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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

うつ病(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2017-05-02
    翻訳更新日 : 2017-07-24

うつ病(PDQ®) PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Board

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、成人および小児の集団における、がんに関連したうつ病と自殺のリスクについて、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。


本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

うつ病

概要

うつ病は、がんに併発し患者を無力にする症候群であり、がん患者の約15~25%が罹患する。 [1] [2] [3] [4] うつ病ががん患者に及ぼす影響は男性と女性で差はないと考えられているが、有病率および重症度の性別による違いは十分に評価されていない。 [5] がんの診断に直面した個人やその家族はさまざまな程度のストレスや感情の乱れを経験する。がん患者のうつ病は患者自身だけでなくその家族にも重大な悪影響を及ぼす。

定義:

いくつかの特異的症状(情動、睡眠障害、思考パターン)が観察される場合に、うつ病が疑われる。これらは、精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual for Mental Disorders)第4版および第5版の精神/行動障害の分類において規定されている。 [6] [7] しかしながら、うつ病の検討に至る症状群を引き起こしうる経路は多くあり、これにはセロトニン/ドパミン経路の崩壊、喪失または予期喪失の経験、化学療法投与による直接的な副作用、中枢神経系における腫瘍の存在、管理不十分な疼痛、医学的治療による睡眠障害、貧血などがある。これらの症状の評価と管理には、さまざまな経路および証拠に基づく治療法の選択肢を理解しておく必要がある。

正常な場合には、患者のがんの診断に対する最初の情動反応は数日から数週間と短く、そこには、不信、否認、絶望などの感情が含まれる。この正常な反応は、正常な悲しみから、憂うつな気分を伴う適応障害、大うつ病にいたるまでの範囲の一連の抑うつ症状の一部である。 [8] その他に言及された症候群には、気分変調、亜症候群性うつ病(小うつ病、亜臨床うつ病とも呼ばれる)がある。気分変調は、憂うつな気分の日の方がそうでない日より多い状態が、少なくとも2年以上続く慢性の気分障害である。それとは対照的に亜症候群性うつ病は、大うつ病に比べて重度が低い(診断症状が全部ではなく数項目だけ存在する)急性の気分障害である。

がん患者における抑うつ症状の医学的原因として可能性のあるもの
  • 疼痛管理の不良。 [9] [証拠レベル:II]

  • 代謝異常:
      高カルシウム血症。
      ナトリウム/カリウム平衡異常。
      貧血。
      ビタミンB12または葉酸欠乏。
      発熱。

  • 内分泌異常:
      甲状腺機能亢進症または甲状腺機能低下症。
      副腎機能障害。

  • 医薬品: [10] [証拠レベル:I] [11] [12] [13] ; [14] [証拠レベル:II]
      ステロイド剤。
      内因性ならびに外因性のサイトカイン、すなわち、インターフェロン-アルファおよびアルデスロイキン(インターロイキン-2[IL-2])。 [15]
      メチルドパ。
      レセルピン。
      バルビツール酸系薬物。
      プロプラノロール。
      ある種の抗生物質(例、アムホテリシンB)。
      ある種の化学療法薬(例、プロカルバジン、L-アスパラギナーゼ)。

乳がん女性を対象にした英国の研究では、患者の子供に起こる情緒面および行動面の問題の予測因子として、さまざまな因子の中でも患者のうつ病が最も強力なものであることが示された。 [16] 死の恐怖、人生設計の崩壊、身体像と自尊心の変化、社会的役割と生活様式の変化、経済上、法律上の懸念などは、どのがん患者の人生においても重要な問題となるが、かといってがんと診断された者のすべてが深刻な抑うつまたは不安を経験するわけではない。

治療期間中は絶えず患者の抑うつと不安を評価する必要があるが、家族内の介護者も同様である。疾患緩和期にある患者の家族介護者の研究では、男性と女性のいずれの介護者も非介護者の標本よりも有意に多くの不安を経験したのに対して、Hospital Anxiety and Depression Scaleで定義されたうつ病の発生率は女性において高かった。 [17]

がんについて、およびがんへの対処方法については、以下のように多くの誤った認識が認められる:


  • すべてのがん患者がうつ病になる。

  • がん患者がうつ病になるのは正常である。

  • うつ病に対する治療は役に立たない。

  • すべてのがん患者が苦痛と痛ましい死に直面する。

他の患者に比べてがんの診断に対して適応困難な者もあり、診断に対する反応はさまざまである。悲しみと悲嘆はがん罹患時に直面する危機への正常な反応である。このような反応は誰でも周期的に経験する。悲しみが珍しくないことから、正常範囲の悲しみとうつ病性障害を識別することが重要になる。終末期ケア・コンセンサス・パネルの総説が、この重要な区別について詳細に説明し、重要なポイントを症例の簡潔な描写を用いて説明している。 [8] がん医療においてきわめて重要なことは、うつ病の発現レベルを認識し、適切な介入のレベルを決定することであるが、その範囲は簡単なカウンセリングや支援グループから薬物療法および/または心理療法に及ぶ。例えば、リラクゼーションやカウンセリングによる介入は、新たに婦人科のがんと診断された女性患者の心理的症状を軽減することが示されている。 [18]

大うつ病は単なる悲しみや憂うつな気分ではない。大うつ病は患者の約25%に発症し、識別可能な症状があり、この症状に対する診断および治療は必須であるが、その理由はそれらの症状が生活の質に影響を及ぼすことにある。 [19] [20] うつ病はまた、一般集団において過少診断される病気である。がんの診断時に現れる症状は、前から存在する状態を示しうるため、個別の評価および治療が必要であろう。

うつ病および不安障害は、緩和ケアを受けている患者では一般的であり、これらの患者における生活の質の大幅な低下の一因となる。 [21] Canadian National Palliative Care Surveyでは、がんに対する緩和ケアを受けている患者(N = 381)におけるうつ病性障害と不安障害、およびこれらの障害の生活の質への影響が評価された。第一の評価ツールは、Primary Care Evaluation of Mental Disordersを改変したものであった。有意な数の参加者(24.4%;95%信頼区間、20.2-29.0)が少なくとも1つのうつ病性障害または不安障害に対する診断基準を満たすこと(うつ病性障害については20.7%の有病率、不安障害については13.1%の有病率)が明らかにされた。

うつ病性障害または不安障害を診断された参加者では、次のような特徴がみられた:


  • 他の参加者より有意に若かった(P = 0.002)。

  • パフォーマンスステータスが低かった(P = 0.017)。

  • ソーシャルネットワークが小さかった(P = 0.008)。

  • 組織だった礼拝に参加することが少なかった(P = 0.007)。

参加者はまた、身体的症状、社会的関心事、および実存的問題に関してより重度の苦痛を報告しており、生活の質の他の側面に対して有意に否定的な影響があることを示唆している。 [21]

余命が6ヵ月未満の末期がん患者(n = 211)に実施された別の研究によって、心理学的問題の重要性が強調された。 [22] 研究者らは妥当性が確認された特異的な精神測定(例、視覚的アナログ尺度)を使用して、患者の「他者への負担の感覚」およびそうした感覚の身体的、心理学的、および実存的問題との相関を評価した。他者への負担の感覚と最も強く相関した変数として、以下のものが挙げられた:


  • うつ病(r = 0.460、P < 0.0001)。

  • 絶望(r = 0.420、P < 0.0001)。

  • 見通し(r = 0.362、P < 0.0001)。

多重回帰分析において、他者への負担の認識を予測する以下の4つの変数が浮かび上がった:


  • うつ病。

  • 絶望。

  • 疲労のレベル。

  • 現在の生活の質。

他者への負担の感覚と身体的依存性の実際の程度との関連はみられず、この認識は主として心理的苦痛および実存的問題を介して生み出されることが示された。状況の異なる患者集団のサブアナリシスにより、これらの知見はいくつかわずかな相違はあるものの、入院患者と外来患者の状況で一貫していたことが示唆された。 [22]

がん(またはがんの再燃)の診断に対する情動反応は、次第に高まる動揺を特徴とする不快な期間で始まる。患者は睡眠障害と食欲障害、不安、反すう的思考、将来についての恐怖を体験する。しかし疫学的研究によれば、がんと診断された人の少なくとも半分は順応に成功する。

がんの診断に対する順応が成功した指標として、以下のものが挙げられる: [23]


  • 日常生活への積極的な関与を維持する。

  • 生活上の役割(例、配偶者、親、従業員)が病気によって中断されるのを最小限にする。

  • 病気に対する情動反応を正常に調整する。

  • 絶望、無力感、無益感、罪悪感のいずれかまたはすべての感情にうまく対処する。

一部の研究は、不適応な対処スタイルとより高いレベルのうつ病、不安、および疲労の症状との関連を示唆している。 [24] [25] 不適応な対処の例には以下のものがある:


  • 回避性の対処または否定的対処。

  • 自分の対処を否定的に表現。

  • 身体的症状についての先入観。

  • 小さな問題で大騒ぎすること。

ほとんどが進行がんの患者86人のグループに実施された1件の研究では、不適応な対処スタイルとより高いレベルの抑うつ症状が疾患進行の時期を示す潜在的な予測因子であると示唆された。 [25] 乳がん女性(n = 138)における対処戦略について調査した別の研究により、自分のことを前向きに話すなど対処技術がより良好な患者では抑うつおよび不安の症状のレベルがより低いと結論付けられた。 [24] 同じ研究で対処戦略の使用における人種差が明らかにされ、アフリカ系アメリカ人女性は白人女性より、祈りや希望に満ちている様子など、より宗教的な対処戦略を報告し、この対処戦略の使用によって恩恵を受けていた。 [24]

予備的データは、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Spiritual Well Being質問票およびHamilton Depression Rating Scaleによって測定されているように関連するうつ病への霊性の有益な影響を示唆している。 [26]

早期介入の必要性を示す指標には以下がある:


  • うつ病の既往歴。

  • 弱い社会的支援システム(独身、友人が少ない、孤独な職場環境)。

  • 診断に関する不合理な信念が持続しているかまたは悲観的な考えをもっている証拠。

  • より重篤な予後。

  • がんに関連するより大きな機能障害。

成人がん患者(n = 48)およびその成人近親者(n = 99)を対象とした研究によって示されているように、家族が果たす機能は、患者および家族の苦痛に影響する重要な因子である。率直に活動し、感情を直接表現し、問題を効果的に解決できた家族のうつ病のレベルはより低く、家族内の情報の直接的な伝達はより低いレベルの不安と関連していた。 [27] がん患者の配偶者における抑うつ症状もまた、夫婦間のコミュニケーションにマイナスの影響を及ぼしうる。1件の予備研究では、非転移性乳がん女性の配偶者(n = 206)において抑うつの潜在的な19の予測因子が調査された。 [28] 配偶者は、以下の場合に抑うつ症状を経験する可能性がより高かった:


  • より年齢が高い場合。

  • 十分に教育を受けていない場合。

  • 最近結婚した場合。

  • 妻の幸福に関して高い恐怖を報告する場合。

  • 仕事の能力を心配している場合。

  • 将来がより不透明な場合。

  • 結婚に十分に適応していない場合。

特に疼痛および他の身体的症状など、危険因子は異なる場合がある。 [29] 臨床医は、患者がうつ病だという疑いをもち始めた場合に、その患者に症状があるかを判定する。大うつ病エピソードの診断基準を全部ではなく数項目だけ満たす軽度あるいは無症状レベルのうつ病は、少なからぬ苦痛の原因となりうるので、メンタルヘルス専門家による、あるいは自助サポート・グループへの参加による、支持的個人カウンセリングまたはグループ・カウンセリングなどの介入が正当化される。 [30]

証拠に基づいた推奨では、がん関連疲労、食欲不振、うつ病、および呼吸困難の問題に対するさまざまなアプローチが記述されている。 [31] たとえ症状が全くなくても、患者の多くは支持的カウンセリングに関心を示すので、臨床医はそのような患者には、資格をもったメンタルヘルス専門家に紹介することで対応することもできる。しかしながら、症状が激しくかつ長く続く、あるいは外見上解決した後で再発した場合は、症状を軽減するための治療が不可欠である。 [20] [32] [33] 早期治療における不安および抑うつは、6ヵ月時点でのこれらの同じ問題の良い予測因子である。 [34] 乳がんの高齢女性の研究において、うつ病の最近の診断は、根治的がん治療を拒むより高い可能性とより不良な生存の両方と関連した。 [35]

がんに関連したうつ病の病態生理学は不明確なままであり、おそらく多くの機序が含まれている。進行期転移がん患者の研究により、臨床的うつ病を認める患者ではインターロイキン-6(IL-6)の血漿濃度と視床下部-下垂体-副腎軸機能障害の両方が顕著に高いことが示された。 [36] IL-6の10.6pg/mLのカットオフ値により79%の感度と87%の特異度が得られた一方で、コルチゾールの33.5%の変化というカットオフ値では81%の感度と88%の特異度が得られた。この研究における制限の1つは、これらの関係に独立して影響しうる疼痛の程度も疲労の程度も測定されなかったことであった。

うつ病の病因の大部分は知られていないが、うつ病の危険因子(以下に挙げているものなど)は多く知られている。


  • がんに関連した危険因子:
    • がん診断時のうつ病。 [34] [37]

    • 疼痛管理不良。 [9]

    • がんの進行期。 [9]

    • 身体的不快あるいは機能障害の増加。

    • 膵がん。 [38]

    • 独身であって頭頸部のがんにかかっている。 [39]

    • 特定の化学療法薬による治療:
      • コルチコステロイド。

      • プロカルバジン。

      • L-アスパラギナーゼ。

      • インターフェロン-アルファ。 [14] [40]

      • IL-2。 [10] [14] [40]

      • アムホテリシンB。



  • がんに関連しない危険因子:
    • うつ病の既往歴:
      • 今までに2回以上のエピソード。

      • 最初のエピソードが若い頃あるいは最近。


    • 家族の支援がない。 [34]

    • その他の同時に起こる生活上のストレス要因。 [41]

    • うつ病または自殺の家族歴。

    • 自殺未遂の経験。

    • アルコール中毒あるいは薬物乱用の病歴。

    • 抑うつ症状を引き起こす合併症(例えば、脳卒中あるいは心筋梗塞)。

    • 心理学的な問題の治療歴。 [42]


特に明記していない場合、本要約には成人に関する証拠と治療について記載している。小児に関する証拠と治療は、成人の場合とかなり異なる可能性がある。小児の治療に関する情報が入手できる場合は、小児に関する情報であることを明記した上でその内容を要約する。


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評価と診断

症状と危険因子

大うつ病の症状は次の2つに大きく分類される:自律神経に関するものと情動-認知に関するものである。がんの進行または治療により自律神経症状が影響を受ける可能性のあるがん患者では、うつ病の情動-認知症状を評価することで、診断が得られ、偽陽性結果を回避できる可能性が高まる。症状には以下のものがある:


  • 1日の大部分が憂うつな気分で、それがほぼ毎日続く。

  • ほぼすべての活動において楽しさや興味が減少する。

  • 食欲や睡眠のパターンの著しい変化。

  • 精神運動性激越と遅延。

  • 疲労。 [1]

  • 無益感あるいは過度の不適切な罪悪感。

  • 集中力の低下。

  • 死や自殺を頻繁に考える。

認知症状は「これは自分のせいだ」「神様の罰だ」「わたしのせいで家族はだめになった」と反すう的に考える、実際には確たる証拠もないのに予後について宿命論的な予想をする、といったかたちで現れる。このような考えが優位を占めるか、あるいはもっと現実的な考えと交代することもあるが、それでもストレスは非常に強い。悲観的な考えを進んで話す患者もおり、家族がそれに気付くことがある。他の患者はそのような考えを自分から進んで話すことはないが、以下のような簡潔な質問(この他の例は表1に一覧表示している)に答えることがある:


  • 「気がつくと自分のがんのことをじっくり考えているという人は多いものです。あなたは、どんなことを考えていますか?」

  • 「これは自分のせいだ、神の罰だなどと自分が考えているのに気がついたことはありますか?どの位の頻度ですか?週に2~3回ですか、いつもですか?そういう考えは正しいと思いますか?」

  • 「そんなことを考えても、それでも人生を続け、いろいろなことに楽しみをみつけることができますか?それとも気になって眠れなかったり絶望的だと感じたりしますか?」

医師または看護師自身がカウンセリングを行わなくとも、上記にある質問をしてよい。単にこのような質問をすることで、心配していることを示し、もっと進んだカウンセリングの提案に患者が受容的になる可能性が増すだろう。

このような質問に以下のような質問を続けることができる;「がんにかかっている人は、ときにはそういう感じ方をすることが多いのです。あなただけではない。けれど、他の人に話すことでとても楽になります。そうするようにお考えになってはいかがですか。がんのストレスと闘う人々を助けた経験が豊富な人と話してみる気はありますか?」

この時点では、患者が知っている誰かを捜すように勧めてもよいし、その他の地域社会の情報源を教えてもよい。特にがんの治療が終わった患者、身体症状が管理可能な患者では、社会的支援が受けられることを知るほど抑うつ症状が減少するという関連があった。 [2] 場合によっては、聖職者あるいはセラピストへの紹介も適切であろう。大多数のセラピストは死に対する悲嘆あるいは恐怖の一般的な問題点に対処できる;なかには臨床心理学、医療社会福祉事業、あるいは主にがん患者を扱うことを専門としているセラピストもいる。ためらっている患者に対しては、複数の手段を提案することで、何らかの援助を見つけ出す可能性が増す。それ以外の患者には直接正式に紹介するのが適切であろう。

がん患者におけるうつ病の評価には、以下の慎重な査定が含まれる:


  • 症状。

  • 治療効果。

  • 検査結果のデータ。

  • 身体状態。

  • 精神状態。

インターフェロン-アルファおよびインターロイキン-2によるサイトカイン療法を受けているがん患者における抑うつ性の総体的症状は神経伝達物質前駆体の利用可能性の変化によりもたらされていることを示唆しているデータは限られている。 [3] 頭頸部のがん患者で治癒を目的に治療を受けた者では、以下の治療前の8つの評価項目を使って、患者が治療後3年以内にうつ病になる可能性を予測できる: [4] [5]


  • 腫瘍の病期。

  • 性別。

  • 抑うつ症状。

  • 家族の中でがんについて率直に議論ができるのか。

  • 利用可能なサポートに対する認知度。

  • 情動的サポートが受けられるのか。

  • 腫瘍に関連した症状。

  • 非公式なソーシャルネットワークの規模。

登録(ベースライン)時と緩和ケア病棟への入院(追跡)時に再び構造化された臨床面接を使って精神疾患を評価された日本人の末期がん患者のプロスペクティブ研究では、ベースライン時に適応障害と診断された12人の患者中5人(42%)が追跡時に大うつ病に進行したことが明らかにされた。Hospital Anxiety and Depression Scaleのみが、追跡時の精神科診断を有意に予測した。 [6] この点をよく認識することで早期診断と適切な介入が容易になる。 [7] 疾患をもつ患者においては、せん妄の早期症状が不安または抑うつと誤認されることがある。これらの疾患は、抑うつ症状を呈する個々の患者の鑑別診断を考慮に入れて検討すべきである。

うつ病のスクリーニングおよび評価

一般的にがん患者におけるうつ病には過小認識および過小治療があり、さらなる評価を促すためにスクリーニング・ツールが使用されうる。 [8] 身体的な病気では、一般的にうつ病評価用の諸手段が、面接と精神状態の徹底的な検査に比べて臨床的に有用だとされた例はない。単純に患者に対して憂うつであるかどうかを尋ねることで、うつ病の確認がよりうまくいくこともある。

以下のスクリーニング・ツールが一般的に使用される:


  • 1項目の面接。進行がん患者において、面接による1項目の質問が許容可能な精神測定学的特性を有することが明らかにされており、有用となりうる。1つの例は「憂うつですか?」と尋ねることである。 [9] 別の例は、「通常のリラックスした気分を100として、過去1週間の気分を0~100までの点数を割り当てて評価してください。」と言うことである。60点は合格点と考えられる。 [10]

  • Hospital Anxiety and Depression Scale。 [11] がんまたは治療により自律神経症状が合併している患者において、Hospital Anxiety and Depression Scaleはうつ病および不安の評価に有用な場合があり、こうした症状に起因してスケールで偽陽性結果が示されるのを回避するのに役立つ。 [12] [13] [14]

  • Psychological Distress Inventory。 [15]

  • Edinburgh Depression Scale。 [16]

  • Brief Symptom Inventory。 [17]

  • Zungの自己評価式抑うつ尺度(Zung Self-Rating Depression Scale)。 [18]

  • Distress Thermometer。 [19]

新たに診断された乳がんの女性(n = 236)を対象にした1件の研究では、Distress Thermometer、Patient Health Questionnaireなどの簡単なスクリーニングの手段がうまく利用され、臨床的に重要なレベルの苦痛および精神症状を発見するためにさらなる評価が必要な女性が確認された。 [20]

I期~III期乳がんを新たに診断された女性321人を対象にした研究において、うつ病を特異的に予測する1項目のDistress Thermometerの性能が調査され、大うつ病に対する精神障害の診断と統計マニュアル第4版(DSM-IV)の9症状が自己報告式の質問票で測定された。感度および特異度の特徴が評価され、最適なカットオフスコアは7であることが同定され、うつ病発見について0.81の感度および0.85の特異度が得られた。そのため、スコアが7以上の個人はより徹底的な心理社会的評価を受ける。 [21]

Distress Thermometerを修正し、付随して作成されたImpact Thermometerは、Distress Thermometerと比較して、適応障害および/または大うつ病検出の特異度が向上している。修正されたツールは、Hospital Anxiety and Depression Scaleに匹敵するスクリーニング性能があり、かつ簡単で、がん治療の現場でのルーチンのスクリーニングに有効なツールとなることが見込まれている。 [22] Mood Evaluation Questionnaireは、うつ病に対する認知に基づいたスクリーニング・ツールであり、精神障害の診断と統計マニュアル改訂第3版(DSM-III-R)適用の構造化臨床面接との中等度の相関が認められ、緩和ケア集団において良好な許容性が示されている。妥当性がさらに確認されれば、精神医学の訓練を受けていない臨床家も使用できるため、この集団における有用な代替ツールとなりうる。 [23]

スクリーニングの手段は、がんの母集団で妥当性が確認され、構造化された診断的面接と組み合わせて使われることが重要である。 [24] 単純で簡単に複製できる視覚的アナログ尺度を使った、患者25人によるパイロット研究で、うつ病のスクリーニングの単項目手法の利点が示唆された。この尺度は一方の端に悲しい顔、他方に幸せな顔の付いた10cmの線で構成され、患者はそこに自分の気分を示すマークを付ける。この結果は視覚的アナログ尺度がうつ病のスクリーニング・ツールとして有用である可能性を強く示唆するが、患者の数が少ないことと、臨床的面接が行われなかったことから、結論は制限される。さらにHospital Anxiety and Depression Scaleでは非常に高い相関関係(r = 0.87)が報告されたが、カットオフの指示は示されなかった。そして、強調されるのは、このような尺度は、専門家のさらなる評価の必要性を示唆するように意図されていることである。しかしながら、さらに妥当性が確認されれば、この単純なアプローチは、認識力が損なわれていない進行がん患者におけるうつ病の評価と管理を大幅に充実させる。 [7] [25]

うつ病に対するその他の簡易評価ツールが使用可能である。患者がうつ病と通常の不安反応とを区別するのを支援するため、評価にはがん患者により経験される一般的な症状についての話し合いが含まれる。うつ病は経時的に再評価される。 [26] がん患者は適応障害と大うつ病のリスクが高いので、用心のため、ストレスが高まる時(例、診断、再発、悪化)、ルーチンとしてスクリーニングを行うことが推奨される。 [27] 一般的なうつ病の危険因子は上記のリストに示した。特定の母集団、例えば頭頸部がんの患者 [4] 、乳がん発症のリスクが高い女性にはその他の危険因子が加わるであろう。 [28]

臨床面接

表1.成人がん患者の抑うつ症状の評価に推奨される質問a

質問 症状
a出典:Roth et al. [29]
抑うつ症状
自分のがんにどの程度対処できていますか?うまくできていますか?うまくできていませんか? 快適
診断後の気分はどうですか?治療中はどうですか?落ち込んでいますか?憂うつですか? 気分
時々泣きますか?どの位の頻度ですか?ひとりのときだけですか? 気分
今でも楽しんでできることがありますか、それとも、がんにかかる前にしていたことが楽しくなくなりましたか? 快感消失
未来はどんなふうに見えますか?明るいですか?暗いですか? 絶望
治療に自分の意見が反映されていると感じますか、それとも、治療は完全に他人の支配下にありますか? 無力感
がん治療期間中に家族/友人の重荷になっていると心配しますか? 罪悪感
あなたがいない方が他の人はうまくやっていくと思いますか? 無益感
身体症状(がんに関係のある症状との関連で評価する)
コントロールされていない痛みがありますか? 疼痛
どの位の時間をベッドの中で過ごしますか? 疲労
弱っていると感じますか?直ぐに疲れますか?眠った後回復しますか?あなたの感じ方と、治療法が変わったこと、あるいはそれ以外に身体的に感じていることの間に何か関係がありますか? 疲労
眠れますか?寝付かれませんか?朝早く目が覚めますか?しょっちゅうですか? 不眠
食欲はどうですか?食事はおいしいですか?体重は増えていますか、それとも減っていますか? 食欲
セックスに対する関心はどうですか?性的活動の程度は? 性欲
考えたり動いたりするのが普段より遅くなっていますか? 精神運動性遅延


器質性気分障害または他の医学的疾患による気分症候群(MSRAMC)(「Mood Syndromes Related to Another Medical Condition」)が、『精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)』 [30] 中で言及されているが、症状の点でしばしば気分症候群に似ている。(おそらく時間的経過か検査データに基づいて)器質的または身体疾患の因子がこの症候群の病因に寄与していると仮定される。DSM-5によれば、著しい認知異常が、この症候群に伴って起こる要素であり、したがって診断を下す際に有用である。検査データを入手して電解質または内分泌のアンバランスあるいは栄養欠乏が認められるかを検出するのに役立てることも考慮すべきである。臨床的経験によれば、内科的要因で引き起こされたうつ病の治療において、特に原因となる薬物(すなわち、ステロイド、抗生物質など)の減量や中止ができない場合に、薬物療法が心理療法単独に比べて優れていることが示唆される。 [31]

診断

うつ病の診断は、これらの症状が最低2週間続くことおよび大部分の日に症状が現れることを医師が確認して下される。がん患者のうつ病は、うつ病の生物学的または身体的症状を、病気の症状または治療の有害な副作用から鑑別するという特有の問題のために、診断が難しくなる。このことは特に積極的な治療を行っている患者、または進行がん患者に当てはまる。

以下の認知症状が、おそらくがん患者のうつ病診断において最も有力な判断材料になる:


  • 罪悪感。

  • 無益感。

  • 絶望。

  • 無力感。

  • 自殺思考。

  • 活動の喜びの消失。

研究時に感情障害のあったがん患者を抑うつ症状のみがみられる患者と比較したドイツの1件の研究では、多変量解析において2群間の識別に最も効力があるのは、興味喪失に続く抑うつ気分であることを明らかにした。 [32]

がん患者におけるうつ病の評価にはまた、以下が含まれる:


  • その患者の病気に関する感じ方の慎重な査定。

  • 病歴。

  • うつ病あるいは自殺思考の個人歴あるいは家族歴。

  • 現在の精神状態および身体状態のほか、治療とがんの影響。

  • 同時に起こる生活上のストレス要因。

  • 社会的支援の利用が可能か。

90%を超える患者が感情の問題について医師との話し合いを望んでいるが、25%を超える患者がその問題についての話し合いは、医師から始めるべきだと感じている。 [33]

自殺念慮が生じた場合、それは患者、医療従事者、そして家族にとって恐ろしいことである。自殺を表明する言葉は、治療過程に伴う欲求不満や嫌悪感のせいで不用意に出た言葉、例えば、「今年中にもう1回骨髄穿刺を受けなくてはいけないなら、窓から飛び降りてやる」から、重大な絶望の表れや緊急事態、例えば、「もうこれ以上は私達全員に行われる仕打ちに耐えられないので、自殺します」まで、広い範囲にわたる。その考えの深刻さを探ることは必須である。自殺思考が深刻だと思われる場合には、精神科医または心理士への紹介を緊急に行い、患者の安全に気を配ることが必須である。自殺に関する詳しい情報については、本要約のがん患者における自殺のリスクのセクションを参照のこと。

がん患者におけるうつ病の最も一般的な総体的症状は、憂うつな気分を伴う適応障害であり、ときには反応性うつ病とみなされる。この障害の特徴的症状の発現は、患者に通常の活動ができなくなるような不快気分がある場合である。 [34] [証拠レベル:II]その症状は、長引き、また正常かつ予期された反応を上まわるようであるが、大うつ病エピソード基準には合致しない。これらの症状が、個人の毎日の役目、例えば、仕事、登校、買い物、家事などを著しく妨げる場合には、大うつ病の治療と同様に治療される(すなわち、危機介入、支持的心理療法、投薬、特に抑うつ症状を迅速に軽減する薬物の使用)。これらの症状に基づいて診断を行うと、患者が進行がんにかかっている場合や、病気自体のために機能障害が出ている場合には、問題となりうる。

しばしば相互関係がある疲労とうつ病を識別することもまた重要である。これらの病態を引き起こす異なる機序は別々に治療できる。 [1] 進行がんでは、絶望、罪悪感、生活を全く楽しめない、などに注目することが、うつ病の診断に役立つ。(詳しい情報については、がんへの適応:不安と苦痛に関するPDQ要約を参照のこと。)


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介入

うつ病に対する治療を開始する決定は、2~4週間で患者が自然に回復する可能性、機能障害の程度、抑うつ症状の重症度と持続時間次第である。 [1] 情動的苦痛およびうつ病の総体的症状の寄与因子(例、心理社会的因子、士気喪失、および疼痛や疲労といった共存症状)の性質を評価することが重要である。介入に関する決定は、うつ病の重症度とうつ病の総体的症状の原因になっている因子次第である。 [2] 重度の大うつ病の治療は、薬物療法と心理療法の併用で最大の効果を上げられることが、複数の研究によって示されている。 [2] したがって、たとえプライマリケア医または腫瘍医が抑うつ症状に対して薬物治療を行っていても、心理療法あるいは支持的カウンセリングへの紹介は考慮されるべきである。

以下の理由がある場合、精神科医の診察への紹介を検討すべきである: [3] [4] [5]


  • プライマリケア医または腫瘍医が、症状の特定の臨床的特徴のために患者のうつ病の治療が手にあまると感じている(すなわち、顕著な自殺傾向がある場合)。

  • プライマリケア医が治療している抑うつ症状が、薬理学的介入に対して介入後2~4週間たっても治らない。

  • 抑うつ症状が好転せず、むしろ悪化しつつある。

  • 抗うつ病薬を用いる治療の開始、薬物投与量の漸増、または治療の継続が、投薬に起因しうる有害作用によって中断、または問題があるとされた時。

  • 抑うつ症状のために、患者が治療に協力することができない。

薬理学的介入

概要

うつ病またはうつ病の症状が認められるがん患者において、抗うつ薬のリスクおよび便益を評価するランダム化プラセボ対照試験が不足している。さらに、このような試験は、方法論的な困難、および小児、青少年、年配者そしてマイノリティーグループの幅広い参加の欠如により、制限されている。 [6] それでも、入手可能な研究の系統的レビューおよびメタアナリシスにより、抗うつ薬はクラスに関係なく(例、選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI]または三環系抗うつ薬[TCA])、がん患者におけるうつ病の治療においてプラセボよりも有効であることが示唆されている。 [7] また、抗うつ薬治療の効力は臨床的に重大なうつ病の総体的症状の存在に関係しており [8] 、抗うつ薬は臨床的うつ病が認められる患者にのみ用いるべきであることが示唆されていることも証拠から示されている。

外来患者の腫瘍設定における処方パターンの2年間の調査によって、抗うつ薬が患者の約14%に処方されたことが明らかにされた。 [9] 成人うつ病患者に対する比較的新しい薬物療法の体系的総説の中で、抗うつ薬によるうつ病治療の奏効率は約54%であることが示された。 [10] 高齢者、および身体または精神疾患を併発している個人を含む一般的な患者に対しては、比較的新しい薬物療法の効果は従来の抗うつ薬と同等である。 [10] また有害作用による中断率は新しい抗うつ薬が約11%、従来の抗うつ薬が16%となっている。 [10]

がん治療における抗うつ薬使用のデータは比較的少ないため、がん患者に抗うつ薬を処方する場合の実際のパターンにはかなりのばらつきがある。全がん患者のおよそ25%がうつ病であることが複数の研究によって一般的に示されているが、抗うつ薬を投与されたのはがん患者の16%に過ぎなかったことがある研究によって明らかにされた。 [11]

抗うつ薬のクラス

抗うつ薬は基礎にある作用機序に基づいていくつかのクラスに分けられる。ほとんどが神経伝達物質の取り込みを阻害する;一部の抗うつ薬はまた細胞受容体に直接影響する(表2を参照のこと)。

表2.抗うつ薬治療aと補助的な薬理学的治療

CYP = チトクロムP450酵素;ECG = 心電図;GI = 消化管;IR = 即放性;MAOI = モノアミン酸化酵素阻害薬;NDRI = ノルエピネフリン-ドパミン再取り込み阻害薬;SNRI = セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬;SR = 徐放性;SSRI = 選択的セロトニン再取り込み阻害薬;TCA = 三環系抗うつ薬;XL = 持続放出性。
a抗うつ薬にはいずれも、自殺思考および自殺行動のリスク、躁病のリスク、およびMAOIと併用した場合の薬物-薬物相互作用のリスク(詳しい情報については、本要約のMAOIのセクションを参照のこと)について、枠付きの警告文書が載せられている。
bSNRIに関連する副作用に関する詳しい情報については、本要約のセロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)のセクションを参照のこと。

SSRI

・他の抗うつ薬よりも安全性-忍容性プロファイルが優れているため、がん患者において最も一般的に使用される。

・最もよくみられる副作用:消化管(例、吐き気、下痢、便秘)および性的機能障害(例、遅発射精、無オルガスム症、性欲減退)。

・低ナトリウム血症および出血のリスク。

・セロトニン症候群のリスクおよび急激な中止に伴うセロトニン中断症候群のリスク。

医薬品

開始用量(mg/日)

維持用量(mg/日)

解説

-シタロプラム 10–20 20–40 最低限の薬物-薬物相互作用。
他の抗うつ薬よりも安全性-忍容性プロファイルが優れている。
QTc延長の可能性(心臓に問題がある患者における増量は制限される)。
-エスシタロプラム 5–10 10–20 シタロプラムのS-エナンチオマー。
最低限の薬物-薬物相互作用。
他の抗うつ薬よりも安全性-忍容性プロファイルが優れている。
-フルオキセチン 10–20 20–60 半減期が長いため、セロトニン中断症候群のリスクはきわめて低い。
CYP2D6の顕著な阻害薬。
-フルボキサミン 25–50 100–300 他のSSRIよりも抗不安特性が優れている。
CYP1A2およびCYP3A4の顕著な阻害薬。
-パロキセチン 10–20 20–60 セロトニン中断症候群のリスクが高い。
わずかな抗コリン特性。
CYP2D6の顕著な阻害薬。
-セルトラリン 25–50 100–200 消化管副作用のリスクがより高い。
CYP2D6の用量依存性の阻害。
-vilazodone 10 20–40 消化管副作用のリスク。
おそらく性的機能障害のリスクは低いが、証拠は決定的でない。

SNRIb

・特定の併存疾患、特に疼痛症候群およびほてりにプラスの影響があることが知られている。これらの併存疾患を有するうつ病患者においてよく用いられる。

・高血圧や他の心臓の問題のリスク。一部の症例ではベースライン時のECGが推奨される。

・頭痛および過剰発汗のリスク。

・消化管の副作用、低ナトリウム血症および出血のリスク。

・セロトニン症候群のリスクおよび急激な中止に伴うセロトニン中断症候群のリスク。

医薬品

開始用量(mg/日)

維持用量(mg/日)

解説

-デスベンラファキシン 50 50–100 ベンラファキシンの活性代謝物。
最低限の薬物-薬物相互作用。
ほてりにプラスの影響。
-デュロキセチン 30 30–60 神経障害性疼痛が併存している患者における第一選択治療(最大120mgの用量で投与)。
消化管副作用および高血圧のリスクがより高い。
肝毒性のリスク。
-levomilnacipran 20 40–120 より強力なノルアドレナリン作用、賦活作用。
認知症状および疼痛症状が併存している場合に有用である。
心血管系の副作用、発汗、および排尿困難のリスク増加。
-ベンラファキシン(IRおよびXL)。 37.5–75 150–225 ほてりが併存している患者における第一選択治療。
セロトニン中断症候群のリスクがより高い。
最低限の薬物-薬物相互作用。

