原文更新日 : 2006-07-24
翻訳更新日 : 2007-06-27
脳幹とは、脳のうちの脊髄とつながっている部分を指します。脳の一番下の部分であり、頸部の背面のすぐ上に位置しています。脳幹は脳の中でも、呼吸と心拍数の調整や人間の基本的な動作(見る、聞く、歩く、話す、食べるなど)に必要となる神経や筋肉の制御が行われている部分です。小児脳幹グリオーマの大部分は、脳橋と呼ばれる脳幹の一部に発生する、脳橋グリオーマというものです。
小児ではがんの発生自体はまれですが、その中では、白血病とリンパ腫を除けば、脳腫瘍は最も多くみられる小児がんです。
本要約では、原発性脳腫瘍(脳で発生した腫瘍)の治療法について記載されています。転移性脳腫瘍(他の部位から発生したがん細胞が脳に転移してできた腫瘍)の治療法については、本要約では扱われていません。脳腫瘍は小児にも成人にも発生しますが、成人と小児では治療法が異なってくる場合があります。(さらに詳しい情報については、PDQの脳腫瘍(成人)の治療法に関する要約をご覧ください。)
小児の脳腫瘍はそのほとんどが原因不明です。脳幹グリオーマでは、下記のような症状が引き起こされてきます。ただし別の病態が原因で同様の症状が生じてくる場合もあります。以下のような症状がある場合は医師の診察を受けてください:
以下のような検査法や手技が用いられます:
腫瘍の拡がりが脳幹内の広範囲に及んでいない場合には、まず頭蓋骨に穴を開け、そこから針を使って脳組織のサンプルを採取して生検を行います。直ちに病理医がその組織を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無を調べます。ここでがん細胞が発見される場合は、そのまま手術が継続され、安全を確保できる範囲内で可能な限りの腫瘍の摘出が行われていきます。
特定の因子によって予後(回復の見込み)や治療法の選択肢が変わってきます。予後(回復の見込み)を左右する因子には以下のものがあります:
治療の選択はグリオーマの種類と位置に左右されます。
小児脳幹グリオーマでは、腫瘍の摘出後も腫瘍の残存の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。通常、がんの存在範囲や拡がりの程度は病期を用いて表現されます。小児脳幹グリオーマの場合は、以下のような腫瘍の分類法が用いられます:
再発小児脳幹グリオーマとは、治療後に再び悪化(再発)した腫瘍のことをいいます。小児脳幹グリオーマは、最初の治療から何年も経過してから再発することがあります。再発は、脳に起こることもあれば、中枢神経系の脳以外の部分に起こることもあります。
脳幹グリオーマの患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験で検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、現在用いられている治療法の改善や、がんの新しい治療法に関する情報収集を目的とした調査研究のことです。新しい治療法が標準治療よりも優れているということが複数の臨床試験から示されると、その新しい治療法が標準治療となります。
小児のがんの場合は、その発生自体がまれであるため、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験は米国各地で行われています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。がん治療の選択では、患者さんとご家族に医療チームが加わって最適な治療法を決定していくのが理想的な形となります。
小児脳幹グリオーマの治療では、小児脳腫瘍の治療に熟練した複数の医師で構成されるチームによって、患者さんごとの治療計画が作成される必要があります。この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児のがん治療を専門とする医師)が統括することになります。小児腫瘍医は、脳腫瘍の小児の治療に精通した他の小児科医や特定の医療分野を専門とする小児科医に協力を求めることがあります。具体的には以下のような専門医や専門家が挙げられます:
この要約の一般的な情報のセクションで前述されているように、小児脳幹グリオーマではその診断と治療に手術という方法が用いられます。
放射線療法放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞を死滅させる、がんの治療法です。放射線療法には2種類のものがあります。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの器具の中に放射性物質を封入し、がんの内部または近くに直接留置する方法です。
脳に対する放射線療法は、幼児の成長や発達に悪影響を及ぼす危険性があります。そのため正常な組織を放射線による損傷から保護するための特殊な照射方法が考案されていて、以下のようなものが挙げられます:
放射線療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。放射線療法は単独で実施される場合もあれば、化学療法に追加する形で実施される場合もあります。
化学療法化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによりがんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与あるいは静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脊柱内や臓器内、もしくは腹腔などの体腔内に薬を直接注入する化学療法では、薬はその領域のがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
脳に対する放射線療法は幼児の成長や発達に悪影響を及ぼす危険性があることから、放射線療法の開始を遅らせたりその照射量を減らしたりすることを目的とした化学療法の利用方法が、現在臨床試験で検証されています。
脳脊髄液転換脳脊髄液転換とは、脳や脊髄の周囲に過剰に溜まった液体を排出する際に用いられる方法です。シャント(長細い管)を脳室(脳内部の空洞)から体の他の部位(通常は腹腔)まで皮膚の下を通して留置します。このシャントにより過剰に溜まった脳脊髄液が脳の外に排出され、体の他の部位で吸収されるようになります。
注意深い経過観察注意深い経過観察とは、症状の出現や変化がみられるまで治療を一切行わずに、患者さんの状態を注意深く監視していくことです。
この他にも新しい治療法が臨床試験で検証されています。放射線増感剤とは、放射線療法に対する腫瘍細胞の反応性を高める薬のことです。放射線療法に放射線増感剤を併用すれば、より多くの腫瘍細胞を殺傷することが可能になります。
本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
未治療の小児脳幹グリオーマとは、その時点でまだ何の治療も行われていない腫瘍のことです。ただしそのような小児でも、腫瘍が原因で生じる症状を緩和するために行われた、薬物投与などの治療については例外とされます。
びまん性の内在性脳橋グリオーマに対する標準治療は、放射線療法とされるのが通常です。
びまん性の内在性脳橋グリオーマの治療法については、現在以下のような臨床試験が実施されています:
このような臨床試験や現在進行中の他の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
限局性または低悪性度グリオーマの標準治療には、以下のようなものがあります:
現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
神経線維腫症1型の小児における脳幹グリオーマの治療は、注意深い経過観察となるでしょう。このような場合は腫瘍の増殖が遅いため、長期間にわたって特別な治療を行う必要がない場合もあります。
再発小児脳幹グリオーマの治療法は、腫瘍の種類、再発部位(最初の発生部位と同じか脳内の別の部位か)、以前の治療法などによって異なってきます。
びまん性の内在性脳橋グリオーマが再発した場合の標準治療は、緩和療法(症状を和らげ生活の質を高めることを目的とした治療)となるのが通常です。新しい治療法の臨床試験に参加することも可能です。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
限局性または低悪性度の小児脳幹グリオーマが再発した場合の標準治療には、以下のようなものがあります: