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下垂体腫瘍: 治療

解説


下垂体腫瘍とは

下垂体腫瘍とは、下垂体(脳の中央部で鼻腔の後部のすぐ上に位置するエンドウ豆大の小さな器官)に発生する腫瘍のことをいいます。下垂体では、体の成長や体内の他の器官の機能に影響を及ぼすホルモンが生産されています。下垂体腫瘍は以下のように分類されることがあります:


これらの下垂体腫瘍はそれぞれ機能性の場合と非機能性の場合があります。下垂体ホルモンを分泌する腫瘍は機能性腫瘍と呼ばれ、一方でホルモンを分泌しない腫瘍は非機能性腫瘍と呼ばれます。機能性腫瘍では、腫瘍が分泌するホルモンの種類に応じて現れてくる症状が異なってきます。また、増大した腫瘍に付近の脳の一部が圧迫されることによっても症状が生じてくることがあります。以下のような症状がある場合は医師の診察を受けてください:


がんの中には別の部位から下垂体に転移してくるものがありますが、そのような下垂体腫瘍ではこうした症状は現れないのが通常です。他の部位に発生するがんの中でも最も下垂体に転移しやすいのは、乳がん肺がんとなっています。

上記の症状がみられる場合には、ホルモンの中濃度を調べるための臨床検査が実施されます。さらにMRIスキャン(磁気共鳴画像法:磁気波を利用して脳内部の画像を作成する検査)が行われる場合もあります。この他にも特殊なX線検査が行われる場合もあります。


病期の説明


下垂体腫瘍の種類

下垂体腫瘍はその大きさによって以下のように分類されます:


下垂体腺腫の大半は巨大腺腫です。

下垂体腫瘍が発見されると、腫瘍の拡がりの程度や、腫瘍の種類、ホルモン生産の有無などを明らかにするために、さらに検査が行われます。治療計画を立てるためには腫瘍の種類を把握しておく必要があります。下垂体腫瘍には以下のようなものが存在します:


プロラクチン産生腫瘍

この腫瘍からはプロラクチン(妊娠中と妊娠後に分泌され、乳房を刺激して乳汁を生産させるホルモン)が分泌されます。プロラクチン産生腫瘍が発生すると、女性では妊娠していないのに乳汁の分泌や月経周期の停止などが引き起こされます。男性の場合、プロラクチン産生腫瘍は勃起不全の原因となります。


ACTH産生腫瘍

この腫瘍からは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH:副腎を刺激してグルココルチコイドを分泌させるホルモン)が分泌されます。体内でのACTHの分泌量が過剰になってくると、クッシング病が引き起こされることがあります。このクッシング病になると、顔や背中、胸などに脂肪が蓄積していき、逆に腕と脚は極端に痩せ細っていきます。ACTH産生腫瘍では、この他にも骨が折れやすくなるといった症状も現れてきます。


成長ホルモン産生腫瘍

この腫瘍からは成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンの量が過剰になってくると、先端巨大症(正常な人と比べて手、足、顔が大きくなる疾患)か巨人症(正常な人と比べて体全体が大きくなる疾患)が引き起こされることがあります。


非機能性下垂体腫瘍

非機能性腫瘍ではホルモンの分泌は起こりません。腫瘍によって付近の脳組織が圧迫されることによって、頭痛や視覚障害などの症状が生じてくることがあります。また腫瘍によって下垂体が圧迫あるいは破壊されれば、下垂体からのホルモンの分泌が停止することもあります。そうして特定のホルモンが不足してくると、そのホルモンによって制御されている臓器の機能に悪影響が生じてきます。例えば、卵巣に作用するホルモンが下垂体から分泌されなくなると、卵巣の機能や胎児の発育に異常が生じてきます。


甲状腺刺激ホルモン産生腫瘍

この腫瘍からは甲状腺刺激ホルモン(甲状腺を刺激して甲状腺ホルモンを分泌させるホルモン)が分泌されます。甲状腺ホルモンには、心拍数や体温、血液中のカルシウム濃度、食物からエネルギーを取り込むペースなどを調節する働きがあります。そのため甲状腺刺激ホルモンが過剰に分泌されると、心拍数の上昇や体重減少などの症状が生じてきます。甲状腺ホルモン産生腫瘍は大きく成長することがあり、また体内の他の部位へ転移することもあります。この種の腫瘍には成長ホルモンやプロラクチンを分泌するものも時折みられます。


下垂体がん

この腫瘍の場合、増殖のペースが速くホルモンの分泌(一般的にはACTHとプロラクチン)もみられるのが通常です。その症状には、腫瘍から分泌されるホルモンが原因のものもあれば、腫瘍による付近の脳組織への圧迫が原因のものもあります。


