小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍は大脳から発生します。大脳は脳の中で最も大きな体積を占める部分で、頭部の上の方に位置しています。大脳では、思考、学習、問題解決、会話、感情、読み書き、随意運動などの制御が行われています。小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍は、大脳神経芽腫や大脳髄芽腫などとも呼ばれます。
松果体芽腫は、松果体の内部やその付近に発生する腫瘍です。松果体は脳内にある非常に小さな臓器で、睡眠と覚醒の周期の制御に必要となるメラトニンという物質を分泌しています。
小児ではがんの発生自体はまれですが、その中では、白血病とリンパ腫を除けば、脳腫瘍は最も多くみられる小児がんです。
本要約では、原発性脳腫瘍(脳で発生した腫瘍)の治療法について記載されています。転移性脳腫瘍(他の部位から発生したがん細胞が脳に転移してできた腫瘍)の治療法については、本要約では扱われていません。
脳腫瘍は小児にも成人にも発生しますが、成人と小児では治療法が異なってくる場合があります。(さらに詳しい情報については、PDQの脳腫瘍(成人)の治療に関する要約をご覧ください。)
小児の脳腫瘍はそのほとんどが原因不明です。その症状は、小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍や松果体芽腫が原因で生じることもありますが、別の病態が原因の場合もあります。以下のような症状がある場合は医師の診察を受けてください:
以下のような検査法や手技が用いられます:
脳腫瘍が疑われる場合には、頭蓋骨に開けた穴から針を用いて脳組織のサンプルを採取するという手法によって、生検が行われます。直ちに病理医がその組織を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無を調べます。ここでがん細胞が発見される場合は、そのまま手術が継続され、安全を確保できる範囲内で可能な限りの腫瘍の摘出が行われていきます。
特定の因子によって予後(回復の見込み)や治療法の選択肢が変わってきます。予後(回復の見込み)を左右する因子には以下のものがあります:
治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:
通常、がんの存在範囲や拡がりの程度は病期を用いて表現されます。しかし小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍や松果体芽腫では、病期ではなくリスクによる分類法(リスク群)が用いられます。腫瘍のリスク群は、残存する腫瘍の量と中枢神経系(脳と脊髄のこと)内でのがん細胞の拡がり、それに体内の他の部位への転移の有無を基準に定義されています。治療計画を立てるためには、その腫瘍が属するリスク群を把握しておくことが重要になります。リスク群の判定には、以下のような検査法や手技が用いられます:
小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体芽腫は、以下の条件の全てが満たされると平均リスク群に分類されます:
小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍と松果体芽腫は、以下の条件がいずれか1つでも満たされるとプアリスク群に分類されます:
一般に、プアリスク群の患者さんでは再発の可能性が高くなります。
再発小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍や再発松果体芽腫とは、治療後に再び悪化(再発)した腫瘍のことをいいます。小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍と松果体芽腫は再発の多い腫瘍です。再発は何年も経過してから発生することもあり、通常その部位は脳や髄膜(脳を覆っている膜)、脊髄などになります。骨や肺などの、体の他の部位で再発する場合もあります。
小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍や松果体芽腫の患者さんは、様々な治療を受けることができます。その中には標準的な治療法(現行の治療法)もあれば、臨床試験で検証中の治療法もあります。治療法の臨床試験とは、現在用いられている治療法の改善や、がんの新しい治療法に関する情報収集を目的とした調査研究のことです。新しい治療法が「標準」治療よりも優れていることが臨床試験によって判明すれば、その新しい治療法が標準治療となる場合もあります。
小児のがんの場合は、その発生自体がまれであるため、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験は米国各地で行われています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。がん治療の選択では、患者さんとご家族に医療チームが加わって最適な治療法を決定していくのが理想的な形となります。
小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍や松果体芽腫の治療では、小児脳腫瘍の治療に熟練した複数の医師で構成されるチームによって、患者さんごとの治療計画が作成される必要があります。この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児のがん治療を専門とする医師)が統括することになります。小児腫瘍医は、脳腫瘍の小児の治療に精通した他の小児科医や特定の医療分野を専門とする小児科医に協力を求めることがあります。具体的には以下のような専門医や専門家が挙げられます:
この要約の一般的な情報のセクションで前述されているように、小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍や松果体芽腫では、その診断と治療に手術という方法が用いられます。
放射線療法放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞を死滅させる、がんの治療法です。放射線療法には2種類のものがあります。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの器具の中に放射性物質を封入し、がんの内部または近くに直接留置する方法です。放射線療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
化学療法化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによりがんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脊柱内や体腔内(腹腔など)、臓器内などに薬を直接注入する化学療法では、薬はその領域のがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
脳に対する放射線療法は幼児の成長や発達に悪影響を及ぼす危険性があることから、放射線療法の開始を遅らせたりその照射量を減らしたりすることを目的とした化学療法の利用方法が、現在臨床試験で検証されています。
この他にも臨床試験で検証中の治療法があります。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
未治療の小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍や松果体芽腫とは、その時点でまだ何の治療も行われていない腫瘍のことです。ただし、腫瘍が原因で生じる症状を緩和するために行われた、薬物投与などの治療については例外とされます。
3歳以上の小児における小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍と松果体芽腫の標準治療には、以下のようなものがあります:
3歳以上の小児における小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍と松果体芽腫の治療法については、以下のような臨床試験が現在実施されています:
3歳未満の小児における小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍と松果体芽腫の標準治療には、以下のようなものがあります:
3歳以上の小児における小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍と松果体芽腫の治療法としては、放射線療法の先送りや照射量の減量を可能にすることを目的とした化学療法の実施が、現在臨床試験で検証されています。
現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
再発小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍と再発松果体芽腫の標準治療法には、以下のようなものがあります:
再発小児テント上原始神経外胚葉性腫瘍と再発松果体芽腫については、現在臨床試験で新たな治療法が検証されています。こうした臨床試験を始めとする現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。