医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、小児軟部肉腫の治療について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。
本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。
小児および青年のがん患者の生存において、劇的な改善が達成されている。1975年から2010年の間に、小児がんの死亡率は50%以上低下した。 [1] 小児および青年のがん生存者では、治療から数ヵ月または数年経過後もがん療法の副作用が持続または発現することがあるため、綿密なモニタリングが必要である。(小児および青年のがん生存者における晩期障害の発生率、種類、およびモニタリングに関する具体的な情報については、小児がん治療の晩期障害に関するPDQ要約を参照のこと。)
横紋筋の腫瘍である横紋筋肉腫は0~14歳の小児に最もよくみられる軟部肉腫であり、この年齢群にみられる腫瘍の50%を占める。 [2] (詳しい情報については、小児横紋筋肉腫の治療に関するPDQ要約を参照のこと。)小児科では、残りの軟部肉腫は一般に非横紋筋肉腫性軟部肉腫と呼ばれ、全小児腫瘍の約3%を占める。 [3] この混成の腫瘍群には以下の新生物が含まれる: [4]
小児軟部肉腫は、原始間葉組織由来の悪性腫瘍から成る混成群であり、全小児腫瘍の7%を占める。 [5]
1975年から2012年のSurveillance Epidemiology and End Results(SEER)の情報を基にした組織型および年齢別の軟部肉腫の分布を表1に記載している。年齢ごとの組織学的亜型の分布は、図2にも示されている。
5歳未満 | 5~9歳 | 10~14歳 | 15~19歳 | 20歳未満のSTSの総症例数に対する割合(%) | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
pPNET = 末梢性原始神経外胚葉性腫瘍;SEER = Surveillance Epidemiology and End Results;STS = 軟部肉腫。 | |||||||
aSEERデータはhttp://seer.cancer.govで閲覧可能である。 | |||||||
b皮膚線維肉腫はこれらの症例の75%を占める。 | |||||||
すべての軟部肉腫およびその他の骨外性肉腫 |
923 |
631 |
946 |
1,267 |
|||
横紋筋肉腫 |
551 |
348 |
312 |
270 |
|||
線維肉腫、末梢神経、およびその他の線維の新生物 |
116 |
50 |
88 |
141 |
|||
線維芽細胞性および筋線維芽細胞性腫瘍 | 97 | 24 | 31 | 62 | 6 | ||
神経鞘腫瘍 | 19 | 26 | 56 | 77 | 5 | ||
その他の線維の新生物 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0.1 | ||
カポジ肉腫 |
2 |
1 |
1 |
9 |
|||
その他の特定の軟部肉腫 |
194 |
190 |
424 |
708 |
|||
軟部組織のユーイング腫瘍およびアスキン腫瘍 | 27 | 30 | 62 | 92 | 6 | ||
軟部組織のpPNET | 21 | 18 | 36 | 46 | 3.2 | ||
腎外性ラブドイド腫瘍 | 61 | 3 | 7 | 3 | 2 | ||
脂肪肉腫 | 3 | 5 | 22 | 57 | 2.3 | ||
線維組織球腫瘍 b | 34 | 54 | 108 | 188 | 10 | ||
平滑筋肉腫 | 9 | 14 | 15 | 36 | 2 | ||
滑膜肉腫 | 10 | 34 | 111 | 175 | 9 | ||
血管腫瘍 | 11 | 7 | 8 | 25 | 1.4 | ||
軟部組織の骨性および軟骨性新生物 | 1 | 6 | 13 | 10 | 0.8 | ||
胞巣状軟部肉腫 | 4 | 3 | 16 | 29 | 1.4 | ||
その他の軟部肉腫 | 13 | 16 | 36 | 47 | 3 | ||
未特定の軟部肉腫 |
60 |
40 |
111 |
139 |
非横紋筋肉腫性軟部肉腫は、青年および成人に多くみられ [4] 、これより若年の患者における疾患の治療および自然経過に関する情報のほとんどは、成人を対象とした研究に基づいている。病期、組織学的亜型、腫瘍の部位に応じた年齢ごとのこれらの腫瘍の分布が、それぞれ図1、2、および 3に示されている。 [6] 図1.病期に応じた年齢ごとの非横紋筋肉腫性軟部肉腫の分布。 図2.組織学的亜型に応じた年齢ごとの非横紋筋肉腫性軟部肉腫の分布。 図3.腫瘍の部位に応じた年齢ごとの非横紋筋肉腫性軟部肉腫の分布。
いくつかの遺伝的および環境的な因子が、非横紋筋肉腫性軟部肉腫の発症に関係していることが指摘されており、その中には以下のものがある:
非横紋筋肉腫性軟部肉腫は身体のあらゆる部位に生じうるが、体幹および四肢に最も好発する。 [18] [19] [20] このような腫瘍は、最初に無症候性の充実性腫瘤として出現することもあれば、隣接する解剖学的組織への局所浸潤のために、症候性であることもある。まれではあるが、これらの腫瘍は脳組織に原発することがあり、組織型に応じて治療される。 [21]
全身症状(例えば、発熱、体重減少、および寝汗)はまれである。血管周皮腫の症例では低血糖と低リン血症性くる病が報告されているのに対して、肺線維肉腫患者では高血糖が報告されている。 [22]
疑わしい病変が特定された場合、完全な検査の後に十分な生検を実施することがきわめて重要である。何らかの介入を開始する前に、以下の検査を用いて病変を画像化することが最も望ましい。
一部の腫瘍の画像所見の特徴からこの診断が強く示唆される場合がある。例えば、小児低悪性度線維粘液性肉腫および胞巣状軟部肉腫の画像所見の特徴が報告されており、これらのまれな新生物の診断に有用となりうる。 [25]
非横紋筋肉腫性軟部腫瘍は、病理学的にかなり容易に横紋筋肉腫またはユーイング肉腫から鑑別されるが、小児の非横紋筋肉腫性軟部肉腫の種類の分類はしばしば困難となる。非横紋筋肉腫性軟部肉腫の診断には、コア針生検、切開生検、または切除生検を用いることができる。可能な場合は、根治的切除を行う予定の外科医が生検の決定に関与する必要がある。切開生検または針生検の位置が不適切だと、初回切除の施行に悪影響が生じる場合がある。
生検方法の選択に関して考慮すべき事項には以下のものがある:
非横紋筋肉腫性軟部肉腫を予定外に切除した小児では、多くの患児で再切除した標本中に腫瘍が認められるため、しばしば一次再切除が推奨される。 [37] [38] 青年および成人を対象にした単一施設の解析で、軟部肉腫の予定外の切除を受けた患者が病期をマッチさせた対照と比較された。このレトロスペクティブ解析では、軟部肉腫の予定外の初回切除により、局所再発、転移、および死亡のリスクが増加したが、この増加は高悪性度の腫瘍で最も大きかった。 [39] [証拠レベル:3iiA]
多くの非横紋筋肉腫性軟部肉腫は染色体異常により特徴付けられる。そうした染色体転座の中には、2つの離れた遺伝子の融合を引き起こすものがある。この結果生じた融合転写産物は、ポリメラーゼ連鎖反応を基にした方法を用いることによって容易に検出できるため、転座を有する腫瘍の診断が容易となる。
非横紋筋肉腫性軟部肉腫で最も頻繁にみられる染色体異常の一部を表2に示す。
組織型 | 染色体異常 | 関係する遺伝子 |
---|---|---|
a出典:Sandberg [40] 、Slater et al. [41] 、Mertens et al. [42] 、およびRomeo [43] 。 | ||
胞巣状軟部肉腫 | t(x;17)(p11.2;q25) | ASPL/TFE3 [44] [45] [46] |
血管腫様線維性組織球腫 | t(12;16)(q13;p11)、t(2;22)(q33;q12)、t(12;22)(q13;q12) | FUS/ATF1、EWSR1/CREB1 [47] 、EWS/ATF1 |
明細胞肉腫 | t(12;22)(q13;q12)、t(2;22)(q33;q12) | ATF1/EWS、EWSR1/CREB1 |
先天性(乳児性)線維肉腫/中胚葉性腎腫 | t(12;15)(p13;q25) | ETV-NTRK3 |
隆起性皮膚線維肉腫 | t(17;22)(q22;q13) | COL1A1/PDGFB |
デスモイド線維腫症 | 8または20トリソミー、5q21欠失 | CTNNB1またはAPCの突然変異 |
線維形成性小円形細胞腫瘍 | t(11;22)(p13;q12) | EWS/WT1 [48] [49] |
類上皮血管内皮腫 | t(1;3)(p36;q25) [50] | WWTR1/CAMTA1 |
類上皮肉腫 | SMARCB1不活性化 | SMARCB1 |
骨外性粘液型軟骨肉腫 | t(9;22)(q22;q12)、t(9;17)(q22;q11)、t(9;15)(q22;q21)、t(3;9)(q11;q22) | EWSR1/NR4A3、TAF2N/NR4A3、TCF12/NR4A3、TGF/NR4A3 |
血管周皮腫 | t(12;19)(q13;q13.3)およびt(13;22)(q22;q13.3) | |
乳児型線維肉腫 | t(12;15)(p13;q25) | ETV6/NTRK3 |
炎症性筋線維芽細胞性腫瘍 | t(1;2)(q23;q23)、t(2;19)(q23;q13)、t(2;17)(q23;q23)、t(2;2)(p23;q13)、t(2;11)(p23;p15) [51] | TPM3/ALK、TPM4/ALK、CLTC/ALK、RANBP2/ALK、CARS/ALK、RAS |
低悪性度線維粘液性肉腫 | t(7;16)(q33;p11)、t(11;16)(p11;p11) | FUS/CREB3L2、FUS/CREB3L1 |
悪性末梢神経鞘腫瘍 | 17q11.2、10p、11q、17q、22qの欠失または再構成 | NF1 |
間葉性軟骨肉腫 | Del(8)(q13.3q21.1) | HEY1/NCOA2 |
筋上皮腫 | t(19;22)(q13;q12)、t(1;22)(q23;q12)、t(6;22)(p21;q12) | EWSR/ZNF44、EWSR/PBX1、EWSR/POU5F1 |
粘液型脂肪肉腫/円形細胞脂肪肉腫 | t(12;16)(q13;p11)、t(12;22)(q13;q12) | FUS/DD1T3、EWSR/DD1T3 |
ラブドイド腫瘍 | SMARCB1不活性化 | SMARCB1 |
孤在性線維性腫瘍 | Inv(12)(q13q13) | NAB2/STAT6 |
滑膜肉腫 | t(x;18)(p11.2;q11.2) | SYT/SSX |
腱鞘巨細胞腫 | t(1;2)(p13;q35) | COL6A3/CSF1 |
非横紋筋肉腫性軟部肉腫の予後は以下の因子に応じて大きく異なる: [52] [53] [54]
成人および小児のいくつかのシリーズは、大きな腫瘍または浸潤性腫瘍の患者は、小さな非浸潤性腫瘍の患者より、明らかに予後不良であることを示している。小児および青年の軟部肉腫に関するレトロスペクティブ研究の結果は、軟部肉腫の成人患者に適用している5cmというカットオフ値が小児、特に乳幼児には適さないことを示唆している。この研究では、腫瘍直径と体表面積の間に相関関係があることが確認された。 [55] このような関連性については、その観察所見の治療上の意義を判断するために今後も研究を重ねる必要がある。
成人非横紋筋肉腫性軟部肉腫の多数例のシリーズのレビューでは、四肢の表在性肉腫は深在性腫瘍より良好な予後を示した。このため、悪性度および大きさのほかに、腫瘍の浸潤深度を考慮すべきである。 [56]
一部の小児非横紋筋肉腫性軟部肉腫は比較的良好な転帰と関連している。例えば、乳児および5歳未満の小児にみられる乳児型線維肉腫は、患児のかなりの数が手術のみで治癒が得られ、また化学療法に対する腫瘍の感受性が高いことから、予後が優れている。 [3]
年長の小児および青年の軟部肉腫は、成人の軟部肉腫とほぼ同じ挙動を示すことが多い。 [3] [26] 小児腫瘍学グループの大規模プロスペクティブ多国籍研究(ARST0332[NCT00346164])では新たに診断された30歳未満の患者が登録された。患者はリスクグループに基づく治療に割り付けられた(図4を参照のこと)。 [57] [証拠レベル:2A]
図4.小児腫瘍学グループのARST0332試験でのリスク層別化および治療割り付け。Credit: Sheri L. Spunt, M.D., M.B.A.
