ものの、極度の動揺を招く症状であり、突然で破滅的な場合は特に苦悩が大きい。 [66] 骨髄機能不全または肝不全の患者は、適切な血小板または凝固因子の不足による出血を起こしやすい;進行がん、特に頭頸部がんの患者は腫瘍自潰創または腫瘍増殖、手術、または放射線による血管構造に対する損傷により生じる出血を経験する。患者はまた、潰瘍、進行性の腫瘍増殖、または化学療法誘発性の粘膜炎による消化管出血を経験することもある。

破滅的な出血の管理には、破滅的な出血のリスクが高い患者の特定と、リスクおよび潜在的な管理戦略についての入念なコミュニケーションなどが含まれる。ただし、EOLに破滅的な出血が生じた患者を担当した臨床医に定性的面談を実施した2件の研究は、多くの場合に出血の予測は不可能であることと、事前のアプローチが患者と家族に過度の苦悩を引き起こす可能性があることを示している。 [67] [68] さらに、輸血などの医学的介入で破滅的な出血が予防できる可能性を示す証拠が不足していることから、出血のリスクについて患者と話し合うことを考慮に入れる必要がある。

別の戦略は、破滅的な出血が生じた患者に対して、出血開始から死亡までの間に抗不安薬または鎮静薬を投与することである。しかし、このアプローチの有効性を裏付ける証拠は乏しい; [66] [68] 臨床医の経験では、薬剤の投与に至る前に患者が意識喪失に陥ることが多く、加えて投薬に注目することが、苦痛がなさそうだという安心感を患者と家族に与える妨げになりうる。にもかかわらず、破滅的な出血が生じた患者の急速鎮静にベンゾジアゼピン系薬物を利用できることが、家族の介護者にある程度の安心を与える場合がある。

破滅的な出血による死亡後、チームのメンバーはその経験に関する感情を言葉にすることが奨励され、疑問があれば回答が与えられる必要がある。


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最期の数週間、数日間、数時間におけるケアの意思決定

化学療法を中止する決定

かなりの割合(約30%)の進行がん患者が、終末期(EOL)に至るまで化学療法を継続して受けており、そのうちの少数(2~5%)が死亡の14日前以内に化学療法の最終投与を受けている。 [1] [2] [3] EOLまで施行される化学療法は、入院の延長を招いたり、集中治療室で死亡する可能性を高めたりする重大な有害作用に関連する。 [4] [5] したがって、明確なまたは意義のある生存率の改善が欠如しているため、多くの臨床医はリスクに対する有益性が次第に低下していくことを踏まえて、患者に化学療法の中止を勧めている。

最終的には、化学療法の開始、継続、中止は、関係者が共同で決定し、患者のケア目標の範囲内で、予測される治療のリスクと有益性に一致する。しかし、リスクおよび有益性とは独立した以下の理由により、患者が化学療法を望んでいる可能性があるため、調査する価値はある:


  • がん患者が、がんに罹患していない人よりも、少ない有益性のために多くの治療の合併症を我慢する意思を表明している。 [6]

  • 患者が、おそらくは切迫する死から気を逸らすことによって、化学療法で現在の生活が楽になっていると報告している。しかし、患者は医療提供者が個人的に患者の様子を質問し、調子について尋ねることを望んでいる。 [7]

  • 患者と医師が互いに、治療の施行に集中することに反すると感じて、化学療法以外の治療選択肢について話し合うことを避けることがある。 [8]

ホスピスへの登録の決定

ホスピスケアを受ける進行がん患者は、良好な心理的適応、負担の大きい症状数の減少、満足度の上昇、コミュニケーションの改善を経験し、死期を早めずによりよい死を迎えるようである。 [9] [10] [11] [12] 近年、がん患者のホスピス登録率は上昇している;しかし、この上昇は平均ホスピス滞在期間の短縮によって調整される。ホスピス滞在期間の延長と、ケアの質の向上およびケアの満足度の上昇を介護者が認識することに関連があるため、後者の知見は特に懸念される。 [13] [14]

患者に関する複数の人口統計学的な要因(例、若年、既婚、女性、白人、経済的豊かさ、地域)はホスピス登録の増加と関連している。しかし、1件の研究では、ホスピス登録の決定に関して、医師の特性の方が患者の特性よりも重要であった。 [15] この結果は、時間とともに患者が腫瘍医に主導権を受け渡していくという観察結果を反映している可能性があり、特に転移がんに対する治癒不能な化学療法を伴う治療法を決定する場合にはそれが顕著である。 [16]

時宜を得たホスピス登録に対する潜在的な障壁は多く存在する。以下の段落では、障壁について、主に患者、介護者、医師、またはホスピスのどの観点から生じるかに基づいて要約し、登録の適格基準も記載した。このセクションの目的は、腫瘍科の臨床医にホスピス登録の決定に資する知見を提示し、進行がん患者に対する重要なEOLの選択肢としてホスピスの詳しい検討を奨励することである。関連する研究は、 [17] 患者レベルの障壁のいくつかに対処するための潜在的な戦略を示している。

患者レベルの障壁

:患者は多くの場合に、ホスピスへの登録には時期尚早だろうという意見や、ホスピスに登録するのはあきらめることになるという認識、またはホスピスに登録すると腫瘍医との関係に支障が生じる可能性があるという見解を表明する。 [17] ホスピスへの登録時期の認識が困難であることは、ホスピス利用率の上昇傾向が、EOL期における集中治療室への入院などの集中治療の減少につながっていないという観察結果を説明しうる。 [18] [19]

積極的な医学的治療が明らかに失敗した後にのみ、患者が最期の数日でホスピスへの登録に同意することがある。ホスピスケアの期間延長は有益性をもたらす可能性があるため、短期間のホスピス滞在を予測する患者レベルの因子は特に関連がある。ある研究者グループは、ホスピスに入院した成人がん患者64,264人についてのレトロスペクティブ・コホート研究を実施した。 [20] 12の参加ホスピスにおいて、3日以内の滞在は16%であり、範囲は11.4~24.5%であった。以下の因子(およびオッズ比[OR])は、多変量解析で短期間のホスピス滞在に独立して関連があった:


  • 男性(OR、1.22)。

  • 既婚(OR、1.23)。

  • 65歳以上(OR、0.90)。

  • 非白人の民族(OR、0.89)。

  • 血液悪性腫瘍(OR、1.52)。

  • ナーシングホームでの居住(OR、1.52)。

  • メディケイドの保険適用(OR、0.83)。

介護者レベルの障壁:

ホスピス滞在中に肺がんにより死亡した患者の介護者53人の調査で、介護者の35%のみが、患者はホスピスケアをより早く受けるべきだったと感じていた。ホスピスへの登録が遅れた潜在的な理由として高い割合で同意が得られた調査項目は、次の3つであった: [21]


  • 抗がん治療が続いていた(63%)。

  • 健康の悪化が速すぎて、早期にホスピスを利用できなかった(55%)。

  • 登録前はホスピスサービスに馴染みがなかった(42%)。

家族がホスピスへの登録は希望を手放すことを意味すると考えて登録を遅らせたという項目には、介護者の22%のみが同意した。

医師レベルの障壁

:医師273人の調査では、その65%が、ホスピス登録に対する障壁は抗がん治療とホスピスケアの同時施行に関する患者の好みだったことに同意した。医師のほぼ半数は、患者がホスピスに適格となるには蘇生処置拒否指示と挿管拒否指示が必要であると(不正確に)考えていた。 [21] ホスピスケアとその有益性について、適切な時期に腫瘍医または他の医師との話し合いが行われていないことは、依然としてホスピスへの紹介のタイミングに対する解決可能な障壁である。 [22] [23] [24]

ホスピスレベルの障壁

:メディケアのホスピス給付金を受けるには、医師が6ヵ月未満の患者の余命と患者が治癒的治療を受けないことを証明する必要がある。ホスピスに登録すると、患者は自身の末期疾患に関連するすべてのケアをホスピスで受けることになるが、ほとんどのホスピス払い戻しは固定の日額で行われる。したがって、ホスピスには追加の登録基準が存在することがある。

ある研究者グループによる591のホスピスを対象とした全国的調査では、78%のホスピスが登録を制限しうるポリシーを少なくとも1つ有していることが明らかになった。 [25] 患者の61%は化学療法を受けていてはならず、55%は完全非経口栄養法を受けていてはならず、40%は輸血を受けていてはならなかった。経管栄養を受けている患者で登録を制限されたのは8%に過ぎなかった。登録制限を実施していないホスピスの割合は地域によってさまざまであり、東/西の南中部の14%から南部大西洋側の33%に至るまで幅広い。

ホスピス登録に関連するさらなる難題は、化学療法を受けない意思が、ホスピスケアの必要性を強く自覚している患者を識別しないということである。研究者らは、5種類の主なホスピスサービス(訪問看護師、牧師、カウンセラー、在宅医療支援、レスパイトケア)に対する自覚的な必要性を判定するために、がん患者300人と家族介護者171人の合同面接を実施した。 [26] 化学療法を受けない意思をもつ患者の自覚的な必要性は、他と異なる水準ではなかった。多変量モデルでは、以下の患者因子によって、ホスピスサービスの自覚的な必要性の増大が予測された:


  • アフリカ系米国人の民族性。

  • 社会的支援が少ないこと。

  • 機能的状態が悪いこと。

  • 心理的症状を多く抱えていること。

以下の家族因子は、ホスピスサービスの必要性に対するより強い自覚を予測した:


  • 介護者が自己報告した健康状態が悪いこと。

  • 外で介護者が仕事をしていること。

  • 患者の機能的状態が悪いこと。

死を迎えたい場所の選択

進行がんの患者の多くは、自宅で死を迎えたいという希望を表明するが、 [27] 多数は病院やその他の施設で死亡する。しかし、自宅で死を迎える患者は、病院や集中治療室で死亡する患者に比べて生活の質が良好であり、遺族となった介護者の適応困難もより小さい。 [12] また、自宅で死を迎えることは、よりよい症状管理と死の準備にも関連するほか、介護者がその死をより質の高いものだったと認識することにも関連する。 [28]

ホスピスへの登録は自宅で死亡する可能性を高めるが、介護者のサポートと症状管理に特別の注意を払う必要がある。ある研究者のグループは、自宅で死を迎えたいという意思が確定していたホスピスの末期がん患者5,837人のコホートを分析した。 [29] 患者5,837人のうち、4,336人(79%)が自宅での死を望んでいた。自宅での死を望んでいた患者は、そうなる傾向が高かった(56% vs 37%;OR、2.21)。多変量解析で、以下の因子(括弧内は割合とOR)に、自宅で死を迎えるより高い可能性との相関がみられた:


  • 最初の4日間に毎日1回以上ホスピスを訪れる(61% vs 54%;OR、1.23)。

  • 既婚である(63% vs 54%;OR、1.35)。

  • 事前指示書が利用可能である(65% vs 50%;OR、2.11)。

これとは逆に、以下が認められる場合に、患者は自宅で死を迎える可能性が低かった(OR、< 1):


  • 中等度または重度の疼痛がある(43% vs 69%;OR、0.56)。

  • Palliative Performance Scaleで測定した機能的状態が比較的高い(OR、0.53)。

しかし、すべての患者が自宅での死を好むわけではない(例、独身、非白人、高齢の患者)。 [29] そのため、腫瘍科の臨床医は、患者が死を迎えたい場所とそうした場所で死ぬことに対する潜在的な障壁を乗り越える計画について話し合おうと努力している。


参考文献
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延命につながる治療の取り止め

質の高い終末期(EOL)ケアに必須の目標は、苦痛につながる症状がもたらす苦悩の軽減である。この目標を達成するために重要な戦略は、有効性が限られ患者への負荷が大きい医学的介入を避けるか減らすことである。しかし、最期の数週間から数日における機械的人工呼吸、完全非経口栄養法、透析などの延命治療(LST)となりうる療法を施行するか否かをめぐって、混乱や不安、不十分なコミュニケーションが頻発している。患者、家族、意思決定代理人によるコミュニケーションを経て、患者の希望に適合した形でLSTに関する意思決定を行うために、以下の問いを軸に議論を整理することができる:


  • 患者のケア目標は何か?

  • LSTで得られる可能性のある有益性がケアの目標達成にどのように貢献するか、および望ましいアウトカムがどの程度得られそうか?

  • LSTの有害性が患者のケア目標をどの程度損なうか、および望ましいアウトカムが達成される可能性や患者がそのアウトカムに見出す価値が有害性のリスクを正当化するか?

  • LSTの有益性と有害性以外で、患者または意思決定代理人に関係する考慮事項は何か?

  • 牧師または臨床倫理士などの他の人材が、LSTについての意思決定を行う患者や家族を支援できることは何か?