NDRI

一部の症例ではベースライン時のECGが推奨される。

医薬品

開始用量(mg/日)

維持用量(mg/日)

解説

-ブプロピオン(IR、SR、およびXL) 100-150(SRおよびXL) 150–450 刺激作用があり、性的機能障害は認められない。
用量依存性の痙攣発作のリスク(まれ)、不眠、頭痛、および体重減少。
SRおよびXL製剤は一般的に不安惹起作用を避けるために用いられ、IR製剤では痙攣発作のリスクがより高い。

非定型抗うつ薬

 

医薬品

開始用量(mg/日)

維持用量(mg/日)

解説

-ミルタザピン 7.5–15 30–45 不眠と悪液質が併存しているがん患者に頻繁に用いられる。制吐性効果が知られている。
高齢の患者では排泄が遅い。
鎮静、体重増加、およびめまい。
肝毒性および好中球減少のリスク。
-トラゾドン 25–50 50–200 主に他の抗うつ薬の補助薬として用いられる。不眠および不安が併存している場合に有用である。
顕著な鎮静および抗不安作用。
起立性低血圧、めまい、および持続勃起症(まれ)のリスク。

TCA

 

TCA-最も一般的に用いられるもの

・心毒性および神経毒性のリスクが高いために一般的に第一選択の薬物としては用いられない。既存の心伝導異常が認められないかを評価するためのベースラインのECGが推奨される。

・主に低用量で補助治療として用いられる。

・体重増加および抗コリン作用(口渇、起立性低血圧、めまい、鎮静など)のリスク。

・不眠および/または頭痛が併存している患者に有用である。

・特定のTCAでは血漿中濃度の治療域が明らかになっている。

・セロトニン症候群のリスクおよび急激な中止に伴うセロトニン中断症候群のリスク。

医薬品

開始用量(mg/日)

維持用量(mg/日)

解説

-アミトリプチリン 10–25 150–300 顕著な鎮静および抗コリン作用。
体重増加。
起立性低血圧。
めまい。
-クロミプラミン 25 100–250 他のTCAよりも多いセロトニン作用、弱い鎮静作用、少ない抗コリン作用。
-デシプラミン 25–50 100–300 軽度の鎮静作用。
最低限の抗コリン作用。
-ドキセピン 10–25 75–300 顕著な鎮静および抗コリン作用。
体重増加。
起立性低血圧。
めまい。
-イミプラミン 25–50 75–300 中等度の鎮静作用。
体重増加。
抗コリン作用。
起立性低血圧。
めまい。
-ノルトリプチリン 10–25 90–150 軽度の鎮静作用。
中等度の抗コリン作用。

MAOI

・主に治療抵抗性のうつ病に対して用いられる。

・MAOIには副作用、薬物-薬物相互作用、および薬物-食物相互作用の重大なリスクがあるため、精神科処方者の関与および薬学科への相談が強く推奨される。

・一般的な副作用としては、起立性低血圧、めまい、抗コリン性副作用、および頭痛が挙げられる。

・セロトニン症候群および高血圧クリーゼの重大なリスク。

・低チラミン食が必要である。

・医薬品:フェネルジン、セレギリン、およびトラニルシプロミン。

抗うつ薬の補助治療としての精神刺激薬

・特に著しい疲労の症状を呈する患者において刺激効果/活動増加効果を得るために用いられる。

・不安、激越、不眠、食欲不振、および精神病のリスク。

・高血圧および不整脈のリスク(ベースライン時のECGが推奨される);痙攣発作の閾値を下げうる。

・薬剤耐性、乱用、依存傾向のリスク。

・医薬品:デキストロアンフェタミンおよびメチルフェニデート。

他の補助治療

・抗精神病薬の薬物投与。

・ブスピロンは主に併存する不安症状を治療するための補助薬として用いられる。



以下のセクションでは、抗うつ薬の主なクラス、それらの基礎にある作用機序、安全性/忍容性プロファイル、およびがん患者集団において考えられる使用について記述している。 [7] [12]

選択的セロトニン再取り込み阻害薬

SSRIは、セロトニントランスポーターを遮断することでシナプス前神経細胞によるセロトニン(5-ヒドロキシトリプタミンまたは5-HTとも呼ばれる)の再吸収を遮断する。これにより、シナプス後神経細胞の受容体に結合できるセロトニンが増加する。シタロプラム、エスシタロプラム、およびパロキセチンといった医薬品は主に、セロトニントランスポーターを遮断することで作用する。他のSSRIは、抗うつ作用の基礎にある追加の機序を有する。例えば、フルオキセチンは5-HT2c受容体と呼ばれる特定のセロトニン受容体に結合し、セルトラリンはドパミントランスポーターを遮断し、vilazodoneは5-HT1aセロトニン受容体において部分アゴニズムを示す。このクラスの薬物は有効性および特定の副作用(例、消化管[GI]の副作用および性的機能障害)を引き起こす傾向については類似している。しかしながら、これらの薬物はこうした副作用の重症度については異なっており、他の神経生物学系統への影響(例、抗コリン作用、鎮静、または不眠)に関して追加の効果を有している可能性がある。

SSRIは一般的に肝臓で代謝されて腎排出され、半減期については大きく異なる。特定のSSRIの半減期は、親化合物とその代謝物の半減期に依存する。SSRIの急激な中止に伴う症候群であるセロトニン中断症候群は、SSRIおよびその活性代謝物の半減期に関係している(詳しい情報については、本要約のセロトニン中断症候群のセクションを参照のこと)。SSRIおよびその代謝物の半減期が短いほど、セロトニン中断症候群のリスクは高くなる。

セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)

混合されたSNRIは、5-HTおよびノルエピネフリン(NE)のそれぞれのトランスポーターによるこれら神経伝達物質の再取り込みを遮断することで、シナプスにおける両方の物質の濃度を高める。SNRIにはTCAなどの旧世代の薬物と、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、levomilnacipranなどの比較的新しい薬物がある。TCAは肝臓内で脱メチル反応により第二級アミン代謝物に転換される。第一級アミンおよびその第二級アミン代謝物はどちらも活性化合物である。イミプラミンデシプラミン)およびアミトリプチリンノルトリプチリン)の第二級アミン活性代謝物ははるかに強力なNE再取り込み阻害薬である。

比較的新しい薬物-ベンラファキシン、デスベンラファキシン、デュロキセチン、およびlevomilnacipran-は5-HTおよびNEトランスポーターに対する親和性に依存し、これらのトランスポーターの遮断において異なっている。ベンラファキシンは低用量では主にセロトニン作用を示すが、高用量では5-HTとNEの両方に作用する。デュロキセチンおよびデスベンラファキシンは低用量で5-HTとNEトランスポーターの両方を遮断することが知られている一方、levomilnacipranは他のSNRIと比較してより低い用量で最も高いノルアドレナリン作用を有する。こうした5-HTおよびNE作用の差は異なる患者集団において効力と副作用のプロファイルの差に関連しうる(例、セロトニン作用は不安が併存するうつ病の治療に有益な可能性がある一方、ノルアドレナリン作用は過眠、エネルギー欠乏、動機付けの不足といった非定型性の特徴を示すうつ病の治療に有益な可能性がある)。

SNRIの多くはまた、化学療法に伴う神経障害性疼痛を含む疼痛症候群にプラスの影響があることが知られている。SSRIと同様に、SNRIはGIおよび性機能の副作用を引き起こしうる。SNRIに関連する他の副作用は抗コリン性および抗ヒスタミンの特性から生じる。これらの副作用は、比較的新しい薬物よりもTCAではるかに顕著であり、鎮静、口渇、便秘、めまい(起立性低血圧による)、かすみ目、尿閉などがある。SNRIはまた頭痛および過剰発汗のリスク増加にも関連する。

これらの副作用の基礎にある正確な機序は依然として不明のままである。特定のSNRI、主としてTCAは、頭痛の治療における効力を確立している。特定の比較的新しいSNRI、特にベンラファキシンとデスベンラファキシンは、更年期症状に関連するほてりを治療することが明らかにされている。SNRIの他の副作用としては、主にノルアドレナリン作用から生じる用量に関係した拡張期高血圧および心血管系副作用のリスク増加が含まれる。

TCAは重大な心毒性および神経毒性(痙攣発作のリスクなど)に関連している。TCAの使用には、これらの医薬品のわずかな量の過量投与でも致死的となりうるため、最大限の注意を払う必要がある。これらの薬物は主として、抵抗性のうつ病の治療および頭痛や神経障害などの併存疾患の治療における補助として用いられる。比較的新しいSNRIは過量投与でもより安全であり、一次治療として、特にほてりや疼痛症候群などの併存疾患が認められるうつ病の管理において、はるかに高頻度に用いられる。

セロトニン中断症候群

中断症候群はSSRIとSNRIの両方のセロトニン作動性抗うつ薬の中止に関連している。 [13] この症候群は特にこれらの医薬品の急激な中断に関連しているが、特定の症例では緩やかな漸減でも起こりうる。この症候群には以下のような症状が含まれる:


  • 不快気分。

  • 不安。

  • 頭痛。

  • めまい。

  • 錯乱。

  • 激越。

  • 感覚障害(感覚異常など)。

  • 不眠。

  • まれな症例では自律神経不安定および痙攣発作。

この症候群は一般的に自己限定性であるが、まれな症例では医療的処置が必要である。治療では低い用量でのセロトニン作動性医薬品の再開始が行われ、これらの医薬品をより長い期間を掛けて緩やかに漸減する。すべてのセロトニン作動性医薬品、特にパロキセチンのような半減期の短いものは、中断症候群を回避するために緩やかに漸減することが強く推奨される。漸減のスケジュールが推奨される場合は、中断症候群の既往など、個別の患者の因子を考慮することも不可欠である。

セロトニン症候群

セロトニン症候群 [14] は高い用量の1つのセロトニン作動性医薬品から生じる可能性がある。より頻繁には、2つ以上のセロトニン作動性医薬品の不注意な同時使用(例、セロトニン作動性抗うつ薬と、トラマドール、フェンタニル、トリプタン、セイヨウオトギリソウ、またはモノアミンオキシダーゼ阻害薬[MAOI]との併用)により起こる。この症候群には以下が含まれる:


  • 消化管症状(例、吐き気、嘔吐、および下痢)。

  • 神経筋症状(例、硬直、振戦、ミオクローヌス、および反射亢進)。

  • 極端な症例における自律神経不安定(例、不安定な血圧、頻脈、高熱、および紅潮)。

  • 極端な症例における精神状態の変化(例、激越、せん妄、および昏睡)。

セロトニン作動性医薬品を患者の投薬レジメンに追加する前にすべての医薬品の注意深い再調査が推奨される。

ノルエピネフリン-ドパミン再取り込み阻害薬

ブプロピオンはこの作用機序を有する唯一の医薬品である。ブプロピオンはドパミントランスポーターを遮断する一方、その一次代謝産物の6-ヒドロキシブプロピオンは強力なNE再取り込み阻害物質である。プロピオンは非定型うつ病(すなわち、疲労および過眠を伴ううつ病)の治療においてより有効な可能性がある。ブプロピオンは、うつ病とがんの両方にかかっている患者の治療、特にうつ病が疲労を伴う場合に、SSRIとSNRIに代わる独特の薬物である。ブプロピオンはセロトニン作動性抗うつ薬とは異なり、性的機能障害に関連していない;したがって、性的に活発のままでいることを希望する患者と、他の抗うつ薬によって性的機能障害を経験している患者の治療に有用であろう。

ブプロピオンは投与頻度に基づいて次の3つの製剤で利用できる:即放性(1日3回)、徐放性(1日2回)、持続放出性(1日1回)。徐放性および持続放出性製剤は、投与の簡便性および不安や痙攣発作といった特定の副作用のリスクが低いために、より頻繁に用いられる。ブプロピオンによる痙攣発作のリスクは低いが、痙攣発作、頭部外傷、脳腫瘍、摂食障害の病歴などの素因により実質的に増加する可能性がある。

ブプロピオンは、脳の悪性疾患を有する患者、および頭部外傷または痙攣性障害の病歴を有する患者では避けるべきであり

[15] 、

過食症の病歴のある患者では禁忌である。

[16] [証拠レベル:II]ブプロピオンによる他の潜在的な副作用には不安および不眠が挙げられる。

さまざまな薬理作用を有する抗うつ薬

このカテゴリーの抗うつ薬は複数の薬理作用を有しており、モノアミントランスポーターの遮断および受容体の直接アゴニストまたはアンタゴニストの特性が組み合わされている。 [7] [12]

