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がん医療における栄養: 支持療法

がん医療における栄養の概要

がんおよびがんに対する治療が原因で栄養に関連する副作用が起こる場合があります。

食事は、がんの治療において重要な役割を果たしています。治療前、治療中、治療後に適切な食事を摂ると、患者さんはより快適に活動的に生活することができます。 適切な栄養を確実に摂るためには、重要な栄養素ビタミンミネラルタンパク質炭水化物、脂肪および水)を含む食べ物を十分に飲んだり食べたりしなければなりません。しかし、多くの患者さんは、がんやがんの治療による副作用があるために十分な量の食べ物を食べることができません。摂食障害吐き気嘔吐下痢便秘、口内炎、嚥下障害、痛みなどの症状があると、食べ物を食べることが難しくなります。これらの症状は、食欲、味覚、嗅覚、十分な量の食べ物を食べる能力、そして食べ物から栄養素を吸収する能力に影響を及ぼします。栄養失調(重要な栄養素が不足している状態)になると、患者さんは衰弱し、疲労を感じ、感染症に抵抗できなくなったりがんの治療に耐えることができなくなったりします。がんの患者さんの多くは、タンパク質やカロリーをほとんど摂ることができないという最もよくみられる栄養上の問題に直面しています。タンパク質やカロリーは、治癒を促し、感染症と闘い、エネルギーを供給ための重要な栄養素です。

がんの患者さんの栄養失調の主な原因は、摂食障害や悪液質です。

摂食障害(食欲や食べることに対する意欲が低下した状態)は、がんの患者さんの多くにみられる症状です。摂食障害は、この疾患の早期や腫瘍が増殖し拡がる末期に起こる場合があります。一部の患者さんでは、がんと診断されたとき、すでに摂食障害がみられます。がんが広範囲に拡がっている患者さんほぼ全員に、摂食障害があります。がんの患者さんにみられる栄養失調の原因の中で最も頻度の高いものは、摂食障害です。

悪液質は、衰弱を来し、体重、体脂肪および筋肉量が減少する消耗症候群です。膵臓および上部消化管に腫瘍がみられる患者さんに起こることが多く、頻度は低いものの乳房のがんや下部消化管のがんの患者さんにもみられます。摂食障害と悪液質は、同時にみられる場合が多くあります。カロリーをあまり摂ることができないこと、より多くのカロリーを消費すること、またはその両方が原因となって体重が減少します。悪液質は、十分に食べていても栄養素を吸収できない患者さんにみられる場合があります。悪液質は、腫瘍の大きさ、種類、進展度とは関係ありません。がんの悪液質は、飢餓とは異なります。健康な人の体は、自ら栄養素の使用量を減らすことで、飢餓に適応することができますが、がんの患者さんの場合はそれができません。

がんの治療中に適切な食事を摂ることにより、患者さんはがんの影響やがんの治療による副作用に対処しやすくなります。

栄養療法は、がんの患者さんが体重や体力を維持し、組織の破壊を防ぎ、組織を再構築し、感染症と闘うために必要な栄養素を摂取する助けとなります。 がんの患者さんを対象とした食事に関するガイドラインは、健康的な食事に対する一般的な提案とかなり異なる場合があります。がんの患者さんを対象とした栄養に関する推奨は、患者さんががんの影響やがんの治療による副作用に対処する際に役立つように作られています。がんの治療の中には、患者さんの栄養状態が良く、食事で十分なカロリーやタンパク質を摂取できる場合に効果が上がる治療があります。がんの治療中も十分な量を食べる患者さんでは、ある種の治療の用量を増やすことさえあります。栄養状態が良いと、予後(回復の見込み)は良くなります。

一部のPDQ(Physician Data Query:医師データ照会)支持療法情報要約の文献引用は、個人または組織により特定の治療または製品を販売または支持する目的で運営している外部のウェブサイトへのリンクが含まれています。これらの文献引用は、情報提供のみを目的としています。こうした文献引用は、PDQ支持療法編集委員会または米国国立がん研究所(NCI)が上記ウェブサイトの内容あるいは治療または製品を支持していることを示しているわけではありません。


がんが栄養に与える影響

がんは、体内での食べ物の使われ方を変化させる場合があります。

腫瘍は、体内でのある種の栄養素の使われ方を変化させる化学物質を産生する場合があります。体内でのタンパク質炭水化物および脂肪の使われ方は、特ににできた腫瘍の影響を受けることがあります。患者さんは十分な量の食事をとっているように見えますが、体は食べ物から得られる全ての栄養素を吸収できるわけではありません。より高タンパクで高カロリー食事をとることにより、これを改善し、悪液質の発症を防ぐ一助とすることができます。薬も役立つことがあります。悪液質を完全に治すことは難しいので、栄養状態を早期に観察することが重要です。

薬は、体重減少を起こすがんの症状と副作用の緩和に役立つことがあります。

食べることに影響を及ぼし、体重減少の原因となるがん症状副作用を早期に治療することが重要です。栄養療法はどちらも、患者さんが健康な体重を維持するのに役立ちます。これらの症状や副作用を緩和するために一般に用いられる薬の種類は下記の通りです:


(詳しい情報については、栄養スクリーニングと栄養評価症状を緩和するための栄養学的提言のセクションをご覧ください。)


がんの治療が栄養に与える影響


手術が栄養に与える影響

手術を行うと、体はより多くの栄養素とエネルギーを必要とします。

傷を治し、感染症と闘い、手術から回復するために、体は通常より多くのエネルギーと栄養素を必要とします。手術前に患者さんに栄養失調がみられる場合、術後に傷の治りが悪い、感染症にかかるなどの合併症が起こる可能性があります。頭頸部のがん、がん、のがんなど一部のがんの患者さんは、診断された時点で栄養状態が悪い場合があります。そのため、栄養に関するケアを手術前に始めることがあります。

手術が栄養に関連する副作用の原因になる場合があります。

がんの患者さんの半数以上が、がんに関係する手術を受けます。手術では、臓器の全てまたは一部を摘出する場合があり、食べ物の摂取や消化に影響を及ぼす可能性があります。特定の手術に関連する栄養上の問題は下記の通りです:


栄養療法を行うと、これらの問題を治療することができ、がんの患者さんは必要な栄養素を摂りやすくなります。

栄養療法は、手術が原因で発生した栄養に関連する副作用を治療することができます。

栄養療法には、下記のものがあります:


手術を行うと、疲労、痛みおよび食欲低下が起こる可能性があります。

患者さんが、手術後に痛み、疲労、食欲低下を感じることはよくあることです。これらの症状のために、一部の患者さんは一時的に通常の食事を摂ることができなくなります。下記の食事に関する助言が役立ちます:



化学療法が栄養に与える影響

化学療法は、全身に影響を及ぼします。

化学療法は、を用いてがん細胞を殺すかまたは細胞の分裂を停止させることにより、がん細胞の増殖を止めるがん治療法です。化学療法は、分裂が速い細胞を標的としているため、もともと増殖や分裂が速い正常な細胞も化学療法の影響を受けます。これらの細胞は、口腔内や消化管内にあります。

化学療法中に栄養に関連する副作用が発生する場合があります。

化学療法中に食べ物を食べることができない、消化を妨げられるといった副作用が生じる可能性があります。一般的な副作用は下記の通りです:


栄養療法は、化学療法が原因で発生した栄養に関連する副作用を治療することができます。

化学療法の副作用があると、血球数を正常に戻すために必要とされる栄養素を化学療法中に患者さんが摂取することが難しくなります。栄養療法を行うと、これらの副作用を治療することができ、化学療法中の患者さんが治療に耐え、回復し、体重の減少を防ぎ、全身の健康状態を維持するために必要な栄養素を摂取する助けになります。栄養療法には、下記のものがあります:



放射線療法が栄養に与える影響

放射線療法は、治療を受ける部位の正常な細胞に影響を及ぼす可能性があります。

放射線療法は、高エネルギーのX線や他の種類の放射線を用いてがん細胞を殺すがん治療法です。放射線療法には、2種類あります。外照射療法は、体外にある機械を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、針、シード、ワイヤーまたはカテーテルに密封した放射性物質をがんに直接またはがんの近くに入れます。

がんの近くにある正常な細胞は、放射線療法の影響を受けることがあり、その結果副作用が発生する可能性があります。放射線療法による副作用は、主に、放射線の線量と照射部位によって異なります。

放射線療法中に栄養に関連する副作用が発生する場合があります。

消化器系に放射線が当たった場合、栄養に関連する副作用が発生しやすくなります。下記の副作用が発生する可能性があります:


栄養療法は、放射線療法が原因で発生した栄養に関連する副作用を治療することができます。

放射線療法中の栄養療法では、患者さんが治療に耐え、体重の減少を防ぎ、全身の健康状態を維持するために、十分な量のタンパク質カロリーを供給します。栄養療法には、下記のものがあります:



免疫療法が栄養に与える影響

免疫療法中に栄養に関連する副作用が発生する場合があります。

免疫療法は、患者さん自身の免疫系を利用してがんと闘う治療法です。体内あるいは製造ラボで作られる物質を用いて、がんに対する体本来の防御力を増強、方向付け、あるいは修復します。この種のがんの治療法は、生物学的治療または生物療法とも呼ばれます。

免疫療法中に発生する一般的な栄養に関連する副作用は下記の通りです:


栄養療法は、免疫療法が原因で発生した栄養に関連する副作用を治療することができます。

免疫療法の副作用を治療しないと、体重が減ったり栄養失調に陥ったりする場合があります。回復期に体重の減少や栄養失調があると、傷の治りが遅い、感染症にかかるなどの合併症を引き起こす可能性があります。栄養療法を行うと、免疫療法が原因で発生した副作用を治療することができ、患者さんが治療に耐え、体重の減少を防ぎ、全身の健康状態を維持するために必要な栄養素を摂取する助けとなります。


骨髄移植および幹細胞移植が栄養に与える影響

骨髄移植および幹細胞移植の患者さんには、特別な栄養管理が必要となります。

骨髄移植および幹細胞移植は、高用量の化学療法放射線療法によるがん治療で破壊された造血(血液をつくる)細胞を入れ換える治療法です。患者さん自身またはドナーの骨髄から幹細胞(未熟な血球)を採取し、冷凍保存します。化学療法や放射線療法が終了した後、保存していた幹細胞を解凍し、患者さんの体内に注入し戻します。これらの再注入された幹細胞は短期間のうちに、血球に成長し体内を巡ります。

化学療法、放射線療法ならびに移植中に使われる医薬品が原因で副作用が起こり、患者さんが普段通りに食べ物を食べたり消化したりできなくなる可能性があります。これらの副作用には下記のものがあります:


また、移植中の患者さんは、感染症のリスクが非常に高い状態にあります。高用量の化学療法や放射線療法を行うと、感染症と闘う細胞である白血球の数が減少します。がんの患者さんは、感染症や食べ物が原因となる疾患にかからないように特別な注意を払わなければなりません。患者さんは、有害な細菌を媒介する可能性のある種の食べ物を食べないように忠告されます。

栄養療法は、骨髄移植および幹細胞移植が原因で発生した栄養に関連する副作用を治療することができます。

移植中の患者さんが治療に耐え、回復し、体重の減少を防ぎ、感染症と闘い、全身の健康状態を維持するためには、十分な量のタンパク質カロリーが必要になります。また栄養療法では、食べ物に付着した細菌に起因した感染が起こらないように計画します。移植中の栄養療法には、下記のものがあります:



栄養療法の概要


栄養スクリーニングと栄養評価

栄養上の問題を早期に発見し治療することにより、患者さんの予後(回復の見込み)が改善する可能性があります。

栄養スクリーニングと栄養評価を早期に行うと、抗がん療法の成功に影響を及ぼす問題を見つけることができます。体重が足りないまたは栄養失調の患者さんでは、がんの治療の効果が乏しい場合があります。栄養失調は、がんが原因で起こり、がんが進行するにつれて悪化します。早期に栄養上の問題を見つけ治療すると、患者さんの体重を増加または維持し、治療に対する反応がよくなり、治療の合併症を軽減する助けとなる可能性があります。

スクリーニングと評価は、抗がん療法を始める前に行い、評価は治療中も継続して行います。

患者さんの栄養状態が良い方が治療に耐えることができるので、スクリーニングと評価は抗がん療法を始める前に行われます。適切な栄養管理を早期に開始し、治療中も栄養状態を頻繁にチェックします。