倫理的観点

医療は道徳的営為である。臨床医が行う決定は多くの場合、高度に主観的で特定の価値観を前提とするが、一方でそうでもない場合もあり、それは同じくらい多くの場合に有益性、有害性、および何を最重要とするかについての共通認識が存在しているからである。ときには、何が倫理的に許容されるかに関して不一致が生じるか、それが医療提供者にも明確でないことがある。例えば、腫瘍医が、有益性の証拠の欠如もしくは潜在的な有害性(死を迎える過程を長引かせることで、死を目前に控えた人の苦しみが増大することを含む)、または患者が人生の終末を受け入れ、最期の日々に安らぎを見出そうとしているのをLSTが妨げることを懸念して、LSTの中止または回避を望むことがある。さらに、治療の中止が患者の死を招くに等しい行為かどうかが、医療提供者にも定かでない場合もある。逆に、患者が個人的な信念や延命の可能性に基づいて、腫瘍医の臨床的なリスク-有益性分析とは独立にLSTを要求し続ける場合もある。

個人の価値観は、医療実践の道徳空間を特徴付ける。上記の葛藤は、臨床医自身が抱く信念と価値観についての理解を進め、誠実さと敬意の印として道徳的推論を互いに伝え合うための機会になる。 [1] 臨床医が何らかの推奨や措置の理由を伝えるのに苦労している場合は、以下の3つの問いが枠組みとして役立つことがある: [2]


  • その決定を誰が下すか?

  • どんな基準で決定を下すか?

  • 意思決定者間の対立はどのように解決されるか?

対立が発生した場合、臨床医に手引きとなる枠組みが提示されていても、倫理的な相談を実施して意見の不一致の原因と考えられる解決策を特定する必要がある。 [3] 以下の段落では、最初の2つの問いに関する情報を要約する。

患者の自律性を尊重することは、腫瘍科の臨床医と患者の関係に欠かせない要素である。自律性の尊重によって、臨床医は患者の価値観、ケアの目標、好みを聞き出しやすくなり、それを踏まえて患者の好みに合った治療やケアの推奨の検討を進めることができる。 [4] 自律性は本来、他者の介入から自由であるための、また医療では、推奨される治療または介入を拒否するための「させない権利」(negative right)である。 [5] 他者に対して及ぼしうる有害性または自身に対する故意の有害性に基づいて、患者の要求が通ると期待される範囲は制限される。腫瘍科の臨床医が自身の倫理的な健全性に抵触すると感じる場合、または治療の医学的有効性で負荷が正当化されない場合には、より見解の分かれる制限が課される。 [2]

患者の自律性という問題について自覚された対立は、患者の自律性の促進が施行される治療だけでなく患者との話し合いにも関わるという点を思い起こすことにより、回避されることがある。 [4] 腫瘍科の臨床医にとって、臨床医が自覚している無益などの懸念を含め、推奨の基礎事項を共有することは許容できる。 [6] [7]

LSTとなりうる治療の中止を検討するための以下の基準は、完全なものではなく、議論中の話題も含まれている;しかし、それらは検討のための参照枠組みになる。


  • LSTとなりうる治療を中止する可能性は、介入の医学的有効性が医学的リスクによって正当化されないことを臨床医が認識しているか、治療の有益性(より主観的な評価)が負荷に見合わないと患者が認識している場合に、検討する価値がある。

  • LSTとなりうる治療を中止する際の目標は、患者が経験している苦痛を軽減し、かつ患者の死亡を引き起こさないことである。 [8] 故意に患者に死を迎えさせようとする方法は、より問題となりうる。

  • LSTとなりうる治療を差し控えるか、中止するかの間では、いずれの場合の目標もそれ以上の苦痛を軽減または回避することになるため、おそらく差はないと考えられる。 [9]

  • LSTとなりうる治療の最重要基準は、患者の立場から見た医学的介入に関連する負荷と苦痛である。単純な介入(例、静脈内水分補給)とより複雑な介入(例、機械的人工呼吸)の区別は、治療中止を決定する患者の支援を確定しない。 [10]

宗教的および霊的な信仰

医療における宗教的および霊的な懸念の重要性は、過去10年で大きく意識されるようになっている。(レビューについては、がん医療における霊性に関するPDQ要約を参照のこと。)2009年にナショナルコンセンサスのガイドラインが発表され、以下の内容が推奨された: [11]


  • すべての患者が宗教的および霊的な関心事についてスクリーニング評価を受け、その後、さらに包括的な霊的経歴について調査を受けること。

  • すべての患者が認定された牧師による公式の評価を受けること。

  • そうした情報を患者記録に収め、EOLにおける入院など、適切なタイミングで追跡する。

専門家間のアプローチが推奨される:すなわち医師、看護師、ソーシャルワーカーおよび心理士などの他の専門家を含む医療関係者が、これらの問題に対処する訓練を受け、可能であれば牧師と連携して患者の評価を行い、患者との関係を築くことである。看護師および医師に対する1件の調査では、ほとんどの看護師(74%)と医師(60%)が、「患者の霊的健康をサポートするケア」として定義される霊的ケアの提供を望んでいることが明らかになった。 [12] 患者に提供されると推定される霊的ケアに関して、最も一般的に挙げられる障壁には、不適切な訓練と、霊的ケアは医療専門家の役割に含まれないという信念などがある。ほとんどの看護師(79%)は霊的ケアの訓練を希望していた;医師ではより少数(51%)だった。

ほとんどのがん患者が、医師や適切であればその他のスタッフ、病院付き牧師と、これらの問題について適宜対話したいと望んでいることが、証拠により強く裏付けられている。 [13] 約半数の患者が、宗教的コミュニティからそうした支援を受けていないことを認め、その理由として宗教的コミュニティに関与していないこと、またはそれらのコミュニティのことを協力的な存在とは考えていないことを挙げている。 [14] それらの支援にかかわらず、患者は、EOLにおけるかなりの霊的苦悩を報告することがあり、その割合は患者の10%か15%程度の低率から、60%程度の高率まで多様である。 [15] (霊的苦痛に関する詳しい情報については、がん医療における霊性に関するPDQ要約を参照のこと。)苦悩には、人生を無価値と思うことに対する神の怒りから無意味であるという感覚まで、さまざまなものがある。そうした苦悩は、対処しなかった場合、EOLの意思決定を困難にして抑うつを増大させる。

最後に、終末期ケア過程で早期に宗教的および霊的な懸念に対処すると、患者が積極的なEOL処置を要求する可能性が大幅に低下することが明らかになっている。 [16] 対照的に、自身の宗教的コミュニティからのみ強力な支援を受けてきた患者は、ホスピスを利用する可能性が低く、積極的なEOLケアを求める可能性が高い。 [15] さらに、より包括的な緩和ケアは、EOLアプローチとして霊的な幸福感を高めることも明らかになっている。 [17]

人工的水分補給

人生の最後の数週間または数日間における人工的水分補給の適応は、臨床的な悪化を一時的に回復または停止させることや、死が差し迫った患者の快適さを改善することのいずれかを基本目標として、広範に定義されることがある。 [18] 人工的水分補給は経腸的に(例、経鼻胃管または経皮的胃瘻チューブで)施行されることもあるが、より一般的な経路には、非経口のカテーテルによる静脈内投与または針を用いる皮下投与(皮下注入)がある。

制御されていない経験からは、進行がん患者における人工的水分補給に関する複数の利点が示唆されているが、1件のデザインの優れたランダム化試験で、在宅ホスピスに登録した患者129人を対象に非経口水分補給(生食水1Lの皮下注入を4時間以上)をプラセボ(生食水100mLの皮下注入を4時間以上)と比較したところ、有益性は認められなかった。 [19] 生存率、症状、生活の質、またはせん妄に差はみられなかった。

日本の全国的なEOL付近のガイドラインに従い非経口水分補給を受けた腹部の進行がん患者161人の転帰に対する1件のプロスペクティブな評価は、水分補給に有害性または有益性がほとんどないことを示している。 [20] コホートの生存期間中央値は20日(範囲、1~84日)であった;非経口水分補給の平均容量は912±495mL/日であった。総合的な生活の質、不快感、または疾患もしくは良好な状態を示す身体症状や徴候に関する有意な傾向はみられなかった;体液貯留の徴候は多くみられたが悪化はしなかった。しかし、患者は水分補給に高レベルの満足度を示し、有益であると感じていた。複数のガイドラインで、体液過剰の徴候を呈する患者には、1日の水分補給量を1L未満に抑えるべきであるとしている。研究者らが、患者を1日に1L以上の非経口水分補給を受ける群と1L/日を受ける群の2群に層別化したところ、水分補給が1L未満だった患者の方が、気管支分泌物の有病率は高く、過活動型せん妄の有病率は低かった。 [20]

人工的水分補給のリスクまたは有益性に関する話し合いはいずれも、患者および家族の立場を考慮しなければならない。 [21] 人工的水分補給の要求または人工的水分補給の役割に関する話し合いへの要望は、延命に対する考慮と同程度に、生活の質に対する考慮により推進されるようである。 [22] EOLのがん患者に対する人工的水分補給が患者の延命や生活の質の改善を促すことは証明されていないと臨床医が説明することで、この決定を下す家族の参考になる場合がある。さらに、家族は適切な口腔ケアと口渇を緩和する少量の水分摂取法について指導を受けることができる。 [23] 腫瘍科の臨床医は、これらの会話に先入観を持たずに応じ、疲労の軽減と覚醒の亢進などの自覚される有益性に比較して人工的水分補給に起因する有害性がきわめて小さくなりうることを認識する必要がある。 [24]

人工栄養

以下の議論では、人工栄養がさらなる抗がん治療を促進する可能性がある患者、または腸閉塞が進行がんの主症状である患者、および経腸栄養または完全非経口栄養法が有益となりうる患者を対象から除外する。 [25] さらに、補助的な人工栄養はパフォーマンスステータスが良好で、協力的な家庭環境を有し、3ヵ月以上の生存が予測される進行がん患者に利益をもたらす場合がある。 [26] [27]

死が差し迫った患者に人工栄養を施行するかどうかの決定は、人工的水分補給に関する意思決定と同様である。American Academy of Hospice and Palliative Medicine(AAHPM)は、人工栄養が適当とされる時期を決定するために臨床的判断力および技能を用いて個々の臨床状況の評価を行うよう勧告を行った。栄養補給の第一の意図が患者の利益であることを認識した上で、AAHPMは、患者に対するリスクが考えられる利益を上回る場合には、EOL周辺における人工栄養の差し控えは妥当な医療となりうると結論付けた。 [28]

食物は患者の希望と嚥下能力に応じて与えるべきである。しかし、人生の最後の数日間に人工栄養を実施することの利益は明確でない。ある研究では、人工栄養は-非経口栄養の場合は特に-末期疾患患者においては転帰にも生活の質にも影響を与えないと結論付けている。 [29]

EOLの患者に対する人工栄養は、医学的介入であり、経腸または非経口経路の確保を必要とする。財政的費用に関する懸案事項、さらなる入院や医学的処置による患者および家族への負担、ならびに考えられるすべての合併症の可能性が、人工栄養支援から得られうるあらゆる便益との間で比較検討されなければならない。

患者との話し合いでは、腫瘍科の臨床医は有益性に対する患者の認識を探る価値があることを意識する必要がある;患者の立場に対する尊重の妥協または承認のために、期間限定の試行が必要な場合がある。 [30]

感染予防

人生の最後の数日間における、主に抗生物質などの抗感染症薬の投与は一般的であり、最後の週を迎えた患者に対する抗生物質の使用率は27~78%と報告されている。 [31] [32] [33] 抗生物質使用の測定や症状反応の評価が広範に不均一であり、抗菌薬投与を受けた患者と受けなかった患者の比較も不十分であるため、現状では抗菌薬の有益性を明らかにすることは困難である。 [31] 尿路、皮膚、または眼の感染症は最も反応が得られやすい;抗菌薬で比較的管理しにくい肺炎などの感染症は、対症的な処置での管理が望ましい場合がある。 [34] [35] [36] 抗菌薬使用が必要となりうるもう1つの状況は、結核などの伝染性の公衆衛生リスクが高い場合である。 [34] 人生の最後の週における抗菌薬の継続使用が薬剤耐性菌の出現リスク増大につながるという懸念もある。 [37]

一般に、ほとんどの医師は各自の治療能力にかかわらず、不明なまたはごくわずかな有益性のために治癒を目指す療法を施行するよりも、最期の数日間を迎えた患者の快適性に全面的に焦点を当てることに同意している。 [31] [34] [36] [37] [38]

輸血

貧血は進行がん患者に多くみられる;血小板減少症は比較的少なく、通常は進行性血液悪性腫瘍の患者に生じる。濃厚赤血球または血小板のいずれを輸血するかの決定は、ケアの総合的な目標、死の切迫性、輸血で見込まれる有益性とリスクを慎重に検討して下される。血液製剤の使用の決定は、資源が不足する可能性と、自宅ではなく専門的な治療室で輸血を受ける患者の典型的な必要性を考慮に入れると、より複雑になる。

輸血製剤の適応、安全性、または有効性に対するランダム化または対照を設けたプロスペクティブ試験は行われていない。しかし、数多くの患者が積極的な疾患治療または支持療法の期間中に輸血を受けることになる点は認識すべきである。そうした患者は、自分の実感と余命に関して輸血が重要であると考えていることがある。

赤血球の輸血に対する決定には、いくつかの考慮事項が関連する場合がある:


  • 疲労と息切れの改善については、若干の反応が一過性でみられた。 [39]

  • かなりの割合の患者が輸血後14日以内に死亡したことから、輸血が有害であるか、輸血が臨死患者に不適切に実施された可能性が提起されている。 [39]

  • 赤血球の輸血に対する決定は、特定の値に応じてではなく、症状に基づいて行われるべきである。 [40]

  • まれな血液型またはヒト白血球抗原適合血小板製剤の輸血は、さらに正当化が難しい。 [41]

心肺蘇生

広く定義すれば、蘇生には臨死患者の生命を維持するのに必要となる心血管、呼吸、および代謝への支援を提供するすべての介入が含まれる。死が迫っている時期とまさに死が訪れる時点に、もし可能であれば、どのような支持的処置を施してもらうのかを指定する選択が可能であるということは、患者、家族、および代理人にとって理解しておくべき重要なことである。人はしばしば、蘇生とその周辺の問題については十分に議論する時間があると考えている;しかしながら、多くの臨死患者は事前に選択を行っておらず、自身の決定を家族、代理人、医療チームに伝えてもいない。もしこうした問題がEOLの出来事が生じた時点まで未解決であれば、結果的に望まない支持療法や蘇生が行われることもある。複数の研究により、この侵襲性の高いケアは、患者のより不良な生活の質および愛する人たちの死別に対するより不良な適応と関連することが示唆されている。 [42] [43]

狭義には、蘇生処置不要(DNR)指示は、心肺停止に陥った場合に心肺蘇生(CPR、胸部圧迫および/または換気も含む)を実施せずに自然な死の進行に任せるように医療提供者に指示をするものである。DNR指示は心停止が起こる前になされていなければならず、CPRが医学的に無益と考えられる場合あるいは患者を蘇生させる上でCPRが無効と考えられる場合には、医師により勧められることもある。またDNR指示は、CPRがケア目標と矛盾する場合には患者(または家族もしくは代理人)の指示によっても行うことができる。

この問題について明確な考えをもっている患者には、そうした決定能力が失われないうちに、医療ケアチーム(外来治療の場合は指定の医療施設)との話し合いを開始して、可能な限り早期(例、入院前)に書類を作成しておくことが賢明である。末期疾患患者とその家族はDNR指示を取り巻く問題を話題に出すのをしばしば不快に感じるが、医師および看護師は、適切な時期に適切な方法でかつ臨機応変に丁重な態度でもって、この問題を話題に出すことが可能である。多くの施設における標準化の欠落が、DNR指示に関する無益で不明瞭な話し合いの一因となっている可能性がある。 [44]


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病院または集中治療室で死を迎えること

さらなるケアの強化をしない

進行がん患者は、EOLが近づいてきたときの健康状態の低下に対する準備ができていないことが多く、その結果、より積極的な治療を求めて入院する。こうした状況では、治療が延命につながることがあり、少なくともその目標を達成しているように見えることがあるため、EOLの意思決定は複雑になる。この時点で、患者または家族が、治療を控えるのではなく中止するのをためらったり嫌がったりすることがある。

追究すべき1つの戦略は、さらなるケアの強化を抑制することである。この戦略の目標は、完全な延命治療(LST)と望ましい死を目標とする緩和ケアとの間を橋渡しすることである。集中的な治療は死を回避し、そのため患者が「死ぬ機会」を失ってしまう懸念のために臨床医はケアの強化を勧めなくてもよいと提唱されている。 [1] 1件の研究 [2] は、集中治療室(ICU)で死亡した患者310人(全員ががん患者であるわけではない)のケアについて報告した。患者95人(30%)について、ケアを強化しない決定が下されていた。ケアを強化しないことを決定するまでの平均ICU入室期間は6日間(範囲、0~37)であり、死亡までの平均期間は0.8日(範囲、0~5)であった。最も多く差し控えられた介入は、透析、昇圧剤、輸血であった。55%の患者は最終的にすべての生命維持を中止した。死亡した他の患者に生前、緩和ケアへの移行が行われなかった理由は次の通りである:家族の到着を待機していた、家族の意見が変わった、倫理的な相談を待機していた。

反対に、状況によっては患者および/または家族とともに、期間限定で集中的な治療を試してみる必要がある。患者または代理人は、限定した試み中に改善が得られない場合に、すべてのLSTの中止を選ぶことがある。 [1] 倫理的な観点からすると、治療の中止は治療の差し控えと同等である。どちらの行為も、根拠がないまたは望まれない集中治療に対して正当化される。

換気補助の中止

取り外しには次の2つの方法が記載されている:immediate extubation(即時の抜管)およびterminal weaning(終末期のウィーニング)。 [3] Immediate extubationには、鎮痛用の非経口オピオイドとミダゾラムなどの鎮静薬を投与すること、過剰分泌物を除去するために吸引を行うこと、人工呼吸器を「no assist」に設定してすべてのアラームを切ること、ならびにカフの空気を抜いて気管内チューブを抜くことが含まれる。口腔内を優しく吸引することが必要になることがあるが、強引で深い吸引は避けるべきである。場合によっては、患者が重大な苦痛を感じているように見えることもある。その場合はたとえ患者が昏睡状態にあったとしても、鎮痛薬と鎮静薬を与えてもよい。家族およびその場にいるすべての人々に、抜管後には何らかの体動が起こり得るということが警告されているべきであり、たとえ患者の脳の活動が停止していても同様である。こうした体動はおそらく低酸素症により引き起こされるもので、あえぐ、四肢を動かす、ベッド上で起き上がるなどが挙げられる。 [4] Immediate extubationは一般に、患者の脳機能が失われているとき、患者が昏睡状態にあって何の苦痛も経験しない可能性が高いとき、もしくは患者がより早く終わる処置を望んでいるときに選択される。

