
注:肝(肝細胞)がんのスクリーニング、成人原発性肝がんの治療、小児肝がんの治療、およびがんのスクリーニング(検診)と予防の研究に関する証拠レベルについては、別のPDQ要約を参照できるようにしてある。
固い証拠によると、B型肝炎に対する予防接種は肝細胞がん(HCC)の発生率の低下につながる。
証拠の記述肝細胞がん(HCC)は世界で4番目に多くみられるがんであり、死亡率は第3位となっている。 [1] 北米における年齢標準化発生率は10万人当たり2.1例である。 [2] 米国では、HCCは、発生率および死亡率は増加し続けており、特に中年以上の黒人、ヒスパニック系および白人男性が顕著である。 [3]
2013年には、米国では新たに30,640人が診断され、21,670人が同疾患により死亡すると推定されている。 [4] 米国では人種に関係なく男性患者の方が明らかに多いが、この傾向は中国系米国人で最も著明で、男性におけるHCCの年間罹患率が10万人当たり22.1例であるのに対し、女性では10万人当たり8.4例となっている。 [5] 表1表1に肝細胞がんの地域別発生率を要約する。 [6]
米国では、肝硬変および肝がんによる毎年の死亡例のうち慢性B型肝炎を基礎疾患として有する症例の数が推計2,000~4,000件となっている;米国人の慢性B型肝炎患者は100万人以上と推計されているが、そのうちの多くが感染にすら気づいていないと予測されている。B型肝炎ウイルス(HBV)とC型肝炎ウイルス(HCV)による感染症は、ヒトのウイルス感染症の中でも最も頻度の高いもののひとつであり、世界的に大きな公衆衛生上の問題となっている。HBVおよびHCVの関係する慢性肝炎は肝がんおよびHCCの主要な原因であり、これらの病態は罹病率および死亡率を高める要因となっている。HBVおよびHCV感染症については、この数年間で疫学的知見や自然史の解明が著明に進んだのと同時に、治療法の有効性という点でもかなりの進歩がみられた。
| 地域 | 発生率(10万人当たり) |
|---|---|
| aAdapted from Russo et al. [6] | |
| 中国 | 27–36 |
| 地中海地方 | 5–20 |
| 南米 | 0.2–5.0 |
| 北欧 | 5 |
| 西アフリカ | 30–48 |
| 米国 | 4 |
米国では40歳未満のHCCは非常にまれであり、HCCリスクはC型肝炎ウイルスの長期感染と関連している(例えば、感染30年後のリスク増大)。HCC患者の約80%で肝硬変がみられる。 [7]
肝炎および/またはHCCと関連を認めるウイルスが数種存在する。肝炎という用語は、肝臓を侵す一群のウイルス感染症の総称としても用いられている;そのうち最も一般的ものがA型肝炎、B型肝炎、およびC型肝炎である。 [8]
| 肝炎ウイルスの種類 | 伝播様式 | 臨床的帰結 |
|---|---|---|
| A型肝炎 | 食物、飲料水。がんとの関連はほとんどまたは全くない。 | 完全回復(通常) |
| B型肝炎 | 体液(例、血液、精液) | 肝障害を引き起こす可能性あり;急性または慢性HCCにつながる可能性あり |
| C型肝炎 | 体液(例、血液、精液) | 急性肝炎ならびに肝硬変および肝がんを含む慢性肝疾患 |
| D型肝炎 | 体液(例、血液、精液) | 急性肝炎 |
| E型肝炎 | ウイルスに汚染された飲料水 | |
| F型肝炎 | ウイルスは未確認 | |
| G型肝炎 | 未確定 |
A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎は、それぞれ異なる3種のウイルスによって引き起こされる疾患である。各疾患は類似した症状を引き起こすことがあるが、伝染形式は異なっており、肝臓への影響も異なってくる。
A型肝炎は、急性あるいは新規に発生した感染症としてのみ発生し、慢性化することはない。A型肝炎患者は通常、無治療でも回復する。 [9]
B型肝炎およびC型肝炎も急性感染症として発症することがあるが、患者によっては、ウイルスが体内に留まり、慢性疾患や長期の肝障害を引き起こす。A型肝炎およびB型肝炎を予防するためのワクチンが存在する;しかしながら、C型肝炎用のワクチンは存在しない。過去に1種類のウイルス性肝炎に罹患したことのある人でも、他の種類のウイルス性肝炎に罹患する可能性はなくならない。 [8]
かつてA型肝炎およびB型肝炎ウイルスが発見された後も、輸血関連肝炎症例の多くでは原因と思われる病原体が発見されなかった-このため非A型非B型(NANB)肝炎と呼ばれていた。こうした症例に対する初期の追跡研究から、約50%の患者が慢性肝炎を発症することが示された(6ヵ月以上にわたる血清酵素の存在が基準とされた)。その15年ほど後には(この時点ではNANB肝炎の原因としてHCVが同定されていた)、持続的なウイルス感染を指標した場合には慢性肝炎の頻度はより高くなること、そして成人の感染者では80%以上に及ぶものの、小児および若年女性の感染者では約50%ほどに留まることが明らかになった。 [10]
A型肝炎は、HAVと呼ばれるウイルスに汚染された食物や飲料水を摂取することで引き起こされる。慢性疾患や生涯にわたる疾患に進展することはない。A型肝炎を発症しても、ほぼ全員が完全に回復する。
B型肝炎はHBVと呼ばれるウイルスにより引き起こされ、感染者の血液、精液、その他の体液との接触により伝染する。B型肝炎は性感染症である。B型肝炎は、がんの原因となりうる肝障害を引き起こす重篤な感染症となりうる。 [11] [12]
C型肝炎は、先進国と発展途上国のいずれにおいても重要な感染症である。 [13]
