
栄養は、がんの発生と治療の多くの側面で大きな(必ずしも十分に解明されてはいないが)役割を果たしている。 [1] 栄養不良はがん患者において、罹病率および死亡率の増加および生活の質の低下など不良な治療成績の重要な要素として認識されている一般的な問題である。体重減少はがん患者における不良な予後の指標として同定されている。 [2] 診断時に、上部消化管がん患者の80%および肺がん患者の60%が6ヵ月間に少なくとも10%以上の体重の減少として一般的に定義される重大な体重減少 [3] を既に経験していることが示されている。 [4] 良好な栄養の実践は、がん患者の体重維持および体内の栄養貯蔵量の維持に役立ち、栄養の影響による症状を緩和し、生活の質を改善する。 [5] 栄養摂取の不良は栄養不足を来すことがあり、治療による副作用の発生率および重症度に寄与し、感染症のリスクが高くなり、そのため生存の可能性が低下する。 [6] 栄養の影響による症状とは、経口摂取を妨げる症状である。これらの症状には、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、口内炎、粘膜炎、嚥下困難、味覚および嗅覚の変化、疼痛、抑うつ、および不安があるが、これらに限定されない。 [7] 栄養スクリーニングとそれに続く包括的な評価を通して栄養不良リスクの早期認識および発見は、腫瘍学の実践におけるケアの質の標準を開発する上で必須であるといっそう認識されている。 [2] 望ましくない体重増加は早期がんの化学療法の影響であり、おそらく安静時代謝の低下によるものである。 [8] したがって、一連の治療を通して変化する栄養療法の目標に合わせるため、がん患者の食事を評価すべきである。
しばしば栄養状態は、腫瘍の自然な進行により冒される。(腫瘍による栄養状態への影響腫瘍による栄養状態への影響のセクションを参照のこと。)栄養状態の変化は、心理社会的問題も食事の摂取にマイナスに影響する診断時に始まり、治療と回復の過程を経る。タンパク質-カロリー栄養失調症(PCM)は、がん患者における最も一般的な二次的診断であり、代謝要求量を満たすには不十分な糖質、タンパク質、脂肪の摂取量および/または多量栄養素の吸収減少により発症する。がんにおけるPCMは、がん患者がよく経験する食欲不振、悪液質および早期の満腹感に最もしばしば関連する複数の因子に起因する。こうした因子は、味覚変化から食事の摂取または消化における身体的機能低下に及び、栄養摂取量を減少させるに至る。がんによる主要栄養素の代謝異常もPCMの発生率を増加させる。こうした異常には、グルコース不耐症およびインスリン抵抗性、脂肪分解の亢進、および全身のタンパク代謝回転増加が含まれる。PCMは治療しないまま放置すると、タンパク質合成の低下と除脂肪体重の減少につれて進行性の衰弱、脱力および疲労の原因になり、死亡することもある。 [9]
食欲または食に対する欲求を喪失する食欲不振は通常、診断時にはがん患者全体の15~25%に見られ、また治療の副作用としても発現しうる。食欲不振は、発がん中の代謝の生理的変化によりがんが広範囲に転移している患者ではほぼすべてに認められる副作用 [10] [11] である。(腫瘍による栄養状態への影響腫瘍による栄養状態への影響のセクションを参照のこと。)食欲不振は、味覚および嗅覚の変化、吐き気と嘔吐など、化学療法および放射線療法に起因する副作用により悪化する。食道切除、胃切除などの外科的処置により早期の満腹感、早すぎる満足感を来すことがある。 [4] 抑うつ、個人的な興味または希望の喪失、および不安は、食欲不振を引き起こしてPCMを発症するには十分な症状である。 [3] がん関連疲労、食欲不振、抑うつ、および呼吸困難の問題に対するさまざまなアプローチについて記述した証拠に基づく推奨が発表されている。 [12] そのほか、栄養状態に影響を及ぼすがんまたはその治療による全身または局所性の作用には、代謝亢進、敗血症、吸収不良および閉塞がある。 [9]
脱力や顕著かつ進行性の体重減少、体脂肪および筋肉の低下が示すように、食欲不振は、進行性の消耗症候群のひとつである悪液質 [3] の進行を速める。悪液質はがん患者の20%~40%において直接の死因になると推定されている;これは、カロリーおよびタンパク質を十分に摂取しているようにみえても、実際には一次性の悪質液により腫瘍関連因子が、脂肪と筋肉の維持を妨げている患者において起こりうる。特に消化管に疾患のある患者は危険である。
がん性悪液質の病因は、完全には理解されていない。悪液質は転移がん患者のほか、限局性のがん患者にも発症する。複数の理論が、悪液質は腫瘍によって生じた因子や代謝系の異常など変数の複雑な混在が原因になっていることを示唆している。 [11] 悪液質患者は、基礎代謝率に適応性がなく、増大するか、低下するか、正常のままである。 [13] 一部の患者は栄養療法に反応するが、ほとんどは積極的な治療を行っても症候群が完全に逆転するわけではない。 [6] そのため、悪液質に対する最も賢明で有益なアプローチは、栄養モニタリングおよび栄養介入を実施してその発症を防止することである。 [14]
一部のPDQ支持療法および緩和ケア情報要約の文献引用には、個人または組織により特定の治療または製品を販売または支持する目的で運営されている外部のウェブサイトへのリンクが含まれている。これらの文献引用は、情報提供が目的にすぎない。こうした文献引用により、上記のウェブサイトの内容、あるいは治療または製品がPDQ支持療法および緩和ケア編集委員会または米国国立がん研究所(National Cancer Institute)によって支持されているものとみなすべきではない。
特に明記していない場合、本要約には成人に関する証拠と治療について記載している。小児に関する証拠と治療は、成人の場合とかなり異なる可能性がある。小児の治療に関する情報が入手できる場合は、小児に関する情報であることを明記した上でその内容を要約する。
栄養状態は、腫瘍によって誘発される代謝の変化に直接反応して悪化しうる。悪液質としても知られるこの病態は、進行性のタンパク質-カロリー栄養失調症の1つであり、不随意の体重減少、筋力の消耗、生活の質の低下を特徴とする。 [1] [2] 腫瘍によって誘発される体重減少は、肺、膵、および上部消化管の固形腫瘍患者に頻繁に起こり、乳がんまたは下部消化管のがん患者では頻度が低い。食欲不振も認められるが、エネルギー欠乏だけでは悪液質の病理発生の説明にはならない。いくつかの因子が提案されている。 [3] サイトカイン、神経ペプチド、神経伝達物質、および腫瘍に由来する因子などのメディエータが、この症候群の一因になっていると仮定されている。 [4] 腫瘍壊死因子α、インターロイキン-1、インターロイキン-6、インターフェロンγ、白血病抑制因子などの宿主組織の生成物のほか、脂質動員因子およびタンパク質分解誘導因子(ヒトにおいては明確に確立されていない)など、宿主組織に対する直接異化作用を有する腫瘍生成物はすべて、この複合的な症候群のメディエータとして同定されている。 [3] 脂肪、タンパク質、および炭水化物の代謝異常が悪液質のがん患者において明らかである。腫瘍はグルコースの取り込みおよびグルコース酸化を低下させ、解糖を増大させる。 [5] 体重減少はエネルギー摂取量の減少、エネルギー消費量の増加、またはこれら2つの複合から起こる。食欲不振はがん患者によくみられる症状であるが、諸種の研究から、経口的ルートまたは完全非経口栄養法による補給によってカロリー摂取を増加させても消耗の進行に対抗できないことが示されている。このことから、異常な代謝率は体重調整のホメオスタシスループを調整する経路を破綻させる腫瘍および免疫系による直接的な反応であるという理論が支持される。 [4]
現在の研究は、基礎代謝率が生存の予後指標としての役割を果たすことを示唆している。がんの進行につれて基礎代謝率の低下とともに悪液質が発症するため、長期生存率が低下する。 [6] 全基礎代謝率の変化が認められていない集団も一部にはあるが [7] 、小児がん [8] 、乳がん [9] 、肺がん [8] 、栄養不良 [10] 、およびその他のがん [11] を認める患者集団では基礎代謝率の増加が報告されている;しかしながら、こうした不一致はがん進行の病期に関連していることがある。 [12] 代謝率が変化しても除脂肪体重および皮下脂肪貯蔵量を維持するように意図された栄養支持療法は、最終的に患者の生活の質を改善し全生存に影響を与える。
患者の栄養状態は、がんの診断により最初は悪化することがあるが、栄養スクリーニングの処置を徹底し、栄養療法を適時に実施することで患者の転帰を著明に改善できる。症状および副作用は時に、食事による介入と薬理学的介入を併用することで管理できる。
がん性悪液質の治療に対するいくつかのアプローチが報告されており、さまざまな薬物が食欲および体重への効果について検討されている。患者の食欲を改善するための薬理学的治療を使用する決定は、患者の希望、現在の医学的状態、および平均余命に基づくべきである。表1表1では、がん性悪液質の症状の治療に提案されているいくつかの薬物療法の一覧が示されている。 [13] しかしながら、悪液質の管理は依然として複雑な問題であり、関係のあるさまざまな因子を標的にして統合された集学的治療が提案されている。1件の第III相研究において、患者が酢酸メゲストロール、エイコサペンタエン酸、L-カルニチン、サリドマイド、または酢酸メゲストロール+L-カルニチンおよびサリドマイドの併用を受ける群にランダムに割り付けられた。125人の患者の中間解析により、最も効果の高い治療は併用レジメンであることが示唆された。最適な組み合わせが現在行われている研究の目標である。 [14]
| 薬物カテゴリー | 使用される一般的な薬物 | コメント |
|---|---|---|
| EPA=エイコサペンタエン酸;TNFα=腫瘍壊死因子α;U.S. FDA=米国食品医薬品局。 | ||
| プロゲステロン製剤 | 酢酸メゲストロール | 複数の研究が使用による食欲刺激活性および体重増加を報告している。体重増加の身体組成では、除脂肪組織ではなく体脂肪貯蔵量の増加が示されている。800mg/日を超える用量での血栓塞栓のリスク増加が明らかな傾向である。諸研究は消化機能が優れている患者における有効性の改善を示唆している;このため、消化酵素または成分栄養などの標的栄養戦略が有用であろう。 [13] [15] |
| メドロキシプロゲステロン | ||
