原文更新日 : 2006-10-27
翻訳更新日 : 2007-06-27
本要約では、数多くの様々な腫瘍についての情報が扱われていますが、頭頸部から始まって体を下に向かって進んでいき最後に泌尿器系と皮膚で終わるという順序で身体各部の腫瘍が紹介されていきます。ここで扱われているがんは全てが非常にまれなものであり、その年間症例数は、ほとんどの小児科病院で多くて1例といったところでしょう。しかしこれらの腫瘍のほとんどは、成人ではより頻繁にみられるものであるため、そうした腫瘍については成人の場合のものを扱った情報源が数多く存在するので、そうしたものから情報を得ることも可能です。
頭頸部のがんには、鼻と咽頭のがん、甲状腺腫瘍、口腔がん、唾液腺がん、喉頭がん、上気道がんなどが含まれます。以下ではこれらのがんについて説明していきます。
鼻腔と咽頭の表面から発生するがんは、上咽頭がんと呼ばれます。20才未満の米国人におけるこの腫瘍の発生率は、約10万人に1人となっています。
上咽頭がんは、エプスタイン・バー・ウイルス(EBV:感染性単球増加症と関連性のあるウイルス)の感染症を伴って発生します。このがんは頸部のリンパ節に転移することが非常に多く、それが契機となって患者さん自身やその親、あるいは医師によって腫瘍の存在が気づかれる場合もあります。腫瘍が鼻や口腔、咽頭まで拡がってくることがあり、そうなるといびきや鼻血、耳管の閉塞、聴力低下などの症状が起きてきます。また頭蓋骨の底部に拡がってくる場合もあり、そうなると脳神経に麻痺が起こって顎がうまく動かせなくなることもあります(開口障害)。骨や肺、肝臓などの遠く離れた部位に転移することもあります。
治療では手術、放射線療法、化学療法の3つを組み合わせた治療法が用いられます。上咽頭がんは診断の時点から頭蓋骨や頸部のリンパ節に拡がっているのが一般的であるため、手術の基本的な目的は、がんに侵されたリンパ節や原発腫瘍の生検を行って適切な診断材料を得ることとなります。研究からは、この腫瘍には化学療法と放射線療法を組み合わせた治療法が最も有効であることが示されています。さらに詳しい情報については、PDQの上咽頭がんの治療に関する要約をご覧ください。
鼻腔神経芽細胞腫(嗅神経芽細胞腫)は、脳の前部にある嗅球(嗅覚をつかさどる器官)に発生する、極めてまれな小さな腫瘍です。この腫瘍のある小児では、診断の時点で既に鼻腔や咽頭まで腫瘍が拡がっている場合がほとんどです。眼球や副鼻腔、前頭葉(脳の前部)などに腫瘍が拡がることもあります。鼻腔神経芽細胞腫は女児よりも男児に多くみられ、通常は青年期に発症します。この腫瘍が体内の離れた部位に転移することはめったにありません。このがんの治療では、手術と放射線療法が用いられるのが通常ですが、場合によっては化学療法も用いられます。その他にも新しい治療法として、内視鏡を用いた副鼻腔の手術と原発腫瘍に対する放射線外科との併用治療が一部で試みられています。
甲状腺(気管のそばに位置する、甲状腺ホルモン[体の成長や代謝の調節に必要なホルモン]を分泌する腺)にできる腫瘍は、甲状腺腺腫と甲状腺がんに分類されます。甲状腺腺腫は、腺の全体または一部に腫れを引き起こす良性(がんではない)の腫瘍であり、頸部の両側面まで拡がって、かなり大きくなることもあります。なかにはホルモンを分泌するものもあります。悪性腫瘍であるがん腫(がん)への形質転換を起こす細胞が出現することもあり、その場合はさらに増殖を続け、頸部のリンパ節や肺などに転移することもあります。
甲状腺がんはまれな腫瘍ですが、ほとんどが女児に発生します。このがんは通常、甲状腺のしこりとして現れてきますが、場合によっては頸部のリンパ節の腫れも伴ってきます。