登録された551人の患者について追跡期間中央値で2.6年時に、予備解析でその後の3年生存率が以下のように推定された: [57]
切除不能な限局性非横紋筋肉腫性軟部肉腫の小児患者は転帰不良である。集学的治療を受けた患者で、無病生存を維持するのは約3分の1のみである。 [52] [58] ; [59] [60] [証拠レベル:3iiiA]内臓の非横紋筋肉腫性軟部肉腫のイタリア人患者30人を対象にした1件のレビューでは、5年経過時に生存していた患者は10人のみであった。予後不良因子は、完全切除を達成できないこと、比較的大きな腫瘍サイズ、腫瘍浸潤、組織学的サブタイプ、および肺-胸膜部位であった。 [61] [証拠レベル:3iiB]
米国および欧州の小児センターからのプール解析では、腫瘍摘除術が完全であったと考えられる患者の方が、不完全であった患者より転帰が優れていた。放射線療法を受けた患者の方が受けなかった患者より転帰が優れていた。 [59] [証拠レベル:3iiiA]
無病生存を最大化する一方で長期的な関連合併症を最小化する必要があるため、治療を開始する前に、このような予後因子を利用してそれぞれの患者に対する理想的な治療を綿密かつ個別に決定する必要がある。 [19] [62] [63] [64] [65] [66]
他の種類の肉腫に関する情報については、以下のPDQ要約を参照のこと。
WHOでは、軟部肉腫分類として以下の細胞型を記載している: [1] [2]
臨床的病期診断は、臨床転帰を予測し、小児軟部肉腫にとって最も効果的な治療法を決定するのに重要な役割を果たしている。現時点では、広く普及している病期分類システムで、あらゆる小児肉腫に適用できるものは存在しない。成人に用いられる米国がん合同委員会(AJCC)の病期分類システムは、小児を対象とした研究では検証されていない。小児非横紋筋肉腫性軟部肉腫について標準化された病期分類システムは存在しないが、その病期分類には現在2つのシステムが用いられている。 [1]
AJCCがん病期分類マニュアル第8版は、腫瘍の大きさ、リンパ節の状態、組織学的悪性度、および転移の4つの基準および解剖学的原発腫瘍部位(頭頸部;体幹および四肢;腹部および胸部の内臓;後腹膜;およびまれな組織型と部位)による病期判定を指定している(表3、4、5、および 6を参照のこと)。 [3] [4] [5] [6] [7] まれな組織型と部位に関する情報については、AJCCがん病期分類マニュアルを参照のこと。 [7]
T分類 | 体幹、四肢、および後腹膜の軟部肉腫 | 頭頸部の軟部肉腫 | 腹部および胸部の内臓の軟部肉腫 |
---|---|---|---|
a出典:O'Sullivan et al., [3] Yoon et al., [4] Raut et al., [5] and Pollock et al. [6] | |||
TX | 原発腫瘍の評価が不可能。 | 原発腫瘍の評価が不可能。 | 原発腫瘍の評価が不可能。 |
T0 | 原発腫瘍を認めない。 | ||
T1 | 腫瘍の最大径が5cm以下。 | 腫瘍が2cm以下。 | 臓器に限局する。 |
T2 | 腫瘍の最大径が5cmを超えるが、10cm以下。 | 腫瘍が2cm超~4cm以下。 | 臓器を越えて組織への腫瘍進展。 |
T2a | 漿膜または臓側腹膜に浸潤している。 | ||
T2b | 漿膜(腸間膜)を越えた進展。 | ||
T3 | 腫瘍の最大径が10cmを超えるが、15cm以下。 | 腫瘍が4cmを超える。 | 別の臓器に浸潤している。 |
T4 | 腫瘍の最大径が15cmを超える。 | 隣接する構造への浸潤を伴う腫瘍。 | 多病巣性病変。 |
T4a | 眼窩浸潤、頭蓋底/硬膜浸潤、中央区画の内臓への浸潤、顔面頭蓋への転移、または翼突筋浸潤を伴う腫瘍。 | 多病巣性(2部位)。 | |
T4b | 脳実質浸潤、頸動脈を狭窄させる浸潤、椎前筋浸潤、または神経周囲への浸潤を介した中枢神経系への転移を伴う腫瘍。 | 多病巣性(3~5部位)。 | |
T4c | 多病巣性(5部位を超える)。 |
a出典:O'Sullivan et al., [3] Yoon et al., [4] Raut et al., [5] and Pollock et al. [6] | |
b腹部および胸部の内臓の軟部肉腫について、N0 = リンパ節転移を認めないまたはリンパ節の状態が不明、N1 = リンパ節転移を認める。 | |
N0 | 所属リンパ節に転移を認めないまたはリンパ節の状態が不明。b |
N1 | 所属リンパ節に転移を認める。b |
a出典:O'Sullivan et al., [3] Yoon et al., [4] Raut et al., [5] and Pollock et al. [6] | |
b腹部および胸部の内臓の軟部肉腫について、M0 = 遠隔転移を認めないおよびM1 = 遠隔転移を認める。 | |
M0 | 遠隔転移を認めない。b |
M1 | 遠隔転移を認める。b |
病期 | T | N | M | 悪性度 |
---|---|---|---|---|
a出典:Sandberg [4] and Slater et al. [6] | ||||
b後腹膜の軟部肉腫についてはIIIB期;体幹および四肢の軟部肉腫についてはIV期。 | ||||
IA | T1 | N0 | M0 | G1、GX |
IB | T2、T3、T4 | N0 | M0 | G1、GX |
II | T1 | N0 | M0 | G2、G3 |
IIIA | T2 | N0 | M0 | G2、G3 |
IIIB | T3、T4 | N0 | M0 | G2、G3 |
IIIB/IVb | すべてのT | N1 | M0 | すべてのG |
IV | すべてのT | すべてのN | M1 | すべてのG |
ほとんどの症例では、軟部肉腫の正確な病理組織学的分類だけでは、臨床的挙動に関する最適な情報を得ることはできない。このため、悪性度判定過程では、以下のものを含め、いくつかの組織学的パラメータの評価が行われる:
この過程は、組織学的所見と臨床転帰との間の相関性を改善するために行うものである。 [9] 小児における軟部肉腫の悪性度判定は、4歳未満の小児において予後が良好な乳児型線維肉腫および血管周皮腫、また切除が不完全であれば局所再発の可能性があるが、通常は転移しない血管腫様線維性組織球腫および隆起性皮膚線維肉腫など、良好な予後を示す特定の腫瘍があるため誤りやすい。
このような腫瘍はまれであることから、小児集団で悪性度判定システムの妥当性を検証することは困難である。1986年3月に、Pediatric Oncology Group(POG)が横紋筋肉腫以外の小児軟部肉腫を対象としたプロスペクティブ研究を実施し、POG悪性度判定システムを考案した。横紋筋肉腫以外の限局性軟部肉腫患者を対象とした転帰解析から、腫瘍が悪性度3の患者は、悪性度1または悪性度2の患者より有意に不良な経過をたどることが明らかになった。この知見は、このシステムにより非横紋筋肉腫性軟部肉腫の臨床的挙動を正確に予測しうることを示唆している。 [9] [10] [11]
POGおよびFrench Federation of Comprehensive Cancer Centers(Fédéation Nationale des Centres de Lutte Contre Le Cancer [FNCLCC])のSarcoma Groupによって策定された悪性度判定システムを以下に示している。これらの悪性度判定システムは、COG-ARST0332研究で中央病理検査担当者によって比較されている。この研究は中止され、結果は未発表である。
POG悪性度判定システムを以下に示す。 [9] これは歴史的価値をもつ旧世代の悪性度判定システムであり、現在では治療には使われていない。
悪性度Iの病変は、組織型、細胞組織学的特徴が高分化型、および/または患者の年齢を基にしている。
悪性度IIの病変は、組織学的診断により悪性度IまたはIIIに含まれない軟部肉腫である(有糸分裂像が10高倍率視野当たり5未満、または壊死が15%未満):
悪性度IIIの病変は、悪性度IIの病変に類似しており、組織学的診断(有糸分裂像が10高倍率視野当たり4を超える、または壊死が15%を超える)および悪性度I以外の腫瘍であるという理由で臨床的に侵攻性であることが知られている以下の特定腫瘍を含む:
FNCLCC組織学的悪性度判定システムは、軟部肉腫の成人用に開発された。この悪性度判定システムの目的は、どの患者が転移を来し、その後の術後化学療法が有益となるかを予測することである。 [12] [13] この悪性度判定システムを表7および表8に示す。
FNCLCC = Fédération Nationale des Centres de Lutte Contre Le Cancer;HPF = 高倍率視野。 | |
腫瘍分化度 | |
スコア1 | 正常な成人の間葉組織に酷似している肉腫(例えば、高分化型脂肪肉腫) |
スコア2 | 組織型が確定している腫瘍(例えば、粘液型脂肪肉腫) |
スコア3 | 胎児型および未分化型肉腫、組織型が疑わしい肉腫、滑膜肉腫 |
有糸分裂像の数 | |
スコア1 | 有糸分裂像が10HPF当たり0~9 |
スコア2 | 有糸分裂像が10HPF当たり10~19 |
スコア3 | 有糸分裂像が10HPF当たり20以上 |
腫瘍壊死 | |
スコア0 | 壊死なし |
スコア1 | 腫瘍壊死が50%未満 |
スコア2 | 腫瘍壊死が50%以上 |
総スコア | 組織学的悪性度 |
---|---|
2–3 | 悪性度I |
4–5 | 悪性度II |
6–8 | 悪性度III |
POGおよびFNCLCCの悪性度判定システムは、小児および成人の非横紋筋肉腫性軟部肉腫において予後的価値があることが証明されている。 [14] [15] [16] [17] [18] 3件のプロスペクティブ臨床試験に登録された非横紋筋肉腫性軟部肉腫の小児および青年から採取した130の腫瘍を調べた研究では、POG指定の悪性度とFNCLCC指定の悪性度との間に相関性が認められた。しかしながら、すべての症例で悪性度指定が相関していたわけではなかった;腫瘍の悪性度指定が一致しなかった患者44人(POGで悪性度3、FNCLCCで悪性度1または2)は、一致した悪性度3、および悪性度1および2の間の転帰を示した。有糸分裂指数が10以上という指標が、重要な予後因子として浮上した。 [19] 最近完了したCOG-ARST0332試験では、データを解析し、POGとFNCLCCの病理学的悪性度判定システムを比較することで、いずれのシステムが臨床転帰とより良好な相関性を示すかを判定した。現在患者登録を受け付けている試験(ARST1321[NCT02180867])では、組織学的悪性度の割り付けにFNCLCCシステムが用いられている。
小児非横紋筋肉腫性軟部肉腫はまれなことから、この種の腫瘍を来したすべての小児、青年、および若年成人については、腫瘍専門医(小児または内科)、病理医、外科医、および放射線腫瘍医から成る集学的チームによる治療の連係を考慮すべきである。さらに、この種の腫瘍の自然経過および治療に対する反応をさらに明らかにするために、まれな腫瘍に罹患している小児については、国または施設の治療プロトコルへの登録を考慮すべきである。現在実施中の臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトから入手することができる。
適切な生検および病理学的診断の後、原発腫瘍を可能な限り断端陰性で局所切除することを目指し、その施行前または施行後に化学療法および/または放射線療法を行う。この決定には、軟部肉腫の切除に関し専門の技術・経験を有する外科医が加わることが強く望まれる。
手術実施時期の決定に際しては、手術の実施可能性と合併症の査定が必要となる。初回手術で切除組織の病理学的な断端陰性が得られなかった場合、またはがんの存在を知らずに初回手術が行われた場合は、断端陰性が得られるように、だが不必要に広範囲とすることなく、病変領域の再切除を施行する。 [1] [2] [3] [4] この手術方針は、たとえ初回手術後の磁気共鳴画像法(MRI)で腫瘤が検出されない場合であっても変わらない。 [5] ; [6] [証拠レベル:3iiA]
診断時の所属リンパ節転移はまれであり、類上皮肉腫および明細胞肉腫の患者に最も多くみられる。 [7] [8] さまざまな施設のシリーズで、軟部肉腫の患児における病期分類検査としてのセンチネルリンパ節生検の実施可能性および有効性が実証されている。 [9] [10] [11] [12] [13] [14]
放射線療法の検討は、手術単独または手術と化学療法の併用により、重要臓器を喪失したり、重大な機能的、審美的、または心理的な障害を生じたりすることなく局所制御を得られる可能性に基づいて行う。これは、以下により異なる:
放射線療法を術前に施行することもできる。照射野の大きさや線量は、患者因子と腫瘍因子および腫瘍の手術可能性を基にして決定する。術前放射線療法に伴って、優れた局所制御率が得られている。 [15] [16] このアプローチは、術後に腫瘍床を治療する必要がないため、より少ない腫瘍量を治療するという利点がある;また、手術による脈管系の破壊および瘢痕化からもたらされる相対的な低酸素症がみられないため、照射線量がいくぶん少ないという利点もある。成人では、術前放射線療法に伴って、主に下肢腫瘍における創傷合併症の発生率が高くなっているが、この発生率は疑わしい。 [17] 逆に、術前放射線療法では、術後アプローチよりもおそらく治療腫瘍量が少なく線量が低いため、線維症が少なくなる可能性がある。 [18]
後腹膜肉腫は、腸が放射線感受性により損傷しやすいことから、術後放射線療法があまり望ましくないという点で独特である。 [19] [20] 放射線の照射線量にかかわらず、術後癒着および腸の不動により損傷リスクが高まることがある。これは、腫瘍により腸がしばしば照射野外に移動し、曝露される腸があっても可動性が高いため、特定の腸区画に対する曝露量が低減される術前アプローチとは対照的である。
放射線療法を術後に施行することもできる。一般的に、外科的切除断端が不十分な患者および腫瘍が大きく悪性度も高い患者には、放射線療法が適応となる。 [21] [22] 腫瘍切除断端が1cm未満の高悪性度腫瘍では、これが特に重要となる。 [23] [24] ; [25] [証拠レベル:3iiDiv]手術と放射線療法を併用した場合、原発腫瘍の局所制御の達成が可能な患者は80%を超える。 [26] [27]
特定の状況下においては、密封小線源治療や術中照射を適用できる場合もある。 [27] [28] [29] ; [30] [証拠レベル:3iiiDii]
放射線の照射容積および線量は、前述の患者因子、腫瘍因子、および外科的因子とともに、以下の事項によって変化させる:
放射線の線量は、一般に術前で45~50Gyであり、切除断端が顕微鏡的または肉眼的に陽性の場合は10~20Gyの術後追加照射、または切除が完全ではないと予想される場合に計画される密封小線源治療の検討も含める。しかしながら、術後追加照射の効力を証明するデータは不足している。 [31] 術後照射の線量は55~60Gyで、まれに、切除不能な肉眼的残存病変が存在する状況ではこれより高い線量が照射される。
放射線の照射マージンは、一般に縦方向で2~4cmで、軸方向で筋膜面を包含する。 [32] [33]
術後化学療法の役割については、以下の研究に明らかなように、依然として不明のままである: [34]
血管新生抑制薬および哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)阻害薬の使用が成人軟部肉腫の治療において研究されているが、小児科では研究されていない。
小児および青年におけるがんはまれであるが、小児がんの全発生率は、1975年以降徐々に増加している。 [41] 小児および青年のがん患者は、小児期および青年期に発生するがんの治療経験を有する専門家から構成される集学的チームのある医療機関に紹介されるべきである。この集学的チームのアプローチとは、至適な生存期間および生活の質を得られるような治療、支持療法およびリハビリテーションを小児が確実に受けられるようにするため、以下の医療専門家らの技能を集結させたものである。
(小児および青年のがんの支持療法に関する具体的な情報については、PDQの支持療法と緩和ケアの要約を参照のこと。)
米国小児科学会は、小児がん施設とそれらが小児がん患者の治療において担う役割に関するガイドラインを概説している。 [42] このような小児がん施設では、小児および青年に発症するほとんどの種類のがんに関する臨床試験が行われており、大半の患者/家族に参加する機会が与えられている。これらの患児が最適な臨床転帰を確実に得られるようにするため、外科的専門知識および放射線療法の専門技能を有する小児がん施設で集学的に評価することがきわめて重要である。かなりの割合の患者で放射線療法を併用するまたは併用しない手術で治癒が得られるが、化学療法を追加することで一部のがん患者に利益がもたらされる可能性がある;したがって、臨床試験への登録が勧められる。小児および青年のがんに関する臨床試験は一般に、現在標準とされている治療法と、それより効果的であると思われる治療法とを比較するようデザインされている。小児がんの治癒を目指した治療法の進歩の大部分は、このような臨床試験によって達成されたものである。現在実施中の臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトから入手することができる。
軟部腫瘍を有する小児および青年に対する治療戦略の多くは、成人患者に対するものと同様であるが、重要な差がある。例えば、小児患者におけるこの種の腫瘍の生物学的特徴は、成人におけるそれとは劇的に異なる場合がある。さらに小児患者では、患肢温存療法の試行がより困難となる。また放射線療法による罹病率が、成人で観察されるよりもはるかに高い場合があり、特に乳児と幼児で顕著である。 [43]
集学的治療により軟部肉腫の成人および小児患者の治療成績は過去20年間で劇的に改善されたが、小児例については(特に小児の余命が成人のそれより長いことを考慮した場合)この治療法による長期的副作用に対する懸念が高まってきている。このことから、腫瘍を最大限に制御し、長期的な合併症を最小限にするために、非横紋筋肉腫性軟部肉腫に罹患している小児および青年の治療は個別化する必要がある。このような患者は、起こりうる合併症を正確に評価するためのプロスペクティブ研究に登録すべきである。 [44]
脂肪肉腫は20歳未満の患者における軟部肉腫の3%を占める(表1を参照のこと)。
脂肪肉腫は、小児集団ではまれである。成人型肉腫の患児182人を対象としたレビューでは、脂肪肉腫と診断されたのはわずか14人であった。 [1] あるレトロスペクティブ研究で、1960年から2011年に22歳未満の患者34人が特定された。 [2] 男性と女性の患者数はほぼ等しく、年齢中央値は18歳であった。国際的な臨床病理学的レビューで、小児脂肪肉腫82症例の特徴が報告された。年齢中央値は15.5歳で、女性の罹患数が多かった。 [3] 両報告で大多数の患者が粘液型脂肪肉腫であった。
脂肪肉腫の世界保健機関(WHO)分類は以下の通りである:
小児および青年の年齢層における脂肪肉腫の大多数が低悪性度であり、皮下に位置している。リンパ節への転移はまれで、大多数の転移部位は肺である。末梢に発生した腫瘍は、低悪性度で粘液型となる傾向が高い。中枢に発生した腫瘍は、高悪性度で多形型、さらに転移がみられるか、転移を伴って再発する傾向が高い。
高悪性度または中枢の腫瘍は、有意に高い死亡リスクと関連している。レトロスペクティブ・レビューで、中枢腫瘍の5年生存率は42%であった。国際的レビューによると、多形性粘液性脂肪肉腫の患者10人中7人がこの疾患で死亡した。 [3] 14人の患者を対象としたレトロスペクティブ研究では、5年生存率は78%であり、腫瘍の悪性度、組織学的サブタイプ、および原発部位が生存率と相関していた。 [2]
脂肪肉腫に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
脂肪肉腫に対して最も重要な治療法は手術である。粘液性脂肪肉腫の外科的切除後におけるイベントフリー生存(EFS)率および全生存(OS)率は、約90%である。初回手術が不完全な場合は、再切除を実施して、広い切除断端を得るべきである。局所再発が確認されているが、腫瘍の二次切除により制御されている。
特に中枢の腫瘍で完全切除を容易にするために、手術の前に化学療法を用いて脂肪肉腫のサイズを小さくした報告がある。 [10] [11] 脂肪肉腫に対する術後化学療法の役割は明確に定義されていない。完全切除された粘液型脂肪肉腫に対しては、いかなる術後療法の必要性もないと考えられている。術後化学療法を使用しても、多形型脂肪肉腫の場合の生存率は依然として不良である。 [12]
進行粘液型脂肪肉腫の成人患者において、トラベクテジンが有望な反応をもたらしている。 [13] ある研究において、再発脂肪肉腫および平滑筋肉腫の成人患者がトラベクテジンまたはダカルバジンによる治療にランダムに割り付けられた。トラベクテジンによる治療を受けた患者では疾患増悪の45%の低減が得られた。 [14] [証拠レベル:1iiDiii]小児患者においてトラベクテジンの使用を支持するデータは非常に少ない。 [15]
米国国立がん研究所(NCI)が支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
骨・軟骨部腫瘍として、以下の腫瘍サブタイプがある:
骨性および軟骨性新生物は20歳未満の軟部肉腫患者の0.8%を占める(表1を参照のこと)。
間葉性軟骨肉腫は小円形細胞および硝子軟骨を特徴とするまれな腫瘍であり、若年成人に生じることが多く、頭頸部領域に好発する。
間葉性軟骨肉腫は一貫性のある染色体再構成と関連付けられている。間葉性軟骨肉腫症例についてのレトロスペクティブ解析で、検査された15件の標本中10件にHEY1-NCOA2融合が確認された。 [16] この遺伝子融合は核型分析により発見可能な染色体変化と関連していなかった。一例として、ある症例の間葉性軟骨肉腫で転座t(1;5)(q42;q32)が同定され、新たなIRF2BP-CDX1融合遺伝子と関連していることが示されている。 [17]
欧州の施設のレトロスペクティブな調査により、間葉性軟骨肉腫の小児および成人患者113人が同定された。良好な転帰と関連する因子には以下のものがあった: [18] [証拠レベル:3iiiA]
骨外性間葉性軟骨肉腫に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
German Cooperative Soft Tissue Sarcoma Study Group(軟部組織病変を有する11人)およびGerman-Austrian-Swiss Cooperative Osteosarcoma Study Group(原発骨病変を有する4人)によるプロトコルから、26歳未満の患者15人を対象としたレビューによると、局所制御のためには、完全な外科的切除、または不完全切除後の放射線療法が必要であることが示唆される。 [19] [証拠レベル:3iiA]
単一施設での1件のレトロスペクティブ・レビューで間葉性軟骨肉腫の小児患者12人が同定された。 [20] これらの患児において、腫瘍内のNCOA2再構成の存在が報告されている。治癒を得るためには外科的切除が必要であることも確認された。11人の患児が限局性病変を、1人が肺結節を呈した。全患児が化学療法を受けた - 6人は外科的切除の前後に、6人は切除後にのみ受けた。全患児が放射線療法(線量中央値、59.4Gy)を併用したまたは併用しない術後化学療法(イホスファミド/ドキソルビシンが最も多かった)を受けた。追跡期間中央値4.8年で、5年無病生存率(DFS)は68.2%(95%CI、39.8%-96.6%)およびOSは88.9%(95%CI、66.9%-100%)であった。
骨性および軟骨性新生物は20歳未満の患者における軟部肉腫の0.8%を占める(表1を参照のこと)。
小児および青年の年齢層における骨外性骨肉腫はきわめてまれである。2003年のレビューで医学文献から特定された報告は10例のみであった。 [21]
骨外性骨肉腫は、局所再発および肺転移のリスクの高さと関連している。 [22]
骨外性骨肉腫に対す治療法の選択肢には以下のものがある:
(詳しい情報については、骨肉腫および骨悪性線維性組織球腫の治療に関するPDQ要約を参照のこと。)
米国国立がん研究所(NCI)が支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
線維芽細胞性/筋線維芽細胞性腫瘍として、以下の腫瘍サブタイプがある:
デスモイド型線維腫症は以前はデスモイド腫瘍または侵襲性線維腫症と呼ばれていた。
少数のデスモイド型線維腫症が、(腸管ポリープおよび結腸がんの高い発生率を伴う)大腸腺腫性ポリポーシス(APC)遺伝子における突然変異に関連して発生することがある。デスモイド型線維腫症と診断された10歳以上の患者519人を対象にした研究では、39人(7.5%、過小評価の可能性がある)が家族性大腸腺腫症(FAP)を有することが判明した。 [23] FAPおよびデスモイド型線維腫症を有する患者は、FAPを伴わないデスモイド型線維腫症の患者と比べて若年で、男性の頻度が高く、腹壁腫瘍または腸間膜腫瘍が多くみられた。