| グルココルチコイド | デキサメタゾン | 食欲刺激の機序は不明であるが、抗炎症性および多幸性の活性が関係しているようである。複数の研究が、食欲および生活の質などの臨床成績への肯定的であるが短期間の効果を報告しており、体重増加への効果は最低限か全く認められていない。筋力の消耗および免疫抑制といった有害作用のリスクにより、食欲を刺激するための長期使用には使用が制限される。 [13] [16] |
| メチルプレドニゾロン | ||
| プレドニゾロン | ||
| カンナビノイド | ドロナビノール | がん患者における臨床的有効性の証拠は一貫していない。ドロナビノール単独または酢酸メゲストロールとの併用に関する研究では、体重増加および食欲を促進させる上で優れた有益性は示されていない。 [13] [17] [18] [19] [20] |
| 抗ヒスタミン薬 | シプロヘプタジン | がん患者においては十分に研究されていない。進行がん患者におけるランダム化プラセボ対照試験では、両群における体重変化および進行性の体重減少の差は報告されなかった。鎮静はがん患者における有用性を制限しうる有害作用となることが多い。 [13] [21] |
| 抗うつ薬/抗精神病薬 | ミルタザピン | がん患者におけるルーチンの使用を支持する臨床データは不足している。さらなる研究が必要である。 [16] |
| オランザピン | ||
| 抗炎症薬 | サリドマイド | いずれもTNFαを減少させることが示されている。体重増加および食欲刺激に関する臨床試験の結果はさまざまである。1件の発表されたランダム化プラセボ対照試験では、進行期膵がんで発病前体重よりも10%以上の体重減少を認める患者において、サリドマイド200mg/日の安全性および効力が評価された。サリドマイド投与群は、プラセボ投与群と比較して体重減少における有意差を示したことから、サリドマイドには研究対象の患者において体重減少および除脂肪体重減少を安全に軽減させる力があることを示している。 [22] 多価不飽和脂肪酸であるEPAの予備的な臨床研究および試験室検査によって、がん患者に対する有益性が示唆されている;しかしながら、その後の大規模比較研究では、この有益性を再現できなかった。 [23] [24] |
| ペントキシフィリン | ||
| メラトニン | ||
| オメガ3脂肪酸(EPA) | ||
| 代謝阻害薬 | 硫酸ヒドラジン | 米国内での販売には米FDAによる承認を受けていない。 [16] |
| 蛋白同化薬 | オキサンドロロン | 筋同化を刺激する試みで用いられる。がん患者における食欲刺激の成功を発表した報告は限られている。 [16] |
| デカン酸ナンドロロン | ||
| フルオキシメステロン | ||
がんおよびその治療に関連した体重減少は、多数の症状および副作用による二次的なものである。適切な栄養および薬理学的症状管理戦略を使用した早期の介入は、体重減少を防ぐ。これらの症状および副作用を管理するために典型的に使用される薬物カテゴリーは、以下の通り: [25]
(栄養スクリーニングおよび栄養評価栄養スクリーニングおよび栄養評価のセクションおよび症状管理に関する栄養学的提言症状管理に関する栄養学的提言のセクションを参照のこと。)
がんと診断され、その治療過程に入っている患者の栄養状態はさまざまである。すべての患者が治療の開始とともに食欲不振、体重減少およびその他の栄養上の問題による症状を発症するわけではない。しかしながら、その症状を来す患者に対して、抗がん療法は、治療および期待される回復を複雑にしうる。また、多くの患者に、以前から併存しており治療をさらに複雑にする疾患および疾病が認められる。手術、化学療法および放射線は、栄養状態に直接的な(つまり機械的な)および/または間接的な(つまり代謝に関する)マイナスの影響を及ぼす。抗がん療法が効果をあげるかどうかは、患者の治療に対する耐容性の影響を受け、そしてまた耐容性は治療に先立つ栄養状態の影響を受ける。治療を行う医師は、ベースラインの栄養状態(栄養スクリーニングおよび栄養評価栄養スクリーニングおよび栄養評価のセクションを参照のこと)を評価し、さまざまな治療の起こりうる含意を認識しておくべきである。通常、積極的ながん治療を受けている患者には積極的な栄養管理が必要である。
手術はしばしば、がんに対する第一の治療法である。がん患者の約60%ががんに対する何らかの手術を受ける。 [1] 栄養不良の外科患者は、術後の病的状態および死亡のリスクが高い。時間が許せば、手術前に多量栄養素と微量栄養素の栄養欠乏を修正する措置を講じるべきである。 [2] これには、経口液体栄養補助食品、経腸栄養ないし非経口栄養支持、および/または食欲を刺激するための薬理学的療法の実施(腫瘍による栄養状態への影響腫瘍による栄養状態への影響のセクションを参照のこと)とともに、問題の同定と評価が含まれる。 [2]
手技によっては、手術は腸切除後に吸収不良を引き起こす短腸症候群など、十分な栄養を損ねる機械的または生理的な障壁の原因となりうる。 [2] こうした機械的な障壁に加えて、手術はしばしば、即時代謝反応を引き起こし、それによりエネルギー必要量を増大させ、またベースラインの必要量および要求量がしばしば満たされていない時に、創傷治癒および回復に必要な栄養要求量を変化させる。
以下のセクションでは、特定のがんに関するさまざまな外科的問題について主に考察する。栄養に関する合併症は通常、消化管に関係するがんの増殖および治療に伴う場合、最も注目すべき重大な問題となる。
アルコールの乱用は頭頸部領域に発現するがんの主要な危険因子であり、またアルコールの乱用だけでも栄養不良を引き起こすことがある。 [3] この領域に発症するがんは、根治目的または症状緩和目的の手術と相まって、患者の話す、咀嚼する、唾液を分泌する、嚥下する、においを感じる、味を感じる、および/または見るといった能力を変化させる。 [2] 頭頸部がんに対する治療は、栄養状態にきわめてマイナスの影響を及ぼす。
栄養評価は初診で行うことが勧められている。医師は集学的治療(化学療法と放射線療法)の副作用のほか [4] 、こうした治療に耐えるための栄養要求量の増加など、さらに悪化させる因子を予想する必要がある。頭頸部がん患者はしばしば診断時に栄養不良が認められ、また食べる能力に直接影響しうる治療を受けるため、患者の多くは、手術前に予防的に経腸栄養チューブを留置する。 [2]
手術は肉体に重大な犠牲を強いるが、手術によって消化管がんによる死亡および病的状態は減少する。 [2] 気道消化器がん(例えば、食道がん、胃がん、膵がん、肝がん、胆嚢がん、胆管がん、小腸がんおよび大腸がん)に対する抗がん療法は、胃不全麻痺、消化の変化、栄養素の吸収不良、高血糖症、脂質の高値、肝性脳障害、体液恒常性障害および電解質平衡障害、吻合部縫合不全および乳糜瘻、ダンピング症候群、およびビタミンおよびミネラル欠乏症の原因となる。 [2] 経腸栄養支持は、消化管がんの治療で一般的に使用される。栄養チューブは、胃(胃造瘻術)またはより下部にある空腸(空腸フィステル形成術)に留置できる。 [2] [5]
多くの患者は、手術の結果、疲労、疼痛、食欲の喪失を経験し、普通の食事を消費できない。 [2] 栄養療法を即座に実施することは、これらの問題を緩和または軽減するのに役立つ。腸の規則性を促進するため、食事の繊維含有量を変更するのが有用であるように、炭酸を含むまたは既知のガスを発生させる食物を避けることも有用である。推奨されている分量の必須栄養素およびカロリーを含むバランスのよい食事は、良好な創傷治癒を促進する。最後に、適切な栄養と十分な休養は、疲労を予防または治療する一助となる。
2000年には、90種類を超えるさまざまな化学療法薬剤の使用が承認された。こうした薬剤は複数の機能カテゴリーに分割されている。化学療法薬剤は、がんの種類や患者の健康状態に応じて併用または単独で使用できる。 [6]
手術や放射線療法とは異なり、がん化学療法は、身体全体(単に特定の部位ではなく)に作用する全身性の治療(限局的な治療ではなく)である。 [7] 結果として、化学療法には、手術や放射線療法よりも多くの副作用が伴う可能性がある。最も共通して経験される栄養関連の副作用には、食欲不振、味覚変化、早期の満腹感、吐き気、嘔吐、粘膜炎/食道炎、下痢および便秘がある(症状管理に関する栄養学的提言症状管理に関する栄養学的提言のセクションを参照のこと)。化学療法の副作用のほか、がんだけでも栄養状態がきわめて悪化するため、医療提供者は、栄養不良および体重減少を予防する治療活動において起こりうる問題 [7] を予期し、患者に教育する必要がある(栄養スクリーニングおよび栄養評価栄養スクリーニングおよび栄養評価のセクションを参照のこと)。栄養不良および体重減少は、化学療法サイクル中に患者が健康および許容できる血球数を回復する能力に影響を及ぼす;それにより、良好な転帰を得るのに重要な治療スケジュールを続ける患者の能力が直接影響を受ける。
カロリーおよび栄養素の十分な摂取を維持するための治療活動において、栄養支持または高カロリー/高タンパクの液体補助食品が使用できる。高血糖症または腎機能障害など二次的な医学的症状を認める患者には個別の処方が利用できる。
放射線療法中の栄養支持は、生命維持にきわめて重要である。照射野内の健康な組織に対する放射線療法の影響により、通常の生理的機能に変化を来し、そうした変化が摂取、消化または栄養素の吸収を妨げることで最終的に患者の栄養状態を悪化させる。ピロカルピン(Salagen)などの薬剤は、放射線療法に伴う口腔乾燥(口渇)の治療に有用である。この薬剤により、人工唾液またはハードキャンディーやシュガーレスガムなど口内を快適に保つ物質を使用する必要性が減少する。
放射線療法の副作用は、照射される部位、総線量、分割回数、期間、照射される容積によって異なる。副作用のほとんどは急性で、治療の2~3週目頃から発症し、放射線療法の終了後2~3週間で軽減する。副作用には慢性化するものがあり、治療終了後も持続または発現することがある。 [8]
消化管への放射線療法を受けている患者は、栄養関連の副作用に対してより感受性がある。 [9] 栄養関連の副作用を発現するリスクが最も多い患者は、がんが頭頸部、肺、食道、頸、子宮、結腸、直腸、膵臓などを含む気道消化管に関与している患者である。頭頸部領域への放射線療法を受けている患者は、がん自体またはがんを治療するための手術によって食物を摂取できないために二次的に派生する栄養不良を来した状態で放射線療法を受けることがある。こうした患者の多くに、大量のアルコール摂取量の既往歴が認められ、これも栄養上のリスクをさらに高める。一般的にこれらの患者は、重大な栄養上の問題および重度の体重減少が発生するリスクがこの上なく高い。 [10] 頭頸部および肺のがんに対する放射線療法を受けている患者57人のプラセボ対照二重盲検ランダム化研究において、酢酸メゲストロール(MA)が800mg/日の用量で投与された。MAを受けた患者は、体重維持および生活の質のいくつかの側面において有意な優越性を示した。 [11]