Terminal weaningにはより段階的な過程が伴う。換気回数、酸素レベル、および呼気終末陽圧を30分から数時間をかけて段階的に低下させていく。生存している患者にはTピースが装着されることがある;これは装着されたままとなる場合もあれば、抜管が進行される場合もある。苦痛を経験する可能性のある患者においてこの段階的過程をとることで、医師が疼痛および呼吸困難を評価でき、鎮静薬および鎮痛薬のレジメンを適宜修正できるようになる、という証拠が存在する。 [5] Terminal weaningが行われた31人の患者を対象とした研究では、低用量のオピオイドおよびベンゾジアゼピン系薬物が投与された場合に、ほとんどの患者で快適性(さまざまな心理学的測定法で評価された)が維持されていた。この研究における死亡までの平均時間は24時間であったが、2人の患者が退院しホスピスに移行するまで生存した。 [6]

麻痺薬には鎮痛作用も鎮静作用もなく、患者の不快感を隠してしまう可能性もある。こうした神経筋遮断薬は抜管の前に中止する必要がある。ガイドラインは、人工呼吸器からの離脱が行われているときにはそうした薬物の導入は決してなされるべきではないと提唱している;一般に、患者がそれまでに麻痺薬の投与を受けていた場合には、抜管前にそれらの薬物の投与を中止する必要がある。神経筋遮断薬を中止する利点は、結果として患者の快適性の評価を医療提供者が良好に行えるようになることと、患者とその愛する人々との交流が可能になるかもしれないということである。麻痺薬の中止に対する注意すべき例外は、人工呼吸器の取り外し後の死が急速なものと予測される場合と、薬物作用の逆転を待つことが患者および家族に不合理な負担を与える場合である。 [7]

どの方法を用いるにしても、患者および環境の準備が必須である。モニターとアラームはスイッチを切り、抗生物質や輸液などの延命処置は中止する必要がある。家族には準備のための時間が十分に与えられるべきで、そうした準備としては、立会いを希望するすべての愛する人々への連絡が含まれる。立ち会う人々にはその過程の間に予測される出来事に関する情報が与えられる必要がある;なかには抜管の間退室することを選択する人もいるであろう。家族への支援提供のために病院付き牧師かソーシャルワーカーが呼ばれることもある。


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死にゆく患者と難治性の苦痛

終末期(EOL)における苦痛

患者の観点

:2013年に発表された1件のプロスペクティブな観察研究では、がんで死亡した患者64人について、症状、症状の強度、症状が耐え難いかどうかに関する連続的な評価を実施した。 [1] 最も一般的な症状は脱力であった(患者の93%)。患者の51%は自身の脱力を強度であると評価した;そのうち、84%は自身の苦痛を耐え難いと評価した。症状の強度が高い場合に、疼痛、自分の人生に対する統制感の喪失、今後の苦痛に対する恐怖が耐え難いとされた。

非公式の介護者の観点:

介護者の苦痛とは、介護者の身体的、心理社会的、霊的な健康における重度の苦痛を表す複雑な構成概念である。複数の研究は、患者と介護者の情動状態の間に強い関連があることを報告している。緩和、ホスピス、死別の各段階にある介護者に関する19件の記述研究を対象とした1件の系統的レビューでは、患者-介護者ペアの分析により、患者の状態と介護者の反応の間に相互関係が見出された。複数の研究において、介護者には身体的および心理的負担のリスク増大が認められ、ときに介護者の苦痛は患者の苦痛を上回るものであった。 [2]

数件の研究は、ペアに対する分析を使用して介護者の苦痛を分類している。1件の定性的研究で22組のペアに半構造化面接を実施したところ、がんなどの進行した医学的疾患に対処する介護者は特有および共通の苦痛を報告した。苦痛は無力感、介護者のアイデンティティーに対する脅威、利用できる資源以上の要求に分類された。 [3] 介護者の苦痛は患者の健康感に影響を及ぼすことがあり、複雑な死別をもたらしうるため、介護者の苦痛を早期に特定しサポートすることが最適な対策である。 [4]

緩和的鎮静

緩和的鎮静は、患者に容認し難い苦痛をもたらし最適な緩和ケア介入に抵抗性を示す症状の緩和を目標として、意図して薬理的に意識レベルを低下させることとして定義できる。患者の緩和的鎮静に対する要求を検討する際、臨床医はそうした要求に有効に対応する能力に悪影響を及ぼしかねない個人的なバイアスを識別する必要がある。以下の数点に留意する必要がある:


  • 人生の最後の数日間に緩和的鎮静を適用することで余命が短縮されることを示す証拠はない。 [5]

  • 緩和的鎮静の目標は難治性の苦痛を軽減することである。

  • 緩和的鎮静についての話し合いは、死にゆく人に対するケアの改善に対する洞察につながることがある。例えば、緩和的鎮静の要求は、苦しんでいる人にとっての症状の意味を把握する機会になり、臨床医が症状を軽減するための代替的な介入を試行する契機になりうる。

  • 緩和的鎮静の要求に対処する場合、医療専門家は自身の文化的および宗教的バイアスを考慮し、それを踏まえて臨床医として死にゆく人に接する必要がある。 [6]

以下の問いは、医療チーム内および臨床医、患者、家族の間で緩和的鎮静の妥当性に関する話し合いを整理するのに役立つ場合がある:


  • 緩和的鎮静の適応は何か?

  • 患者がこれまで緩和的鎮静未満の最適な緩和ケアを受けてきたか?

  • 意図される意識レベルは何か?

  • 緩和的鎮静は死亡まで継続して維持されるのか、それとも患者の症状の苦痛を再評価するために調整されるのか?

  • どのような計画で、水分補給、栄養、または他の延命治療(LST)となりうる療法を中止または継続するか?

緩和的鎮静の適応:

緩和的鎮静には2種類の広範な適応があり、それは難治性の身体症状と対処し難い実存的または心理的な苦悩である。ヒューストンにあるMD Anderson Cancer Centerで行われたレトロスペクティブ研究は、緩和ケア施設に入院している1,207人の患者を対象とした。緩和的鎮静は入院患者の15%で実施されていた。よく見られた適応症はせん妄(82%)および呼吸困難(6%)であった。 [7] 実存的および心理的症状に対する緩和的鎮静の使用は、特に議論のあるところである。死亡まで意図的に意識消失させる鎮静に対する米国の医師1,000人以上の態度と経験を調査した1件の研究では、回答者の68%が実存的苦悩を理由とする緩和的鎮静に反対したことが明らかになった。注目すべきことに、先行する12ヵ月で緩和的鎮静を処方したのは、回答した医師の10%のみであった。 [8] 同じ研究グループが実施した1件の先行研究は、調査対象の医師の18%のみが、特定の適応なく「死にゆく患者を意識消失させる鎮静」に反対したことを報告した。 [9]

対処し難い実存的または心理的苦悩を理由とする緩和的鎮静に関する反論または懸念になりうるものとして、未認識の治療できる可能性のあるうつ病がある。(詳しい情報については、本要約の速やかな死の要求速やかな死の要求のセクションを参照のこと。)

