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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

口腔がんおよび中咽頭がんの予防(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2016-02-04
    翻訳更新日 : 2016-04-27

PDQ Screening and Prevention Editorial Board

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、口腔がんおよび中咽頭がんの予防について包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。


本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Screening and Prevention Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

口唇がんおよび口腔がん 中咽頭がん がん予防

概要

注:口腔がんおよび中咽頭がんのスクリーニング口唇がんおよび口腔がんの治療;および喫煙:健康上のリスクと禁煙方法については、別のPDQ要約を参照できるようにしてある。

リスクのある個人

口腔がんおよび中咽頭がんは2つの別個の疾患であるが、これらのがんはいくつかの危険因子を共有している。一般的に利用できるいずれの形態(紙巻きタバコ、葉巻、パイプ、無煙タバコ)でもタバコを使用する人またはアルコール摂取量の多い人は両方のがんのリスクが高い;喫煙と飲酒の両方を行う人では、特にリスクが高くなる。betel quidを噛む人もまた、タバコの混合の有無にかかわらず、口腔がんおよび中咽頭がんのリスクが高い。 [1] [2] [3] 頭頸部がんの個人歴を有する人もまた、将来口腔または中咽頭の原発がんのリスクが高い。 [4] ヒトパピローマウイルス(HPV)16は中咽頭がんの十分な(ただし、必要ではない)原因である。 [5]

口腔がんおよび中咽頭がんのリスク増大の十分な証拠が得られている因子

タバコ使用

多数の観察研究からの固い証拠によると、タバコ使用は口腔がんおよび中咽頭がんのリスクを高める。 [6] [7] [8]

影響の大きさ:大きい。現在喫煙者のリスクは非喫煙者のリスクの約10倍であり、喫煙量に関係する。口腔がんのほとんどがタバコ製品の使用によるものである。


    研究デザイン:多数の観察ケースコントロールおよびコホート研究。
    内部妥当性:良好。
    一貫性:良好。
    外部妥当性:良好。

飲酒

固い証拠によると、飲酒は口腔がんおよび中咽頭がん発生の危険因子である。飲酒の影響は喫煙の影響に依存していない。 [9] [10] [11] [12]

影響の大きさ:タバコ使用に伴うリスクよりも低いが、飲酒しない人と比較して1日に3~4杯のアルコール飲料を飲む人では、リスクが約2倍になり、用量依存性に増加する。


    研究デザイン:複数のケースコントロールおよびコホート研究。
    内部妥当性:良好。
    一貫性:良好。
    外部妥当性:良好。

喫煙および飲酒

口腔がんおよび中咽頭がんのリスクは飲酒と喫煙の両方の消費量が多い個人で最も高い。両方の危険因子が認められる場合の口腔がんおよび中咽頭がんのリスクは、2つの個別のリスクの単純な相乗効果よりも大きくなる。 [10] [13]

影響の大きさ:単純な相乗効果よりも約2~3倍大きくなり、喫煙と飲酒の両方の消費量が多い個人のリスクは、喫煙も飲酒もしない個人のリスクの約35倍となる。


    研究デザイン:複数のケースコントロールおよびコホート研究。
    内部妥当性:良好。
    一貫性:良好。
    外部妥当性:良好。

betel quidチューイング

固い証拠によると、betel quidを単独でまたはタバコとともに噛むこと(グトゥカー)は、口腔がんおよび中咽頭がんの両方のリスクを高める。 [3] [14] betel quidの主要な3つの成分(キンマの葉、ビンロウジ、石灰)のうち、ビンロウジだけが噛んだときに発がん性があると考えられている。

影響の大きさ:口腔がんの相対リスクは高く、betel quid単独よりもグトゥカーで典型的に強くなる。両製品は、中咽頭がんのリスクについてわずかではあるが統計的に有意な増加をもたらすようである。


  • 研究デザイン:複数の生態学的、ケースコントロール、およびコホート研究。

  • 内部妥当性:良好。

  • 一貫性:良好。

  • 外部妥当性:良好。

口腔がんおよび中咽頭がんのリスク低下の十分な証拠がある介入

禁煙

固い証拠によると、タバコ(例、紙巻きタバコ、パイプ、葉巻、および無煙タバコ)への曝露を停止することにより、口腔がんおよび中咽頭がんリスクの低下につながる。

影響の大きさ:リスクの低下、大きさが中等度から大。


    研究デザイン:複数のケースコントロールおよびコホート研究。
    内部妥当性:良好。
    一貫性:良好。
    外部妥当性:良好。

口腔がんおよび中咽頭がんのリスク低下の証拠が不十分な介入

禁酒

中等度の証拠によると、禁酒は口腔がんの減少につながるが、禁酒から約10年経過するまでは減少しない。中咽頭がんについては、禁酒から約20年経過するまでリスクは低下しない。 [15]