栄養介入は症状管理に基づいている。良好な栄養状態を維持している患者は、治療による副作用に耐容性を示す可能性が高い。十分なカロリーおよびタンパク質は、患者が体力を維持し、体組織がそれ以上異化するのを防ぐのに有用である。十分なカロリーおよびタンパク質を摂取していない患者は、エネルギー源として貯蔵されている栄養素を使用するが、これはタンパク質の消耗およびさらなる体重減少の原因となる。
頭頸部への照射によって起こるより一般的な栄養関連の副作用には、味覚変化または味覚嫌悪、嚥下痛(嚥下により生じる疼痛)、口腔乾燥、粘液性唾液、粘膜炎、嚥下困難、および食道上部の狭窄がある。 [4] 胸部照射は、食道炎、嚥下困難、食道逆流を起こすことがある。骨盤部または腹部への放射線照射によって起こりうる副作用として、下痢、吐き気、嘔吐、腸炎、および栄養素の吸収不良がある。 [12] (症状管理に関する栄養学的提言症状管理に関する栄養学的提言のセクションを参照のこと。)放射線療法を受けている大腸がん患者のプロスペクティブ・ランダム化研究では、個別に対応した食事に関する同時カウンセリングにより患者の栄養摂取、栄養状態、および生活の質を改善できることが実証された。そして今度は、こうした改善により、放射線誘発性の病的状態が減少するであろう。 [13] 高線量放射線または骨髄移植を受ける患者は、栄養士に相談すべきである。
栄養関連の症状に基づいた適切な食事の調節のための示唆は、患者および医療専門家が広く利用できるようになっている。食事に関する提言の詳細な一覧については、腫瘍による栄養状態への影響腫瘍による栄養状態への影響のセクションを参照のこと。該当する文献の一覧についても下記に記載する。
放射線療法を受けている多くの患者には、食間の栄養補助食品が有効である。 [14] 経口摂取単独では患者の体重を維持できない場合、積極的な栄養支持が必要になる。経管栄養法は、主に消化管機能を温存するため非経口栄養よりも頻繁に利用される。経管栄養法は通常、耐容性が高く、非経口栄養よりも患者に対するリスクが低いほか、費用対効果も高い。多くの研究が、著しい体重減少を来す以前の照射(特に頭頸部領域への照射)開始時に経腸栄養補給を開始することの有益性を示している。 [15] [16] [17]
栄養関連の副作用の多くは、放射線療法が原因である。適切な医学的栄養療法および食事の改善を通してこれらの副作用を管理することにより、生活の質および栄養摂取を改善できる。
がん細胞の成長刺激因子受容体を遮断するのに使用されるモノクローナル抗体は、一連の症状の原因となりうるが;栄養状態に影響する可能性が最も高い症状は、発熱、吐き気、嘔吐および下痢である。 [1] インターフェロン(非特異的な免疫療法)には、食欲不振、吐き気、嘔吐、疲労などの顕著な栄養関連の副作用がある。 [1] 米国食品医薬品局によって転移性の腎細胞がんに対する単剤治療用に承認されているインターロイキン-2もまた、疲労、吐き気、嘔吐、および下痢といった症状を引き起こす。 [1] [18] インターロイキン-2に対する反応は多岐にわたる;体重が増加する患者もいれば、栄養支持が必要となる患者もいる。 [18] しかしながら、インターロイキンの投与を受けている患者のほとんどは体重が増加する。最後に、白血球の生産を高めるために使用される非常に一般的な療法の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)も発熱、吐き気、嘔吐および下痢の原因となる。 [1]
こうした症状を無視すると、(症状の重症度によって)段階的または激烈な体重減少を来し、栄養不良に至ることがある。栄養不良は、期待される治癒および回復の過程を悪化させる(症状管理に関する栄養学的提言症状管理に関する栄養学的提言のセクションを参照のこと)。
造血幹細胞移植患者は特別な栄養所要量を必要とする。 [19] 移植前に、患者は高用量化学療法を受け、また全身照射(TBI)を受けることもある。 [20] これらの治療は、移植中の薬剤投与も加わってしばしば栄養学的な副作用を来し、十分な食事を消費する患者の能力に影響しうる。栄養支持の目標は、栄養状態とタンパク質貯蔵量の維持でなければならない。さらに、移植患者は、血液内の好中球数が異常に減少する好中球減少症を発症するリスクが非常に高く、複数の感染症にかかりやすくなる。 [21] [22]
幹細胞移植に関わる感染症のリスクを低下させるべく、大部分の医療設定指針は、加熱調理済みおよび処理済みの食物のみを推奨し、食物による感染を引き起こす恐れのある生野菜および生の果物は制限している。個別の食事制限およびその期間は、移植の種類およびがんの部位による。個別の食事制限とともに、食品安全性の指針を再評価し、すべての移植患者に強調すべきである。
化学療法レジメンおよび移植と関連している合併症は、栄養摂取および栄養状態に悪影響を及ぼす数多くの問題を引き起こす。 [23] 移植中、患者は、味覚変化、口腔乾燥、粘液性唾液、口内および咽喉の痛み、吐き気と嘔吐、下痢、便秘、食欲減退/体重減少および体重増加といった栄養関連の副作用を経験しうる。移植後、最初の数週間は、患者に十分な量のカロリー、タンパク質、ビタミン、ミネラルおよび水分を確実に摂取させるため、しばしば静脈内投与を行う。 [24]
患者の多くが、移植後2~4週間で口内および咽喉の痛みを経験する。粘膜炎は、紅斑、腫脹、口内軟部組織構造および口内粘膜と食道粘膜の潰瘍化を指す一般的な用語であり、放射線療法および高用量化学療法の細胞毒性作用に反応して発症する。口内および咽喉の痛みは、食事と嚥下を困難にする。またTBIも、口腔乾燥を引き起こし、一時的な味覚変化および/または口内および咽喉内に粘液性唾液を生じさせることがある。吐き気と嘔吐は、移植患者が共通して経験する問題である。吐き気と嘔吐は、TBI、化学療法および何らかの薬剤が原因となる。TBI、化学療法、感染症、抑うつおよび疲労は、食欲減退および体重減少の原因となる。食欲減退は退院後も長期間持続する問題となりうる。また患者は、TBI、化学療法、消化管の移植片対宿主病、感染症および何らかの薬剤が原因の下痢、便秘といった消化管の問題を経験することもある。 [25] [26]
がん医療における栄養は、がんの予防、治療、治癒または支持的な症状緩和を具体化する。代替のまたは実証されていない栄養療法を考慮する場合は、こうした食事が有害であることがあるため、がん治療および支持的症状緩和の全段階において注意が必要である。患者の栄養状態はがんの発現するリスクだけでなく、治療に関係した毒性および医学的転帰のリスクの決定においても不可欠な役割を果たしている。がん治療の目標が根治目的か症状緩和目的かにかかわらず、栄養問題の早期の発見および迅速な介入が重要である。
がん患者用の栄養ケアに関する最初の指針が1979年に開発されたが [1] 、現在でも非常に有意義である。予防的な栄養ケアは、がんの治療によって起こる典型的な合併症を予防または緩和できる。 [1]
栄養問題の多くは、腫瘍の局所的な影響を受けて発生する。例えば、消化管の腫瘍は、閉塞、吐き気、嘔吐、消化障害および/または吸収不良を来す恐れがある。腫瘍の影響に加えて、炭水化物、タンパク質および/または脂肪の正常代謝が著明に悪化する。 [2]
最も予後不良な転帰を予測すると認識されている栄養に関する予後指標には、体重減少、衰弱および栄養不良がある。さらに、診断時の著しい体重減少は、生存の低下、手術、放射線療法および/または化学療法に対する反応の低減と関連している。 [3]
栄養不良および付随する体重減少は、一部には患者の提示が原因であるか、またはがんの治療によって引き起こされているか、または悪化している。栄養問題の同定および栄養に関連した症状の治療により、がん患者の50~88%で体重減少を安定化または回復することが示されている。 [4]
スクリーニングと栄養評価は学際的であるべきである;すなわち、医療チーム(例えば、医師、看護師、登録栄養士、ソーシャルワーカー、心理士)の全員が一連のがん治療を通して栄養管理に関与すべきである。 [5]
現在、数多くのスクリーニングおよび評価の方法が、栄養評価に使用できる。こうした方法の例としては、Prognostic Nutrition Index、 [6] [7] 遅延型皮膚過敏症反応検査、施設独自の指針および人体計測学がある。これらの方法はいずれも、栄養上危険な患者の同定に有用であるが;残念なことに、これらの方法で得られた数値は、水分補給状態およびがん患者でしばしば認められる免疫低下によって変化することがある。さらに、これらの客観的な測定は、実験室や施術者の時間の点で費用がかかる。ある著者は、進行がん患者の評価方法について有益な概要を提供している。 [8]
スクリーニングおよび評価方法のもうひとつの例は、Patient-Generated Subjective Global Assessment(PG-SGA)である。PG-SGAは、自覚的総合評価(SGA)と呼ばれるプロトコルへの以前の取り組みに基づいており、 [9] さまざまな臨床設定において栄養学的に危険な患者を同定し、その後の医学的栄養療法の優先順位を決定する上で取り扱いが容易で安価なアプローチである。 [10] [11] 患者および/または介護者は、体重の記録、食物の摂取量、症状および機能に関する項に記入する。医療チームのメンバーは、体重減少、がんおよび代謝ストレスを評価し、栄養に関連した身体診察を実施する。収集した情報からスコアを算出する。スコアにしたがって、栄養介入の必要性が決定される。
また、生体電気インピーダンス分析(BIA)も、栄養状態の評価に使用されており、身体組成によって決定される。 [12] BIAは、除脂肪体重および体脂肪組成に基づいて電気抵抗を測定する。単一のBIA測定は理想的な総細胞量、外部細胞組織および脂肪をパーセントで示し、一方、連続測定は、経時的な身体組成の変化を示す場合に使用できる。費用および利用可能性の点で、BIAは現在使用を限定されており、通院設定のほとんどにおいて利用できないことが多い。
味覚と嗅覚の異常はがん患者では一般的で、それらは栄養状態にも影響を及ぼす。栄養不良の原因に対する化学的感受性変化の相対的重要度が、66人の進行がん患者で評価された。化学的感受性の異常は、患者の86%から報告があった;およそ半数が好きな食べ物を楽しむことを妨害すると報告した。食欲不振、吐き気、早期満腹感、化学感受性異常を同時に呈した。これらの知見はエネルギー摂取量の低下と有意に関係していた。これらの化学感受性の問題に対する栄養学的介入をデザインするためにさらなる調査が求められる。 [13]
栄養状態は疾病および食事摂取量の減少によりすぐに悪化するため、また栄養学的な健康はがんの治療と回復において重要な役割を果たしているため、がん治療と回復のすべての段階において、早期のスクリーニングおよび介入のほか、緊密なモニタリングおよび評価ががん患者の健康維持に不可欠である。
至適栄養状態は、がん患者の管理において重要な目標である。栄養療法の推奨は一連の治療を通して変化するが、十分な摂取量の維持が重要である。そのため、積極的な治療を受けている患者は、宗教上の休日中に行われる大部分の食事制限から免除される。がん患者は、このことを休日前に宗教上の指導者に話しておくように勧められる。
患者が積極的な療法を受けている、がん療法から回復している、あるいは寛解している、およびがんの再発を避ける取り組みを行っているなどの状況で、至適カロリーおよび栄養素の摂取の有益性については詳しく述べられている。 [14] [15] [16]
達成すべき栄養療法の目標は以下の通り:
進行がん患者も、栄養療法による体重増加がほとんど認められない場合でも、栄養支持を受けることができる。 [17] [18] そうした支持は、以下の達成に役立つであろう:
進行がん患者における栄養療法の目標は、体重増加または栄養不良の回復というよりも、快適性および症状緩和である。 [19]
がんが治癒または寛解している患者にとって、栄養は引き続き不可欠な役割を果たしている。 [20] 健康によい食事は、心臓病、糖尿病、高血圧などの併存疾患を予防またはコントロールする上で有効である。健康によい栄養プログラムに従うと、別の悪性疾患の発現を予防するのに役立つ。
上記のように、がん患者は、がん自体;手術、放射線または薬理学的療法などの抗がん療法;および/または感情の動揺による食欲不振の結果として生じる栄養不良のリスクがある。以下のセクションでは、栄養支持のすべての形態-経口、経腸および非経口栄養-に関する利点、禁忌、投与方法、在宅ケアの問題について主に取り上げる。
栄養支持の望ましい方法は経口的ルートを経由した方法であり、がん治療に伴う症状を軽減するための食事の調節も併用される。経腸栄養は、消化管(GI)が機能しているが、栄養所要量を満たすために経口摂取では不十分なときに適応とされる。経腸栄養が必要とされる一般的な状況には、頭頸部、食道および胃の悪性腫瘍がある。消化管が機能していないときには、完全非経口栄養法(TPN)または経腸栄養が適応とされる;しかしながら、TPNの広範な使用については進行がん患者における生存改善の証拠がほとんど実証されていないため、議論の余地がある。 [21] 非経口栄養法は少数の患者グループ-特に、積極的な治療を受ける予定があり、肯定的な奏効率を示している術後の患者-においてのみ有益性が得られると示されている。1件の研究 [22] では、消化管がん患者はTPNを用いる周術期の支持から有益性が得られ、合併症は1/3少なく、死亡も低下したことが報告された。
至適栄養は、がん治療を受けている患者の臨床経過、転帰または生活の質を改善できる。 [23] すべてのがん患者は実質的に、栄養計画を策定し食事計画を開始するために登録栄養士または医師に相談することで有益性が得られる。経口栄養すなわち口からの食事は、望ましい栄養補給方法であり、可能ならいつでも使用すべきである。著しい食欲不振を認める場合には、食事の楽しみを向上させ、体重増加を容易にするため、食欲刺激薬を使用できる。 [24]
治療中の推奨は、栄養状態の維持に役立つように、エネルギー、タンパク質および微量栄養素を多く含む食物の摂取に焦点を当てる。これは特に、早期の満腹感、食欲不振、および味覚変化、口腔乾燥、粘膜炎、吐き気または下痢を認める患者に当てはまる。こうした状況のほとんどにおいて、頻繁に高エネルギーおよび高タンパク質を含む間食を摂ることは全摂取量の助けになりうる。 [25]
栄養支持が有効な危険な状態にある患者は、以下に示す特性を1つ以上有する: [26]
栄養支持を通して良好な栄養状態が達成できる多くの利点が明確に詳述されているが、同時に栄養支持の欠点または疑問の余地がある効果も考慮する必要がある。栄養支持の腫瘍増殖への影響についての論議は見解の一致をみていない [27] ;栄養状態が良好な場合は通常、生活の質が改善されるが、栄養支持の長寿への実際の影響については、今後明確に見極める必要がある。 [27]
栄養不良の程度が評価されると、医療専門家および他の関係者は、栄養支持の提供と利用する支持の形態を決定する必要がある。経腸および非経口栄養支持は、消耗性の栄養不良のリスクおよび治療成績に影響する抗がん療法が中断するリスクを減少させるための実行可能な選択肢を提供する。どの形態の栄養支持にも利点と欠点がある。栄養支持計画の着手前に、診断、予後、栄養不良の程度、消化管の機能、送達の容易さを徹底的に評価することが不可欠である。refeeding症候群(重度の栄養不良または悪液質患者に認められる、カリウム、リン、マグネシウムの急激な充満により発症する代謝性合併症)を避けるには注意を要する。 [26]
以下のセクションでは、経腸栄養および非経口栄養に関する利点、禁忌、投与方法、処方、在宅ケアの問題について主に取り上げる。
経腸栄養または経管栄養法の利点には、消化管の継続使用、非経口栄養よりも感染症および臓器機能不全といった合併症が少ない、非経口栄養よりも投与が容易な場合が多い、非経口栄養よりも安価であるといったものがある。 [26] [27] [28] [29] さらに、栄養素は肉体によってより効率的に代謝および利用される。
特異的ながんおよび状態に関連した適応症として、消化管がん(特に頭頸部がん、食道がん、胃がん、膵がん)の診断、および既に栄養不良を来している患者の治療計画を深刻に脅かす、化学療法および/または放射線により発症した重度の合併症/副作用がある。 [26]
経腸栄養支持の禁忌には、消化管の機能不全、吸収不良状態、機械的閉塞、重度の出血、重度の下痢、難治性嘔吐、経腸チューブではバイパスが困難な部位の消化管瘻、長期の腸閉塞や重度の腸炎など炎症を示す腸の経過、および/または積極的な栄養療法と呼応しない総合的な健康予後がある。 [26] 抗がん治療後の血小板減少症および一般的な汎血球減少を示す状態も、経腸チューブの留置を妨げる。
経腸栄養支持または経管栄養の送達には、いくつかの効果的な方法がある。しかしながら、栄養支持が必要な期間の推定は、最も適切な送達ルートを決定する上で不可欠である。経鼻胃、経鼻十二指腸、または経鼻空腸法は短期(2週間未満)の支持には最適である。 [29] 送達のエンドポイント-胃、十二指腸または空腸-は、吸引のリスクによって決定され、吸引の恐れがある患者には経鼻空腸栄養補給が推奨されている。がん患者の吸引リスクが非常に高い場合には、経腸栄養支持は禁忌とされることがあり、非経口栄養を検討すべきである。また、粘膜炎、食道炎、および/または口内ないし咽喉にヘルペス、真菌またはカンジタ症の病変が認められる免疫低下患者は、経鼻消化管チューブの留置に不耐性を示すことがある。
チューブはシリコンまたはポリウレタンで構成されており、30~43インチまでさまざまな長さがあるが、短いチューブは経鼻胃栄養補給に使用される。カテーテルの直径は5~16Fである。チューブは、消化管内で通過しやすいように先端に重りを有することがある。
経皮的内視鏡下胃瘻造設術チューブ(PEGs)および経皮内視鏡下空腸瘻造設術(PEJs)は、一般に長期の経腸栄養補給(2週間を超える)に使用される。 [29] 消化管のさらに下部への留置には、以下に示す多くの利点がある:チューブの直径を大きくし(カテーテル径15~24F)、これにより製剤や薬剤の通過がより容易で素早くなる;チューブが食道まで上がってくる可能性が減るため、吸引のリスクがより少なくなる;副鼻腔炎または経鼻食道侵食のリスクが低い;またこのルートは、チューブを隠すことができるため、患者とってより便利で、美的にも優れている。 [29] 長期の支持を予期している患者には、薄いボタン型胃瘻造設術または空腸瘻造設術を考慮できる。
送達の必要性と容易さの評価は、早期に実施されるべきである。栄養不良の患者が関係のないイベントで手術を要する場合には、追加の手技を省くため、そのときにPEGまたはPEJを留置できる。
経腸栄養または経管栄養はさまざまな速度で送達できる。可能であれば、ボーラス法は、通常の栄養補給によく似ており、時間と装置が少なくて済み、また患者は自由度が増すので望ましい。 [29] 注入可能性の要約は以下の通り: [29]
連続または周期性の点滴栄養補給注入方法の決定後は、処方を選択する必要がある。多くの処方が販売されており、前消化された栄養素の成分製剤から、経口による栄養摂取によく似たより完全で複雑な処方までさまざまである。真性糖尿病および腎機能低下などの特異的な健康状態には、個別の処方が利用できる。栄養学的に不完全ではあるが、タンパク質、脂肪および炭水化物といった特定の栄養素を追加するモジュール式の処方も利用できる。これらの製剤は、既存の処方に追加でき、さらなる効果を得ることができる。
アミノ酸のひとつであるグルタミンは、消化管にとっては重要なエネルギー源であり、消化管の健康と完全性の維持に役立ち、また放射線および化学療法による損傷から消化管を保護することが明らかにされている。 [29] [30] 経管栄養補給物内へのグルタミンサプリメントの使用は、L-アルギニンおよびオメガ3脂肪酸とともに、支持を得ている。現在、これらの潜在的に有益な栄養素は、処方および経口サプリメントの形で利用できる。しかしながら、これらの利点と予想される欠点を完全に評価するには、さらに研究を行う必要がある。
処方を選択している際には、利用可能な製剤、モジュール式の処方、およびグルタミンや繊維などの添加物に関する施設の栄養処方集に配慮すべきである。患者の医学的状態、消化管の機能および予算にも配慮すべきである。
病院で経腸栄養支持を受けているかなりの数の患者が、療法中に自宅へ退院する。退院は以下の条件を満たす場合に正常に行うことができる: [29]
非経口栄養は、閉塞、難治性の吐き気および/または嘔吐、短腸症候群または腸閉塞といった経口または経腸ルートを使用できない特定の患者(すなわち、消化管の機能不全を認める患者)に適応とされる。また、重度の下痢/吸収不良、重度の粘膜炎または食道炎、経腸挿管法ではバイパスが行えない分泌量が多い消化管瘻および/または重度の手術前の栄養不良といったがん患者集団に共通して認められる状態も適応とされる。 [27] [29]
