The U.S. National Cancer Institute does not currently endorse any foreign translations of PDQ® and no such endorsement should be inferred for the following translation.

発熱、発汗、ほてり: 支持療法

はじめに

発熱、発汗、ほてりに関する患者さん向けのこの要約は、がんの専門家が医療従事者向けに作成した要約を編集したものです。本稿を含め、がんの治療、スクリーニング予防支持療法および現在米国で行われている臨床試験についての信頼できる情報は、米国国立がん研究所(NCI)から得られます。発熱とは、正常な体温よりも高く体温が上昇することです。がんの患者さんでは、発熱の原因は感染腫瘍薬物反応、または輸血による反応などであると考えられます。発汗とは、皮膚から熱を放出させることで体温を下げる体のしくみで、がんの患者さんの場合、発熱、腫瘍、がん治療に伴って起こることがあります。また、ほてりも過度の発汗を引き起こすことがあり、自然閉経の時やがんや前立腺がんを治療している患者さんにみられることがあります。本要約では発熱、発汗、ほてりの原因や治療法について簡単に説明します。


発熱


概要

正常なヒトの体温は決まったパターンで24時間の周期で変わります。体温は夜明け前に最も低くなり、午後に最も高くなります。正常な場合、体温は体温調節機構によって維持され、それにより熱の放散と熱の産生のバランスが保たれます。

体温の異常な上昇は、高熱症(正常体温域を超えて上昇する異常)か発熱のいずれかによって引き起こされます。高熱症は、体の体温調節機能の障害により起こります。発熱の場合、体温調節機能は正常に働いていますが、感染を引き起こす微生物が作り出す化学物質に体が反応して、または細菌ウイルスといった有害な微生物を破壊するために、体温が上昇します。発熱には3つの段階があります。第一段階では、体は皮膚の血管を収縮させ、熱を保持するために皮膚表面から体の内部へ血液を流し、体温を一段階上昇させます。皮膚は冷たくなり、筋肉の収縮により震えや悪寒を来し、体はさらに熱を作ります。体温が上昇し新たな段階に到達するまで、体は熱を保持し、かつ熱を作り出そうとします。第二段階では、熱の産生と熱の放散はバランスがとれ、震えは治まり、体はこの高い体温を維持します。第三段階では、体は皮膚の血管を拡張させ、体の内部から皮膚の表面へ血液を流すことで過剰な熱を放出し、それにより体温は正常な温度まで低下します。発汗が起こり、体が冷やされます。

高齢の方や幼児では、発熱は悪影響を引き起こす可能性が最も高くなります。高齢者の場合、視床下部にある体温調節中枢が十分に働かず、正常域を超えて体温が上昇し、不整脈、虚血、思考力の変化、心不全を引き起こすことがあります。6カ月から6歳の子供では発熱による痙攣発作がみられることがあります。


説明と原因

がんの患者さんにおける発熱の主な原因は、感染症や腫瘍薬物輸血に対する反応、移植片対宿主病です。移植片対宿主病は、移植された骨髄末梢血幹細胞が患者さんの組織を攻撃したときに起こります。感染はがんの患者さんの発熱の一般的な原因であり、死に至ることがあります。腫瘍細胞は発熱を引き起こす様々な物質を作り出す可能性があります。化学療法薬や生物学的反応修飾物質、バンコマイシンアムホテリシンといった抗生物質などの様々な種類の医薬品により、発熱が起こることがあります。

がんの患者さんにおけるその他の発熱の原因には、薬の服用をやめる、向精神薬悪性症候群膀胱管または腎臓の閉塞、腫瘍の断片による動脈の閉塞などがあります。さらに、凝血や結合組織障害中枢神経系出血脳卒中など、がんと同時に生じるその他の病状により、発熱が起こることもあります。


