原文更新日 : 2008-03-13
翻訳更新日 : 2008-10-30
がんおよびがん治療に伴う口腔合併症に関する患者さん向けのこの要約は、がんの専門家によって医療従事者向けに作成された要約を編集したものです。本稿を含め、がんの治療、スクリーニング、予防、支持療法、および現在米国で行われている臨床試験についての正確で信頼できる情報が米国国立がん研究所(NCI)より提供されています。がんの患者さん、特に頭頸部がんの患者さんでは、口腔合併症の発生が多くみられます。この要約では、化学療法と放射線療法によって引き起こされる口腔合併症と、その予防法および治療法について記載されています。
化学療法や頭頸部に対する放射線療法を受けている患者さんでは、口腔合併症の発生がよくみられます。
口腔は、様々な理由から、化学療法や放射線療法の副作用が現れやすい部位となっています。
予防対策によって口腔合併症の重症化を抑えられる可能性があります。
口腔内に生じた副作用のために、がんの治療を続けることが難しくなる場合があります。ときには治療を中断せざるをえなくなる場合もあります。口腔合併症の予防や管理をすることには、がん治療の効果を向上させることと、患者さんの生活の質を高めることという2つのメリットがあります。
がん治療による口腔合併症の予防と治療では、リスクのある患者さんの特定、がん治療開始前からの予防対策の実施、合併症発見後の可能な限りの早急な治療開始などが重要となります。
放射線療法と化学療法では共通の口腔副作用が生じることがありますが、具体的には以下のようなものがあります:
合併症は、抗がん治療から直接的に発生するものと、治療から間接的に発生するものがあります。
化学療法や放射線療法に伴う口腔合併症は、それぞれの治療が直接的な原因となる場合もあれば、治療の副作用によって間接的に引き起こされる場合もあります。放射線療法では、口腔組織や唾液腺、骨などに、放射線の照射による直接的な損傷が生じてきます。そうして治療部位には瘢痕や萎縮が生じることがあります。
治癒の遅れや感染症は、がん治療に伴う間接的な合併症といえます。化学療法と放射線療法のどちらについても、細胞の再生能力に悪影響を及ぼすことがあり、そうした場合は口腔内の治癒が遅れていくことになります。化学療法では、白血球の数が減って免疫系(感染や疾患から体を防衛するための臓器や細胞のこと)の機能が弱まるために、感染症が発生しやすくなってしまいます。
合併症は急性の場合と慢性の場合があります。
急性合併症とはがん治療の最中に発生してくるものをいいます。化学療法による合併症は、急性で治療終了後には完治するのが通常です。
慢性合併症とは、治療終了後の数カ月から数年の間続く、もしくは同程度の期間が経過してから発生してくる合併症のことです。放射線療法では、急性の合併症が発生する場合もありますが、組織に永久に治らない損傷を与える結果として生涯にわたる口腔合併症のリスクも生じてきます。一般に頭頸部に対する放射線療法では、終了後も以下のような慢性の合併症が続いていきます:
侵襲的な歯科処置を受けることで、さらなる問題が引き起こされることがあります。そのため放射線療法を受けたことのある患者さんの場合、歯科治療を受ける際にはその合併症の状態をまず考慮する必要があります。
抗がん治療の開始前に口腔内の異常を発見し治療しておくことで、口腔合併症の発生や重症化を予防することができます。
頭頸部がんの治療中に発生する口腔合併症については、がん治療の開始前に積極的な予防対策を取ることで、その程度を軽減することが可能になります。正しく対策を取れば、口腔と歯を治療に耐えうるだけの最善の状態に整えられます。
予防対策には以下のようなものがあります:
がん治療を行う医療チームに患者さんのかかりつけの歯科医師が参加することが望まれます。ここでは化学療法や放射線療法の副作用に精通した歯科医師を選ぶことが重要になります。がん治療開始の1カ月前まえまでに口腔衛生についての評価を行っておけば、通常は、歯科処置で生じる損傷が治癒するのに十分な時間が確保されます。抗がん治療の最中に侵襲的な歯科治療を行う必要が出てこないようにするため、歯科医師は感染症や虫歯のリスクがある歯を特定しその治療を行います。頭頸部に対する放射線療法の合併症としてはドライマウスがよくみられますが、歯科医師はこれを重症化させないための適切な予防的ケアも行います。
