原文更新日 : 2006-06-07
翻訳更新日 : 2007-06-27
形質細胞は、骨髄で作られる白血球の一種であるBリンパ球(B細胞)から発生します。通常は、細菌やウイルスが体内に侵入すると、B細胞の中から形質細胞に変化するものがあります。形質細胞は、体内に侵入した様々な種類の細菌やウイルスと闘うためにそれぞれの抗体を作り出し、感染や病気を阻止します。
形質細胞腫瘍は形質細胞や骨髄腫細胞が多すぎる病気で、このような細胞は骨髄での通常の役割を果たすことができません。この病気になると、正常な赤血球、白血球、血小板などの入る余地が少なくなります。このような状態になると、貧血が起きたり、出血しやすくなったり、感染しやすくなったりします。異常な形質細胞は体の骨や軟部組織に腫瘍を形成する場合があります。形質細胞はまた、M蛋白と呼ばれる抗体蛋白を作りますが、この蛋白は体には必要なく、感染と闘う手助けもしません。これらの抗体蛋白は、骨髄で蓄積し、血液を濃くしたり、腎臓を損傷することがあります。
形質細胞腫瘍にはいくつかの種類があります。以下のものが形質細胞腫瘍に含まれます:
多発性骨髄腫多発性骨髄腫では、異常な形質細胞(骨髄腫細胞)が骨髄で蓄積し、多数の骨に腫瘍を形成します。このような腫瘍ができると骨髄は健全な血液細胞を十分に作ることができません。通常、骨髄は幹細胞(未成熟な細胞)を作り、この幹細胞は下記の3種類の成熟した血液細胞に成長します:
骨髄腫細胞の数が増えるにつれて、赤血球、白血球、血小板の数は少なくなります。骨髄腫細胞はまた骨の硬い部分を損傷したり、脆くします。多発性骨髄腫は全く症状のない場合もあります。次の症状は多発性骨髄腫やその他の状態が原因であると考えられます。次に挙げるような症状があれば医師の診察を受けるべきです:
腫瘍は骨を損傷し、高カルシウム血症(血液中のカルシウムが過剰になる状態)の原因となります。このような状態は腎臓、神経、心臓、筋肉、消化管など体内の多くの臓器に影響を及ぼし、重篤な健康障害の原因となります。
高カルシウム血症は、次のような症状を起こすことがあります:
まれに、多発性骨髄腫は臓器不全の原因となります。これはアミロイドーシスと呼ばれる病態が原因と考えられます。抗体蛋白が蓄積して、互いに結合し、腎臓や心臓などの臓器に集中します。このために臓器は硬くなり機能できなくなります。
形質細胞腫この種の形質細胞の腫瘍では、異常な形質細胞(骨髄腫細胞)は一箇所に集中し、形質細胞腫と呼ばれる単一の腫瘍を形成します。形質細胞腫は骨髄で形成されるか、または骨髄外(骨髄の外の軟部組織)で形成されます。骨の形質細胞腫は多くの場合、多発性骨髄腫になります。髄外性形質細胞腫は一般的に咽頭や副鼻腔の組織で発生し、通常は治癒が期待できます。
症状は腫瘍の部位により異なります。
マクログロブリン血症での異常な形質細胞は骨髄、リンパ節、脾臓などに累積します。このような形質細胞はM蛋白を過剰に作りだし、血液が濃くなります。リンパ節、肝臓、脾臓などが腫大します。粘度の増した血液は、細い血管での血流に障害を起こします。
マクログロブリン血症の症状は、罹患した体の部位により異なります。マクログロブリン血症の患者さんのほとんどでは症状が現れません。次に挙げるような症状があれば医師の診察を受けるべきです:
この種の形質細胞腫瘍では、骨髄に異常な形質細胞が発生しますが、がんではありません。異常な形質細胞はM蛋白を作り出し、定期的な血液検査や尿検査で見つかることがあります。ほとんどの患者さんで、このM蛋白の量は一定を保ち、症状や障害はありません。患者さんのなかには、MGUSが、その後、多発性骨髄腫やリンパ腫などの、もっと重篤な疾患に変わる場合もあります。
年齢が形質細胞腫瘍の発生のリスクに影響を及ぼすことがあります。形質細胞腫瘍は中年あるいはそれ以上の年齢の人に最もよくみられます。
疾患が発生するリスクを増大させるもの全てを危険因子と呼びます。多発性骨髄腫と形質細胞腫に関するその他の危険因子は次のようなものです:
次の検査と手法が用いられます:
予後(回復の見込み)は次の項目によって決まります:
治療の選択は次の項目によって決まります:
体内のがんの量を調べるプロセスを病期分類と呼びます。治療を計画する上で病期を知ることは重要なことです。病期分類では、次のような検査と方法が用いられます:
治療がどれほど効いているかを確認するために繰り返し行う検査もあります。
多発性骨髄腫の病期は体内の骨髄腫細胞の数に基づいて分類されます。多発性骨髄腫には3つの病期があります。体内の骨髄腫細胞の数は次の項目で決定します:
腎臓の働きがどの程度かを調べることも重要です。
多発性骨髄腫には次の病期分類を用います:III期多発性骨髄腫では体内の骨髄腫細胞の数は大量です。
その他の形質細胞腫瘍は多発性骨髄腫とは異なる病期分類となります。骨の孤立性形質細胞腫では、骨の中に1つの形質細胞腫瘍が認められ、骨髄の5%未満が形質細胞で構成されていて、これ以外のがんの徴候はみられません。
髄外性形質細胞腫軟部組織に1つの形質細胞腫瘍が見つかりますが、骨や骨髄には認められません。
マクログロブリン血症マクログロブリン血症では標準的な病期分類システムはありません。
意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)では、血液中のM蛋白の量は一定であり、骨髄の10%未満が形質細胞で構成されていて、患者さんにがんの徴候はありません。
多発性骨髄腫とその他の形質細胞腫瘍の患者さんは様々な種類の治療を受けられます。治療には、標準治療(現在用いられている治療法)と臨床試験中のものがあります。治療を開始する前に、患者さんは臨床試験の参加を検討することができます。治療法の臨床試験とは、現在の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法についての情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合、その新しい治療法が標準治療となります。
臨床試験は米国各地で行われています。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。最適ながん治療の選択は、患者さん、ご家族そして医療チームが関わって行うことが理想です。
次の8種類の標準治療が用いられています:化学療法は、薬物を用いてがん細胞を殺すかまたは細胞の分裂を停止させることにより、がん細胞の増殖を止めるがん治療法です。化学療法が経口、静脈あるいは筋肉への注入によって行われる場合、薬は血流に入り、全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脊柱や臓器、そして腹部など体腔に薬を直接注入する化学療法では、薬は主にその領域にあるがん細胞に作用します(局所化学療法)。化学療法の処方は、治療中のがんの種類や病期によって決まります。
その他の薬物療法副腎皮質ステロイド療法
副腎皮質ステロイドはリンパ腫とリンパ白血病に対して抗腫瘍効果をもつステロイドです。
サリドマイド
サリドマイドは固形腫瘍の中で新しい血管が成長するのを妨げる薬物です。
ビスフォスフォネート療法
ビスフォスフォネートは損傷を受けた骨の表面を結合し、骨の新たな損傷を減少させ、骨の再生を促す物質です。 この物質はまた骨の損傷部分から血液中にカルシウムが放出されるのを減少させます。
幹細胞移植を伴う大量化学療法および放射線療法この治療は高用量の化学療法と放射線療法を施し、がんの治療によって破壊された造血細胞を入れ替える治療です。幹細胞(未熟な血液細胞)を患者さんあるいはドナーの血液や骨髄から採取し、凍結保存します。化学療法と放射線療法が終了後、保存されていた幹細胞を解凍し、患者さんに注入し戻します。これらの再注入された幹細胞は、血液細胞に成長し体内を巡ります。
生物学的治療生物学的治療とは、患者さん自身の免疫系を利用してがんと闘う治療法です。体内あるいは製造ラボで作られる物質を用いて、がんに対する体本来の防御力を増強、方向付け、あるいは修復します。この種のがん治療は、生物療法あるいは免疫療法とも呼ばれます。
モノクローナル抗体療法は生物学的治療の一種です。これは、製造ラボで一種類の免疫系細胞から作った抗体を用いるがんの治療法です。これらの抗体は、がん細胞上にある物質やがん細胞の増殖を促進する正常な物質を識別することができます。抗体はこれらの物質に結合して、がん細胞を破壊するか、増殖を阻害するあるいはがん細胞が拡がらないようにします。モノクローナル抗体は点滴で投与されます。これらは単独で用いたり、薬物、毒素、放射性物質などを直接がん細胞へ運ぶ際に用います。
放射線療法放射線療法はがん細胞を死滅させるために高エネルギーのX線や他の種類の放射線を用いるがんの治療法です。放射線療法には、2種類あります。外照射療法は、体外にある機械を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は針、シード、ワイヤー、カテーテルに放射性物質を封じ込めて、がんの中あるいはその近辺に投与する方法です。放射線療法の方法は、治療中のがんの種類や病期によって決まります。
手術通常、腫瘍を除去するための手術の後で、放射線療法を行います。手術後の治癒の可能性を高めるための治療を補助療法と呼びます。
注意深い経過観察注意深い経過観察とは、症状、あるいは変化が現れるまで治療を施さずに患者さんの状態を綿密に監視するものです。
血漿交換血漿交換は機器を用いて、患者さんから取り出した血液の血液細胞と血漿(血液の液体部分)を分離する方法です。患者さんの血漿には不必要な抗体が含まれているために、このような抗体は患者さんの体に戻さないようにします。正常な血液細胞は、提供された血漿あるいは血漿代替液と一緒に血流に戻します。血漿交換は新しい抗体の形成を防ぐわけではありません。
その他の治療法は臨床試験で検証中です。主なものは次のようなものです:臨床試験では生物学的治療、化学療法、ステロイド治療、サリドマイド(薬剤詳細へ)やレナリドマイドなどの薬物の様々な組み合わせが研究されています。
この要約セクションでは、臨床試験で研究している個々の治療法について述べていますが、現在研究されている新しい治療法全てを掲載しているわけではありません。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
症状のない患者さんには治療の必要はありません。症状が現れた場合、多発性骨髄腫の全ての病期について、次のような治療があります:
ビスフォスフォネートを用いた薬物療法による治療は骨の損失進行を遅らせ、骨の痛みを軽減すると、考えれています。アミロイドーシスの治療は通常は化学療法です。
本稿では、臨床試験で研究している個々の治療法について述べていますが、現在研究されている新しい治療法全てを掲載しているわけではありません。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症の治療法には下記のようなものがあります:
本稿では、臨床試験で研究している個々の治療法について述べていますが、現在研究されている新しい治療法全てを掲載しているわけではありません。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)の治療は、通常、血液中のM蛋白の濃度を調べるための定期的な血液検査を含んだ、注意深い経過観察です。