非経口栄養の使用に関する禁忌は、消化管が機能している、栄養支持の必要な期間が5日未満である、静脈内投与(IV)が行えない、積極的な栄養支持を必要としない不良な予後であるなどの条件である。 [27] [29] 決断を躊躇させる追加の条件は以下の通り:患者または介護者が非経口栄養を希望していない、患者が血行力学的に不安定である、または代謝および/または電解質に関して深刻な障害が認められる、および/または患者が透析を受けなければ無尿症になる。 [27] [29]
非経口栄養が有益であると決定された場合、静脈内投与の部位には中枢および末梢の2つがある。通常がん患者は、中心静脈(IV)カテーテルを留置し、複数のIV療法を行っている。そうでない場合には、末梢カテーテルを留置できるが、栄養支持および抗がん療法による末梢投与の濫用を避けるには注意が必要である。末梢注入および静脈切開を頻回に行うと血管硬化症を来すことがある。以下では、両方の注入法について主に考察する: [27] [29]
中心静脈カテーテル
非経口栄養処方は、患者の臨床状態および栄養必要量に合わせる。処方は、アミノ酸、ブドウ糖、脂質、ビタミン、ミネラルおよび痕跡元素、水分、電解質、および場合によりインスリン、ヘパリンおよび制酸薬などの添加物の併用で構成されている。
末梢部に留置されたラインを通過する溶液は、炭水化物(高浸透)からのカロリーの割合を減少させ、脂質(等浸透圧)の割合を増加させて変更する必要がある。一般に、最終的なブドウ糖の濃度が10%未満で、重量オスモル濃度が900mOsm/kg未満の末梢部用の溶液が、良好な耐容性を示す。 [27] 多量栄養素を強制的に変更すると、推奨されているカロリー/栄養素の送達に問題が生じることがある。
中枢への注入は大静脈を使用するため、重量オスモル濃度によって制限されない;この特性により、中心静脈投与は、重度のストレスのある代謝亢進患者および/または水分制限が必要な患者に対してよい選択となる。 [27]
薬物および化合物の多くは、非経口溶液とは適合しないことから、相互作用または沈殿を防止するため、溶液に追加または非経口溶液用に指定されたライン内でさえも通過させるべきではない。非経口栄養溶液の調整時および追加の薬剤または化合物を追加する前には、薬剤師に相談すべきである。
薬物との不適合性は、非経口栄養投与と関連して発生しうる多くの合併症のひとつに過ぎない。合併症は、機械的なもの(静脈血栓症、気胸症およびカテーテル先端の誤留置)と代謝的なもの(高血糖症/低血糖症、低カリウム血症および肝機能検査の高値)に分類できる。 [27] この種の支持の指揮、管理、維持には正確さが要求されるため、訓練を受けた経験豊富な内科医が携わるべきである。多くの施設は、専門の栄養支持集学的チームを有している。
がんは、自宅での非経口栄養受容者に最も多くみられる診断のひとつである。自宅に退院して非経口栄養を受ける妥当性を評価する場合には、以下の基準を使用すべきである。患者は以下の条件を満たす必要がある: [27]
非経口栄養支持の漸減については、医師と患者間での協調が必要である。非経口栄養支持は連続して行われるため、支持を漸減させるには、速度と時間を緩やかに減少させる必要がある。非経口栄養支持は、急には中止できない。
経腸栄養補給に移行する場合、経腸栄養補給が目標速度の33~50%に達したときに、非経口栄養支持を50%に減少させることができ;経腸栄養補給が目標の75%に達し耐容性を示したときに中止できる。 [27]
経口栄養に移行する場合、患者が十分な流動食またはそれ以上の食事に耐容性を示したときに、非経口溶液を50%に減少させることができ、十分な量の流動食の消費に加えて固形の食物に耐容性を示したときに中止できる。 [27]
経腸栄養支持および非経口栄養支持はどちらも、安全で効果的に使用できれば、がん患者の栄養不良の影響を改善するために有効である。しかしながら、栄養支持、特に非経口栄養支持は、抗がん療法に対するルーチンの補助療法として使用する場合や効果的ながん治療がない場合には、依然として見解の一致をみていない。 [31] 栄養支持を検討する前に、経口摂取によって患者を維持し、患者の体調を改善するあらゆる手段を講じるべきである。
がん治療の副作用は患者によって異なり、治療の種類、期間、用量のほか、治療されるがんの種類によって決まる。このセクションでは、栄養摂取に影響する一般的な症状の管理のための実践的な提案を提示する。
治療中の推奨は、栄養状態の維持に役立つように、エネルギー、タンパク質および微量栄養素を多く含む食物の摂取に焦点を当てる。これは特に、早期の満腹感、食欲不振、および味覚変化、口腔乾燥、粘膜炎、吐き気または下痢を認める患者に当てはまる。こうした状況のほとんどにおいて、頻繁に高エネルギーおよび高タンパク質を含む間食を摂ることは全摂取量の助けになりうる。 [25]
食欲の喪失または食欲の不足は、がんおよびその治療とともに起こる最も一般的な問題のひとつである。 [32] 食欲不振の原因は多因子性である場合がある。治療法、がん自体および心理社会的因子のすべてが食欲に影響する。 [32] 調理の容易な食事および間食を頻繁に摂ることが有効である。液体栄養補助食品は、全エネルギー摂取量および身体機能を改善し [33] 、固形物を食べるのが困難な場合に効を奏する。また、ジュース、スープ、牛乳、セーキ、果物入りの飲み物など、エネルギーを含むその他の液体も有効である。穏やかで快適な環境での食事および規則的な運動も食欲改善の一助となる。 [32]
食欲改善のための示唆は以下の通り: [34] [35] [36]
通常どのような種類の食物が推奨されるか。
乳糖不耐性に役立つ無乳糖ダブルチョコレートプリンレシピ、食欲喪失に役立つバナナミルクセーキレシピ、口の痛みに役立つフルーツアンドクリームレシピなどのレシピについては、NCIウェブサイト [32] を参照のこと。この冊子の無料コピーについては、がん情報サービス(1-800-422-6237:米国)まで連絡のこと。
味覚の変化は、がんの未知の作用、放射線療法、歯科的問題、粘膜炎および感染(鵞口瘡)、または薬物療法に関係している。化学療法を受けているがん患者は頻繁に味覚、特に細胞毒性薬投与中の苦味の感覚の変化を報告する。 [37] 1件の研究で、対照と比較した化学療法中のがん患者の味覚の閾値が測定された。 [38] この研究では、患者の62%が化学療法の薬物投与と関連した味覚障害を訴えた。味覚障害は食物の回避を引き起こして体重減少および食欲不振を誘発するが、これらはすべて患者の生活の質に対して重大な結果を招く。単純に、食べる食物の種類を変更するほか、料理にスパイスや香料を追加することが有効なこともある。柑橘類は、口内に痛みや粘膜炎がなければ、良好な耐容性を示す。食前の洗口は、食物の味覚の改善の一助となる。 [32]
がんの治療中、患者は、ある種の食物に対して味覚変化を経験し、または急な嫌悪を覚えることがある。こういった味覚は、部分的または完全に回復するが、味覚が正常に戻るまで、治療後1年かかることもある。1件のランダム化臨床試験によって、頭頸部への放射線照射後、味覚の回復を促進する際に、治療中の硫酸亜鉛の利用が有用であることが明らかになった。 [39] [証拠レベル:I]
がん患者が味覚変化を管理する上で役立つ示唆は以下の通り:
口腔乾燥(口渇)は、最も一般的には頭頸部への放射線療法が原因である。 [35] 多くの薬剤も口腔乾燥を誘発する。口渇は、発声、味覚、嚥下能力、口腔補綴物の使用に影響する。歯牙および歯肉を清浄にする唾液の産生が少ないため、窩洞および歯周疾患のリスクも高くなる。
口腔乾燥に対処する第一の手段は、多くの水分(25~30mL/kg/日)を飲み、ソース、肉汁、バターまたはマーガリンを含む汁気の多い料理を食べることである。 [25] [36] [40] さらに、ハードキャンディー、フローズングレープなどの冷菓、チューイングガム、風味をつけたアイスポップおよび氷片が有用である。 [32] 感染症の予防を促進するには、口腔ケアが非常に重要である。永久的な口渇症を認める患者の頭頸部への放射線照射は、エネルギー、鉄、亜鉛、セレンおよびその他の重要な栄養素の摂取量を減少させる。 [41] [証拠レベル:II]口腔乾燥患者用の食事と間食の調整を支援するには、特別な努力が必要である。
口渇を軽減し緩和するための示唆は以下の通り: [36]
(口腔乾燥の詳しい情報については、化学療法と頭頸部放射線療法の口腔合併症に関するPDQ要約を参照のこと。)
口内炎または口の痛みは、急速に成長および分裂する口内の細胞が骨髄移植、化学療法、放射線療法などの治療によって損傷を受けた場合に発症する。これらの治療は骨髄内で急速に分裂する細胞に影響することもあり、そのため患者はさらに口内感染症および口内出血を発症しやすくなる。食物を注意深く選び、口のケアをよく行うことで、患者は通常、より容易に食事ができる。 [42] [43] [44] 粘膜炎、口の痛みまたは歯肉圧痛を発症している患者は、軟らかく、咀嚼と嚥下が容易で刺激のない食物を食べるべきである。 [32] 状況によっては、ミキサーで料理をペースト状にする必要もある。刺激物には、酸性で、香辛料の入った、塩気が強く、粗い舌触りの食物が含まれる。予備研究で、口内へのグルタミン局所使用は粘膜炎の期間と重症度を減少させる上で有用であることが明らかにされた。 [45] [証拠レベル:I]また、グルタミンによって、細胞毒性を有する化学療法中の口内炎の期間と重症度も減少されることがある。 [45] [46] [証拠レベル:I]
口内炎のがん患者に対する提案は以下の通り:
(粘膜炎の詳しい情報については、化学療法と頭頸部放射線療法の口腔合併症に関するPDQ要約を参照のこと。)
吐き気は、治療中に摂取される食物の量と種類に影響する。治療前に食事をするほか、吐き気を引き起こさない料理を探すことが重要である。吐き気をしばしば起こす誘因には、香辛料の入った料理、脂肪分の多い料理または匂いの強い料理がある。 [32] ここでも、食事の回数を増やし、1日を通して飲料を少しずつゆっくりと飲むことは有効である。
追加の食事の示唆は以下の通り: [19]
(詳しい情報については、吐き気と嘔吐に関するPDQ要約を参照のこと。)
放射線、化学療法、消化管手術または感情的苦痛が下痢の原因となる。下痢のエピソード中の低ナトリウム血症、低カリウム血症、脱水を避けるには、経口からの液体と電解質の追加摂取が必要になる。ブロス、スープ、スポーツドリンク、バナナおよび缶詰の果物は、電解質の補充に役立つ。下痢は、脂肪分の多い料理、熱いまたは冷たい飲料またはカフェインにより悪化することがある。 [32] 放射線腸炎を発症していると、繊維質の食物-特にドライビーンおよびアブラナ科の野菜-は、頻繁な便通に寄与することがある。 [47] 食事の計画は、個別化して栄養必要量および耐性に合わせるべきである。経口グルタミンは、フルオロウラシルによる腸毒性を予防するのにも役立つ。 [48] [証拠レベル:I]