予防のための口腔衛生検査では、以下のような点について調べていきます:
大量化学療法や幹細胞移植、放射線療法を受ける患者さんでは、治療開始前に適切な口腔ケアの計画を立てておく必要があります。
口腔ケアの計画とは、がん治療の最中に合併症の原因となりうる口腔疾患を発見して治療を行っておき、さらに治療中と回復期を通じた口腔ケアの継続を可能にすることをその目的とするものです。移植では、その段階ごとに様々な口腔合併症が生じてきます。そのような副作用の重症化を予防または緩和するために、前もって処置を講じておくべきでしょう。
放射線療法中にどのような口腔ケアを行うかは、患者さん個々のニーズ;放射線の照射量、照射部位、治療期間;発生する合併症の性質などに応じて異なってきます。
頭頸部がんの患者さんでは、喫煙をやめることが重要になります。
喫煙を続けた場合には、回復が遅れ、さらに頭頸部がんの再発リスクや二次がんの発生リスクが高まってしまいます。(さらに詳しい情報については、PDQのがん患者における禁煙と継続するリスクに関する要約をご覧ください。)
がん治療の実施中と実施後には、歯の衛生状態を良好に保つことで、虫歯、口内炎、感染症などの合併症を減らすことができます。そのためには食事の後に口腔内を清潔にすることが重要です。化学療法や放射線療法の実施中に行うべき日常的な口腔ケアの指針は以下のようになります:
歯磨き粘膜炎とは口腔内の粘膜に起きる炎症のことです。
「口腔粘膜炎」と「口内炎」という用語は、しばしば同じような意味で用いられていますが、厳密にはそれぞれ別の状態を指す用語です。
粘膜炎は放射線療法でも化学療法でも起こりえます。化学療法を受けている患者さんの場合、感染が起きなければ粘膜炎は通常2~4週間で自然に治っていきます。放射線療法に伴う粘膜炎は、治療期間の長さによって異なってきますが、6~8週間続くのが通常です。
以下のような症状が発生してきます:
フルオロウラシルの投与を受けている患者さんでは、氷を30分間口に含むことが粘膜炎の発生予防に有用となります。 大量化学療法と骨髄移植を受けている患者さんでは、粘膜炎の発生や長期化を予防するために薬物投与が行われる場合があります。
化学療法や放射線療法の実施中における粘膜炎のケアでは、口腔内を清潔に保つこととその症状を緩和することに重点が置かれます。
粘膜炎に対しては、放射線療法が原因の場合でも化学療法が原因の場合でも、概ね同じような治療法が用いられます。粘膜炎が発生すると、その重症度と患者さんの白血球数を考慮して適切な治療法を選択します。化学療法、幹細胞移植、放射線療法の実施中に生じた粘膜炎の治療は、以下のような指針に従って行われます:
口腔洗浄
痛みの緩和
口腔粘膜が損傷を受けたり免疫系の機能が弱まったりすると、感染症が発生しやすくなってきます。
口腔粘膜炎が起きると、口腔粘膜が破壊されるために細菌やウイルスが血流に入り込みやすくなってしまいます。また化学療法によって免疫系の機能が弱まってくると、口腔内の善玉菌でさえ、病院などに存在する病原体と同じように感染症を引き起こすようになってしまいます。さらに白血球数が減少してくると、感染症が発生しやすくなり、より重症化しやすくなります。そのため慢性的に白血球数が低くなっている患者さんでは、重篤な感染症を起こすリスクが高くなります。また頭頸部に対する放射線療法を受けている患者さんではドライマウスの発生がよくみられますが、これも口腔内の感染症リスクを高める要因となっています。しかし化学療法や放射線療法の実施中でも、予防的な歯科治療を行うことで口腔、歯、歯肉に起こる感染症のリスクを低減することができます。
以下のような種類の感染症が発生します:
細菌感染症