ミルタザピン

ミルタザピンはα-2アドレナリン受容体アンタゴニストであり、いくつかのセロトニン受容体(5-HT2a、5-HT2c、5-HT3)を遮断し、強力なH1ヒスタミン受容体アンタゴニストである。ミルタザピンによるシナプス前α-2アドレナリン受容体の遮断はNEの放出を引き起こし、その結果として5-HTを放出させる。NEおよび5-HTにおけるこの増加と5-HT2cおよび5-HT3受容体の遮断はミルタザピンの抗うつ作用に関連している。ミルタザピンの強力な抗ヒスタミン作用は重い鎮静を引き起こしうる;さらに、ヒスタミン受容体と5-HT2c受容体の遮断は食欲増進/体重増加に関連しており、5-HT3受容体の遮断は軽度の制吐効果をもたらす。ミルタザピンはチトクロムP450酵素に対して重大な影響を与えないため、薬物-薬物相互作用のリスクはきわめて低い。鎮静および食欲増進/体重増加の副作用は、不眠および悪液質と闘っているがん患者において有益な可能性がある。

ミルタザピンはがん患者に対して、特に不眠と体重減少が併存しているうつ病の治療に頻繁に用いられる。ミルタザピンはまた、薬物-薬物相互作用のリスクがきわめて低く、軽度の制吐効果があり、性的機能への影響が最低限であるため、この患者集団において有用である。ミルタザピンは顆粒球減少症/好中球減少症およびまれな症例で肝酵素の増加に関連している。特に併存疾患およびがんの他の治療により患者にこうした副作用のリスクがある場合は、血球数および肝酵素のモニタリングが必要である。まれな症例では、ミルタザピンは、主として他の強力なセロトニン作動性医薬品と併用する場合にセロトニン症候群のリスクがある(詳しい情報については、本要約のセロトニン症候群のセクションを参照のこと);ミルタザピンはセロトニン中断症候群には関連していない。

トラゾドン

トラゾドンは5-HT2aおよび5-HT2c受容体アンタゴニストで、弱いセロトニン再取り込み阻害薬である。トラゾドンは不眠と不安が併存しているうつ病の治療における補助薬として非常に有益なことがある。トラゾドンはヒスタミン、5-HT2c受容体、およびα-1受容体の遮断により、低用量でも強力な鎮静作用を有する。トラゾドンは主としてうつ病/不安を伴うまたは伴わない不眠の治療に低用量(25~150mg)で用いられる。トラゾドンは高用量(150~600mg)で用いる場合のみ、抗うつ作用に関連する。しかしながら、そのような高用量では、副作用のリスク(特に明らかな昼間の鎮静、起立性低血圧によるめまい、および他の心血管リスク)が高くなる。

MAOI

MAOIはMAO酵素の阻害により、3つすべてのモノアミン(ドパミン、セロトニン、およびNE)を同時に増加させる。古いMAOIはMAO-AとMAO-Bの両酵素を不可逆的に阻害する。これらの医薬品は、特に抵抗性のうつ病および不安症状の治療において非常に有効な場合がある。しかしながら、MAOIは、重篤な副作用のリスク、複数の薬物-薬物相互作用、および患者がこれらの医薬品を用いる場合に遵守しなければならない著しい食事制限のために、主として最後の手段として用いられる。

いくつかのクラスの医薬品は、重篤な、致死的でさえある相互作用のリスクのためにMAOIとの併用が禁忌であるか、細心の注意を払って用いられる。そのような医薬品のクラスには、交感神経興奮薬、麻酔薬、他のノルアドレナリン作用薬、セロトニン作動薬、およびドパミン作動薬が挙げられる。セロトニン作動性を示すメペリジンおよびメサドンといったオピオイドもまた、MAOIとの併用は避けるべきである。MAOIの投与を受けている患者は、潜在的に致死性の高血圧クリーゼを避けるために厳格な食事制限を遵守する必要がある。これらの医薬品の投与を受ける場合は、多量のチラミンを含む食べ物(例、熟成したチーズや肉)を避けることがきわめて重要である。MAOIに伴う高血圧クリーゼは、MAO酵素によるチラミン処理の不足のためにNEレベルが急激に増加することに関係している。

可逆性MAOIのセレギリンは経皮パッチとして利用可能である。セレギリンは低用量では選択的MAO-B阻害薬であり、そのため(9mgの用量まで)食事制限を必要としない。セレギリンは高用量では経皮的送達のために腸管におけるMAO-A酵素のほとんどを依然としてバイパスする一方、抗うつ効果を得るには脳内のMAO-AとMAO-Bの両方を阻害する必要がある。しかしながら、高用量を投与されている患者は、腸管内のMAO-A酵素が阻害される可能性があるため食事制限を守る必要がある。高い用量では、薬物-薬物相互作用のほか、古いMAOIと同様の副作用についての警告文書が載せられている。

がん患者におけるMAOIの使用は、がんおよびがん治療に関係する追加の危険因子(例、特定のがん治療およびトラマドールやメサドンといった鎮痛薬の使用による心血管系の併存疾患)のために、非常に抵抗性の症例に限定される。この患者集団では、先に述べた複数のリスクのために、ほとんどの症例でMAOIの処方と管理を精神医学臨床家が実施する。少なくとも、MAOIの開始時と管理期間中は精神疾患処方者の明確な関与が強く推奨される。

強化戦略

患者が抗うつ薬による一次治療で改善を示しても、この改善は臨床的な観点からすると、患者の健康や機能に影響する重要な総体症状が残存しているために不十分な場合がある。そのような症例では、特定の強化戦略が役立つことがある。 [17] しかしながら、強化戦略を検討する前に、最初の抗うつ薬が(特に用量と期間の点で)十分であることを確認することがきわめて重要である。強化戦略は、残存するまたは併存する総体症状によって選択される。以下のセクションでは、特定の強化薬物および戦略について記述する。

ベンゾジアゼピン類

ベンゾジアゼピン類は、うつ病に付随しうる不安の治療に有効に使用できる。抗うつ薬とベンゾジアゼピン類を併用している患者では、患者の抑うつ症状が軽減し始めた後はベンゾジアゼピン類を中止できるが、必要なら両方の薬物を続けても安全である。ベンゾジアゼピン類は急に中止できないが、その理由は痙攣発作の可能性を伴う離脱症状が起こることがあるからである。ベンゾジアゼピン類の用量は3~4日ごとに約25%の割合でゆっくりと漸減される。

精神刺激薬

臨床経験によって、興奮薬(例、メチルフェニデートおよびデキストロアンフェタミン)は、低用量で、憂うつな気分、感情鈍麻、エネルギー低下、集中力の低下、脱力感などの症状がある患者に有用と示唆されている。 [18] [証拠レベル:II]これらは通常、低用量で抗うつ薬の補助として処方される。興奮薬は、寿命の限られた(数週間から2~3ヵ月)進行がんの患者において、特に有用である。精神刺激薬は治療開始から2~3日以内の抗疲労効果をしばしば示す。これらの薬物はオピオイドの鎮静作用に対抗するのに有用なことがある。

興奮薬に関連する有害作用には、不眠、情緒不安定、さらには精神病症状などの神経精神医学的副作用がある。これらはまた心血管系の有害作用や痙攣発作のリスク増加にも関連している。これらの医薬品の使用について熟考している場合は、リスクと有益性について検討することがきわめて重要である。これらの医薬品は、適切な症例において最適な用量で使用される場合は、患者のQOL、特に進行がん患者に対して明らかにプラスの影響をもたらすことができる。

医学的および精神医学的併存疾患を治療するための補助薬

医学的および精神医学的併存疾患(例、神経障害、更年期症状、およびトラウマ症状)はうつ病の重症度に一定の役割を果たしている可能性がある。そのような状態はうつ病との二方向の相互作用を示す頻度が高く、一方が他方を悪化させる場合も、逆の場合もある。医学的/精神医学的併存疾患を治療できる抗うつ薬以外の医薬品は、精神医学的併存疾患が認められる患者のうつ病の管理においてきわめて重要な役割を果たす可能性がある。例えば、ガバペンチンは、併存する神経障害性疼痛、更年期症状、および不安症状を治療するために抗うつ薬の補助として使用できる。

治療抵抗性の症例における補助薬

がん以外(一般的な精神医学)の文献からの証拠では、治療抵抗性の症例における抗うつ薬の補助として他の医薬品および医薬品のクラスの役割が示唆されている。 [17] そのような医薬品および医薬品のクラスとして、抗精神病薬、甲状腺ホルモン、リチウム、ブスピロン、およびさまざまなクラスの抗うつ薬に対する特定の併用戦略がある。これらの医薬品の一部(例、抗精神病薬およびリチウム)は副作用の重い負担に関連している。治療抵抗性の症例に対しては、特にこれらの医薬品および医薬品のクラスを補助として検討する場合に、精神医学臨床家への紹介および/または広範な関与が強く推奨される。

抗うつ薬の選択と管理

いくつかの一般的な、がんに関係した、およびがん治療に関係した因子は、がん患者における抗うつ薬の選択と管理において重要な役割を果たす。 [19] [20] この患者集団に対するうつ病治療の選択において、一般的なリスク-便益-代替案原則はなおいっそう重要である。さらに、治療の決定について十分なインフォームド・コンセントと患者の積極的な関与がうつ病治療の選択と管理、および何らかの抗うつ薬の試行の成功には不可欠である。

標的とする症状

うつ病の特異的症状(例、疲労、不眠、および認知的困難)および関係する精神医学的併存疾患(例、不安障害)が優勢であるか、劣勢であるかは、抗うつ薬の選択に影響する。 [20] 例えば、うつ病の総体的症状の中で疲労が優勢的にみられる患者は、ブプロピオンを試すことで便益が得られうる。抗うつ薬の副作用は、一部の症例では臨床的に有利になりうる。例えば、ミルタザピンまたは特定のTCAに関連する鎮静および体重増加は、不眠および体重減少が併存している抑うつ患者に有益な可能性がある。

副作用の回避

がん患者は、がんおよびがん治療に関係して複合的な身体的および精神的有害作用に苦しむ頻度が高い。抗うつ薬による副作用を追加すること、または既存の問題の悪化によって健康状態をさらに悪化させないように抗うつ薬を選択することがきわめて重要である。例えば、がん患者は、性的機能に関する問題と闘っている可能性がある。性機能障害を悪化させる抗うつ薬は苦痛を強めて、うつ病を悪化させることがある。がんとがん治療による消化管の副作用に苦しんでいる患者もいる。吐き気や下痢など、重大な消化管の副作用のリスクが認識されている特定の抗うつ薬(例、セルトラリンおよびデュロキセチン)は、こうした患者では回避する必要があるであろう。

医学的併存疾患

特定の医学的併存疾患の有無により、抗うつ薬の選択が促されることがある。 [20] 例えば、QTc延長についての警告文書が載せられているシタロプラムなどの医薬品、あるいはlevomilnacipranなどの強力なノルアドレナリン作動性の抗うつ薬は、重大な心血管系の併存疾患を有する患者で回避する必要があるであろう。化学療法に関係した神経障害が併存しているうつ病患者では、デュロキセチンはうつ病と神経障害性の症状の双方を標的にしているため、この薬物は有益な可能性がある。同様に、うつ病と更年期症状が認められる患者は、両方を治療することが知られているベンラファキシンを試すことで、便益が得られる可能性がある。

抗うつ薬の薬理学

抗うつ薬は、同じクラスであっても薬理学的に大きく異なることがある。抗うつ薬は、吸収;半減期(活性代謝物の半減期も含む);およびさまざまなチトクロムP450酵素を介した代謝およびこの酵素への影響が異なることがある。これらの差が、がんの種類およびがん治療に応じて重要な役割を果たす可能性がある。

同時に投与する医薬品

抗うつ薬について熟考している場合は、同時に投与する医学的および精神医学的医薬品との薬力学的および薬物動態学的相互作用を検討することがきわめて重要である。例えば、ミルタザピンのような鎮静作用の強い抗うつ薬は、オピオイドやベンゾジアゼピン類など、同時に鎮静作用を有する医薬品との併用は望ましくない。パロキセチンやデュロキセチンなどの強力な2D6チトクロムP450酵素阻害薬は、タモキシフェンの効力に対する影響に関する懸念のために(タモキシフェンがその活性代謝物であるエンドキシフェンに変化するのを阻害するために)タモキシフェン投与患者には推奨されない。