追加の示唆は以下の通り: [19]
(下痢に関する詳しい情報については、消化管の合併症に関するPDQ要約を参照のこと。)
がん患者は、さまざまな理由(そのいくつかには放射線療法、化学療法またはがん自身が含まれる)で白血球数が低いことがある。白血球数が低い患者は、感染症の発症リスクが高い。 [49] 患者が好中球減少症による感染症を防ぐのに役立つ示唆は以下の通り:
このリストは、化学療法後または血球数が正常に戻ったときに変更できる。
十分な水分補給は、健康維持にきわめて重要である。水分補給状態の変化と電解質平衡障害の原因となるがん治療では、いくつかの共通したシナリオが認められる。水分補給状態は、長期にわたるがんまたは治療による下痢および/または吐き気と嘔吐のエピソードが認められる場合に悪化する。 [50] 急性および慢性の疼痛も、食欲およびそのため飲食に対する欲求に悪影響を及ぼす。がん患者に非常に多くみられる訴えのひとつである疲労は、脱水の最初の徴候のひとつである。 [51] 水分補給の変化に関して基礎にある原因が適切に管理された後の十分な水分補給を促進するためのいくつかの示唆は以下の通り: [32] [52] [53]
便秘は、週3回未満の排便として定義される。 [54] 便秘は、がん患者に非常に共通した問題であり、十分な水分の不足または脱水、食事における繊維不足、身体的な不活動または不動状態、化学療法などの抗がん療法、および鎮吐剤やオピオイドといった、抗がん療法による副作用の治療に使用される薬剤によって生じることがある。 [54] [55] [証拠レベル:I]さらに、ミネラル(カルシウム、鉄)、非ステロイド性抗炎症薬、抗高血圧症薬などの一般に使用される薬理学的薬剤が便秘の原因となることもある。 [54]
便秘の問題が発生する前に、有効な腸のレジメンを実施すべきである。予防処置が一般的な実践であり、特定の治療による副作用として便秘が疑われる場合には特別な注意が必要である。提案は以下の通り: [52] [54]
予防の効果がなく、便秘が問題になっている場合は、治療のための三方面からのアプローチの応用が示唆されている:すなわち、食事(繊維および水分)、身体活動、および一般に市販されている薬物または処方薬である。バイオフィードバックや手術の利用も考えられる。 [56]
提案は以下の通り: [15] [52] [54] [56] [57]
[注: *これらの食物はガスの原因となることがある;α-ガラクトシダーゼ酵素を含む製剤が有効である。]
進行がんは、しばしば悪液質と関連している。 [1] [2] [3] [4] がんの進行に伴い、がん患者は新たな、または悪化した栄養関連の副作用を発現する。こうした集団における最も一般的な症状は以下の通り: [1] [2] [3]
世界保健機構によって定義されているように、緩和ケアとは、生命を脅かす疾患と関連する問題に直面している患者とその家族の生活の質を改善するアプローチのことであり、疼痛とその他の身体的、心理社会的、霊的な問題の早期同定、評価および治療を瑕疵なく行うことによって苦痛を予防および緩和することを通して実践される。症状緩和ケアの目標は、患者にとって厄介な症状を軽減することである。上に示した症状のいくつかは効果的に治療可能であるが、食欲不振は、よくみられるものの、最終末期の患者についてはしばしば問題としては注目されないが、ほとんどの家族にとっては悩ましい問題である;この悩みは文化的因子によって異なる場合がある。複数の研究により、終末期患者に空腹が認められないこと、空腹を経験した患者では、少量の経口摂取により症状が緩和されたことが示されている。 [5]
摂取量の減少、特に固形食の摂取量の減少は、死が差し迫るにつれて共通して認められる。患者は通常、軟らかく水分を多く含む食べ物および清涼飲料(澄んだ十分な量の飲料)を好み、また耐容性を示す。嚥下困難が悪化している患者は、薄い飲料よりも濃い飲料を飲むことで吸引を起こしにくくできる。
禁止されている食物(例えば、糖尿病患者における菓子類)の摂取は憂慮するほどのことではないため、食事制限は通常、必要ではない。 [6] 通常の場合と同様に、食物は引き続き楽しみや喜びの源として扱われ、また見なされるべきである。食事が、単にカロリー、タンパク質およびその他の多量栄養素や微量栄養素の必要量に関係しているだけであってはならない。
しかしながら、食事制限が適切な場合もある。 [6] [7] 例えば、膵がん、婦人科がん、腹部のがん腫症、骨盤内腫瘤または後腹膜リンパ節腫瘤の患者は、予防的な軟らかい食事(つまり、生の果物や野菜、ナッツ類、皮、種子類を含まない食物)を忠実に食べている場合には、腸閉塞を発症しにくくなる。食事の制限は、生活の質および患者の希望の観点から考慮すべきである。
栄養支持を決定する場合に考慮すべき事項は以下の通り:
進行がん患者における自宅での非経口栄養の有益性がしばしば論議されているが、その使用に関して証拠に基づいたデータは不足している。依然として良好な生活の質を保っていながら、経口では十分な栄養および水分補給を達成できない機械的または生理的な障壁(例えば、頭頸部がん)がある患者には、経腸または非経口栄養補給の使用により生存期間の延長が達成可能であろう。 [5] ある定性的研究では、13人の患者および11人の家系員が、自宅での非経口栄養によりある程度の有益性を認識した。 [8] 自宅での非経口栄養における最も顕著な肯定的特徴は、栄養必要量が満たされているという安心および保証の感覚であった。この研究では、患者は経口栄養を受けることもでき、完全非経口栄養法の投与はしばしば、患者の経口栄養に対して補完的役割をするものとして記述された。これは、TPNの従来の適応、すなわち、TPNの使用は消化管を介した栄養補給が不可能な場合にのみ使用されるべきであるということと矛盾する。この研究の患者は在宅医療ケア提供者による定期的な訪問も受けたが、そうした訪問が患者の身体的、社会的、心理学的幸福にプラスの影響を及ぼした可能性がある。
進行がん患者のほとんどは人工栄養による有益性は得られないが、依然として良好な生活の質を保っていながら、経口では十分な栄養および水分補給を達成できない機械的または生理的な障壁(例えば、頭頸部がんにおいて)がある患者には、経腸または非経口栄養補給の使用により生存期間の延長が達成可能である。 [5]
すべてのがん患者およびその介護者は、説明を受けた上で決断する権利がある。医療チームは、登録栄養士からの指針に基づいて、進行がんに対して栄養支持を行う場合のプラス面とマイナス面について患者およびその介護者に知らせるべきである。有益性が証明されていないにもかかわらず、終末期の人工栄養は一部の患者および家族にとっては、依然としてデリケートな話題である。 [5] ほとんどの症例では、マイナス面の方が、プラス面よりも勝っている。以下は、進行がんにおいて栄養支持を行う場合のプラス面とマイナス面の一覧である: [6] [7] [9]
経腸栄養支持のプラス面とマイナス面がんの治療を受けている患者は、ケアを通して一連の治療薬または支持薬を使用する必要がある;また患者は、食事の栄養補助食品の使用に関して助言を受けることも、あるいはそれらの使用を自分で診断および処方することもできる。薬物-栄養の相互作用または食事の栄養補助食品-薬物-栄養の相互作用によって、抗がん治療計画の安全性および効力が得られることも、損なわれることもある。さまざまな文献に記載されている抗腫瘍薬のレビューにより、表2に挙げる相互作用が明らかになった。 [10]
| 商品名 | 一般名 | 食物との相互作用 |
|---|---|---|
| MAOI=モノアミンオキシダーゼ阻害薬。 | ||
| Targretin | ベキサロテン | グレープフルーツジュースは、薬物の濃度と毒性を増加させることがある。 |
| Folex | メトトレキサート | アルコールは肝毒性を増加させることがある。 |
| Rheumatrex | ||
| Mithracin | プリカマイシン | カルシウムおよびビタミンDを含む栄養補助食品は作用を低下させることがある。 |
| Matulane | プロカルバジン | この化学療法は、軽度のMAOIである;低チラミン食を遵守すべきである。 |
| Temodar | テモゾロミド | 食物によっては薬物の効果を遅延させ、また吸収を低下させることがある。 |
がんの生存者は、栄養に関係した多くの病的状態のリスクがある集団であり、生活様式の修正を目的としたプログラムを臨床で適用でき、有益であることを示唆している。 [11] がん生存者における研究では、行動上の変化の段階と変化を阻む障壁に焦点が当てられており、生活様式への集学的な介入が含まれる。生活様式の行動は、食事の指導、運動、ストレス管理を含む集学的なアプローチの一部として、長期にわたる成功をもたらす可能性が高い。
成人および小児のがん生存者における生活様式の習慣を評価した多くの調査が発表されている。初期の研究の1件では、乳がんまたは前立腺がんを診断されていた個人978人の生活様式の習慣が調査された。 [12] 乳がん生存者の47%および前立腺がん生存者の35%が、1日に推奨される皿数の果物および野菜を消費していることを報告した。白人はアフリカ系米国人よりも推奨される数の果物および野菜を食べる傾向がみられた(P = 0.006)。参加者の69%が低脂肪食の指導に従っていた。 [12]
その後のプロスペクティブコホート研究では、早期乳がん女性1,901人における食事パターンの変化が乳がん再発および生存に効果をもたらすかどうかが評価された。 [13] 過去11~39ヵ月以内に乳がんを診断された18~79歳の女性が調査された。Fred Hutchinson Cancer Research Center Food Questionnaireを使用し、過去1年間の食事摂取について質問する形式で、食事摂取が評価された。健康によい食事のパターンは、がん予防のための食事に典型的な食品の摂取と定義され、アブラナ科の野菜、果物、豆類、タマネギ、赤肉の消費が評価された。 [13]
身体活動の多い女性(P < 0.0001)および診断前の1年間で体重が減少した女性(P = 0.04)において、統計的に有意な関係が観察された。 [13] 赤身肉、加工肉、クリームの多いスープ、バター、精製した穀物、菓子類を消費する健康によくない食事のパターンは、以下の女性で多くみられた:
全死亡(傾向性のP = 0.05)およびがん以外の原因による死亡(傾向性のP = 0.02)のリスク低下が、健康によい食事習慣に従った女性で観察された。食事のパターンと乳がんによる死亡または乳がんの再発との関係は観察されなかった。 [13]