スクリーニングは、栄養状態に問題がある患者さんを見つけるために行われます。評価により患者さんの栄養状態を全て把握し、栄養療法が必要かどうかを判断します。患者さんや介護者は下記の項目について質問されます:


身体診察も評価の一環として行われます。身体診察では、全身の健康状態およびしこりや腫瘍などの疾患の徴候も確認します。医師は、体重、体脂肪および筋肉量の減少がないか、また体内に水分が溜まっていないかどうかを調べます。

栄養管理に関する専門知識を持った医療チームが継続的に評価を行います。

栄養サポートチームは、がんの治療中および回復期に、患者さんの栄養状態を監視します。このチームは、下記の専門家で構成されています:



栄養療法の目標

治療中および回復期のがんの患者さんに対する栄養療法の目標は、栄養不足を補い、良好な栄養状態を維持し、合併症を防ぐことです。

治療中および回復期の患者さんに対する栄養療法の目標は、下記の通りです:


宗教で一部の食べ物を禁じられている患者さんは、がんの治療中および回復期はその食事の制限を免除してもらうように宗教上の指導者と話し合うことを検討するのもよいでしょう。

がんが寛解期にある患者さんにとっても、あるいは治癒した患者さんにとっても、栄養状態が良いことは重要なことです。

進行がんの患者さんに対する栄養療法の目標は、生活の質(QOL)を改善するために立てられています。

進行がんの患者さんに対する栄養療法の目標は下記の通りです:



栄養に関するケアの方法

栄養サポートでは、正常に食べ物を食べることができない患者さんに栄養を供給します。

口から食べることは望ましい方法で、可能な限りそうすべきですが、一部の患者さんはがんやがんの治療による合併症があるために口から全く食べることができないか、十分な量の食べ物を食べることができません。このような患者さんには、頭頸部のがん、食道がん、がんの患者さんが含まれます。患者さんは経腸栄養法(胃やに挿入したチューブから)、または非経口栄養法(血流中に直接注入)を受けます。栄養素は調合して、すなわち水分やタンパク質、脂肪、炭水化物ビタミンミネラルを含む液体によって供給されます。処方の内容は、患者さんの要求や栄養液の供給方法によって異なります。

栄養サポートによって、がんに罹患している患者さんの生活の質(QOL)を改善できますが、栄養サポートの使用を決定する前にリスクと欠点について検討すべきです。腫瘍の増殖に対する栄養サポートの影響については不明です。また、どの形態の栄養療法にも利点と欠点があります。例えば、経腸栄養法では胃や腸の機能が正常に維持され、合併症は非経口栄養法よりも少なくなります;経腸栄養法では体が栄養素を利用しやすくなります。十分な説明を受けた上での決断がなされるように、こうした事項や別の問題を患者さんの医療提供者と話し合う必要があります。(栄養サポートを用いるかどうかの決定に関する詳しい情報については、下記の進行がんのセクションをご覧ください。)

ある状態の患者さんには、栄養サポートによる治療が最も適しています。

栄養サポートは、下記の特徴を1つ以上もつ患者さんに有用です:



経腸栄養法

経腸栄養法は経管栄養法とも呼ばれます。

経腸栄養法では、胃や小腸に挿入したチューブから(液状の)食べ物を注入します。経管栄養法には、下記の種類があります:


チューブの先端が胃の中にある場合、食べ物はチューブから継続的にまたは1日数回に分けて注入されます。チューブの先端が小腸にある場合、食べ物は持続的に注入されます。栄養補給は様々な配合で行うことができます。全ての栄養素を含んでいるものもあれば、栄養素を一部しか含まないものもあります。患者さんそれぞれの要求に合った処方が選ばれます。糖尿病など他の疾患を合併している患者さんも処方を利用することができます。

経腸栄養法は、食べ物を口から少量なら食べられるが十分な量を食べることができない患者さんに用いられる場合があります。患者さんは、可能な時は口から食べたり飲んだりし、経腸栄養法で必要なカロリーや栄養素を補います。

経腸栄養法は、消化管がまだ機能している患者さんに適しています。

経腸栄養法を行うと、食べ物を消化するために胃や腸が使われ続けます。経腸栄養法は、頭頸部または消化器系のがんに対して化学療法放射線療法を行い、その副作用で食べることや飲むことを制限されている患者さんに用いられることもあります。

経腸栄養法は、下記の患者さんには適しません:


経腸栄養法は、退院後も続けられることがあります。

経腸栄養法が退院後の患者さんのケアの一部である場合、患者さんと介護者はチューブやポンプの使い方、患者さんをケアする方法についての訓練を受けます。家は清潔に保たれなくてはなりませんし、患者さんは栄養サポートチームにより頻繁に観察されなければなりません。


非経口栄養法

非経口栄養法では、血流に栄養素が注入されます。

非経口栄養法は、患者さんが口から食べ物を摂取できず、そして経腸栄養法も行えない場合に行います。非経口栄養法は、消化器系の正規の段階を飛び越えるものです。栄養素は、静脈に挿入したカテーテル(細いチューブ)を用いて直接血液中に注入されます。下記の問題を抱えている患者さんは、非経口栄養法を選択すると良いでしょう:


カテーテルは、胸部または腕の静脈に留置します。

中心静脈カテーテルは、皮下および胸郭上部の大きな静脈に留置されます。中心静脈カテーテルの留置は外科医が行います。

末梢静脈カテーテルは、腕の静脈に留置されます。末梢静脈カテーテルの留置は、訓練を受けた医療スタッフが行います。末梢静脈カテーテルは、非経口栄養法を短期間行う場合に用いられます。

カテーテルが体内に入る部位(場所)に感染や出血がないか頻繁にチェックします。

非経口栄養法の処方と併用してはいけない薬があります。

やそれ以外の物質の中には、非経口栄養法の処方と混ぜると悪影響を及ぼすものがたくさんあります。処方に何かを加えたりカテーテルから他の物質を入れたりする前に薬剤師や医師に確認しなければなりません。

訓練を受けた医療スタッフが非経口栄養法の使用を管理しなければなりません。

非経口栄養サポートに関わる技術や処方は厳密なものであり、訓練を受けた医療スタッフか栄養サポートチームによる管理を必要とします。非経口栄養法によって生じる重篤な合併症は下記の通りです:


非経口栄養サポートは、退院後も続けることができます。

非経口栄養法が退院後の患者さんのケアの一部である場合、患者さんと介護者は非経口栄養法の手順、患者さんをケアする方法についての訓練を受けます。家は清潔に保ち、患者さんを栄養サポートチームが頻繁に観察しなければなりません。

非経口栄養サポートをやめる場合は、経験を積んだ医療スタッフが管理しなければなりません。

非経口栄養サポートをやめる際は、医師の指示に従って徐々にやめる必要があります。経腸栄養法や口からの食事に切り替える場合、時間をかけて非経口栄養法の量を減らしていきます。


症状を緩和するための栄養学的提言

がんやがん治療による副作用があるために普段の食事が摂れない場合、患者さんが必要な栄養を確実に摂り続けることができるように調整を行うことがあります。食欲を刺激するために医薬品を投与する場合があります。通常カロリータンパク質ビタミンミネラルを多く含む食べ物を食べることを勧められます。しかし、食事計画は、必要な栄養素や食べ物の好みを考慮し、個々の患者さんに合わせて立てなければなりません。


摂食障害

摂食障害(食欲が低下した状態)は、がんの患者さんに最も多くみられる問題の1つです。摂食障害に対処する場合、下記の方法ががんの患者さんに役立ちます:


下記の高カロリー高タンパクの食べ物をお勧めします:


無乳糖ダブルチョコレートプリンバナナミルクセーキフルーツアンドクリームなどの調理法は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページにあるがんの患者さんのための食事のヒント:治療前、治療中、治療後をご覧下さい。 


味覚の変化

味覚の変化は、放射線療法、歯の問題または薬が原因で生じる場合があります。がんの患者さんはしばしば、化学療法中に特に苦味を感じるなどの味覚の変化を訴えます。一部の食べ物を突然嫌いになる場合があります。味覚の変化が起こると、患者さんは食べ物を拒否し、体重が減り、摂食障害になり、その結果、患者さんの生活の質(QOL)が大幅に低下する可能性があります。変化した味覚の一部または全てが元に戻る可能性もありますが、治療が終了してから味覚が再び正常に戻るまでに1年かかることもあります。たくさんの水分を摂ること、食べ物の種類を変えること、および食べ物にスパイスや香料を加えることが役立つことがあります。

がんの患者さんが味覚の変化に対処する場合、下記の助言が役立ちます:


頭頸部に対して放射線療法を行っている間は、硫酸亜鉛の錠剤を内服すると治療後味覚が早く正常に戻ります。


ドライマウス

ドライマウスは、しばしば頭頸部に対する放射線療法が原因で発生します。ドライマウスを引き起こす薬もあります。ドライマウスは、発声、味覚、嚥下能力および入れ歯や歯列矯正用ブリッジの使用に影響を及ぼします。また、歯や歯肉を洗浄する唾液の産生量が減ると、虫歯や歯肉疾患になるリスクが増大します。

ドライマウスに対して行う主な治療法は、1日に体重1ポンド(約453.59グラム)当たり約2分の1オンス(約14.17グラム)の十分な水分の摂取です。ドライマウスに対処するためのその他の助言は下記の通りです:


(ドライマウスに関する詳しい情報については、化学療法と頭頸部放射線療法の口腔合併症に関するPDQ要約をご覧下さい。)


口内炎と口腔内の感染症

化学療法放射線療法を行うと口内炎ができる場合があります。がん細胞は急速に増殖するため、これらの治療法は急速に増殖する細胞を標的にしています。口腔内の正常な細胞も急速に成長するので、これらのがん治療によって損傷を受ける場合があります。口内炎に感染症が起こったり口内炎から出血したりすると、口から食べることは困難になります。食べ物を選び適切な口腔内のケアを行うことで、通常は容易に口から食べ物を食べることができるようになります。口内炎と感染症に対処する場合、下記の助言が役立ちます:


グルタミンを含むうがい薬を使用すると、口内炎の数を減らせます。グルタミンは、植物性タンパク質や動物性タンパク質に含まれる物質です。

(口内炎と口腔内の感染症に関する詳しい情報については、化学療法と頭頸部放射線療法の口腔合併症に関するPDQ要約をご覧下さい。)


吐き気

がんの治療が原因で発生する吐き気は、患者さんの食事の量と内容に影響を及ぼすことがあります。がんの患者さんが吐き気に対処する場合、下記の助言が役立ちます:


(詳しい情報については、吐き気と嘔吐に関するPDQ要約をご覧下さい。)


下痢

下痢は、手術などのがんの治療や精神的ストレスによって引き起こされます。下痢が長期間続くと、脱水(体内の水分が少ない)状態になったり体に必要なミネラルである塩分やカリウムが不足したりします。

下痢に対してがん患者さんが心掛けるべきことは以下の通りです:


抗がんフルオロウラシルを使用している場合は、経口グルタミンを内服すると腸管を健康に維持する助けとなります。

(詳しい情報については、消化管の合併症に関するPDQ要約をご覧下さい。)


白血球数の低下

がんの患者さんは、放射線療法化学療法またはがん自体など様々な理由で白血球血球数が低下する場合があります。白血球数が低下している患者さんは、感染症に罹患するリスクが増大しています。白血球数が低下した場合、がんの患者さんの感染症の予防には下記の助言が役立ちます:



ほてり

ほてりは、乳がん(乳房がん)のほとんどの女性や前立腺がんの男性にみられます。ほてりは、その原因が自然閉経または治療に関連する閉経である場合、エストロゲン補充療法を行うことにより軽減することができます。しかし、多くの女性(乳がんの女性を含む)は、エストロゲン補充療法を受けることができません。エストロゲン様物質を含む大豆食品を食べると、エストロゲン補充療法を受けられない患者さんのほてりが軽減される場合があるという提唱がありますが、証明されていません。(詳しい情報については、発熱、発汗、ほてりに関するPDQ要約をご覧下さい。)


水分補給

体は、毎日失われた水分を補うために多くの水分を必要とします。長期間下痢吐き気および嘔吐、痛みが続くと、患者さんは体が必要とする水分を十分に飲んだり食べたりすることができなくなることがあります。脱水(体内の水分が足りない)状態の徴候として最初に現れるものの1つは、極度の疲労です。がんの患者さんが脱水を予防するには、下記の助言が役立ちます:



便秘

便秘は、週3回未満の排便として定義されています。便秘は、非常に多くのがんの患者さんに共通する問題で、食事中の水分や繊維の摂取不足、運動不足、化学療法などの抗がん療法と薬が原因で起こります。

便秘の予防は、がんのケアの一部です。がんの患者さんが便秘を予防するには、下記の助言が役立ちます:


便秘になった場合、食事、運動および医薬品に関する下記の助言が、便秘解消に役立ちます:


繊維の摂取に適した食べ物は下記の通りです:

1食当たり4グラム以上繊維を含む食品
1食当たり2グラム以上繊維を含む食品

マメ、ブロッコリー、キャベツは、ガスの原因となる場合があります。市販の酵素を含む錠剤が有用です。


その他の栄養の問題


進行がん

栄養に関連する副作用は、がんが進行するにつれて発生したり悪化したりします。

進行がんの患者さんに最も多くみられる栄養に関連する症状は、下記の通りです:


進行したがんの患者さんに生じるこれらの症状に対する一般的な治療法は緩和ケアであり、症状を軽減し生活の質(QOL)を改善することを目的としています。

緩和ケアには、栄養療法症状を緩和するための栄養学的提言のセクションをご覧ください)や療法(薬と栄養素の相互作用のセクションをご覧ください)などがあります。

がんが進行すると、一般的に患者さんはあまり固形の食べ物がたべられなくなります。患者さんは通常軟らかい食べ物や澄んだ飲み物を好みます。嚥下障害がある患者さんには、濃度の薄い飲み物よりも濃い飲み物のほうが良いでしょう。末期の患者さんはしばしば空腹を全く感じず、非常に少量しか食べません。

がんが進行している場合、食べ物は楽しみの源として考えるべきです。食べることの目的は、単にカロリータンパク質など必要な栄養素を摂取することだけではありません。

「禁止されている食べ物」(例えば、糖尿病の患者さんにはお菓子)を摂取することは憂慮するほどのことではないので、食事制限は通常必要ありません。しかし、一部の患者さんは食事制限を行う必要があります。例えば、膵がん子宮がん、卵巣がんなどの腹部領域に発生するがんの患者さんでは、閉塞を予防するために軟らかい食事(生の果物や野菜、ナッツ類、皮、種子類を含まない食事)が必要となる場合があります。食事制限は、生活の質(QOL)や患者さんの希望を考慮して行うべきです。

栄養サポートのプラス面とマイナス面は、患者さんによって異なります。

栄養サポートを行うかどうかは、下記の点に考慮し決定しなければなりません:


がんの患者さんとその介護者は、十分な説明を受けた上で決断する権利を有します。医療チームは、管理栄養士の指示に基づき、進行がんの患者さんに栄養サポートを行う場合のプラス面とマイナス面について患者さんとその介護者に説明しなければなりません。多くの場合、マイナス面がプラス面を上回ります。しかし、生活の質(QOL)が良い状態を維持していても、身体的障害により口から十分な量の食べ物や水分を摂れない場合は、経腸栄養法が適しています。非経口栄養法は、通常適しません。経腸栄養法のプラス面とマイナス面は下記の通りです:

プラス面
マイナス面

薬と栄養素の相互作用

食べ物の中には、一部の薬と一緒に摂取すると悪影響を及ぼすものがあります。

がんの患者さんは、ケアを受けている間に多くの薬を投与される場合があります。食べ物や栄養補助食品の中には、一部の薬と一緒に摂取すると悪影響を及ぼすものがあります。これらの食べ物と薬を一緒に摂取すると、抗がん療法の有効性が低くなったり生命を脅かす副作用が生じたりする恐れがあります。一部の抗がん剤で起こりうる薬と栄養素との相互作用に関する情報の一部を下記の表に示します:

抗がん剤と食べ物の相互作用
商品名食べ物との相互作用
Targretinベキサロテングレープフルーツジュースが薬の作用を増強する可能性がある。
Folexメトトレキサートアルコールが障害を起こす可能性がある。
Rheumatrex