患者と生物学的な家族に対する抗うつ薬の試み

抗うつ薬の経験(すなわち、プラスの反応または副作用などのマイナスの経験)について患者と家族から集めた情報は、抗うつ薬の選択において非常に重要な場合がある。患者と生物学的な家族が共有する遺伝的背景(例、セロトニントランスポーターの多型)は、特定の医薬品または医薬品のクラスに対する反応性に影響する可能性がある。生物学的な家族について抗うつ薬が成功したか、または失敗したかに関する情報は、抗うつ薬の選択において重要な役割を果たすことがある。

剤型

抗うつ薬の剤型の入手可能性は、特定のがん患者集団に対する抗うつ薬の選択においてきわめて重要な役割を果たす可能性がある。例えば、頭頸部がんの患者は、疾患、その治療、またはその両方のために嚥下困難である場合がある。そのような症例では、抗うつ薬の液剤(例、シタロプラムおよびフルオキセチン)または非経口剤(例、アミトリプチリン注入)での使用が必要であろう。

生体利用率

特定のがんは医薬品の吸収(例、消化管がん)または代謝(例、肝がんおよび腎がん)に影響しうる。そのため、抗うつ薬の選択は、問題を回避するため個別の抗うつ薬の薬物動態学的プロファイルによって決定されることがある。症例によっては、治療の有益性を最大限に引き出すために推奨されるガイドラインを越えて抗うつ薬の用量を調整する必要があるであろう。

最初の用量漸増および管理

一般に抗うつ薬は、投与開始から治療反応の発現までに長い反応期間(3~6週間)を要する。 [12] 抗うつ薬治療は低用量から始まり、用量漸増法により患者に合わせた最適な反応を達成する。低用量での開始は初期の副作用の回避に役立つであろうが、治療効果を得るには用量の漸増が必要となる。一部の薬物については、血漿中濃度が患者の抗うつ反応と相関する治療域(therapeutic window)が存在する(例、ノルトリプチリン)。これらの薬物を投与されている患者は、血漿中濃度が定義された治療域に満たない、あるいはそれを超える場合、治療の失敗または最適な反応が得られない事態につながり、薬物濃度が高い場合は不必要な毒性にもつながるため、連続的な薬物濃度モニタリングは治療の指針となり、また適切な治療の提供に役立つ。

大うつ病エピソードに対しては抗うつ薬は少なくとも1年間継続することが推奨される。1年を超える抗うつ薬の継続は、その時点の患者の心理的状態、精神医学的病歴、がんとがん治療の状態、およびさらに重要なものとして抗うつ薬に関する患者の考えと経験を含めたいくつかの因子によって決まる。開始と同様に、決定はリスク-便益-代替案原則と患者の選択に従って個別に対応される。

インターフェロンに関係するうつ病

抗うつ薬の処方は、ほとんどが既存のうつ病性障害または著しい抑うつ症状の治療を対象としている。しかしながら、1件の研究は、悪性黒色腫の補助療法で高用量のインターフェロンを投与されている患者に対して、うつ病予防のための抗うつ薬使用を支持している。 [21] [証拠レベル:I]このアプローチの理論的根拠は、高用量インターフェロン治療が、この患者母集団におけるうつ病の発生率が著しく高いことと関連があり、うつ病をもたらす生物学的な変化に関係のある炎症性サイトカインを、抗うつ薬が直接減少させうるというものである。

高用量インターフェロンを投与されている患者の二重盲検試験において、パロキセチン群では18人中2人の患者が治療開始後12週間以内にうつ病を発症し、これに対してプラセボ群では20人中9人が発症した(相対リスク[RR] = 0.24;95%信頼区間[CI]、0.08-0.93)。さらに、パロキセチン群においては治療の中止が有意に少なかった(5% vs 35%、RR = 0.14;95%CI、0.05-0.85)。 [21] さらなる研究によってこれらの知見を確認し、抗うつ薬の予防的使用が他の治療の場合にも有益かを決定する必要がある。

抗うつ薬に伴う自殺のリスク

過去数年間、小児、青年、および若年成人における抗うつ薬使用に伴う自殺思考および自殺行動のリスクについてかなりの懸念が生じている。2004年10月には、FDAにより、製薬会社は抗うつ薬の投与を受けている小児患者における自殺傾向のリスク増加を忠告する枠付き警告をすべての抗うつ薬のラベルに追加するよう義務付けられた。2007年5月には、FDAにより、この枠付き警告は25歳未満の若年成人を含めるように改訂された。 [22] 慎重に記述された新しい警告では、抗うつ薬とうつ病の両方が自殺傾向のリスクと関連していることが強調された。小児、青年、および若年成人における自殺傾向の増加について生じている懸念に加えて、この警告では65歳以上の成人における抗うつ薬の明らかな予防効果を認めている。

小児患者において最初の枠付き警告につながったメタアナリシスでは、抗うつ薬は、プラセボと比較して小児および青年における自殺念慮および自殺行動の2倍の増加と関連すると結論付けられた。 [23] Journal of the American Medical Associationにおいて発表された主要なメタアナリシスでは、小児と青年の研究(最初のメタアナリシスに含まれなかった7件の研究を含む)からのデータが、変量効果モデルを用いて再解析された。 [24] [証拠レベル:I]この再解析では最初のメタアナリシスと一致して自殺念慮/自殺行動の全体的なリスク増加が認められたが、併合リスク差はより小さく、統計的に有意なものではなかった。

警告の意図されなかった結果として、最も恩恵を受ける患者における抗うつ薬の使用が過度に制限されるために、警告が防止しようと努めている自殺傾向が増加するという懸念が生じている。

以上をまとめると、リスク-便益-代替案原則は自殺傾向に対する注意深い監視と抗うつ薬の適切な使用を支持している。枠付き警告につながった研究で、がんに対する治療を受けている患者を含む、または彼らに焦点を当てている研究はないことに注意することが重要である。臨床経験および小規模臨床試験の結果から、抗うつ薬は成人がん患者に安全に投与できることが示唆されているが、これを支持する大規模な対照臨床試験はない。抗うつ薬ががん患者に処方される場合、注意深い監視計画の実施が専門知識をもつ医師によって検討されるべきであり、予想外の反応を示す患者、または他の心配がある患者には専門家への紹介がなされるべきである。

心理療法

概要

伝統的にうつ病の症状は洞察中心の心理療法を用いて管理されており、がん患者の中にもこの方法が非常に有用な者がいる。その他の多数の患者にとってこれらの症状の最良の管理方法は、危機介入、短期の支持的心理療法、認知行動療法の併用である。

うつ病に対する心理療法はさまざまな形で提供されている。ほとんどの介入は短期間で行われ(範囲、4~30時間)、個人形式および少数グループ形式のいずれでも提供されており、がんや特異的なリラクゼーション要素について教育する構成要素を含んでいる。 [25]

認知行動心理療法は検討されている治療法の中で最も知名度が高い治療法の1つとなっている。認知行動介入では、以下に焦点を当てている:


  • 全適応を改善することを目的とした特異的な対処戦略を変更すること。

  • 特別な思考および感情と行動との関係。

人の思考を理解し変化させることにより、情動反応および付随する行動を変えることができる。例えば、損失、人生の変化、または死亡に関する頻繁で侵入的な抑制できない思考により、集中力が低下し、悲しみ、罪悪感、および無益感といった感情を生じさせることがある。そして次にこうした感情は、過眠、引きこもり、および孤立といった結果をもたらす。認知行動介入は侵入的思考に集中し、しばしばその正確度または合理性を検証し、認知のゆがみの特異的パターンに注目している。同時に、患者は、情動反応および付随する行動を変えるためにデザインされた特異的な認知対処戦略を発達させる。結果は、対処の改善、適応の向上、およびより良好な全生活の質である。

心理療法のその他の目標には以下が含まれる: [26] [証拠レベル:II]; [27] [28] [29] [証拠レベル:I] [30]


  • 対処能力の向上。

  • 苦痛の直接的軽減。

  • 問題解決能力の改善。

  • 支援の集結。

  • 否定的または自滅的な思考の再修正。

  • 十分な知識があり親身になってくれる医療スタッフと親密な個人的絆を結ぶこと。

聖職者またはパストラルケア部門のメンバーとの相談が有用な患者もいるだろう。

これらの治療の具体的な目標は以下の通りである:


  • がん患者とその家族に対する援助として、病気とその治療に関する質問に答え、情報を明確にし、誤解を正し、不安を取りのぞき、病気への反応と病気が患者の家族に及ぼす影響を正常なものにする。患者の現在の状況とこれまでのがん罹患経験にどのような関連があるかを探る。

  • 問題の解決を助け、患者の通常の適応的防衛を強化し、患者と家族がさらに支持的な適応対処メカニズムを身につける手助けをする。不適応対処メカニズムを確認した場合には、家族が代わりの対処戦略を身につける手助けをする。関連するストレス要因の領域(例、家族の役割と生活様式の変化)を調べ、家族のそれぞれが支え合い、互いの心配を分かち合うことを勧める。

  • 治療の中心が治癒から緩和へと変わった場合、治癒的治療が終わっても医療チームは緩和計画の一部として積極的に症状の治療を行う予定であること;患者と家族は見捨てられるわけではないこと;スタッフは熱心に働いて、快適さを維持し、疼痛管理を行い、患者と家族の尊厳を守る意志を強調する。

がん支援グループは、がん患者の治療において有用な補助的療法になりうる。 [31] [32] [証拠レベル:II]支援グループによる介入は、気分障害、建設的な対処戦略の使用、生活の質の改善、プラスの免疫反応などに顕著な効果を示している。 [33] [34] [証拠レベル:I] [35] 支援グループは、Cancer Support Community米国がん協会(American Cancer Society)を通じて探し出すことができ、その他にも医療施設や病院の社会福祉事業部門など、地域社会の情報源は数多くある。

心理療法の効力の経験的研究

心理療法は、一般の成人メンタルヘルス集団におけるうつ病の治療法として広範囲に研究され、有効であることが明らかにされている。 [36] 複数のレビューにより、心理療法はうつ病を経験しているがん患者に対しても有効な介入であると結論付けられている。 [37] [証拠レベル:II] [25] うつ病の発生を予防するようにデザインされた研究において(すなわち、患者は抑うつ症状のために選択されたわけではない)、介入により、効果の大きさは軽度~中等度であると報告されている(効果の大きさの範囲、0.19~0.54)ものの、プラスの効果が認められる。 [25] しかしながら、患者が抑うつ症状を示したために意図的に選択された研究では、介入により強い効果が認められた(効果の大きさ、0.94)。 [37] 0.94の効果の大きさは、対照群の患者の約82%と比較して、治療群の平均的な患者の方が有利であるということを示す。

うつ病のがん患者に対して認知行動介入を実施した1件のデザインの優れたランダム化臨床試験により、問題解決のためのトレーニングの抑うつ症状への効果が調査された。 [38] [証拠レベル:I]毎週1.5時間の個人的な心理療法セッションを10回実施する介入では、問題を効果的に解決できるようになるためのトレーニングに焦点が当てられた。問題を解決する作業が強調され、これには(a)問題の性質をより良く決定し、公式化する、(b)代替の解決策を幅広く見いだす、(c)1つの解決方法の結果を系統的に評価する一方で、最適な解決方法を決定する、および(d)解決方法実施後の結果を評価する技術が含まれた。各段階に関連した作業についてセッション間に宿題が割り当てられ、患者は文書のマニュアルが提供され、問題が生じたときにマニュアルを参照するように促された。成人がん患者132人が、問題解決治療群、または待機リスト対照群にランダムに割り付けられた。全体の結果により、問題解決能力の改善および抑うつ症状の臨床的に有意な減少の両方が示された。

最新の臨床試験

現在、参加者を受け入れているうつ病についての支持療法と緩和ケアの試験は、NCI支援のがん臨床試験のリストを参照のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験のリストは、場所、薬物、介入、他の基準によりさらに絞り込むことができる。