甲状腺腫瘍の治療では、どちらの種類であっても手術が必要になります。手術では、甲状腺の全体もしくはほぼ全体と付近の頸部リンパ節を摘出するのが通常です。手術後には、残存するがん細胞や甲状腺組織を破壊するために、放射性ヨウ素による治療が施されます。また手術と放射性ヨウ素治療の実施後には、甲状腺ホルモンの不足分を補うために、ホルモン補充療法を実施しなければなりません。肺への転移が起きている可能性もあるため、定期的に検査を受けていく必要もあります。甲状腺がんの患者さんでは、生存の可能性が非常に高く副作用も少ないのが一般的です。甲状腺腫瘍が再び悪化(再発)した場合は、放射性ヨウ素による治療を行うのが通常です。肺に腫瘍が転移している患者さんでも、適切な治療を受ければ余命の短縮を防げる場合もあります。(さらに詳しい情報については、成人の甲状腺がんの治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
小児期や青年期では口腔がんの発生は極めてまれなことです。口腔にできる腫瘍は、そのほとんどが良性の(がんではない)ものです。悪性腫瘍としては、リンパ腫(多くの場合バーキットリンパ腫)と肉腫(軟部組織の腫瘍)が挙げられます。口腔扁平上皮がん(口腔の表面を覆う薄くて平らな細胞から発生するがん)は成人では最も多くみられる口腔がんですが、小児に発生することはめったになく、また青年期(十代)に口腔扁平上皮がんを発症した患者さんには、ファンコニ貧血と呼ばれる疾患が疑われるので、そのスクリーニングを受けてもらう必要があります。小児の口腔がんの治療では、手術、化学療法、放射線療法などが行われます。(さらに詳しい情報については、成人の中咽頭がんの治療と成人の口唇がんおよび口腔がんの治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
唾液腺は、口腔内と咽頭内に存在する、唾液を分泌している器官です。唾液腺の腫瘍の多くは耳下腺に発生します。また唾液腺の腫瘍の約15%は、顎下腺か舌や顎の下にある小唾液腺に発生します。これらの腫瘍の大部分は良性ですが、ごくまれに悪性(がん)である場合もあります。悪性病変としては、腺がん、未分化がん、腺房細胞がん、粘表皮がんなどが挙げられます。これらの腫瘍は、白血病や固形腫瘍の治療として放射線療法を受けた後に発生することがあります。可能な場合は常に、手術による完全切除が行われ、さらに放射線療法や化学療法が追加されます。患者さんの予後(治療の結果)は一般に良好です。(さらに詳しい情報については、成人の唾液腺がんの治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
喉頭での腫瘍の発生は良性と悪性(がん性)ともにまれで、特に悪性腫瘍の発生は極めてまれとなっています。ただしポリープや乳頭腫などの良性腫瘍がある場合に、それに伴って悪性腫瘍が発生してくることがあります。これらの腫瘍が発生すると、嗄声(させい:声のしわがれ)や嚥下困難、頸部リンパ節の腫れなどといった症状が引き起こされてきます。小児の喉頭で最も多く発生する悪性腫瘍は、横紋筋肉腫(筋肉組織の悪性腫瘍)です。喉頭に扁平上皮がんが発生した場合には、手術と放射線療法による治療が行われます。またこの腫瘍に対しては、レーザー手術が第一の治療法となる場合もあります。
喉頭部乳頭腫症は、喉頭の内壁を覆う組織が過剰に増殖してくる良性の疾患です。この疾患はがんではないのですが、治療後に再発を起こすことがあります。この腫瘍のある患者さんでは、声帯上にいぼのような小結節ができてくるために声がしわがれることがあり、またこの腫瘍が肺の中まで拡がったり、喉頭がんに発展したりすることもあります。治療法としてはレーザー手術が挙げられます。(さらに詳しい情報については、成人の喉頭がんの治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