大量化学療法を受けている歯周病の患者さんにおける細菌感染症の治療法には、以下のようなものがあります:
放射線療法中に細菌感染症が発生した場合には、抗生物質で治療するのが通常です。
真菌感染症
通常口腔内には、体表面や体内にも存在する真菌が何の問題も引き起こすことなく生息しています。しかしこの真菌が増えすぎてくると、問題が発生して治療が必要になってくることがあります。
化学療法の実施中で白血球数が低くなった患者さんには、抗生物質とステロイド薬がしばしば使用されます。しかしこれらの薬を使用すると、口腔内の細菌バランスを変化させる結果、真菌の過剰増殖が起きやすくなってしまいます。真菌感染症は、放射線療法を受けている患者さんでもよくみられます。
真菌感染症の予防のために薬が使用されることがあります。口腔内のみに発生している表在性の真菌感染症に対する治療では、口腔洗浄液や、抗真菌薬を含有するトローチなどが用いられます。これらは義歯(入れ歯)を外し、歯を磨き、口腔を洗浄した上で使用します。義歯や歯科装具の洗浄と口腔内のすすぎには、抗菌作用のある洗浄液を使用する必要があります。
食道や腸などに発生した深部真菌感染症に対しては、薬の内服または注射による治療が行われます。
ウイルス感染症
化学療法を受けている患者さん、特に免疫系の機能が低下している患者さんでは、軽度から重度のウイルス感染症のリスクが高くなります。こうした感染症の早期発見と早期治療が重要になります。ウイルス感染症の予防や治療のために薬が使用されることもあります。
ヘルペスウイルスに感染している患者さんが放射線療法を受けると、この感染症が再発してしまう恐れがあります。
化学療法の実施中には、抗がん剤が原因で血液の凝固に問題が生じる結果、出血が起きてくる場合があります。
歯周病にかかっている場合、その箇所で原因もなく出血が起こったり、食事や歯磨き、歯間掃除などの刺激によって出血が起こったりします。出血は軽度(小さな赤い斑点が口唇、軟口蓋、口腔底に出現する)の場合もあれば重度の場合もあり、特に歯と歯ぐきの境界部分や口腔内の潰瘍部分から発生してきます。また血球数が一定値を下回ってくると、歯ぐきから血が染み出てくることがあります。
入念な観察を行っていけば、血球数が低下している期間にも大半の患者さんが歯磨きと歯間掃除を安全に行えるようになります。
定期的な口腔ケアを継続して行っていくことで、出血を悪化させるおそれのある感染症を予防することができます。血球数が低下している患者さんに対してはさらに、出血を抑える方法や口腔内を安全に洗浄する方法について歯科医師や医師が指導を行っていくことも可能です。
化学療法の実施中に起きた出血の治療法には、以下のようなものがあります:
ドライマウス(口腔乾燥)は、唾液腺からの唾液の分泌量が減少することによって発生してきます。
唾液は味わったり、飲み込んだり、声を出したりするのに必要です。唾液はさらに、酸を中和して歯と歯ぐきを浄化することにより感染や虫歯を防ぐという役割も果たしています。放射線療法では唾液腺が損傷を受けることがあり、そうなると唾液の分泌量が不足してきます。ドライマウス(口腔乾燥)が生じると、患者さんの生活の質(QOL)が損なわれます。口腔内の自浄作用が低下します。さらに口腔内の酸が中和されなくなり、歯からミネラル分が失われていきます。これにより虫歯や歯周病が発生しやすくなります。さらに、特定の化学療法薬が単独または併用で投与されることで唾液腺に損傷が生じる場合があるという研究結果も存在します。ドライマウスの症状には以下のものがあります:
放射線療法では、治療終了後も唾液腺が完全に回復しない場合があります。
唾液の分泌量は、頭頸部の放射線療法の開始後1週間以内に落ち込み、治療の進行に伴ってさらに低下し続けます。ドライマウスの重症度は、放射線の照射量と照射を受けた腺の数に左右されます。頬の上部の耳の近くのにある唾液腺は、他の唾液腺よりも放射線の影響を受けやすくなっています。
