原文更新日 : 2004-08-24
翻訳更新日 : 2007-06-27
小児髄芽腫(腫瘍)は、小脳(脳の後部の下側に位置する部分)に発生するのが通常です。小脳とは脳の一部で、ここでは運動や平衡感覚、姿勢などの制御が行われています。小児髄芽腫は原始神経外胚葉性腫瘍(PNET)と呼ばれる場合もあります。
髄芽腫は小児脳腫瘍のおよそ5分の1を占めています。小児ではがんの発生自体はまれですが、その中では、白血病とリンパ腫を除けば、脳腫瘍は最も多くみられる小児がんです。
本要約では、原発性脳腫瘍(最初から脳に発生した腫瘍)の治療法について記載されています。転移性脳腫瘍(他の部位から発生したがん細胞が脳に転移してできた腫瘍)の治療法については、本要約では扱われていません。
脳腫瘍は小児にも成人にも発生しますが、成人と小児では治療法が異なってくる場合があります。(さらに詳しい情報については、PDQの脳腫瘍(成人)の治療に関する要約をご覧ください。)
小児の脳腫瘍はそのほとんどが原因不明です。その症状は髄芽腫が原因の場合もありますが、別の病態が原因となっている場合もあります。以下のような症状がある場合は医師の診察を受けてください:
以下のような検査法や手技が用いられます:
脳腫瘍が疑われる場合には、頭蓋骨に開けた穴から針を用いて脳組織のサンプルを採取するという手法によって、生検を行います。直ちに病理医がその組織を顕微鏡で観察し、がん細胞の有無を調べます。ここでがん細胞が発見される場合は、そのまま手術が継続され、可能な限りの腫瘍の摘出が行われていきます。
特定の因子によって予後(回復の見込み)や治療法の選択肢が変わってきます。予後(回復の見込み)と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:
通常、がんの存在範囲や拡がりの程度は病期を用いて表現されます。しかし小児髄芽腫では、病期ではなくリスクによる分類法が用いられます。腫瘍のリスク群は、残存する腫瘍の量と中枢神経系(脳と脊髄のこと)内での腫瘍細胞の拡がり、それに体内の他の部位への転移の有無を基準に定義されています。治療計画を立てるためには、その腫瘍が属するリスク群を把握しておくことが重要になります。リスク群の判定には、以下のような検査法や手技が用いられます:
小児髄芽腫は、以下の条件の全てが満たされると平均リスク群に分類されます:
小児髄芽腫は、以下の条件がいずれか1つでも満たされるとプアリスク群に分類されます:
一般に、プアリスク群の患者さんでは再発の可能性が高くなります。
再発小児髄芽腫とは、治療後に再び悪化(再発)した腫瘍のことをいいます。小児髄芽腫は再発を起こすことの多い腫瘍です。再発は何年も経ってから起こる場合もあり、まったく同じ部位に起こることもあれば、脳内の別の部位に起こることもあります。脊髄などの体内の他の部位に再発する可能性もあります。
小児髄芽腫の患者さんは様々な治療を受けることができます。その中には標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験で検証中のものもあります。治療法の臨床試験とは、現在用いられている治療法の改善や、がんの新しい治療法に関する情報収集を目的とした調査研究のことです。新しい治療法が標準治療よりも優れているということが複数の臨床試験から示されると、その新しい治療法が標準治療となります。
小児のがんの場合は、その発生自体がまれであるため、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験は米国各地で行われています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。がん治療の選択では、患者さんとご家族に医療チームが加わって最適な治療法を決定していくのが理想的な形となります。
小児髄芽腫の治療では、小児脳腫瘍の治療に熟練した複数の医師で構成されるチームによって、患者さんごとの治療計画が作成される必要があります。この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児のがん治療を専門とする医師)が統括することになります。小児腫瘍医は、脳腫瘍の小児の治療に精通した他の小児科医や特定の医療分野を専門とする小児科医に協力を求めることがあります。具体的には以下のような専門医や専門家が挙げられます:
この要約の一般的な情報のセクションで前述されているように、小児髄芽腫ではその診断と治療に手術という方法が用いられます。
放射線療法放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞を死滅させる、がんの治療法です。放射線療法には2種類のものがあります。外照射療法は、体外に設置された装置を用いてがんに放射線を照射する方法です。内照射療法は、針やシード、ワイヤー、カテーテルなどの器具の中に放射性物質を封入し、がんの内部または近くに直接留置する方法です。放射線療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
化学療法化学療法は、薬を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによりがんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与あるいは静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脊柱内や臓器内、もしくは腹腔などの体腔内に薬を直接注入する化学療法では、薬はその領域のがん細胞に集中的に作用します(局所化学療法)。化学療法の実施方法は、治療中のがんの種類と病期によって異なってきます。
放射線療法の実施は幼児の体の成長や脳の発達に悪影響を及ぼす危険性があることから、放射線の照射量を減らす方法やその開始時期を遅らせる方法などが、臨床試験で研究されています。
脳脊髄液転換脳脊髄液転換とは、脳や脊髄の周囲に過剰に溜まった体液を排出するのに用いられる方法です。シャント(細長い管)を脳室(脳内部の空洞)から体の他の部位(通常は腹腔)まで皮膚の下を通して留置します。このシャントにより過剰に溜まった脳脊髄液が脳の外に排出され、体の他の部位で吸収されるようになります。
この他にも臨床試験で検証中の治療法があります。骨髄移植または幹細胞移植を併用した大量化学療法とは、高用量の化学療法を実施するとともに、このがん治療によって破壊された造血細胞を外から補充するという治療法です。まず患者さん自身またはドナーから採取した血液や骨髄から幹細胞(成熟前の血液細胞)を取り出し、凍結保存しておきます。そして化学療法の終了後に、保存していた幹細胞を解凍し、これを点滴によって患者さんの体内に戻します。こうして再注入された幹細胞が血液細胞に成長することにより、血液の機能が回復していきます。この治療の実施後にさらに腫瘍に対する放射線の直接照射を行うという治療法が、小児髄芽腫だけを対象とした臨床試験で現在検証されているところです。
本稿では、臨床試験で研究中の個々の治療法が記載されていますが、現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
未治療の小児髄芽腫とは、その時点でまだ何の治療も行われていない腫瘍のことです。ただし、腫瘍が原因で生じる症状を緩和するために行われた、薬物投与などの治療については例外とされます。
平均リスクの小児髄芽腫に対する標準治療には、以下のようなものがあります:
プアリスクの小児髄芽腫の標準治療には以下のようなものがあります:
3歳未満の小児における小児髄芽腫の標準治療には、以下のようなものがあります:
3歳未満の小児における未治療の小児髄芽腫に対する治療法については、以下のような臨床試験が現在進行中です:
この臨床試験を始めとする現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。
再発小児髄芽腫の標準治療には以下のようなものがあります:
再発小児髄芽腫に対する治療法については、以下のような臨床試験が現在進行中です:
現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。