評価

医師は、過去の医学的問題について質問し、患者さんが服用している全ての薬を詳しく調べ、徹底した身体診察を実施して、熱の原因を特定します。感染症が疑われる患者さん、特に好中球減少症白血球数が非常に少なくなる病気)や発熱を生じている患者さんは、皮膚や体の開口部(口、耳、鼻、尿道直腸)、注射部位、生検部位、皮膚が折り重なる部位(例えば、乳房、脇の下、鼠径部)を注意深く検査します。歯や歯肉、舌、鼻、のど、副鼻腔を注意深く検査します。静脈や動脈に挿入した管や、管など体内に留置した他の管はよくある感染源です。感染の徴候がないか調べるため、尿、および血液のサンプルを検査します。好中球減少症の患者さんは通常の感染の症状を示さないことがあるため、頻繁に検査を行う必要があります。


治療

非常に衰弱したがんの患者さんの発熱の症状には、疲労、筋肉痛、発汗、悪寒が挙げられます。発熱の対処法としては、根本原因の治療、静脈内投与、栄養補給や、患者さんをより快適にするその他の方法が考えられます。具体的な治療法は、がんの病期や患者さんの望む医療レベルによって決まります。例えば、死期が近い患者さんの中には、肺炎やその他の感染症といった根本にある原因については治療しないことを決め、生活の質(QOL)を維持するために、全身の苦痛を緩和する方法や補液だけを希望するという患者さんもいます。一方、感染による咳や発熱、息切れといった症状を和らげるために抗生物質を選択する患者さんもいます。

抗生物質は感染によって引き起こる発熱を治療するため使用されます。真菌による感染症を治療するための抗生物質療法のレジメンや薬物は医師により処方されます。腫瘍によって引き起こされる発熱は、通常、特定の種類のがんに対する標準治療を行うことにより治療されます。治療が成功しない、治療が作用するまでにしばらく時間がかかる、あるいは利用可能な治療法がない場合、医師は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を処方することがあります。

時には、がん治療または感染予防のために投与した薬に対する反応で、発熱が生じることがあります。発熱を引き起こすことが知られている薬には、生物学的反応修飾物質やアムホテリシンB、ブレオマイシンなどがあります。薬が発熱の原因と疑われる場合は、治療法はその薬をやめることです。生物学的反応修飾物質、特定の化学療法薬、あるいは抗生物質により発熱が生じた場合、薬の種類、薬の投与方法、投与する薬の量、薬の投与頻度などを調節することで医師は発熱をコントロールします。また、患者さんが発熱を引き起こす薬を服用する前に、アセトアミノフェン、NSAID、およびステロイドを投与しておく場合もあります。薬に関連する発熱による悪寒を抑えるためにメペリジンが投与されることもあります。

まれにみられる向精神薬悪性症候群(NMS)は、精神病やせん妄、吐き気嘔吐の治療のために投与される薬に対する反応で、時に死に至ることがあります。NMSの症状は発熱、筋肉の硬直、錯乱、身体機能の制御喪失や白血球数の増加です。薬による治療が効かないせん妄の患者さんは、向精神薬悪性症候群(NMS)を疑い検査する必要があります。NMSの治療法には、薬を中止すること、症状を抑えること、そして時には他の薬を使用することが挙げられます。(詳しい情報については、PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)認知障害およびせん妄に関する要約をご覧ください。)

がんの患者さんは、血液製剤(例えば、輸血を受ける)に反応して発熱することがあります。血液から白血球を取り除くか、または患者さんに血液製剤を輸血する前に放射線を照射して血液製剤を処理することで、反応を緩和することができます。また、輸血する前に患者さんにアセトアミノフェン(薬剤詳細へ)または抗ヒスタミン剤を投与して、血液製剤の投与による発熱の可能性を少なくすることもできます。