唾液腺は放射線療法終了後の最初の1年間で部分的には回復しますが、特に唾液腺が放射線の照射を直接受けた場合などは、完全な回復が望めない場合が多くみられます。一方で直接の照射を受けなかった唾液腺が、破壊された唾液腺からの唾液の分泌を補うために活発に働くようになる場合もあります。
口腔衛生に注意することで、ドライマウスが原因で起こる口内炎や歯周病、虫歯などを予防することができます。
ドライマウスには、以下の指針に従って対応します:
歯科医師が行える治療法には以下のようなものがあります:
ドライマウスや口腔内細菌のバランスの乱れが起きると、虫歯のリスクが高まります。口腔衛生に細心の注意を払い(日常の口腔ケアのセクションをご覧ください)、さらに歯科医師によるケアを定期的に受けることが、虫歯の予防につながります。
化学療法や放射線療法の実施中には、味覚の変化がよく起こってきます。
味覚の変化(味覚障害)は、化学療法や頭頸部に対する放射線療法の副作用としてよくみられる症状です。味をまったく感じなくなる場合もあれば、治療開始前とは味の感じ方が変わってしまう場合もあります。このような味覚の変化は、味蕾の損傷やドライマウス、感染症、歯科的問題などが原因となって生じてきます。化学療法を受けている患者さんでは、口腔内に薬剤が拡がることによって不快な味を感じることがあります。放射線療法では、甘味、酸味、苦味、塩味に対する味覚の変化が起こってきます。
化学療法を受ける患者さんの大部分と放射線療法を受ける患者さんの一部では、治療終了後数カ月が経過すれば味覚は正常な状態まで回復します。しかし放射線療法では、多くの患者さんで味覚障害が永続的なものとなってしまいます。それでもなかには、放射線療法の終了後6~8週間以上が経過すると味蕾が正常な状態まで回復してくる患者さんもいます。患者さんによっては、硫酸亜鉛の栄養補助剤によってその回復が促進される場合もあります。
大量化学療法や放射線療法を受けている患者さんでは、がん自体やその治療に伴って疲労(活力の低下)を経験することがしばしばあります。なかには不眠を抱える患者さんもいます。この疲労感のために日常の口腔ケアが行えなくなる結果、口腔内の潰瘍や感染症、痛みなどのリスクがさらに高まってしまう場合があります。(さらに詳しい情報については、PDQの疲労に関する要約をご覧ください。)
食欲の喪失が原因で栄養失調に陥ってしまうことがあります。
頭頸部がんの治療を受けている患者さんでは、栄養失調に陥るリスクが高くなります。がんによる症状、診断時以前の不良な食生活、さらに手術、放射線療法、化学療法による合併症などが、栄養不足につながる要因となります。患者さんは吐き気や嘔吐、嚥下障害、口内炎、ドライマウスなどが原因で食欲を失ってしまいます。食事によって不快感や痛みが生じてくる場合には、生活の質と栄養面の状態がともに低下してしまいます。がんの患者さんが必要な栄養量を確保できるようにするためには、以下のような方策が有用となります:
治療中また治療後に栄養カウンセリングを受けることも有用となります。
栄養支援の方法には流動食と経腸栄養があります。
放射線療法の単独での治療を受けている頭頸部がんの患者さんの多くは、軟らかいものは食べることができます。しかし治療が進むにつれて、患者さんの大半が高カロリー高蛋白の液体栄養剤を用いた流動食を取り入れるか、あるいはそちらに完全に切り替えてしまいます。患者さんによっては、必要な栄養摂取量を確保するために経管経腸栄養が必要となる場合もあります。化学療法と頭頸部に対する放射線療法を同時に受けている患者さんでは、ほぼ例外なく、3~4週間のうちに経腸栄養による支援が必要となってきます。体重減少が起こる前の治療開始の時点から経腸栄養を開始することで有益な結果がもたらされるということが、複数の研究から示されています。
