原文更新日 : 2004-08-17
翻訳更新日 : 2007-06-27
星細胞腫とは、星細胞と呼ばれる脳の細胞から発生する腫瘍のことです。小脳星細胞腫とは、この星細胞腫のうちの小脳(脳の後部の下側に位置する部分)に発生してくるものをいいます。小脳とは脳の一部で、ここでは運動や平衡感覚、姿勢などの制御が行われています。
小脳星細胞腫は小児脳腫瘍全体の約15〜25%を占めています。小児ではがんの発生自体はまれですが、その中では、白血病とリンパ腫を除けば、脳腫瘍は最も多くみられる小児がんです。
本要約では、原発性脳腫瘍(脳で発生した腫瘍)の治療法について記載されています。転移性脳腫瘍(他の部位から発生したがん細胞が脳に転移してできた腫瘍)の治療法については、本要約では扱われていません。
脳腫瘍は小児にも成人にも発生しますが、成人と小児では治療法が異なってくる場合があります。(さらに詳しい情報については、PDQの脳腫瘍(成人)の治療に関する要約をご覧ください。)
小児の脳腫瘍はそのほとんどが原因不明です。その症状は星細胞腫が原因の場合もありますが、別の病態が原因となっている場合もあります。以下のような症状がある場合は医師の診察を受けてください:
以下のような検査法や手技が用いられます:
脳腫瘍が疑われる場合には、頭蓋骨に開けた穴から針を用いて脳組織のサンプルを採取するという手法によって、生検を行います。直ちに病理医がその組織を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無を調べます。ここでがん細胞が発見される場合は、そのまま手術が継続され、安全を確保できる範囲内で可能な限りの腫瘍の摘出が行われていきます。
特定の因子によって予後(回復の見込み)や治療法の選択肢が変わってきます。予後(回復の見込み)は以下のような要因に左右されます:
治療の選択は以下のような要因に左右されます:
小児小脳星細胞腫の摘出手術の後には、腫瘍の残存の有無を明らかにするために、さらに検査が行われます。通常、がんの存在範囲や拡がりの程度は病期を用いて表現されます。しかし小児小脳星細胞腫では、病期ではなく悪性度による分類法が用いられます。腫瘍の悪性度とは、顕微鏡で観察したときのがん細胞の異常の度合いや、腫瘍の増殖と拡大の速さを反映した指標のことです。手術後にもがん細胞が残存している場合には、その後の治療計画を作成するために、腫瘍の悪性度を把握しておくことが重要になります。
小児小脳星細胞腫には悪性度が異なる以下の2種類があります:
手術後には、腫瘍細胞の残存の有無を確認するために以下のような検査が行われます:
小脳星細胞腫は通常、小脳から脳の他の部位や体の他の部位に拡がることはありません。
再発小児小脳星細胞腫とは、治療後に再び悪化(再発)した腫瘍のことをいいます。小児小脳星細胞腫は、最初の治療から何年も経過してから再発することがあります。再発は、脳内の同じ部位に起こることもあれば、中枢神経系(脳と脊髄のこと)の別の部位に起こること(特に最初の腫瘍がびまん性または原線維性星細胞腫の場合)もあります。
小児小脳星細胞腫の患者さんは様々な治療を受けることができます。治療法の中には標準(現在用いられている治療法)になっているものもあれば、臨床試験で検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、現在用いられている治療法の改善や、がんの新しい治療法に関する情報収集を目的とした調査研究のことです。新しい治療法が「標準」治療よりも優れていることが臨床試験によって判明すれば、その新しい治療法が標準治療となる場合もあります。
小児のがんの場合は、その発生自体がまれであるため、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験は米国各地で行われています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。がん治療の選択では、患者さんとご家族に医療チームが加わって最適な治療法を決定していくのが理想的な形となります。
小脳星細胞腫の治療では、小児脳腫瘍の治療に熟練した複数の医師で構成されるチームによって、患者さんごとの治療計画が作成される必要があります。この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児のがん治療を専門とする医師)が統括することになります。小児腫瘍医は、脳腫瘍の小児の治療に精通した他の小児科医や特定の医療分野を専門とする小児科医に協力を求めることがあります。具体的には以下のような専門医や専門家が挙げられます:
この要約の一般的な情報のセクションで前述されているように、小児小脳星細胞腫では診断と治療に手術という方法が用いられます。
放射線療法放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞を死滅させる、がんの治療法です。放射線療法には2種類のものがあります。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの器具の中に放射性物質を封入し、がんの内部または近くに直接留置する方法です。放射線療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
化学療法化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによりがんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与あるいは静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脊柱内や体腔内(腹腔など)、臓器内などに薬を直接注入する化学療法では、薬はその領域のがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
この他にも臨床試験で検証中の治療法があります。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
未治療の小児小脳星細胞腫とは、その時点でまだ何の治療も行われていない腫瘍のことです。ただし、腫瘍が原因で生じる症状を緩和するために行われた薬物投与などの治療については例外とされます。
小児小脳星細胞腫に対する初期治療は、手術となるのが通常です。手術で腫瘍を完全に摘出できた場合は、それ以上の治療は必要なく、その後は症状の出現や変化を見逃さないように入念な経過観察を行っていきます。これは注意深い経過観察とも呼ばれるものです。
手術後もがん細胞が残存している場合は、その後の治療法は残存するがん細胞の位置と小児の年齢によって異なってきます。標準治療には以下のようなものがあります:
再発小児小脳星細胞腫の標準治療には、以下のようなものがあります:
再発小児小脳星細胞腫に対する治療法については、以下のような臨床試験が現在実施されています:
この臨床試験を始めとする現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。