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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

肺がんのスクリーニング(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2017-06-15
    翻訳更新日 : 2017-08-22

Lung Cancer (PDQ®): Screening PDQ Screening and Prevention Editorial Board

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、肺がんのスクリーニングについて、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。


本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Screening and Prevention Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

肺がん 疾患のスクリーニング

概要

肺がんの予防小細胞肺がんの治療非小細胞肺がんの治療、およびがんのスクリーニング(検診)と予防の研究に関する証拠レベルについては、別のPDQ要約を参照できるようにしてある。

スクリーニングに関連する有益性の証拠

低線量ヘリカルコンピュータ断層撮影法によるスクリーニング

有益性

1件の大規模ランダム化試験により、30パック-年以上の喫煙歴があり、前喫煙者の場合は禁煙してから15年以内の55~74歳の個人にスクリーニングを実施することにより、肺がん死亡率が20%(95%信頼区間[CI]、6.8-26.7;P = 0.004)低下し、全原因死亡率が6.7%(95%CI、1.2-13.6;P = 0.02)低下すると報告された。更新された解析により、肺がん死亡率の推定減少は16%であると示された(95%CI、5-25)。 [2]

影響の大きさ:肺がん特異的死亡率における16%の相対的低下。


    研究デザイン

    :1件のランダム化比較試験から得られた証拠。

    内部妥当性

    :良好。

    一貫性

    :該当せず-現在までのところ、1件のランダム化試験。

    外部妥当性

    :普通。

有害性

固い証拠によると、低線量ヘリカルコンピュータ断層撮影法によるスクリーニングで陽性となったすべての検査のうち約96%は、肺がんの診断に至らない。 [1] 偽陽性の検査結果により、侵襲性の高い不必要な診断検査を受けることになりうる。

影響の大きさ:大規模ランダム化試験の所見に基づくと、スクリーニングごとの平均偽陽性率は23.3%であった。スクリーニング結果で偽陽性となった全体の計0.06%が、スクリーニングの陽性結果時に診断検査として実施された侵襲的手技の後に重大な合併症を引き起こした。3回にわたるスクリーニングの間に、肺がんではない被験者の1.8%は、陽性のスクリーニング結果に続いて侵襲的な手技を行った。


    研究デザイン

    :1件のランダム化比較試験から得られた証拠。

    内部妥当性

    :良好。

    一貫性

    :良好。

    外部妥当性

    :普通。

スクリーニングに関連した有益性が認められない証拠

胸部X線および/または喀痰細胞診によるスクリーニング

有益性

固い証拠によると、胸部X線および/または喀痰細胞診によるスクリーニングは一般集団および喫煙経験者における肺がんによる死亡率を低下させない。

影響の大きさ:該当せず。


    研究デザイン

    :複数のランダム化比較試験。

    内部妥当性

    :良好。

    一貫性

    :良好。

    外部妥当性

    :良好。

有害性

偽陽性の検査結果

固い証拠によると、胸部X線スクリーニングで陽性となったすべての検査のうち少なくとも95%は、肺がんの診断に至らない。偽陽性の検査結果により、侵襲性の高い不必要な診断検査を受けることになる。


    研究デザイン

    :複数のランダム化比較試験。

    内部妥当性

    :良好。

    一貫性

    :良好。

    外部妥当性

    :良好。

過剰診断

固い証拠によると、胸部X線および/または喀痰細胞診によるスクリーニングで検出された肺がんのうち、わずかであるものの、無視できない割合が過剰に診断されたがんであると思われる;過剰診断の大きさは5~25%のようである。これらのがんによって、不必要な診断的検査を受け、さらに不必要な治療を受けることになる。診断的検査および治療の有害性は、長期間のおよび/または重度の喫煙者ではリスクを増大させる喫煙に関連する併存疾患のために発生頻度が最も高くなる。

影響の大きさ:スクリーニングを受ける集団やスクリーニングレジメンの特徴に応じて、5~25%。


    研究デザイン

    :複数のランダム化比較試験。

    内部妥当性

    :良好。

    一貫性

    :良好。

    外部妥当性

    :良好。

参考文献
  1. Aberle DR, Adams AM, Berg CD, et al.: Reduced lung-cancer mortality with low-dose computed tomographic screening. N Engl J Med 365 (5): 395-409, 2011.[PUBMED Abstract]

  2. Pinsky PF, Church TR, Izmirlian G, et al.: The National Lung Screening Trial: results stratified by demographics, smoking history, and lung cancer histology. Cancer 119 (22): 3976-83, 2013.[PUBMED Abstract]

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証拠の記述

背景

発生率および死亡率

肺がんは、米国では3番目によくみられる非皮膚性のがんの型であり、男女ともにがんによる死亡原因の首位である。2017年だけでも116,990人の男性および105,510人の女性が肺がんと診断され、84,590人の男性および71,280人の女性がこの疾患により死亡すると推定されている。肺がんの死亡率は男女ともここ数十年間にわたり急速に増大していたが、男性の死亡率は1991年から低下が続いている。2010年から2014年まで、男性の死亡率は1年当たり3.5%ずつ低下しており、女性の死亡率は年当たり2%ずつ低下している。 [1]