臨床試験に関する一般情報は、NCIウェブサイトからも入手することができる。


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がん患者における自殺のリスク

人口統計学および統計学

いくつかの国にわたって実施された疫学的研究により、がんは自殺の危険因子であることが示されている。 [1] [2] [3] [4] [5] 1件のレトロスペクティブ・コホート研究(N = 3,594,750)では、がん患者における自殺は一般集団の2倍近くも発生したことが明らかにされた。 [1] 一般集団と比較してがん患者における自殺念慮、自殺行動、および自殺未遂の割合増加が実証されている。 [5] [6] [7] がん患者における実際の自殺率は、こうした状況で自殺による死亡を報告することには躊躇があるため、そして自殺統計の妥当性に関係した方法論的問題により、おそらく過小評価されている。 [3]

がん患者における自殺に対する特定の臨床的および社会人口統計学的危険因子が同定されている。 [3] [8] 一般集団と同様に、自殺のリスクは男性のがん患者の方が女性患者におけるよりも高い。 [3] [9] 高齢であることは、別の有意な危険因子である。1つの研究者グループにより、自殺リスクが年齢とともに増加すること、および高齢の男性が最もリスクが高いことが明らかにされた。 [1] この研究により、80~84歳の患者における年齢調整後の自殺率は10万人年当たり52.4であったのに対し、一般集団の同じ年齢グループでは22.0であったことが明らかにされた。注目すべきことに、この年齢グループの男性がん患者に対する自殺率(10万人年当たり100.3)は、女性の自殺率よりもかなり高かった。人種および婚姻の有無もまた重要な役割を果たしている。独身の、離婚した、または妻を亡くした白人男性は、他の患者集団よりも自殺リスクが高い。 [10]

別の一貫した危険因子は、診断からの期間に関係している。諸研究により、診断後最初の1年間、特に最初の3~5ヵ月の間は自殺リスクが高いことが一貫して示されている。 [3] [4] [9] 一般に、このリスクは時間の経過とともに低下する。しかしながら、特定の種類のがんについては、診断から何年も経過した後に長期の自殺リスクが高くなるという証拠がある。 [2] 頭頸部がん、膀胱がん、膵がん、肺がん、上部消化管がん、脳腫瘍、子宮頸がんなど、特定の種類のがんは、自殺リスクが高くなっている。 [1] [9] [11] 他の危険因子としては、余命が5年未満の非限局性のがんおよび侵攻性のがんまたは進行がんが挙げられる。 [8] 物質使用;がん関連疼痛;併存する精神疾患、特にうつ病と不安といった特定の併存疾患では自殺リスクが高くなっている。 [12] [13]

精神科医に紹介後大うつ病と診断された日本人のがん患者(n = 220)を対象にした研究において、約50%が自殺念慮を報告した。自殺念慮を予測する判断材料についてレトロスペクティブな分析を行ったところ、大うつ病の症状が多く、身体的機能が悪い者が、自殺念慮を報告する可能性が有意に高いと判明した。 [14]

がんの母集団における自殺の危険因子は以下の通りである: [15]


  • 社会人口統計学的因子:
      男性。
      より高い年齢。
      独身の、離婚した、または配偶者を亡くした状態。

  • 医学的因子:
      進行期、非限局性、または侵攻性のがん。
      不良な予後(余命が5年未満)。
      最近のがん診断(診断後3~5ヵ月以内が最も高リスク)。
      前立腺、肺、頭頸部、膵臓といったがんの位置。
      管理できない疼痛などの身体症状。
      機能およびパフォーマンスステータスの低下。
      疼痛コントロール不良。

  • 精神医学的および心理社会的因子:
      併存するうつ病または不安。
      絶望感。
      士気喪失。
      攻撃性;治療チームとの治療のための協力不足。
      既存の精神病理。
      合併する物質使用。
      自殺未遂の病歴。
      自殺の家族歴。
      社会的支援の不足。
      自立性の欠如および負担になっているという感情;関連する罪悪感。


参考文献
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  12. Henriksson MM, Isometsä ET, Hietanen PS, et al.: Mental disorders in cancer suicides. J Affect Disord 36 (1-2): 11-20, 1995.[PUBMED Abstract]

  13. Akechi T, Nakano T, Akizuki N, et al.: Clinical factors associated with suicidality in cancer patients. Jpn J Clin Oncol 32 (12): 506-11, 2002.[PUBMED Abstract]

  14. Akechi T, Okamura H, Yamawaki S, et al.: Why do some cancer patients with depression desire an early death and others do not? Psychosomatics 42 (2): 141-5, 2001 Mar-Apr.[PUBMED Abstract]

  15. Anguiano L, Mayer DK, Piven ML, et al.: A literature review of suicide in cancer patients. Cancer Nurs 35 (4): E14-26, 2012 Jul-Aug.[PUBMED Abstract]

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自殺傾向のある患者の評価と管理

評価

自殺の評価はがんの継続とともに頻繁に実施される。自殺評価の要素としては、危険因子、患者の精神状態、社会的状況、および極度の苦痛またはうつ病を示す非言語的な徴候(アイコンタクトの不足、激越、または過度の緩慢など)の査定が含まれる。 [1] [2] [3] 絶望は、一般集団およびがん患者における自殺念慮および自殺既遂の強力な予測因子である。 [4] Beck Hopelessness Scale、Suicide Intent Scale、およびColumbia-Suicide Severity Rating Scaleといった特定の自殺に関するスクリーニング・ツールは、一般集団および精神病を有する患者における自殺のリスクをスクリーニングするために用いられる。 [5] ただし、これらのツールはがん患者に対する妥当性については確認されていない。 [2]

自殺の評価におけるこの他の複雑にする因子として、士気喪失症候群および速やかな死を求める願望が含まれる。 [6] [7] 士気喪失症候群の概念には、絶望感、無力感、人生の意義の喪失に持続的に対処できないことが含まれる。 [8] 士気喪失症候群はDemoralization Scaleを用いて評価できる。 [9] 証拠から、士気喪失症候群はがん患者においてうつ病の総体的症状を伴ってまたは伴わないで認められる場合があることが示唆されている。 [10] 台湾人患者(n = 200)において実施された研究により、士気喪失はうつ病の総体的症状よりも自殺念慮を予測したことが明らかにされた。 [6] この研究により、士気喪失が自殺念慮に及ぼす影響において意義の喪失はきわめて重要な因子であることが明らかにされた。

自殺念慮と速やかな死を求める願望、医師幇助自殺の依頼(詳しい情報については、人生の最後の数日間に関するPDQ要約の速やかな死の要求のセクションを参照のこと)、安楽死のいずれかまたはすべてとの関係は複雑であり、ほとんど解明されていない。 [7] [11] 速やかな死を求める願望には、死が直ぐに訪れることへの期待が含まれる。そうした願望は、脱出計画(自殺の考え)を伴った絶望の表現;家族や友人に対して負担になりたくないという社会的に追い詰められた願望 [12] ;または健全な終了のプロセス、すなわち解放の表明として精神病理学で扱われる可能性がある。 [13]

自殺傾向のあることが明らかにされている患者には慎重な追加の評価が必要である(表3を参照のこと)。自殺を評価する際には、患者が念慮(すなわち、自殺を考えること)に加えて計画(すなわち、方法の説明)を報告する場合には、自殺のリスクが高まっていると認識することが重要である。リスクは増し続け、ついには計画が致死的である段階に至る。 [3] 致死性は、報告された計画が行われた場合に、どの程度確実に死が訪れるかを評価することで判断する。

致死性を評価する際に考慮すべき因子には、以下がある:


  • その方法が利用可能なのか。

  • その方法の可逆性はどうか(ひとたび始めた場合に中止できるのか)。

  • 助けが近いのか。

自殺念慮を報告しているがん患者については、根底にひそむ原因がうつ病性障害なのか、速やかな死を求める願望なのか、または耐え難い症状を根本的に制御したいという願望の現れなのかを判断することが欠かせない。 [7] 大うつ病の迅速な同定と治療が、がん患者における自殺のリスクを減らす上で不可欠である。危険因子、とりわけ絶望(うつ病よりもさらに強い自殺念慮および自殺既遂に対する予測因子)は慎重な評価を必要とする。 [4] 絶望の評価は回復の望みのない進行期の患者においては、容易ではない。絶望の根底にひそむ理由を評価することが重要であり、その理由には、症状管理不良、苦痛に満ちた死に対する恐怖、または自暴自棄の感情などが関係している可能性がある。 [14]

自殺傾向のあるがん患者との関係においてはラポールの確立が最も重要であり、それが他の介入の基礎として役立つ。臨床医は、自殺の話をしたことが原因で患者が自殺を試みることはないと確信すべきである。それどころか自殺について話すことでこの重大事が正当なものだとされ、患者は自分の感情や恐怖について話すことができ、コントロールできる。 [2] [7] 支持療法的な関係が維持され、その関係によって、感情的および身体的苦痛を軽減するためにできることは多いのだという心構えが伝わる。(詳しい情報については、がん性疼痛に関するPDQ要約を参照のこと。)

可能な限りの患者支援システムを集結した危機介入的な精神療法のアプローチが開始される。 [2] 原因となる症状(例、疼痛)は積極的に抑えられ、うつ病、精神病、激越、せん妄の根底にある原因などが治療される。 [2] [7] これらの問題は普通の病院、または自宅で最も頻繁に管理される。一般的ではないが、精神病院への入院も、症状が明確で、患者が医学的に安定している場合には有用である。 [2]

表3.がん患者における自殺傾向症状の評価に推奨される質問a

質問 評価
a出典:Roth et al. [15]
がん患者の大多数は「状況が悪化したら自分は何かしでかすかもしれない」など、自殺にまつわることを一時的に考える。 話すことでリスクが高まることはないと口火を切り、正常だということを認める
こんなふうに考えたことがありますか?生きていたくないとか、病気が死を早めればいいとか? リスクのレベル
自殺を考えたことがありますか?どうやって自殺するか考えたことがありますか?自分を傷つけようとしたことがありますか? リスクのレベル
憂うつになったことや自殺未遂をしたことがありますか? 病歴
今までに他の精神的問題で治療を受けたことがありますか、またがんの診断を受ける前に精神科に入院したことがありますか? 病歴
アルコールまたは薬物で問題を起こしたことがありますか? 物質乱用
最近身近な人を亡くしましたか?(家族、友人、その他がんにかかった人。) 死別反応


管理

実地臨床では、自殺傾向のある患者の管理の目標は、症状コントロール不良から自暴自棄に陥り、衝動的に自殺することを予防することにある。症状コントロール不良のために苦痛が長引くと、このような自暴自棄を引き起こす。したがって有効な症状コントロールは、自殺傾向のあるがん患者の心理的苦痛を減少させるために重大である。 [2] [7] 終末期が近い患者は、高レベルの感情的または身体的苦痛なしに覚醒状態を維持できないことがある。これが自殺思考や、死への幇助の依頼に高い頻度でつながる。このような患者では患者の苦痛を和らげるために鎮静薬による治療が必要である。

ときには、自殺のリスクがあると考えられる患者に対し致死的となりうる薬物へのアクセスを制限することは重要である。致死的となりうる薬物が制限される場合、症状の管理不良がリスクの一因となりうるため、自殺のリスクに対する影響と症状管理に対する影響を比較検討することが重要である。さらに、自殺傾向のある患者はしばしば自殺未遂を完結するための他の利用しうる手段をもち、これらも評価されなければならない。自殺のリスクを軽減する戦略には、自殺のリスクおよび症状管理を再評価するための頻繁な接触、ならびに、制御不良な症状を効果的に管理するため、必要な時に迅速に用量が漸増漸減できるように、定期的に量を制限した投薬を行うなどがある。オピオイドの非経口的またはくも膜下投与を受けている患者に対しては、プログラムへのアクセスが制限され、施錠されアクセスできないカートリッジが付いたプログラム可能なポンプが多少安全であろう。

がん患者における自殺のリスクを軽減する戦略には以下が含まれる:


  • 心理士または他のメンタルヘルス専門家に紹介する。

  • 抗うつ薬療法が効果を現すまでの間、速やかに働いて苦痛を軽減する薬物を投与する(例、不安にベンゾジアゼピン、疲労に興奮薬など)。

  • 症状管理に細心の注意を払う。

  • 過剰摂取が死につながる薬物を適切な量以上入手できないようにし、利用可能な州/区域では家族が確実にナロキソンの家庭用キットを備えておくようにする。

  • 患者との頻繁な接触を保ち、厳重に観察する。

  • 患者が長時間ひとりで過ごすことを避ける。

  • 患者に対する支援を集結する。

  • 病気の全経過にわたって、それぞれの危期における患者の心理的反応を慎重に評価する。


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  12. Filiberti A, Ripamonti C, Totis A, et al.: Characteristics of terminal cancer patients who committed suicide during a home palliative care program. J Pain Symptom Manage 22 (1): 544-53, 2001.[PUBMED Abstract]

