医療専門家向け 睡眠障害(PDQ®)

ご利用について

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、睡眠障害の病態生理学および治療について包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

本要約は、編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

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概要

睡眠障害は一般集団の約10~15%に発生し[ 1 ]、状況的ストレス、疾病、加齢、および薬物療法との関連が多くみられる。[ 2 ]がん患者の1/3~1/2が睡眠障害を経験すると推定される。[ 3 ][ 4 ]身体的疾患、疼痛、入院、がんに対する薬物治療およびその他の治療、および悪性疾患による心理学的影響が、がん患者の睡眠パターンを混乱させることがある。[ 5 ]睡眠不足は昼間の気分や動作に悪影響を及ぼす。一般集団においては、持続性不眠は、臨床的不安またはうつ病を発症するリスクが高いことと関連している。[ 6 ]睡眠障害、ひいては睡眠覚醒周期の逆転は、せん妄発症の早期徴候となりうる。(詳しい情報については、せん妄に関するPDQ要約を参照のこと。)十分な睡眠によりがん患者の疼痛耐性を高めることができる。

睡眠はレム睡眠(REM)とノンレム睡眠(NREM)の二相からなる。[ 7 ]「夢を見る睡眠(dream sleep)」として知られているレム睡眠は活動期つまり逆説睡眠相であり、脳は活動中である。ノンレム睡眠は静穏期つまり休息相である。徐波睡眠とも呼ばれているノンレム睡眠は、脳波所見に基づいて、段階的に深くなる4つの睡眠段階に分けられている。

睡眠期は、ノンレムの後にレムが起こるパターンあるいは周期の繰り返しで構成され、1周期は約90分である。7~8時間の睡眠では睡眠周期が4~6回繰り返される。[ 7 ]睡眠覚醒周期は、一種の生得の体内時計または概日リズムに従っている。個々の睡眠パターンの乱れは、概日リズムを乱し、睡眠周期にも障害を与える。[ 8 ]

アメリカ睡眠学会(American Academy of Sleep Medicine)の睡眠障害分類委員会(Sleep Disorders Classification Committee)によって、睡眠障害の主な5つのカテゴリーが以下のように定義されている:[ 9 ]

  1. 入眠障害および睡眠維持障害(不眠症)。
  2. 睡眠関連呼吸疾患(睡眠時無呼吸)。
  3. 過剰睡眠障害(過眠症)。
  4. 睡眠覚醒周期の障害(概日リズム睡眠障害)。
  5. 睡眠、睡眠期または不完全覚醒に随伴する機能障害(睡眠時随伴症)。

特に明記していない場合、本要約には成人に関する証拠と治療について記載している。小児に関する証拠と治療は、成人の場合とかなり異なる可能性がある。小児の治療に関する情報が入手できる場合は、小児に関する情報であることを明記した上でその内容を要約する。

参考文献
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  3. Palesh OG, Roscoe JA, Mustian KM, et al.: Prevalence, demographics, and psychological associations of sleep disruption in patients with cancer: University of Rochester Cancer Center-Community Clinical Oncology Program. J Clin Oncol 28 (2): 292-8, 2010.[PUBMED Abstract]
  4. Savard J, Morin CM: Insomnia in the context of cancer: a review of a neglected problem. J Clin Oncol 19 (3): 895-908, 2001.[PUBMED Abstract]
  5. Berger AM: Update on the state of the science: sleep-wake disturbances in adult patients with cancer. Oncol Nurs Forum 36 (4): E165-77, 2009.[PUBMED Abstract]
  6. Ohayon MM, Caulet M, Lemoine P: Comorbidity of mental and insomnia disorders in the general population. Compr Psychiatry 39 (4): 185-97, 1998 Jul-Aug.[PUBMED Abstract]
  7. Hirshkowitz M: Normal human sleep: an overview. Med Clin North Am 88 (3): 551-65, vii, 2004.[PUBMED Abstract]
  8. Hrushesky WJ, Grutsch J, Wood P, et al.: Circadian clock manipulation for cancer prevention and control and the relief of cancer symptoms. Integr Cancer Ther 8 (4): 387-97, 2009.[PUBMED Abstract]
  9. American Academy of Sleep Medicine: The International Classification of Sleep Disorders: Diagnostic & Coding Manual. 2nd ed. Westchester, Ill: American Academy of Sleep Medicine, 2005.[PUBMED Abstract]
がん患者における睡眠障害

がん患者は、不眠症および睡眠覚醒周期の障害を発症するリスクがきわめて高い。がん患者において、不眠症は最もよくみられる睡眠障害であり、その大半はがんおよび/またはがん治療に関わる肉体的および/または心理学的要因によって二次的に生じる。[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ][ 5 ]不安およびうつ病-がんの診断、がん治療、入院に対する一般的な心理的反応-は不眠症と強く相関している。[ 6 ][ 7 ][ 8 ][証拠レベル:II]

睡眠障害はステロイド分泌を伴う腫瘍随伴症候群のほか、排膿、消化管(GI)異常、泌尿生殖器(GU)異常、疼痛、発熱、咳嗽、呼吸困難、そう痒、および疲労など腫瘍浸潤に伴う症状が原因で増悪する場合がある。ビタミン類、コルチコステロイド、吐き気および嘔吐の治療のための神経弛緩薬、呼吸困難の治療のための交感神経作用薬などによる薬物療法のほか、その他の治療因子も睡眠パターンに悪影響を及ぼす恐れがある。

治療による副作用で睡眠覚醒周期に影響を及ぼすものを以下に挙げる:[ 9 ][ 8 ][証拠レベル:II]

以下の薬物の持続的投与も不眠症の原因になりうる:

このほか、以下の薬物の服薬中止も不眠症の原因になりうる:

催眠薬はレム(REM)睡眠を妨げ、被刺激性の亢進、感情鈍麻、および精神覚醒状態の低下を引き起こすことがある。催眠薬および鎮静薬の服薬を突然中止すると、神経の高ぶり、いらだち、痙攣、レムの反跳などの症状を来す。レムの反跳は、悪夢を含め夢の頻度および密度の増加を伴うレム睡眠の著明な増大と定義されている。[ 10 ]レムの反跳中に起こる生理的覚醒の増大は、消化性潰瘍患者または心血管疾患歴のある患者にとって危険である。不眠症に対する最新の医薬品は、有害な作用を抑えている。[ 11 ]

