患者さん向け 軟骨(ウシおよびサメ)(PDQ®)

    • 原文更新日:2017-09-07
    • 翻訳更新日:2022-03-16

ご利用について

このPDQがん情報要約では、がん患者さんに対する治療での軟骨(ウシおよびサメ)の使用に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Integrative, Alternative, and Complementary Therapies Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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概要

注:この要約の情報は現在更新されておらず、参照用としてのみご利用いただけます。

軟骨(ウシおよびサメ)についての質問と回答
1.軟骨とはどのようなものですか。

軟骨は丈夫で柔軟性のある結合組織の一種で、多くの動物の骨格の一部を構成しています。軟骨には軟骨細胞という細胞が含まれ、これはコラーゲン線維性蛋白)とプロテオグリカンに取り囲まれており、プロテオグリカンは蛋白と炭水化物から構成されています。

軟骨を含む製品は米国では栄養補助食品として販売されています。軟骨製品の製造元の中には、製造している全てのロットが完全に同一であることを確認するプロセスが整っていない会社もあります。これはつまり、軟骨製品のロットが異なると、含まれる成分の量や強さが異なるかもしれないということです。ロットが異なると、使用されている結合剤(粘着性のない混合物をくっつける物質)や賦形剤が異なる場合もあります。そのため、特定の臨床試験の結果は、その研究で使われたロットにしかあてはまらない可能性があります。

2.がんに対する補完代替医療としての軟骨の発見と使用には、どのような経緯があったのですか。

ウシの軟骨とサメの軟骨は、がんやその他の疾患の治療薬として30年以上にわたって研究されています。かつては、骨格の大部分が軟骨で構成されるサメにはがんが発生しないと考えられていました。このため、がんの治療薬の候補として軟骨に関心が集まりました。サメにおいて悪性腫瘍はまれではあるものの、現在ではこれらの動物でもがんの存在が確認されています。

初期の研究ではウシ軟骨の抽出物が用いられました。

サメ軟骨はウシ軟骨よりも新たな血管の形成を阻止する作用が強いと考えられていたので、サメ軟骨の利用への関心が高まりました。サメの骨格は大部分が軟骨で構成されるので、サメ軟骨はウシ軟骨よりも豊富に利用できます。

(基礎研究と動物での研究に関する詳しい情報については質問5を参照してください。臨床試験に関する詳しい情報については質問6を参照してください。)

3.軟骨ががんの治療に有用であるという主張の背景にはどのような理論があるのですか。

軟骨ががんに対抗してどのように働くかを説明するのに、以下のような3つの理論が提案されています:

基礎研究と動物での研究から、3つ目の理論の可能性が最も高いと考えられます。軟骨には血管が含まれないので、がんが軟骨で増殖するのは困難です。軟骨を使ったがんの治療は、腫瘍内部の血管の成長を抑えて腫瘍の増殖を阻止したり、小さくしたりする可能性があるとみられています。

4.軟骨はどのように投与されますか。

軟骨製品は動物での研究では、経口投与する、静脈腹部注射する、皮膚に塗る、中身をゆっくりと放出するプラスチックの玉に入れて手術移植する(体の中に入れる)などの方法で投与されています。

ヒトでの研究では、経口投与する、皮膚に塗る、皮膚の下に注射する、浣腸によって注入する(液体の形で直腸の中に注入する)などの方法で軟骨製品が投与されています。軟骨を投与する用量と期間が研究ごとに異なっていますが、これは1つにはそれぞれの研究で異なる種類の製品が使用されているためです。

5.軟骨を使用した前臨床研究(基礎研究や動物での研究)は実施されていますか。

これまでに多数の軟骨を使った前臨床研究が行われてきました。研究室で、または動物を使って行う前臨床研究は、薬物、手技、治療法などがヒトにおいて安全かつ有用なものかどうかを明らかにするために行われます。こうした前臨床研究は、ヒトを対象とした試験が開始される前に実施されます。一部の調査研究は科学雑誌に発表されます。ほとんどの科学雑誌では、個々の研究報告を発表する前に専門家による評価が行われ、その証拠および結論が妥当なものであるかどうか確認されます。