危険因子

肺がん(他の多数のがんと同様に)の最も重要な危険因子はタバコの使用である。 [2] [3] 疫学的データおよび前臨床動物実験データにより、タバコ喫煙は肺がんの主要な原因であることが明確に確立されている。1960年代、英国および米国で全国調査報告が発表され、喫煙のがんリスクが国民の注目を大きく集めて以来、この因果関係は広く認識されている。 [3] タバコ喫煙に起因すると推定される肺がんの割合は、男性で90%、女性で78%である。

肺がんリスクの増加または低下に関連する因子の詳細な記述に関する詳しい情報については、肺がんの予防に関するPDQ要約を参照のこと。

スクリーニングに関連する有益性の証拠

低線量ヘリカルコンピュータ断層撮影法によるスクリーニング

低線量ヘリカルコンピュータ断層撮影法(LDCT)を含む新しい技術を用いた、肺がんスクリーニングを改善するための非常な努力がなされている。 [4] [5] LDCTは胸部単純撮影より感度が高いことが示された。Early Lung Cancer Action Project(ELCAP)では [5] 、LDCTは胸部X線写真のほぼ6倍多くのI期肺がんを発見し、これらの腫瘍の大部分は直径1cm以下であった。

1件の系統的解析 [6] では、1993年から2004年に60人から5,201人の参加者を対象に実施されたLDCTの13件の観察研究がまとめられた。一部の日本の研究には非喫煙者が含められたが、他の研究は現在および前喫煙者に限定された。結節発見のばらつき - 3~51% - は、以下のいくつかの因子が原因の可能性がある:


  • 結節の定義(一部の研究では大きさの閾値が必要とされた)。

  • CT技術(薄いスライス画像の方がより多くの小さい結節を発見できる)。

  • 風土性肉芽腫性疾患の地域差。

全体では、スクリーニングを受けた参加者の1.1~4.7%に肺がんが診断された;これらの診断のほとんどが早期疾患であった。 [6]

National Lung Screening Trial(NLST)が完了した現在では、LDCTを用いたスクリーニングにより、30パック-年以上の喫煙歴のある喫煙経験者および禁煙してから15年以内の前喫煙者における肺がん死亡リスクを低下できるという証拠がある。NLSTには米国各地の33施設で行われた。参加者は、ランダム化時に55~74歳で、少なくとも30パック-年の喫煙歴があり、前喫煙者の場合は禁煙してから15年以内の個人が適格とされた。計53,454人の個人が登録された;26,722人がLDCTによるスクリーニングを受ける群にランダムに割り付けられ、26,732人が胸部X線によるスクリーニングを受ける群にランダムに割り付けられた。LDCTで発見された非石灰化結節(いずれの方向で測っても4mm以上)および非石灰化結節または腫瘤を示すX線像が陽性に分類されたが、放射線科医は、3回のスクリーニング検査で非石灰化結節が安定していれば、最後の検査を陰性とする選択ができた。LDCT群はX線群よりもスクリーニング検査での陽性率が実質的に高かった(1回目、27.3% vs 9.2%;2回目、27.9% vs 6.2%;3回目、16.8% vs 5.0%)。全体として、LDCT群の参加者の39.1%およびX線群の16.0%では、少なくとも1回のスクリーニングで結果が陽性であった。スクリーニングで陽性となった参加者の偽陽性率は、LDCT群で96.4%および胸部X線群で94.5%であった。これは3回すべての検査で一貫していた。 [7]

LDCT群では、スクリーニング検査で陽性であった後、649例のがんが診断され、スクリーニング検査で陰性であった後に44例、スクリーニングを受けなかった、あるいはスクリーニング期間完了後に診断を受けた参加者では367例のがんが診断された。X線群では、スクリーニング検査で陽性であった後、279例のがんが診断され、スクリーニング検査で陰性であった後に137例、スクリーニングを受けなかった、あるいはスクリーニング期間完了後に診断を受けた参加者では525例のがんが診断された。LDCT群で356例および胸部X線群で443例が肺がんにより死亡し、肺がんによる死亡率はLDCTスクリーニングによって20%(95%信頼区間[CI]、6.8-26.7)相対的に低下した。 [7] 更新された解析により、肺がん死亡率の推定減少は16%であると示された(95%CI、5-25)。 [8] 全体では、死亡率は6.7%(95%CI、1.2-13.6)低下した。肺がんによる1例の死亡を防止するために必要となるLDCTスクリーニングの数は320であった。 [7]

