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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

うつ病(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2016-03-28
    翻訳更新日 : 2016-06-29

PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Board

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、成人および小児の集団における、がんに関連したうつ病と自殺のリスクについて、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。


本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

うつ病

概要

うつ病は、がんに併発し患者を無力にする症候群であり、がん患者の約15%~25%が罹患する。 [1] [2] [3] [4] うつ病ががん患者に及ぼす影響は男性と女性で差はないと考えられているが、発生率および重症度の性別による違いは十分に評価されていない。 [5] がんの診断に直面した個人やその家族はさまざまな程度のストレスや感情の乱れを経験する。がん患者のうつ病は患者自身だけでなくその家族にも重大な悪影響を及ぼす。乳がん女性を対象にした英国の研究では、患者の子供に起こる情緒面および行動面の問題の予測因子として、さまざまな因子の中でも患者のうつ病が最も強力なものであることが示された。 [6] 死の恐怖、人生設計の崩壊、身体像と自尊心の変化、社会的役割と生活様式の変化、経済上、法律上の懸念などは、どのがん患者の人生においても重要な問題となるが、かといってがんと診断された者のすべてが深刻な抑うつまたは不安を経験するわけではない。

治療期間中は絶えず患者の抑うつと不安を評価する必要があるが、家族内の介護者も同様である。疾患緩和期にある患者の家族介護者の研究では、男性と女性のいずれの介護者も正常標本よりも有意に多くの不安を経験したのに対して、Hospital Anxiety and Depression Scaleで定義されたうつ病の発生率は女性において高かった。 [7]

がんについて、およびがんへの対処方法については、以下のように多くの誤った認識が認められる:


  • すべてのがん患者がうつ病になる。

  • がん患者がうつ病になるのは正常である。

  • 治療は役に立たない。

  • すべてのがん患者が苦痛と痛ましい死に直面する。

悲しみと悲嘆はがん罹患時に直面する危機への正常な反応である。このような反応は誰でも周期的に経験する。悲しみが珍しくないことから、正常範囲の悲しみとうつ病性障害を識別することが重要になる。終末ケア・コンセンサス・パネルの総説が、この重要な区別について詳細に説明し、重要なポイントを症例の簡潔な描写を用いて説明している。 [8] がん医療においてきわめて重要なことは、うつ病の発現レベルを認識し、適切な介入のレベルを決定することであるが、その範囲は簡単なカウンセリングや支援グループから薬物療法および/または心理療法に及ぶ。例えば、リラクゼーションやカウンセリングによる介入は、新たに婦人科のがんと診断された女性患者の心理的症状を軽減することが示されている。 [9] 他の患者に比べてがんの診断に対して適応困難な者もあり、診断に対する反応はさまざまである。大うつ病は単なる悲しみや憂うつな気分ではない。大うつ病は患者の約25%に発症し、識別可能な症状があり、この症状に対する診断および治療は可能かつ必要であるが、その理由はそれらの症状が生活の質に影響を与えることにある。 [10] [11] うつ病はまた、一般集団において過少診断される病気である。がんの診断時に表れる症状は、前から存在する状態を示しうるため、個別の評価および治療が必要であろう。

うつ病および不安障害は、緩和ケアを受けている患者では一般的であり、これらの患者における生活の質の大幅な低下の一因となる。 [12] Canadian National Palliative Care Surveyでは、がんに対する緩和ケアを受けている患者(n = 381)におけるうつ病性障害および不安障害、およびこれらの障害の生活の質への影響が評価された。第一の評価ツールは、Primary Care Evaluation of Mental Disorders(PRIME-MD)を改変したものであった。有意な数の参加者(24.4%;95%信頼区間、20.2–29.0)が少なくとも1つのうつ病性障害または不安障害に対する診断基準を満たすこと(うつ病性障害については20.7%の有病率、不安障害については13.1%の有病率)が明らかにされた。うつ病または不安障害を診断された参加者は、他の参加者より有意に若く(P=0.002)、パフォーマンスステータスが低く(P = 0.017)、ソーシャルネットワークが小さく(P=0.008)、および組織だった礼拝に参加することが少なかった(P = 0.007)。参加者はまた、身体的症状、社会的関心事、および実存的問題に関してより重度の苦痛を報告しており、生活の質の他の側面に対して有意に否定的な影響があることを示唆している。 [12] 平均余命6ヵ月未満の末期がん患者(n = 211)に実施された別の研究によって、心理学的問題の重要性が強調された。研究者は妥当性が確認された特異的な精神測定(例、視覚的アナログ尺度)を使用して、患者の「他者への負担の感覚」およびそうした感覚の身体的、心理学的、および実存的問題との相関を評価した。他者への負担の感覚と最も強く相関した変数として、うつ病(r = 0.460、P < 0.0001)、絶望(r=0.420、P < 0.0001)、および見通し(r = 0.362、P < 0.0001)が挙げられた。多重回帰分析において、他者への負担の認識を予測する以下の4つの変数が浮かび上がった:うつ病、絶望、疲労のレベル、および現在の生活の質。他者への負担の感覚と身体的依存性の実際の程度との関連はみられず、この認識は主として心理的苦痛および実存的問題を介して生み出されることが示された。状況の異なる患者集団のサブアナリシスにより、これらの知見はいくつかわずかな相違はあるものの、入院患者と外来患者の状況で一貫していたことが示唆された。 [13]

正常な場合には、患者のがんの診断に対する最初の情動反応は数日から数週間と短く、そこには、不信、否認、絶望などの感情が含まれる。この正常な反応は、正常な悲しみから、憂うつな気分を伴う適応障害、大うつ病にいたるまでの範囲の一連の抑うつ症状の一部である。 [8] その他に言及された症候群には、気分変調、亜症候群性うつ病(小うつ病、亜臨床うつ病とも呼ばれる)がある。気分変調は、憂うつな気分の日の方がそうでない日より多い状態が、少なくとも2年以上続く慢性の気分障害である。それとは対照的に亜症候群性うつ病は、大うつ病に比べて重度が低い(診断症状が全部ではなく数項目だけ存在する)急性の気分障害である。

がん(またはがんの再燃)の診断に対する情動反応は、次第に高まる動揺を特徴とする不快な期間で始まる。患者は睡眠障害と食欲障害、不安、反すう的思考、将来についての恐怖を体験する。しかし疫学的研究によれば、がんと診断された人の少なくとも半分は順応に成功する。順応が成功した指標としては、日常生活への積極的な関与を維持する;生活上の役割(例、配偶者、親、従業員)が病気によって中断されるのを最小限にする;病気に対する情動反応を正常に調整する;絶望、無力感、無益感、罪悪感のいずれかまたはすべての感情にうまく対処する、などがある。 [14] 一部の研究は、不適応な対処スタイルとより高いレベルのうつ病、不安、および疲労の症状との関連を示唆している。 [15] [16] 不適応な対処の例には、回避性の対処または否定的対処、自分の対処を否定的に表現、身体的症状についての先入観、小さな問題で大騒ぎするなどがある。ほとんどが進行がんの患者86人のグループに実施された1件の研究では、不適応な対処スタイルとより高いレベルの抑うつ症状が疾患進行の時期を示す潜在的な予測因子であると示唆された。 [16] 乳がん女性(n = 138)における対処戦略について調査した別の研究により、自分のことを前向きに話すなど対処技術がより良好な患者では抑うつおよび不安の症状のレベルがより低いと結論付けられた。 [15] 同じ研究で対処戦略の使用における人種差が明らかにされ、アフリカ系アメリカ人女性は白人女性より、祈りや希望に満ちている様子など、より宗教的な対処戦略を報告し、この対処戦略の使用によって恩恵を受けていた。 [15] 予備的データは、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Spiritual Well Being(FACIT-SP)およびHamilton Depression Rating Scaleによって測定されているように関連するうつ病への霊性の有益な影響を示唆している。 [17]

早期介入の必要性を示す指標には以下がある:


  • うつ病の既往歴。

  • 弱い社会的支援システム(独身、友人が少ない、孤独な職場環境)。

  • 診断に関する不合理な信念が持続しているかまたは悲観的な考えをもっている証拠。

  • より重篤な予後。

  • がんに関連するより大きな機能障害。

成人がん患者(n = 48)およびその成人近親者(n = 99)を対象とした研究によって示されているように、家族が果たす機能は、患者および家族の苦痛に影響する重要な因子である。率直に活動し、感情を直接表現し、問題を効果的に解決できた家族のうつ病のレベルはより低く、家族内の情報の直接的な伝達はより低いレベルの不安と関連していた。 [18] がん患者の配偶者における抑うつ症状もまた、夫婦間のコミュニケーションにマイナスの影響を及ぼしうる。1件の予備研究では、非転移性乳がん女性の配偶者(n = 206)において抑うつの潜在的な19の予測因子が調査された。 [19] 配偶者は、より年齢が高い場合、十分に教育を受けていない場合、最近結婚した場合、妻の幸福に関して高い恐怖を報告する場合、仕事の能力を心配している場合、将来がより不透明な場合、または結婚に十分に適応していない場合に、抑うつ症状を経験する可能性がより高かった。 [19]

特に疼痛および他の身体的症状など、危険因子は異なる場合がある。 [20] 臨床医は、患者がうつ病だという疑いをもち始めた場合に、その患者に症状があるかを判定する。大うつ病エピソードの診断基準を全部ではなく数項目だけ満たす軽度あるいは無症状レベルのうつ病は、少なからぬ苦痛の原因となりうるので、メンタルヘルス専門家による、あるいは自助サポート・グループへの参加による、支持的個人カウンセリングまたはグループ・カウンセリングなどの介入が正当化される。 [21] がん関連疲労、食欲不振、うつ病、および呼吸困難の問題に対するさまざまなアプローチについて記述した、証拠に基づいた推奨が発表されている。 [22] たとえ症状が全くなくても、患者の多くは支持的カウンセリングに関心を示すので、臨床医はそのような患者には、資格をもったメンタルヘルス専門家に紹介するなどの便宜を図るべきである。しかし症状が激しくかつ長く続く、あるいは外見上解決した後で再発した場合は、症状を軽減するための治療が不可欠である。 [11] [23] [24] 早期治療における不安および抑うつは、6ヵ月時点でのこれらの同じ問題の良い予測因子である。 [25] 乳がんの高齢女性の研究において、うつ病の最近の診断は、根治的がん治療を拒むより高い可能性とより不良な生存の両方と関連した。 [26]

がんに関連したうつ病の病態生理学は不明確なままであり、おそらく多くの機序が含まれている。進行期転移がん患者の研究により、臨床的うつ病を認める患者ではインターロイキン-6(IL-6)の血漿濃度と視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸機能障害の両方が顕著に高いことが示された。 [27] IL-6の10.6pg/mLのカットオフ値により79%の感度と87%の特異度が得られた一方で、コルチゾールの33.5%の変化というカットオフ値では81%の感度と88%の特異度が得られた。この研究における制限の1つは、これらの関係に独立して影響しうる疼痛の程度も疲労の程度も測定されなかったことであった。

特に明記していない場合、本要約には成人に関する証拠と治療について記載している。小児に関する証拠と治療は、成人の場合とかなり異なる可能性がある。小児の治療に関する情報が入手できる場合は、小児に関する情報であることを明記した上でその内容を要約する。


参考文献
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  27. Jehn CF, Kuehnhardt D, Bartholomae A, et al.: Biomarkers of depression in cancer patients. Cancer 107 (11): 2723-9, 2006.[PUBMED Abstract]

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評価と診断

症状と危険因子

大うつ病の症状は以下の通り:


  • 1日の大部分が憂うつな気分で、それがほぼ毎日続く。

  • ほぼすべての活動において楽しさや興味が減少する。

  • 食欲や睡眠のパターンの著しい変化。

  • 精神運動性激越と遅延。

  • 疲労。 [1]

  • 無益感あるいは過度の不適切な罪悪感。

  • 集中力の低下。

  • 死や自殺を頻繁に考える。

認知症状は「これは自分のせいだ」「神様の罰だ」「わたしのせいで家族はだめになった」と反すう的に考える、実際には確たる証拠もないのに予後について宿命論的な予想をする、といったかたちで現れる。このような考えが優位を占めるか、あるいはもっと現実的な考えと交代することもあるが、それでもストレスは非常に強い。悲観的な考えを進んで話す患者もおり、家族がそれに気付くことがある。他の患者はそのような考えを自分から進んで話すことはないが、以下のような簡潔な質問(この他の例は表1に一覧表示している)に答えることがある:


  • 「気がつくと自分のがんのことをじっくり考えているという人は多いものです。あなたは、どんなことを考えていますか?」

  • 「これは自分のせいだ、神の罰だなどと自分が考えているのに気がついたことはありますか?どの位の頻度ですか?週に2~3回ですか、いつもですか?そういう考えは正しいと思いますか?」

  • 「そんなことを考えても、それでも人生を続け、いろいろなことに楽しみをみつけることができますか?それとも気になって眠れなかったり絶望的だと感じたりしますか?」

医師または看護師自身がカウンセリングを行わなくとも、上記にある質問をしてよい。単にこのような質問をすることで、心配していることを示し、もっと進んだカウンセリングの提案に患者が受容的になる可能性が増すだろう。

このような質問に以下のような質問が続けられる:

「がんにかかっている人は時にはそういう感じ方をすることが多いのです。あなただけではない。けれど、他の人に話すことでとても楽になります。そうするようにお考えになってはいかがですか。がんのストレスと闘う人々を助けた経験が豊富な人と話してみる気はありますか?」

この時点では、患者が知っている誰かを捜すように勧めてもよいし、その他の地域社会の情報源を教えてもよい。特にがんの治療が終わった患者、身体症状が管理可能な患者では、社会的支援が受けられることを知るほど抑うつ症状が減少するという関連があった。 [2] 場合によっては、聖職者あるいはセラピストへの紹介が適切であろう。大多数のセラピストは死に対する悲嘆あるいは恐怖の一般的な問題点に対処できる;なかには臨床心理学、医療社会福祉事業、あるいは主にがん患者を扱うことを専門としているセラピストもいる。ためらっている患者に対しては、複数の手段を提案することで、何らかの援助を見つけ出す可能性が増す。それ以外の患者には直接正式に紹介するのが適切であろう。