入院患者は、治療スケジュール、病院での日課、同室者などが単独または組み合わさって睡眠覚醒周期に影響を及ぼすため、頻繁に睡眠が妨げられやすい。このほか、病院内で睡眠覚醒周期に影響を及ぼす因子として、患者の年齢、快適性、疼痛および不安;環境的な騒音、温度が含まれる。[ 12 ]

睡眠障害の結果として、治療法および支持療法の成績が影響を受けることがある。[ 13 ]軽度から中等度の睡眠障害がある患者は、神経過敏で物事に集中できず、その結果、治療プロトコルの遵守、意思決定能力、および重要他者との関係に影響を与える。睡眠障害によって、うつ病および不安も引き起こされることがある。支持療法手段は、QOLの向上と十分な睡眠を得ることに向けられる。

参考文献
  1. Savard J, Morin CM: Insomnia in the context of cancer: a review of a neglected problem. J Clin Oncol 19 (3): 895-908, 2001.[PUBMED Abstract]
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  3. Savard J, Simard S, Hervouet S, et al.: Insomnia in men treated with radical prostatectomy for prostate cancer. Psychooncology 14 (2): 147-56, 2005.[PUBMED Abstract]
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  5. Lee ES, Lee MK, Kim SH, et al.: Health-related quality of life in survivors with breast cancer 1 year after diagnosis compared with the general population: a prospective cohort study. Ann Surg 253 (1): 101-8, 2011.[PUBMED Abstract]
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  7. Palesh OG, Roscoe JA, Mustian KM, et al.: Prevalence, demographics, and psychological associations of sleep disruption in patients with cancer: University of Rochester Cancer Center-Community Clinical Oncology Program. J Clin Oncol 28 (2): 292-8, 2010.[PUBMED Abstract]
  8. Van Onselen C, Cooper BA, Lee K, et al.: Identification of distinct subgroups of breast cancer patients based on self-reported changes in sleep disturbance. Support Care Cancer 20 (10): 2611-9, 2012.[PUBMED Abstract]
  9. Vena C, Parker K, Cunningham M, et al.: Sleep-wake disturbances in people with cancer part I: an overview of sleep, sleep regulation, and effects of disease and treatment. Oncol Nurs Forum 31 (4): 735-46, 2004.[PUBMED Abstract]
  10. Chouinard G: Issues in the clinical use of benzodiazepines: potency, withdrawal, and rebound. J Clin Psychiatry 65 (Suppl 5): 7-12, 2004.[PUBMED Abstract]
  11. Barbera J, Shapiro C: Benefit-risk assessment of zaleplon in the treatment of insomnia. Drug Saf 28 (4): 301-18, 2005.[PUBMED Abstract]
  12. Boonstra L, Harden K, Jarvis S, et al.: Sleep disturbance in hospitalized recipients of stem cell transplantation. Clin J Oncol Nurs 15 (3): 271-6, 2011.[PUBMED Abstract]
  13. Sateia MJ, Doghramji K, Hauri PJ, et al.: Evaluation of chronic insomnia. An American Academy of Sleep Medicine review. Sleep 23 (2): 243-308, 2000.[PUBMED Abstract]
評価

睡眠障害の評価は、管理戦略の第一段階である。評価データには、疾病素因、睡眠パターン、感情状態、運動および活動レベル、食事、症状、薬物療法、および看護者(caregiver)の日課の文書化を含めるべきである。[ 1 ]以下のセクションでは、睡眠歴および身体診察に関する奨励事項の概要を示す。データは、睡眠困難に関する患者自身の主観的報告、睡眠障害の行動的および生理的症状に関する客観的観察のほか、重要他者による患者の睡眠の質に関する報告など、複数の情報源から回収できる。[ 2 ]不眠重症度質問票(Insomnia Severity Index)の使用が、臨床状況での不眠症のスクリーニングに提案されている。[ 3 ][ 4 ]

不眠症の診断は主として、注意深くかつ詳細な病歴および精神病理歴に基づいて行われる。アメリカ睡眠学会(American Academy of Sleep Medicine)は、不眠症評価の客観的手段である睡眠ポリグラフ検査の実施に関するガイドラインを作成している。ルーチンの睡眠ポリグラフ検査では、脳波、眼電図、筋電図、呼吸努力および呼吸流量、酸素飽和度、心電図、体位などのモニタリングを含む。睡眠ポリグラフ検査は、睡眠障害の主な診断手段であるほか、睡眠時呼吸障害および周期性四肢運動障害が疑われる患者を評価する場合や不眠症の原因が確定できない場合、または行動療法や薬物療法が奏効しない場合に適応となる。[ 5 ][証拠レベル:IV]

睡眠障害はがんの経過全体を通じて変化することが示されており、このことは患者ががんを経験している間は睡眠を評価する必要性を裏付けている。1件の記述研究(乳がんの女性398人が含まれた)[ 6 ][証拠レベル:II]では、General Sleep Disturbance Scale(GSDS)が採用され、自己報告による睡眠の評価が手術前に開始され、6ヵ月間継続されたところ、3つの異なる睡眠の経過が確認された。1つ目のグループ(サンプルの55%)では、研究期間全体にわたって、GSDSのすべてのデータポイントが約58~60のスコアとして定義された高レベルの睡眠障害が認められた。2つ目のグループ(サンプルの40%)は、研究期間全体で、GSDSの各データポイントが30と低いスコアとして定義された低レベルの睡眠障害であると考えられた。最後のグループ(サンプルの5%)では開始時に約62と高いスコアであったが、スコアは最初の4ヵ月間で30未満にまで低下し、6ヵ月目まで維持された。より重度の睡眠障害を有するものとして確認されたこのグループの女性は、有意に若年であり、併存疾患が比較的多く、パフォーマンスステータスが比較的低く、およびほてりを経験していた。

参考文献
  1. American Academy of Sleep Medicine: The International Classification of Sleep Disorders: Diagnostic & Coding Manual. 2nd ed. Westchester, Ill: American Academy of Sleep Medicine, 2005.[PUBMED Abstract]
  2. Perlis ML, Jungquist C, Smith MT, et al.: Cognitive Behavioral Treatment of Insomnia: A Session-by-Session Guide. New York, NY: Springer Science+Business Media LLC, 2008.[PUBMED Abstract]
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管理