軟骨の前臨床研究では、ウシ軟骨およびサメ軟骨の製品が実験においてがん細胞を死滅させ、がん細胞に対する免疫系の働きを活発にし、血管の形成を阻止できるかどうか調査されました。

粉末状の軟骨

試験管内(体外)で粉末状の軟骨ががん細胞に与える影響に関する前臨床研究から、以下の内容が報告されています:

粉末状の軟骨が免疫系に与える影響に関する前臨床研究から、以下の内容が報告されています:

粉末状の軟骨が血管新生に与える影響について、多数の基礎研究と動物での研究が発表されています。そうした研究から、以下の内容が報告されています:

液状の軟骨

液状の軟骨製品の前臨床研究から、以下の内容が報告されています:

6.軟骨を使った臨床試験(ヒトでの調査研究)は実施されていますか。

臨床試験は、新しい薬やその他の治療法がヒトに対してどのような効果を示すかを検証するための調査研究の一種です。1970年代から、がんの治療薬としての軟骨に関する臨床試験は12件以上実施されています。

軟骨をがん治療に用いたランダム化臨床試験は、1件査読済み科学雑誌に発表されています。この臨床試験では、サメ軟骨の一種を使った治療と、プラセボ(検証される物質と同じ外見を持ち、同じ方法で投与される無効な物質)を使った治療とを比較しました。患者さんは標準治療も受けました。進行した乳がんまたは進行した結腸がんを患っている83名の患者さんのうち、サメ軟骨製品を投与された患者さんのグループとプラセボを投与された患者さんのグループとの間で、生活の質(QOL)にも生存率にも差はありませんでした。

粉末状の軟骨

粉末状の軟骨製品の臨床試験から、以下の内容が報告されています:

液状の軟骨

液状の軟骨製品の臨床試験から、以下の内容が報告されています:

これらの臨床試験やその他の進行中または報告が不完全の臨床試験に関する詳しい情報については、医療専門家向けの版をご覧ください。

7.軟骨による副作用やリスクは報告されていますか。

通常、軟骨による治療の副作用は軽度または中等度です。

ウシ軟骨製品のCatrixを使った治療の副作用として最もよくみられるものは以下の通りです:

サメ軟骨を使った治療の副作用として最もよくみられるものは以下の通りです:

吐き気、嘔吐、胃のむかつきは、サメ軟骨製品のAE-941/Neovastatを使った治療で最もよく報告されている副作用です。

サメ軟骨を使った人に肝炎が発生したケースが1件報告されています。

8.米国食品医薬品局(FDA)は、米国で軟骨をがんの治療薬として使用することを承認していますか。

米国食品医薬品局(FDA)は軟骨をがんの治療薬として承認していません。米国では多数の軟骨製品が栄養補助食品として販売されています。栄養補助食品は食事に追加して用いることを想定した製品です。これらは薬物ではなく、病気の治療や予防、治癒を目的としていません。製造者は、製品が安全であること、および正確かつ誤解を招かないラベル表示を記載することに責任を負います。FDAは栄養補助食品の安全性と有効性に関する販売前承認を行いません。

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、がん患者さんに対する治療での軟骨(ウシおよびサメ)の使用に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Integrative, Alternative, and Complementary Therapies Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Integrative, Alternative, and Complementary Therapies Editorial Board.PDQ Cartilage (Bovine and Shark).Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/cam/patient/cartilage-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389175]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。

補完代替医療(CAM)についての一般的な情報

補完代替医療(CAM)は、統合的医療とも呼ばれ、ヒーリングに関する原理やアプローチ、治療法などを幅広く意味します。従来の治療に加えて実施する場合は補完療法と呼ばれ、また、従来の治療の代わりに実施する場合は、よく代替療法と呼ばれます(従来の治療とは医学界で広く受け入れられ、かつ主流となっている治療を意味します)。どのように用いられるかによって、補完療法とみなされる場合と、代替療法とみなされる場合があります。補完代替療法は、病気の予防やストレスの軽減、副作用や症状の予防と軽減、そして疾患の管理や治癒を目的として用いられます。