NLSTの結果が発表されて以来、LDCTを用いた肺がんスクリーニングによってどのような個人が最も便益が得られるかについての理解が深まっている。 [9] [10] [11] ある研究者グループでは、スクリーニングによって誰に便益が得られるかを評価する個人用のリスクモデルが開発されている。このモデルでは、NLSTの選択基準として使用されていない追加の基準(慢性閉塞性肺疾患の既往、肺がんの個人歴または家族歴およびより詳細な喫煙歴など)が用いられた。NLSTの選択基準とは対照的な試験基準を用いて、がん患者の見逃しもなく、より多くの人がスクリーニングに適格となるであろう。 [10] 2つ目のグループではNLSTデータが再解析され、各患者に肺がんが発生するリスクを計算し、各患者の肺がん死亡率が推定された。 [11] 研究者らは続いてNLST参加者をリスクに基づいて5つの集団に分類した。低リスク群において1人の肺がん死を回避するためにスクリーニングが必要な人数は5,276人であった;高リスク群では1人の肺がん死を回避するためにスクリーニングが必要な人数は161人であった。さらに、偽陽性スクリーニングの数は、リスクが五分位最下位群の1,648から最上位群の65に減少した。リスクが高い3つの五分位群でスクリーニングによる死亡数減少の88%を占めた一方、リスクが五分位最下位群では死亡数減少の1%しか占めていなかった。これらの研究により、スクリーニングで最も便益が得られる患者集団の決定が改善され、偽陽性を減少させられる可能性があり、こうした評価に付随する有害事象に関係した潜在的な悪影響を減少させられることが示されている。個人のリスクを計算することで得られる別の有益性の1つは、患者がスクリーニングを受診するかどうかを決定できるように、患者の所見を共有化した意思決定プロセスに組み入れることができる点である。 [11]

LDCTのこの他のランダム化臨床試験(RCT)がいくつかの国で進行中である。 [12] Dutch-Belgian Randomized Lung Cancer Screening Trial(またはNELSON試験)は最大規模である。この研究は、対照群が胸部X線スクリーニングを受けないという点でNLSTと異なる。ヨーロッパにおける他の小規模試験でもまた、非スクリーニング群がLDCTと比較されている。こうした小規模試験はエンドポイントとして死亡率を評価する検出力はないようであるが、これらの研究の知見をNELSON試験のデータ(データが十分に揃ってから)と統合する取り組みが進行中である。これらの研究によって、NLSTの知見との一貫性を評価できる可能性もある。進行中の試験から収集されたデータに加えて、費用対効果や生活の質のほか、NLSTに登録した個人よりも年齢の低い個人や喫煙への曝露が30パック-年に満たない個人に対してもスクリーニングの利益があるかどうかなど、肺がんスクリーニングにおける他の重要な問題を調査するために、NLSTのデータが解析される予定である。米国のProstate, Lung, Colorectal and Ovarian(PLCO)Cancer Screening Trialからのデータにより、スクリーニングを実施しない場合、20~29パック-年の喫煙歴を有する現在喫煙者に対する肺がん死のリスクは、禁煙後15年以内で30パック超-年の喫煙歴を有する前喫煙者のリスクと変わらないことが示唆されている(ハザード比、1.07;CI、0.75-1.5)。前喫煙者群のリスクはこの現在喫煙者群(米国のPreventive Services Task ForceによりLDCTスクリーニングが推奨されている)のリスクと変わらなかったものの、前喫煙者群におけるスクリーニングの効力は不明である。 [13]

[注: 患者と医師が肺がんに対するLDCTスクリーニングの有益性と有害性を評価しやすくするための指針が発表されている。 ]

スクリーニングと禁煙

肺がんスクリーニングの対象集団は一般集団と比較して現在喫煙者の割合が高い。肺がんスクリーニングプログラムは潜在的に禁煙の可能性に影響することがあり、理論的にはスクリーニングで肺の異常が発見されたスクリーニング受診者における禁煙を推進する。その反面、スクリーニングで肺の異常を示す証拠が認められなかった受診者では、スクリーニングは禁煙の妨害にもなりうる。デンマークのLung Cancer Screening Trialは、50~70歳で少なくとも20pack-yearの喫煙歴を有する参加者におけるLDCTと介入なしとを比較したランダム化試験である。 [15] 禁煙した参加者の割合が5年間毎年の追跡調査で監視され、ベースライン時(CT群と対照群それぞれで23%の元喫煙者)から5年後の追跡調査(両群で43%の元喫煙者)まで2群間で実質的に同じままであった。これら2つのランダム化群の比較で、禁煙の可能性に対するCTスクリーニングプログラムの正味の効果は全く認められなかったことが示されている。

別の報告ではNLSTからのデータが用いられ、スクリーニングの結果が禁煙の可能性に影響するかどうかの問題が扱われた。 [16] NLSTではCTと胸部X線が比較され、両群のデータをプールして異常な所見が禁煙の可能性に及ぼす影響について調査された。異常な所見が認められなかった被検者と比較して、スクリーニング検査で肺がんが疑われた(ただし、肺がんではなかった)現在喫煙者は、1年後に禁煙している可能性が有意に高かった。肺がんの疑いがない大きな肺の異常または軽度の異常が認められた被検者では、禁煙との関連は弱く、一様に統計的に有意ではなかった。

これら2件の研究の結果から、CTプログラムが禁煙に及ぼす正味の影響は仮に存在しても少ないが [15] 、肺がんが疑われる所見が得られた現在喫煙者では禁煙の可能性が高まることがあると示唆されている。 [16] これは、特にスクリーニングプログラムに組み込まれている禁煙介入がどのように禁煙を助長するかの評価とともに、解明する必要がある重要な研究分野である。