睡眠障害の管理は、入眠、睡眠維持、または早朝に目覚めることに関する問題への対処に焦点を当てるべきである。管理のこの他の領域には、がんとその治療による症状、環境要因および心理学的要因の確認と管理が含まれる。睡眠障害ががんの症状またはその治療によるものである場合には、そのような症状をコントロールないし軽減することが、しばしば睡眠障害を解消する鍵となる。睡眠障害の管理は、非薬理学的アプローチと薬理学的アプローチを組み合わせ患者ごとに個別に適用する。

睡眠障害の非薬理学的管理

不眠症を経験する人の多くは、不眠症を悪化または持続させうる不良な睡眠習慣(就寝直前の喫煙や過度の飲酒)をもっていることが分かっている。[ 1 ][証拠レベル:III]そのため、睡眠衛生(すなわち、睡眠時間;昼寝;カフェイン、アルコール、または重い/スパイスの効いた/砂糖を多く含んだ食べ物の摂取;運動;睡眠環境)の完全な評価および行動管理戦略(すなわち、睡眠時間の固定化;就寝前4~6時間の喫煙および食事、過度の飲酒の制限;運動強化)の使用は、睡眠障害を減らす上で有効であることが分かる。

入院患者における睡眠衛生には、睡眠障害が軽減されるような睡眠環境の修正が含まれる。騒音をできるだけ少なくし、照明を薄暗くするか消灯し、室温を調節し、患者の看護日課を整理するなどして睡眠の中断数を減らせば、妨げられない睡眠量を増やすことができる。[ 2 ][証拠レベル:IV]

認知的戦略には、否定的な思考、考え、睡眠に関係する態度の再体制化および十分な睡眠が取れているかどうかの過度の監視や心配の回避が含まれる。[ 3 ]行動戦略には、刺激制御や睡眠制限が含まれる。これらの戦略ではいずれも、睡眠を取らないでベッドで過ごす時間を制限するように要求している。[ 3 ][ 4 ][ 5 ]数件の大規模ランダム化試験およびメタアナリシスにより、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)の効力の証拠基盤が提供されている。[ 3 ][ 6 ][ 7 ]こうした試験のほとんどが、がん以外の患者集団を対象にしている。CBT-Iの構成要素としては、以下のものがある:

リラクゼーション療法は特にイメージ法と併用して、行動的および認知的転帰の両方を達成するために利用できる。睡眠衛生に関係する教育目標はまた、不眠症の治療に用いることもでき、以下に関する内容を含む:[ 4 ]

アメリカ睡眠学会(American Academy of Sleep Medicine)による実践ガイドラインでは、単一の治療よりも多成分の治療が推奨されると明確に述べられている。効力に関する十分な証拠がないため、睡眠衛生の教育は単一手段の管理アプローチとしては推奨すべきではない;他のレビューでは睡眠衛生自体、有効ではないと述べられている。[ 6 ][ 8 ]睡眠衛生に関する情報は、単独では睡眠障害に対処するほど十分ではないが、睡眠の問題に関する教育の基礎として含めるべきである。

数件の試験およびメタアナリシスにより、CBT-Iは原発性慢性不眠症の治療において少なくとも従来の薬理学的治療と同程度に有効な上、副作用もないことが示されている。[ 6 ][ 7 ][ 9 ][ 10 ][ 11 ]

ゾルピデム vs CBT vs ゾルピデムおよびCBT vs プラセボを評価した4群の研究(原発性慢性不眠症の患者を対象に実施された)により、CBTを含む治療群(44%の変化)では、ゾルピデムのみ投与の治療群(29%の変化)と比較して、睡眠開始までの待ち時間に対する大きな効果(P = 0.05)が報告された。[ 12 ]別の研究(やはり原発性慢性不眠症の患者に実施された)で、CBT vs テマゼパム単独 vs CBTとテマゼパムの併用 vs プラセボが評価され、活性のある治療はすべてプラセボよりも有意に良好であり、CBTとテマゼパムの併用群で最も改善の傾向がみられたことが明らかにされた。[ 13 ]CBTを行った2群では、薬理学的治療単独群と比較して睡眠開始までの時間がより短くなったことが示された(併用群で64%、CBT群で55%、およびマゼパム群で47%)。持続性の不眠症に対する薬理学的治療および行動療法に関する研究を調査した1件のメタアナリシスでは、薬理学的治療および行動療法は睡眠開始までの待ち時間を除いて有益性の大きさに違いはなく、睡眠開始までの待ち時間は行動療法で大きく短縮されたことが明らかにされた。[ 7 ]

がんの生存者におけるCBT-Iの要素を評価したデータは少なく、存在するデータのほとんどは乳がんの女性に関するデータである。それでも、がん生存者におけるCBT-Iについて少なくとも4件のランダム化比較試験がある。[ 14 ][ 15 ][ 16 ][ 17 ]介入は典型的に5~8週間にわたり、少数の集団に、個別面談形式で行われた。これらの試験の1件に、乳がん以外のがんを診断された患者が含まれており[ 16 ]、結果はがんのタイプによって変わらなかった。いずれの研究でも、CBT-Iを受けた群では時間の経過とともに多くの睡眠パラメータで改善が示され、6ヵ月および12ヵ月後も有益性が持続することが実証された。4試験中の2件では活性のある対照群が用いられなかった。[ 14 ][ 16 ]

活性のある対照群を用いた研究は、乳がんの生存者を対象としていた。1件の研究では72人の女性を対象にCBT-Iと睡眠教育および睡眠衛生が比較され[ 15 ]、もう1件の研究では健康的な食事の教育を行う対照群が用いられた。[ 17 ]CBT-Iと睡眠教育および衛生が比較された研究では、時間の経過とともに両群とも有意に改善がみられ、睡眠開始までの時間、睡眠後目覚めるまでの時間、合計睡眠時間、および全般的な睡眠の質についてCBT-Iを支持した群ではある程度の有意差がみられた。例えば、CBT-Iを受けた群では、睡眠開始までの時間が30分改善したのに対し、睡眠教育および衛生群では11分の改善であった。[ 15 ]