がん患者におけるうつ病の評価には、症状、治療効果、検査データの結果、身体状態、精神状態を慎重に評価することが含まれるべきである。うつ病の病因の大部分は知られていないが、うつ病の危険因子は多く知られている(下記リスト参照)。インターフェロン-アルファおよびインターロイキン-2によるサイトカイン療法を受けているがん患者における抑うつ性の総体的症状は神経伝達物質前駆体の利用可能性の変化によりもたらされていることを示唆しているデータは限られている。 [3] 頭頸部のがん患者で治癒を目的に治療を受けた者では、治療前の8つの評価項目(腫瘍の病期、性別、抑うつ症状、家族の中でがんについて率直に議論ができるのか、利用可能なサポートに対する認知度、情動的サポートが受けられるのか、腫瘍に関連した症状、非公式なソーシャルネットワークの規模)を使って、患者が治療後3年以内にうつ病になる可能性を予測できる。 [4] [5] 登録(ベースライン)時と緩和ケア病棟への入院(追跡)時に再び構造化された臨床面接を使って精神疾患を評価された日本人の末期がん患者のプロスペクティブ研究では、ベースライン時に適応障害と診断された12人の患者中5人(42%)が追跡時に大うつ病に進行したことが明らかにされた。Hospital Anxiety and Depression Scaleのみが、追跡時の精神科診断を有意に予測した。 [6] この点をよく認識することで早期診断と適切な介入が容易になる。 [7] 疾患をもつ患者においては、せん妄の早期症状が不安または抑うつと誤認されることがある。これらの疾患は、抑うつ症状を呈する個々の患者の鑑別診断を考慮に入れて検討すべきである。

がん患者におけるうつ病の危険因子
  • がんに関連した危険因子:
      がん診断時のうつ病。 [8] [9]
      疼痛管理不良。 [10]
      がんの進行期。 [10]
      身体的不快あるいは機能障害の増加。
      膵がん。 [11]
      独身であって頭頸部のがんにかかっている。 [12]
      特定の化学療法薬による治療:
      • コルチコステロイド。

      • プロカルバジン。

      • L-アスパラギナーゼ。

      • インターフェロン-アルファ。 [3] [13]

      • インターロイキン-2。 [3] [13] [14]

      • アムホテリシンB。



  • がんに関連しない危険因子:
      うつ病の既往歴:
      • 今までに2回以上のエピソード。

      • 最初のエピソードが若い頃あるいは最近。


      家族の支援がない。 [8]
      その他の同時に起こる生活上のストレス要因。 [15]
      うつ病または自殺の家族歴。
      自殺未遂の経験。
      アルコール中毒あるいは薬物乱用の病歴。
      抑うつ症状を引き起こす合併症(例えば、脳卒中あるいは心筋梗塞)。
      心理学的な問題の治療歴。 [16]

うつ病のスクリーニングおよび評価

一般的にがん患者におけるうつ病には過小認識および過小治療があり、さらなる評価を促すためにスクリーニング・ツールが使用されうる。 [17] 身体的な病気では、一般的にうつ病評価用の諸手段が、面接と精神状態の徹底的な検査に比べて臨床的に有用だとされた例はない。単純に患者に対して憂うつであるかどうかを尋ねることで、うつ病の確認がよりうまくいくこともある。

以下のスクリーニング・ツールが一般的に使用される:


  • 1項目の面接。進行がん患者において、面接による1項目の質問が許容可能な精神測定学的特性を有することが明らかにされており、有用となりうる。1つの例は「憂うつですか?」と尋ねることである。 [18] 別の例は、「通常のリラックスした気分を100として、過去1週間の気分を0~100までの点数を割り当てて評価してください。」と言うことである。60点は合格点と考えられる。 [19]

  • Hospital Anxiety and Depression Scale。 [20] 早期乳がん [21] 、および緩和ケア [22] [23] といった特定の患者集団では、HADは有用性が限られることがある。

  • Psychological Distress Inventory。 [24]

  • Edinburgh Depression Scale。 [25]

  • Brief Symptom Inventory。 [26]

  • Zungの自己評価式抑うつ尺度(Zung Self-Rating Depression Scale)。 [27]

  • Distress Thermometer。 [28]

新たに診断された乳がんの女性(n = 236)を対象にした1件の研究では、Distress Thermometer、Patient Health Questionnaire(PHQ-9)などの簡単なスクリーニングの手段がうまく利用され、臨床的に重要なレベルの苦痛および精神症状を発見するためにさらなる評価が必要な女性が確認された。 [29]

I期~III期乳がんを新たに診断された女性321人を対象にした研究において、うつ病を特異的に予測する1項目のDistress Thermometerの性能が調査され、大うつ病に対するDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM-IV)の9症状が自己報告式の質問票で測定された。感度および特異度の特徴が評価され、最適なカットオフスコアは7であることが同定され、うつ病発見について0.81の感度および0.85の特異度が得られた。そのため、スコアが7以上の個人はより徹底的な心理社会的評価を受けるべきである。 [30]

Distress Thermometerとの併用目的でDistress Thermometerを修正して作成されたImpact Thermometerは、適応障害および/または大うつ病の検出感度が向上している。修正されたツールは、Hospital Anxiety and Depression Scaleに匹敵するスクリーニング性能があり、かつ簡単で、がん治療の現場でのルーチンのスクリーニングに有効なツールとなることが見込まれている。 [31] Mood Evaluation Questionnaireは、うつ病に対する認知に基づいたスクリーニング・ツールであり、DSM-III-R適用の構造化臨床面接との中等度の相関が認められ、緩和ケア集団において良好な許容性が示されている。妥当性がさらに確認されれば、精神医学の訓練を受けていない臨床家も使用できるため、この集団における有用な代替ツールとなりうる。 [32]

スクリーニングの手段は、がんの母集団で妥当性が確認され、構造化された診断的面接と組み合わせて使われることが重要である。 [33] 単純で簡単に複製できる視覚的アナログ尺度を使った、患者25人によるパイロット研究で、うつ病のスクリーニングの単項目手法の利点が示唆された。この尺度は一方の端に悲しい顔、他方に幸せな顔のついた10cmの線で構成され、患者はそこに自分の気分を示すマークをつける。この結果は視覚的アナログ尺度がうつ病のスクリーニング・ツールとして有用である可能性を強く示唆するが、患者の数が少ないことと、臨床的面接が行われなかったことから、結論は制限される。さらにHospital Anxiety and Depression Scaleでは非常に高い相関関係(r = 0.87)が報告されたが、カットオフの指示は示されなかった。そして、強調すべきは、このような尺度は、専門家のさらなる評価の必要性を示唆するように意図されていることである。しかしながら、さらに妥当性が確認されれば、この単純なアプローチは、認識力が損なわれていない進行がん患者におけるうつ病の評価と管理を大幅に充実させる。 [7] [34] うつ病に対するその他の簡易評価ツールが使用可能である。患者がうつ病と通常の不安反応とを区別するのを支援するため、評価にはがん患者により経験される一般的な症状についての話し合いを含むべきである。うつ病は経時的に再評価されるべきである。 [35] がん患者は適応障害と大うつ病のリスクが高いので、用心のため、ストレスが高まる時(例、診断、再発、悪化)、ルーチンとしてスクリーニングを行うことが推奨される。 [36] 一般的なうつ病の危険因子は上記のリストに示した。特定の母集団、例えば頭頸部がんの患者 [4] 、乳がん発症のリスクが高い女性にはその他の危険因子が加わるであろう。 [37]

臨床面接

表1.成人がん患者の抑うつ症状の評価に推奨される質問a

質問 症状
a出典:Roth et al. [38]
抑うつ症状
自分のがんにどの程度対処できていますか?うまくできていますか?うまくできていませんか? 快適
診断後の気分はどうですか?治療中はどうですか?落ち込んでいますか?憂うつですか? 気分
時々泣きますか?どの位の頻度ですか?ひとりのときだけですか? 気分
今でも楽しんでできることがありますか、それとも、がんにかかる前にしていたことが楽しくなくなりましたか? 快感消失
未来はどんなふうに見えますか?明るいですか?暗いですか? 絶望
治療に自分の意見が反映されていると感じますか、それとも、治療は完全に他人の支配下にありますか? 無力感
がん治療期間中に家族/友人の重荷になっていると心配しますか? 罪悪感
あなたがいない方が他の人はうまくやっていくと思いますか? 無益感
身体症状(がんに関係のある症状との関連で評価する)
コントロールされていない痛みがありますか? 疼痛
どの位の時間をベッドの中で過ごしますか? 疲労
弱っていると感じますか?すぐに疲れますか?眠った後回復しますか?あなたの感じ方と、治療法が変わったこと、あるいはそれ以外に身体的に感じていることの間に何か関係がありますか? 疲労
眠れますか?寝付かれませんか?朝早く目が覚めますか?しょっちゅうですか? 不眠
食欲はどうですか?食事はおいしいですか?体重は増えていますか、それとも減っていますか? 食欲
セックスに対する関心はどうですか?性的活動の程度は? 性欲
考えたり動いたりするのが普段より遅くなっていますか? 精神運動性遅延


器質性気分障害または身体疾患に関連する気分症候群(MSRMC)("Mood Syndromes Related to Medical Condition")が、今日『精神障害の診断と統計マニュアル第4版(DSM-IV)』中で言及されているが、症状の点で気分症候群に似ていることが多い。(おそらく時間的経過か検査データに基づいて)器質的または身体疾患の因子がこの症候群の病因に寄与していると仮定される。DSM-IVによれば、著しい認知異常が、この症候群に伴って起こる要素であり、したがって診断を下す際に有用である。DSM-IVは顕著な無感覚もMSRMCの徴候として強調している。検査データを入手して電解質または内分泌のアンバランスあるいは栄養欠乏が認められるかを検出するのに役立てることも考慮すべきである。臨床的経験によれば、内科的要因で引き起こされたうつ病の治療において、特に原因となる薬物(すなわち、ステロイド、抗生物質など)の減量や中止ができない場合に、薬物療法が心理療法単独に比べて優れていることが示唆される。 [39]

がん患者における抑うつ症状の医学的原因として可能性のあるもの*
  • 疼痛管理の不良。 [10] [証拠レベル:II]

  • 代謝異常:
      高カルシウム血症。
      ナトリウム/カリウム平衡異常。
      貧血。
      ビタミンB12または葉酸欠乏。
      発熱。

  • 内分泌異常:
      甲状腺機能亢進症または甲状腺機能低下症。
      副腎機能障害。

  • 医薬品: [14] [証拠レベル:I] [40] [41] [42] ; [3] [証拠レベル:II]
      ステロイド剤。
      内因性ならびに外因性のサイトカイン、すなわち、インターフェロン-アルファおよびアルデスロイキン(インターロイキン-2[IL-2])。 [43]
      メチルドパ。
      レセルピン。
      バルビツール酸系薬物。
      プロプラノロール。
      ある種の抗生物質(例、アムホテリシンB)。
      ある種の化学療法薬(例、プロカルバジン、L-アスパラギナーゼ)。

診断

うつ病の診断を下すには、これらの症状が最低2週間続くことおよび大部分の日に症状が現れることを医師が確認すべきである。がん患者のうつ病は、うつ病の生物学的または身体的症状を、病気や治療の有害な副作用から鑑別するという特有の問題のために、診断が難しくなる。このことは特に積極的な治療を行っている患者、または進行がん患者に当てはまる。罪悪感、無益感、絶望、自殺思考、活動の喜びの消失などの認知症状が、おそらくがん患者のうつ病診断において最も有力な判断材料になる。当時感情障害のあったがん患者を抑うつ症状のみがみられる患者と比較したドイツの1件の研究では、多変量解析において2群間の識別に最も効力があるのは、興味喪失に続く抑うつ気分であることを明らかにした。 [44]

がん患者におけるうつ病の評価では、治療と疾病の影響、同時にみられる生活上のストレス要因、社会的支援の利用が可能かはもちろん、その患者の病気に関する感じ方、病歴、うつ病あるいは自殺思考の個人歴あるいは家族歴、その時点の精神状態および身体状態を慎重に評価する必要がある。90%を超える患者が感情の問題について医師との話し合いを望んでいるが、25%を超える患者がその問題についての話し合いは、医師から始めるべきだと感じているということを理解することが重要である。 [45] 自殺念慮が生じた場合、それは患者、医療従事者、そして家族にとって恐ろしいことである。自殺を表明する言葉は、治療過程に伴う欲求不満や嫌悪感のせいで不用意に出た言葉、例えば、「今年中にもう1回骨髄穿刺を受けなくてはいけないなら、窓から飛び降りてやる」から、重大な絶望の表れや緊急事態、例えば、「もうこれ以上は私達全員に行われる仕打ちに耐えられないので、自殺します」まで、広い範囲にわたる。その考えの深刻さを探ることは必須である。自殺思考が深刻だと思われる場合には、精神科医または心理士への紹介を緊急に行い、患者の安全に気を配る必要がある。自殺については、本要約のがん患者における自殺のリスクのセクションにさらに情報がある。

がん患者におけるうつ病の最も一般的な総体的症状は、憂うつな気分を伴う適応障害であり、時には反応性うつ病とみなされる。この障害の特徴的症状の発現は、患者に通常の活動ができなくなるような不快気分がある場合である。 [46] [証拠レベル:II]その症状は、長引き、また正常かつ予期された反応を上まわるようであるが、大うつ病エピソード基準には合致しない。これらの症状が、個人の毎日の役目、例えば、仕事、登校、買い物、家事などを著しく妨げる場合には、大うつ病の治療と同様に治療すべきである(すなわち、危機介入、支持的心理療法、投薬、特に抑うつ症状を迅速に軽減する薬物の使用を考慮する)。これらの症状に基づいて診断を行うと、患者が進行がんにかかっている場合や、病気自体のために機能障害が出ている場合には、問題となりうる。しばしば相互関係がある疲労とうつ病を識別することもまた重要である。これらの病態を引き起こす異なる機序は別々に治療できる。 [1] 進行がんでは、絶望、罪悪感、生活を全く楽しめない、などに注目することが、うつ病の診断に役立つ。(詳しい情報については、がんへの適応:不安と苦痛に関するPDQ要約を参照のこと。)