スクリーニングに関連した有益性が認められない証拠

胸部X線および/または喀痰細胞診によるスクリーニング

肺がんスクリーニングの問題は、肺がんの発生率と死亡率が上昇し、介入が必要であると示されていた1950年代にさかのぼる。出現しつつある肺がんの問題を受けて、胸部画像検査に関する5件の研究(このうち、2件は対照試験であった)が1950年代から1960年代に実施された。 [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] 2件の研究では喀痰細胞診も行われた。 [17] [18] [19] [20] [21] これらの研究の結果からはスクリーニングの全般的な有益性は示唆されなかったが、研究デザインに制限があったため、これらの研究からは決定的な証拠は提供されなかった。

1970年代初頭に、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)からCooperative Early Lung Cancer Detection Program [25] に研究資金が提供され、このプログラムでは男性喫煙者における肺がん死亡率を低下させるための胸部X線画像と喀痰細胞診によるスクリーニングの能力を評価するようにデザインされた。プログラムは別個の3件のRCTで構成され、各試験には過去1年間に少なくとも1パック/日の喫煙をしていた45歳以上の男性参加者約10,000人が登録していた。研究はそれぞれ、Mayo Clinic [26] [27] [28] 、Johns Hopkins University [29] [30] [31] 、およびMemorial Sloan-Ketteringで実施された。 [31] [32] [33] [34] HopkinsおよびSloan-Kettering研究では同じデザインが用いられた:介入群にランダムに割り付けられた個人は4ヵ月ごとに喀痰細胞診および年1回の胸部画像検査を受け、対照群にランダムに割り付けられた個人は年1回の胸部画像検査を受けた。どちらの研究もスクリーニングによる肺がん死亡率の低下は観察されなかった。 [31] 2件の研究では、喀痰細胞診は、年1回の胸部X線レジメンに付加する場合、頻繁に行っても有益性は示さないものとして解釈された。

Mayo Clinic研究(Mayo Lung Project、またはMLPとして知られる)のデザインは他の2件と異なっていた。潜在的な参加者全員が胸部画像検査と喀痰細胞診によるスクリーニングを受け、肺がんを有することが明らかになったか、疑われる個人のほか、健康状態が不良な個人は除外された。残りの個人が、6年間4ヵ月ごとに胸部画像検査と喀痰細胞診を受ける介入群、または年1回同じ検査を受けるように試験登録時に一度だけ推奨された対照群にランダムに割り付けられた。肺がん死亡率の低下は観察されなかった。MLPは、1970年代に胸部X線検査と喀痰細胞診による集中的なスクリーニングレジメンに有益性は認められないものとして解釈された。

胸部画像検査を用いた肺がんスクリーニングの1件のRCTが1970年代にヨーロッパで実施された。チェコスロバキアの研究は、生涯のタバコ消費が少なくとも15万本以上で40~64歳の現在喫煙者男性6,364人の有病率のスクリーニング(胸部画像検査と喀痰細胞診)から開始された。 [35] [36] 有病率のスクリーニングの結果として肺がんを診断された18人を除くすべての参加者が、次の2群の1つにランダムに割り付けられた:3年間、年2回のスクリーニングを受ける介入群、または3年目にのみスクリーニングを受ける対照群。研究者による報告では、介入群の肺がん死は19例、対照群では13例であり、頻繁なスクリーニングは不要であると結論付けられた。

1990年になっても、医学界では依然として、(従来の胸部X線を用いる)胸部画像検査によるスクリーニングと肺がん死亡率との関係が把握されていなかった。以前の研究では有益性が示されなかったが、所見は統計的検出力が不足していたために最終的な結論を下すことができなかった。十分な統計的検出力をもつ多相性試験、PLCO Cancer Screening Trial [37] が1992年に開始された。PLCOには女性(50%)や非喫煙者(45%)を含む55~74歳の参加者154,901人が登録した。半数がスクリーニング群にランダムに割り付けられ、残りの半数は通常の医療を受けるように助言された。PLCOでは肺がん死亡率における20%の低下を検出するため、検出力は90%とされた。

PLCOの肺がんスクリーニングでは、年1回の1方向(背腹方向)胸部X線撮影により、通常の医療と比較して肺がん死亡率を低下させることができるかという問題が扱われた。研究開始時は、スクリーニングにランダムに割り付けられたすべての参加者がベースライン時と年1回の胸部X線撮影を3回受けるように勧められたが、プロトコルは最終的に非喫煙者に対しては3回のみのスクリーニングに変更された。13年の追跡時に、介入群では1,213例の肺がん死亡が観察されたのに対し、通常の医療群では1,230例の肺がん死亡が観察された(死亡の相対リスク、0.99;95%CI、0.87-1.22)。サブアナリシスでは、性別または喫煙状態による鑑別的効果は示されなかった。 [37]

証拠が十分かつ一貫しているほか、PLCO試験では有益性が観察されなかったことから、胸部X線撮影および/または喀痰細胞診による肺がんスクリーニングは性別または喫煙状態に関係なく、肺がん死亡率を低下させないと結論付けるのが妥当である。


参考文献
  1. American Cancer Society: Cancer Facts and Figures 2017. Atlanta, Ga: American Cancer Society, 2017. Available online. Last accessed May 25, 2017.[PUBMED Abstract]

  2. The Health Consequences of Smoking: A Report of the Surgeon General. Atlanta, Ga: U.S. Department of Health and Human Services, CDC, National Center for Chronic Disease Prevention and Health Promotion, Office on Smoking and Health, 2004. Also available online. Last accessed February 9, 2017.[PUBMED Abstract]

  3. Smoking and Health: Report of the Advisory Committee to the Surgeon General of the Public Health Service. Washington, DC: US Department of Health, Education, and Welfare, 1965. PHS Publ No 1103.[PUBMED Abstract]

  4. Ahrendt SA, Chow JT, Xu LH, et al.: Molecular detection of tumor cells in bronchoalveolar lavage fluid from patients with early stage lung cancer. J Natl Cancer Inst 91 (4): 332-9, 1999.[PUBMED Abstract]

  5. Henschke CI, McCauley DI, Yankelevitz DF, et al.: Early Lung Cancer Action Project: overall design and findings from baseline screening. Lancet 354 (9173): 99-105, 1999.[PUBMED Abstract]

  6. Bach PB, Mirkin JN, Oliver TK, et al.: Benefits and harms of CT screening for lung cancer: a systematic review. JAMA 307 (22): 2418-29, 2012.[PUBMED Abstract]

  7. Aberle DR, Adams AM, Berg CD, et al.: Reduced lung-cancer mortality with low-dose computed tomographic screening. N Engl J Med 365 (5): 395-409, 2011.[PUBMED Abstract]

  8. Pinsky PF, Church TR, Izmirlian G, et al.: The National Lung Screening Trial: results stratified by demographics, smoking history, and lung cancer histology. Cancer 119 (22): 3976-83, 2013.[PUBMED Abstract]

  9. Moyer VA; U.S. Preventive Services Task Force: Screening for lung cancer: U.S. Preventive Services Task Force recommendation statement. Ann Intern Med 160 (5): 330-8, 2014.[PUBMED Abstract]

  10. Tammemägi MC, Katki HA, Hocking WG, et al.: Selection criteria for lung-cancer screening. N Engl J Med 368 (8): 728-36, 2013.[PUBMED Abstract]

  11. Kovalchik SA, Tammemagi M, Berg CD, et al.: Targeting of low-dose CT screening according to the risk of lung-cancer death. N Engl J Med 369 (3): 245-54, 2013.[PUBMED Abstract]

  12. Doria-Rose VP, Szabo E: Screening and prevention of lung cancer. In: Kernstine KH, Reckamp KL, eds.: Lung Cancer: A Multidisciplinary Approach to Diagnosis and Management. New York, NY: Demos Medical, 2011, pp 53-72.[PUBMED Abstract]

  13. Pinsky PF, Kramer BS: Lung Cancer Risk and Demographic Characteristics of Current 20-29 Pack-year Smokers: Implications for Screening. J Natl Cancer Inst 107 (11): , 2015.[PUBMED Abstract]

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スクリーニングの有害性

低線量ヘリカルコンピュータ断層撮影法によるスクリーニング

偽陽性の検査結果

偽陽性の検査結果は、肺がんスクリーニングにおいては特に問題がある。肺がんスクリーニングを受ける可能性が最も高い個人、すなわち重度の喫煙者は、特定の診断的検査の候補として望ましくない併存疾患(慢性閉塞性肺疾患や心疾患など)を有する。

低線量ヘリカルコンピュータ断層撮影法(LDCT)を用いた肺がんスクリーニングを評価する場合には、偽陽性検査結果を考慮する必要がある。偽陽性検査は、不安や、経皮的針肺生検または胸腔切開術のような侵襲的な診断的検査につながることがある。偽陽性所見の割合は研究間でかなり異なっており、それは主として陽性スキャンの定義方法(大きさの基準)、断面間で設定されるスライスの厚さ(スライスの厚さが薄いほど多くの結節が検出される)の差および肉芽腫性疾患の有病率が高い地域に被検者が居住しているかどうかが原因である。肺がんに対するコンピュータ断層撮影(CT)スクリーニングの有益性および有害性に関する系統的レビューの報告によると、スクリーニングで発見された結節の経過観察では最も頻繁に追加の画像検査が実施されており、21件のスクリーニング試験でその割合は1~45%近くと大きく異なっていた。ポジトロン放射断層撮影スキャンは2.5~5%の患者に実施された。 [1] スクリーニング試験における非外科的な生検または手技の頻度は0.7~4.4%に及ぶ。生検を受けた個人において、良性所見の結果には著しい変動(6~79%)がみられた。スクリーニング試験においてスクリーニングで発見された結節の外科的切除率は0.9~5.6%である。手術を受けた患者のうち、6~45%は手術中に良性結節を発見されており [2] 、このことは肺がんスクリーニングの潜在的な害悪を示す。National Lung Screening Trial(NLST)では、侵襲的手技および手術に関係した重大な合併症のほとんどが肺がんを診断された患者に発生しており、重大な合併症の発生率は14%であった。また、良性結節を有することが明らかにされた患者における合併症の発生率は、診断的イベント10,000回当たり4.1例の死亡および4.5例の合併症であると推定できる。NLSTの合併症発生率は地域の設定に一般化できない可能性がある;NLSTの参加者は、スクリーニングに適格となる米国の一般集団における喫煙者および前喫煙者の集団よりも年齢が低く、教育水準が高く、現在喫煙者である可能性が低かった(したがって、より健康的であった)。注目すべきこととして、参加者の82%が大規模な学術医療センターで登録し、登録者の76%が米国国立がん研究所指定のがんセンターで検査されていた。このことは、NLSTでは合併症発生率および手術での死亡率(1%)がきわめて低い理由を説明しており、多社会向け政策方針書がNLSTと同等の患者管理資源を有する施設でスクリーニングを実施すべきであると強く推奨するに至った。 [1]

スクリーニングの潜在的な有害性の割合は、肺がんスクリーニングが現実世界で実施される場合に変動しうる。1件の研究において、著者らは、LDCT肺がんスクリーニングプログラムを米国内のVeterans Health Administration(VA)の特定の病院に導入した場合の影響を調査した。 [3] 別の研究では、93,000人の患者が1回のLDCTスクリーニング受診の適格性について評価された:4,246人の患者が基準(2013 U.S. Preventive Service Task Forceの推奨に準拠)を満たした [4] ;適格であった患者のうち、58%の患者がスクリーニングの受診に同意し、50%の患者(n = 2,106)が実際にスクリーニングを受けた。60%の患者では検査で偽陽性となり、56%の患者では継続的なモニタリングを必要とする疑わしい結節が認められ、3.5%の患者では陽性のスクリーニング結果に対して診断的評価を受けた。(初回スクリーニングについてNLSTの患者の27.3%と比較して)偽陽性検査の割合が高かったのは、VAプログラムのスクリーニング陽性結果の定義による可能性があり、VAではCTで発見された結節の管理についてFleischer Societyガイドラインが採用された一方 [5] 、NLSTでは陽性の結節の定義に4mmの絶対カットオフ値が用いられた。 [2] VAのパイロットプログラムで発見された結節のほとんどは4mm以下であった(55%)。しかしながら、現在のところ、LDCT肺がんスクリーニングの結節の管理において一般的に受け入れられているプロトコルは存在していないため、偽陽性の結果における広範な変動率が存在しながら、広くスクリーニングが実施されている可能性が高い。さらに、VAプログラム参加者の41%では意義不明の偶発的所見が認められ、読影した放射線科医により経過観察または追加の評価を要する可能性が高いと報告された。 [3]

過剰診断

あまり知られていない害悪は過剰診断で、これは、もしスクリーニングによって検出されていなければ、臨床的に重要にはならなかったであろう状態の診断である。 [6] 患者ががんと診断されていなければ、その患者は他の競合する併存疾患で死亡していたであろう。LDCTによるスクリーニングを実施する場合、過剰診断は不必要な肺がん診断を招き、これにより手術(例、肺葉切除術)、化学療法、および放射線療法の併用を行う可能性がある。複数の剖検研究により、かなりの数の個人が肺がんよりもむしろそのことにより死亡していることが示唆されている。1件の研究では、剖検時に発見された全肺がんのうち約1/6が生前に臨床的に認知されていなかったことが分かった。 [7] これは過小評価されている可能性がある;剖検の範囲によっては、CTで検出可能な小規模の肺がんの多くが剖検記録には記録されない可能性がある。 [8] 日本の研究は、LDCTを用いたスクリーニングがかなりの量の過剰診断を招きうるというさらなる証拠を提供する。 [9] 肺がんのCTスクリーニングと関連しているであろう過剰診断の程度を明らかにする研究が必要である。しかしながら、1件の研究で、61の肺がんの容積倍増時間が指数モデルと連続CT画像を用いて推定された。病変は以下の3つのタイプに分類された:


  • タイプG(スリガラス様陰影)。

  • タイプGS(中心部に充実部分を有する巣状性スリガラス様陰影)。

  • タイプS(充実性結節)。

平均倍増時間はタイプG、タイプGS、およびタイプSがそれぞれ813日、457日、および149日であった。同研究では、毎年のCTスクリーニングにより、胸部X線では描出不可能であり、過剰診断を示唆する緩除に成長する腺がんが多数同定された。 [10]

