原文更新日 : 2005-11-21
翻訳更新日 : 2007-06-27
乳房は葉と乳管から構成されています。乳房には葉と呼ばれる組織の集まりが左右それぞれで15〜20個存在し、さらにそれぞれの葉は小葉と呼ばれる多数のより小さな組織から構成されています。この葉と小葉は乳管と呼ばれる細い管でつながっています。
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乳房の解剖図:リンパ節とリンパ管を示す。
乳房の中にはさらに血管とリンパ管が走っています。リンパ管の中にはリンパ液と呼ばれるほぼ無色の液体が流れています。リンパ管はリンパ節と呼ばれる豆粒状の小さな臓器につながっていますが、この臓器は感染や疾患に対する体の防衛機能という点で重要な役割を果たしています。リンパ節は体内のあらゆる場所に点在しています。腋窩(わきの下)の乳房付近や鎖骨の上、胸部などには、このリンパ節が群れを成すように存在しています。
乳がんは、妊娠中の女性や出産後間もない女性にも時折発見されています。妊娠中の女性や出産後間もない女性に発生する乳がんでは、その患者さんのほとんどは32〜38歳の女性です。妊娠中の女性では3000人中に1人の割合で乳がんが発生しています。
妊娠中や授乳期の女性では、乳房が敏感になったり腫れたりすることが多くなるために、乳がんの早期発見は難しくなってきます。妊娠中、授乳期、および出産直後の女性では、乳房が敏感になって腫れが生じてくるのが通常です。こうした症状のために小さなしこりの発見が難しくなり、その結果乳がんの診断が遅れることがあります。これらの女性においては、こうした診断の遅れのために、より進行した病期でがんが発見されるといった事態がしばしば見受けられます。
出産前と出産後のケアに乳房の検査を組み込むことが重要になります。妊娠中の女性と授乳期の女性は、乳がん発見のために自身で乳房のチェックを行うようにすべきです。さらに、出産前と出産後の通常の診察の際に臨床的乳房検査を受けることも必要になります。
乳がんの発見と診断には、乳房を調べる検査法が用いられます。何らかの異常が認められる場合には、以下のような検査が実施されます:
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予後(回復の見込み)と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:
がんの乳房内での拡がりや他の部位への転移の有無を調べていくプロセスは、病期分類と呼ばれます。この病期分類の過程で集められた情報を基に病期が判定されます。治療計画を立てる上では病期を把握しておくことが重要になります。(乳がんの病期に関するさらに詳しい情報については、PDQの乳がんの治療に関する要約をご覧ください。)
乳がんの病期分類に用いられる検査法は、胎児に対する安全性が高まるように変更を加えることができます。画像検査の実施については、標準的な方法に変更を加えることによって、胎児に照射される放射線の量を低減することが可能です。また病期分類の手段として、血液中のホルモン濃度を測定する検査法を用いることも可能です。
乳がんの患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験で検証中のものもあります。治療を開始する前に、まず臨床試験への参加を検討してみるのもよいでしょう。治療法の臨床試験とは、現在用いられている治療法の改善や、がんの新しい治療法に関する情報収集を目的とした調査研究のことです。新しい治療法が標準治療よりも優れているということが複数の臨床試験から示されると、その新しい治療法が標準治療となります。
臨床試験は米国各地で行われています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。がん治療の選択では、患者さんとご家族に医療チームが加わって最適な治療法を決定していくのが理想的な形となります。
妊娠中の女性に対する治療の選択は、がんの病期と妊娠週数に左右されます。妊娠している乳がんの患者さんの大部分は、乳房を切除する手術を受けます。その際には、わきの下のリンパ節を一部だけ採取して、その組織を顕微鏡で観察してがん細胞の有無を調べるのが通常となっています。
乳房を切除する手術法には以下のようなものがあります:
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がんを摘出しつつ乳房を残しておく手術法は乳房温存手術と呼ばれ、具体的には以下のようなものがあります:
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たとえ医師が手術の際に確認できる全てのがんを切除したとしても、残っているがん細胞を全て死滅させるために、術後に放射線療法か化学療法あるいはホルモン療法を実施する場合があります。このように治癒の可能性を高めるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。
放射線療法放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞を死滅させる、がんの治療法です。放射線療法には2種類のものがあります。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの器具の中に放射性物質を密封し、がんの内部かその付近に直接留置する方法です。放射線療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
放射線療法には胎児に有害な作用を及ぼす危険性があるため、妊娠中の早期(I期かII期)乳がんの女性には、放射線療法は実施すべきではありません。また進行期(III期かIV期)の乳がんの女性についても、妊娠3カ月目まではその実施を控えるべきでしょう。
化学療法化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによりがんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脊柱内や臓器内、もしくは腹腔などの体腔内に薬を直接注入する化学療法では、薬はその領域のがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
化学療法は、妊娠3カ月目までは実施すべきではありません。この期間を過ぎてからの化学療法の実施については、通常、胎児に悪影響を及ぼすことはありませんが、早産や低体重での出生などの原因となる場合があります。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。具体的には以下のようなものがあります:ホルモン療法は、ホルモンを体内から除去したりその働きを妨害したりすることによってがん細胞の増殖を阻止する、がんの治療法です。ホルモンとは、体内の腺から分泌されて血流内を循環する物質のことです。ホルモンの中には、特定のがんを増殖させるものがあります。ホルモンが結合できる部分(レセプター)ががん細胞上に存在するということが検査によって判明した場合には、薬物投与や手術、放射線療法などの手段を用いて、そのホルモンの分泌を抑制したり機能を阻害したりする治療を行っていきます。
妊娠中の女性の乳がんに対するホルモン療法の有効性については、単独での実施か化学療法との併用での実施かに関係なく、まだよく分かっていないのが現状です。
本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
人工妊娠中絶については、その実施によって母親の生存の可能性が高まることはないと考えられており、この方法が治療法の選択肢となることは通常ありません。化学療法や放射線療法によるがんの治療がどうしても必要な場合には、人工妊娠中絶が検討されることもあります。その判断は、がんの病期や妊娠週数、母親の生存の可能性などの要因に左右されます。
早期乳がん(I期とII期)の治療法は手術と術後補助療法となり、具体的には以下のようなものが挙げられます:
本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
進行期乳がん(III期とIV期)の治療法には以下のようなものがあります:
放射線療法と化学療法は、妊娠3カ月目までは実施すべきではありません。
手術を受ける予定がある場合は、乳房を小さくしておくために、授乳を中止して乳房内の血流量を低下させる必要があります。また化学療法が計画されている場合にも、授乳は控えなければなりません。抗がん剤の多く(特にシクロホスファミドとメトトレキサート)は高濃度で乳汁中に混入してくるため、乳児がその乳汁を飲めば何らかの悪影響が生じてきます。したがって化学療法を受けている女性は授乳を行ってはなりません。ただし乳汁の分泌を停止させた場合も、母親の生存の可能性が高まるわけではありません。
母親の乳がんが胎児に悪影響を及ぼすことはないと考えられています。医師によっては、がんの再発を早期に発見するために、乳がん治療の終了後の2年間は子供をもつことを控えるように推奨しています。このことが女性の妊娠に関する決断に影響を及ぼす場合もあります。しかし母親に乳がんの既往があったとしても、そのことによって胎児に悪影響が及ぶことはないようです。
妊娠の後期における特定のがん治療による影響については、現在もよく分かっていません。妊娠後期における大量化学量と骨髄移植の実施については、放射線療法を併用するかしないかに関係なく、その妊娠への影響は現在もよく分かっていません。