気道には、鼻、咽頭、喉頭、気管、肺が含まれます。気道がんは、特定の染色体異常が原因となって引き起こされることがあります。体を構成する細胞の中には例外なくDNA(染色体の中に保持されている遺伝物質)が存在しており、細胞の外観や働きはこのDNAによって決まってきます。ときに15番染色体のDNAの一部が別の染色体に移動したり、15番染色体が損傷を受けたりすることがありますが、このようなことが起きると、がんが発生しやすくなる場合があります。この種のがんは、気道の一部に発生することもあれば、胸腺や縦隔(左右の肺の間の領域)、膀胱などの体の中心線に沿った領域に発生することもあります。治癒は困難となるのが通常です。
胸部のがんには、乳がん、気管支腺腫、気管支カルチノイド、胸膜肺芽腫、食道腫瘍、胸腺腫、心臓腫瘍、中皮腫などが含まれます。以下ではこれらの胸部のがんについて説明していきます。
小児期に乳房に発生する腫瘍の大部分は良性(がんではない)の線維腺腫で、これは生検を実施するまでもなく組織に明らかな変化を認めることができます。しかしまれに、乳房にできたこの種の腫瘍が突如として悪性腫瘍に変貌し、急速に増殖していくこともあります。そのような腫瘍は葉状腫瘍と呼ばれ、生検の実施か手術による切除が必要になってきます(ただし乳房切除術は必要ありません)。この他の種類の乳がんについても、21歳未満の男女での発生が報告されているものがあります。ホジキンリンパ腫から回復した女性など、何らかのがんの治療として胸部への放射線療法を受けたことのある患者さんでは、生涯にわたって乳がん発生リスクが高くなります。そのため、25歳になった時点か胸部への放射線療法から10年後の時点のどちらか(遅い方でよい)から、胸部X線撮影を受け始める必要があります。小児期または青年期に乳がんを発症した患者さんへの治療法としては、放射線療法、化学療法、手術などがあります。また乳房にできる腫瘍の中には、白血病や横紋筋肉腫、その他の肉腫、リンパ腫(特に患者さんがヒト免疫不全ウイルス[HIV]に感染している場合)などの別の種類のがんが乳房に転移してくることによって発生するものもあります。(さらに詳しい情報については、成人の乳がんの治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
気管支腫瘍(気管や太い気管支[肺内部の大気道のこと]に発生する増殖の遅いがん)の大部分は、小児に発生するカルチノイドと呼ばれる腫瘍です。その症状には咳と喀血(痰に血が混じること)があり、ときには喘鳴などの症状のために喘息と間違われ、結果として診断が遅れる場合もあります。その第一の治療法は、手術を行って、がんに侵されたリンパ節やリンパ管とともに腫瘍を切除することです。小児に発生する気管支腫瘍では、大抵の場合予後は非常に良好で、たとえ付近の領域にがんが拡がっている場合でもそのことに変わりはありません。しかしまれに、カルチノイドが侵攻性の(増殖の速い)がんとして発生する場合もあり、その場合は、診断の時点から既に別の部位に転移している可能性が高くなります。気管支カルチノイドに対しては、転移を証明する証拠がない限りは化学療法も放射線療法も必要ありません。また肺の内側を覆う上皮細胞の層からがんが発生することはめったにありませんが、このようながんが診断された場合には既に進行していることが多くなっています。肺に発生した上皮性がんに対する治療の成否は、顕微鏡で観察したときのがん細胞の外観と、がんの病期に左右されます。
胸膜肺芽腫は、通常肺の外側を覆う組織の下から発生する、まれな腫瘍です。この腫瘍は、手術で切除しても再発や転移を起こすことがあります。化学療法に反応するということ(効き目があるということ)が報告されています。手術による腫瘍の切除が不可能な場合は、放射線療法が行われることもあります。この腫瘍を発症した若年の患者さんでは、その多くに、近親者内でのがんの家族歴が認められます。
食道(咽頭から胃の間をつなぐ筋肉の管で、食べ物の通り道となる)でのがんの発生は、小児期にはまれなことです。その症状は、物を飲み込む動作の障害に関係するもので、その結果として体重減少などが起きてきます。食道がんの治療法には放射線療法と化学療法があります。このがんは手術による完全切除が非常に難しいため、一般的に予後は良くありません。(さらに詳しい情報については、成人の食道がんの治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