C型肝炎の病態には、数週間で軽快する軽度のものから、肝臓に障害を与え終生持続する重篤なものまである。C型肝炎はHCV感染の結果として起こり、主に感染者の血液に接触することで伝染する。C型肝炎は急性のこともあれば慢性のこともある。 [10] C型肝炎患者のほとんどは慢性感染症を呈する;これにより、肝硬変と呼ばれる肝臓の瘢痕化を来すことがある。現在、血液銀行においてすべての献血血液を対象としたB型およびC型肝炎ウイルスへの汚染の検査が実施されており、輸血または血液製剤による感染リスクは大幅に減少している。 [10] [12] [14] [15]
D型肝炎はHDVと呼ばれるウイルスによって引き起こされる。D型肝炎はB型肝炎の感染者にのみ発生する。感染者の血液への接触、汚染された針、HDV感染者との無防備な性交によって伝染する。D型肝炎は肝腫大を引き起こす。 [16] [17]
E型肝炎はE型肝炎ウイルスによって引き起こされる。E型肝炎は、口腔と肛門の接触または汚染された水の摂取によって伝染する。 [18] 米国では、この種の肝炎は多くはみられない。
慢性G型肝炎とHCCとの間には、HBs抗原陽性キャリアか非キャリアかに関係なく、関連性は認められない。 [19] [20]
慢性B型肝炎および慢性C型肝炎(CHC)は、HCCのリスク増大につながる世界共通の主要因子であり、これらに同時に感染しているとリスクはさらに高くなると考えられている。 [21] [22] [23] [24] [25] [26] 慢性肝炎患者のHCC発生率は0.46%/年である。米国では、慢性B型肝炎とCHCがHCC全体の約30%~40%を占めている。HCCへの進行のリスクを低下させる方法として、CHC患者における長期鉄除去が研究されている。 [27] この鉄除去によって、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ値と肝臓での酸化的DNA損傷に改善が認められる。生検で中等度または重度の肝線維化が証明されたCHC患者を対象としたコホート研究において、患者が2群に分けられた。A群の患者(n=35)には、軽度の鉄欠乏に達するまで週1回の瀉血(200g)が行われた後、44~144ヵ月(中央値、107ヵ月)にわたって維持療法として月1回の瀉血が行われ、さらに低鉄食(鉄5~7mg/日)を摂取するように指導が行われた。 [27] 一方のB群(n=40)は、鉄除去療法を拒絶したCHC患者で構成された。両群とも、以前にインターフェロン(IFN)療法が奏効せずに失敗した患者と、IFNが禁忌であった患者が含まれていた。A群およびB群における肝がん発生率はそれぞれ、5年目終了時で5.7%および17.5%、10年目で8.6%および39%であった。 [27]
肝硬変は、その原因に関係なくHCCの危険因子である。 [21] [22] 肝硬変患者におけるHCCの発生リスクは年間1~6%である。 [23] これ以外の危険因子としては、ヘモクロマトーシス、α-1-アンチトリプシン欠損症、糖原病、晩発性皮膚ポルフィリン症、チロシン血症、ウィルソン病などがあるが [2] 、胆汁性肝硬変が危険因子となることはまれである。 [28] ある種のアスペルギルス(Aspergillus)属真菌によって生成されるカビ毒であるアフラトキシンは、しばしば保存状態の悪い穀類や堅果類に混入している。アフリカにヒトのHCC発生率の高い地域が存在するが、これはアフラトキシンに汚染された食品の摂取と関係している可能性がある。しかしながら、これらの集団ではB型肝炎ウイルスの同時感染の頻度が高いことから、両者の関連性は明白ではない。重度のアフラトキシン暴露はがん抑制遺伝子p53の不活化と関連するが、因果関係を示す疫学的な証拠は限られている。 [29] HCCの病因として可能性のあるものを表3表3に要約する。 [30]
| 原因 | 主な地域 |
|---|---|
| B型肝炎ウイルス | アジアおよびアフリカ |
| C型肝炎ウイルス | 欧州、米国、および日本 |
| アルコール | 欧州および米国 |
| アフラトキシン | 東アジアおよびアフリカ |
B型肝炎に感染した母親からその子供への感染予防のための免疫化に関する1件の研究から、肝細胞がん(HCC)を予防できるとする強い証拠が提示されており、肝炎を予防することで多くのHCCを予防できるということが示唆されている。予防接種プログラムは、急性肝炎や慢性肝炎、肝硬変など、B型肝炎ウイルス感染による重要な短期的障害を予防できるという点で正当化されている。 [1]
PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。
新規症例数および死亡数の推定値に関する統計統計を2013年度用に更新(引用、参考文献4としてAmerican Cancer Society)。
本要約はPDQ Screening and Prevention Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約について本PDQ要約についておよびPDQ NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。
医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、 肝(肝細胞)がんの予防について包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。
本要約はPDQ Screening and Prevention Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。
委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:
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