通常の経口食の再開は、治療終了後の照射部位の治癒が完了してからとなります。通常食の再開までには医療チームによるアプローチがしばしば必要となりますが、そのチームには、固形食への患者さんの再適応を容易にするために言語療法士が参加することになります。経管栄養の方は、経口食からの栄養摂取量が増えてくるにしたがって徐々に量を減らしていき、経口食での栄養摂取が十分な量に達した時点で終了とします。固形食の再開については大多数の患者さんがそれを達成できる一方で、味覚の変化やドライマウス、嚥下障害などの合併症については、多くの患者さんが抱え続けていくことになります。そしてこれらの合併症により、必要な栄養摂取量の確保や生活の質の維持に支障が生じてくる場合もあります。
一部の抗がん剤により神経が損傷を受け、このことが原因で口腔内に痛みが生じてくる場合があります。
痛みの原因が抗がん剤の場合は、その使用を中止することで痛みも治まるのが通常です。がんの治療中に生じる口腔内の痛みは、その原因が多岐にわたることから、慎重に診断することが重要になります。その診断では、病歴聴取、身体診察、歯科診察、歯のX線検査などが行われます。
化学療法の終了後、数週間から数カ月経過した後に、歯の過敏症状が現れてくることがあります。その場合はフッ素治療の実施やフッ素入り歯磨き粉の使用によって、その不快感を和らげることができます。
歯ぎしりやストレスが原因で歯や顎の筋肉に痛みが生じてくることがあります。
歯ぎしりや歯を食いしばるくせがある患者さんでは歯や顎の筋肉に痛みが生じることがあり、ストレスや不眠がその主な原因となっています。その治療法には以下のようなものがあります:
放射線療法による長期的な合併症のひとつに、皮膚や筋肉に発生する良性腫瘍があります。このような腫瘍によって、口や顎を普通に動かすことが難しくなってしまう場合があります。また口腔手術の影響によって顎の動きに支障が出てくる場合もあります。顎のこわばりへの対処方法には、以下のようなものがあります:
放射線療法では、治療部位の組織や骨が萎縮してしまう場合があります。組織の壊死が起こると、口腔内の軟部組織に潰瘍が形成され増大していく結果、痛みや感覚の喪失が生じてくることがあります。さらに感染症のリスクも生じてきます。骨組織が失われれば骨折の危険性が生じてきます。こうした組織や骨の喪失については、予防的なケアによってその程度を軽減することが可能です。
組織および骨の喪失に対する治療法には、以下のようなものがあります:
(口内炎、ドライマウス、味覚の変化のケアに関するさらに詳しい情報については、がん医療における栄養をご覧ください。)
移植を受けた患者さんには移植片対宿主病のリスクが生じてきます。
移植片対宿主病(GVHD)とは、移植された骨髄や幹細胞が患者さんの組織に対して異物反応を引き起こす疾患です。口腔に起きるGVHDの症状には、以下のようなものがあります:
口腔のGVHDの診断には、口腔粘膜と唾液腺の生検が必要となる場合があります。 口腔のGVHDの治療法には以下のようなものがあります:
大量化学療法や幹細胞移植の実施中には、義歯や歯列矯正装置、口腔器具に特別なケアが必要となります。
大量化学療法や幹細胞移植の実施中の、義歯、歯列矯正装置、その他の口腔器具のケアと使用については、以下の指針に従うとよいでしょう:
移植を受けた患者さんへの歯科治療は、免疫系の機能が正常レベルに回復するまで延期されることになるでしょう。
移植を受けた患者さんでは、歯石除去や研磨などの定期的に行う歯科治療は免疫系の機能が正常レベルに回復するまで控えておくべきです。移植後の少なくとも1年間は慎重になっておくべきでしょう。
化学療法、移植、放射線療法のいずれかによってがんから回復した人では、後になってから二次がんを発症するリスクが高くなります。そのなかでも口腔扁平上皮がんは、移植を受けた患者さんに発生する二次がんのなかで最も多くみられるものです。唇と舌が最も発生しやすい部位となっています。
ビスフォスフォネート薬は、骨に関する副作用の治療のために一部のがんの患者さんに使用されている薬です。
ビスフォスフォネート薬は、がんが骨に転移した患者さんに投与される薬です。痛みの軽減や骨折リスクの低減を目的として使用されます。(詳しい情報については、PDQの疲労に関する要約をご覧ください。) ビスフォスフォネート薬はまた、高カルシウム血症(血液中のカルシウムの量が過剰になった状態)の治療にも使用されます。がん細胞には、骨から血流へのカルシウムの吸収を促す物質を分泌するものがあります。(詳しい情報については、PDQの高カルシウム血症に関する要約をご覧ください。)