胸腺(胸部の胸骨の奥に位置する臓器)に発生したがんでも、この臓器を覆う上皮細胞の中にがん性の変化が認められない限りは、胸腺腫(がん)や胸腺がんとはみなされません。胸腺腫という用語は通常、明らかな変化が認められない上皮細胞のがんに対して用いられます。一方の胸腺がんでは、上皮細胞中に明確な変化が認められます。胸腺に発生することのある腫瘍としては、この他にもリンパ腫(リンパ系の細胞から発生するがん)や胚細胞腫瘍(精子や卵子のもととなる細胞から発生する腫瘍)がありますが、これらの腫瘍は胸腺腫や胸腺がんとはまったく別のものです。
胸腺腫と胸腺がんは、成人においても小児においてもまれな腫瘍です。胸腺腫には、重症筋無力症や多発性筋炎、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ(リウマチ様関節炎)、甲状腺炎、純赤血球無形成症などといった、様々な疾患や症候群との間に関連性が認められています。また甲状腺機能亢進症やアジソン病、汎下垂体機能低下症などの内分泌(ホルモン)障害も、胸腺腫や胸腺がんと診断された患者さんに併発する場合があります。
胸腺のがんには、特定の染色体異常が原因で発生するものもあります。体を構成する細胞の中には例外なくDNA(染色体の中に保持されている遺伝物質)が存在しており、細胞の外観や働きはこのDNAによって決まってきます。ときに15番染色体のDNAの一部が別の染色体に移動したり、15番染色体が損傷を受けたりすることがありますが、このようなことが起きると、がんが発生しやすくなる場合があります。この種のがんは、胸腺に発生することもあれば、気道の一部や縦隔(左右の肺の間の領域)、膀胱などの、体の中心線に沿った領域に発生することもあります。治癒は困難となるのが通常です。
胸腺腫と胸腺がんは通常、胸部の前の方に位置していて、大抵は通常の胸部X線検査で発見されます。その症状としては咳や嚥下困難、胸部絞扼感(胸が締めつけられる感覚)、胸痛、息切れなどが挙げられますが、そうした特徴的な症状が現れない場合もあります。これらの腫瘍は一般に増殖のペースは遅いのですが、浸潤性の場合もあり、また遠く離れた臓器やリンパ節へと転移を起こす場合もあります。手術を行う場合は、完全な切除を目指します。浸潤性胸腺腫や胸腺がんの患者さんの場合は、手術を実施したかどうかには関係なく、放射線療法の実施が必要となります。化学療法は通常、放射線療法やステロイド薬では効き目のみられない進行期の患者さんのみに用いられます。周辺への腫瘍の浸潤がみられない患者さんでは顕著に高い生存率が報告されていますが、浸潤性胸腺腫や胸腺がんの患者さんでは予後が良くないのが通常です。(さらに詳しい情報については、成人の胸腺腫および胸腺がんの治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
心臓の原発腫瘍としては、良性(非がん性)および悪性(がん性)の奇形種(複数の種類の組織が混在している腫瘍)、横紋筋肉腫(筋肉組織の腫瘍)、血管種(血管組織から成る通常は良性の腫瘍)、軟骨肉腫(軟骨を形成する、がんの一種)などが挙げられます。その症状としては、心拍リズムの異常や心拡大、心嚢内での液体の貯留、うっ血性心不全などがあります。治療を成功させるためには、手術(移植を含む場合もある)とがんの種類に合わせた化学療法が必要になります。心筋の良性腫瘍(横紋筋腫)の場合は、自然に小さくなって消滅していくのが通常です。