5,000人以上の参加者を対象にした1件のスクリーニング試験において、過剰診断と考えられるがんの割合が評価された。過剰診断の代用として容積倍増時間が用いられた。外科的切除前の容積倍増時間が400日以上と計算された患者は、過剰診断されたがんを有するものと考えられた。 [11] 肺がんを最終的に診断された患者の25%はスクリーニングで発見された緩除な結節の基準を満たしたことが研究者らによって明らかにされており、試験におけるがんの1/4は過剰診断されたものであることが示唆された。 [11] 乳がんでも同様の過剰診断の割合が実証されている。この割合は以前の胸部X線スクリーニング研究および他の固形腫瘍と一致している。NLSTにおける過剰診断の割合はまだ計算されていないが、研究のデータから長期の追跡が必要であるものの、胸部X線集団と比較してLDCT集団では約120例多い肺がん症例が持続してみられることが示されている。 [12] LDCTスクリーニングによる過剰診断の追加の証拠が、デンマークのランダム化Lung Cancer Screening Trialで観察された。追跡10年目(最後のスクリーニング検査後5年)に、スクリーニング群では対照群よりもほぼ2倍多くの肺がんが診断された(1,000人年当たり5.1例 vs 2.7例または計4,104人の参加者において、それぞれ肺がん症例100例 vs 53例);ほとんどの肺がんが早期の腺がんであり、2群間でIII期およびIV期がんの数に統計的有意差は認められなかった。 [13]

Mayo Lung Project(MLP)コホートの約20年間の追跡で、胸部X線および喀痰細胞診の集中的レジメンの結果として診断された肺がんの17%が過剰診断されていることが示されている [14] ;介入群では585例の肺がんが診断されたのに対し、通常ケア群では500例が診断された。Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian(PLCO)コホートを13年間追跡した後、介入群では1,696例の肺がんが診断されたのに対し、通常ケア群では1,620例の肺がんが診断された。 [15] このことは、年1回の胸部X線検査の結果として診断されたがんの約6%が過剰診断されたものであると示されているが、この6%という割合は0%と有意差がなかった。

診断的評価の合併症

PLCO [15] において、少なくとも1回以上スクリーニング検査で陽性となり診断的評価を受けた参加者の0.4%が診断的手技に関連した合併症を経験した。69件の合併症の中で最も一般的であったのは、気胸(29%)、無気肺(15%)、および感染症(10%)であった。

肺がん死亡率の増加

MLPの所見から、胸部X線と喀痰細胞診の集中的レジメンでスクリーニングを受けた個人において肺がん死亡率増加の可能性が示唆された。 [16] 20年間の追跡終了時における肺がん死亡率は介入群で死亡1,000例当たり4.4例、通常ケア群で死亡1,000例当たり3.9例であった。この2つの死亡率はお互いに統計的有意差は認められなかった(P = 0.09)。John Hopkins UniversityおよびMemorial Sloan-Kettering研究(相対リスク[RR]、0.88;95%信頼区間[CI]、0.74-1.05)、およびPLCO(RR、0.99;95%CI、0.87-1.22)の介入群ではリスクの増加は示されなかった。

放射線曝露

LDCTスクリーニングによる別の潜在的なリスクは放射線曝露である。LDCTを1回受けた場合の平均曝露は非常に低く、1.5mSvである。3年間のスクリーニングで、NLST参加者は平均で8mSvの放射線(これはスクリーニングとスクリーニングで発見された結節の追加の画像検査のための放射線に相当する)に曝露したと推定されている。放射線曝露およびがん発生に関する以前の取り組みをモデル化すると、NLSTなどのスクリーニングプログラムへの参加者において2,500回のスクリーニングで1例の死亡が起こる可能性が示唆されているが、スクリーニングの便益(320回のスクリーニングで1例の死亡が回避される)の方がリスクをはるかに上回っている。比較的年齢の低い個人および肺がんの明らかなリスクを有さない個人では、スクリーニングによって肺がん死を免れる可能性よりも放射線誘発性の肺がんを経験する可能性の方が高い。 [1]

胸部X線および/または喀痰細胞診によるスクリーニング

上述の報告以外に、喀痰細胞診または喀痰細胞診と胸部X線の併用レジメンに関連した有害性のデータは発表されていない。

PLCO Cancer Screening Trialにおいて、(肺がんスクリーニングで陽性となったすべての結果のうち)偽陽性の割合は98%であった。 [17] 喫煙状態を考慮した場合、(スクリーニング陽性となったすべての結果のうち)偽陽性の割合は、非喫煙者で最も高く(99%超)、現在喫煙者で最も低かった(95%)。喫煙で調整後は、偽陽性の割合に性別による差は認められなかった。


参考文献
  1. Bach PB, Mirkin JN, Oliver TK, et al.: Benefits and harms of CT screening for lung cancer: a systematic review. JAMA 307 (22): 2418-29, 2012.[PUBMED Abstract]

  2. Aberle DR, Adams AM, Berg CD, et al.: Reduced lung-cancer mortality with low-dose computed tomographic screening. N Engl J Med 365 (5): 395-409, 2011.[PUBMED Abstract]

  3. Kinsinger LS, Anderson C, Kim J, et al.: Implementation of Lung Cancer Screening in the Veterans Health Administration. JAMA Intern Med 177 (3): 399-406, 2017.[PUBMED Abstract]

  4. Moyer VA; U.S. Preventive Services Task Force: Screening for lung cancer: U.S. Preventive Services Task Force recommendation statement. Ann Intern Med 160 (5): 330-8, 2014.[PUBMED Abstract]