その他の下垂体腫瘍

その他の種類の下垂体腫瘍に関する情報については、以下のPDQの要約をご覧ください:



再発下垂体腫瘍

再発腫瘍とは、治療後に再び悪化(再発)した腫瘍のことをいいます。再発は、下垂体に起こることもあれば、体の別の部位に起こることもあります。


治療選択肢の概要


下垂体腫瘍の治療法

下垂体腫瘍の患者さん全てに、治療法が存在します。以下の3種類の治療法が用いられています:


手術は下垂体腫瘍では一般的な治療法です。以下のような手術によって腫瘍の摘出が行われます:


放射線療法では、高エネルギーのX線を利用してがん細胞を殺傷し、腫瘍を縮小させます。下垂体腫瘍では、通常、体外の装置から放射線を照射する方法(外照射療法)が用いられます。特に腫瘍のみに狙いを絞って放射線を照射することにより正常組織への損傷を低減することのできる定位放射線手術という治療法が、現在臨床試験で検証されています。この方法ではまず、CTスキャンMRIを用いて腫瘍の正確な位置を割り出します。その後、頭部に硬いフレームを固定してその開口部から高線量の放射線を照射していきますが、こうすることによって放射線の影響を受ける正常な脳組織を少量のみに抑えることが可能になります。ただしこの治療法では実際に手術が行われることはありません。放射線療法は単独で実施される場合もあれば、手術や薬物治療に追加する形で実施される場合もあります。

薬物療法では、下垂体からの過剰なホルモン分泌を停止させることを目的として、薬の投与が行われます。


種類ごとの治療法

下垂体腫瘍に対する治療法は、腫瘍の種類、ホルモンの分泌による症状、脳内への腫瘍の拡がりの程度、患者さんの年齢と健康状態などによって異なってきます。

過去の研究で有効性が実証されている標準治療の実施を検討してもよいですし、臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。全ての患者さんが標準治療で治癒するとは限りませんし、一部の標準治療では副作用が予想以上に強く現れる場合もあります。このような理由から、より良いがんの治療法を見い出すために、最新の情報に基づいた臨床試験が計画されています。下垂体腫瘍については、米国の一部の地域で臨床試験が実施されています。現在進行中の臨床試験に関する情報は、米国国立がん研究所(NCI)のホームページから入手することができます。 


プロラクチン産生下垂体腫瘍

以下のような治療法が用いられます:


  1. 腫瘍からのプロラクチンの分泌を停止させるための薬物療法
  2. 薬物治療の効果がみられない場合や薬の投与が不可能な場合には、腫瘍を摘出する手術(経蝶形骨洞手術または開頭術)。
  3. 放射線療法

ACTH産生下垂体腫瘍

以下のような治療法が用いられます:


  1. 放射線療法を伴うまたは伴わない、腫瘍を摘出する手術(通常は経蝶形骨洞手術)。
  2. 放射線療法単独。
  3. 腫瘍からのACTHの分泌を停止させるための薬物療法
  4. 定位放射線手術臨床試験への参加。

成長ホルモン産生下垂体腫瘍

以下のような治療法が用いられます:


  1. 腫瘍を摘出する手術(通常は経蝶形骨洞手術)。
  2. 腫瘍からの成長ホルモンの分泌を停止させるための薬物療法
  3. 手術とその後の放射線療法

非機能性下垂体腫瘍

以下のような治療法が用いられます:


  1. 腫瘍を摘出する手術(経蝶形骨洞手術または開頭術)とその後の注意深い経過観察症状の出現や変化がみられるまで治療を一切行わずに患者さんの状態を注意深く監視していくこと)。腫瘍が再発した場合には放射線療法が実施されます。
  2. 放射線療法。
  3. 手術とその後の放射線療法。

甲状腺ホルモン産生下垂体腫瘍

以下のような治療法が用いられます:


  1. 放射線療法を伴うまたは伴わない、腫瘍を摘出する手術(通常は経蝶形骨洞手術)。
  2. 腫瘍からのホルモンの分泌を停止させるための薬物療法

下垂体がん

この腫瘍の治療は、症状を和らげ生活の質を高めることを目的とした緩和的なものになるのが通常です。以下のような治療法が用いられます:


  1. 放射線療法を伴うまたは伴わない、がんを摘出する手術(経蝶形骨洞手術または開頭術)。
  2. 腫瘍からのホルモンの分泌を停止させるための薬物療法
  3. 化学療法

再発下垂体腫瘍

再発下垂体腫瘍に対する治療法は、腫瘍の種類と以前の治療法や、患者さんの健康状態などの他の要因によって異なってきます。新しい治療法の臨床試験に参加するのもよいでしょう。以下のような治療法が用いられます:


  1. 放射線療法
  2. 定位放射線手術の臨床試験への参加。

2007-06-27