影響の大きさ:リスクの低下、大きさは小さいから中等度。


    研究デザイン:複数のケースコントロール研究。
    内部妥当性:普通。
    一貫性:普通。
    外部妥当性:普通。

中咽頭がんのリスク増大の十分な証拠が得られている因子

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染

固い証拠によると、HPV 16感染は中咽頭がんの原因となる。 [5] HPV 16は十分な(ただし、必要ではない)原因である。ごく一部の中咽頭がんでは、HPV 18など、他の高リスクHPVサブタイプも発見されている。 [16] [17]

HPV 16 L1血清陽性またはHPV 16の口腔感染の証拠が認められる個人における喫煙および飲酒はリスク増加と関連していないようである。 [16]

影響の大きさ:大きい。HPV 16の口腔感染では、HPV 16の口腔感染が認められない個人と比較してリスクが約15倍高くなる。


    研究デザイン:プロスペクティブに収集されたデータを用いて実施された1件(ネステッドケースコントロール研究)を含む複数のケースコントロールおよびコホート研究。
    内部妥当性:良好。
    一貫性:良好。
    外部妥当性:良好。

中咽頭がんのリスク低下の証拠が不十分な介入

HPV 16および他の高リスクサブタイプに対するワクチン接種

HPV 16およびHPV 18に対するワクチン接種は、接種後4年以内ではHPV 16/18の口腔感染の90%以上を予防することが示されている。 [18] しかしながら、いずれの年齢でのワクチン接種が、現在の一般的な診断年齢の中咽頭がんのリスク低下につながるかを評価したデータは得られていない。


    研究デザイン:利用可能な研究はない。
    内部妥当性:該当せず。
    一貫性:該当せず。
    外部妥当性:該当せず。

参考文献
  1. Huber MA, Tantiwongkosi B: Oral and oropharyngeal cancer. Med Clin North Am 98 (6): 1299-321, 2014.[PUBMED Abstract]

  2. Song H, Wan Y, Xu YY: Betel quid chewing without tobacco: a meta-analysis of carcinogenic and precarcinogenic effects. Asia Pac J Public Health 27 (2): NP47-57, 2015.[PUBMED Abstract]

  3. Guha N, Warnakulasuriya S, Vlaanderen J, et al.: Betel quid chewing and the risk of oral and oropharyngeal cancers: a meta-analysis with implications for cancer control. Int J Cancer 135 (6): 1433-43, 2014.[PUBMED Abstract]

  4. Atienza JA, Dasanu CA: Incidence of second primary malignancies in patients with treated head and neck cancer: a comprehensive review of literature. Curr Med Res Opin 28 (12): 1899-909, 2012.[PUBMED Abstract]

  5. Kreimer AR, Johansson M, Waterboer T, et al.: Evaluation of human papillomavirus antibodies and risk of subsequent head and neck cancer. J Clin Oncol 31 (21): 2708-15, 2013.[PUBMED Abstract]

  6. The Health Consequences of Smoking: A Report of the Surgeon General. Atlanta, Ga: U.S. Department of Health and Human Services, CDC, National Center for Chronic Disease Prevention and Health Promotion, Office on Smoking and Health, 2004. Also available online. Last accessed February 4, 2016.[PUBMED Abstract]

  7. National Cancer Institute: Cigars: Health Effects and Trends. Bethesda, MD: U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health, National Cancer Institute, [1998]. Smoking and Tobacco Control Monograph 9. Available online. Last accessed October 16, 2015.[PUBMED Abstract]

  8. IARC Working Group on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans: Smokeless tobacco and some tobacco-specific N-nitrosamines. IARC Monogr Eval Carcinog Risks Hum 89: 1-592, 2007.[PUBMED Abstract]

  9. Lubin JH, Muscat J, Gaudet MM, et al.: An examination of male and female odds ratios by BMI, cigarette smoking, and alcohol consumption for cancers of the oral cavity, pharynx, and larynx in pooled data from 15 case-control studies. Cancer Causes Control 22 (9): 1217-31, 2011.[PUBMED Abstract]

