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上衣腫(小児): 治療

小児上衣腫についての一般的な情報

小児上衣腫は、脳や脊髄の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。

脳は、記憶や学習、感覚(聴覚、視覚、臭覚、味覚、触覚)、感情などの生体機能を制御するための器官です。脊髄とは、全身の大部分の神経と脳とをつないでいる神経線維の束のことをいいます。

上衣腫は小児の脳腫瘍のおよそ11分の1を占めています。小児ではがんの発生自体はまれですが、その中では、白血病リンパ腫を除けば、脳腫瘍は最も多くみられる小児がんです。

本要約では、原発性脳腫瘍(脳で発生した腫瘍)の治療法について記載されています。転移性脳腫瘍(他の部位から発生したがん細胞が脳に転移してできた腫瘍)の治療法については、本要約では扱われていません。

脳腫瘍には様々な種類のものがあります。脳腫瘍は小児にも成人にも発生しますが、成人と小児では治療法が異なってくる場合があります。さらに詳しい情報については、以下のPDQの要約をご覧ください:


小児の脳腫瘍はそのほとんどが原因不明です。
小児上衣腫の症状は多岐にわたり、多くの場合、現れてくる症状は小児の年齢と腫瘍の位置に左右されます。

その症状は小児上衣腫が原因の場合もありますが、別の病態が原因となっている場合もあります。以下のような症状がある場合は医師の診察を受けてください:


小児上衣腫の発見には、脳と脊髄を調べる検査法が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:


小児上衣腫は、手術の際に診断され、そのまま摘出されます。

脳腫瘍が疑われる場合には、頭蓋骨に開けた穴から針を用いて脳組織のサンプルを採取するという手法によって、生検を行います。直ちに病理医がその組織を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無を調べます。ここでがん細胞が発見される場合は、そのまま手術が継続され、安全を確保できる範囲内で可能な限りの腫瘍の摘出が行われていきます。

特定の因子が予後(回復の見込み)に影響を及ぼします。

予後(回復の見込み)は以下のような要因に左右されます:



小児上衣腫の病期

小児上衣腫の摘出手術の後には、腫瘍の残存の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。通常、がんの存在範囲や拡がりの程度は病期を用いて表現されます。しかし小児上衣腫では、腫瘍の悪性度中枢神経系(脳と脊髄のこと)内での腫瘍の位置による分類法が用いられます。腫瘍の悪性度とは、顕微鏡で観察したときのがん細胞異常の度合いや、腫瘍の増殖と拡大の速さを反映した指標のことです。手術後にもがん細胞が残存している場合には、その後の治療計画を作成するために、腫瘍の悪性度を把握しておくことが重要になります。以下のような検査法や手技が用いられます:



再発小児上衣腫

再発小児上衣腫とは、治療後に再び悪化(再発)した腫瘍のことをいいます。小児上衣腫は再発を起こすことが多く、通常はがんの最初の発生部位に再発します。この腫瘍では最初の治療から15年以上も経過した後に再発が起こる場合もあります。


治療選択肢の概要

上衣腫の患者さんには様々な治療法が存在します。

上衣腫の患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験で検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、現在用いられている治療法の改善や、がんの新しい治療法に関する情報収集を目的とした調査研究のことです。新しい治療法が標準治療よりも優れているということが複数の臨床試験から示されると、その新しい治療法が標準治療となります。

小児のがんの場合は、その発生自体がまれであるため、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験は米国各地で行われています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。がん治療の選択では、患者さんとご家族に医療チームが加わって最適な治療法を決定していくのが理想的な形となります。

上衣腫の治療では、小児脳腫瘍の治療に熟練した複数の医師で構成されるチームによって、患者さんごとの治療計画が作成される必要があります。

この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児のがん治療を専門とする医師)が統括することになります。小児腫瘍医は、脳腫瘍の小児の治療に精通した他の小児科医や特定の医療分野を専門とする小児科医に協力を求めることがあります。具体的には以下のような専門医や専門家が挙げられます:


がんの治療法の中には、終了後も副作用が継続するものや、数年経ってから副作用が現れてくるものがあります。こうした副作用は晩期障害と呼ばれます。がん治療の晩期障害としては、身体的問題;気分、感情、思考、学習能力、記憶力などの変化;二次がん(別の種類のがん)の発生などが挙げられます。晩期障害には治療や制御することが可能なものもあります。がんの治療を受けている小児の親には、特定の治療法で生じる晩期障害のリスクを把握しておくことが重要になります。さらに詳しい情報については、PDQ小児がん治療の晩期障害に関する要約をご覧ください。

標準治療として以下の3種類が用いられています:
手術

この要約の一般的な情報のセクションで前述されているように、小児上衣腫ではその診断と治療に手術という方法が用いられます。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞を死滅させる、がんの治療法です。放射線療法には2種類のものがあります。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの器具の中に放射性物質を封入し、がんの内部または近くに直接留置する方法です。放射線療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。

放射線療法では、正常な組織を放射線から保護するために、以下のような特殊な照射方法が考案されています:


脳に対する放射線療法は、幼児の成長や発達に悪影響を及ぼす危険性があるため、3才未満の小児では標準治療にはなっていません。このような理由から、正常な脳組織への損傷を低減できる原体照射法が、上衣腫の乳児や小児への治療法として現在研究されています。

上衣腫の治療を受けている幼児に発生する脳の損傷については、必ずしも放射線療法が原因であるわけではありません。例えば、診断時に水頭症(脳の内部に体液異常に溜まった状態)が認められる場合には、手術の実施後から放射線療法の開始までに知能検査を実施すると低いスコアが出ることがありますが、その場合の原因はこの水頭症であると判断されます。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによりがんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脊柱内や臓器内、もしくは腔などの体腔内に薬を直接注入する化学療法では、薬はその領域のがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。

この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。

現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。


小児上衣腫の治療選択肢


新たに診断された小児上衣腫

新たに診断された小児上衣腫とは、その時点でまだ何の治療も行われていない腫瘍のことです。ただし、腫瘍が原因で生じる症状を緩和するために行われた、薬物投与などの治療については例外とされます。

新たに診断された小児上衣腫に対する初期治療は、手術となるのが通常で、場合によりこれに他の治療法が追加されます。

手術後の治療法は、小児の年齢、摘出された腫瘍の量、がん細胞中枢神経系の他の部位に拡がっているかどうかなどの要因によって異なってきます。

手術で腫瘍が完全に摘出され、さらに中枢神経系内の他の部位にがん細胞が拡がっていない場合には、以下のような治療法が用いられます:


手術では腫瘍を摘出しきれなかったものの、中枢神経系内の他の部位にがん細胞が拡がっていない場合には、以下のような治療法が用いられます:


中枢神経系内の他の部位にがん細胞が拡がっている場合には、以下のような治療法が用いられます:


本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。これらの臨床試験や現在進行中の他の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。


再発小児上衣腫

再発小児上衣腫標準治療には、以下のようなものがあります:


再発小児上衣腫については、新しい治療法が臨床試験で研究されています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。


2007-06-27