中皮腫は、肺や心臓、腹部臓器などの外側を覆う組織から発生するがんですが、小児では極めてまれにしか発生しません。この腫瘍は、内部の組織には浸潤せずに臓器の表面上のみを拡がっていく場合もあれば、付近のリンパ節や遠く離れたリンパ節まで拡がっていく場合もあります。中皮腫は、何らかのがんに対する治療(特に放射線療法)の終了後に発生してくることがあります。成人では、断熱建材として使用されたアスベストへの暴露との関連性が認められています。しかし発がんに必要な暴露量は不明で、アスベストを吸っている小児のリスクに関してはまったく情報がありません。(さらに詳しい情報については、成人の悪性中皮腫の治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
腹部のがんには、副腎皮質のがん、腎がん、胃がん、膵がん、大腸がん、肺または腸のカルチノイド、多発性内分泌腫瘍症候群などが含まれます。以下ではこれらの腹部のがんについて説明していきます。
副腎皮質とは副腎の外側の層のことです。副腎とは腎臓の上端部に位置する左右一対の臓器のことで、その機能はグルココルチコイドやエピネフリンなどのホルモンを分泌することです。この部位に発生するがんは、がん腫(副腎皮質がん)と腺腫に分類されます。一般に腺腫が良性であるのに対して、副腎皮質がんではホルモンが過剰に分泌されることが多く、性別に関係なく患者さんに男性的な特徴が現れてくる場合があります。副腎皮質がんの小児には、しばしばリーフラウメニ症候群と呼ばれる遺伝性の疾患が認められ、この症候群のある家系では乳がんや横紋筋肉腫、骨肉腫(骨のがん)などのがんが多発していきます。
これらの腫瘍は腎臓や肺、骨などに転移することがあります。手術による腫瘍の切除が試みられるべきですが、広範囲に腫瘍が拡がっている場合は必ずしも可能ではありません。さらに腫瘍による男性化の作用を抑えるための追加的な治療法として、人工ホルモン剤を使用することもあります。一般に、腫瘍が小さく手術で完全切除できた場合の予後は良好ですが、原発腫瘍が大きい患者さんや診断時から既に転移巣が認められる患者さんでは、予後は良くありません。副腎皮質腫瘍の小児では、腫瘍の病期が回復の可能性を左右する重要な要素となります。再発してきた腫瘍や下大静脈(心臓に血液を送り込んでいる大きな静脈)に拡がった腫瘍に対しては、可能な限り手術を行っていく必要があります。(さらに詳しい情報については、成人の副腎皮質がんの治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
腎細胞がん(腎臓のがん)は小児ではまれにしか発生しません。小児における発生率は、およそ200万人に4人となっています。腎細胞がんは、フォン・ヒッペル-リンダウ病という遺伝性疾患に伴って発生することがあります。腎細胞がんはまた、腎臓に良性(非がん性)の脂肪性嚢胞が生じる遺伝性疾患である結節硬化症にも合併することがあります。さらに鎌状赤血球貧血や神経芽細胞腫に合併することもあります。腎細胞がんは通常、腹部の腫瘤として現れ、腹部の不快感や腹痛、血尿がみられることもあります。この腫瘍は肺、骨、肝臓、リンパ節に拡がることがあり、診断がつく前から既に拡がっている場合も多くみられます。第一の治療法は、腫瘍のある方の腎臓とその付近のリンパ節を手術で切除することです。転移巣(体の別の部位に転移したがん)に対する治療法としては、現時点で満足のいくものはありませんが、通常はインターフェロン-αやインターロイキン2などの免疫系調節薬が使用されています。まれに、原発腫瘍の切除に伴って肺の転移巣が自然消滅することがあります。 成人の腎細胞がんやその他の小児腎がんに関するさらに詳しい情報については、以下のPDQの要約をご覧ください:
胃がんの発生頻度と死亡率は、冷蔵庫などの食品保存法の導入に伴い、この50年間で世界的に減少してきました。胃がんの症状としては、食欲不振を伴うことのある上腹部の鈍痛と、体重の減少が挙げられます。患者さんの多くが貧血になりますが、そうでない場合は転移が起きるまで何の症状も現れてこないこともあります。その他の症状としては、吐き気、嘔吐、排便機能の変化、食欲不振と虚弱、ヘリコバクターピロリ菌感染症などがあります。