健康的な食事の教育を行う対照群が用いられた研究では、219人の女性が刺激制御、一般的な睡眠衛生(うたた寝の制限、一定の時間に就寝・起床する)、およびリラクゼーションから成る行動療法群、または健康的な食事の教育を行う対照群にランダムに割り付けられた。介入は、化学療法開始の2日前および各化学療法前のほか、最後の化学療法後30日経過時に、正看護師により面談で行われた。看護師は、行動療法に割り付けられた女性では、行動を個別化し強化するために患者とともに作業した。睡眠の質を主観的に測定するためにPittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)が用いられたが、睡眠日記および腕時計型アクティグラフを用いて補完された。行動療法を受けた群では、対照群と比較して睡眠の質が有意に改善された。こうした差は、睡眠日記およびアクティグラフのデータでも認められ、いずれも行動療法群では覚醒回数が有意に少なかったことを示した。[ 18 ]行動療法群の90日および1年経過時のPSQIで測定した睡眠の質は有意に良好であったが、睡眠日記およびアクティグラフでは有意ではなかった。[ 17 ]

一部の地域の患者は資源が限られているため、専門的に提供されるCBT-Iを直接受けられない場合がある。乳がん生存者に実施された1件のランダム化比較試験により、デジタルメディアを介して提供されたCBT-Iもまた臨床的に有意義な改善をもたらすが、改善は専門的に提供されたCBT-Iによりもたらされる改善ほど強固ではないことが実証された。この3群の試験では、242人の乳がん生存者においてビデオによるCBT-I(VCBT-I)および専門的に提供されるCBT-I(PCBT-I)が治療なしの対照群と比較された。VCBT-IとPCBT-I群ではいずれも対照群と比較して、睡眠日記で測定された睡眠の変数が有意に改善した。PCBT-I群の患者は、VCBT-I群よりも一部の睡眠のアウトカムのほか、疲労と抑うつレベルの大幅な改善を報告した。[ 19 ]

表1.がん生存者における不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)についての証拠
参考文献 がんの種類 サンプルサイズと研究デザイン 対照とCBT-I介入 測定方法 アウトカム
ISI = 不眠重症度質問票(Insomnia Severity Index);PCBT-I = 専門的に実施されるCBT-I;PSQI = Pittsburgh Sleep Quality Index;QOL = 生活の質;RCT = ランダム化比較試験;VCBT-I = ビデオによるCBT-I。
aアクティグラフィ:アクティグラフと呼ばれる小型の器具(腕時計様の感知装置)を手首または足首に装着して身体の総体的な運動活性を測定する技術。アクティグラフィは睡眠パターンと昼間の活動性を測定するために有用である。
b睡眠ポリグラフ検査:睡眠に関係する生物生理学的変化に基づいて睡眠障害を診断するために用いられる検査。
Berger et al., 2009[ 17 ] 化学療法中の乳がん(I~III期) N = 219;RCT 対照:健康的な食事をする対照群(同じ時間、注意事項に関するセッション) PSQI、睡眠日記、アクティグラフィa、疲労の評価 CBT群では、対照群と比較して睡眠の質および夜間の覚醒時間が有意に改善された
CBT-I:化学療法前の個別化された計画、刺激制御、修正された睡眠制限、リラクゼーション療法、睡眠衛生
Epstein et al., 2007[ 15 ] 乳がん(I~III期) N = 72;RCT 対照:睡眠教育および睡眠衛生 睡眠日記、アクティグラフィ、ISI 時間の経過とともに両群とも改善がみられた;両群間では睡眠開始までの時間、睡眠後目覚めるまでの時間、合計睡眠時間、および睡眠の質(ISIで測定)についてCBT-Iを支持する有意な改善がみられた
CBT-I:6回のセッション、刺激制御、睡眠制限、睡眠教育および睡眠衛生
Espie et al., 2008[ 16 ] さまざま N = 150;RCT 対照:睡眠教育および睡眠衛生 睡眠日記;アクティグラフィ;疲労、抑うつ/不安、およびQOLの評価 CBT-I群では、対照群と比較して睡眠開始までの時間、睡眠後目覚めるまでの時間、睡眠効率、疲労、特異的なQOLの結果が有意に改善された
CBT-I:5回の毎週のセッション、刺激制御、睡眠制限、認知的再体制化
Savard et al., 2005[ 14 ] 乳がん(I~III期) N = 57;RCT 対照:待機リスト 睡眠日記;睡眠ポリグラフ検査b;ISI;疲労、抑うつ/不安、およびQOLの評価 CBT群では、対照群と比較して睡眠開始までの時間、睡眠後目覚めるまでの時間、睡眠効率、抑うつ/不安、およびQOLの結果が有意に改善された
CBT-I:8回の毎週のセッション、刺激制御、睡眠制限、睡眠教育および睡眠衛生、認知的再体制化、疲労の管理
Savard et al., 2014[ 19 ] 乳がん(I~III期) N = 242;RCT 対照:治療なし(n = 81) 睡眠日記;ISI;アクティグラフィ;疲労、抑うつ/不安、およびQOLの評価 対照群と比較して、PCBT-I群およびVCBT-I群では睡眠日記で測定した睡眠の変数が有意に改善した;VCBT-I群と比較して、PCBT-I群では睡眠、疲労、および抑うつ/不安のアウトカムが改善し、不眠症に対する寛解率が高かった
PCBT-I(n = 81):6回の毎週のセッション
VCBT-I(n = 80):60分のアニメビデオ、6冊の小冊子
CBT-Iの内容:両群に類似(刺激制御、睡眠制限、睡眠教育および睡眠衛生、認知的再体制化)

入院患者に対する非薬理学的管理

心理士が実施するCBTはがん患者における不眠症の治療に有望であることが示されている。[ 14 ][証拠レベル:I]1件のランダム化比較研究で、不眠症に対して腫瘍専門看護師が実施するプロトコル主導の認知行動介入の有効性が調査された。[ 16 ][証拠レベル:I]このグループ介入は、刺激制御や睡眠制限などの標準的なCBT要素で構成された。参加者は異種性のがん患者で、介入(n = 100)または通常の治療(n = 50)を受けるようにランダムに割り付けられた。主要アウトカムは、ベースライン時、治療後、および6ヵ月の追跡時の睡眠日記の測定値であった。CBTは睡眠のいくつかの側面において有意で持続的な改善と関連した。これらの改善は、主観的(睡眠日記)および客観的(アクティグラフィ)評価の両方で認められた。さらに、CBTを受けた患者は疲労、不安、および抑うつ症状における有意な改善を示し、通常の治療を受けた患者と比較してQOLの改善を報告した。[ 16 ][証拠レベル:I]

