原文更新日 : 2006-02-21
翻訳更新日 : 2007-06-27
星細胞腫とは、星細胞と呼ばれる脳の細胞から発生する腫瘍のことです。大脳星細胞腫とは、この星細胞腫のうちの大脳に発生してくるものをいいます。大脳は脳の中で最も大きな体積を占める部分で、頭部の上の方に位置しています。大脳では数多くの機能が制御されていて、具体的には思考、学習、問題解決、会話、感情、読み書き、随意運動などが挙げられます。
小児ではがんの発生自体はまれですが、その中では、白血病とリンパ腫を除けば、脳腫瘍は最も多くみられる小児がんです。
本要約では、原発性脳腫瘍(脳で発生した腫瘍)の治療法について記載されています。転移性脳腫瘍(他の部位から発生したがん細胞が脳に転移してできた腫瘍)の治療法については、本要約では扱われていません。脳腫瘍は小児にも成人にも発生しますが、成人と小児では治療法が異なってくる場合があります。(さらに詳しい情報については、PDQの脳腫瘍(成人)の治療法に関する要約をご覧ください。)
小児の脳腫瘍はそのほとんどが原因不明です。その症状は星細胞腫が原因の場合もありますが、別の病態が原因となっている場合もあります。以下のような症状がある場合は医師の診察を受けてください:
以下のような検査法や手技が用いられます:
脳腫瘍が疑われる場合には、頭蓋骨に開けた穴から針を用いて脳組織のサンプルを採取するという手法によって、生検を行います。直ちに病理医がその組織を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無を調べます。ここでがん細胞が発見される場合は、そのまま手術が継続され、安全を確保できる範囲内で可能な限りの腫瘍の摘出が行われていきます。
特定の因子によって予後(回復の見込み)や治療法の選択肢が変わってきます。予後(回復の見込み)を左右する因子には以下のものがあります:
治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:
小児大脳星細胞腫では、摘出手術が終わると、腫瘍の残存の有無を確認するためにさらに検査が行われます。通常、がんの存在範囲や拡がりの程度は病期を用いて表現されます。しかし小児大脳星細胞腫では、病期ではなく腫瘍の悪性度が用いられます。腫瘍の悪性度とは、顕微鏡で観察したときのがん細胞の異常の度合いや、腫瘍の増殖と拡大の速さを反映した指標のことです。手術後にがん細胞の残存が認められる場合には、その後の治療計画を作成するために、腫瘍の悪性度を把握しておくことが重要になります。
小児大脳星細胞腫では、以下のような悪性度の分類法が用いられています:
手術後に腫瘍細胞が残存していないかどうかを確認する際には、以下のような検査法が用いられます:
大脳星細胞腫は脳内の複数箇所に発生することがありますが、通常は体内の他の部位まで拡がることはありません。
再発小児大脳星細胞腫とは、治療後に再び悪化(再発)した腫瘍のことをいいます。再発は、最初の腫瘍の発生から何年も経過した後に起こってくる場合もあります。しかし高悪性度の大脳星細胞腫では、最初の診断から3年以内に再発するのが通常となっています。再発は、脳に起こることもあれば、中枢神経系の脳以外の部分に起こることもあります。
大脳星細胞腫の患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験で検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、現在用いられている治療法の改善や、がんの新しい治療法に関する情報収集を目的とした調査研究のことです。新しい治療法が「標準の」治療よりも優れていることが臨床試験によって判明すれば、その新しい治療法が標準治療となる場合もあります。
小児のがんの場合は、その発生自体がまれであるため、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験は米国各地で行われています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。がん治療の選択では、患者さんとご家族に医療チームが加わって最適な治療法を決定していくのが理想的な形となります。
大脳星細胞腫の治療では、小児脳腫瘍の治療に熟練した複数の医師で構成されるチームによって、患者さんごとの治療計画が作成される必要があります。この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児のがん治療を専門とする医師)が統括することになります。小児腫瘍医は、脳腫瘍の小児の治療に精通した他の小児科医や特定の医療分野を専門とする小児科医に協力を求めることがあります。具体的には以下のような専門医や専門家が挙げられます:
がんの治療法の中には、終了後も副作用が継続するものや、数年経ってから副作用が現れてくるものがあります。こうした副作用は晩期障害と呼ばれます。がん治療の晩期障害としては、身体的問題;気分、感情、思考、学習能力、記憶力などの変化;二次がん(別の種類のがん)の発生などが挙げられます。晩期障害には治療や制御することが可能なものもあります。がんの治療を受けている小児の親には、特定の治療法で生じる晩期障害のリスクを把握しておくことが重要になります。さらに詳しい情報については、PDQの小児がん治療の晩期障害に関する要約をご覧ください。
標準治療として以下の3種類が用いられています:この要約の一般的な情報のセクションで前述されているように、小児大脳星細胞腫ではその診断と治療に手術という方法が用いられます。増殖の遅い腫瘍の患者さんで痙攣発作がみられる場合には、痙攣発作と腫瘍の増殖の両方を抑えることを目的としてMRIガイド下の手術が実施されることがあります。
放射線療法放射線治療は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞を死滅させる、がんの治療法です。放射線療法には2種類のものがあります。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの器具の中に放射性物質を封入し、がんの内部または近くに直接留置する方法です。放射線療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。放射線治療は化学療法に対する追加的な治療法として用いられることもあります。
放射線療法は幼児の体の成長や脳の発達に悪影響を及ぼす危険性があるため、多くの場合、幼児に対する使用はがんが拡がり始めた場合のみに限られます。標準的なものと比べて副作用の少ない、放射線の新たな照射方法が現在研究されています。そのひとつの原体照射法では、コンピュータによって腫瘍の三次元映像が作成されます。この映像を活用することによって、正常組織を可能な限り避けながら最大限の線量の放射線を腫瘍に照射することが可能になります。
化学療法化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによりがんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脊柱内や臓器内、もしくは腹腔などの体腔内に薬を直接注入する化学療法では、薬はその領域のがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
放射線療法の照射量を減らす、あるいはその開始時期を遅らせることを目的とした化学療法の利用法について、臨床試験での研究が行われています。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。幹細胞移植を併用した大量化学療法とは、高用量の化学療法を実施するとともに、このがん治療によって破壊された造血細胞を外から補充するという治療法です。まず患者さん自身またはドナーから採取した血液や骨髄から幹細胞(成熟前の血液細胞)を取り出し、凍結保存しておきます。そして化学療法の終了後に、保存していた幹細胞を解凍し、これを点滴によって患者さんの体内に戻します。こうして再注入された幹細胞が血液細胞に成長することにより、血液の機能が回復していきます。
本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
低悪性度の大脳星細胞腫の初期治療は、腫瘍の位置によって異なってきます。腫瘍が手術で完全に摘出された場合は、それ以上の治療が必要なくなることもあります。そのような場合には、症状の出現や変化が起きるまで入念な経過観察が行われていきます。これは注意深い経過観察と呼ばれます。腫瘍が脳の奥深くに位置している場合、手術が不可能となることがあります。その場合は手術の代わりに、生検実施後に化学療法か放射線療法を行うという治療法が用いられることがあります。
手術後もがん細胞が残存している場合の治療法は、残存するがん細胞の位置と小児の年齢によって異なってきます。具体的な治療法には以下のようなものがあります:
低悪性度の小児大脳星細胞腫に対する治療法については、併用化学療法が現在臨床試験で検証されています。
この臨床試験や現在進行中の他の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
高悪性度の小児大脳星細胞腫に対しては、手術の実施後に化学療法と放射線療法を行うという治療法が、標準治療となっています。
高悪性度の小児大脳星細胞腫に対する治療法については、以下のような臨床試験が現在進行中です:
これらの臨床試験や現在進行中の他の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
低悪性度の再発小児大脳星細胞腫に対する標準治療には、以下のようなものがあります:
低悪性度の再発小児大脳星細胞腫に対する治療法としては、放射線の新しい照射方法についても現在臨床試験で検討されています。
高悪性度の再発小児大脳星細胞腫の標準治療では、生検や手術が行われます。
高悪性度の再発小児大脳星細胞腫に対する治療法については、以下のような臨床試験が現在進行中です:
これらの臨床試験や現在進行中の他の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。