結腸がんの家族歴、網膜色素上皮の先天性過形成が認められる [24] [25] 、またはデスモイド型線維腫症が腹部または腹壁に位置している場合 [23] は遺伝カウンセラーに紹介すべきである。現在のところ、デスモイド型線維腫症の小児における遺伝子検査について一般的な推奨事項はない。腫瘍の病理学および分子的特徴はスクリーニングの指針を提供するに過ぎない。もし腫瘍にCTNNB1体細胞突然変異がみられる場合、この状況でのAPC遺伝子の突然変異は記載されていないため、スクリーニングは必要ない。もしCTNNB1変異が同定されないなら、APC突然変異を調べるスクリーニングが必要となりうる。 [26] [27] (詳しい情報については、大腸がんの遺伝学に関するPDQ要約の家族性大腸腺腫症(FAP)のセクションを参照のこと。)
デスモイド型線維腫症は転移の可能性がきわめて低い。この腫瘍は局所的に浸潤するため、正常構造の温存の必要性から外科的制御が困難となることがある。
この腫瘍は局所再発する可能性が高い。デスモイド型線維腫症は自然経過が非常に多様であり、詳細に記録された自然退縮の症例もみられる。 [28] デスモイド型線維腫症の80%超にβ-カテニン遺伝子のエクソン3における突然変異がみられ、45Fの突然変異では再発リスクが高いという関連性が指摘されている。 [29] 再度の外科的切除により、ときに再発病変を制御下に置くことが可能となる場合もある。 [30]
デスモイド型線維腫症の自然経過は非常に多様であるため、その治療のための介入の有益性評価はきわめて困難となっている。現在では、大規模な複数の成人患者シリーズと比較的小規模な複数の小児患者シリーズから、腫瘍の長期の安定、さらには全身療法なしでの腫瘍退縮すらも報告されている。 [30] [31] ; [32] [証拠レベル:3iiiDi]
デスモイド型線維腫症に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
第一選択の治療は切除断端陰性を目標とする外科的切除である。しかしながら、St. Jude Children's Research Hospital(SJCRH)でデスモイド型線維腫症の手術を受けた小児を対象としたレトロスペクティブ・レビューでは、外科的切除断端と再発リスク間には相関性がないことが報告されている。 [39]
診断が明らかになっており、外科的な完全切除が不可能で、死亡または合併症の可能性が有意に高い腫瘍の場合、以下の術前戦略が考えられる: [40] [41]
デスモイド型線維腫症の挙動はしばしば非侵襲的である。主に腹腔外の原発線維腫症の成人患者を対象としたある研究では、非外科的アプローチ(内科的および経過観察)の3年EFSは手術と比較して同程度であった。 [34] 腹壁の侵襲性線維腫症の青年および成人患者を対象としたその後の研究で、102人が観察と待機アプローチによる治療を受け、うち65人は3年後にさらなる治療を必要としなかった。患者の約3分の1では腫瘍が退縮していた。 [33]
化学療法レジメンには以下のものがある:
他の薬物療法には以下のものがある:
疾患進行に対して機能的または審美的障害を引き起こしうる追加手術が必要と考えられる場合、および合併症の面で放射線が認容可能とみなされる場合に術後放射線療法が検討される。
切除不能なデスモイド型線維腫症に対して、または切除不完全な腫瘍に対する術後療法として放射線療法が用いられている。放射線療法による長期的合併症として、特に後発性新生物が考えられるため、この治療法の使用は若年集団において魅力が乏しくなっている。 [56]
皮膚線維肉腫はすべての年齢層で発生しうるまれな腫瘍であるが、報告された症例の多くは小児で発生したものである。 [57] [58] [59] SEERデータベースにおける20歳未満の小児の症例451例のレビューにより、発生率は100万人当たり1例で、15~19歳の黒人患者で最も高かった。最も一般的な部位は体幹および四肢であったが、これは成人にみられるものと類似している。95%の患者が手術を受けた。OS率は5年で100%、15年で98%、30年で97%であった。男性の生存率は女性よりも低かった(P < 0.05)。 [60] [証拠レベル:3iA]
この腫瘍では、COL1A1遺伝子とPDGF-beta遺伝子の融合を引き起こす染色体転座t(17;22)(q22;q13)が一貫して認められる。
隆起性皮膚線維肉腫の治療法には以下のものがある:
皮膚線維肉腫のほとんどの腫瘍は、外科的な完全切除により治癒が可能である。切除断端陰性の広範囲切除またはモース手術あるいは修正モース手術により、ほとんどの腫瘍で再発を回避できる。 [61] 腫瘍のふるまいが局所侵攻性であるにもかかわらず、リンパ節または内臓への転移はまれである。
複数のレトロスペクティブ・レビューでは、不完全切除後の術後放射線療法により再発可能性が低下した可能性がある。 [62] [63]
外科的切除を遂行できない場合や腫瘍が再発した場合でも、イマチニブによる治療が有効とされている。 [64] [65] [66] 複数回の再発後は転移性疾患の可能性が高いため、外科的に管理できない再発患者では放射線や他の補助療法を検討すべきである。 [58] [60]
隆起性皮膚線維肉腫に対する精密検査および管理のためのガイドラインが発表されている。 [67]
小児および青年における線維肉腫には、明らかに異なる種類として次の2つがある:乳児型線維肉腫(先天性線維肉腫とも呼ばれる)、および成人にみられる線維肉腫と区別できない線維肉腫。両者は病理学的診断が明らかに異なり、別の治療法が必要である。成人型線維肉腫について以下で取り扱う。
乳児型線維肉腫は通常、1歳未満の乳児に発生する。ときには4歳までの小児に発生することもある。
乳児型線維肉腫は、通常は急速に増殖する腫瘤を示し、しばしば出生時に認められ、出生前の超音波検査で確認されることもある。発症時に腫瘍がきわめて大きくなっていることが多い。 [68]
通常、腫瘍には細胞遺伝学的に特徴的なt(12;15)(ETV-NTRK3)の転座が認められる。乳児型線維肉腫にもこの転座が認められ、組織学的所見が間葉芽腎腫と実質的に一致している。
このような腫瘍では、診断時に転移が認められる可能性は低い。
乳児型線維肉腫に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
乳児型線維肉腫患者の大多数が完全切除により治癒可能である。しかしながら、病変のサイズが大きいと、重大な機能的後遺症をもたらすことなしに切除することが不可能になる頻度が高い(例えば、四肢の腫瘍では完全切除に切断術がしばしば必要になる)。欧州の小児科グループは、手術後の第II群病変の患者では経過観察も選択肢となりうることを報告している。 [69] 第II群病変の患者12人は追加治療を受けず、2人が再燃した。1人は化学療法後に完全寛解を得た。より悪性度の高い病変群の患者および増悪を来した患者に対し術後化学療法が施行された。その後の研究では、第II群病変の患者7人のうち、経過観察中に増悪を来した患者は1人のみであった;その患者は化学療法により完全寛解を達成した。 [70] [証拠レベル:3iiA]
術前化学療法により、さらに保存的な外科アプローチが可能となる;この設定で活性のある薬剤には、ビンクリスチン、ダクチノマイシン、シクロホスファミド、およびイホスファミドがある。 [71] [72] ; [70] [73] [証拠レベル:3iiA]; [74] [証拠レベル:3iiB]
乳児型線維肉腫の患者を対象とした3件の研究から、アルキル化剤を含まないレジメンが有効であり、肉眼的病変を有する患児において第一選択治療法として使用すべきであることが示唆されている。 [69] [70] [75] LMNA/NTRK1融合の変異型を示す2例がクリゾチニブに反応した。 [76] [77]
ETS多様体遺伝子6-ニューロトロフィン3受容体遺伝子融合(ETV6-NTRK3)によりトロポミオシン関連キナーゼシグナル伝達経路の構成的活性化を伴う難治性乳児型線維肉腫の1人の小児患者(生後16ヵ月)がLOXO-101に反応し、治療の2ヵ月後に腫瘍サイズが90%低下した。 [78]
乳児型線維肉腫を有する生後2ヵ月の患者は、最初に化学療法で治療された。疾患進行時には、パゾパニブで奏効が示された。 [79]
治療なしに自然退縮を生じたまれな症例が1例報告されている。 [80] [証拠レベル:3iiiDiv]
NCIが支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
炎症性筋線維芽細胞性腫瘍はまれな間葉系腫瘍であり、小児および青年に好発する。 [81] [82] [83]
炎症性筋線維芽細胞性腫瘍はまれな腫瘍であり、小児および若年成人の軟部組織および内臓に生じる。 [84] 転移はまれだが、局所浸潤性となることが多い。病変が生じる一般的な解剖学的部位には軟部組織、肺、脾臓、結腸、および乳房がある。 [81] 小児における膀胱の炎症性筋線維芽細胞性腫瘍42症例のレビューが2015年に発表された。 [85]
炎症性筋線維芽細胞性腫瘍の約半数は、染色体2p23における未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)受容体チロシンキナーゼ遺伝子を活性化するクローン変異を示す。 [86] 免疫組織化学検査でALK陰性であった症例11人中8人(73%)で、ROS1およびPDGFR-βキナーゼ融合が同定されている。 [87] [証拠レベル:3iiiDiv]
炎症性筋線維芽細胞性腫瘍は頻繁に再発するが転移はまれである。 [81] [82] [83]
炎症性筋線維芽細胞性腫瘍に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
実施可能な場合は、外科的完全切除が治療の中心である。 [88] 9人の患者を対象にしたシリーズにおいて、完全切除後に4人の患者が持続的寛解を達成し、残存病変が認められた3人の患者は再発したが、後に持続的寛解を達成し、転移性病変が認められた1人の患者が多剤併用化学療法への反応を示した。 [89] [証拠レベル:3iiA]化学療法の有益性が症例報告で認められている。 [90] ステロイドまたはNSAIDのいずれかに対して奏効が認められた症例報告がいくつかある。 [91] [92] 18歳以下の患者32人のシリーズで、完全切除が治療の中心であるが、一部の患者はステロイドまたは細胞毒性化学療法で治療されたことが明らかにされた。OS率は94%であった;3人の患者が再燃し、このうち2人がこの疾患により死亡した。ステロイドなど、他の治療を併用するまたは併用しない完全切除により、この疾患を有する患者に対して高い生存率が得られた。 [93] [証拠レベル:3iiA]
炎症性筋線維芽細胞性腫瘍はクリゾチニブに反応する。ALK再構成炎症性筋線維芽細胞性腫瘍の成人患者2人がクリゾチニブにより部分奏効を得ている。 [94] [証拠レベル:3iiiDiv]測定可能な病変を認める患児について、クリゾチニブを使用することでALK転座炎症性筋線維芽細胞性腫瘍患児6人中3人において腫瘍に部分奏効が得られた。 [95] 転移性/多病巣性ALK陽性炎症性筋線維芽細胞性腫瘍を有する16歳の患者の症例報告では、クリゾチニブ療法により完全奏効および3年無病期間が得られたことが実証された。 [96] 以前にALK阻害薬による治療を受けた成人患者を対象とするセリチニブの第I相試験において、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍患者1人が部分奏効を得ている。 [97] 最後に、1件の研究において炎症性筋線維芽細胞性腫瘍を有する14人の患者がクリゾチニブで治療された。クリゾチニブ療法により、5人の患者で完全奏効、7人の患者で部分奏効、そして残りの2人の患者に疾患の安定が得られた;この記事が発表された時点で再燃した患者はなかった。 [98] [証拠レベル:3iiDiv]
これらの腫瘍では、乳児型線維肉腫にみられる転座がみられない。また、大多数の非横紋筋肉腫と類似しており、管理アプローチも同様である。
低悪性度線維粘液性肉腫は、若年成人および中年期の成人が最も多く罹患する組織学的見かけがあてにならない軟部新生物であり、四肢の深部にみられることが多く、FUS/CREB3L3の転座を特徴とする。 [99] [100]
低悪性度線維粘液性肉腫患者33人(3人は18歳未満であった)を対象としたレビューで、33人中21人が診断から最長15年(中央値で3.5年)経過後に局所再発を来し、15人が診断から最長45年(中央値で5年)経過後に主に肺および胸膜に転移を来したことから、これらの患者を継続的に追跡する必要があることが浮き彫りとなっている。 [99] 転移した後でも、経過が緩慢な場合がある。 [101]
他の報告では、73例中14例が18歳未満であった。追跡期間が比較的短い(中央値24ヵ月)このシリーズでは、適切な追跡を受けた患者54人中8人のみが局所(9%)または遠隔(6%)再発を生じた。この報告は、この腫瘍の挙動がかつて報告されていたものより顕著に良好である可能性を示唆するものである。 [102] しかしながら、晩期に転移が発生するため、これらの患者については注意深いモニタリングが必要となる。
最新の小児腫瘍学グループ(COG)試験(ARST0332[NCT00346164])でこの腫瘍の患者11人が登録された。診断時の年齢中央値は13歳で、男児の方が多く罹患していた。最好発部位は下肢および上肢(n = 9)で、中央値2.7年間の追跡後に局所または遠隔転移を生じていた患児はいなかった。 [103]
低悪性度線維粘液性肉腫に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
低悪性度線維粘液性肉腫についての限られた治療情報は、この腫瘍にあまり化学療法感受性がないことから、手術が選択すべき治療法であることを示唆している。 [101] この腫瘍に対する化学療法および/または放射線療法の使用に関するデータはほとんどない。1件の報告から、低悪性度線維粘液性肉腫の治療においてトラベクテジンが有効となる可能性が示唆されている。 [104]
粘液線維肉腫はまれな病変であり、特に小児ではまれである。一般には外科的完全切除による治療が実施される。
硬化性類上皮線維肉腫はまれな悪性肉腫であり、EWSR1遺伝子再構成を有することが多く、侵攻的な臨床経過をたどる。 [105] 一般には外科的完全切除による治療が実施される。局所再発および転移が晩期に生じることがあるため、長期的追跡が推奨される。
NCIが支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
詳しい情報については、小児横紋筋肉腫の治療に関するPDQ要約を参照のこと。
平滑筋肉腫は20歳未満の患者における軟部肉腫の2%を占める(表1を参照のこと)。
腫瘍の発生をみたHIV/AIDSの小児43人のうち、8人にエプスタイン-バーウイルス関連平滑筋肉腫の発生がみられた。 [106] 遺伝性網膜芽細胞腫の生存者は、統計的に平滑筋肉腫の発症リスが有意に高く、その78%が網膜芽細胞腫の最初の診断から30年以上経過後に診断された。 [107]
平滑筋肉腫に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
再発肉腫の成人患者を対象としたトラベクテジンのオープンラベル研究では、最高の全奏効率(完全寛解および部分寛解)が平滑筋肉腫患者で認められた(7.5%)。 [108] 平滑筋肉腫の臨床的有益性(病勢安定化を含む)の割合は54%であった。成人を対象とした別の研究では、再発脂肪肉腫および平滑筋肉腫の患者をトラベクテジンまたはダカルバジンによる治療にランダムに割り付けた。トラベクテジンによる治療を受けた患者は疾患増悪の45%の低減を示した。 [14] 小児患者においてトラベクテジンの使用を支持するデータは存在しない。
NCIが支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
いわゆる線維組織球性腫瘍として、以下の腫瘍サブタイプがある:
叢状組織球腫瘍はまれで、小児および若年成人が最も多く罹患する低悪性度~中悪性度の腫瘍である。シリーズにもよるが、初診時の年齢中央値は8~14.5歳の範囲である;しかしながら、生後3ヵ月という若い患児でも報告がある。 [109] [110]
腫瘍は、皮膚または皮下組織に痛みを伴わない腫瘤として多く発生し、指、手、手首などの上肢に現れることが最も多い。 [111] [112] [113] 所属リンパ節または肺へ進展したという報告はまれである。 [109] [113] [114]
一貫性のある染色体異常は検出されていないが、t(4;15)(q21;q15)転座が報告されている。 [115]
叢状線維組織球腫瘍は中悪性度の腫瘍であり、転移はまれである。
手術が治療として選択されるが、局所再発が12~50%の症例に報告されている。 [116]
NCIが支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
外胚葉性間葉腫はまれな神経鞘腫瘍で、主に小児に生じる。この腫瘍は間葉性成分および外胚葉性成分の両方を示す二重表現型軟部肉腫である。横紋筋肉腫に似た要素が同定されている。
German Soft Tissue Sarcoma Group(Cooperative Weichteilsarkom Studiengruppe[CWS])が14年間で6人の患者(0.2~13.5歳)の登録を報告している。 [117] [証拠レベル:3iiA]この腫瘍は四肢、腹部、眼窩を含むさまざまな部位にみられた。6人の患者は全員横紋筋肉腫を対象とする手術および化学療法による治療を受けた。2人が放射線療法を受けた。3人は横紋筋肉腫の特徴を示す再発を来した。データは乏しいが、この腫瘍は化学療法に反応する可能性があるとみられる。 [117]
悪性末梢神経鞘腫瘍は、20歳未満の患者における軟部肉腫の5%を占める(表1を参照のこと)。
悪性末梢神経鞘腫瘍は散発性に、また1型神経線維腫症(NF1)の小児に発生することがある。 [118]
これらの腫瘍ではSUZ12の不活性化変異が記述されているが、神経線維腫では見られない。 [119]
良好な予後に関連する特徴として、以下のものがある: [118] [120] [121] [122]
不良な予後に関連する特徴として、以下のものがある: [124]
MD Anderson Cancer Centerの研究における限局性病変の患者では、NF1を合併した患者と合併していない患者において転帰に有意差は認められなかった。 [121] 他の諸研究において、NF1を合併していないことが良好な予後因子であるかどうかについては、良好 [120] および不良 [118] [120] [122] な転帰の両方で関連性が指摘されているため明らかではなかった。French Sarcoma Group研究において、NF1は他の予後不良な特徴に関連していたが、不良な転帰の独立した予測因子ではなかった。 [124]
悪性末梢神経鞘腫瘍に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
腫瘍の外科的な完全切除が実施可能な場合は、常に治療の柱となる。
放射線療法の役割については評価が困難であるが、術後の顕微鏡的な残存腫瘍が既知の場合、放射線療法後に局所制御が持続するかどうかは確実ではない。
小児悪性末梢神経鞘腫瘍では、化学療法により客観的奏効が得られている。ドイツおよびイタリアにおける悪性末梢神経鞘腫瘍の経験に関する大規模なレトロスペクティブ解析では、測定可能な腫瘍の65%がイホスファミドを含む化学療法レジメンに対して客観的奏効を示したが、この解析では化学療法による生存率の改善について、決定的な実証はなされていない。 [118] このレトロスペクティブ解析では、術後放射線療法により転帰が改善する傾向もみられた。 [118] 悪性末梢神経鞘腫瘍とNF1を合併している若年患者37人を対象としたシリーズでは、ほとんどの患者が化学療法に対する反応の乏しい大きな浸潤性腫瘍を有していることが示された;PFSは19%、5年OSは28%であった。 [125]
NCIが支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
悪性トリトン腫瘍は悪性末梢神経鞘腫瘍の1亜型である。この腫瘍は神経線維腫症I型患者に最も好発し、神経原性および横紋筋芽細胞性成分から成る。悪性トリトン腫瘍は高悪性度の腫瘍である。この腫瘍は通常は35歳までに生じ、小児ではきわめてまれである(症例報告のみ)。 [126]
悪性トリトン腫瘍は通常は化学療法および放射線療法に反応しないが、横紋筋肉腫に対して行われる治療法による治療が行われている。 [126] [証拠レベル:3iiiA](詳しい情報については、小児横紋筋肉腫の治療に関するPDQ要約を参照のこと。)
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以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
乳児型血管周皮腫は筋周皮腫の亜型である。
血管周皮腫は、原発不明で高度な血管新生を示す腫瘍である。
組織学的に、血管周皮腫は複雑な脈管構造の周りに密に配列した円形細胞または紡錘状細胞から構成され、多くの分岐様構造を形成する。硝子化がよくみられる。乳児型血管周皮腫は組織学的に類似しており、多くの場合、腫瘍の腫瘤の外側に脈管構造を伴う多葉性となっている。 [127]
乳児型血管周皮腫の治療法には以下のものがある:
小児17人のシリーズで、成人と乳児の血管周皮腫では転移の可能性および治療に対する反応に差があることが明確に実証された。 [128] 11人の小児が1歳を過ぎていた。これらの患者の数人にリンパ節または肺の病変が認められた。II期またはIII期の患者6人が進行して死亡した。I期の患者3人が生存していたが、1人は肺に再発が認められた。6人の患者が幼児性血管周皮腫で、ほとんど(6人中5人)の病期がI期を超えていた。6人すべてが生存していたが、3人はビンクリスチン、アクチノマイシン、およびシクロホスファミドに対して良好な反応を示した。1歳未満の乳児における血管周皮腫は、1歳以上の小児より予後が良好と考えられる。 [129] [130] [131]
この疾患実体は、最も一般的には生後2年以内に発症する乳児および小児期の線維性腫瘍である。 [132] 病変は最も一般的には頭頸部における単一の皮下小結節(筋線維腫)として現れることもあれば、病変が複数の皮膚、筋肉、および骨を冒すこともある(筋線維腫症)。 [133] [134] [135] [136]
この疾患の常染色体優性型が記述されており、PDGFRB遺伝子の生殖細胞変異に関連している。 [137]
これらの病変の予後は非常に優れており、自然に退縮することがある。
多中心性病変を有する症例の約3分の1では内臓への浸潤もみられ、これらの患者は予後不良である。 [135] [136] [138] ビンクリスチン/ダクチノマイシンおよびビンブラスチン/メトトレキサートによる併用療法の使用は、内臓への浸潤がみられる多中心性疾患の症例および疾患が進行しており、患者の生命が脅かされている(例、上気道閉塞)症例において有効であることが証明されている。 [135] [136] [139]
分化不明の腫瘍として、以下の腫瘍サブタイプがある:
胞巣状軟部肉腫は20歳未満の患者における軟部肉腫の1.4%を占める(表1を参照のこと)。
発症時の年齢中央値は25歳であり、胞巣状軟部肉腫は四肢に最も好発するが、口腔および顎顔面領域にも発生しうる。 [140] [141] [142] 小児の胞巣状軟部肉腫は転移病変の証拠を呈することがある。 [143]
この腫瘍は組織発生が不明確であり、ASPSCR1遺伝子がTFE3遺伝子と融合する一貫した染色体転座t(X;17)(p11.2;q25)を特徴とする。 [144] [145]
小児の胞巣状軟部肉腫は緩徐な経過をたどる場合がある。 [143] 胞巣状軟部肉腫の患者では、長期間にわたる見かけ上の寛解を経て、数年後に再燃がみられることがある。 [146] このような腫瘍はまれであるため、胞巣状軟部肉腫の小児はすべてプロスペクティブ臨床試験への登録を検討すべきである。
治療を受けた患者19人についての1件の症例集積研究において、報告された5年OS率は80%、局所疾患患者のOS率は91%、腫瘍が5cm以下の患者のOS率は100%、腫瘍が5cmより大きい患者のOS率は31%であった。 [147] 33人の患者を対象とした別のシリーズにおけるOSは、診断から5年で68%、診断から10年で53%であった。腫瘍が小さい(5cm以下)ほど、さらに完全に腫瘍が切除された場合ほど、生存は良好であった。 [148] [証拠レベル:3iiA]脳および肺への後発転移はまれである。 [140]
胞巣状軟部肉腫に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
標準的アプローチは原発病変の完全切除である。 [147] 完全切除が不可能な場合は放射線療法を施行すべきである。中国の1件の研究により、口腔および顎顔面領域の胞巣状軟部肉腫の患者18人について報告された;15人の患者が30歳未満であった。 [142] [証拠レベル:3iiDii]切除断端陰性での外科的切除が初回治療であった。すべての患者が生存し、1人の患者においてのみ転移性病変の再発がみられた。
胞巣状軟部肉腫を有する0~21歳の小児患者51人のシリーズでは、10年OS率が78%およびEFS率は約63%であった。限局性疾患の患者(n = 37)に対する10年OS率は87%で、診断時に転移が認められた14人の患者の10年OS率は44%であったが、これは一部の患者で原発腫瘍と肺転移巣の外科的切除を行えた結果であろう。測定可能な病変を有する患者18人中、従来の肉腫に対する化学療法で反応が得られたのは3人のみ(17%)であったが、スニチニブで治療された患者4人中2人で部分奏効が得られた。 [140] [証拠レベル:3iiiA]インターフェロンアルファおよびベバシズマブに客観的奏効が得られたとする報告が散見される。 [140] [149] [150]
スニチニブによる治療を受けた転移性胞巣状軟部肉腫の成人患者9人を対象とした小規模レトロスペクティブ研究は、5人における部分奏効および2人における病勢安定化を報告している。 [151] [証拠レベル:3iiiDiv]既知の3つの上皮成長因子受容体すべてに対する阻害薬であるセジラニブに関する第II相試験において、転移性胞巣状軟部肉腫を有する成人患者43人中15人(35%)が部分奏効を示した。 [152] [証拠レベル:3iiDiv]転移性胞巣状軟部肉腫患者を受け入れている試験はない。
NCIが支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
明細胞肉腫(以前は軟部悪性黒色腫という不適切な名称で呼ばれていた)はまれな軟部肉腫であり、典型的には四肢の深部の軟部組織に生じる。この腫瘍は腱および腱膜の明細胞肉腫とも呼ばれる。この腫瘍は青年および若年成人に好発する。
分裂速度が低く組織学的悪性度が中等度の小さな限局腫瘍の患者は最良の経過をとる。 [153]
この腫瘍は下肢、特に足、踵、足関節部に最も好発する。 [154] [155] この腫瘍はリンパ節播種、特に所属リンパ節への転移を生じる傾向が強い(12~43%)。 [155] [156] この腫瘍は典型的には緩徐な臨床経過をたどる。
軟部明細胞肉腫はEWS-ATF1の融合を特徴とする。 [157]
軟部明細胞肉腫に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
Italian and German Soft Tissue Cooperative Studiesにより報告された小児患者28人を対象としたシリーズでは、診断時年齢の中央値は14歳で、原発部位として最も多かったのは下肢であった(50%)。放射線療法を併用するまたは併用しない手術が選択すべき治療法であり、治癒が得られる確率が最も高い。このシリーズでは、完全切除を受けた患者13人中12人が治癒した。より進行した患者では転帰は不良であり、化学療法が奏効することはまれである。 [158] ; [159] [証拠レベル:3iiDii]
線維形成性小円形細胞腫瘍はまれな原始的肉腫である。
線維形成性小円形細胞腫瘍は、腹部、骨盤、または精巣周囲組織に最も好発するが、腎臓に発生することもある。 [160] [161] [162] [163] この腫瘍は男性に多く発生し、肺およびその他の部位に転移することがある。腹膜および骨盤病変には広範な腹腔内播種が頻繁にみられる。 [164]
65人の患者を対象にした単一施設の大規模シリーズでは、ほとんどの患者で実施されたコンピュータ断層撮影(CT)スキャンと11人の患者で実施されたポジトロン放射断層撮影(PET)/CTキャン間で相関がみられた。PET/CTキャンでは偽陰性の結果が非常に少なく、従来のCTキャンで見逃されていた転移部位が発見された。 [164]
この腫瘍の細胞遺伝学的検査では、WT1遺伝子とEWS遺伝子の融合と考えられている転座t(11;22)(p13;q12)がよく証明される。 [163] [165] WT1-EWS融合により線維形成性小円形細胞腫瘍の診断が確定する。
線維形成性小円形細胞腫瘍の全般的な予後は依然としてきわめて不良であり、報告されている死亡率は90%である。受診時または術前化学療法後のいずれかで切除された腫瘍が90%を超えることが、OSについての良好な予後因子となる可能性がある。 [166] [167]
線維形成性小円形細胞腫瘍の治療に標準的アプローチは存在しない。
線維形成性小円形細胞腫瘍に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
外科的完全切除はまれなため、線維形成性小円形細胞腫瘍の全体的な予後は依然としてきわめて不良であり、報告されている死亡率は90%である。治療法としては、化学療法、手術、および放射線療法が考えられる。全腹部放射線療法だけでなく、肉腫に対して使用されるものに類似した多剤併用化学療法も使用されている。 [160] [161] [166] [168] [169] [170] [171]
単一施設の報告では、線維形成性小円形細胞腫瘍が再発した患者5人中5人が、ビノレルビン、シクロホスファミド、およびテムシロリムスを併用する治療に部分奏効を示した。 [172]
Center for International Blood and Marrow Transplant Research(CIBMTR)が、そのレジストリーの、大量化学療法および自家幹細胞による再構築による地固めを受けた線維形成性小円形細胞腫瘍患者を分析している。 [173] このレトロスペクティブ・レジストリー分析でこのアプローチについて若干の有益性が示唆された一方で、過度の毒性および有効性の欠如のためにこのアプローチを放棄した研究者もいる。 [166]
類上皮肉腫は、組織発生が不明で多系統への分化を示すまれな間葉系腫瘍である。 [174]
類上皮肉腫は、深部の軟部組織を基盤とした増殖の遅い硬結節として多くみられる;近位型は主に成人にみられ、体軸骨格および近位部位に生じる。高度に侵攻性の腫瘍であり、リンパ節転移を来す可能性もある。
類上皮肉腫はSMARCB1遺伝子の不活化を特徴とし、これは類上皮肉腫の通常型および近位型の両方において認められる。 [175] この異常により、EZH2への依存度の増加および腫瘍形成が生じる。 [176]
類上皮肉腫に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
リンパ節転移の有無について患者を注意深く評価すべきである;疑わしいリンパ節については生検を行うべきである。原発腫瘍および再発腫瘍の外科的切除が最も有効な治療法である。 [177] [証拠レベル:3iiiA]
類上皮肉腫の小児患者30人(発症時年齢の中央値は12歳)を対象としたレビューによると、肉腫向けをベースにしたレジメンを用いた患者の40%に化学療法に対する奏効が報告され、初回診断から5年後の時点で60%の患者が生存していた。 [178] 小児および成人を含む20人の患者(年齢中央値、27.3歳)を対象とした単一施設のレトロスペクティブ・レビューでは、化学療法を受けた患者と受けなかった患者とで再発確率に差が認められなかったことから、放射線療法が有用となる可能性が示唆された。 [177]
NCIが支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
悪性ラブドイド腫瘍は1981年に腎腫瘍の小児において初めて報告され(詳しい情報については、小児ウィルムス腫瘍およびその他の腎腫瘍の治療に関するPDQ要約を参照のこと)、後に腎外のさまざまな部位で発見された。これらの腫瘍はまれで悪性度が高く、特に2歳未満の小児でその傾向が強い。
腎外性(頭蓋外)ラブドイド腫瘍は20歳未満の患者における軟部肉腫の2%を占める(表1を参照のこと)。
軟部組織の腎外性頭蓋外悪性ラブドイド腫瘍の小児患者26人を対象にした最初の大規模シリーズは、病理学資料のレビュー中にIntergroup Rhabdomyosarcoma Studies I~IIIに登録した患者からのものである。無病状態で生存していた患者はわずか5人(19%)であった。 [179] 後に、脳の非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍の小児のほか、腎および腎外性の悪性ラブドイド腫瘍の小児が調査され、検査された29の腫瘍すべてでSMARCB1遺伝子の生殖細胞変異および後天性変異が明らかにされた。 [180] ラブドイド腫瘍はSMARCB1遺伝子の生殖細胞変異に関連していると考えられ、見たところ罹患していない一方の親から遺伝している可能性がある。 [181] この観察は、診断時平均年齢が12ヵ月の患者のすべての部位にある32の悪性ラブドイド腫瘍に拡大された。 [182]
腎臓、中枢神経系、および腎外性の悪性ラブドイド腫瘍の患者229人を対象にしたSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)研究では、2~18歳の患者の年齢、腫瘍の範囲が限られていること、放射線療法の実施が他の患者と比較して治療成績に良好に作用することが示されている(それぞれの比較についてP < 0.002)。原発腫瘍部位は予後的に重要ではなかった。5年OS率は33%であった。 [183]
治療には、可能な場合の外科的切除、軟部肉腫に用いられている化学療法(ただし、現在最善のものとして認められている単一のレジメンはない)、および放射線療法が含まれる。 [184] [証拠レベル:3iA]; [185] [186] [証拠レベル:3iiiB]
アリセルチブに対する反応が中枢神経系(CNS)非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍の患者4人において報告されている。 [187] (CNS非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍に関する詳しい情報については、小児中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍の治療に関するPDQ要約を参照のこと。)
NCIが支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
骨外性粘液型軟骨肉腫は、軟部肉腫の中では比較的まれで、すべての軟部肉腫に占める割合はわずか2.3%である。 [188] また、小児および青年において報告されている。 [189]
骨外性粘液型軟骨肉腫は多結節性の新生物である。この円形細胞は、コンドロイチン硫酸による粘液性の基礎環境では索状に配列し糸状となる。細胞遺伝学的にいくつかの異常が特定されており(表2を参照のこと)、EWSR1/NR4A3遺伝子に関わるt(9;22)(q22;q12)の転座が最も高頻度に認められる。 [190]
この腫瘍は従来より低悪性度の可能性があるとみなされている。 [191] しかしながら、大規模施設からの最近の報告によると、骨外性粘液型軟骨肉腫は、特に長期にわたって患者を追跡すると、悪性度が有意に高いことが示された。 [192] [193] 患者は長期にわたり緩徐な経過を示す傾向がある。リンパ節転移については、多くの報告がなされている。局所再発(57%)および肺への転移(26%)が報告されている。 [193]
骨外性粘液型軟骨肉腫に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
治療上の化学療法の有益性については、まだ確立されていない。積極的な局所制御および転移病変の切除により、5年OSが87%、10年OSが63%となった。この腫瘍は放射線療法に対し比較的抵抗性が高かった。 [192]
小分子に対する遺伝的標的薬の可能性は考えられるが、これらは臨床試験の一環として研究すべきである。成人を対象とした1件の研究で、スニチニブ投与を受けた患者10人中6人が部分奏効を得た。 [194]
NCIが支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
良性のPEComaは、腎細胞がんおよび脳腫瘍の素因もある常染色体優性遺伝症候群の結節硬化症に多くみられる。結節硬化症は、TSC1(9q34)またはTSC2(16p13.3)のいずれかの生殖細胞系不活化により引き起こされ、散発性PEComaではこの同じ腫瘍抑制遺伝子が体細胞で不活化されている。 [195] いずれかの遺伝子の不活化により、mTOR経路が刺激されることから、手術によらずmTOR阻害薬により治癒可能なPEComa治療の基礎が得られる。 [196] [197] ごく一部のPEComaはSFPQ/PSFおよびRAD51Bを含むさまざまな遺伝子が関わる融合を伴うTFE3再構成を有する。 [198]
PEComaは、まれに消化管、肺、女性器、尿生殖器などのさまざまな部位に発生する。軟部組織、内臓、および女性器のPEComaは、中年女性患者により多くみられ、通常結節硬化症とは無関係である。 [199] 疾患の経過は緩慢な場合がある。
ほとんどのPEComaは、良性の臨床経過を示すが、悪性の挙動が報告されており、腫瘍サイズ、分裂速度、および壊死の有無を基に予想可能である。 [200]