治療には手術が必要になります。手術はがん組織を完全に切除できない患者さんには、化学療法を組み合わせた放射線療法が行われることがあります。予後は、診断時のがんの拡がりの程度と、患者さんの臨床状態に合った治療がうまく行われるかどうかによって変わってきます。小児期では胃がんの発生が非常にまれであることから、小児での治療成績に関する情報はほとんど存在しません。(さらに詳しい情報については、成人の胃がんの治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
膵臓(膵液を生産してホルモンを分泌する腹部にある腺)での腫瘍の発生は、小児期や青年期にはまれなことです。この一般的なカテゴリーに分類される腫瘍は、膵臓のどの部分にも発生します。膵臓に発生する腫瘍の大部分はホルモンを分泌しない腫瘍ですが、なかにはインスリンを分泌する腫瘍が存在し、脱力感や疲労、低血糖、昏睡などといった症状を引き起こすことがあります。腫瘍によって膵島細胞(膵臓中に存在しホルモンを生産する細胞)の正常な機能が妨げられると、水様の重度の下痢や電解質バランスの異常をきたすようになります。ときとして、膵頭部に閉塞が起きることがあり、その場合には黄疸や消化管出血も発生してきます。
その治療には、膵臓と十二指腸の切除や膵臓の部分切除など様々な手術法が用いられます。放射線療法については、小児の患者さんに対する有効性はまだ明らかになっていません。 限局性膵がんと転移性膵がんには、成功が報告された症例の数は少ないものの、化学療法が有用となる場合があります。奏功率と生存率は一般に良くありません。(さらに詳しい情報については、成人の膵がんの治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
大腸がんの発生は小児期にはまれなことで、米国の20歳未満の若年者における大腸がんの年間発症割合は、およそ100万人に1人にしかすぎません。小児では、結腸腫瘍の半数以上は結腸のうちでも体の右側にある部分に発生し、体の左側の部分に発生することが多い成人の結腸腫瘍とは対照的となっています。小児に発生する結腸がんには、家族性大腸がん症候群(遺伝性の疾患)が関与している場合が多くなっています。腸ポリープの家族歴のある人では、腺腫性ポリープ(良性腫瘍)が多数発生してくることがあり、そのため大腸がんの発生リスクも高くなります。ただし若年性ポリープと呼ばれるものについては、がんの発生率や発がんリスクの上昇との間に関連性は認められていません。
大腸がんは通常、腫瘍の存在する部位に応じた症状を引き起こします。直腸か結腸の下部に腫瘍が存在する場合は、排便機能に変化が起きてきます。結腸のうち体の右側にある部分に腫瘍が存在する場合は、程度としては比較的軽いものの、腹部のしこりや体重減少、食欲減退、血便などの症状が起きてきます。腫瘍によって大腸の一部が完全に塞がれているような場合(完全閉塞)は、腸壁に穴が開いて腹腔内に腫瘍細胞が撒き散らされる危険性もあります。
小児の患者さんに大腸がんが診断されることはめったにありませんが、はっきりしない胃腸症状があるならば大腸がんの可能性も検討するという姿勢が、診察する医師には必要となります。ほとんどの患者さんに転移巣(体の別の部位に拡がったがんのこと)が認められますが、それは肉眼でも確認できる大きな腫瘍の場合もあれば、顕微鏡的な(顕微鏡でしか確認できない)小さな腫瘍の場合もあり、また発見される部位としてはリンパ節の中、腸壁の表面上、腹部の別の臓器などが考えられます。外科医としては手術による完全切除が第一目標となりますが、ほとんどの場合それは不可能で、がんが広範囲に転移している患者さんに対しては、腫瘍の大部分を切除したとしても、そうする意義は薄いといえるでしょう。顕微鏡的な転移巣が認められる患者さんでは、肉眼で確認できる転移巣も存在しているのが一般的で、また診断時から既に転移巣が認められる患者さんでは、長期の生存は期待できません。