発熱を緩和する一般的な治療法

発熱の根本原因の治療に加えて、患者さんが快適に過ごせるようにする措置も、発熱や悪寒、発汗に伴う不快感を和らげる上で役立ちます。発熱している間は、患者さんにたくさんの水分を与える、余分な衣服や布団を取り除く、ぬるめのお風呂に入れる、ぬるめのお湯で体を拭くなどにより、苦痛が和らぐこともあります。悪寒を感じる時には、汗をかいてぬれた毛布を乾いた暖かい毛布に取り替えたり、患者さんに風を当てないようにしたり、患者さんが快適になるように室温を調節します。

また、症状を和らげるために非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)やアセトアミノフェン(薬剤詳細へ)を処方することがあります。アスピリンは発熱を抑えるのに効果がありますが、ホジキンリンパ腫の患者さんや血中の血小板数が減少する危険性のあるがんの患者さんには、慎重に投与する必要があります。ライ症候群を引き起こす危険性があるので、発熱している子供へのアスピリン(薬剤詳細へ)の投与は勧められません。


発汗


概要

汗は皮膚にある汗で作られます。発汗は、体を冷まして維持する作用があり、病気や発熱に伴って起こる場合も、また暖かい環境では運動によっても、あるいは閉経期に生じるほてりの一環として起こることもあります。ほとんどの乳がんの患者さんや前立腺がんの患者さんは、中等度から重度のほてりが生じると報告します。苦痛となるようなほてりはあまりみられず、乳がん以外のほとんどの閉経後の女性患者さんでは、時間とともにほてりは徐々に和らぎます。しかし、乳がんの生存者の方では、ほてりの程度は時間とともに和らぎません。精巣の摘出手術を受けた前立腺がんの男性患者さんもほとんどほてりを経験します。


原因

がんの患者さんにおける発汗は、腫瘍、がんの治療、がんとは関係のない他の病状などが原因となります。発汗は、ホジキンリンパ腫褐色細胞腫、神経系や内分泌系が関与する腫瘍など特定の種類の腫瘍の典型的な症状です。発汗はまた、以下によっても引き起こされます:



治療法


発汗

発熱による発汗の治療は、根本となる発熱の原因に対して行われます。(詳しい情報については、発熱の治療法のセクションをご覧下さい。)腫瘍による発汗は通常、腫瘍の治療により管理されます。


ほてり

自然閉経あるいは治療に伴う閉経によって引き起こされるほてりは、エストロゲン補充により効果的に管理できます。しかし、エストロゲン補充を受けることができない女性(例えば、乳がんの女性)も沢山います。エストロゲンとプロゲスチンを併用するホルモン補充療法では、乳がんの危険性や乳がんが再発する危険性が高まることがあります。

ほてりを治療するエストロゲン以外の薬の研究では、そうした薬物の多くがエストロゲンの補充ほど効果がなく、望ましくない副作用が生じると報告されています。これらのうち、最も効果があるのは、メゲストロールプロゲステロン類似薬)およびベンラファクシンなどの特定の抗うつ薬です。知っておくべき重要なことは、抗うつ薬の中には、タモキシフェンなど他の薬の作用を変化させうるものがあるということです。大豆およびブラック・コホッシュが、ほてりの軽減に有用であるとは証明されていません。大豆にはエストロゲン様の物質が含まれており、乳がんの増殖や乳がんの再発の危険性に対する大豆の影響については明らかにされていません。

リラクゼーション法は、全般的に健康な閉経後の女性において、ほてりによる不快感を減らすことがわかっています。

男性におけるほてりの治療法には、エストロゲン、プロゲステロン、および抗うつ薬があります。ある種のホルモン(エストロゲンなど)は、一部のがんを増殖させる可能性があります。ホルモンの使用ががんの増殖に与える影響については現在研究中です。


症状を和らげる一般的な治療法

ここに紹介した薬以外でも、多くの薬ががんに関係する発汗に対する全身療法として用いられています。また、ゆったりとした綿の服の着用や扇風機の使用、リラクゼーションなどの行動療法などもお勧めします。


2007-06-27