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介入

うつ病に対する治療を開始するかは、2~4週間で患者が自然に回復する可能性、機能障害の程度、抑うつ症状の重症度と持続時間によって決まる。 [1] 重度の大うつ病の治療は、薬物療法と心理療法の併用で最大の効果を上げられることが、複数の研究によって示されている。したがって、たとえプライマリケア医または腫瘍医が抑うつ症状に対して薬物治療を行っていても、心理療法あるいは支持的カウンセリングへの紹介は考慮されるべきである。

以下の理由がある場合、精神科医の診察に紹介されるべきである:


  • プライマリケア医または腫瘍医が、症状の特定の臨床的特徴のために患者のうつ病の治療が手にあまると感じている(すなわち、顕著な自殺傾向がある場合)。

  • プライマリケア医が治療している抑うつ症状が、薬理学的介入に対して介入後2~4週間たっても治らない。

  • 抑うつ症状が好転せず、むしろ悪化しつつある。

  • 抗うつ病薬を用いる治療の開始、薬物投与量の漸増、または治療の継続が、投薬に起因しうる副作用によって中断、または問題があるとされた時。

  • 抑うつ症状のために、患者が治療に協力することができない。 [2] [3] [4]

薬理学的介入

概要

うつ病またはうつ病の症状が認められるがん患者における抗うつ薬のリスクおよび便益を評価する、ランダム化プラセボ対照試験が不足している。さらに、このような試験は、方法論的な困難、および小児、青少年、年配者そしてマイノリティーグループの幅広い参加の欠如により、制限されている。 [5] がん患者のうつ病では若干の症例に抗うつ薬が適応とされる。外来患者の腫瘍設定における処方パターンの2年間の調査によって、抗うつ薬が患者の約14%に処方されたことが明らかにされた。 [6] 成人うつ病患者に対する比較的新しい薬物療法の体系的総説の中で、抗うつ薬によるうつ病治療の奏効率は約54%であることが示された。 [7] 高齢者、および身体または精神疾患を併発している個人を含む一般的な患者に対しては、比較的新しい薬物療法の効果は従来の抗うつ薬と同等である。 [7] また副作用による中断率は新しい抗うつ薬が約11%、従来の抗うつ薬が16%であった。 [7] がん治療における抗うつ薬使用のデータは比較的少ないため、がん患者に抗うつ薬を処方する場合の実際のパターンにはかなりのばらつきがある。全がん患者のおよそ25%がうつ病であることが複数の研究によって一般的に示されているが、抗うつ薬を投与されたのはがん患者の16%に過ぎなかったことがある研究によって明らかにされた。 [8]

抗うつ薬の研究
  • 成人では、女性がん患者40人の抑うつ症状の治療においてフルオキセチンデシプラミンを比較するプラセボ対照二重盲検試験を行ったところ、投薬は有効性を示し、また良好な耐容性を示した。フルオキセチンを投与された患者においては、QOL尺度のいくつかに大きな改善がみられた。 [9] [証拠レベル:I]

  • ある研究では、乳がんの女性患者のうつ病管理において、パロキセチンアミトリプチリンを比較した。両治療とも同等に有効であった。パロキセチンアミトリプチリンに比べ、抗コリン性副作用は有意に少なかった。 [10] [証拠レベル:I]

  • フルオキセチンとプラセボを比較するランダム化比較試験において、フルオキセチンを受けた患者は生活の質が改善し、うつ症状が減少したことが明らかにされた。 [11] [証拠レベル:I]症状に基づいた(疼痛または吐き気などがんに関連した他の症状の管理に類似した)アプローチを用いたこの研究では、2項目のスクリーニング方法を使用してうつ病に対する評価が行われ、快感消失(何かをする際に関心や楽しみがほとんどない状態)および抑うつ気分または絶望感の存在に焦点が当てられた。標本の大部分は、うつ病の診断基準を満たしたかどうかにかかわらず、軽度から中等度レベルの抑うつ症状を認める患者で構成された。大多数を占める地域がん医療の設定から、さまざまながんの型(例、乳がん、胸郭のがん、尿生殖器のがん、胃腸のがん)の標本を含めること、男性/女性の等しい比率、および比較的大きなサンプルサイズ(n = 163)によって、一般化が強化された。比較的高いレベルの抑うつ症状と同定された患者サブグループが、おそらくこの治療から利益を得たようであった。

抗うつ薬投与に伴う自殺のリスク

過去数年間、小児、青年、および若年成人における抗うつ薬使用に伴う自殺思考および自殺行動のリスクについてかなりの懸念が生じている。2003年以降、米国およびヨーロッパの規制当局がこの話題についていくつか公衆衛生の警告を発表している。米国食品医薬品局(FDA)により最初に発表されたこの話題に関する勧告では、小児および青年における抗うつ薬と自殺思考および自殺行動とが関連する可能性について警告された。2003年12月には、英国医薬品庁により、18歳未満の患者には抗うつ薬を使用しないように医師に忠告する文書が発表された。 [12] 2004年10月には、FDAにより、製薬会社は抗うつ薬の投与を受けている小児患者における自殺傾向のリスク増加を忠告する「ブラックボックス」警告をすべての抗うつ薬のラベルに追加するよう義務付けられた。2007年5月には、FDAにより、この枠付き警告は25歳未満の若年成人を含めるように改訂された。 [13] 慎重に記述された新しい警告では、抗うつ薬とうつ病の両方が自殺傾向のリスクと関連していることが強調された。小児、青年、および若年成人における自殺傾向の増加について生じている懸念に加えて、この警告では65歳以上の成人における抗うつ薬の明らかな予防効果を認めている。

小児患者において最初の枠付き警告につながったメタアナリシスでは、抗うつ薬は、プラセボと比較して小児および青年における自殺念慮および自殺行動の2倍の増加と関連すると結論付けられた。 [14] Journal of the American Medical Associationにおいて発表された主要なメタアナリシスでは、小児と青年の研究(最初のメタアナリシスに含まれなかった7件の研究を含む)からのデータが、変量効果モデルを用いて再解析された。 [15] [証拠レベル:I]この再解析では最初のメタアナリシスと一致して自殺念慮/自殺行動の全体的なリスク増加が認められたが、併合リスク差はより小さく、統計的に有意なものではなかった。

警告の意図されなかった結果として、最も恩恵を受ける患者における抗うつ薬の使用が過度に制限されるために、警告が防止しようと努めている自殺傾向が増加するという懸念が生じている。米国およびオランダのデータを調査した1件の研究では、枠付き警告の発表以来、小児および青年に対する選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の処方の低下およびそれと同時にこの患者集団における自殺の割合が高くなっていることが示唆されている。 [16]

以上をまとめると、リスク/便益の方程式は自殺傾向に対する注意深い監視と抗うつ薬の適切な使用を支持している。枠付き警告につながった研究で、がんに対する治療を受けている患者を含む、または彼らに焦点を当てている研究はないことに注意することが重要である。臨床経験および小規模臨床試験の結果から、抗うつ薬は成人がん患者に安全に投与できることが示唆されているが、これを支持する大規模な対照臨床試験はない。抗うつ薬ががん患者に処方される場合、注意深い監視が専門知識をもつ医師によって計画されるべきであり、予想外の反応を示す患者、または他の心配がある患者には専門家への紹介がなされるべきである。

インターフェロンに関係するうつ病

抗うつ薬の処方は、ほとんどが既存のうつ病性障害または著しい抑うつ症状の治療を対象としている。しかしながら、1件の研究は、悪性黒色腫の補助療法で高用量のインターフェロンを投与されている患者に対して、うつ病予防のための抗うつ薬使用を支持している。 [17] [証拠レベル:I]このアプローチの理論的根拠は、高用量インターフェロン治療が、この患者母集団におけるうつ病の発生率が著しく高いことと関連があり、うつ病をもたらす生物学的な変化に関係のある炎症性サイトカインを、抗うつ薬が直接減少させると考えられる。この高用量インターフェロンを投与されている患者の二重盲検試験において、パロキセチン群では18人中2人の患者が治療開始後12週間以内にうつ病を発症し、これに対してプラセボ群では20人中9人が発症した(相対リスク[RR] = 0.24;95%信頼区間[CI]、0.08-0.93)。さらに、パロキセチン群においては治療の中止が有意に少なかった(5%対35%、RR = 0.14;95%CI、0.05-0.85)。さらなる研究によってこれらの知見を確認し、抗うつ薬の予防的使用が他の治療の場合にも有益かを決定する必要がある。

抗うつ薬治療の選択

抗うつ薬の選択は、患者の病歴、併存する医学的問題、うつ病に帰することのできる症状、抗うつ薬に対する以前の反応性、利用可能な薬物に関連する副作用に依存する。

がん患者のうつ病治療に用いられる薬物の種類には、SSRI、三環系抗うつ薬(TCA)、興奮剤または中枢神経刺激薬(すなわち、アンフェタミン類)がある。表2に通常使用される抗うつ薬の概要を述べ、がん患者における開始時の投与量を示した。「副作用/解説」の欄には、抗うつ薬を選択する際および投薬を受けた患者をモニターする際に臨床的状況に依存して臨床的に有利あるいは問題となりうる、薬物に特異的な副作用を示した。一般に抗うつ薬は、投与開始から治療反応の発現までに長い反応期間(3~6週間)を要する。多くの症例において抗うつ薬治療は低用量から始まり、用量漸増法により患者に合わせた最適な反応を達成する。低用量での開始は初期の副作用の回避に役立つであろうが、治療効果を確認するには用量の漸増が必要となる。一部の薬物については、血漿中濃度が患者の抗うつ反応と相関する治療域(therapeutic window)が存在する(例えばノルトリプチリン)。これらの薬物を投与されている患者は、血漿中濃度が定義された治療域に満たない、あるいはそれを超える場合、治療の失敗または最適な反応が得られない事態につながり、薬物濃度が高い場合は不必要な毒性にもつながるため、連続的な薬物濃度モニタリングは治療の指針となり、また適切な治療の実施に役立つ。

表2.外来成人患者に対する抗うつ薬治療

薬物の分類/一般名(商品名)/用量 副作用/解説
ALT = アラニンアミノトランスフェラーゼ;BP = 血圧;EKG = 心電図;MAOI = モノアミンオキシダーゼ阻害薬;SSRI = 選択的セロトニン再取り込み阻害薬;TCA = 三環系抗うつ薬。
a適切な投与スケジュールは、完全な処方情報を参照。
bTCAはヒス-プルキンエ系心臓伝導をIA群の抗不整脈薬(例、キニジン)と同様に遅延する。特に、脚ブロックと第2度および第3度房室ブロックの患者には禁忌である。TCAの伝導に対する効果は投与量および血清中濃度と相関関係にあり、陽性変時作用をもちアドレナリン作動性の薬物に対しては、TCAはリエントリー不整脈を引き起こすことがある。リスクが非常に高い患者は、既存の心臓伝導系の障害がある患者と、過量摂取の患者である。
c血漿中濃度が治療の手がかりとして最も有用なのは、高齢の患者で、(1)中毒の徴候と症状がある、(2)治療に反応しない、(3)計画された治療に対するコンプライアンスが悪いと疑われる、(4)相互作用がある、または抗うつ薬の薬物動態を変化させる他の薬物投与を受けている場合、などである。
dTCAをはじめとする抗うつ薬は、性欲の低下、ペニスの勃起機能障害、およびオルガスム時と射精時の興奮の減少を特徴とする性的機能障害の原因となりうる。管理は、治療を続けながら自発的な解決を待つ、あるいは抗うつ薬の用量を減らす、別の抗うつ薬を選択する、機能障害を治療する薬物との併用療法(例、顕著な抗コリン作用のある抗うつ薬に対してベタネコール)などがある。
e一般的な抗ムスカリン作用または抗コリン作用は、口渇、かすみ目、便秘、尿閉である。薬物の継続使用で最終的に患者がこれらの作用への耐性を獲得する場合もあるが、薬物を中止するまで症状が完全には消退しない場合もある。