がん生存者において実施された研究により、特殊なヨガプログラムが睡眠の質を改善し、医薬品の使用を減少させるのに有益であることが実証された。中等度から重度の睡眠障害がある計410人のがん生存者が、標準ケアまたは標準ケア + 訓練を受けたヨガインストラクターによって4週間、2週間ごとのセッションで提供されるヨガ介入にランダムに割り付けられた。ヨガ参加者は標準ケアの参加者と比較して、睡眠の質、昼間の機能障害、夜間の覚醒、および睡眠効率が有意に改善したことを示した。この研究の2つの主要な制限は、研究参加者のほとんどが白人の既婚女性で十分な教育を受けた乳がん生存者であったため母集団の一般化可能性に限界があること;および集団のサポートや注意など、非特異的な影響について適切な対照群が不足していたことである。[ 20 ]

病院または在宅ケアの設定において安静を促進するその他の対策または介入としては、以下が挙げられる:[ 21 ][ 22 ]

心理学的介入は、患者に教育、支援、安心を与えることにより、睡眠障害への対処プロセスに取り組みやすくすることに向けられる。患者が疾患、入院、治療によるストレスに対処する方法を学ぶようになるにつれて、睡眠が改善される。[ 23 ][証拠レベル:IV]患者、家族、および医療関係者の間では、気がかりなことについてコミュニケーションをとり、言葉に表すようにして、オープンにすることがよい。就寝時のリラクゼーション運動および自己催眠は、落ち着きと睡眠を促す上で有用である。早期不眠による苦痛を軽減する認知行動的介入のほか、目標を「眠らなければならない」ということから「ただリラックスする」ということに変更することにより、不安が減少し、睡眠が促進される。[ 24 ]

睡眠覚醒周期障害の薬理学的管理

がん生存者が睡眠覚醒障害を経験する場合、その管理には、カウンセリングでの認知行動介入を最初に考慮すべきである。(詳しい情報については、本要約の睡眠障害の非薬理学的管理のセクションを参照のこと。)CBTにおける教育と訓練のための資源は、多くのがんセンターでは容易に利用できないため、地域の資源を調べる必要があると認識されている。CBTが利用できない、または利用されているが成功していない地域では、薬理学的管理を考慮できる。また、患者が睡眠覚醒周期障害の一因となる共存症(ほてり、コントロール不良の疼痛、不安、うつ病、他の気分障害など)を有する場合は[ 25 ][ 26 ]、おそらく薬理学的管理が必要であろう。原発性不眠症には多くの薬理学的薬剤が承認され、他の多くの薬物が睡眠および関係する症状を管理するために適応外で使用されているが、承認された睡眠補助薬のほとんどは、がん患者の集団では研究されていない;したがって、これらの薬物のリスク/利益プロファイルはがん患者の設定では概説されていない。

がん患者の集団における証拠は不足しているが、臨床家は広く薬理学的介入を行っている。そのため、薬理学的薬剤と使用の推奨に関する以下の考察は、原発性不眠症患者において実施された研究と臨床経験から得られた証拠に基づいている。[ 4 ][ 27 ][ 28 ]

以下に示すいくつかの種類の医薬品が、睡眠覚醒周期障害の治療に用いられている:

個々の患者を治療するための薬物を選択する前に考慮すべき薬物の特徴としては、以下が挙げられる:

これらの薬理動態学的原則は、睡眠障害のタイプ(例、入眠に問題がある vs 睡眠維持に問題がある)に薬物を適合させる場合に重要である。また、耐容性や、乱用、依存、離脱(不眠症がリバウンドするリスクを含む)、薬物-薬物および薬物-疾患相互作用の可能性など、安全性の問題も考慮すべきである。睡眠覚醒周期障害に対する医薬品は、短期間および/または必要に応じて使用すべきである。

催眠薬の使用に関する一般的考慮事項

睡眠を誘発するために用いられる医薬品は、睡眠障害を短期間管理するように意図されている。これらの医薬品のより長期の使用についてはあまり研究されていない。睡眠薬は一般的に、良好な睡眠習慣を強化し、催眠薬の慢性的使用が不要になるようなライフスタイルの修正と組み合わされる。

現代および歴史的な催眠薬投与に関するほとんどの調査研究では、研究期間が12~16週間を超えることはまれである。また、現代の催眠薬は、通常の睡眠構造を再現しておらず、レム睡眠(REM)とノンレム睡眠(NREM)の正常な段階とは異なっていることが一般的である。催眠薬投与を徐々に漸減していくことが重要であり、さもなければ正常な睡眠パターンの変動がさらに顕著になり、レムリバウンドとして知られる状況ではかなりの時間がレム睡眠に費やされる。[ 29 ][ 30 ]