最後に、比較的小規模の研究で、乳がんの長期生存者における食事習慣および運動パターンががんに関係した晩期障害、社会的支援、ストレスとなるイベントに及ぼす影響について調査された。 [14] 調査された227人の女性のうち:
運動レジメンを採用した生存者は疲労の軽減を報告した(P = 0.03)。果物および野菜の摂取を増やした女性はまた、疲労の軽減も報告した(P = 0.08)。抑うつ症状、乳がんに関する不安、性的満足感、または体の満足感に対する有意な影響は報告されなかった。社会的支援システムを受けられる生存者は運動レジメンを採用する傾向がみられた(P = 0.06)。 [14]
小児がん生存者における生活様式の習慣について調査した研究はほとんどない。1件の調査(N = 380)で、以下が報告された: [15]
小児がん生存者144人を対象にしたその後の調査では、健康によい食品の消費を阻む障壁について探索された。 [16] 健康によい生活様式の習慣を採用する障壁になるものとして、以下が挙げられた:
小児がん生存者72人を対象に実施された調査でも、同様の結果が示された。 [17] この調査では、がん予防のための指針を遵守していると報告した参加者はいなかった。
上述の調査の結果から、がん生存者はがん予防のための指針を遵守しておらず、晩期障害のリスクをさらに高める可能性のある生活様式の行動を取っていることが示唆されている。リスクのある生活様式の行動を取っているがん生存者は、なんらかの晩期障害の進行を加速させている可能性が高い。がん生存者では疾患に対する脆弱性が高いため、この集団は特に、介入戦略を最適に適用でき、検証できる高リスク集団である。リスクの高い生活様式の行動を改善するようにがん生存者を教育し、自己効力感を促進する介入は、晩期障害のリスクを低下させるために有効な戦略であろう。
がん生存者の集団が増加するにつれて、がん生存者向けに特別にデザインされた効果的な生活様式の介入プログラムに対する特有の必要性が認識されるようになった。文献で強調されているように、ほとんどのがん生存者はがん予防のための指針を遵守していない。晩期障害が発生するリスクを最低限に抑え、または再発のオッズを低下させるために、多くの試験で生活様式の行動の変更が目標にされている。抜粋した介入研究の要約を以下に示す。
乳がん患者の生存者が増加するにつれて、脂肪摂取の増加と乳がん再発の増加との関連から、食事のパターンと食事での脂肪摂取が乳がん再発に及ぼす影響を評価する米国国立がん研究所主催の2件の試験が実施されることになった。
Women's Intervention Nutrition Study(WINS)(N = 2,437)は、乳がんの女性における食事介入の生存、再燃、または再発に対する効果を調査した最初の大規模試験であった。 [18] この試験で測定された主要アウトカムは、乳がん診断後1年以内の女性において低脂肪食が無再燃生存にもたらす効果であった。この研究の被験者は、栄養的にバランスのとれた食事を維持しながら脂肪の摂取量を総エネルギー摂取量の15%に減らすように助言された。運動は介入には含まれなかった。
WINS参加者は1年目には良好な応答率を維持した:介入群で86%および対照群で91%。しかしながら、5年目の応答率は介入群で39%および対照群で44%に低下した。体重減少については、ベースライン時と比較して12ヵ月、24ヵ月、36ヵ月、48ヵ月、60ヵ月経過時に有意な低下が観察された(P < 0.0001)。 [18]
この研究では、低脂肪食の採用による全生存、再燃、または再発への効果は示されなかった。探索的解析では、エストロゲン受容体陰性乳がんの女性における有益な効果が明らかにされた。この集団の低脂肪食を遵守した介入群では、対照と比較して無再燃生存期間が増加した(P < 0.034)。 [18] WINSは自己報告のデータのみに依拠し、患者のほとんどが白人で高い学位を取得しているため、研究の一般化可能性に限界があることで制限がある。
Women's Healthy Eating and Living(WHEL)Study(N = 3,088)では、1日に5皿の野菜 + 16ozの野菜ジュース、3皿の果物、30gの食物繊維を消費し、脂肪をエネルギー摂取量の15%~20%にする食事を推進する食事介入の効果が調査された。 [19] 測定された主要アウトカムは、がんの再発または新たな原発性乳がんおよびすべての原因による死亡であった。
介入群では、一連の電話によるカウンセリングセッションと研究の最初の年に開かれた12の料理クラスが組み合わされるとともに、個人に合わせた毎月のニュースレターが配布された。対照群は「1日に5つ」の食事に関する教育を受け、最初の年に4つの料理クラスのうち平均して1つのクラスに参加し、個人に合わせた24冊のニュースレターが配布された。この研究では客観的データも集められた。12ヵ月、48ヵ月、72ヵ月経過時に栄養素の血漿濃度が測定された。参加者は7年間モニタリングされ、72ヵ月経過時の応答率は介入群で77.9%および対照群で86.2%であった。 [19]
WHEL Studyの介入群への参加者では野菜の消費が有意に増加し、ベースライン時の1日3.9皿から72ヵ月経過時には1日5.8皿になっていた。果物の摂取は1日3.5皿から3.4皿になっていた。対照群は果物の摂取が1日3.4皿から2.6皿に減少し、野菜は1日3.8皿から3.6皿に減少したことを報告した。介入群において総カロリーに占める割合としての食事での脂肪の摂取量または食物繊維に対する有意な効果は観察されなかった。 [19] WINSと同様に、全生存またはがんの再発に対する効果は観察されなかった。ネステッドケースコントロール解析により、募集時にほてりが認められなかった女性ではがんの再発リスクが有意に低かったことが明らかにされた(P = 0.002)。 [20]
WINSおよびWHEL Studyの両研究では、栄養教育によってがん生存者における食事の変化を維持できることが示された一方で、研究の主要アウトカムに対する有意な効果は示されなかった。これらの研究で評価された問題はわずかに異なることを認識することが重要である。 [21] WINSでは乳がんと脂肪および循環血液中のエストロゲン濃度との相関を示すデータに基づいて、低脂肪食の効果に焦点が当てられた一方で、WHEL Studyでは果物、野菜、脂肪の削減、食物繊維の増加を含む包括的な食事の変化について評価された。
これらの研究により、遠隔医療に基づいた栄養教育は食事の変化を起こすために有効であると示されている。ただし、これらの研究の臨床での有益性はまだ示されていない。WINSおよびWHEL Studyは以下の点でわずかに異なる:
著者が強調しているように、WHEL Studyでは診断後4年以内に再発した個人のサンプルが少なかった。 [21]
WINSおよびWHEL Studyは参加者のほとんどが白人で、公的教育水準が比較的高かったため、一般化可能性に限界がある。栄養教育介入が民族的に多様な集団、低所得世帯、または教育水準が低い個人に有効であるかどうかは不明である。
乳がん生存者の非白人集団において、食事 + 霊性の教育介入の効果を調査した研究が1件だけある。 [22] 研究者らは、霊的要素を追加することで食事の変化をさらに支援できるだろうと仮説を立てた。参加者は18~70歳の肥満(BMI 30~45)のアフリカ系米国人女性で、募集前の10年間に乳がんを診断されていた。登録栄養士による18ヵ月間の個別の食事カウンセリングが提供された。カウンセリングセッションはベースライン時、6ヵ月時、12ヵ月時に面接で行われた(合間に電話によるカウンセリングを実施)。参加者にはまた、登録栄養士への訪問の合間にWeight Watchersのダイエット教室に無料で参加できるクーポン券も配布された。 [22]
参加者の食事と運動の目標は以下の通りであった:
霊的カウンセリングでは、体重減少に関連した問題に焦点が当てられ、3ヵ月間は週1回、その後の3ヵ月間は隔週で、その後は月1回電話で行われた。ベースライン時、6ヵ月時、12ヵ月時、18ヵ月時に客観的評価がまとめられた。研究には31人の被験者が募集された;しかし、5人の被験者が6ヵ月時の基準を満たさなかった。6ヵ月時に、24人の被験者が霊的カウンセリングを併用する、または併用しない栄養士主導のカウンセリングにランダムに割り付けられた。24人の女性のうち、各群の11人の被験者が研究を終了した。
2群間で体重減少における有意差は観察されなかった。霊的カウンセリング群(1日2.5皿)では、栄養士によるカウンセリングだけの群(1日1.1皿)よりも果物の消費が多く、QOLの改善を報告した。 [22]
1件の小規模研究で、肥満または過体重の子宮内膜がん女性45人に対する栄養および運動教育を含む生活様式の修正プログラムが調査されている。 [23] 参加者は6ヵ月の介入または通常のケアにランダムに割り付けられた。介入群には6週間は週1回、その後の1ヵ月は隔週で、その後は月1回のカウンセリングが行われた。
研究の主要エンドポイントは体重の変化であった。副次エンドポイントは余暇の活動および栄養の分析(3日間の飲食物の記録で測定)であった。この研究の全体での損耗率は16%であった:通常ケア群で10%であったのに対し、介入群では22%であった。12ヵ月時の体重は、介入群では3.5kg減少したのに対し、通常ケア群では1.4kg増加した(P = 0.018)。介入群では対照群に比べ余暇のスコアが高かった(P = 0.002)。 [23]
これらの結果は有望であるものの、この研究はサンプルが少数で、介入群における脱落率が高かったため制限がある。介入群におけるこのような高い損耗率は、より大規模な設定でのこの介入の実施可能性が問題になる。
別の大規模研究、FRESH START(N = 543)により、前立腺がんまたは乳がんの個人における栄養教育と運動介入との併用の効果が調査された。 [24] FRESH STARTで募集された個人は、乳がんまたは前立腺がんの診断後9ヵ月以内であった。10ヵ月間の介入試験では、以下の行動を目標として個人に合わせて印刷した教育資料が配られた:
測定された主要アウトカムは、3つの行動の少なくとも2つで目標の行動を達成した患者の割合であった。
目標の行動に関して1年後に2群間で有意差が観察され、FRESH STARTの2つ以上の行動を採用した被験者では34%(P < 0.001)および変化を採用した注意コントロール群の被験者では18%であった。食事および運動が改善した結果、体重が有意に減少した。 [24] この研究では食事の変化によるがん再発または全死亡率への効果は調査されなかった。