TCA

心不整脈を引き起こしうる。
既存の心伝導異常を評価するためのベースラインの心電図。血漿中薬物濃度の治療域はすべての薬物について確認されているが、投与量の調節は血漿中濃度だけではなく患者の臨床的反応に基づいて行われるべきである。b
反応のある患者においては、反応を維持するのに必要な最低限の有効量まで1日量を減らす。c 性的機能障害の原因となることがある。
体重増加と関連しうる。d
アミトリプチリン(Elavil) 顕著な鎮静作用、めまい、頭痛、体重増加、抗コリン作用e、起立時の血圧変化(起立性低血圧);性的機能障害を引き起こすことがある。血漿中濃度の治療域(親化合物+活性代謝物) = 110-250 ng/mL。
  初期量:10-25mg 1日1回 就寝前が好ましい
  維持量:150-300mg/日
クロミプラミン(Anafranil) 抗コリン作用、めまい、眠気、頭痛、体重増加、起立性低血圧。
  初期量:25mg/日 最初の2週間で100mg/日に漸増;就寝前に投与できる
  維持量:最大100-250mg/日
デシプラミン(Norpramin) 弱い鎮静作用、食欲増進、吐き気、最小の抗コリン作用e、起立時の血圧変化。血漿中濃度の治療域 = 125-300 ng/mL。
  初期量:25-50mg/日 1日1回、就寝前が好ましい
  維持量:100-300mg/日、1日1回;高齢患者では150mgを超える1日量は推奨されない
ドキセピン(Sinequan) 中等度~強い鎮静作用、めまい、頭痛、体重増加、中等度の抗コリン作用e、起立性低血圧。抗うつ作用は最もよく現れるまでに2-3週間かかるのが特徴であるが、抗不安作用は比較的早期に起こる。血漿中濃度の治療域(親化合物+活性代謝物) = 100-200 ng/mL。
  初期量:10-25mg/日 1日1回、就寝前が好ましい
  維持量:75-300mg/日 1日1回、就寝前が好ましい
イミプラミン(Tofranil) 中等度~強い鎮静作用、めまい、頭痛、体重増加、中等度の抗コリン作用e、中等度~顕著な起立時の血圧変化;性的機能障害を引き起こしうる(男女とも)。血漿中濃度の治療域(親化合物+活性代謝物) = 200-350ng/mL。
  初期量:25-50mg/日 1日1回、就寝前が好ましい
  維持量:75-200mg/日 1日1回、就寝前が好ましい
ノルトリプチリン(Pamelor、Aventyl) 軽度~中等度の鎮静作用、便秘、吐き気、食欲増進、軽度~中等度の抗コリン作用e。起立性低血圧を最も起こしにくいTCAである。血漿中濃度の治療域 = 50-150 ng/mL。
  初期量:10-25mg、1日3-4回
  維持量:30-50mg、1日3回、150mgを超える1日量は推奨されない

SSRI

抗コリン作用と心臓血管系の有害作用がほとんどない。MAOIの使用から2週間以内に投与を受けた患者に、致死的な反応が生じたことがある。性的機能障害は、SSRIの使用に関連すると報告されている。長期間使用の例は少ない。
シタロプラム(Celexa) 射精障害およびその他の性的機能障害、不眠、口渇、吐き気、傾眠。in vitroの研究によって、CYP3A4とCYP2C19がシタロプラムの代謝に関わる主な酵素であることが示された。 [18] CYP2D6阻害作用は比較的弱い。
  初期量:10mg/日
  維持量:10-40mg/日
フルオキセチン(Prozac) 不安、神経質、不眠、食欲不振、軽い徐脈、洞房結節の遅延、体重減少、日光過敏症、低Na血症、性的機能障害;糖尿病患者における血糖コントロールを変化させうる。CYP2D6を強固に阻害し、チトクロムP450 CYP2D6 アイソザイムによって代謝される他の薬物のクリアランスを阻害することがある。 [18] おそらくCYP2C9/10を阻害し、CYP2C19を中等度に阻害し、CYP3A4を軽度に阻害する。 [18] フルオキセチンは高齢の患者では代謝が悪い。
  初期量:10-20mg/日
  維持量:20-80mg/日
エスシタロプラム(Lexapro) 吐き気、嘔吐、下痢、便秘、胃のむかつき、食欲不振、めまい、眠気、睡眠障害、背痛、口渇。
  初期量:10mg/日
  維持量:10-20mg/日
フルボキサミン(Luvox) 吐き気、性的機能障害、頭痛、神経質、不眠、眠気。
  初期量:就寝前に50mg、4~7日間隔で50mgずつ増やして調節する
  維持量:100-300mg/日
パロキセチン(Paxil) 不安、神経質、不眠、軽度の体重減少、頭痛、日光過敏症、低Na血症、性的機能障害。チトクロムP450 CYP2D6 アイソザイムを強固に阻害し、CYP2D6によって代謝される他の薬物と相互作用することがある。 [18] パロキセチンは高齢の患者では代謝が悪い。
  初期量:10-20mg/日
  維持量:20-50mg/日
サートラリン(Zoloft) 不安、神経質、不眠、軽度の体重減少、頭痛、日光過敏症、低Na血症、性的機能障害。チトクロムP450 CYP2D6 アイソザイムに対する軽度の阻害作用を示し、CYP2D6によって代謝される薬物と相互作用することがあるが、CYP1A2、CYP2C9/10、CYP2C19、CYP3A3/4に対する影響はほとんどない。 [18]
  初期量:25-50mg/日
  維持量:50-200mg/日

MAOI

 
トラニルシプロミン(Parnate) 起立性低血圧、眠気、過興奮性、頭痛。低チラミン食が必要。
  初期量:10mg 1日2回、1~3週間隔で10mgずつ増量
  維持量:10-40mg/日
フェネルジン(Nardil) 起立性低血圧、眠気、過興奮性、頭痛。低チラミン食が必要。
  初期量:15mg 1日3回
  維持量:15-90mg/日
セレジリン(EMSAM) 適用部位の反応、起立性低血圧、下痢、頭痛、不眠、口渇。6mg/24時間を超える用量では低チラミン食が必要となる。
  初期量:6mgのパッチ剤/24時間(24時間ごとに局所に20mgのパッチ剤)
  維持量:6mgのパッチ剤/24時間(24時間ごとに局所に20mgのパッチ剤)。2週間間隔で3mg/24時間ずつ、12mg/24時間まで増量可能。

非定型抗うつ薬

一般に、血清中薬物濃度と抗うつ反応に相関関係はない。
ブプロピオン(Wellbutrin、禁煙の治療用にZybanとしても承認されている)

初期に活性化する用量依存的な痙攣誘発の可能性;痙攣の病歴のあるCNS転移を有する患者、痙攣の素因となる付随条件のある患者、痙攣の閾値を下げる他の薬物を服用している患者には禁忌。

軽度~中等度の鎮静作用、軽度~中等度の抗コリン作用e、軽度の起立時の血圧変化、激越、不眠、頭痛、錯乱、めまい、痙攣、体重減少。
  初期量:75mg/日
  維持量:200-450mg/日、1回に150mgを超えて投与しないこと
トラゾドン(Desyrel) 軽度~中等度の鎮静作用;無視できる抗コリン作用;軽度~中等度の起立時の血圧変化、特に高齢患者;めまい;頭痛;錯乱;筋肉の震えは、持続勃起症を引き起こすことがある。トラゾドンと食物を一緒に摂ることで胃腸の不調を減らすことができる。血漿中濃度の治療域 = 800-1,600ng/mL。
  初期量:50mg/日
  維持量:150-600mg/日
ミルタザピン(Remeron) 四環系抗うつ薬である。ミルタザピンの排泄は高齢の患者では遅い。傾眠、めまい、食欲増進と体重増加、便秘、高血圧、浮腫、錯乱、非空腹時の中性脂肪とコレステロールの増加、肝ALTの著しい増加、起立性低血圧。痙攣の閾値を下げる薬物(例、フェノチアジン系化合物)との併用時、ミルタザピンは痙攣のリスクを増加させうる。
  初期量:7.5-15mg/日
  維持量:15-45mg/日
ベンラファキシン(Effexor) 用量依存的な持続性高血圧、頭痛、めまい、不眠、吐き気、便秘、射精異常。MAOIの使用から2週間以内に投与を受けた患者に、致死的な反応が生じたことがある。
  初期量:75mg/日
  維持量:150-375mg/日
デュロキセチン(Cymbalta) 吐き気、口渇、便秘、食欲減退、疲労、眠気、発汗増加、性的衝動または性的能力の低下、排尿障害。
  初期量:30mg/日
  維持量:30-60mg/日

精神刺激薬

情動不安、激越、不眠、悪夢、精神病、食欲不振;また既存の心臓病を悪化させることがある。患者の1日の覚醒周期中の早い時間帯に投与すべきである。オピオイド鎮痛薬の鎮静作用に拮抗するため、補助的に使用することがある。
デキストロアンフェタミン(Dexedrine) 薬剤耐性、乱用、依存傾向。不整脈、神経質、情動不安、不眠。進行した動脈硬化症の患者、症状のある心臓血管疾患、中等度~重度の高血圧、緑内障の患者には禁忌。
  初期量:2.5-5mg/日
  維持量:10-30mg/日
メチルフェニデート(Ritalin、Methylin) 薬剤耐性、乱用、依存傾向。高血圧、頻脈、神経質、不眠、食欲不振、眠気、めまい。痙攣性障害の病歴のある患者において、痙攣の閾値を下げることがある。
  初期量:2.5-10mg/日
  維持量:20-60mg/日
デキメチルフェニデート(Focalin) 口渇、振戦または筋痙攣、神経質、睡眠障害、頭痛、眠気、吐き気、不眠、発汗増加、めまい、頭のふらつき、性機能の変化。
  初期量:10mg/日
  維持量:10-20mg/日


抗うつ薬を選ぶ場合、臨床的に有利に働く可能性のある副作用を考慮することには価値がある。例えば、アミトリプチリンなどいくつかのTCA、ミルタザピントラゾドンなどの非定型抗うつ薬には鎮静作用があり、激越状態にある患者と入眠困難な患者に対して有用なことがある。したがって、治療は1日1回就寝前の投与から始めることが多い。患者の大部分において、持続的な治療によって抗うつ薬の鎮静作用に対する耐性が発現するが、抑うつ症状の改善によって催眠薬の必要性は減少する。

抗うつ薬の選択に際しては、単剤または併用にかかわらず、以下の点を考慮すること:


  • 特異的な苦痛症状を標的にする。

  • 特定の抗うつ薬によって悪化する可能性のある併存する医学的問題の評価をする。

  • 副作用を最小限にし、現在の健康状態の悪化を避ける。

  • 固形の剤形を患者が飲み込めるかどうか判定する;抗うつ薬を液剤のかたちで摂取できる場合もある(例、アミトリプチリンノルトリプチリンドキセピンフルオキセチン)。または非経口的剤形で利用できる(例、アミトリプチリンイミプラミンの注射剤)抗うつ薬もある。

  • 抗うつ薬との相互作用の可能性を知るために、患者の投薬履歴を評価する。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬

SSRIの作用機序では、神経細胞のセロトニン再取り込みの遮断が関与し、これによりセロトニン作動性のフィードバック受容体(serotonergic feedback receptors)の脱感作に至ると仮定されている。現在利用可能なSSRIはすべて同様に効果がある;SSRIは主として安全性、忍容性、および薬物-薬物相互作用において差がある。ある種のSSRIでは他のSSRIよりも特定の副作用がよくみられる一方で、副作用および忍容性は個々の患者間で有意に異なる場合がある。SSRIはうつ病性障害に対する第一選択の治療法となっているが、それはSSRIの忍容性および副作用プロファイルが、特にTCAと比較してより良好なためである。本要約の前半で考察しているように、がん患者に実施された抗うつ薬の研究はほとんどがSSRIまたはTCAを用いて行われている。臨床試験のいずれもがんに対する治療を受けた小児および青年を含んでいないか、彼らに焦点を当てていない。 [19] [20] [21] [22] [証拠レベル:I]全体的に、がんに関連したうつ病を治療するためのSSRIの効力に関する証拠は限られたままであり、がんおよびがん治療の状況でその効力、安全性、忍容性、および薬物-薬物相互作用の問題を扱うには、さらに多くの研究が必要である。British Committee on Safety of Medicinesは、1つのSSRI(フルオキセチン)についてのみリスクと便益が好ましく均衡していると判断したが、便益があると考えられたのは患者10人中およそ1人だけだと考えられる。 [23] この知見と一致するが、小児および青年の研究の年齢層別化解析では、12歳未満の大うつ病の小児について、プラセボを上回る便益を示したのはフルオキセチンだけであった。 [15] [証拠レベル:I]上述のように、これらの研究の小児または青年はいずれもがんに罹患していないため、さまざまな化学療法薬および/または中枢神経系(CNS)放射線療法に曝露した後のSSRIの使用に関連して有害事象のリスクが追加的に増加するかどうかを検討した報告は利用できない。うつ病に対する最先端の代替となる、有効な行動的および薬理学的治療が、がん治療を受けている小児および青年に使用されるべきである。しかしながら、うつ病のリスクが明らかでSSRIが考慮される場合は、小児精神科医または神経内科医による対診が必須であり、潜在的な有害事象の綿密なモニタリングがきわめて重要である。成人のSSRI使用に関する警告は出されていない。

抗うつ薬の中止

抑うつ症状を治療している患者(うつ病性障害はない)に対する抗うつ薬治療の最適期間は分かっていない。うつ病性障害のある患者で抗うつ薬による薬物療法に有益な反応が得られた場合、うつ病が治った後、最低4~6ヵ月は治療を続けるべきである。患者が抗うつ薬の服用を中止している時は、TCAの用量はコリン作用のリバウンド(例、過流涎、下痢)を避けるため1週間に約25%の割合で漸減すべきである。しかし、耐え難い有害作用のある患者では、用量の漸減は速やかに行うべきである。フルオキセチンを例外として、すべてのSSRIについて、用量を減量あるいは治療を中止する場合には、緩やかな漸減が勧められている。その他ベンラファキシンなどの半減期の短い抗うつ薬も緩やかに漸減すべきである。身体的精神的離脱症状が現れるのは、急激に中止した後や間欠的な服薬不履行時で、時には減量中が多い;これらの症状は一般的に軽度で、短期的、自己完結的であるが、苦痛をもたらし、仕事を休む、生産性が低下する、などにつながる。軽度の症状は、通常は一過性のものだと患者を安心させることでしばしば治療可能である。より重度の症状では、もとの抗うつ薬の用量に戻す、および漸減の速度を遅くすることが必要である。中止の症状が身体的な病気またはうつ病の再発と誤解されることがあるが、誤診は不必要で高価な検査と治療を招きかねない。したがって医療専門家は、SSRIの中止時に起こりうる有害作用について知識をもつ必要がある。 [24]

副作用

TCAは心筋の異常伝導を引き起こすことがある;したがって、心臓に既往症のある患者においては心臓の病歴と最近の心電図を入手すべきである。三環系抗うつ薬の多くは鎮静作用をもつ;そのため、治療は一般的に、就寝前に低用量から開始される。主な例外はデシプラミンであり、患者によっては軽度の興奮作用がみられるので、不眠が発症する場合には、それを軽減させるよう午前中に投与する。1日の投与量は、数日ごと、あるいは1週間間隔で、症状が好転するまでゆっくりと増量される。多くの患者は薬物の鎮静作用に対して耐性を獲得するので、1日の全量を分割し患者の目が覚めている周期に合わせて投与してもよい。