  5. MacMahon H, Austin JH, Gamsu G, et al.: Guidelines for management of small pulmonary nodules detected on CT scans: a statement from the Fleischner Society. Radiology 237 (2): 395-400, 2005.[PUBMED Abstract]

  6. Black WC: Overdiagnosis: An underrecognized cause of confusion and harm in cancer screening. J Natl Cancer Inst 92 (16): 1280-2, 2000.[PUBMED Abstract]

  7. Chan CK, Wells CK, McFarlane MJ, et al.: More lung cancer but better survival. Implications of secular trends in "necropsy surprise" rates. Chest 96 (2): 291-6, 1989.[PUBMED Abstract]

  8. Dammas S, Patz EF Jr, Goodman PC: Identification of small lung nodules at autopsy: implications for lung cancer screening and overdiagnosis bias. Lung Cancer 33 (1): 11-6, 2001.[PUBMED Abstract]

  9. Marcus PM, Fagerstrom RM, Prorok PC, et al.: Screening for lung cancer with helical CT scanning. Clinical Pulmonary Medicine 9 (6): 323-9, 2002.[PUBMED Abstract]

  10. Hasegawa M, Sone S, Takashima S, et al.: Growth rate of small lung cancers detected on mass CT screening. Br J Radiol 73 (876): 1252-9, 2000.[PUBMED Abstract]

  11. Veronesi G, Maisonneuve P, Bellomi M, et al.: Estimating overdiagnosis in low-dose computed tomography screening for lung cancer: a cohort study. Ann Intern Med 157 (11): 776-84, 2012.[PUBMED Abstract]

  12. Patz EF Jr, Pinsky P, Gatsonis C, et al.: Overdiagnosis in low-dose computed tomography screening for lung cancer. JAMA Intern Med 174 (2): 269-74, 2014.[PUBMED Abstract]

  13. Wille MM, Dirksen A, Ashraf H, et al.: Results of the Randomized Danish Lung Cancer Screening Trial with Focus on High-Risk Profiling. Am J Respir Crit Care Med 193 (5): 542-51, 2016.[PUBMED Abstract]

  14. Marcus PM, Bergstralh EJ, Zweig MH, et al.: Extended lung cancer incidence follow-up in the Mayo Lung Project and overdiagnosis. J Natl Cancer Inst 98 (11): 748-56, 2006.[PUBMED Abstract]

  15. Oken MM, Hocking WG, Kvale PA, et al.: Screening by chest radiograph and lung cancer mortality: the Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian (PLCO) randomized trial. JAMA 306 (17): 1865-73, 2011.[PUBMED Abstract]

  16. Marcus PM, Bergstralh EJ, Fagerstrom RM, et al.: Lung cancer mortality in the Mayo Lung Project: impact of extended follow-up. J Natl Cancer Inst 92 (16): 1308-16, 2000.[PUBMED Abstract]

  17. Hocking WG, Hu P, Oken MM, et al.: Lung cancer screening in the randomized Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian (PLCO) Cancer Screening Trial. J Natl Cancer Inst 102 (10): 722-31, 2010.[PUBMED Abstract]

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説明を受けた上での医学的意思決定

説明を受けた上での医学的意思決定は、がんのスクリーニングを検討している患者に対して、ますます推奨されている。多種多様な意思決定支援が研究されている。(詳しい情報については、がんスクリーニングの概要に関するPDQ要約を参照のこと。)

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本要約の変更点(06/15/2017)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

スクリーニングの有害性

本文に以下の記述が追加された;スクリーニングの潜在的な有害性の割合は、肺がんスクリーニングが現実世界で実施される場合に変動しうる;1件の研究において、著者らは、低線量ヘリカルコンピュータ断層撮影法(LDCT)肺がんスクリーニングプログラムを米国内のVeterans Health Administration(VA)の特定の病院に導入した場合の影響を調査した(引用、参考文献3としてKinsinger et al.)。また本文に以下の記述が追加された;別の研究では、93,000人の患者が1回のLDCTスクリーニング受診の適格性について評価された:4,246人の患者が基準を満たした;適格であった患者のうち、58%の患者がスクリーニングの受診に同意した;50%の患者が実際にスクリーニングを受けた。偽陽性検査の割合が高かったのは、Veterans Health Administrationプログラムのスクリーニング陽性結果の定義による可能性があり、VAではコンピュータ断層撮影で発見された結節の管理についてFleischer Societyガイドラインが採用された一方、National Lung Screening Trialでは陽性の結節の定義に4mmの絶対カットオフ値が用いられた(引用、参考文献4としてMoyerおよび参考文献5としてMacMahon et al.)。

本要約はPDQ Screening and Prevention Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

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本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、肺がんのスクリーニングについて、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Screening and Prevention Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:


  • 会議での議論、

  • 本文の引用、または

  • 既に引用されている既存の記事との入れ替え、または既存の記事の更新。

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

証拠レベル

本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Screening and Prevention Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

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PDQ® Screening and Prevention Editorial Board.PDQ Lung Cancer Screening.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/lung/hp/lung-screening-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389268]

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