表2では、薬物のカテゴリーと、これらのカテゴリーで一般的に用いられる特異的な医薬品を用量も含めて一覧で示す。

表2.睡眠促進に一般的に使用される医薬品
薬物カテゴリー 医薬品 用量 解説 参考文献
CR = 徐放性;FDA = 米国食品医薬品局;REM = レム(急速眼球運動)。
非ベンゾジアゼピン系ベンゾジアゼピン受容体作動薬 ザレプロン(Sonata) 5~20mg 入眠にのみ問題がある場合に有用。 [ 31 ][証拠レベル:I]
酒石酸ゾルピデム(Ambien) 5~10mg 入眠にのみ問題がある場合に有用。女性に提唱されている最大用量:5 mg。 [ 31 ][証拠レベル:I]
徐放性酒石酸ゾルピデム(Ambien CR) 6.25~12.5mg 二相放出;入眠と睡眠維持の両方に問題がある場合に有用。錠剤を粉砕または分割しないこと。女性に提唱されている最大用量:6.25mg。 [ 31 ][証拠レベル:I]
エスゾピクロン(Lunesta) 1~3mg 入眠と睡眠維持の両方に問題がある場合に有用。食事中または直後に服用しないこと。 [ 31 ][証拠レベル:I]
ベンゾジアゼピン系 クロナゼパム(Klonopin) 0.25~2mg レム睡眠障害に使用(FDA未承認)。 [ 31 ][証拠レベル:III]
ロラゼパム(Ativan) 0.5~4mg;2mgを超える用量はまれである 協調運動の欠如、転倒、および認知障害のリスク。 [ 31 ][証拠レベル:I]
テマゼパム(Restoril) 7.5~30mg 協調運動の欠如、転倒、および認知障害のリスク。 [ 31 ][証拠レベル:II]
メラトニン受容体作動薬 ラメルテオン(Rozerem) 8mg 入眠にのみ問題がある場合に有用。認知、傾眠、協調運動、または吐き気に対するわずかな否定的影響。 [ 31 ][証拠レベル:I]
抗ヒスタミン薬 ジフェンヒドラミン(Benadryl) 25~100mg 入眠にのみ問題がある場合に有用。抗コリン性副作用;高齢の患者ではせん妄のリスクを増加させる。 [ 31 ][証拠レベル:I]
ヒドロキシジン(Vistaril、Atarax) 10~100mg 入眠にのみ問題がある場合に有用。抗コリン性副作用;高齢の患者ではせん妄のリスクを増加させる。 [ 32 ][証拠レベル:II]
三環系抗うつ薬 ドキセピン(Silenor) 3~6mg 抗うつ作用を必要としない場合、原発性不眠症の治療には比較的低い用量が使用される。抗コリン性副作用および体重増加のリスク。 [ 31 ][証拠レベル:I]
アミトリプチリン(Elavil) 10~25mg 抗うつ作用を必要としない場合、原発性不眠症の治療には比較的低い用量が使用される。抗コリン性副作用および体重増加のリスク。 [ 33 ][証拠レベル:II]
ノルトリプチリン(Pamelor) 10~50mg 抗コリン性副作用および体重増加のリスク。 [ 34 ][証拠レベル:III]
第2世代抗うつ薬 トラゾドン(Desyrel) 25~100mg 起立性低血圧および転倒のリスク。   [ 35 ]
ミルタザピン(Remeron) 7.5~45mg うつ病が関心事でなければ、7.5~15mgが睡眠、ほてり、食欲増進、および比較的軽度の朝の鎮静には最良の用量である。転倒のリスク。 [ 33 ][証拠レベル:III]
抗精神薬 ケチアピン(Seroquel) 25~100mg 体重増加、メタボリックシンドローム、異常不随意運動のリスク;心血管系作用(例、QT間隔の延長)の可能性。一般的には副作用のために好ましくない薬物である。 [ 36 ][証拠レベル:III]
クロラール誘導体 抱水クロラール 500~1,000mg 主に睡眠維持のために使用される。胃刺激、依存、および離脱のリスク。過量投与では致死性。 [ 31 ][証拠レベル:I]

非ベンゾジアゼピン系ベンゾジアゼピン受容体作動薬

このクラスの薬物はすべて、原発性不眠症についてFDAの承認を受けている。これらの薬物は、A型γアミノブチル酸(GABAA)受容体においてγアミノブチル酸(GABA)の作用を高めることで、睡眠を促進する。従来のベンゾジアゼピン系(例、ロラゼパム)とは異なり、これらの薬物はGABAA受容体の特異的なサブタイプを優先的な標的にしている。ゾルピデムおよびザレプロンは主にGABAAのα-1サブタイプに結合し、エスゾピクロンはα-3受容体サブタイプを優先的な標的にしている。この選択的な受容体サブタイプ標的化には、利点もあれば欠点もある。これらの薬物は主に催眠/鎮静作用を有し、ベンゾジアゼピン系でみられる抗不安、抗痙攣、および筋弛緩作用を有さない。その反面、これらの薬物は選択的な受容体サブタイプ標的化のために、認知機能および精神運動性機能への作用が少なく、耐容性、依存、および離脱(特に、身体的離脱)のリスクがベンゾジアゼピン系よりも低い。[ 4 ][ 27 ][ 28 ]

これらの薬物は、がん患者において催眠効果のみが望まれる場合に好んで用いられ、これらの薬物は非常に速やかに脳内に入るために就寝直前(またはベッド内で)服用すべきである;これらの薬物の一部(例、ザレプロン)には排出半減期の短いものがある。睡眠維持が困難な場合の治療には、作用時間が比較的長いため徐放性ゾルピデムおよびエスゾピクロンが好まれる。ただし、これらの薬物は排出半減期の短い薬物(例、ザレプロンおよび速効性ゾルピデム)よりも朝に残存する鎮静および認知/運動障害のリスクが高い。

ベンゾジアゼピン系

ベンゾジアゼピン系は、α-1、-2、-3、および-5などいくつかのGABAA受容体サブタイプを標的にしており、これらの受容体でのGABA作用を高めることで機能する。催眠/鎮静作用に加えて、これらの薬物はまた、抗不安、抗痙攣、および筋弛緩作用も有する。ベンゾジアゼピン系は、催眠効果にかかわらず他の効果(抗不安または筋弛緩作用など)が望ましい場合に好まれる。[ 4 ][ 27 ][ 28 ]

ベンゾジアゼピン系は、非ベンゾジアゼピン系受容体作動薬よりも耐容性、依存、および離脱のリスクがはるかに高い。ベンゾジアゼピンの離脱は、痙攣、振戦せん妄、自律神経不安定、および死亡のリスクに関連している。明らかな物質乱用歴のある患者はベンゾジアゼピン系の耐容性および依存の問題に弱いため、こうした患者でこれらの薬物を用いる場合は、最大限の注意を払い、綿密なモニタリングを行うべきである。ベンゾジアゼピン系はまた、認知障害および協調運動困難にも関連している。

一般に、半減期の比較的長いベンゾジアゼピン系(例、クロナゼパム)は、朝に残存する鎮静および認知/運動障害のリスクが高い。短期の抗不安作用や入眠困難な場合、および高齢の患者には、排出半減期の比較的短い薬物(例、ロラゼパム)が一般的に好まれる。持続性の不安や入眠と睡眠維持が困難な場合の治療には、半減期の比較的長い薬物(例、クロナゼパム)が好まれる。ベンゾジアゼピン系はすべて、呼吸抑制のリスクに関連しており、既存の呼吸障害がある患者に用いる場合には注意すべきである。

メラトニン受容体作動薬:ラメルテオンおよびtasimelteon

ラメルテオンおよびtasimelteonは、メラトニン受容体、MT1およびMT2に結合することで機能する。ラメルテオンは入眠困難な場合の治療にのみ有用であり、抗不安や筋弛緩作用など、他の効果は有さない一方、tasimelteonは概日リズム睡眠障害における使用について適応とされる。これらの薬物は睡眠維持が困難な場合に治療できないものの、認知/運動障害および依存の問題のリスクもまたはるかに低い。[ 27 ][ 28 ][ 37 ]