一部のビスフォスフォネート薬には、骨喪失のリスク増大との関連性が示されています。
一部のビスフォスフォネート薬には、口腔内の骨(通常は顎骨)の崩壊との関連性が示されています。これはビスフォスフォネート関連骨壊死(BON)と呼ばれています。ビスフォスフォネートの静脈内投与を受けている患者さんでより多くみられますが、経口投与を受けている患者さんでも時折発生します。その症状としては口腔内の痛みと炎症病変がみられ、その部分では損傷を受けた骨が露出する場合もあります。ビスフォスフォネートを使用している患者さんは数多くいますが、BONを発症する人はごくわずかです。
BONは口腔外科手術の実施後に最も多くみられます。
BONは、抜歯などの歯科手技が実施された後に最も多くみられます。その領域は手技の後も数週間治癒しません。治療を行わない場合は、骨喪失の起きた領域と病変部が大きく拡大するとともに感染を起こす恐れがあります。こうした患者さんでは感覚異常、すなわち、明確な身体的原因がなく生じる熱感や刺痛などの皮膚の感覚異常が発生することもあります。また重度のBONのある患者さんでは、病院での治療や顎骨の一部を切除する手術が必要になる場合もあります。
歯科手技を受けたことのない患者さんでは、BONの発生は多くありません。
BONの治療には通常、感染に対する治療と歯科衛生の改善が含まれます。
BONの治療法には以下のようなものがあります:
BONに対する治用を行っている間は、食後の歯磨きと歯間掃除を継続して口腔内を十分に清潔に保っておく必要があります。またBONの治療中は、タバコの使用(喫煙)を控えるように忠告されることがあります。
ビスフォスフォネート薬の使用の中止については、患者さんの全般的な健康状態に与える影響を考慮して、患者さんと医師が共同で決定すべき事項となります。
新たな種類のビスフォスフォネート薬が現在臨床試験で研究されています。ビスフォスフォネート薬の使用を中止した上で高圧酸素療法(HBO)を実施する方法が、現在BONの治療法として研究されています。タバコの使用によってBONのリスクが増大するかどうかは不明です。
口腔合併症は、特に社会的側面において、がんの患者さんに難しい問題をもたらすことがあります。口腔合併症によって摂食や発話に支障が生じることで、家族との食事や外食ができなくなったり、あるいは嫌になったりする場合があります。イライラするようになったり、内にこもるようになったり、抑うつ状態に陥ったりして、人との交わりを避けるようになる患者さんもいます。うつ病の治療に用いられる薬には口腔合併症を悪化させる副作用のあるものがあり、そうしたものはこのような患者さんには使用できません。(さらに詳しい情報については、PDQの不安障害とうつ病に関する要約をご覧ください。)
がん治療による口腔の問題を抱える患者さんには、情報の提供や支持的なケア、その症状に対する治療が重要になります。ここでは患者さんの痛み、対処能力、治療への反応などが注意深く観察されます。医療提供者と家族が支持的なケアを提供していけば、患者さんのがんとその合併症に対処していく力を高めていくことが可能です。
大量化学療法や頭頸部への放射線療法によって小児がんから回復した小児に特有の合併症として、歯の成長と発育における変化があります。歯の大きさや形状に変化が生じたり、歯の萌出が遅れたり、頭部や顔面部の発育が不十分なままとなったりすることがあります。歯の成長と発育に変化が生じている患者さんに対する歯列矯正治療の効果とその適切な実施時期については、現在研究段階にあります。成功を収めた治療法もいくつかありますが、標準的なガイドラインが確立されるまでにはまだ至っていません。
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