  10. Blot WJ, McLaughlin JK, Winn DM, et al.: Smoking and drinking in relation to oral and pharyngeal cancer. Cancer Res 48 (11): 3282-7, 1988.[PUBMED Abstract]

  11. Altieri A, Bosetti C, Gallus S, et al.: Wine, beer and spirits and risk of oral and pharyngeal cancer: a case-control study from Italy and Switzerland. Oral Oncol 40 (9): 904-9, 2004.[PUBMED Abstract]

  12. Talamini R, La Vecchia C, Levi F, et al.: Cancer of the oral cavity and pharynx in nonsmokers who drink alcohol and in nondrinkers who smoke tobacco. J Natl Cancer Inst 90 (24): 1901-3, 1998.[PUBMED Abstract]

  13. Hashibe M, Sturgis EM: Epidemiology of oral-cavity and oropharyngeal carcinomas: controlling a tobacco epidemic while a human papillomavirus epidemic emerges. Otolaryngol Clin North Am 46 (4): 507-20, 2013.[PUBMED Abstract]

  14. IARC Working Group on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans: Betel-quid and areca-nut chewing and some areca-nut derived nitrosamines. IARC Monogr Eval Carcinog Risks Hum 85: 1-334, 2004.[PUBMED Abstract]

  15. Marron M, Boffetta P, Zhang ZF, et al.: Cessation of alcohol drinking, tobacco smoking and the reversal of head and neck cancer risk. Int J Epidemiol 39 (1): 182-96, 2010.[PUBMED Abstract]

  16. D'Souza G, Kreimer AR, Viscidi R, et al.: Case-control study of human papillomavirus and oropharyngeal cancer. N Engl J Med 356 (19): 1944-56, 2007.[PUBMED Abstract]

  17. Steinau M, Saraiya M, Goodman MT, et al.: Human papillomavirus prevalence in oropharyngeal cancer before vaccine introduction, United States. Emerg Infect Dis 20 (5): 822-8, 2014.[PUBMED Abstract]

  18. Herrero R, Quint W, Hildesheim A, et al.: Reduced prevalence of oral human papillomavirus (HPV) 4 years after bivalent HPV vaccination in a randomized clinical trial in Costa Rica. PLoS One 8 (7): e68329, 2013.[PUBMED Abstract]

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証拠の記述

背景

発生率および死亡率

2008年から2012年にかけて、米国で推定された口腔がんおよび咽頭がんの年齢調整発生率は10万人年当たり11.0例であった。同じ期間の推定死亡率は10万人年当たり2.5例であった。米国における発生率および死亡率は両方とも、女性よりも男性の方が約2.6倍高かった。 [1] 2016年に米国では新たに48,330人が口腔がんおよび咽頭がんと診断され、9,570人がこのがんにより死亡すると推定されている。 [2] 口腔がんは推定発生率の約45%を占め、中咽頭がんは約20%を占める。 [1] 2012年における口腔がんおよび咽頭がんの全世界での年齢標準化(世界標準人口)発生率の推定値は10万人年当たり約7.0例であった;死亡率の推定値は10万人年当たり3.9例であった。 [3] 口腔がんは発生率および死亡率の推定値の約半数を占め、中咽頭がんは発生率および死亡率の推定値の約1/3を占める。口腔がんの割合は、主として飲酒、喫煙、およびbetel quidチューイングや他の噛む製品の消費に差があるため、世界的に大きく異なる。例えば、仏領ギアナにおける2012年の口腔がんの罹患率は0例/100,000人であった;パプアニューギニアにおける罹患率は25例/100,000人であった。中咽頭がんの罹患率も同様に差があるが、それほど大きくはない;2012年の罹患率は多くの国で0例/100,000人で、バングラデシュでは約9例/100,000人であった。 [3]

口腔がんには、舌、歯肉、口腔底、および口の他の部分のがんが含まれる。米国において、中咽頭がんは最も一般的な咽頭がんである。 [1] 口腔粘膜内層から発生する扁平上皮がんは、口腔および中咽頭における腫瘍の90%以上を占める。白板症、紅板症、および紅色肥厚症は前がん病変であると考えられるが、ほとんどはがんに進行しない。 [4]

治療後の長期的な結果に影響を与える最も重要な因子は、診断時の病期であるが、全治療成績は病期および部位に依存する。限局性の口腔がんおよび咽頭がんは、約83%という非常に優れた5年生存率を期待できるが、所属リンパ節転移を有する患者の5年生存率はわずかに約62%である;遠隔転移を来した患者の5年生存率は約38%である。 [2] 口腔がんおよび中咽頭がんについて、病期別の個々の生存率は利用できない。

口腔がんおよび中咽頭がんのリスク増大の十分な証拠が得られている因子

タバコ使用

口腔がんおよび中咽頭がんのほとんどの症例で、タバコ使用が関与している。 [5] 全形態のタバコ使用(紙巻きタバコ、パイプ、葉巻、嗅ぎタバコ、噛みタバコ、グトゥカー[betel quidにタバコを加えたもの]のほか、有煙および無煙タバコ製品)が、これらのがんのリスクを増大させる。 [6] 疫学的研究では、紙巻きタバコ喫煙者は生涯非喫煙者と比較して口腔がんおよび中咽頭がんによる死亡率が高いことが一貫して実証されており、一般的なコンセンサスでは因果関係があるとされている。大規模コホート研究において、紙巻きタバコのみ喫煙する現在喫煙者における口腔がんまたは中咽頭がんの相対リスクは、生涯非喫煙者と比較して男性で約10倍高く、女性で約5倍高いことが観察された。 [6] しかしながら、他の疫学的研究では、リスクの増加がより小さいものもより大きいものも観察されており、解剖学的位置によって変動がみられた。グトゥカーチューイングは、中国やインドを含む南アジアおよび東南アジアの多くの国々で一般的であり、口腔がんと中咽頭がんの両方の重要な危険因子である。 [5]

飲酒

飲酒は、口腔がんおよび中咽頭がん発生の独立した主要な危険因子である。 [7] ほとんどの疫学的研究では、1日当たりの飲酒量の増加とともにリスクの増加が実証されており、飲酒しない人と比べて1日5杯以上飲酒する個人ではリスクの増加が5倍を超える。 [8] 喫煙による交絡を調整した研究のほか、非喫煙者を対象にした研究においても関連が観察されている。 [7] ビールおよびハードリカーの摂取はワインの摂取より高リスクであるという意見がある。 [9]

喫煙および飲酒

口腔がんおよび中咽頭がんのリスクは飲酒と喫煙の両方の消費量が多い個人で最も高い。 [8] 両方の危険因子が認められる場合の口腔がんおよび中咽頭がんのリスクは、単純な相乗効果よりも典型的に約2~3倍高くなる。 [9] 1件のケースコントロール研究において、1日当たり2パック以上喫煙し、5杯以上飲酒する個人では、喫煙も飲酒もしない個人と比較して口腔がんまたは中咽頭がんを発症するリスクが35倍をわずかに超えていた。 [9]

betel quidチューイング

betel quidにはキンマの葉、ビンロウジ、および石灰が含まれている;グトゥカーはタバコが加えられたbetel quidである。betel quidチューイングおよびグトゥカーチューイングはどちらも口腔がんおよび中咽頭がんのリスクを高める。 [5] [10] 噛まれたbetel quid内の発がん成分はビンロウジから生じる。 [5]

相対リスクは一般的に、betel quid単独よりもグトゥカーの方が強い。 [10] インド亜大陸で実施された口腔がん研究のメタアナリシスにより、グトゥカーチューイングでリスクの統計的に有意な8倍の増加が算出され、betel quidチューイングでリスクの統計的に有意な2倍の増加が算出された。中国または台湾で実施された複数の研究で、betel quidチューイングで口腔がんリスクの統計的に有意な10倍の増加が実証された。インド亜大陸で実施された中咽頭がん研究のメタアナリシスにより、グトゥカーチューイングでリスクの統計的に有意な4倍の増加が算出され、betel quidチューイングでリスクの統計的に有意な2倍の増加が算出された。 [10] 頭頸部がん(亜部位の指定なし)に関する研究により、リスクの増加がチューイングの頻度および期間と正の相関を示すことが示唆されている。 [5]

口腔がんおよび中咽頭がんのリスク低下の十分な証拠がある介入

禁煙

禁煙により、口腔がんおよび中咽頭がんの発生リスクは5~9年以内に約50%低下し [11] 、20年以内に非喫煙者と同等のがんリスクに戻る。 [11]

歯科医師は、禁煙のための薬理学的介入および行動的介入の全般にかかわることが可能である。 [12] ある研究では、歯科医師からタバコをやめるように忠告されたと報告したのは喫煙者のうちわずか25%で [13] 、内科医から忠告を受けた喫煙者の割合より低いことが示されている。