FRESH STARTは遠隔医療に基づいた教育プログラムにより、果物および野菜の消費が有意に改善したことを実証した最初の研究の1つであった。FRESH STARTの長所の1つは、試験が個人に合わせた介入プログラムであったことである;この研究の損耗率がかなり低かったことから、このような介入は地理的に散在する集団に提供する場合に特に有効であると考えられる。
このセクションで記述されている他の行動研究で示されているように、FRESH STARTは、ほとんどの生存者が白人で公的教育年数が比較的長かったという点で制限がある。こういった種類の生活様式の介入が他の患者集団に有効であるかどうかは不明である。
Reach out to ENhancE Wellness(RENEW)試験は遠隔医療に基づいた栄養および運動介入プログラムで、個人に合わせた手引書と年4回のニュースレターに加えて、電話によるカウンセリングと自動音声プロンプトのプログラム(12ヵ月間に15回のセッションおよび8回のプロンプト)で構成された。 [25] 試験に適格とされた参加者は、乳がん、前立腺がん、または大腸がんの5年以上の生存者で、BMIが25~39.9、年齢が65歳以上であった。
測定された主要アウトカムは、ベースライン時と12ヵ月時の機能状態の変化であった。介入の目標は被験者に以下を促すものであった:
12ヵ月経過時に、介入群と対照群間で以下のアウトカムに関する変化のスコアに有意差が観察された: [25]
12ヵ月経過時に、介入群の参加者の方が以下のアウトカムに関する推奨を多く満たしていた:
このセクションで記述されているほとんどの研究と同様に、RENEW試験は一般化可能性に制限がある。集団は主に白人で構成され、少なくとも大学教育を受けていた。非応答者と比べて応答者では、以下の有意差も観察された:
WINSと同様に、いずれのアウトカムの評価も自己報告に基づいていた:RENEWでは、客観的な測定データは収集されなかった。
小児がん生存者を対象にした唯一の介入は、急性リンパ芽球性白血病に対して維持療法期にある4~10歳の小児13人の小規模パイロット研究である。 [26] この研究では、在宅での12ヵ月の栄養および運動介入プログラムの実施可能性が調査された。小児は介入群または対照群にランダムに割り付けられた。このプログラムの主目的は身体活動を増加させ、食事のパターンを改善することであった。
運動と栄養に関する推奨の基礎として、若年者向けの身体活動ピラミッドおよび米国農務省(USDA:United States Department of Agriculture)のフードガイドピラミッドが用いられた。対照群はバランスのよい食事を食べ、許容できる活動を行う標準的な推奨ケア(実質的に、標準ケア)を受けた。
月単位で3日間の活動記録および2日間の飲食物の記録が両親により記入された。ベースライン時、3ヵ月時、6ヵ月時、9ヵ月時、および12ヵ月時に体力テストを実施して、経過が客観的に測定された。ベースライン時と3ヵ月ごとに身体測定値およびBMIが測定された。
栄養関連のどのパラメータについても3ヵ月時、6ヵ月時、および12ヵ月時に有意差は観察されなかった。介入群では対照群と比較して、身体活動および心血管系の健康状態が改善していた。活動レベルは対照群よりも介入群の方が高かった(P = 0.05);しかしながら、6ヵ月時または12ヵ月時の体力測定の改善については両群間で差がみられなかった。 [26]
がん生存者は栄養および生活様式に関連した多くの晩期障害のリスクが高く、栄養および生活様式の行動に特別な注意を払って研究を行うべきである。
このセクションで記述されている研究は、運動カウンセリングを併用する、または併用しない栄養カウンセリングを含む遠隔医療に基づいた生活様式の教育プログラムががん生存者における行動の変化を促すのに有効であるという明確な証拠を提供している。乳がん生存者の2件の大規模研究によると、エストロゲン受容体陰性乳がんの生存者、または診断時に症状が認められる生存者に低脂肪の健康によい食事を推奨することは賢明であると考えられる。
利用可能な証拠によると、他の病期の乳がんを診断された女性における低脂肪食または健康によい食事の乳がん再発への効果については、結論に至っていない。しかしながら、食事では乳がんの再発を予防できないかもしれないが、こうしたデータによって、栄養に関連した肥満、心疾患、メタボリックシンドロームなどの晩期障害の発生を最低限に抑えるための健康によい食事の重要性が否定されるわけではない。栄養の教育者は、乳がん生存者にカウンセリングを行う際に健康によい食事の全体的な有益性および重要性を強調すべきである。実施中の研究プロトコルに登録するがん生存者が増えるにつれて、今後の研究では食事の変化が再発または二次がんの予防よりも、晩期障害の予防に顕著な役割を果たすことが明らかにされるであろう。
健康機関および疾患予防機関は、一般向けに食事と生活様式の指針を策定している。これらの推奨は健常者向けに作成されたものではあり、がん生存者に特有の必要性に基づくものではない。これらの指針に関する詳しい情報については、米国農務省(USDA)のMyPlateと、USDAおよび米国保健社会福祉省(U.S. Department of Health and Human Services)による2010年版Dietary Guidelines for Americansに掲載されている。 [27]
米国がん協会(ACS:American Cancer Society)のGuidelines on Nutrition and Physical Activity for Cancer Prevention [28] は、1996年に最初に出版され、がんの予防を中心として詳細な食事の助言を提供している。これらの指針は2006年に更新され、大筋で米国農務省(USDA)や他の組織によって推奨されている指針と一致している。
ACSの指針は、腫瘍性疾患に関連する栄養の問題について利用可能な最新の情報を含む報告の出発点となっている。さまざまな食物、食物を調理する方法、分量、多様性および全カロリーが、特定のがんのリスクをどれだけ低下または増加させるかについての詳細な解答が含まれている。これらの指針は、がん生存者を含めたすべての人ががんを予防するための健康的な食事について適切な助言を提供している。 [29]
ACSの指針は以下の通り:
American Institute for Cancer Research(AICR)は、食事とがんに関する4,500件を超える研究について、専門的な科学者の委員会が実施したレビューと評価を含む報告書 [30] を1997年に出版した。AICRのDiet and Health Guidelines for Cancer Preventionは、これらの勧告から策定され、2007年に更新された。 [31] AICRはまた、がん予防に焦点を当てたレシピの情報を提供するウェブサイトも管理している。 [32] AICRおよびACSの指針は類似している。
AICRの指針は以下の通り:
乳がん生存者における大豆食品の使用によって、この分野においてかなりの研究が行われるようになっている。複数の研究が、大豆消費は乳がんリスクを低下させ、生存を改善しうると示唆している;しかしながら、大豆製品に自然にみられるイソフラボンのエストロゲンへの影響により、乳がん患者、特にエストロゲン受容体陽性腫瘍を認める患者による大豆の使用については医療専門家間で論争が起こっている。
大豆における2つの主要なイソフラボンであるゲニステインおよびダイゼインに関する研究により、これらの植物化学物質はエストロゲン受容体に結合して女性におけるエストロゲンの血漿レベルを低下させ、このため予防的に作用しうることが示されている。 [33] しかしながら、動物実験ではゲニステインが、体内の循環エストロゲンをブロックするために用いられる薬物であるタモキシフェンの効力を阻害することが明らかにされている。 [34]
1件の研究 [35] により、関連する文献が見直され、大豆は乳がんに対して保護となる、または大豆は乳がんの既往を有する、あるいは乳がんに対するリスクが高い女性に対して有害であるという主張を支持する説得力のあるデータがみられないことを明らかにした。Shanghai Breast Cancer Studyの一環として乳がん患者の大規模コホートから集められたデータを用いたある追跡研究でも、大豆食品は乳がんの生存に対して有害な影響を有さないと結論づけられた。 [36]
これらの研究の研究者らは、大豆食品は、健康によい食事の一部としておよび適当な量での消費は安全である;しかしながら、乳がん患者が特に二次腫瘍の発生を防止し、生存を向上させることを目的として大豆の消費を開始することを推奨するには十分な証拠が存在しないと結論づけた。 [33] 乳がん診断後に食事に大豆を追加することが、再発に対する保護となることは明らかにされていない。同様に、粉末または丸薬の形で濃縮し分離されたイソフラボンサプリメントの消費は、乳がんリスクの低下と一致した効果を示しておらず、推奨されていない。 [35] [37]
大豆イソフラボンの摂取に関係する生物学的機序について、より多くの研究が実施されるにつれて、摂取に関して最適な暴露、期間、タイミングが科学者により明らかにされるであろう。乳がん生存者の食事への大豆の追加に対する推奨は、利用可能なすべての(そして最新の)証拠に基づいて行うべきである。 [38]
Bloch A, Cassileth BR, Holmes MD, Thomson CA, eds.:
Eldridge B, Hamilton K:
Ghosh K, Carson L, and Cohen E:
Kogut VJ, Luthringer SL, eds.:
McCallum PD, Polisena CG, eds.:
Weihofen DL, Robbins J, Sullivan PA:
Wilson JR:
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PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。
存命および二次がんの予防のセクションに代わるものとして、栄養と生存栄養と生存に関する新規のセクションを追加。
健康によい食事のための指針健康によい食事のための指針のセクションは広範囲にわたって改訂された。
がん予防のための食事の指針がん予防のための食事の指針のセクションは、がん予防のための指針から改名された。
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