  13. Nissim R, Gagliese L, Rodin G: The desire for hastened death in individuals with advanced cancer: a longitudinal qualitative study. Soc Sci Med 69 (2): 165-71, 2009.[PUBMED Abstract]

  14. Breitbart W, Passik SD: Psychiatric aspects of palliative care. In: Doyle D, Hanks GW, MacDonald N, eds.: Oxford Text Book of Palliative Medicine. New York: Oxford University Press, 1993, pp 609-26.[PUBMED Abstract]

  15. Roth AJ, Holland JC: Psychiatric complications in cancer patients. In: Brain MC, Carbone PP, eds.: Current Therapy in Hematology-Oncology. 5th ed. St. Louis, Mo: Mosby-Year Book, Inc., 1995, pp 609-18.[PUBMED Abstract]

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小児のうつ病に対する考慮事項

健康な小児におけるうつ病発生率の情報は限られている。1件の研究では、全科診療で診察された小児の38%が精神科医による重大な介入を必要とする問題を抱えていることが示された。別の研究では、7~12歳までの小児についてのうつ病の発生率は1.9%であった。これを全米の一般集団に当てはめると、これらの結果は12歳の小児のうち40,000人がうつ病であることを示している。教師は自分たちの生徒の10~15%がうつ病であると推定している。児童精神衛生合同委員会(The Joint Commission on Mental Health of Children)によれば、18歳未満の小児140万人がうつ病などの障害のために緊急の援助を必要としている;障害に対する援助を受けているのはその3分の1に過ぎない。 [1]

ほとんどの小児はがんに関連する感情の激変にうまく対処し、単なる適応だけでなく、前向きな心理社会的成長と発達を示す。しかしながら、少数の小児が以下の心理的問題を示す: [2]


  • うつ病。

  • 不安。

  • 睡眠障害。

  • 対人関係障害。

  • 治療に対するノンコンプライアンス。

これらの小児はメンタルヘルス専門家への紹介と介入が必要である。

初期の研究の1つで、小児期のがんにおけるうつ病について114人の小児および青年を対象にした研究では、59%が軽度の精神医学的問題を抱えていることが明らかになった。 [3] 青年17人と小児21人のがん患者の研究で、自己記入式心理社会的出来事の項目表(a self-report psychosocial life event inventory)を行ったところ、青年の抽出標本の抑うつ症状の平均レベルは通常の一般集団と同レベルを示した。小児がん患者の抽出標本は一般集団に比較して有意に低いレベルの抑うつ症状を示した。 [4] [証拠レベル:II]小児期のがんの生存者である青年41人が、質問票と面談を用いた判定で心理社会的状態を評価された;ほとんどの生存者は機能面で健康であり、うつ病はまれだった。 [5]

がんの長期生存者とその母親の研究で、生存者たちを健康な小児92人のグループと比較したところ、元患者のほとんどは機能の点で正常の範囲内にあることが示された。驚くにはあたらないが、重度の晩期障害のある小児ほど、多くの抑うつ症状がみられた。 [6] [証拠レベル:II]ある研究者は、小児がんセンターにおける精神科医の診察の特徴を調べ、主な心理社会的診断は適応障害であることを見いだした。この知見は、成人のがん患者の研究で得られた結果と同様である。この研究ではまた、年齢の低い小児患者では不安反応がより一般的で、年齢の高い患者ではうつ病性障害がより一般的であることが分かった。 [7] 1988年に30人の青年がん患者について行われた研究では、大うつ病の割合は一般の母集団の割合を超えなかった。 [8] [証拠レベル:II]ある総説は、精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)第3版の判定基準を用いて17%のうつ病発生率を報告した。 [9]

がんの生存者の大部分は全般に溌剌とした様子を示し、疾病とその治療に対する心理学的適応は良好である。適応に成功した例が証明されても、なおほとんどの研究はがんの生存者のかなりの部分に心理学的障害があることを立証している。

小児のうつ病の評価および診断

評価

depression(抑うつ、憂うつ、うつ病)」という用語は、症状、症候群、一連の精神的反応、または病気を指す。 [1] 行動的発現(例、悲しみ)の持続時間と強さによって、症状と障害が区別される。例えば、悲しみの情動は外傷に対する子供の反応かもしれず、普通は持続時間が短い;しかし、抑うつ性の病気は持続時間の長さが特徴であり、不眠、神経過敏、食習慣の変化、および子供の学校、社会への重度の適応障害と関連する。何らかの行動的問題が持続する場合には、いつでもうつ病を考慮に入れるべきである。うつ病は一過性の悲しみを指すのではなく、むしろ発達に影響を及ぼし、小児の生得の潜在能力の実現を妨げる障害を指す。 [1]

学童のうつ病の発現には、以下のものがある: [1]


  • 食欲不振。

  • 嗜眠。

  • 悲しみの情動。

  • 攻撃性。

  • 啼泣。

  • 多動。

  • 身体化。

  • 死の恐怖。

  • 欲求不満。

  • 悲しみまたは絶望の感情。

  • 自己批判。

  • 頻繁に起こる白昼夢。

  • 自尊心が低い。

  • 不登校。

  • 学習の問題。

  • 動作が鈍い。

  • 親および教師に対する間欠的な敵意。

  • 以前は楽しかった活動に対する興味の喪失。

これらの症状を、正常な発達段階に対する行動反応と区別することが重要である。

うつ病の評価には、小児について以下の確認が含まれる: [10]


  • 家族の状況。

  • 情緒的な成熟のレベル。

  • 病気と治療に対処する能力。

  • 年齢。

  • 発育状態。

  • 以前病気にかかった経験。

  • 個人的なエゴの強さ。

小児期のうつ病に対する総合的な評価は、正確な診断と治療の基礎である。小児と家族の状況の評価には、小児期の健康の履歴;開業医により観察される行動、または他の者(例、親や教師)に報告される行動;本人との面談、およびベックうつ病評価尺度(Beck Depression Inventory)あるいは児童行動チェックリスト(Child Behavior Checklist)などの検査の公平な使用などを重点的に用いる。 [10]

診断

小児期のうつ病の診断を論じる場合に専門家が強調するのは、小児期における発達の問題が、成人期の問題とは全く異なるために、小児期のうつ病は成人のうつ病とは全く別個のものだと理解することの重要性である。 [11]

小児期の感情障害のモデルでは、以下のような明確な判定基準を用いる: [12]


  • 不快な気分(6歳未満の小児では悲しそうな表情も示すはずである)。

  • 以下の徴候または症状のうち少なくとも4つが、少なくとも2週間以上、毎日認められる:
      食欲障害。
      不眠症または過眠症。
      精神運動性激越または遅延。
      普段の活動に対する興味または楽しさの喪失(6歳未満の小児は無関心の徴候も示すはずである)。
      疲労またはエネルギーの喪失。
      無価値、自責、または度を超した不適切な罪悪感。
      思考または集中力の減少。
      死や自殺を頻繁に考える。

小児のうつ病の管理

小児期のうつ病に対して実行される治療レジメンは、うつ病の理論的モデル、病因論、発現を反映している。 [1] 個人心理療法とグループ心理療法が主な治療様式として広く利用され、その方向は、小児が困難を克服し、一番良い方法で成長していけるよう手助けすることに向けられている。遊戯療法は、小さな子供が自分と病気と治療に対して抱いている見方を探る方法として用いられる。子供が、がん診断と必要な治療について、その子の発達年齢にふさわしいレベルで探求し理解できるように、早い段階から援助していく必要がある。 [1]

薬理学的管理

成人がん患者のうつ病と同様に、小児がん患者には抗うつ薬の試験で意義深いものはほとんどなく、あったとしてもごくわずかである。1人の著者は、抑うつ症状のある小児がん患者8人に対してイミプラミンまたはアミトリプチリンを低用量(2mg未満/kg/日)投与したところ速やかな臨床反応があったと述べている。 [13] [証拠レベル:III]別の著者はロラゼパム、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパムなどのベンゾジアゼピン類を不安障害の治療に使用したと述べている。ベンゾジアゼピン類の試行は短期間で行われる。これらの薬物を中断する際には徐々に漸減される。 [14]

重度のうつ病と不安症状のある小児3人の管理に、三環系抗うつ薬と神経遮断薬を併用した例が報告されている。この小児らは疾病が終末相にあり、低用量のアミトリプチリンハロペリドールの併用によって治療された。不安とうつ病のレベルは下がり、この介入のおかげで患者と家族は死と臨終に関わる問題に対処できた。 [15] [証拠レベル:III]

自殺傾向に対する小児科的考察および選択的セロトニン再取り込み阻害薬の使用についての警告に関する情報については、小児の支持療法のPDQ要約のうつ病および自殺のサブセクションを参照のこと。


参考文献
  1. Deuber CM: Depression in the school-aged child: implications for primary care. Nurse Pract 7 (8): 26-30, 68, 1982.[PUBMED Abstract]

  2. Kazak AE: Psychological issues in childhood cancer survivors. J Assoc Pediatr Oncol Nurses 6 (1): 15-6, 1989.[PUBMED Abstract]

  3. O'Malley JE, Koocher G, Foster D, et al.: Psychiatric sequelae of surviving childhood cancer. Am J Orthopsychiatry 49 (4): 608-16, 1979.[PUBMED Abstract]

  4. Kaplan SL, Busner J, Weinhold C, et al.: Depressive symptoms in children and adolescents with cancer: a longitudinal study. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry 26 (5): 782-7, 1987.[PUBMED Abstract]

  5. Fritz GK, Williams JR, Amylon M: After treatment ends: psychosocial sequelae in pediatric cancer survivors. Am J Orthopsychiatry 58 (4): 552-61, 1988.[PUBMED Abstract]

  6. Greenberg HS, Kazak AE, Meadows AT: Psychologic functioning in 8- to 16-year-old cancer survivors and their parents. J Pediatr 114 (3): 488-93, 1989.[PUBMED Abstract]

  7. Rait DS, Jacobsen PB, Lederberg MS, et al.: Characteristics of psychiatric consultations in a pediatric cancer center. Am J Psychiatry 145 (3): 363-4, 1988.[PUBMED Abstract]

  8. Tebbi CK, Bromberg C, Mallon JC: Self-reported depression in adolescent cancer patients. Am J Pediatr Hematol Oncol 10 (3): 185-90, 1988 Fall.[PUBMED Abstract]

  9. Kashani J, Hakami N: Depression in children and adolescents with malignancy. Can J Psychiatry 27 (6): 474-7, 1982.[PUBMED Abstract]

  10. Archenbach TM, ed.: Manual for the Child Behavior Checklist and Revised Child Behavior Profile. Burlington, Vt: T.M. Achenbach, 1983.[PUBMED Abstract]

  11. American Psychiatric Association: Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders: DSM-IV-TR. 4th rev. ed. Washington, DC: American Psychiatric Association, 2000.[PUBMED Abstract]

  12. Malmquist CP: Major depression in childhood: why don't we know more? Am J Orthopsychiatry 53 (2): 262-8, 1983.[PUBMED Abstract]

  13. Pfefferbaum-Levine B, Kumor K, Cangir A, et al.: Tricyclic antidepressants for children with cancer. Am J Psychiatry 140 (8): 1074-6, 1983.[PUBMED Abstract]

  14. Coffey BJ: Review and update: benzodiazepines in childhood and adolescence. Psychiatr Ann 23 (6): 332-9, 1993.[PUBMED Abstract]

  15. Maisami M, Sohmer BH, Coyle JT: Combined use of tricyclic antidepressants and neuroleptics in the management of terminally ill children: a report on three cases. J Am Acad Child Psychiatry 24 (4): 487-9, 1985.[PUBMED Abstract]

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本要約の変更点(05/02/2017)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

本要約には編集上の変更がなされた。

本要約はPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

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本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、成人および小児の集団における、がんに関連したうつ病と自殺のリスクについて、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:


  • 会議での議論、

  • 本文の引用、または

  • 既に引用されている既存の記事との入れ替え、または既存の記事の更新。

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

うつ病に対する主要な査読者は以下の通りである:


    本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

    証拠レベル

    本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

    本要約の使用許可

    PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。

    本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

    PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board.PDQ Depression.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/about-cancer/coping/feelings/depression-hp-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389407]

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