さらに他の反論や懸念には、(1)難治性の身体的苦痛に緩和的鎮静を使用することに倫理的基盤を提供するダブルエフェクトの原理によって、適切に正当化されるのかどうか;(2)EOLにおける心理的または実存的苦痛に関する文化的期待などがある。ダブルエフェクトの原理は、相応性の概念に基づいている。これにより、緩和的鎮静の意図される(正の)転帰が意図されない(負の)転帰より有益である場合、意図される効果(苦痛の軽減)が、予測不能な意図されない結果(余命の短縮または愛する人とやりとりする能力の喪失)を正当化しうるとされる。 [10] したがって、対処し難い心理的または実存的苦悩を理由とする緩和的鎮静が正当化されないという見解は、そうした苦痛に関連する苦悩の大きさを過少に捉えているか、負の結果につながることがより少ない別の方法が十分に検討されていないという認識を反映している可能性がある。

意図される鎮静のレベル:

他の決定事項として、意図される鎮静のレベルを意識消失とするか、または身体的もしくは心理的症状に起因する苦悩の軽減を伴うレベルとするかという点もある。米国の医師を対象にした1件の研究では、 [8] 回答者の3分の2が、意識消失が緩和的鎮静の意図しない結果である場合は容認できるが、故意の意識消失は容認できないと感じていた。この結果は相応性の感覚に関連している可能性がある。緩和的鎮静を施行した医師54人に対する1件の定性的研究では、苦痛の確実な軽減に対する関心が強い医師は、意識消失を起こさせる緩和的鎮静を施行する可能性が高かった。弱い鎮静を選択した医師は、患者の病態に対する自身の評価に従う傾向が強かった。 [11]

意図された鎮静期間:

時間の経過とともに苦悩をもたらす症状の改善が予測される場合、臨床医は症状が持続するかどうかを評価するために、鎮静深度の計画的な低下に関するあらゆる推奨事項について患者と話し合うべきである。先の引用文献で発表された経験 [7] では、せん妄または呼吸困難に対する緩和的鎮静は、緩和ケア病棟に入院した患者の23%において可逆的であった。さらに、愛する人たちとのコミュニケーションが望まれている場合、鎮静深度の計画的な低下が適切であろう。

緩和的鎮静中のLSTになりうる療法の役割:

緩和的鎮静の目的は苦痛の軽減である;寿命を短縮することではない。人工的水分補給や人工栄養などの治療を中止または維持する決定には、患者のケアの目標と潜在的な有益性または有害性に関するレビューが必要になる。一般的に、有益性の証拠が欠如している場合は、緩和的鎮静の状況でLSTを中止する推奨が正当化されるようである。反対に、死の過程においては、コミュニケーション可能な状態を保ち、患者の好みに対する敬意とそれに応じる配慮を欠かさないことが重要であるため、臨床医は水分補給や栄養の潜在的なリスクを過大に述べるべきではない。LSTに関する決定と、緩和的鎮静の施行に対する決定を区別することについては、合意が得られている。

速やかな死の要求

要求の潜在的な理由:

速やかな死の要求または死にたいという要求の表明は、一時的または受動的な要望の表現から、人生を終わらせる介入に対する持続的な関心や、自殺の計画または実施する意思の表示までさまざまである。 [12] 速やかな死の要求頻度に関する信頼できるデータは得られていない。

速やかな死の要求は、腫瘍科の臨床医に対し、死にゆく患者の経験を注意深く思いやりのある態度で探り、それに対応する機会を与える。患者の観点からは、速やかな死を要求する理由が次のように複数存在し、複雑である。


  • 抑うつまたは絶望感。 [13]

  • 管理できない疼痛やその他の身体症状と、それによる生活の質の低下。 [14]

  • 個人のアイデンティティーと社会関係の喪失。 [15]

  • 他人の負担になるのを避けるため。 [16]

引用しているそれぞれの研究は、患者の観点をまとめている。医療提供者を対象とした調査は、同様の見解と理由を明らかにしている。

要求への対応:

推奨事項はカウンセリングの原則と専門家の意見に基づく。特定の研究は利用できない。第一の最も重要な考慮事項は、医療提供者が要求や表明に対する個人的な対応を意識し続けることである。腫瘍科の臨床医が支持的で受容的な態度を示すことが必須である。提供者が不快のあまり話し合いに参加できない場合は、支援を得るために他の提供者への紹介が必要であることを患者に説明することが欠かせない。 [17] 他の慎重な助言には次のものがある:


  • 懸念に対してオープンな態度をとる。

  • 他の寄与因子を評価する。

  • 具体的な問題に対応する。

  • 話し合いの最後にまとめと計画を示して終わる。


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  9. Curlin FA, Nwodim C, Vance JL, et al.: To die, to sleep: US physicians' religious and other objections to physician-assisted suicide, terminal sedation, and withdrawal of life support. Am J Hosp Palliat Care 25 (2): 112-20, 2008 Apr-May.[PUBMED Abstract]

  10. Olsen ML, Swetz KM, Mueller PS: Ethical decision making with end-of-life care: palliative sedation and withholding or withdrawing life-sustaining treatments. Mayo Clin Proc 85 (10): 949-54, 2010.[PUBMED Abstract]

  11. Swart SJ, van der Heide A, van Zuylen L, et al.: Considerations of physicians about the depth of palliative sedation at the end of life. CMAJ 184 (7): E360-6, 2012.[PUBMED Abstract]

  12. Hudson PL, Kristjanson LJ, Ashby M, et al.: Desire for hastened death in patients with advanced disease and the evidence base of clinical guidelines: a systematic review. Palliat Med 20 (7): 693-701, 2006.[PUBMED Abstract]

  13. Breitbart W, Rosenfeld B, Pessin H, et al.: Depression, hopelessness, and desire for hastened death in terminally ill patients with cancer. JAMA 284 (22): 2907-11, 2000.[PUBMED Abstract]

  14. Wilson KG, Scott JF, Graham ID, et al.: Attitudes of terminally ill patients toward euthanasia and physician-assisted suicide. Arch Intern Med 160 (16): 2454-60, 2000.[PUBMED Abstract]

  15. Coyle N, Sculco L: Expressed desire for hastened death in seven patients living with advanced cancer: a phenomenologic inquiry. Oncol Nurs Forum 31 (4): 699-709, 2004.[PUBMED Abstract]