治療法の選択肢は確定していない。治療は手術または、腫瘍が大きい場合に観察とその後の手術が挙げられる。 [201]
mTORC1の活性化およびTSC欠失の証拠を示す腫瘍における、シロリムスなどのmTOR阻害薬による臨床活性が詳細に報告されている。 [202]
(詳しい情報については、ユーイング肉腫の治療に関するPDQ要約を参照のこと。)
滑膜肉腫は20歳未満の患者における軟部肉腫の9%を占める(表1を参照のこと)。
滑膜肉腫は、小児および青年において最もよくみられる非横紋筋肉腫性軟部肉腫の1つである。1973年から2005年までのSEERのレビューでは、滑膜肉腫患者1,268人が特定された。これらの患者の約17%が小児および青年で、診断時年齢の中央値は34歳であった。 [203]
滑膜肉腫は、以下のタイプに下位分類可能である:
最もよくみられる腫瘍部位は四肢で、体幹および頭頸部が続く。 [203] 滑膜肉腫はまれに心臓または心膜に発生することがある。 [204]
転移好発部位は肺である。 [205] [206] 転移リスクは腫瘍の大きさによって大きく影響を受ける;腫瘍の大きさが5cmを超える患者は、それ以外の患者と比べて転移するリスクが32倍高いと推定される。
滑膜肉腫の診断は、免疫組織化学的分析、超微細構造所見、および特異的なt(X;18)(p11.2;q11.2)の染色体転座の立証によって確定される。この異常は滑膜肉腫に特有のものであり、すべての形態学的亜型にみられるものである。滑膜肉腫では、第18番染色体上のSYT遺伝子とX染色体上のSSX遺伝子の亜型(1、2または4)の1つとの間で再構成が起こる。 [207] [208] SYT/SSX18の転写産物は、重要な腫瘍抑制遺伝子のエピジェネティックサイレンシングを促進すると考えられている。 [209]
1件の報告において、免疫組織化学的染色でINI1核内反応の低下は49例の滑膜肉腫でみられ、このパターンが滑膜肉腫と他の組織型を見分けるのに役立つ可能性があることが示唆されている。 [210]
10歳未満の患者は、これより年齢が高い患者よりも転帰が良好で、その臨床的特徴として、四肢原発、小さい腫瘍、限局性腫瘍などが挙げられる。 [203] [211] メタアナリシスで、化学療法に対する奏効が生存延長に関係していることも示唆された。 [212]
以下の諸研究から転帰不良と関連する複数の因子が報告されている:
再燃後の生存率は不良である(5年で30%)。再燃後の転帰に関連する因子としては、初回寛解の持続期間(18ヵ月を超えるまたは18ヵ月以下)および二回目の寛解なしが挙げられる。 [221]
滑膜肉腫に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
COGおよびEuropean Pediatric Soft Tissue Sarcoma Study Groupにより、21歳未満の限局性滑膜肉腫患者60人が補助放射線療法または化学療法を併用しない手術にプロスペクティブに割り付けられた併合解析について報告された。 [222] 登録は、すべての腫瘍サイズの悪性度2の腫瘍または5cm以下のグレード3の腫瘍を有し、組織学的に切除断端陰性の初回完全切除が実施された患者に限定された。3年EFS率は90%であった(追跡期間中央値、5.2年;範囲、1.9-9.1)。8つすべてのイベントが腫瘍の局所再発であった;転移性再発はみられなかった。疾患が再発した患者はすべて救助療法により有効に治療され、OSは100%であった。
滑膜肉腫は、他の多くの軟部肉腫よりも化学療法に対する感受性が高いようであり、滑膜肉腫の小児は成人と比べ予後が良好と考えられる。 [11] [206] [217] [223] [224] [225] [226] [227] 滑膜肉腫の治療に最も一般的に用いられるレジメンには、イホスファミドおよびドキソルビシンが組み入れられている。 [212] [226] [228] イホスファミドおよびドキソルビシンのレジメンに対する奏効率は、他の非横紋筋肉腫性軟部肉腫より高い。 [229]
数件の研究から以下の化学療法関連の治療所見が報告されている:
CCLG-EPSSG-NRSTS-2005 Trialで治療された患者の治療成績が表9に記述されている。
リスクグループ | 治療 | 3年EFS(%) | 3年OS(%) |
---|---|---|---|
IRS = Intergroup Rhabdomyosarcoma Study;RT = 放射線療法。 | |||
a化学療法はイホスファミド/ドキソルビシンで、放射線療法中はドキソルビシンは省略された。 | |||
b二次切除が選択されなかった症例において59.4Gy;術前放射線療法として50.4Gy;R0、R1、およびR2切除を受けた症例における術後放射線療法として、それぞれ50.4Gy、54Gy、および59.4Gy(6歳未満の小児では、切除縁陰性での二次完全切除の症例における追加の放射線療法は実施されなかった)。 | |||
低リスク | 手術単独 | 92 | 100 |
中リスク | 手術、3~6サイクルの化学療法a ± RTb | 91 | 100 |
高リスク(IRSグループIII) | 3サイクルの化学療法a、手術、追加で3サイクルの化学療法、 ± RTb | 77 | 94 |
高リスク(体軸の原発部位) | 手術、6サイクルの化学療法a、RTb | 78 | 100 |
NCIが支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
1972年から2006年にIntergroup Rhabdomyosarcoma Study GroupおよびCOGの統括下に実施された横紋筋肉腫の臨床試験への参加では、未分化軟部肉腫患者が適格とされた。その理論的根拠は、未分化軟部肉腫患者の病変部位および転帰が胞巣状横紋筋肉腫患者と類似しているという観察所見であった。軟部肉腫の成人に対する治療試験には未分化肉腫および他の病歴の患者も含まれ、イホスファミドとドキソルビシンに加え、ときには他の化学療法薬、手術および放射線療法を使用して同様の治療を行っている。
COGのARST0332(NCT00346164)試験では、高悪性度未分化肉腫患者がイホスファミドおよびドキソルビシンをベースとしたレジメンによる治療を受け、また過去のIntergroup Rhabdomyosarcoma Study Groupの諸研究(非転移患者での推定5年生存率は72%)で用いられた横紋筋肉腫を対象とする治療法を受けた。 [235] [証拠レベル:3iiA]現在、これらの患者は、非横紋筋肉腫性軟部肉腫の患者を対象とするCOGのオープンARST1321(NCT02180867)試験に適格である。
悪性線維組織球腫は、かつては成人の軟部肉腫の中で単一で最も頻度の高い組織型とされていた。悪性線維組織球腫は、1960年代初期に初めて認知されて以降、その組織発生および臨床病理学的疾患としての妥当性の両面において絶えず議論の的となってきた。最新のWHO分類は、現在では悪性線維組織球腫を別個の診断カテゴリーとして含めておらず、むしろ未分化多形肉腫の亜型の1つとしている。 [236]
この腫瘍はすべての小児軟部肉腫の2~6%を占める。 [237] これらの腫瘍は、過去に放射線が照射された部位に、または網膜芽細胞腫患者における二次悪性腫瘍として現れることがある。
また、主に10歳代に発生する。患者10人のシリーズにおける年齢中央値は10歳で、腫瘍は主に四肢に局在する場合が最も多かった。このシリーズでは、すべての腫瘍が限局性で、(追跡可能であった)9人中5人が生存しており、初回寛解状態にあった。 [237] 悪性線維組織球腫の小児患者17人を対象とした別のシリーズでは、診断時年齢の中央値は5歳で、四肢に病変がみられたのは8例であった。 [238] 転移したすべての患者が死亡し、ドキソルビシンをベースとしたレジメンに対する臨床的奏効が2人の患者に認められた。
(骨悪性線維性組織球腫の治療に関する詳しい情報については、骨肉腫および骨悪性線維性組織球腫の治療に関するPDQ要約を参照のこと。)
NCIが支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
脈管腫瘍は、常に良性と考えられる血管腫から悪性度の高い血管肉腫まで多様である。 [239] 脈管腫瘍として、以下の腫瘍サブタイプがある:
血管肉腫はまれな(肉腫の2%を占める)侵攻性の脈管腫瘍で身体のあらゆる部位に生じうるが、軟部組織においてより一般的である。血管肉腫の推定発生率は100万人当たり2例である;米国では、年間約600人(典型的には60~70歳)が罹患する。 [240]
血管肉腫は小児ではきわめてまれであり、小児集団におけるこの腫瘍の病態生理学が異なるものであるかどうかは不明である。新生児および歩き始めの幼児において多発性の皮膚病変および肝病変(これらの一部はGLUT1陽性である)の発症を伴う症例が報告されている。 [241] [242] [243] [244] ほとんどの血管肉腫は皮膚および表在性軟部組織に病変が見られるが、肝臓、脾臓、および肺に見られることもある;骨に病変が見られることはまれである。
危険因子として確立されているものには、塩化ビニル曝露、放射線曝露、およびスチュアート-トリーヴェス症候群など、何らかの原因による慢性リンパ浮腫がある。 [245]
血管肉腫は一般に異数体腫瘍である。血管腫などの良性病変から発生する血管肉腫のまれな症例は、研究が必要な異なる経路を有している。MYC増幅は放射線誘発性血管肉腫において見られる。KDR-VEGFR2の突然変異およびFLT4-VEGFR3の増幅が見られる頻度は50%未満である。 [245]
病理組織学的診断は、多様な異型の範囲が存在する可能性があるため非常に困難である。一般的な特徴は、真皮コラーゲン束に沿って切断したようなパターンの不規則なチャンネルのネットワークである。多様な細胞の形状、サイズ、有糸分裂、内皮多層構造、および乳頭状構造が見られる。類上皮細胞が見られることもある。壊死および出血が一般的である。腫瘍は第VIII因子、CD31、およびCD34に染色される。一部の肝病変は乳児血管腫に酷似し、病巣のGLUT1が陽性である。こうした肝病変の命名法は難しく、1971年以降の専門用語(例、I型血管内皮腫:乳児血管腫;II型血管内皮腫:低悪性度血管肉腫;III型血管内皮腫:高悪性度血管肉腫)の使用により混乱させるものとなっている。 [242]
軟部血管肉腫に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
限局性疾患は積極的な手術により治癒する。血管肉腫およびリンパ管肉腫に対しては、局所療法または全身療法で治療された一部の患者で腫瘍の縮小を示した証拠が存在するにもかかわらず、外科的完全切除がきわめて重要なようである。 [243] [246] [247] [248] 患者222人(年齢中央値62歳;範囲15~90歳)を対象としたレビューでは、全疾患特異的生存率(DSS)が5年で38%であったことを示した。5年DSSは、限局性腫瘍を切除した患者138人では44%であったが、診断時に転移が認められた患者43人ではわずか16%であった。 [248] 限局性血管肉腫に対する肝移植のデータは限られている。 [249] [証拠レベル:3iiA]
限局性腫瘍、特に皮膚血管肉腫は放射線療法で治療できる。これらの報告されている症例のほとんどは成人である。 [250]
転移性腫瘍に対しては、手術、全身化学療法、および放射線療法による集学的治療が用いられるが、治癒が得られることはまれである。 [251] 転移性血管肉腫では疾患の制御が目標であり、発表されている無増悪生存期間は3~7ヵ月 [252] および全生存(OS)期間中央値は14~18ヵ月 [253] である。成人と小児の両方で、20~35%の5年OS率が報告されている。 [243] [244] [254]
乳児血管腫からの悪性転換に続発する血管肉腫と診断された小児では、血管内皮増殖因子に対するモノクローナル抗体のベバシズマブと全身化学療法とを併用する治療での反応が報告されている。 [241] [251] 小児における肝血管肉腫8症例の報告により、血管内皮腫という用語の誤用とこれらの腫瘍の早期診断および治療の重要性が強調された。 [255]
血管形成を阻害する生物学的製剤が血管肉腫の成人で活性を示している。 [242] [254]
米国国立がん研究所(NCI)が支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
NCIが支援しているがん臨床試験で現在患者登録中の試験を検索するには、臨床試験アドバンスト・サーチを使用のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。このサーチでは、試験の場所、治療の種類、薬物名やその他の基準による絞り込みが可能である。臨床試験に関する一般情報も入手することができる。
この腫瘍は1982年にWeissおよびEnzingerにより軟部組織において最初に記述された。類上皮血管内皮腫は若年で発生することがあるが、発生率のピークは30~40歳代である。腫瘍は緩慢な経過をたどる場合も、非常に侵攻性の経過をたどる場合もあり、5年全生存率は73%である。非常に侵攻性の経過をたどる患者がいるのに対して、未治療の多発性病変を有しながら非常に良性の経過をたどる患者の症例報告もある。病理医はリスクを評価し治療を調整するために患者を層別化しようと試みているが、さらなる研究が必要である。 [256] [257] [258] [259] [260] [261] [262]
滲出液の存在、3cmを超える腫瘍サイズ、および高い分裂指数(有糸分裂像が50高倍率視野当たり3を超える)が不良な転帰と関連している。 [258]
患者の大部分でWWTR1-CAMTA1遺伝子融合が認められている;頻度は少ないが、YAP1-TFE3遺伝子融合が報告されている。 [256] これらの融合は現在の薬物を用いた直接の標的として治療できていない。多発性肝病変で単クローン性が記述されており、転移の過程が示唆されている。
組織学的に、これらの病変は血管腔をほとんど認めない巣状、糸状、および索状パターンで配列した類上皮病変を特徴としている。侵攻性の臨床的挙動に関連しうる特徴としては、細胞異型、10高倍率視野当たり1つ以上の有糸分裂像、高い割合の紡錘形細胞、病巣壊死、および化生性骨形成が挙げられる。 [258]
文献で報告されている小児患者の数は限られている。
一般的な病変の部位は、肝単独(21%)、肝 + 肺(18%)、肺単独(12%)、および骨単独(14%)である。 [258] [263] [264] 臨床像は以下に示すように、病変の部位によって異なる:
類上皮血管内皮腫に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
経過が緩慢な症例には、観察が妥当である。経過がより侵攻性の症例には、インターフェロン、サリドマイド、ソラフェニブ、パゾパニブ、シロリムスなど複数の医薬品が使用されている。 [265] 経過が最も侵攻性の症例は、血管肉腫と同様の化学療法で治療される。可能な場合には手術が用いられる。侵攻性の肝病変では、転移の有無にかかわらず、肝移植が用いられている。 [258] [266] [267] [268] [269]
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転移性の小児軟部肉腫に対する標準治療法の選択肢には以下のものがある:
治療法の選択肢については、本要約の個々の腫瘍型のセクションを参照のこと。
転移性軟部肉腫の小児患者の予後は不良であり [1] [2] [3] [4] [5] [6] 、このような小児には化学療法、放射線療法および肺転移巣の外科的切除を組み合わせた治療が行われるべきである。プロスペクティブ・ランダム化試験では、ビンクリスチン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、およびシクロホスファミドによる化学療法にダカルバジンを併用または併用しないで、切除不能または転移性の病変を認める患者の3分の1において腫瘍反応が得られた。しかしながら、推定4年生存率は不良で、生存者は3分の1未満であった。 [6] [7] [8]
一般的に、孤立性の肺転移巣が認められる小児には、肉眼的病変をすべて切除することを目的に外科的手技を検討すべきである。 [9] 多発性または反復性の肺転移を認める患者に対しては、合併症が認容可能と考えられる場合は、外科手術を追加施行することがある。1件のレトロスペクティブ・レビューにおいて、滑膜肉腫および複数の肺転移が認められたが、すべての転移性肺病変を完全切除できた患者は、完全切除を達成できなかった患者よりも生存が優れていた。 [9] [証拠レベル:3iiiA]正式の肺区域切除術、肺葉切除術、および縦隔リンパ節郭清術は不要である。 [10]
代替アプローチとして集中的な放射線療法(分割定位放射線治療)があり、成人患者に使用され、病変の制御に成功している。成人を対象とした諸試験では、肺転移巣切除目的の開胸が実施された後の推定5年生存率は10~58%とされている。最新のデータによれば、集中型放射線療法を施行しても同様の治療成績が得られることが示唆されている。 [11]
乳児型線維肉腫の乳児は除外される可能性があるが、腫瘍が再発性または進行性の患者における予後は不良である。小児軟部肉腫の局所制御を強化することが最終的な生存率改善につながることを明らかにしたプロスペクティブ試験は存在しない。このため、治療は再発部位、腫瘍の生物学的特徴(例、悪性度、浸潤度、大きさ)、以前の治療法、および個々の患者の考慮事項に応じて個別に行っていくべきである。
再発または進行性疾患に対する治療法の選択肢には以下のものがある:
再発した小児非横紋筋肉腫性軟部肉腫の標準治療は外科的切除である。それまでに放射線療法を受けたことのない患者であれば、再発腫瘍の局所切除実施後に術後放射線療法を検討すべきである。成人では術後密封小線源治療による患肢温存療法が評価済みであるが、小児では大々的な研究は実施されていない。四肢に肉腫が認められ以前に放射線療法を受けたことのある小児では、切断が唯一の治療法の選択肢となる場合もある。
患者によっては、肺の転移巣切除により長期にわたる腫瘍制御が得られる場合がある。 [8] 再発軟部肉腫の患者の大規模なレトロスペクティブ分析から、孤立性の局所再燃の方が予後良好であるということと、肺転移巣の切除により生存確率が高まるということが示された。 [9] 滑膜肉腫から肺転移を来した小児および23歳未満の青年31人において、肺の転移巣を完全切除できれば、転移巣切除の候補と考えられなかった他の10人の患者と比較して生存が延長されたようである。 [10] [証拠レベル:3iiiA]再発腫瘍が認められる患者は、最新の臨床試験を検討すべきである。
滑膜肉腫の再燃を来した小児の治療成績に関して2件の試験の結果が発表された。1件の試験ではほとんどの患児に遠隔部位の再燃があり(44例中29例)、 [11] もう一方の試験では、ほとんどの患児に局所再燃が認められた(37例中27例)。 [12] 遠隔再発は予後不良変数であった一方で、四肢への再燃のように、再燃時に腫瘍が切除可能であることが両試験において良好な治療成績に関連していた。
米国国立がん研究所(NCI)が支援している臨床試験に関する情報は、NCIウェブサイトに掲載されている。他の組織がスポンサーの臨床試験に関する情報については、ClinicalTrials.govウェブサイトを参照のこと。
以下は、現在実施されている全米および/または施設の臨床試験の例である:
分子生物学的な検討のために、進行または再発した病変から腫瘍の組織を得る必要がある。この試験で治療の対象とされている分子遺伝学的なvariant(多様体ないしバリアント)が認められる腫瘍を有する患者には、Pediatric MATCHでの治療が提案される。APEC1621(NCT03155620)については、ClinicalTrials.govウェブサイトで追加の情報が入手できる。
NCIが支援しているがん臨床試験で現在患者登録中の試験を検索するには、臨床試験アドバンスト・サーチを使用のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。このサーチでは、試験の場所、治療の種類、薬物名やその他の基準による絞り込みが可能である。臨床試験に関する一般情報も入手することができる。
PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。
本文で以下の記述が改訂された;内臓の非横紋筋肉腫性軟部肉腫のイタリア人患者30人を対象にした1件のレビューでは、5年経過時に生存していた患者は10人のみであった。予後不良因子は、完全切除を達成できないこと、比較的大きな腫瘍サイズ、腫瘍浸潤、組織学的サブタイプ、および肺-胸膜部位であった。
本文に以下の記述が追加された;5人の患者シリーズにおいて、29ヵ月の無増悪期間中央値が報告された(引用、参考文献44としてAnanth et al.)。
本文に以下の記述が追加された;18歳以下の患者32人のシリーズで、完全切除が治療の中心であるが、一部の患者はステロイドまたは細胞毒性化学療法で治療されたことが明らかにされた。全生存率は94%であった;3人の患者が再燃し、このうち2人がこの疾患により死亡した。ステロイドなど、他の治療を併用するまたは併用しない完全切除により、この疾患を有する患者に対して高い生存率が得られた(引用、参考文献93としてDalton et al.および証拠レベル:3iiA)。
本文に以下の記述が追加された;転移性/多病巣性ALK陽性炎症性筋線維芽細胞性腫瘍を有する16歳の患者の症例報告では、クリゾチニブ療法により完全奏効および3年無病期間が得られたことが実証された(引用、参考文献96としてGaudichon et al.)。また本文に以下の記述が追加された;1件の研究において炎症性筋線維芽細胞性腫瘍を有する14人の患者がクリゾチニブで治療された。クリゾチニブ療法により、5人の患者で完全奏効、7人の患者で部分奏効、そして残りの2人の患者に疾患の安定が得られた;この記事が発表された時点で再燃した患者はなかった(引用、参考文献98としてMossé et al.および証拠レベル:3iiDiv)。
参考文献171としてAtallah et al.が追加された。
本文に以下の記述が追加された;単一施設の報告では、線維形成性小円形細胞腫瘍が再発した患者5人中5人が、ビノレルビン、シクロホスファミド、およびテムシロリムスを併用する治療に部分奏効を示した(引用、参考文献172としてTarek et al.)。
本文に、21歳未満の限局性滑膜肉腫患者60人が補助放射線療法または化学療法を併用しない手術にプロスペクティブに割り付けられた小児腫瘍学グループおよびEuropean Pediatric Soft Tissue Sarcoma Study Groupの解析結果に関する記述が追加された(引用、参考文献222としてFerrari et al.)。
本要約はPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。
医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、小児軟部肉腫の治療について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。
本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。
委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:
要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。
小児軟部肉腫の治療に対する主要な査読者は以下の通りである:
本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。
本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。
PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。
本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:
PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Childhood Soft Tissue Sarcoma Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/soft-tissue-sarcoma/hp/child-soft-tissue-treatment-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389361]
本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。
入手可能な証拠の強さに基づき、治療選択肢は「標準」または「臨床評価段階にある」のいずれかで記載される場合がある。これらの分類は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。
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