現在用いられている治療法には、直腸や結腸下部の腫瘍に対する放射線療法に化学療法を組み合わせるというものがあります。(さらに詳しい情報については、成人の結腸がんの治療と成人の直腸がんの治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
カルチノイドは、肺の内側や大腸あるいは小腸に発生する腫瘍で、がんではない場合もあります。肺に病変ができる場合は、そのほとんどががんではありません。しかし大腸や胃に転移したカルチノイドの治療はより複雑で、大腸がんの場合と同様の治療が必要になります。(さらに詳しい情報については、成人の消化管カルチノイドの治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
消化管間質腫瘍(GIST)は、通常、消化管の内壁の細胞から発生してきます。がんである場合もあれば、そうではない場合もあります。この腫瘍は、通常は40歳以上の成人に発生しますが、小児に発生することもあります。10歳未満の小児では、男児よりも女児に多くみられます。消化管間質腫瘍の症状としては、消化管出血によって起こる貧血が挙げられます。小児の消化管間質腫瘍に対する治療法は、成人の場合とは異なります。小児の場合は、成人の消化管間質腫瘍と違って、その原因がDNAの変化ではないため、メシル酸イマチニブ(グリベック:このDNAの変化による影響を抑え込む、がんの治療薬)による治療では効果がありません。しかし青年や若年成人の患者さんでは、このDNAの変化が認められる人もいて、その場合はメシル酸イマニチブによる治療が可能になります。そのためこれらの年齢層の患者さんには、腫瘍内でのDNAの変化の有無を調べるために特別な検査を受けてもらう必要があります。
生殖器系/泌尿器系の腫瘍としては、膀胱がんと卵巣がんが挙げられます。以下ではこれらのがんについて説明していきます。
膀胱がんの発生は小児では極めてまれなことです。膀胱に発生するがんの中で最も多くみられるのは移行上皮がんで、このがんは一般に血尿を引き起こします。膀胱がんの診断と治療の方法は、小児、青年、成人のいずれにおいても全く変わりありません。この腫瘍を発症した青年の患者さんでは、多くの場合、その他のがんについても発生リスクが高くなります。また青年期には、他の小児腫瘍や白血病の治療に用いられる一部の化学療法薬による晩期障害として、膀胱がんが発生する場合もあります。(さらに詳しい情報については、成人の膀胱がんの治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
小児に発生する卵巣腫瘍の大部分は良性(がんではない)のものです。卵巣に発生するがんの中で最も多くみられるのは、胚細胞(精子や卵子のもととなる細胞)由来のがんで、この種の腫瘍は成人よりも小児に多くみられます。卵巣がんの患者さんによくみられる症状としては、月経時の痛みと腹痛が挙げられます。治療法は病期によって異なり、手術や放射線療法、化学療法などが用いられます。(さらに詳しい情報については、頭蓋外胚細胞腫瘍(小児)の治療、上皮性卵巣がんの治療、卵巣胚細胞腫瘍の治療、および卵巣低悪性度腫瘍の治療に関するPDQの要約をご覧ください。)
子宮頸部や膣でのがんの発生は、小児や青年では非常にまれなことです。子宮頸がんあるいは膣がんと診断される若年の患者さんでは、ほとんどの場合、出生前の母体内でジエチルスチルベストロール(DES)という薬(母親に投与されたもの)に曝された経歴が認められます。ジエチルスチルベストロールは、1945年から1970年までの間に、流産の予防薬として妊娠中の女性に処方されていました。子宮頸がんや膣がんの症状として最もよくみられるのは膣出血です。その治療には、まず手術を行ってから、放射線療法と可能ならば化学療法を追加していくという方法が用いられます。