TCAは今でも重度の大うつ病に対する第一選択肢の治療と考えられている;しかしながら、その適応に対してSSRIの使用が増えており、その理由はSSRIの有効性と、心不整脈、低血圧、抗コリン作用などのTCAに関連のある顕著な臨床的副作用のリスクが少ないことにある。さらに、TCAは過量摂取時に非常に毒性が高い。SSRIに関連のある副作用は一般に、吐き気、嘔吐、下痢、傾眠、不眠、頭痛、錯乱、めまい、無力症、性的機能障害などである。フルオキセチンに関連する薬物特異的な有害作用には、胃痛、短期間の不安または激越、女性では無オルガスム症がある。サートラリンによる治療は、時に消化不良、振戦、男性では射精の遅延を併発することがある。

SSRIはその薬物動態プロファイルゆえに1日1回投与され、そのため、患者のコンプライアンスが改善する。 [25] [証拠レベル:II]サートラリンパロキセチンの半減期は約20時間である;したがって、全身濃度の定常状態が、治療開始または用量あるいは投与スケジュールの変更後1週間以内に達成される。比較すると、頻回投与はフルオキセチンの代謝を阻害するようである;結果としてフルオキセチンとその活性代謝物ノルフルオキセチンが治療中止後数週間にわたって体内に存在しうる。

薬物間の相互作用

抗うつ薬を処方し、投与された患者を観察する臨床医は、他の薬物との相互作用の可能性についても精通すべきである。 [26] SSRIベンラファキシンネファゾドンミルタザピンはチトクロムP450酵素によって代謝される;これらの薬物動態が変化する、または同じ酵素に代謝される薬物のクリアランスに影響を与えることがある。しかし特定のチトクロムP450酵素に対する影響の点では、SSRIとSSRIの代謝物の間には顕著な相違がある。 [18] 例えば、フルオキセチンとノルフルオキセチンはCYP3A4アイソザイムを阻害する;しかしながら、代謝物はフルオキセチンよりも作用が強く、半減期が長い点から見て、相互作用の可能性は、フルオキセチンを中止した後数週間にわたって残る可能性がある。 [27] これらの薬物の薬理学上の類似点と相違点を理解することが、臨床医がこれらの薬物を最も望ましいかたちで使用し、臨床的に重要な薬物動態的薬物-薬物相互作用を避けるにあたって役に立つ。さらに、すべてのSSRIはアルブミン(± α-1 酸性糖蛋白)に対する蛋白結合率が高いため、臨床医は蛋白結合率の高い他の薬物との相互作用の可能性を考慮しなければならない。サートラリンパロキセチンは不活性な化合物として代謝、排泄されるため、腎機能障害あるいは肝機能障害のある患者に望ましい。 [28]

非定型抗うつ薬


  • ブプロピオン


    ブプロピオンは、うつ病とがんの両方にかかっている患者の治療、特にうつ病が疲労を伴う場合に、TCAとSSRIに代わる独特の薬物である。薬理学的には、ブプロピオンは弱いモノアミン再取り込み阻害薬であり、ドパミン輸送阻害がわずかにある;しかしながら、代謝的に、アンフェタミン様の活性を持ち、ドパミンとノルエピネフリンの再取り込みの両方に影響を与える活性物質に変換される。ブプロピオンは一般に性的機能障害を起こさない;したがって、性的に活発であることを希望する患者と、他の抗うつ薬によって性的機能障害を経験した患者の治療に有用であろう。ブプロピオンによる治療は1日1回75mgの用量から始め、朝投与するのが好ましい。当初患者は、不眠、激越、運動性不穏状態などのブプロピオンに関係することがある症状のために、中-長時間型の鎮静/催眠薬を必要とする。ブプロピオンによる痙攣のリスクは、他の抗うつ薬の4倍となろう。1回の投与量は150mgを超えてはならず;100mg/日を超えて増量してはならない;増量は緩やかに行い、前回の増量から少なくとも3日たってから行うべきである。450mg~650mgの用量でブプロピオンを投与されている患者では痙攣のリスクが顕著に上がるため、1日の総投与量は450mgを超えてはならない。

    ブプロピオンは、脳の悪性疾患を有する患者、および頭部外傷または痙攣性障害の病歴

    [29] および

    過食症の病歴のある患者には禁忌である。

    [30] [証拠レベル:II]


  • ベンラファキシン


    ベンラファキシンは、ノルエピネフリンとセロトニンの両方の再取り込みに影響し、セロトニンによる神経伝達を増強する。 [31] ベンラファキシンは、TCAのような不快な抗ムスカリン作用あるいは抗アドレナリン性の副作用を示さない;しかしながら、SSRIによるものと同様の副作用、特に、吐き気、頭痛、傾眠、口渇を示す。患者によっては、ベンラファキシンは持続性血圧上昇の原因となることがある;したがって治療開始前に血圧を評価すべきであり、治療開始後および増量後の監視が必要である。ベンラファキシンは1日2回、食事と一緒に投与する。


  • トラゾドン


    非定型抗うつ薬のトラゾドンの主な作用は十分に分かっていない。セロトニンの再取り込みに拮抗するが、この作用はSSRIに比べて数倍弱い。トラゾドンは活性があり、代謝されて特定のセロトニン受容体(5-HT1)においてアンタゴニスト活性をもつ化合物になる。トラゾドンは、さらに臨床活性に寄与する活性代謝物を有する。 [31]


  • ミルタザピン


    がん患者におけるミルタザピン使用の臨床経験は増えつつある。薬理学的にはミルタザピンはノルアドレナリン作動性で特異的セロトニン作動性の抗うつ薬である。シナプス前αアドレナリン受容体(α-2)とセロトニン受容体(5-HT2と5-HT3)に競合的に拮抗し、その正味の結果によってノルエピネフリン遊離とノルアドレナリン性神経伝達が促進される。 [31] ; [32] [証拠レベル:I]鎮静作用は、治療量以下の低い用量(15mg/日未満)で主な副作用であり、逸話的証拠は、高用量では鎮静作用が減少すると示唆している。その副作用プロファイルには、食欲増進とそれによって起こる体重増加、めまい、口渇、便秘が含まれる。 [33] 構造的には、ミアンセリン(欧州で市販されている抗うつ薬)の類縁体だが、ミルタザピンは、ミアンセリンのような顆粒球減少症を含む重度の造血機能障害をほとんど引き起こさないと解されている。 [34] ミルタザピンの他の薬物との相互作用についてはほとんど知られていないが、SSRIに比べて、臨床的に著しい薬物相互作用の危険は低いと考えられる。 [35] ミルタザピンの初期量は15mg/日、就寝時である。増量は1~2週間以上の間隔をあけて最大1日量は45mgまでとする。


ベンゾジアゼピン類

ベンゾジアゼピン類は、うつ病に付随しうる不安の治療に有効に使用されている。抗うつ薬とベンゾジアゼピン類を併用している患者では、患者の抑うつ症状が軽減し始めた後はベンゾジアゼピン類を中止できるが、必要なら両方の薬物を続けても安全である。ベンゾジアゼピン類は決して急に中止してはならないが、その理由は痙攣の可能性を伴う離脱症状が起こるからである。ベンゾジアゼピン類の用量は3~4日ごとに約25%の割合でゆっくりと漸減すべきである。

精神刺激薬

臨床経験(表3を参照のこと)によって、興奮性薬(例、メチルフェニデートおよびデキストロアンフェタミン)は、低用量で、憂うつな気分、感情鈍麻、エネルギー低下、集中力の低下、脱力感などの症状がある患者に有用と示唆されている。 [36] [証拠レベル:II]これらの薬物は、寿命の限られた(数週間から2~3ヵ月)進行がんの患者において、特に有用である。従来のTCAやSSRIといった、作用の発現に3~4週間かかる抗うつ薬と比較して、精神刺激薬はしばしば治療開始後数日以内に抗うつ作用を現す。これらの薬物は、快適感、疲労の軽減、食欲増進などの感覚を促進する。興奮性薬はオピオイドの鎮静作用を相殺するのに有用なことがあり、抗うつ薬に比べて効果が迅速である。興奮薬に関連する有害作用には、不眠、多幸感、気分の変動がある。高用量かつ長期の使用は、食欲不振、悪夢、不眠、多幸感、あるいは妄想症を招く。

メチルフェニデートおよびデキストロアンフェタミンは、睡眠障害(例、不眠および夜間覚醒)を避けるため、患者の覚醒周期の早い時間帯に分割投与される。ベンゾジアゼピン類と同様に、これらの薬物は抗うつ薬治療に補助的に用いられる;抗うつ薬と併用で開始し、抑うつ症状が軽減した場合に中止できる。 [37] [38]

表3.がん患者における精神刺激薬の臨床試験

研究 解説 薬物 結果
Meyers et al.1998 [39] 脳腫瘍;N = 30 メチルフェニデート(Ritalin) ↑気分、↑認知、↑機能
OlinおよびMasand 1996 [40] さまざまながん;N = 59;カルテレビュー デキストロアンフェタミン(Dexedrine);メチルフェニデート(Ritalin) ↓うつ病、↑食欲
Bruera et al.1992 [41] がん疼痛 vs オピオイド注入;N = 20 メチルフェニデート(Ritalin);プラセボ ↑認知、↓鎮静
Fernandez et al.1987 [38] さまざまながん;急性発症;N = 30 メチルフェニデート(Ritalin;最大80mg) ↓うつ病
Bruera et al.1986 [42] 疼痛;二重盲検クロスオーバー研究;N = 24 マジンドール(Mazanor) ↓疼痛、↓食欲、気分への影響は認められない
Joshi et al.1982 [43] 末期疾患 アンフェタミン ↑快適性


モノアミン酸化酵素阻害薬

抗腫瘍薬治療を受けている患者では、チラミン除去食での栄養必要量の達成が一般的により困難であるから、がん患者集団におけるモノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)の使用は制限されている。高血圧急性発症の可能性があるため、MAOIは、オピオイド、交感神経興奮薬、プロカルバジンの投与を受けている患者には禁忌である。

MAOIは他の薬物や特定の食物と一緒に摂取した場合に有害作用を起こすことがある。MAOIは、バルビツール酸系薬物はもちろん、モルヒネをはじめとするオピオイドの代謝を損ない、過度の換気抑制を招きうる。オピオイドの1種である塩酸メペリジン(Demerol)は、MAOIと併用した場合、高血圧、異常高熱、骨格筋硬直、痙攣、昏睡と関連している。 [44] 抗ヒスタミン薬、抗コリン薬、三環系抗うつ薬の作用の増大は、MAOIによる代謝障害による二次的なものである。さらにインスリンと経口スルホニル尿素の血糖降下作用は増強される。

MAOIはまた、外科手術中に使用されるある種の麻酔薬と相互作用することがある。 [45] がん患者は特に頻繁に外科的処置を受けることから、担当の麻酔医にすべての薬物治療について警告すべきである。術後痛には塩酸メペリジンによる治療を行うべきでない。MAOIは、リンパ腫と脳腫瘍の治療に用いられる化学療法薬のプロカルバジンと併用してはならないし、他の抗うつ薬と併用してもいけない。

経皮的抗うつ薬がFDAによって承認されたが、これは特に薬剤の経口投与が不可能なうつ病のがん患者の治療において利用価値が高くなる。抗うつ薬のセレギリン(EMSAMという商品名で販売されている)は、非可逆的MAOIである。この薬物は、がん患者のうつ病治療に対する評価は行われていない。

セレギリンには、通常の食事制限(低チラミン食)と薬物-薬物相互作用(メペリジン、プロポキシフェン、またはメサドンと併用すべきでない製品)の多くが密接に関係する(下記の表4を参照のこと)。しかしながら、添付文書によれば、20mgの皮膚パッチ剤(24時間に6mgのセレギリンを送り出す)は現在までに市販された全MAOIにみられる食事制限を付けずに使用可能である。この推奨は複数の臨床試験やFDAに提出された他の証拠によって支持されている。より高用量の2つの用法(24時間に9mgを送り出す30mgパッチ剤と、24時間に12mgを送り出す40mgパッチ剤)では食事に関する通常の警告文が付けられている。この薬物は、がん患者における安全性と効力に関しては評価されていない。

表4.チラミンを含む食品a

食品および飲料の種類 チラミンを多く含む食品および飲料で避けるべきもの チラミンをほとんどまたは全く含まない許容できる食品
OTC = 一般大衆薬。
a出典:EMSAM Medication Guide。 [46] 上に示した食品および飲料は、9mg/24時間または12mg/24時間のセレギリンを用いた治療初日から避けるべきであり、6mg/24時間への用量低下後2週間が経過するまで、あるいは9mg/24時間または12mg/24時間のセレギリンを中止するまでは引き続き回避すべきである。
肉、鶏肉、魚 自然乾燥し、時間の経過した、発酵した肉、ソーセージ、サラミ(カッチャトーレ、ハードサラミ、モルタデッラなど);酢漬けのニシン;傷んだまたは保存が不適切な肉、鶏肉、魚(例えば、変色しているか、変なにおいのする、またはかびが生えた食品);傷んだまたは保存が不適切な動物の肝臓 新鮮な肉、鶏肉、魚で新鮮な状態で処理された肉(例えば、ランチョンミート、ホットドッグ、ブレックファストソーセージ、加熱調理したスライスハム)を含む
野菜 ソラマメのさや その他の野菜すべて
乳製品 時間の経過したチーズ プロセスチーズ、モッツァレッラチーズ、リコッタチーズ、カテージチーズ、およびヨーグルト
飲料 あらゆる種類のタップビール(tap beer)、および発酵を停止させないよう低温殺菌されていないビール 他の抗うつ薬と同様に、アルコールとセレギリンの同時使用は推奨されていない。(瓶ビールおよび缶ビールとワインにはチラミンがほとんどまたは全く含まれていない。)
その他 濃縮酵母抽出物(例えば、マーマイト[Marmite])、ザウアークラウト、ほとんどの大豆製品(醤油や豆腐など);チラミンを含むOTCサプリメント ビール酵母、パン酵母、豆乳、チラミンが少ないチーズで調理された外食産業のピザ


セレギリンは非選択的MAOIであるため、中枢神経系でモノアミン酸化酵素B(MAO-B)を阻害するだけでなく、全身の他の部位においてモノアミン酸化酵素A(MAO-A)をも阻害してしまう。MAO-Aは、正常な場合消化管において、熟成チーズや赤ワインなどの食品に多く含まれる食事性アミンであるチラミンを代謝する。腸管におけるこのチラミンの分解は、この物質の過剰な量の吸収と全身への循環を防いでいる。チラミンは強力な昇圧物質(血管を収縮させる)であり、最終的には血圧を上昇させる。大量のチラミンは高血圧クリーゼ、卒中、心臓発作を引き起こすことがあり、場合によっては死に至ることもある。経皮的セレギリンの場合は、薬物が皮膚パッチから吸収されるために腸壁を通過しないことから、消化管におけるMAO-Aへの作用が有意に軽減されると考えられる。また、セレギリンは高用量ではMAO-AとBの両アイソザイムを阻害するのに対し、低用量ではMAO-Bを優先的に阻害すると考えられる。したがって低用量では、消化管MAO-Aの阻害が有意に軽減されることから食事制限の必要はないと考えられるのである。

この薬物の開始を考慮する場合は、複数クラスの薬物-薬物相互作用に関して薬剤師に相談すること。

この薬物は、がん患者では評価されていない。 [47]

チーズ、鶏レバー、チョコレート、ビール、ワインなどのチラミンの含有量が多い食品は、高血圧(初めは頭痛として発現する)と不整脈を引き起こすことがある。

抗うつ薬の影響

表5および表6は特定の患者に最も適した薬物を決定する際に有益なヒントを示す。この表は、疲労、不眠、吐き気、嘔吐などの患者の苦痛を増減させる、抗うつ以外のこれらの薬物の作用に焦点を当てている。

表5.成人がん患者における抗うつ薬a選択のための身体的症状と苦痛からのアプローチ

苦痛な症状 SSRI TCA 精神刺激薬 その他
SSRI = 選択的セロトニン再取り込み阻害薬;TCA = 三環系抗うつ薬;+ = この薬物の使用は症状を軽減しうる;– = この薬物の使用は症状を悪化しうる。
a一般的に用量は低用量から始めて漸増すべきである。このリストは特定の薬物療法に対する完全な適応と禁忌を示してはいない。最新の米医薬品便覧(Physicians' Desk Reference)などの信頼できる医薬品情報と経験を指針として臨床的な意思決定を行うべきである。
bSSRIはすべて、潜在的に睡眠過剰という矛盾した副作用をもっているが、フルオキセチンは特別に活性化作用をもつ。ブプロピオンもいくぶん活性化作用がある。
c鎮静作用のある抗うつ薬は不眠に、単独あるいは他の抗うつ薬への追加投与で有用である。トラゾドンおよびミルタザピンは他の抗うつ薬との併用で睡眠補助薬としてしばしば使われる。
d抗うつ薬の中には神経障害性疼痛の治療に有用なものもある。最もよく研究されているのはTCA、特にアミトリプチリンである。
e鎮静作用のある抗うつ薬は不安/激越状態にある患者に対して最も有用である。それはTCA、トラゾドンミルタザピン、およびネファゾドンである。
疲労 +b   + +b
不眠c   +   +c
神経障害性疼痛d + +    
オピオイドの副作用 +   +  
便秘 +   +  
食欲不振(体重減少)   + +  
不安 + +   +e
口渇/口内炎 + +  


表6.成人がん患者に対する抗うつ薬の選択において考慮すべき因子

合併する医学的状態 SSRI TCA 精神刺激薬 その他
SSRI = 選択的セロトニン再取り込み阻害薬;TCA = 三環系抗うつ薬;+ = この薬物の使用は症状を軽減しうる;– = この薬物の使用は適切な選択ではない。
a一般的に、TCAと精神刺激薬は心不整脈を引き起こし悪化させる。SSRI、ブプロピオンベンラファキシンネファゾドンは一般に心臓の問題を起こしにくい。TCAの投与を開始する前に心電図を入手すべきであり、心臓を危険にさらすことに懸念がある場合は心臓病専門医の助言をあおぐべきである。
b短時間作用型のSSRI(サートラリンパロキセチン)は、フルオキセチンに比べて肝機能障害のある患者において問題を起こしにくい。半減期が短いため、有害な薬物相互作用の可能性が少なく、薬物の蓄積に関連する問題が少ない。サートラリンネファゾドンは肝P450酵素活性に対する影響が少ないと報告されている。
c臨床医は、患者の腎臓または肝臓の機能不全のために、抗うつ薬の用量と投与スケジュールに変更が必要かを、考慮すべきである。
dTCAは閉塞隅角緑内障には禁忌である。
心臓の病歴 +   +a
肝機能障害 +b +  
腎機能障害c        
緑内障 + d    
神経障害性疼痛 + +    


治療可能ながんにおいて致死的な合併症となる抑うつ症候群の軽減に他の介入が失敗した場合、電気ショック療法(ECT)が有用かつ安全な治療法であることは注目に値する。 [48] [49] しかしミルタザピントラゾドン投与患者でのECT使用の経験は限られており、SSRI投与患者におけるECTの使用を確立した臨床的研究は存在しない。フルオキセチン投与患者において痙攣の延長はほとんど見られていない。

心理療法

概要

伝統的にうつ病の症状は洞察中心の心理療法を用いて管理されており、がん患者の中にもこの方法が非常に有用な者がいる。その他の多数の患者にとってこれらの症状の最良の管理方法は、危機介入、短期の支持的心理療法、認知行動療法の併用である。

うつ病に対する心理療法はさまざまな形で提供されている。ほとんどの介入は短期間で行われ(4~30時間)、個人形式および少数グループ形式のいずれでも提供されており、がんや特異的なリラクゼーション要素について教育する構成要素を含んでいる。 [50]

認知行動心理療法は最近の研究において検討されている治療法の中で最も知名度が高い治療法の1つである。認知行動介入は、全適応を改善することを目的とした特異的な対処戦略を変更することに集中しており、一般的に特別な思考および感情と行動との関係に焦点を当てている。人の思考を理解し変化させることにより、情動反応および付随する行動を変えることができる。例えば、損失、人生の変化、または死亡に関する頻繁で侵入的な抑制できない思考により、集中力が低下し、悲しみ、罪悪感、および無益感といった感情を生じさせることがある。そして次にこうした感情は、過眠、引きこもり、および孤立といった結果をもたらす。認知行動介入は侵入的思考に集中し、しばしばその正確度または合理性を検証し、認知のゆがみの特異的パターンに注目している。同時に、患者は、情動反応および付随する行動を変えるためにデザインされた特異的な認知対処戦略を発達させる。最終的な結果は、対処の改善、適応の向上、およびより良好な全生活の質である。

心理療法のその他の目標には、対処能力の向上、苦痛の直接的軽減、問題解決能力の改善、支援の集結、否定的あるいは自滅的な思考の再修正、十分な知識があり親身になってくれる医療提供者と親密な個人的絆を結ぶことなどが含まれる。 [51] [証拠レベル:II]; [52] [53] [54] [証拠レベル:I] [55] 聖職者またはパストラルケア部門のメンバーとの相談が有用な患者もいるだろう。

これらの治療の具体的な目標は以下の通りである:


  • がん患者とその家族に対する援助として、病気とその治療に関する質問に答え、情報を明確にし、誤解を正し、不安を取りのぞき、病気と病気が家族に与える影響への反応を正常なものにする。患者の現在の状況とこれまでのがん罹患経験にどのような関連があるかを探る。

  • 問題の解決を助け、患者の通常の適応的防衛を強化し、患者と家族がさらに支持的な適応対処メカニズムを身につける手助けをする。不適応対処メカニズムを確認した場合には、家族が代わりの対処戦略を身につける手助けをする。関連するストレス要因の領域(例、家族の役割と生活様式の変化)を調べ、家族のそれぞれが支え合い、互いの心配を分かち合うことを勧める。

  • 治療の中心が治癒から緩和へと変わった場合、治癒的治療が終わっても医療チームは緩和計画の一部として積極的に症状の治療を行う予定であること;患者と家族は見捨てられるわけではないこと;スタッフは熱心に働いて、快適さを維持し、疼痛管理を行い、患者と家族の尊厳を守る意志を強調する。

がん支援グループは、がん患者の治療において有用な補助的療法になりうる。 [56] [57] [証拠レベル:II]最近の支援グループによる介入は、気分障害、建設的な対処戦略の使用、生活の質の改善、プラスの免疫反応などに顕著な効果を示している。 [58] [59] [証拠レベル:I] [60] 支援グループは、ウェルネス・コミュニティー(the Wellness Community)や米国がん協会(the American Cancer Society)を通じて探し出すことができ、その他にも医療施設や病院の社会福祉事業部門など、地域社会の情報源は数多くある。

心理療法の効力の経験的研究

心理療法は、一般の成人メンタルヘルス集団におけるうつ病の治療法として広範囲に研究され、有効であることが明らかにされている。 [61] 最近のレビューにより、心理療法はうつ病を経験しているがん患者に対しても有効な介入であると結論付けられている。 [62] [証拠レベル:II] [50] うつ病の発生を予防するようにデザインされた研究において(すなわち、患者は抑うつ症状のために選択されたわけではない)、介入により、効果の大きさは軽度~中等度であると報告されている(効果の大きさの範囲は0.19~0.54)ものの、プラスの効果が認められる。 [50] しかしながら、患者が抑うつ症状を示したために意図的に選択された研究では、介入により強い効果が認められた(効果の大きさ、0.94)。 [62] 0.94の効果の大きさは、対照群の患者の約82%と比較して、治療群の平均的な患者の方が有利であるということを示す。

うつ病のがん患者に対して認知行動介入を実施した1件のデザインの優れたランダム化臨床試験により、問題解決のためのトレーニングの抑うつ症状への効果が調査された。 [63] [証拠レベル:I]毎週1.5時間の個人的な心理療法セッションを10回実施する介入では、問題を効果的に解決できるようになるためのトレーニングに焦点が当てられた。問題を解決する作業が強調され、これには(a)問題の性質をより良く決定し、公式化する、(b)代替の解決策を幅広く見いだす、(c)1つの解決方法の結果を系統的に評価する一方で、最適な解決方法を決定する、および(d)解決方法実施後の結果を評価する技術が含まれた。各段階に関連した作業についてセッション間に宿題が割り当てられ、患者は文書のマニュアルが提供され、問題が生じたときにマニュアルを参照するように促された。成人がん患者132人が、問題解決治療群、または待機リスト対照群にランダムに割り付けられた。全体の結果により、問題解決能力の改善および抑うつ症状の臨床的に有意な減少の両方が示された。

最新の臨床試験

現在、参加者を受け入れているうつ病についての支持療法と緩和ケアの試験は、NCI支援のがん臨床試験のリストを参照のこと(なお、このサイトは日本語検索に対応していない。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験のリストは、場所、薬物、介入、他の基準によりさらに絞り込むことができる。

臨床試験に関する一般情報は、NCIウェブサイトからも入手することができる。


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がん患者における自殺のリスク

人口統計学および統計学

がん患者における自殺の発生率は一般集団の発生率と同等あるいは2倍~10倍の頻度であることが複数の研究によって示されている。ある研究では、自殺を試みるがん患者は比較的少数とはいえ、がん患者の自殺リスクは高いと示唆している。 [1] [2] [3] Register of Deaths at Statistics Norwayに関連付けられたCancer Registry of Norwayから得られたデータを用いた1件の集団ベースの研究により、1990年から1999年までの10年間で男性および女性における自殺の相対リスクは診断後2年以内が高かったことが示された;しかしながら、女性の相対リスクは有意ではなかった。男女いずれのリスクも、診断後最初の数ヵ月が最も高く、数十年かけて相対リスクは顕著に低下した。 [4] 消極的な自殺思考はがん患者の間ではそれほど珍しくない。自殺傾向と、速やかな死を求める願望、医師幇助自殺の依頼、安楽死のいずれかまたはすべてとの関係は複雑であり、よく分かっていない。 [5] 男性のがん患者は一般集団に比較して明らかに自殺のリスクが高く、相対リスクは2.3である。 [1] [2] 鎮痛薬と鎮静薬の過量摂取ががん患者の間で最もよく行われる自殺の方法であり [1] [2] 、がんに関係のある自殺はほとんどが自宅で起こる。口腔がん、咽頭がん、肺がんの患者とカポジ肉腫のあるHIV陽性患者において自殺の発生率が高いことが複数の報告によって確認されている。 [1] [2] [5] がん患者における実際の自殺の発生率はおそらく過小評価されている。この状況で自殺による死亡を報告することには問題がある。 [6]

病因論/病態生理学

がんの母集団における自殺の危険因子は以下の通りである:

一般的危険因子
  • 精神障害の病歴、特に衝動的な行動に関連のあるもの(例、境界型人格障害)。

  • 自殺の家族歴。

  • 以前の/事前の自殺未遂の病歴。

  • うつ病。

  • 物質乱用。

  • 友人あるいは配偶者の最近の死。

  • 社会的支援の不足。

がんに特異的な危険因子
  • 口腔がん、咽頭がん、肺がん(しばしばアルコール、タバコの大量使用と関連がある)。

  • 疾病の進行期および予後不良。

  • 錯乱/せん妄。

  • 疼痛コントロール不良。

  • 欠損症状がある(例、運動機能の喪失、腸と膀胱に対するコントロールの喪失、切断術、感覚の喪失、対麻痺、食事と嚥下ができない、消耗、疲労)。


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自殺傾向のある患者の評価、査定、管理

評価

自殺傾向のある患者には慎重な評価が必要である(表7を参照のこと)。自殺を評価する際には、患者が念慮(すなわち、自殺を考えること)に加えて計画(すなわち、方法の説明)を報告する場合には、自殺の危険が高まっていると認識することが重要である。危険は増し続け、ついには計画が致死的である段階に至る。致死性は、報告された計画が行われた場合に、どの程度確実に死が訪れるかを評価することで判断する。致死性を評価する際に考慮すべき因子には、その方法が利用可能なのか、その方法の可逆性はどうか(ひとたび始めた場合に中止できるのか)、助けが近いのか、がある。自殺念慮を報告しているがん患者については、根底にひそむ理由がうつ病性障害なのか、耐え難い症状を根本的に制御したいという願望の現れなのかを判断することが欠かせない。 [1] 大うつ病の迅速な同定と治療が、がん患者における自殺の危険を減らす上で不可欠である。危険因子、とりわけ絶望(自殺の予兆としてはうつ病よりもさらに強い因子)は慎重に評価すべきである。 [2] 絶望の評価は回復の望みのない進行期の患者においては、容易ではない。絶望の根底にひそむ理由を評価することが重要であり、その理由には、症状管理不良、苦痛に満ちた死に対する恐怖、または自暴自棄の感情などが関係している可能性がある。 [3] 日本人のがん患者で精神科医に紹介後大うつ病と診断された220人のうち、約50%が自殺念慮を報告した。自殺念慮を予測する判断材料についてレトロスペクティブな分析を行ったところ、大うつ病の症状が多く、身体的機能が悪い者が、自殺念慮を報告する可能性が有意に高いと判明した。 [4]

自殺傾向のあるがん患者との関係においてはラポールの確立が最も重要であり、それが他の介入の基礎として役立つ。臨床医は、自殺の話をしたことが原因で患者が自殺を試みることはないと確信すべきである。それどころか自殺について話すことでこの重大事が正当なものだとされ、患者は自分の感情や恐怖について話すことができ、コントロールできる。 [5] 支持療法的な関係の維持が必要であり、その関係によって、感情的身体的苦痛を軽減するためにできることは多いのだという心構えが伝わる。(詳しい情報については、がん性疼痛に関するPDQ要約を参照のこと。)危機介入的な精神療法のアプローチを開始すべきであり、その場合は可能な限りの患者支援システムを集結する必要がある。原因となる症状(例、疼痛)は積極的に抑え、うつ病、精神病、激越、せん妄の根底にある原因などは治療されるべきである。 [5] (詳しい情報については、せん妄に関するPDQ要約を参照のこと。)これらの問題は普通の病院、または自宅で管理されることが多い。一般的ではないが、精神病院への入院も、症状が明確で、患者が医学的に安定している場合には有用である。 [5]

表7.がん患者における自殺傾向症状の評価に推奨される質問a

質問 評価
a出典:Roth et al. [6]
がん患者の大多数は「状況が悪化したら自分は何かしでかすかもしれない」など、自殺にまつわることを一時的に考える。 話すことでリスクが高まることはないと口火を切り、正常だということを認める
こんなふうに考えたことがありますか?生きていたくないとか、病気が死を早めればいいとか? リスクのレベル
自殺を考えたことがありますか?どうやって自殺するか考えたことがありますか?自分を傷つけようとしたことがありますか? リスクのレベル
憂うつになったことや自殺未遂をしたことがありますか? 病歴
今までに他の精神的問題で治療を受けたことがありますか、またがんの診断を受ける前に精神科に入院したことがありますか? 病歴
アルコールまたは薬物で問題を起こしたことがありますか? 物質乱用
最近身近な人を亡くしましたか?(家族、友人、その他がんにかかった人) 死別反応


管理

実地臨床では、自殺傾向のある患者の管理の目標は、症状コントロール不良から自暴自棄に陥り、衝動的に自殺することを予防することにある。症状コントロール不良のために苦痛が長引くと、このような自暴自棄を引き起こす。したがって有効な症状コントロールは、自殺傾向のあるがん患者の心理的苦痛を減少させるために重大である。 [5] 終末期が近い患者は、高レベルの感情的または身体的苦痛なしに覚醒状態を維持できないことがある。これが自殺思考や、死への幇助の依頼に高い頻度でつながる。このような患者では患者の苦痛を和らげるために鎮静薬による治療が必要である。

時には、自殺の危険があると考えられる患者に対し致死的となりうる薬物へのアクセスを制限することは重要である。致死的となりうる薬物が制限される場合、症状の管理不良が危険の一因となりうるため、自殺のリスクに対する影響と症状管理に対する影響を比較検討することが重要である。さらに、自殺傾向のある患者はしばしば自殺未遂を完結するための他の利用しうる手段を持ち、これらも評価されなければならない。自殺のリスクを軽減する戦略には、自殺のリスクおよび症状管理を再評価するための頻繁な接触、ならびに、制御不良な症状を効果的に管理するため、必要な時に迅速に用量が漸増漸減できるように、定期的に量を制限した投薬を行うなどがある。オピオイドの非経口的またはくも膜下投与を受けている患者に対しては、プログラムへのアクセスが制限され、施錠されアクセスできないカートリッジが付いたプログラム可能なポンプが多少安全であろう。

がん患者における自殺のリスクを軽減する戦略には以下が含まれる:


  • 抗うつ薬療法が効果を現すまでの間、速やかに働いて苦痛を軽減する薬物を投与する(例、不安にベンゾジアゼピン、疲労に興奮薬など)。

  • 症状管理に細心の注意を払う。

  • 過剰摂取が死につながる薬物を適切な量以上入手できないようにする。

  • 患者との頻繁な接触を保ち、厳重に観察する。

  • 患者が長時間ひとりで過ごすことを避ける。

  • 患者に対する支援を集結する。

  • 病気の全経過にわたって、それぞれの危期における患者の心理的反応を慎重に評価する。

家族と医療提供者への影響

自殺による死別の際には、とりわけ残された者にとってつらいものになる。自暴自棄、拒絶、怒り、安堵、罪悪感、自責、否認、同一視、屈辱などの感情からなる反応パターンが起こるであろう。このパターンは、関係の性質と強さ、自殺の性質、故人の年齢と身体的状態、支援ネットワークを知っているか、残された者の問題解決能力、および文化的/宗教的背景などの要素によって変化する。 [5] 死別反応の期間を通じて残された者を支援することが重要である。相互支援グループは、孤独を和らげ、感情を吐き出す機会を与え、自殺直後の時期を乗り切る方法を探し出す、などに役立つ。(詳しい情報については、悲嘆、死別、喪失への対処に関するPDQ要約を参照のこと。)

患者の自殺に対するスタッフの反応は家族にみられるものと似ているが、スタッフは家族と違って自分の感情を表に出す権利がないと感じていることが多い。患者の自殺はスタッフに自分の職業上の判断に対する疑いの気持ちを抱かせる。スタッフが心理学的検死を行って、なぜ、どのように自殺が発生したのか、危険の徴候や症状、将来同様の問題を予防するにはルーチンにどんな変更を加えればよいか、などを理解しようとすることはしばしば役立つ。 [5]

死への幇助、安楽死、および終末期に関する決断

患者の自律性を尊重し促進するという原則が、遺言状の尊重から安楽死の促進などのホスピス運動と死ぬ権利などの問題に力を与える。これらの問題は、患者の自律性と医師の治療義務の間に軋轢を生み出すことがある。 [7]

安楽死と医師幇助自殺の問題の答えは、法律、倫理、医学、哲学などの領域に属する。医師をはじめとする医療専門家は、抑うつ状態の末期患者のために働く際に、これらの問題に対する取り組みと解決に欠くことのできない臨床上の役割をもつ。 [1] [8] [9] [10] [11] [12] [13] さらに宗教と文化の問題がこの意思決定の過程に強く影響する。1994年の調査によれば、ホスピスの医師は、強力な疼痛コントロールを支持し、二次的に生命を縮めるとしても患者が生命維持を拒否する権利に強く賛成する。しかしこの医師らは安楽死あるいは自殺幇助には強く反対しており、明らかに、これらの2つの介入をはっきりと区別している。 [7] 具体的に医師幇助自殺を依頼する患者には、しばしば、患者の快適さを増し、症状を和らげ、思い切った手段を考えることを防ぐような処置を指示できる。 [1] 最近の研究によると、安楽死への賛同は、男性、信仰心の欠如、がん患者の苦痛に対する一般的認識と関連すると示唆されている。 [14] 進行がんの患者で死を早めることを一貫して強く要求する者たちに関する1995年の研究は、この要求とうつ病の存在に関係があることを示唆した。死にたいという要求をもつ患者たちは、慎重に評価し、必要に応じてうつ病の治療を受けるべきである。患者らの死にたいという要求が気分障害の好転に伴って持続するか減少するかについては、まだ研究されていない。 [15] 職業上の関係が始まる時から継続して意思決定の過程を分かち合うことが重要である。 [16] (詳しい情報については、人生の最後の数日間に関するPDQ要約を参照のこと。)


参考文献
  1. Massie MJ, Gagnon P, Holland JC: Depression and suicide in patients with cancer. J Pain Symptom Manage 9 (5): 325-40, 1994.[PUBMED Abstract]

  2. Kovacs M, Beck AT, Weissman A: Hopelessness: an indicator of suicidal risk. Suicide 5 (2): 98-103, 1975 Summer.[PUBMED Abstract]

  3. Breitbart W, Passik SD: Psychiatric aspects of palliative care. In: Doyle D, Hanks GW, MacDonald N, eds.: Oxford Text Book of Palliative Medicine. New York: Oxford University Press, 1993, pp 609-26.[PUBMED Abstract]

  4. Akechi T, Okamura H, Yamawaki S, et al.: Why do some cancer patients with depression desire an early death and others do not? Psychosomatics 42 (2): 141-5, 2001 Mar-Apr.[PUBMED Abstract]

  5. Breitbart W, Krivo S: Suicide. In: Holland JC, Breitbart W, Jacobsen PB, et al., eds.: Psycho-oncology. New York, NY: Oxford University Press, 1998, pp 541-7.[PUBMED Abstract]

  6. Roth AJ, Holland JC: Psychiatric complications in cancer patients. In: Brain MC, Carbone PP, eds.: Current Therapy in Hematology-Oncology. 5th ed. St. Louis, Mo: Mosby-Year Book, Inc., 1995, pp 609-18.[PUBMED Abstract]

  7. Miller RJ: Supporting a cancer patient's decision to limit therapy. Semin Oncol 21 (6): 787-91, 1994.[PUBMED Abstract]

  8. Masdeu JC: Physician-assisted suicide and euthanasia. JAMA 276 (3): 196-7, 1996.[PUBMED Abstract]

  9. Siegler M: Is there a role for physician-assisted suicide in cancer? No. Important Adv Oncol : 281-91, 1996.[PUBMED Abstract]

  10. Back AL, Wallace JI, Starks HE, et al.: Physician-assisted suicide and euthanasia in Washington State. Patient requests and physician responses. JAMA 275 (12): 919-25, 1996.[PUBMED Abstract]

  11. Marzuk PM: Suicide and terminal illness. Death Stud 18 (5): 497-512, 1994.[PUBMED Abstract]

  12. Suarez-Almazor ME, Belzile M, Bruera E: Euthanasia and physician-assisted suicide: a comparative survey of physicians, terminally ill cancer patients, and the general population. J Clin Oncol 15 (2): 418-27, 1997.[PUBMED Abstract]

  13. Howard OM, Fairclough DL, Daniels ER, et al.: Physician desire for euthanasia and assisted suicide: would physicians practice what they preach? J Clin Oncol 15 (2): 428-32, 1997.[PUBMED Abstract]

  14. Suarez-Almazor ME, Newman C, Hanson J, et al.: Attitudes of terminally ill cancer patients about euthanasia and assisted suicide: predominance of psychosocial determinants and beliefs over symptom distress and subsequent survival. J Clin Oncol 20 (8): 2134-41, 2002.[PUBMED Abstract]

  15. Chochinov HM, Wilson KG, Enns M, et al.: Desire for death in the terminally ill. Am J Psychiatry 152 (8): 1185-91, 1995.[PUBMED Abstract]

  16. Chandler SW, Trissel LA, Weinstein SM: Combined administration of opioids with selected drugs to manage pain and other cancer symptoms: initial safety screening for compatibility. J Pain Symptom Manage 12 (3): 168-71, 1996.[PUBMED Abstract]

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緩和的鎮静

心理社会的および実存的症状に対する緩和的鎮静の使用は、特に議論のあるところである。臨床家は多くの倫理的および臨床的疑問-うつ病および心理社会的症状と比べると疼痛や身体症状に対する緩和的鎮静の場合にはより容易に解決される疑問-に直面しうる。

例えば、精神症状の場合には、終末期の鎮静の使用に対する倫理的根拠(二重結果)の適用がより不明確となる。二重結果の原則の下では、意図される効果(心理学的苦痛の軽減)は、その医療従事者によって何らかのリスクまたは否定的な効果(すなわち、生存期間の短縮)が意図されていない限り、許容可能なものとされる。患者の意図が不明確で問題を生じうる場合には、この原則では医療従事者の意図だけが議論されているゆえに、難しい問題が生じてくる。これ以上抑うつ症状に苦しみたくない抑うつ状態の患者は、その軽減だけを求めているのか、それともその患者は医療従事者に自身の生命の短縮をも依頼する意図までもっているのか。このような状況を不快に感じる臨床家は倫理委員会からの指導を求めたくなることもあるであろう。

この他にも、文化的背景から、手を引くあるいは「zoning out(意識を失わせる)」などの低水準の対処法とされる、否定的となりうる価値観からも、困難な問題が生じてくる。終末期に関連する不安にそれ以上直面したくない鎮静を望む不安状態の患者を、そうした問題を克服するように励ますべきか。あるいは、そうした不安に対処するのに鎮静を用いることはそうした患者にとって許されることなのか。不安が許容できないと判断されるまでにはいくつの代替案が試されるべきなのか。こうした要望に対応する場合には、医療従事者は自身の文化的および宗教的先入観と、患者とその家族の文化的および/または宗教的背景を考慮すべきである。

心理社会的症状に対する終末期の鎮静の使用については、詳述している研究はほとんどない。イスラエル、南アフリカ、スペインの4つの緩和ケアプログラムが1件の調査に参加した。 [1] 1件のユニークな研究では、緩和的鎮静療法のこうした問題に関する日本における経験が記載されている。 [2] [3] [証拠レベル:II]ヒューストンにあるMD Anderson Cancer Centerで行われたレトロスペクティブ研究は、緩和ケア施設に入院している1,207人の患者を対象とした。緩和的鎮静は入院患者の15%で実施されていた。最もよく見られた適応症はせん妄(82%)および呼吸困難(6%)であった。こうした状況での鎮静は一時的な処置である場合も多く、この患者群の23%で回復がみられた。 [4]


参考文献
  1. Fainsinger RL, Waller A, Bercovici M, et al.: A multicentre international study of sedation for uncontrolled symptoms in terminally ill patients. Palliat Med 14 (4): 257-65, 2000.[PUBMED Abstract]

  2. Morita T, Chinone Y, Ikenaga M, et al.: Ethical validity of palliative sedation therapy: a multicenter, prospective, observational study conducted on specialized palliative care units in Japan. J Pain Symptom Manage 30 (4): 308-19, 2005.[PUBMED Abstract]

  3. Morita T, Chinone Y, Ikenaga M, et al.: Efficacy and safety of palliative sedation therapy: a multicenter, prospective, observational study conducted on specialized palliative care units in Japan. J Pain Symptom Manage 30 (4): 320-8, 2005.[PUBMED Abstract]

  4. Elsayem A, Curry Iii E, Boohene J, et al.: Use of palliative sedation for intractable symptoms in the palliative care unit of a comprehensive cancer center. Support Care Cancer 17 (1): 53-9, 2009.[PUBMED Abstract]

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うつ病に対する小児科的考察

健康な小児におけるうつ病発生率の情報は限られている。1件の研究では、全科診療で診察された小児の38%が精神科医による重大な介入を必要とする問題を抱えていることが示された。別の研究では、7~12歳までの小児についてのうつ病の発生率は1.9%であった。これを全米の一般集団に当てはめると、これらの結果は12歳の小児のうち40,000人がうつ病であることを示している。教師は自分たちの生徒の10~15%がうつ病であると推定している。児童精神衛生合同委員会(The Joint Commission on Mental Health of Children)によれば、18歳未満の小児140万人がうつ病などの障害のために緊急の援助を必要としている;障害に対する援助を受けているのはその3分の1に過ぎない。 [1]

ほとんどの小児はがんに関連する感情の激変にうまく対処し、単なる適応だけでなく、前向きな心理社会的成長と発達を示す。しかしながら、少数の小児が、うつ病、不安、睡眠障害、対人関係障害、治療に対するノンコンプライアンスなどの心理的問題を示す。これらの小児はメンタルヘルス専門家への紹介と介入が必要である。 [2]

初期の研究の1つで、小児期のがんにおけるうつ病について114人の小児および青年を対象にした研究では、59%が軽度の精神医学的問題をかかえていることが明らかになった。 [3] 青年17人と小児21人のがん患者の研究で、自己記入式心理社会的出来事の項目表(a self-report psychosocial life event inventory)を行ったところ、青年の抽出標本の抑うつ症状の平均レベルは通常の一般集団と同レベルを示した。小児がん患者の抽出標本は一般集団に比較して有意に低いレベルの抑うつ症状を示した。 [4] [証拠レベル:II]小児期のがんの生存者である青年41人が、質問票と面談を用いた判定で心理社会的状態を評価された;ほとんどの生存者は機能面で健康であり、うつ病はまれだった。 [5] がんの長期生存者とその母親の研究で、生存者たちを健康な小児92人のグループと比較したところ、元患者の大部分は機能の点で正常の範囲内にあることが示された。驚くにはあたらないが、重度の晩期障害のある小児ほど、多くの抑うつ症状がみられた。 [6] [証拠レベル:II]ある研究者は、小児がんセンターにおける精神科医の診察の特徴を調べ、主な心理社会的診断は適応障害であることを見いだした。この知見は、成人のがん患者で得られた結果と同様である。この研究ではまた、年齢の低い小児患者では不安反応がより一般的で、年齢の高い患者ではうつ病性障害がより一般的であることが分かった。 [7] 1988年に30人の青年がん患者について行われた研究では、大うつ病の割合は一般の母集団の割合を超えなかった。 [8] [証拠レベル:II]ある総説は、精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual for Mental Disorders)第3版の判定基準を用いて17%のうつ病発生率を報告した。 [9]

がんの生存者の大部分は全般に溌剌とした様子を示し、疾病とその治療に対する心理学的適応は良好である。適応に成功した例が証明されても、なおほとんどの研究はがんの生存者のかなりの部分に心理学的障害があることを立証している。

小児のうつ病の評価および診断

評価

depression(抑うつ、憂うつ、うつ病)」という用語は、症状、症候群、一連の精神的反応、または病気を指す。 [1] 行動的発現(例、悲しみ)の持続時間と強さによって、症状と障害が区別される。例えば、悲しみの情動は外傷に対する子供の反応かもしれず、普通は持続時間が短い;しかし、抑うつ性の病気は持続時間の長さが特徴であり、不眠、神経過敏、食習慣の変化、および子供の学校、社会への重度の適応障害と関連する。何らかの行動的問題が持続する場合には、いつでもうつ病を考慮に入れるべきである。うつ病は一過性の悲しみを指すのではなく、むしろ発達に影響を及ぼし、小児の生得の潜在能力の実現を妨げる障害を指す。 [1]

学童のうつ病の発現には、食欲不振、嗜眠、悲しみの情動、攻撃性、啼泣、多動、身体化、死の恐怖、欲求不満、悲しみの感情、絶望、自己批判、頻繁に起こる白昼夢、自尊心が低い、不登校、学習の問題、動作が鈍い、親および教師に対する間欠的な敵意、以前は楽しかった活動に対する興味の喪失、などがある。これらの症状を、正常な発達段階に対する行動反応と区別することが重要である。 [1]

うつ病の評価には、小児の家族の状況把握、情緒的な成熟のレベル、病気と治療に対処する能力、年齢、発育状態、以前病気にかかった経験、個人的なエゴの強さが含まれる。 [10]

小児期のうつ病に対する総合的な評価は、正確な診断と治療の基礎である。小児と家族の状況の評価には、小児期の健康の履歴;開業医または他の者(例、親、教師)により観察される行動;本人との面談、およびベックうつ病評価尺度(Beck Depression Inventory)あるいは児童行動チェックリスト(Child Behavior Checklist)などの検査の公平な使用などを重点的に用いる。 [10]

診断

小児期のうつ病の診断を論じる場合に専門家が強調するのは、小児期のうつ病は成人のうつ病とは全く別個のものだと理解することの重要性である。これは、小児期における発達の問題が、成人期の問題とは全く異なるという事実による。 [11]

小児期の感情障害のモデルでは、以下のような明確な判定基準を用いる: [12]


  • 不快な気分(6歳未満の小児では悲しそうな表情も示すはずである)。

  • 以下の徴候または症状のうち少なくとも4つが、少なくとも2週間以上、毎日認められる:
      食欲障害。
      不眠症または過眠症。
      精神運動性激越または遅延。
      普段の活動に対する興味または楽しさの喪失(6歳未満の小児は無関心の徴候も示すはずである)。
      疲労またはエネルギーの喪失。
      無価値、自責、または度を超した不適切な罪悪感。
      思考または集中力の減少。
      死や自殺を頻繁に考える。

小児のうつ病の管理

小児期のうつ病において実行される治療レジメンは、うつ病の理論的モデル、病因論、発現を反映している。 [1] 個人心理療法とグループ心理療法が主な治療様式として広く利用され、その方向は、小児が困難を克服し、一番良い方法で成長していけるよう手助けすることに向けられている。遊戯療法は、小さな子供が自分と病気と治療に対して抱いている見方を探る方法として用いられる。子供が、がん診断と必要な治療について、その子の発達年齢にふさわしいレベルで探求し理解できるように、早い段階から援助していく必要がある。 [1]

薬理学的管理

成人がん患者のうつ病と同様に、小児がん患者には抗うつ薬の試験で意義深いものはほとんどなく、あったとしてもごくわずかである。1人の著者は、抑うつ症状のある小児がん患者8人に対してイミプラミンまたはアミトリプチリンを低用量(2mg未満/kg/日)投与したところ速やかな臨床反応があったと述べている。 [13] [証拠レベル:III]別の著者はロラゼパム、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパムなどのベンゾジアゼピン類を不安障害の治療に使用したと述べている。ベンゾジアゼピン類の試験は短期間であるべきである。これらの薬物を中断する際には徐々に漸減すべきである。 [14]

重度のうつ病と不安症状のある小児3人の管理に、三環系抗うつ薬と神経遮断薬を併用した例が報告されている。この小児らは疾病が終末相にあり、低用量のアミトリプチリンハロペリドールの併用によって治療された。不安とうつ病のレベルは下がり、この介入のおかげで患者と家族は死と臨終に関わる問題に対処できた。 [15] [証拠レベル:III]

自殺傾向に対する小児科的考察および選択的セロトニン再取り込み阻害薬の使用についての警告に関する情報については、小児の支持療法のPDQ要約のうつ病および自殺のサブセクションを参照のこと。


参考文献
  1. Deuber CM: Depression in the school-aged child: implications for primary care. Nurse Pract 7 (8): 26-30, 68, 1982.[PUBMED Abstract]

  2. Kazak AE: Psychological issues in childhood cancer survivors. J Assoc Pediatr Oncol Nurses 6 (1): 15-6, 1989.[PUBMED Abstract]

  3. O'Malley JE, Koocher G, Foster D, et al.: Psychiatric sequelae of surviving childhood cancer. Am J Orthopsychiatry 49 (4): 608-16, 1979.[PUBMED Abstract]

  4. Kaplan SL, Busner J, Weinhold C, et al.: Depressive symptoms in children and adolescents with cancer: a longitudinal study. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry 26 (5): 782-7, 1987.[PUBMED Abstract]

  5. Fritz GK, Williams JR, Amylon M: After treatment ends: psychosocial sequelae in pediatric cancer survivors. Am J Orthopsychiatry 58 (4): 552-61, 1988.[PUBMED Abstract]

  6. Greenberg HS, Kazak AE, Meadows AT: Psychologic functioning in 8- to 16-year-old cancer survivors and their parents. J Pediatr 114 (3): 488-93, 1989.[PUBMED Abstract]

  7. Rait DS, Jacobsen PB, Lederberg MS, et al.: Characteristics of psychiatric consultations in a pediatric cancer center. Am J Psychiatry 145 (3): 363-4, 1988.[PUBMED Abstract]

  8. Tebbi CK, Bromberg C, Mallon JC: Self-reported depression in adolescent cancer patients. Am J Pediatr Hematol Oncol 10 (3): 185-90, 1988 Fall.[PUBMED Abstract]

  9. Kashani J, Hakami N: Depression in children and adolescents with malignancy. Can J Psychiatry 27 (6): 474-7, 1982.[PUBMED Abstract]

  10. Archenbach TM, ed.: Manual for the Child Behavior Checklist and Revised Child Behavior Profile. Burlington, Vt: T.M. Achenbach, 1983.[PUBMED Abstract]

  11. American Psychiatric Association: Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders: DSM-IV-TR. 4th rev. ed. Washington, DC: American Psychiatric Association, 2000.[PUBMED Abstract]

  12. Malmquist CP: Major depression in childhood: why don't we know more? Am J Orthopsychiatry 53 (2): 262-8, 1983.[PUBMED Abstract]

  13. Pfefferbaum-Levine B, Kumor K, Cangir A, et al.: Tricyclic antidepressants for children with cancer. Am J Psychiatry 140 (8): 1074-6, 1983.[PUBMED Abstract]

  14. Coffey BJ: Review and update: benzodiazepines in childhood and adolescence. Psychiatr Ann 23 (6): 332-9, 1993.[PUBMED Abstract]

  15. Maisami M, Sohmer BH, Coyle JT: Combined use of tricyclic antidepressants and neuroleptics in the management of terminally ill children: a report on three cases. J Am Acad Child Psychiatry 24 (4): 487-9, 1985.[PUBMED Abstract]

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本要約の変更点(03/28/2016)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

本要約には編集上の変更がなされた。

本要約はPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

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本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、成人および小児の集団における、がんに関連したうつ病と自殺のリスクについて、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:


  • 会議での議論、

  • 本文の引用、または

  • 既に引用されている既存の記事との入れ替え、または既存の記事の更新。

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

うつ病に対する主要な査読者は以下の通りである:


    本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

    証拠レベル

    本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

    本要約の使用許可

    PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly: 【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。

    本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

    National Cancer Institute: PDQ® Depression.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Date last modified <MM/DD/YYYY>.Available at: http://www.cancer.gov/about-cancer/coping/feelings/depression-hp-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

    本要約内の画像は、PDQ要約内での使用に限って著者、イラストレーター、および/または出版社の許可を得て使用されている。PDQ情報以外での画像の使用許可は、所有者から得る必要があり、米国国立がん研究所(National Cancer Institute)が付与できるものではない。本要約内のイラストの使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともにVisuals Online(2,000以上の科学画像を収蔵)で入手できる。

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    これらの要約内の情報は、保険払い戻しの決定基準として使用されるべきものではない。保険の適用範囲に関する詳しい情報については、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手できる。

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