口腔がんおよび中咽頭がんのリスク低下の証拠が不十分な介入

禁酒

アルコールは用量依存的に口腔がんおよび中咽頭がんと関連しているため [9] [14] [15] [16] 、禁酒または節酒により発生率が低下すると考えられている。しかしながら、アルコール摂取をやめた個人で口腔がんおよび中咽頭がんが減少するという証拠は不十分である。 [11] ほとんどの研究で、禁酒からの時間が長くなるにつれて口腔がんのリスクは低下することが示唆されている;8件の研究に関する1件のメタアナリシスにより、現在飲酒者と比較して禁酒から20年以上経過している人では統計的に有意な35%のリスク低下(95%信頼区間[CI]、0.26-0.78)が観察された。中咽頭がんのみを扱ったデータは利用できないが、中咽頭がんと少なくとも他の1つの咽頭がんについて調査している研究により、口腔がんにおけるよりもリスクの低下は小さかったことが実証されている。 [11]

中咽頭がんのリスク増大の十分な証拠が得られている因子

ヒトパピローマウイルス(HPV)感染

HPV 16感染は中咽頭がんの十分な(ただし、必要ではない)原因である。 [17] しかしながら、HPV 16感染はHPV関連中咽頭がんの85%以上で認められる。 [8] 血清または組織のいずれかにおいてHPV 16陽性であった症例の5件のケースコントロール研究のメタアナリシスで、中咽頭がんに対して4.3(95%CI、2.1-8.9)のオッズ比が算出された。 [18] 1件のケースコントロール研究において、HPV 16血清状態と中咽頭がん間で観察された強力な関連は、喫煙や飲酒におけるようなさまざまなレベルでの差は認められなかった。 [19]

ごく一部の中咽頭がんでは、HPV 18など、他の高リスクHPVサブタイプも発見されている。 [19] [20] HPV 18の子宮頸がんとの関連を考慮すると、HPV 18は中咽頭がんのリスクも同様に増加させると考えられる。 [20]

中咽頭がんのリスク低下の証拠が不十分な介入

HPV 16および他の高リスクサブタイプに対するワクチン接種

HPV 16およびHPV 18に対するワクチン接種は、接種後4年以内ではHPV 16/18の口腔感染の90%以上を予防することが示されている。 [21] 比較的最近のワクチン接種の採用と個人が接種を受ける年齢を考慮した場合、若年でのワクチン接種によってHPV関連中咽頭がんのリスクが中年以降に実質的に低くなるという証拠はまだ得られていない。また、中咽頭がんが発症しやすい年齢でワクチン接種を受けた場合に発生率または死亡率が低下するかどうかを調査したデータも得られていない。


参考文献
  1. Howlader N, Noone AM, Krapcho M, et al., eds.: SEER Cancer Statistics Review, 1975-2012. Bethesda, Md: National Cancer Institute, 2015. Also available online. Last accessed February 8, 2016.[PUBMED Abstract]

  2. American Cancer Society: Cancer Facts and Figures 2016. Atlanta, Ga: American Cancer Society, 2016. Available online. Last accessed January 14, 2016.[PUBMED Abstract]

  3. Ferlay J, Soerjomataram I, Ervik M, et al.: GLOBOCAN 2012 v1.0, Cancer Incidence and Mortality Worldwide. Lyon, France: International Agency for Research on Cancer, 2013. IARC CancerBase No. 11. Available online. Last accessed February 2, 2016.[PUBMED Abstract]

  4. Slootweg PJ, Eveson JW: Tumours of the oral cavity and oropharynx. In: Barnes L, Evenson J, Reichart P, et al., eds.: Pathology and Genetics of Head and Neck Tumours. Lyon, France: IARC Press, 2005. World Health Organization Classification of Tumours, 9, pp 163-208. Also available online. Last accessed October 16, 2015.[PUBMED Abstract]

  5. IARC Working Group on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans: Betel-quid and areca-nut chewing and some areca-nut derived nitrosamines. IARC Monogr Eval Carcinog Risks Hum 85: 1-334, 2004.[PUBMED Abstract]

  6. Cancer. In: The Health Consequences of Smoking: A Report of the Surgeon General. Atlanta, Ga: U.S. Department of Health and Human Services, CDC, National Center for Chronic Disease Prevention and Health Promotion, Office on Smoking and Health, 2004, pp 35-360. Also available online. Last accessed October 16, 2015.[PUBMED Abstract]