がんの従来の治療とは異なり、補完代替療法は保険が適用されないことが多くあります。患者さんは加入保険会社に、補完代替医療が保険の適用対象となっているかどうかを確認することをお奨めします。

補完代替療法を検討されているがん患者さんは、どんな治療法でも必ず、担当医や看護師、薬剤師と相談して意思決定を行ってください。補完代替療法の中には、標準治療を妨げるものや、従来の治療と併用した場合に有害となるものがあります。

補完代替医療(CAM)の治療法の評価

CAM療法は、従来の治療に対する検証と同じように、科学的な方法で検証することが重要です。米国国立がん研究所および米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)は医療施設において、がんに対するCAM療法の検証を行うための臨床試験(調査研究)を数多く主催しています。

一般的に、がんの治療における従来のアプローチは、多数の患者さんを対象とした臨床試験の実施など、科学的プロセスを経て、安全性や有効性が検討されています。それに比べ、補完代替医療の安全性や有効性についてはあまり知られていません。ほとんどのCAM療法は厳密な科学的方法で検証されていません。純粋に代替アプローチとみなされていた少数のCAM療法は、治癒を目指すものではなく、患者さんをより楽にし回復を早めるための補完医療として、がんの治療で用いられつつあります。1つの例が鍼療法です。1997年11月に開催された米国国立衛生研究所(NIH)の専門家委員会によると、鍼療法は化学療法に関連した吐き気や嘔吐、そして手術に関連した疼痛の管理を助けることがわかりました。一方で、レートリルの使用などのいくつかのアプローチは、検討の結果、効果がないか、または有害となりうることがわかりました。

1991年に始まったNCIのBest Case Series Programは、臨床で用いられているCAMアプローチの評価を行うプログラムの1つです。このプログラムはNCIのがん補完代替医療オフィス(OCCAM)の監視下で進められています。がん代替医療を行う医療専門家は、患者さんのカルテや関連資料をOCCAMに提出します。OCCAMはこれらの資料を慎重に検討し、さらに調査を行う価値があるかどうかを判断します。

補完代替医療(CAM)について医療提供者に質問すべきこと

補完代替療法を受けることを考えている場合、患者さんは主治医などの医療提供者に次の質問を行ってください。

補完代替医療(CAM)についてさらに知るには

米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)

米国国立衛生研究所(NIH)の国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、補完代替医療の研究および評価を促進し、医療専門家や一般の方を対象に様々なアプローチについての情報を提供しています。

CAM on PubMed

NCCIHおよびNIH国立医学図書館(NLM)は共同でCAM on PubMedを開発し、CAMに関連するジャーナルの記載内容を無料かつ簡単に検索できる機能を提供しています。NLMの図書目録データベースのサブセットとして、CAM on PubMedには様々な科学ジャーナルのCAMに関連する論文から、230,000を超える文献や抄録が登録されています。このデータベースはさらに、1,800を超えるジャーナルにリンクしており、ユーザーが論文全文を参照できるようになっています(論文全文を参照するには、購読料などの費用が発生する場合があります)。

がん補完代替医療オフィス

NCIのがん補完代替医療オフィス(OCCAM)は、補完代替医療(CAM)の分野におけるNCIの活動をコーディネートしています。OCCAMはCAMのがん研究をサポートし、がんに関連するCAMについての情報を、NCIのウェブサイトを通して医療提供者や一般の方に提供しています。

米国国立がん研究所(NCI)のがん情報サービス

米国にお住まいの方は、NCIがん情報サービスフリーダイヤル+1-800-4-CANCER(+1-800-422-6237)に電話をすることができます(月曜日から金曜日の午前8時から午後8時まで)。訓練を受けたがん情報スペシャリストが質問にお答えします。

食品医薬品局

食品医薬品局(FDA)は、薬物や医療機器を規制し、それらの安全性と有効性を確保しています。

連邦取引委員会

連邦取引委員会(FTC)は消費者保護法を施行しています。FTCから入手可能な出版物は以下の通りです: