原文更新日 : 2004-06-10
翻訳更新日 : 2007-06-27
小児脳腫瘍とは、頭蓋内に存在する組織の異常増殖を特徴とする多様な疾患の集まりを指す用語です。脳腫瘍は良性の(がん細胞が存在しない)場合もあれば悪性の(がん細胞が含まれている)場合もあります。脳は、記憶や学習、感覚(聴覚、視覚、臭覚、味覚、触覚)、感情などといった極めて重要な機能を制御している器官です。筋肉、臓器、血管などといった体の他の部位の制御も脳で行われています。脳腫瘍は、白血病とリンパ腫を除けば最も多くみられる小児がんです。
この治療に関するPDQの要約は、最初から脳に発生した腫瘍(原発性脳腫瘍)のみを対象としたものです。転移性脳腫瘍(体の他の部位から発生したがん細胞が脳に転移してできる二次腫瘍)については、本要約では扱われていません。脳腫瘍は小児にも成人にも発生しますが、成人と小児では治療法が異なってくる場合があります。(さらに詳しい情報については、PDQの脳腫瘍(成人)の治療に関する要約をご覧ください。)
脳腫瘍が原因で生じることのある症状が小児に認められる場合には、CTスキャン(コンピュータ断層撮影:コンピュータを駆使して体内の画像を作成する診断検査)が実施されることがあります。MRIスキャン(磁気共鳴画像法:X線の代わりに磁気波を用いる、CTスキャンに似た診断検査)が実施される場合もあります。
脳腫瘍の存在やその種類を明らかにするために、しばしば手術が必要となります。少量の腫瘍組織のサンプルを手術によって採取し、これを顕微鏡で検査します。この過程のことを生検と呼びます。頭蓋骨に小さな穴を開けてそこから針を刺して腫瘍のサンプルを採取することもあります。
小児に発生する脳腫瘍には様々な種類のものがあります。治療法と回復の見込み(予後)は、腫瘍の種類、脳の中での位置、拡がりの程度、小児の年齢と健康状態などの要因に左右されます。
小児脳腫瘍が発見されると、腫瘍の種類を判定するために、さらに検査が行われます。生検用のサンプルが採取できた場合は、顕微鏡を用いて腫瘍細胞を入念に観察し、正常細胞と比べたときのその外観の違いについて調べていきます。この検査によって腫瘍の悪性度が判定されます。腫瘍の悪性度は、その細胞を顕微鏡で観察して正常な細胞とどの程度似ているのかを調べることによって判定されます。異常な外観を呈した悪性度の高い腫瘍の細胞では、悪性度の低い腫瘍の細胞に比べて増殖のペースが速く、がんとしての性質も強くなるのが通常です。治療計画を立てるためには腫瘍の種類と悪性度を把握しておく必要があります。
小児脳腫瘍では病期分類は行われません。脳腫瘍は、脳の中での位置と腫瘍組織の外観や振舞いによって分類されます。小児脳腫瘍は以下のように分類されます:
テント下腫瘍とは、脳の下部に発生する腫瘍のことをいいます。この領域に発生する腫瘍には以下のようなものがあります:
(詳しい情報については、PDQの髄芽腫(小児)の治療に関する要約をご覧ください。)
(詳しい情報については、PDQの小脳星細胞腫(小児)の治療に関する要約をご覧ください。)
上衣腫とは、脳室(脳脊髄液で満たされている脳内の空洞)の表面を覆う上衣細胞から発生する腫瘍のことです。上衣腫が増殖してくると、脳や脊髄の周囲の脳脊髄液の流れが滞ってくることがあります。テント下上衣腫とは脳の下部に発生するものです。この腫瘍は脳脊髄液を介して脳の他の部位や脊髄へと拡がることがあります。
(詳しい情報については、PDQの脳幹グリオーマ(小児)の治療に関する要約をご覧ください。)
テント上腫瘍とは、脳の上部に発生する腫瘍のことをいいます。よくみられるテント上腫瘍には以下のようなものがあります:
(詳しい情報については、PDQの大脳星細胞腫/悪性グリオーマ(小児)の治療に関する要約をご覧ください。)
上衣腫とは、脳室(脳脊髄液で満たされている脳内の空洞)の表面を覆う上衣細胞から発生する腫瘍のことです。上衣腫が増殖してくると、脳や脊髄の周囲の脳脊髄液の流れが滞ってくることがあります。テント上上衣腫とは脳の上部に発生するものです。その悪性度にもよりますが、この腫瘍は脳の他の部位や脊髄へと拡がることがあります。
頭蓋咽頭腫は一般に下垂体のすぐ上の部分に発生します。下垂体は脳の底部に位置するエンドウ豆大の器官で、ここでは多くの生体機能が制御されています。頭蓋咽頭腫は周囲に拡がっていくことはありませんが、付近の重要な器官に影響を及ぼすことによって、深刻な問題を引き起こす場合があります。
脳に存在する性細胞から胚細胞腫瘍が発生したものです。胚細胞腫瘍には様々な種類のものがあり、具体的には胚細胞腫、胚細胞がん、絨毛がん、奇形腫などがあります。これらの腫瘍は脳の中央部に発生するのが通常で、脳の他の部位や脊髄へと拡がることがあります。
(詳しい情報については、PDQのテント上原始神経外胚葉腫瘍(小児)の治療に関する要約をご覧ください。)
(詳しい情報については、PDQの視経路および視床下部グリオーマ(小児)の治療に関する要約をご覧ください。)
脊髄腫瘍は、脊髄(脳と全身の間で情報を伝達するための神経の束)にまれに発生する良性またはがん性の腫瘍です。脊髄腫瘍の診断は、顕微鏡で観察したときの腫瘍細胞の外観と腫瘍の発生部位が基準となります。脊髄腫瘍では、脊髄と周辺の神経が圧迫されることによって、背中、腕、足などの痛みや麻痺、筋力の低下、さらに場合によっては尿や便の失禁といった症状が現れてきます。診断時には、腫瘍の存在範囲を明らかにするために脳と脊髄全体のX線撮影が行われます。
再発がんとは、治療後に再び悪化(再発)したがんのことをいいます。再発は、最初と同じ部位や中枢神経系の他の部位に起こることもあれば、全身にわたって起こることもあります。
小児脳腫瘍の患者さん全てに、治療法が存在します。以下の3種類の治療法が用いられています:
患者さんによっては複数の治療法が併用される場合もあります。
脳腫瘍の小児に対しては、経験豊富な複数の医師が協力し合うことで最良の治療が可能となります。この疾患の治療では、小児腫瘍医(小児のがん治療を専門とする医師)がその調整役を務めることになります。小児腫瘍医は他の医師(例えば、小児神経外科医[小児の脳外科手術の専門医]、小児神経内科医、心理士、放射線腫瘍医、必要となる治療法を専門とするその他の医師)に協力を求めることがあります。
治療法の選択はしばしば腫瘍の種類と脳内での位置に左右されます。多くの場合、腫瘍の完全またはほぼ完全な摘出が可能です。腫瘍の完全摘出が不可能な場合には、放射線療法や化学療法が行われます。
放射線療法では、X線装置やその他の放射線源から照射される高エネルギーの放射線を利用して、がん細胞を殺傷して腫瘍を縮小させます。小児の脳腫瘍に対する放射線療法では、体外に設置された装置から放射線を照射する方法(外照射療法)が用いられるのが通常です。一部の種類の脳腫瘍では、1日分の照射量を小分けにして照射する特殊な放射線療法(多分割照射放射線療法)が臨床試験で評価されています。放射線療法の実施は体の成長や脳の発達に悪影響を及ぼす場合があるため、とりわけ成長途中にある幼児に対しては、放射線の照射量を減らす方法や、その開始時期を遅らせる方法などが、上記のものとはまた別の臨床試験で検証されています。
化学療法とは、薬を用いてがん細胞を死滅させる治療法のことです。化学療法での薬の投与方法には、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射などがあります。化学療法は、薬が血流に乗って体中をめぐることにより全身のがん細胞を殺傷できることから、全身療法とも呼ばれます。化学療法については、若年の患者さんに対する放射線療法の実施を先送りまた回避するための手段や、放射線の照射量を減らすための手段として、さらには放射線療法の実施前や実施後の補助的な治療法として、臨床試験での研究が進行しています。
小児脳腫瘍の治療法は、腫瘍の種類と悪性度、脳内での腫瘍の位置、小児の年齢と健康状態などによって異なってきます。
過去の研究において多数の患者さんで有効性が実証されている標準治療を受けることもできますし、あるいは臨床試験への参加を選択することも可能です。全ての患者さんが標準治療で治癒するとは限りませんし、一部の標準治療では副作用が予想以上に強く現れる場合もあります。このような理由から、新しいがんの治療法を検証しより良い治療法を見出すために、臨床試験が計画されています。小児脳腫瘍については、米国のほぼ全ての地域で臨床試験が実施されています。
小児テント下上衣腫の治療では、腫瘍を可能な限り切除する手術を行って、その後に放射線療法を実施するのが通常です。3歳未満の小児の場合は、放射線療法の先送りや回避、あるいは照射量の減量を目的として、化学療法が実施されることがあります。
小児テント上上衣腫の治療では、まず手術を行ってから放射線療法を実施するという方法が用いられることがあります。手術を行った後に化学療法と放射線療法の併用治療か化学療法の単独治療を実施するという治療法が、現在臨床試験で検証されています。3歳未満の小児の場合は、放射線療法開始の先送りや照射量の減量を目的として、化学療法が実施されることがあります。化学療法を併用する場合と併用しない場合の放射線療法について、現在臨床試験で評価が行われています。
再発した場合の治療は、腫瘍の種類、再発部位が最初の発生部位と同じかどうか、治療終了から再発までの期間、以前に用いられた治療法などの要因によって異なってきます。
治療法の選択肢としては、手術、放射線療法、化学療法があります。現在、この腫瘍の治療における化学療法の役割について臨床試験での評価が行われています。
治療法の選択肢としては、手術と化学療法があります。現在、この腫瘍の治療における化学療法の役割について臨床試験での評価が行われています。
化学療法による治療が通常となっています。現在、この腫瘍の治療における化学療法の役割について臨床試験での評価が行われています。
化学療法による治療が通常となっています。現在、この腫瘍の治療における化学療法の役割について臨床試験での評価が行われています。