抗ヒスタミン薬

ジフェンヒドラミンおよびヒドロキシジンは、ヒスタミン受容体を遮断することで覚醒を減らす。抗ヒスタミン薬は市販薬であり、入眠のみが困難な場合の治療に有用である。不眠症を治療するための抗ヒスタミン薬の使用に関する証拠は限られている;交差依存性や嗜癖に対して患者が弱いなど、他の問題のリスクがあるために従来の催眠薬またはベンゾジアゼピン系が適さない場合に、これらの薬物が用いられる。抗ヒスタミン薬の抗コリン作用はまた、吐き気および嘔吐の治療にも有益な場合がある。これらの薬物の鎮静および抗コリン作用は、特に高齢患者におけるせん妄のリスクを増加させる。[ 27 ][ 28 ]

抗うつ薬

不眠症にうつ病/不安の総体的症状が併存する場合は、鎮静作用のある抗うつ薬が第一選択の薬物と考えられる。(詳しい情報については、うつ病に関するPDQ要約の薬理学的介入のセクションを参照のこと。)これらの薬物には、三環系抗うつ薬(例、アミトリプチリン)と第2世代抗うつ薬(例、ミルタザピン)が含まれる。三環系抗うつ薬の鎮静作用は、主にヒスタミン受容体遮断および部分的に5-HT2およびムスカリン受容体遮断によってもたらされる。ミルタザピンの鎮静作用が5-HT2およびヒスタミン受容体の遮断によってもたらされる一方、トラゾドンの鎮静作用はヒスタミン、5-HT、およびノルアドレナリン受容体における作用の阻害によってもたらされる。[ 4 ][ 27 ][ 28 ]

三環系抗うつ薬の治療域(therapeutic window)はミルタザピンなどの第2世代抗うつ薬と比較して小さく、過量投与では致死性となりうる。さらに、三環系抗うつ薬には、体重増加、抗コリン性副作用、心血管系の副作用のリスクといった他のリスクもあり、綿密な監視の下で使用すべきである。これらの薬物はときに、抑うつ/不安が併存する不眠症の治療において、他の抗うつ薬の補助薬として低用量(表2を参照のこと)で用いられる。これにより、高用量に伴う副作用の回避に役立つと同時に、必要な鎮静作用が得られる。三環系抗うつ薬はまた食欲を促進できるため、悪液質を併発した患者の不眠症に対して選択すべき治療であろう。一部の三環系抗うつ薬(アミトリプチリンおよびノルトリプチリン)はまた、疼痛症候群(例、神経障害性疼痛)および頭痛が不眠症に併存する場合に、これらの治療においても有益な場合がある。併存疾患のない不眠症の治療には、低用量の抗うつ薬(うつ病には治療量以下)が頻繁に用いられる。

第2世代抗うつ薬のミルタザピンはまた、鎮静作用に加えて食欲を刺激し、制吐作用も有する。ミルタザピンは吐き気または食欲不振が併存するうつ病を有する(うつ病に対する治療量、15~45mg)またはうつ病を有さない(うつ病には治療量以下、7.5~15mg)不眠症患者に頻繁に用いられる。トラゾドンは低用量(50~100mg)で睡眠促進作用があり、しばしば他の抗うつ薬と併用して(例、朝にフルオキセチン20mg)抑うつ状態の不眠症患者に投与される。

抗精神薬

ケチアピンなどの抗精神薬の鎮静作用は、主にヒスタミン受容体の遮断によってもたらされる。しかしながら、これらの薬物はその重大な副作用プロファイルのために、最後の手段および短期間の治療法として考えるべきである。抗精神薬の使用は、体重増加、メタボリックシンドローム、糖尿病、心血管系リスク、および遅発性ジスキネジーなど、錐体外路副作用のリスクに関連している。抗精神薬は、特に不安の総体的症状が併存する場合に、治療抵抗性の不眠症に対して検討できる。[ 27 ]

クロラール誘導体:抱水クロラール

抱水クロラールは、GABA系への作用から得られる睡眠促進効果を有する。抱水クロラールはベンゾジアゼピン系の離脱症状に似た症状のリスクと関連し、耐容性の速やかな発生に関連する。また、抱水クロラールには胃刺激および複数の薬物-薬物相互作用のリスクがあり、過量投与では致死性である。抗精神薬と同様に、抱水クロラールはその重大な副作用プロファイルおよびより安全な代替薬が利用可能なため、通常は治療抵抗性の不眠症の症例においてのみ考慮される。[ 27 ]

植物学的/栄養補助食品

メラトニン

夜間に松果体から分泌されるホルモンのメラトニンは、睡眠覚醒周期に主要な役割を担っており、概日リズムに関係している。レビューでは、メラトニンの短期使用は安全なようであると明らかにされた。ただし、これらの研究はがん治療の状況では実施されていなかった。[ 38 ]メラトニンを補助的に用いることにより、正常なメラトニン生産に影響を及ぼすことで知られる薬物(β遮断薬およびベンゾジアゼピン系など)に起因した睡眠障害が改善される。[ 39 ][証拠レベル:IV]しかしながら、続発性の睡眠障害または睡眠制限に伴う睡眠障害の管理において、メラトニンの効力および安全性を調査した25件の研究のメタアナリシスでは、これらの状況ではメラトニンは有効でなかったことが明らかにされた。[ 40 ]

肉体的に健康な高齢者および不眠症患者の循環血中メラトニンレベルは、年齢調整対照群と比べて有意に低いことを示唆する証拠がある。これらの知見から見ると、メラトニン補充療法は、高齢者の入眠および睡眠維持に有益であろう。[ 41 ][証拠レベル:II]徐放製剤のメラトニンはヨーロッパで認可されており、質の良くない睡眠を特徴とする原発性不眠症の短期(最長13週間)治療用に55歳以上の患者に対する単剤療法として承認されている。しかしながら、不眠症の治療法としてのメラトニン補充療法は、高齢のがん患者では未だ研究されていない。ラメルテオンおよびtasimelteonはメラトニン受容体系を介して作用する:ラメルテオンは睡眠の開始をサポートし、tasimelteonは概日リズム睡眠障害を補正する。

メラトニンは、チトクロムP450酵素や他のシステムを介して特定の化学療法レジメンと相互作用する可能性がある。[ 42 ]メラトニンは酵素CYP1A2を介して代謝される一部の化学療法薬の作用を増強すると考えられ、p糖蛋白によるドキソルビシン流出に対して抑制効果を発揮しうる。

腎がん、乳がん、結腸がん、肺がん、および脳腫瘍に関する臨床研究により、メラトニンが化学療法および放射線療法に組み合わされて抗がん作用を発揮することが示唆されている;しかしながら、証拠は依然として決定的でない。[ 43 ][ 44 ]メラトニンの抗がん作用を示唆している研究はいずれも、同じ研究者グループにより実施されており、オープンラベル研究であった。無関係の研究者グループによって、慎重にデザインおよび盲検化されたランダム化研究でこれらの作用を調査する試みが進行中である。[ 43 ]in vitroおよび動物での研究により、外因性メラトニンの抗がん作用が実証されており、メラトニン濃度の低さは腫瘍増殖に関連する。[ 45 ]ヒトでの研究は、因果関係または連合関係を実証するには至っていない。

大麻およびカンナビノイド

原発性または続発性の睡眠障害を有する患者における大麻吸入や他の大麻製品の影響を特異的に評価した研究は実施されていない。in vitroでの研究、動物での研究、および健康な個人または慢性の大麻使用者の小規模集団からの限られたデータにより、さまざまな神経伝達物質と睡眠覚醒周期との関係や大麻薬理学の関連作用が解明され始めている。[ 46 ][ 47 ]

がん関連疼痛を含めた慢性の疼痛症候群に対する治療法として、大麻をベースにした薬剤が開発中である。研究中のそうした医薬品の1つは、口腔粘膜製剤であるnabiximols(Sativex)(δ-9-テトラヒドロカンナビノールとカンナビジオールを1:1の比率で調合)である。nabiximolsに関して実施された研究では主として疼痛症候群に焦点が当てられており、睡眠を二次的なアウトカムとして測定した場合に、主観的な睡眠の質の改善が示された。[ 48 ]疼痛などの併存症は、睡眠障害によくみられる原因である。特に大麻乱用歴のある患者の亜集団では、nabiximolsの乱用および依存の可能性に関する懸念が提起されている。[ 49 ]nabiximolsは、多発性硬化症患者における中枢神経障害性疼痛の治療向けに、カナダで承認されている。米国では、nabiximolsは研究目的の使用にのみ利用でき、難治性のがん性疼痛の治療法として現在研究中である。

最新の臨床試験

NCIが支援しているがん臨床試験で現在患者登録中の試験を検索するには、臨床試験アドバンスト・サーチを使用のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。日本語でのタイトル検索は、 こちらから)。このサーチでは、試験の場所、治療の種類、薬物名やその他の基準による絞り込みが可能である。臨床試験に関する一般情報も入手することができる。

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特別な考慮事項

疼痛患者

疼痛管理を強化することにより睡眠が改善されるため、催眠薬を導入する前に適切な鎮痛薬の投与または非薬物治療による疼痛管理を行うべきである。神経障害性疼痛およびうつ病を伴う不眠症患者の治療には、特に三環系抗うつ薬が有用である。疼痛の治療に高用量のオピオイドを投与している患者は、せん妄および器質性精神障害を来すリスクが高い。このような患者は、睡眠薬として低用量の神経弛緩薬の使用から便益が得られるであろう(例、ハロペリドール0.5~1mg)。

高齢患者

高齢患者は、加齢に伴う睡眠の変化によりしばしば不眠症になる。このような集団にみられる睡眠周期の特徴としては、睡眠が浅く、より頻繁に覚醒し、合計睡眠時間が短いことで特徴付けられる。不安、うつ病、社会的支援の欠如およびがんの診断を受けることなどが、高齢者の睡眠障害の寄与因子である。[ 1 ]

睡眠の問題は高齢者では非常に一般的で、催眠薬の処方箋の半数近くは、65歳以上の患者に対するものである。通常の加齢は睡眠に影響を及ぼすものの、臨床医は、内科的疾患、精神医学的疾患、認知症、アルコールおよび/または薬剤多重服用、下肢静止不能症候群、周期性下肢運動、および睡眠時無呼吸症候群といった不眠症を引き起こす多数の因子について評価するべきである。睡眠障害の初期管理としては、まず非薬物治療を行い、適応とされる場合に薬物を投与することが望ましく、その後、専門的な治療が必要な場合には睡眠障害センターへの紹介が望ましい。[ 2 ]

食事時間を一定にし、昼寝を防止し、身体活動を奨励することにより、睡眠を改善できる。高齢患者に催眠薬を処方する場合には、代謝の変動、脂肪蓄積の増大、および感受性の増大に合わせて調節しなければならない。投与量については、30~50%減量する必要がある。薬物蓄積に関連する問題(特にフルラゼパム)は、短期作用型ベンゾジアゼピン系に関連する反跳効果または高度の離脱症状のリスクと較量する必要がある。高齢患者の代替薬としては、抱水クロラールがある。[ 1 ]

下顎骨切除後の睡眠時無呼吸症候群

下顎骨前方部の切除により、睡眠時無呼吸症候群を来す可能性がある。頭頸部腫瘍の患者で、口腔前方部を広範囲に切除した患者については、いずれも気管切開チューブの抜去前に評価すべきである。その後、皮弁移植および/または下顎再建が、睡眠時無呼吸症候群の発症を防ぐようである。対照的に、下唇を吊り上げて固定する装具では、睡眠時無呼吸症候群の発症を防ぐことはできない。[ 3 ]この集団において、症状を評価し、症状発現に対して備えることで、睡眠時無呼吸症候群に適応とされる介入を行うことができる。

参考文献
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  2. Johnston JE: Sleep problems in the elderly. J Am Acad Nurse Pract 6 (4): 161-6, 1994.[PUBMED Abstract]
  3. Panje WR, Holmes DK: Mandibulectomy without reconstruction can cause sleep apnea. Laryngoscope 94 (12 Pt 1): 1591-4, 1984.[PUBMED Abstract]
本要約の変更点(10/31/2019)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

本要約には編集上の変更がなされた。

本要約はPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、睡眠障害の病態生理学および治療について包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は、編集に関して米国国立がん研究所(NCI)から独立しているPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

証拠レベル

本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ支持療法および緩和ケア編集委員会(PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Board)は、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

本要約の使用許可

PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。

本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board.PDQ Sleep Disorders.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/side-effects/sleep-disorders-hp-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389467]

本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。

免責条項

これらの要約内の情報は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトについての問い合わせまたはヘルプの利用に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載されている。質問はウェブサイトのEmail UsからもCancer.govに送信可能である。