原文更新日 : 2006-06-30
翻訳更新日 : 2007-06-27
通常、骨髄が産生する幹細胞(未熟細胞)は、成熟した血液細胞(血球)に成長します。成熟血液細胞には、下記の3種類があります:
「急性」のがんは、治療をしないと通常急速に悪化します。「慢性」のがんは、通常はゆっくりと悪化します。急性骨髄性白血病(AML:acute myeloid leukemia)は、急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)、急性骨髄芽球性白血病、急性顆粒球性白血病、急性非リンパ性白血病とも呼ばれています。
AMLでは、通常幹細胞が成長すると、骨髄芽球(骨髄様芽球)と呼ばれる型の白血球になります。AMLの骨髄芽球つまり白血病細胞は正常ではなく(異常で)、健康な白血球には成熟しません。これらの血液細胞は、正常に機能することができずに血液や骨髄中に蓄積するため、健康な白血球や赤血球、血小板のスペースが少なくなります。これにより、感染や貧血、出血しやすい状態が起こりやすくなります。白血病細胞は、中枢神経系(脳や脊髄)、皮膚、歯肉など、血液外の体の他の部位にまで拡がることがあります。ときに白血病細胞は顆粒球肉腫や緑色腫と呼ばれる固形腫瘍を形成します。
AMLは、侵される血液細胞の型によっていくつかの亜型に分けられます。AMLが急性前骨髄球性白血病(APL)と呼ばれる亜型の場合、またはダウン症候群の小児の場合には、AMLの治療法が異なります。
他の骨髄性疾患によって血液と骨髄に影響が出る場合があります。慢性骨髄性白血病(CML)では、非常に多くの骨髄幹細胞が顆粒球と呼ばれる型の白血球に成熟します。これらの骨髄幹細胞の中には、成熟白血球にならないものもあります。これらは芽球と呼ばれます。やがて顆粒球と芽球は骨髄中の赤血球や血小板を押し出します。CMLは小児ではまれです。
若年性骨髄単球性白血病若年性骨髄単球性白血病(JMML)は、2歳未満の小児により頻繁に起こる、まれな小児がんです。JMMLでは、非常に多くの骨髄幹細胞が骨髄球と単球と呼ばれる2つの型の白血球に成熟します。これらの骨髄幹細胞の中には、成熟白血球にならないものもあります。これらの未熟な細胞は芽球と呼ばれ、正常に機能できません。やがて骨髄球、単球、芽球が、骨髄中の赤血球や血小板を押し出します。これにより、感染や貧血、出血しやすい状態が起こりやすくなります。
一過性の骨髄増殖性疾患一過性の骨髄増殖性疾患(TMD)は、ダウン症候群の新生児に起こりうる骨髄障害の1種です。この病気は通常、生後3週間以内に自然に治まります。ダウン症候群とTMDを認める乳児では、3歳までにAMLが発生する可能性が高くなります。
骨髄異形成症候群骨髄異形成症候群では、骨髄中で産生される赤血球、白血球や血小板はわずかです。これらの血液細胞は成熟せず、血液中に送り出されない場合もあります。骨髄異形成症候群の治療法は、赤血球や白血球、血小板の数が、正常に比べどれだけ少ないかによって決まります。骨髄異形成症候群はAMLに進行する場合があります。
この要約は、小児AML、小児CML、JMML、TMD、骨髄異形成症候群に関するものです。他の種類の白血病や、血液と骨髄に関連する疾患についての詳しい情報は、次のPDQ(Physician Data Query:医師データ照会)要約をご覧ください:
疾患が発生する危険性を増大させるもの全てを危険因子と呼びます。小児AML、小児CML、JMML、TMD、骨髄異形成症候群を発生する可能性のある危険因子には下記のものがあります:
これらをはじめとする症状は、小児AMLや小児CML、JMML、骨髄異形成症候群によって起こる場合があります。他の病気でも同じ症状が引き起こされることがあります。次に挙げるような症状があれば医師の診察を受けるべきです:
TMDの症状には、下記のものがあります:
以下の検査や手法が用いられます:
小児AMLの予後(回復の見込み)や治療の選択肢は下記によって異なります:
小児CMLの予後と治療法の選択は、診断されてからの経過期間と血液中の芽球数によって異なります。
若年性骨髄単球性白血病(JMML)の予後(回復の可能性)や治療の選択肢は下記によって異なります:
骨髄異形成症候群の予後(回復の可能性)と治療の選択肢は下記によって異なります:
がんの程度または拡がりは、通常、病期で示されます。小児急性骨髄性白血病(AML)では、病期のかわりに、AMLの亜型と白血病が血液と骨髄以外に拡がっているかどうかに基づき治療計画をたてます。白血病が拡がっているかどうかを明らかにするために、下記の検査と手法が用いられます:
小児AMLは、未治療(新たに診断されたもの)、寛解期、再発性として分類されます。
未治療の(新たに診断された)小児AML
未治療の(新たに診断された)小児AMLは発熱や出血、疼痛のような症状を和らげる以外に治療は行われておらず、下記の項目が当てはまります:
寛解期の小児急性骨髄性白血病(AML)
寛解期の小児AMLでは、疾患の治療は行われており、下記の項目が当てはまります:
AMLやCML、JMML、TMD、骨髄異形成症候群の小児は様々な種類の治療法を受けられます。治療には標準(現在利用されている治療)となっている治療もあれば、臨床試験で検証中の治療もあります。治療法の臨床試験とは、現在の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法についての情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合、その新しい治療法が標準治療となります。
小児のがんはまれなため、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験は米国各地で行われています。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。最適ながん治療の選択は、患者さん、ご家族そして医療チームが関わって行うことが理想です。
AMLやCML、JMML、TMD、骨髄異形成症候群の小児は、自分に合った治療を、小児白血病や他の血液関連疾患の専門医で構成される医師チームに計画してもらうべきです。小児の場合、小児腫瘍医、すなわち小児がん治療の専門医が治療を統括することになります。小児腫瘍医は、白血病の治療経験や専門知識が豊富な小児科医および特定の分野を専門とする他の小児科医に紹介することがあります。それには、以下の専門医が挙げられます:
定期的な経過観察検査は、とても重要です。がん治療の中には、治療が終った後も副作用が続くものや数年後に副作用が出てくるものがあります。これらは晩期障害と呼ばれます。がん治療の晩期障害には下記のようなものがあります:
晩期障害によっては治療または制御できるものがあります。AMLまたは他の血液疾患の治療を受ける小児のご両親は、治療が原因となり後に起こりうる晩期障害について担当医と親が話し合うことが重要です。 詳しい情報については、PDQのがん治療の晩期障害(小児)に関する要約をご覧ください。
小児急性骨髄性白血病(AML)の治療は、通常2段階で行われます。小児AMLの治療は、段階的に行われます:
中枢神経系(CNS)聖域療法と呼ばれる治療法が、治療の寛解導入段階に行われる場合があります。経口投与、あるいは静脈に注入される化学療法は、中枢神経系(CNS)(脳や脊髄)の白血病細胞に到達しない場合があるため、白血病細胞は中枢神経系に「聖域」(隠れ家)を見つけ出します。髄腔内化学療法や放射線療法は、中枢神経系(CNS)の白血病細胞に到達して殺すことができ、がんの再発(再び発生すること)を防ぎます。中枢神経系(CNS)聖域療法は、中枢神経系(CNS)予防とも呼ばれています。
小児AMLや小児CML、JMML、TMD、骨髄異形成症候群に対する標準治療として、6種類が用いられています。化学療法は、薬物を用いてがん細胞を殺すかまたは細胞の分裂を停止させることにより、がん細胞の増殖を止めるがん治療法です。化学療法は、経口投与または静脈注射、筋肉注射によって投与され、薬物は血流に入って全身のがん細胞に到達できます(全身化学療法)。化学療法で薬を直接脊柱(髄腔内化学療法)や臓器、そして腹部などの体腔に注入する場合、薬は主にその領域にあるがん細胞に作用します(局所化学療法)。併用化学療法は、複数の抗がん剤を用いる治療です。
化学療法の処方は、治療中のがんの種類によって決まります。
AMLでは、白血病細胞が脳や脊髄に拡がることがあります。AMLの治療のために経口でまたは静注で投与される化学療法薬は、血液脳関門を通過することができないので、脳と脊髄を取り囲んでいる液体の中に入り込むことができません。しかし、髄腔内化学療法では、脳と脊髄に転移している可能性のある白血病細胞を殺すために、薬がこの液体で満たされたスペースに直接注入されます。
放射線療法放射線療法は、高エネルギーX線やその他のタイプの放射線を用いてがん細胞を殺すがんの治療法です。放射線療法には、2種類あります。体外照射療法は、体外にある機械を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法では、放射性物質を密封した針、シード、ワイヤー、カテーテルを、がんそのものまたはがんの近くに直接留置します。体外照射療法は、脳や脊髄まで拡がった、または拡がる可能性のある小児AMLの治療に用いられる場合があります。この方法で用いられる場合、この治療は中枢神経(CNS)聖域療法または中枢神経系(CNS)予防とも呼ばれます。
幹細胞移植幹細胞移植は、化学療法を行った後、がん治療で破壊された異常な造血細胞を入れ替える方法です。幹細胞(未熟な血液細胞)を、患者さんあるいはドナーの血液や骨髄から採取し、冷凍保存します。化学療法の終了後、保存されていた幹細胞を解凍し、再び患者さんに注入します。これらの再注入された幹細胞は、血液細胞に成長し体内を巡ります。
その他の薬物療法三酸化ヒ素や全トランス型レチノイン酸(ATRA)は、白血病細胞を殺すか、白血病細胞の分裂を防ぐか、または白血病細胞が白血球に成熟するのを助ける抗がん剤です。これらの薬物は、急性前骨髄球性白血病(APL)と呼ばれるAMLの亜型の治療に用いられます。
イマチニブ(グリベック)はチロシンキナーゼ阻害薬という種類の抗がん剤です。これは、幹細胞に働きかけて体内に必要量以上の多くの白血球(顆粒球または芽球)を作り出す酵素、チロシンキナーゼを遮断します。
注意深い経過観察注意深い経過観察とは、症状がみられるか、変化がみられるときまで、治療を行わずに患者さんの状態のモニタリングを慎重に行うことです。骨髄異形成症候群またはTMDでは、ときどき用いられる治療法です。
支持療法支持療法は、疾患あるいは治療によって起こる問題を軽減するために行われます。支持療法には、下記のものがあります:
生物学的治療は、患者さんの免疫系を用いてがんと闘う治療法です。体内あるいは製造ラボで作られる物質を用いて、がんに対する体本来の防御力を増強、方向付け、あるいは修復します。この種のがん治療は、生物療法あるいは免疫療法とも呼ばれます。
モノクローナル抗体療法はある種の生物学的治療です。モノクローナル抗体療法は、製造ラボで一種類の免疫系細胞から作った抗体を用いるがんの治療法です。これらの抗体は、がん細胞上にある物質やがん細胞の増殖を促進する正常な物質を識別することができます。抗体はこれらの物質に結合して、がん細胞を破壊するか、増殖を阻害するあるいはがん細胞が拡がらないようにします。モノクローナル抗体は点滴で投与されます。これらは単独で用いたり、薬物、毒素、放射性物質と一緒に用いてそれらを直接がん細胞へ運んだりします。
本稿では、臨床試験で研究している個々の治療法について述べていますが、現在研究されている新しい治療法全てを掲載しているわけではありません。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
未治療の(新たに診断された)小児急性骨髄性白血病(AML)の治療には、 併用化学療法が行われます。CNS聖域療法は髄腔内化学療法で、場合により脳への放射線療法を併用することもあります。
顆粒球肉腫(緑色腫)を伴う未治療の(新たに診断された)小児急性白血病の治療は化学療法で、場合により放射線療法を併用することもあります。
現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
寛解期(地固め療法/強化療法)の小児急性骨髄性白血病(AML)の治療はAMLの亜型により異なり、下記のようなものがあります:
本稿では、臨床試験で研究している個々の治療法について述べていますが、現在研究されている新しい治療法全てを掲載しているわけではありません。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
再発性の小児急性骨髄性白血病(AML)の治療には、下記のようなものがあります:
再発性の急性前骨髄球性白血病の治療には、全トランス型レチノイン酸(ATRA)または三酸化ヒ素療法があります。
本稿では、臨床試験で研究している個々の治療法について述べていますが、現在研究されている新しい治療法全てを掲載しているわけではありません。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
急性前骨髄球性白血病の治療には下記のようなものがあります:
本稿では、臨床試験で研究している個々の治療法について述べていますが、現在研究されている新しい治療法全てを掲載しているわけではありません。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
ダウン症候群を認める小児におけるAMLの治療には下記のようなものがあります:
本稿では、臨床試験で研究している個々の治療法について述べていますが、現在研究されている新しい治療法全てを掲載しているわけではありません。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
小児慢性骨髄性白血病の治療には下記のようなものがあります:
本稿では、臨床試験で研究している個々の治療法について述べていますが、現在研究されている新しい治療法全てを掲載しているわけではありません。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
若年性骨髄単球性白血病(JMML)の治療には下記のようなものがあります:
本稿では、臨床試験で研究している個々の治療法について述べていますが、現在研究されている新しい治療法全てを掲載しているわけではありません。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
一過性の骨髄増殖性疾患(TMD)は通常、自然に消失します。自然に消失しないTMDの治療には下記のようなものがあります:
現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
骨髄異形成症候群の治療には下記のようなものがあります:
支持療法による治療は、感染、出血、貧血などの疾患によって起こる問題を管理するために行われます。
骨髄異形成症候群が急性骨髄性白血病(AML)に進行した場合は、AMLを新たに診断された患者さんと同じ治療法が実施されます。
本稿では、臨床試験で研究している個々の治療法について述べていますが、現在研究されている新しい治療法全てを掲載しているわけではありません。現在行われている臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。