  7. Goldstein BY, Chang SC, Hashibe M, et al.: Alcohol consumption and cancers of the oral cavity and pharynx from 1988 to 2009: an update. Eur J Cancer Prev 19 (6): 431-65, 2010.[PUBMED Abstract]

  8. Huber MA, Tantiwongkosi B: Oral and oropharyngeal cancer. Med Clin North Am 98 (6): 1299-321, 2014.[PUBMED Abstract]

  9. Blot WJ, McLaughlin JK, Winn DM, et al.: Smoking and drinking in relation to oral and pharyngeal cancer. Cancer Res 48 (11): 3282-7, 1988.[PUBMED Abstract]

  10. Guha N, Warnakulasuriya S, Vlaanderen J, et al.: Betel quid chewing and the risk of oral and oropharyngeal cancers: a meta-analysis with implications for cancer control. Int J Cancer 135 (6): 1433-43, 2014.[PUBMED Abstract]

  11. Marron M, Boffetta P, Zhang ZF, et al.: Cessation of alcohol drinking, tobacco smoking and the reversal of head and neck cancer risk. Int J Epidemiol 39 (1): 182-96, 2010.[PUBMED Abstract]

  12. Mecklenburg RE, Christen AG, et al.: How to Help Your Patients Stop Using Tobacco: a National Cancer Institute Manual for the Oral Health Team. Bethesda, Md: National Institutes of Health, National Cancer Institute, 1993.[PUBMED Abstract]

  13. Martin LM, Bouquot JE, Wingo PA, et al.: Cancer prevention in the dental practice: oral cancer screening and tobacco cessation advice. J Public Health Dent 56 (6): 336-40, 1996 Fall.[PUBMED Abstract]

  14. Macfarlane GJ, Zheng T, Marshall JR, et al.: Alcohol, tobacco, diet and the risk of oral cancer: a pooled analysis of three case-control studies. Eur J Cancer B Oral Oncol 31B (3): 181-7, 1995.[PUBMED Abstract]

  15. La Vecchia C, Tavani A, Franceschi S, et al.: Epidemiology and prevention of oral cancer. Oral Oncol 33 (5): 302-12, 1997.[PUBMED Abstract]

  16. Bagnardi V, Blangiardo M, La Vecchia C, et al.: Alcohol consumption and the risk of cancer: a meta-analysis. Alcohol Res Health 25 (4): 263-70, 2001.[PUBMED Abstract]

  17. Kreimer AR, Johansson M, Waterboer T, et al.: Evaluation of human papillomavirus antibodies and risk of subsequent head and neck cancer. J Clin Oncol 31 (21): 2708-15, 2013.[PUBMED Abstract]

  18. Hobbs CG, Sterne JA, Bailey M, et al.: Human papillomavirus and head and neck cancer: a systematic review and meta-analysis. Clin Otolaryngol 31 (4): 259-66, 2006.[PUBMED Abstract]

  19. D'Souza G, Kreimer AR, Viscidi R, et al.: Case-control study of human papillomavirus and oropharyngeal cancer. N Engl J Med 356 (19): 1944-56, 2007.[PUBMED Abstract]

  20. Steinau M, Saraiya M, Goodman MT, et al.: Human papillomavirus prevalence in oropharyngeal cancer before vaccine introduction, United States. Emerg Infect Dis 20 (5): 822-8, 2014.[PUBMED Abstract]

  21. Herrero R, Quint W, Hildesheim A, et al.: Reduced prevalence of oral human papillomavirus (HPV) 4 years after bivalent HPV vaccination in a randomized clinical trial in Costa Rica. PLoS One 8 (7): e68329, 2013.[PUBMED Abstract]

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本要約の変更点(02/04/2016)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

証拠の記述

新規症例数および死亡数の推定値に関する統計を2016年度用に更新(引用、参考文献2としてAmerican Cancer Society)。

本要約はPDQ Screening and Prevention Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

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本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、口腔がんおよび中咽頭がんの予防について包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Screening and Prevention Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:


  • 会議での議論、

  • 本文の引用、または

  • 既に引用されている既存の記事との入れ替え、または既存の記事の更新。

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

証拠レベル

本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Screening and Prevention Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

本要約の使用許可

PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。

本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

National Cancer Institute: PDQ® Oral Cavity and Oropharyngeal Cancer Prevention.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Date last modified <MM/DD/YYYY>.Available at: http://www.cancer.gov/types/head-and-neck/hp/oral-prevention-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。

免責条項

これらの要約内の情報は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。

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