  16. Mak YY, Elwyn G: Voices of the terminally ill: uncovering the meaning of desire for euthanasia. Palliat Med 19 (4): 343-50, 2005.[PUBMED Abstract]

  17. Hudson PL, Schofield P, Kelly B, et al.: Responding to desire to die statements from patients with advanced disease: recommendations for health professionals. Palliat Med 20 (7): 703-10, 2006.[PUBMED Abstract]

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悲嘆および死別

家族は愛する人の死に際して喪失を経験する可能性が高い。もし無処置のまま放置されると、喪失、悲嘆、および死別は複雑化する可能性があり、家族と臨床家の両方に長期間続く重大な苦痛につながることもある。加えて臨床家にも、複数の患者の死を通した多数の喪失の累積的影響から重大な悲嘆を経験するリスクがある。燃え尽きもまた医療従事者における未解決の悲嘆との関連性が指摘されている。(詳しい情報については、悲嘆、死別、喪失への対処に関するPDQ要約を参照のこと。)

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プロの介護者に対する難題

終末期のがん患者のケアにあたる腫瘍医および看護師は、職務において激しい臨床的喪失を慢性的に経験するため、個人的な苦痛のリスクが高い。事前ケア計画とコミュニケーションの訓練が不十分な腫瘍医は、燃え尽き、抑うつ、職業的不満足の状態になりやすい。 [1] 研究者のあるグループが患者の死亡に関連する腫瘍医の悲嘆を調査したところ、個人的な領域と専門家としての領域の両方に強い影響が認められた。負の影響には、注意散漫の感覚と患者からの離脱などがあった。 [2]

1件の研究は、悲嘆は腫瘍医にとって健全だが、ストレスおよび燃え尽きは望ましくない場合があるという、重要な概念的区別を提示した。 [3] 専門家の苦痛を表現する他の用語には、道徳的苦悩感情的消耗離人症がある。 [4] 道徳的苦悩は、集中治療室で死にゆく患者のケアにあたる医師29人と看護師196人に関する1件の記述的パイロット研究で測定された。これらの専門家のグループはいずれも、無益であると思いつつ積極的治療を継続することの重圧に関係する道徳的苦悩を経験していた。看護師は、医師よりも強い道徳的苦悩を経験し、医師の同僚よりも協力ができていないと感じていた。 [5]

進行がんまたは末期がん患者のケアに従事する専門家がその感情的代償を管理する上で役立つ、いくつかの戦略が推奨されており、具体的には、セルフケア、チームワーク、専門家による指導、内省的作文、マインドフルネス法、悲嘆の過程への対処である。 [6]


参考文献
  1. Meier DE, Back AL, Morrison RS: The inner life of physicians and care of the seriously ill. JAMA 286 (23): 3007-14, 2001.[PUBMED Abstract]

  2. Granek L, Tozer R, Mazzotta P, et al.: Nature and impact of grief over patient loss on oncologists' personal and professional lives. Arch Intern Med 172 (12): 964-6, 2012.[PUBMED Abstract]

  3. Shayne M, Quill TE: Oncologists responding to grief. Arch Intern Med 172 (12): 966-7, 2012.[PUBMED Abstract]

  4. Edmonds C, Lockwood GM, Bezjak A, et al.: Alleviating emotional exhaustion in oncology nurses: an evaluation of Wellspring's "Care for the Professional Caregiver Program". J Cancer Educ 27 (1): 27-36, 2012.[PUBMED Abstract]

  5. Hamric AB, Blackhall LJ: Nurse-physician perspectives on the care of dying patients in intensive care units: collaboration, moral distress, and ethical climate. Crit Care Med 35 (2): 422-9, 2007.[PUBMED Abstract]

  6. Sanchez-Reilly S, Morrison LJ, Carey E, et al.: Caring for oneself to care for others: physicians and their self-care. J Support Oncol 11 (2): 75-81, 2013.[PUBMED Abstract]

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本要約の変更点(04/08/2016)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

最期の数週間、数日間、数時間におけるケアの意思決定最期の数週間、数日間、数時間におけるケアの意思決定

本文本文に以下の記述が追加された;自宅での死を望んでいた患者は、そうなる傾向が高かった(56% vs 37%;オッズ比[OR]、2.21)。

本文本文に以下の記述が追加された;中等度または重度の疼痛がある(43% vs 69%;OR、0.56)場合、あるいはPalliative Performance Scaleで測定した機能的状態が比較的高い(OR、0.53)場合に、患者は自宅で死を迎える可能性が低かった(OR、< 1)。

延命につながる治療の取り止め延命につながる治療の取り止め

本文本文で以下の記述が改訂された;かなりの割合の患者が輸血後14日以内に死亡したことから、輸血が有害であるか、輸血が臨死患者に不適切に実施された可能性が提起されている。

病院または集中治療室で死を迎えること病院または集中治療室で死を迎えること

本文本文に以下の記述が追加された;集中的な治療は死を回避し、そのため患者が「死ぬ機会」を失ってしまう懸念のために臨床医はケアの強化を勧めなくてもよいと提唱されている(引用、参考文献1としてCochrane)。

本文本文に以下の記述が追加された;患者または代理人は、限定した試み中に改善が得られない場合に、すべての延命治療の中止を選ぶことがある。また本文に以下の記述が追加された;倫理的な観点からすると、治療の中止は治療の差し控えと同等であり、どちらの行為も、根拠がないまたは望まれない集中治療に対して正当化される。

死にゆく患者と難治性の苦痛死にゆく患者と難治性の苦痛

本文本文で以下の記述が改訂された;時間の経過とともに苦悩をもたらす症状の改善が予測される場合、臨床医は症状が持続するかどうかを評価するために、鎮静深度の計画的な低下に関するあらゆる推奨事項について患者と話し合うべきである。また本文に以下の記述が追加された;愛する人たちとのコミュニケーションが望まれている場合、鎮静深度の計画的な低下が適切であろう。

本要約はPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約について本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

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本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、人生の最後の数日間から数時間に実施されるケアについて包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:


  • 会議での議論、

  • 本文の引用、または

  • 既に引用されている既存の記事との入れ替え、または既存の記事の更新。

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

人生の最後の数日間に対する主要な査読者は以下の通りである:


    本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

    証拠レベル

    本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。The PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

    本要約の使用許可

    PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。

    本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

    National Cancer Institute: PDQ® Last Days of Life.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Date last modified <MM/DD/YYYY>.Available at: http://www.cancer.gov/about-cancer/advanced-cancer/caregivers/planning/last-days-hp-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

    本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。

    免責条項

    これらの要約内の情報は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。

    お問い合わせ

    Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。

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