医療専門家向け 小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)(PDQ®)

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医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

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小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)に関する一般情報

過去50年間で、小児悪性腫瘍に対する治癒的治療の開発では劇的な進歩が成し遂げられている。成人期に至る長期生存は、小児悪性腫瘍に対する現代的な治療法が入手可能になるにつれて80%を超える小児に期待される。[ 1 ][ 2 ]このような生存率が得られる基になった治療法は、がん治療を終えてから数ヵ月ないし数年後に現れる「晩期合併症(晩期障害)」と呼ばれる、有害な長期にわたる健康関連転帰も同時にもたらすことがある。

多様な方法によって、小児がんに関連する長期間の罹病率と早期死亡への寄与に関する知識の解明が進められてきた。このような取り組みにおいては、以下のデータに対する研究を含む一連のリソースが活用されている:

臨床状態と受けた治療の点から十分に特徴付けられ、医学的評価により特定の影響が包括的に確認された生存者の転帰を報告する研究は、一般的に晩期がん治療関連毒性の発生とリスクプロファイルを明らかにするための質の高いデータを提供する。研究方法にかかわらず、報告される知見の文脈でコホート研究の選択バイアスと参加バイアスを考慮することが重要である。

小児がん生存者における晩期合併症(晩期障害)の有病率

晩期合併症(晩期障害)は、小児がんで生存している成人の多くが経験している;晩期合併症(晩期障害)の有病率は、がん診断からの経過時間が長いほど高い。集団ベース研究により、小児および若年成人のがん生存者では、年齢および性別が一致する対照群に比べ、病院に関連する罹病率が高いことが裏付けられる。[ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 10 ][ 11 ][ 12 ][ 13 ][ 14 ]

調査によると、小児期にがんの治療を受けた成人では、以下を含めて、晩期合併症(晩期障害)が高い合併症負担の原因であることが明らかになっている:[ 6 ][ 8 ][ 9 ][ 15 ][ 16 ][ 17 ][ 18 ]

累積疾患負担測定法-この測定法では、複数の健康障害および再発性のイベントが、競合リスクを考慮した単一の測定基準に組み込まれる-を用いたところ、St. Jude Lifetime Cohortの生存者は、50歳までに平均で17.1回の慢性の健康障害を経験し、このうち4.7回が重度/障害性、命を脅かす、または致死的であった。[ 17 ]これは、9.2回の慢性の健康障害を経験し、このうち2.3回が重度/障害性、命を脅かす、または致死的であった対応する地域の対照者における累積疾患負担とは対照的である(図1を参照のこと)。[ 17 ]

図は、St. Jude Lifetime Cohort Studyに参加した特定のサブタイプの小児がんの生存者および地域の対照者における年齢ごとの累積疾患負担の分布を示す。

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図1.図は、St. Jude Lifetime Cohort Studyに参加した特定のサブタイプの小児がんの生存者および地域の対照者における年齢ごとの累積疾患負担の分布を示す。30歳での累積疾患負担および累積疾患負担の増加率は、がんのサブタイプおよび臓器系間で多様である。Elsevierから許諾を得て転載:The Lancet, Volume 390, Issue 10112, Bhakta N, Liu Q, Ness KK, Baassiri M, Eissa H, Yeo F, Chemaitilly W, Ehrhardt MJ, Bass J, Bishop MW, Shelton K, Lu L, Huang S, Li Z, Caron E, Lanctot J, Howell C, Folse T, Joshi V, Green DM, Mulrooney DA, Armstrong GT, Krull KR, Brinkman TM, Khan RB, Srivastava DK, Hudson MM, Yasui Y, Robison LL, The cumulative burden of surviving childhood cancer: an initial report from the St Jude Lifetime Cohort Study (SJLIFE), Pages 2569-2582, Copyright (2017).

有病率のばらつきは、以下の因子にみられる差に関連している:

Childhood Cancer Survivor Study(CCSS)の研究者らによると、このコホートの成長した生存者における罹病および死亡の高いリスクは、30代を過ぎて増加することが明らかになった。自己報告による重度、障害性、命を脅かす、または致死的な健康障害の50歳までの累積発生率は、生存者が53.6%であったのに対して、同胞対照では19.8%であった。過去に重度、障害性、命を脅かす、または致死的な健康障害を認めることなく35歳に達した生存者では、10年以内にグレード3からグレード5の新たな障害を25.9%が経験したのに対して、健康同胞では6.0%であった(図2を参照)。[ 6 ]

重篤、障害性、および命を脅かす慢性健康障害の存在は、年齢を重ねた生存者の健康状態に有害な影響を及ぼし、機能障害および活動制限に対して最も影響が大きい。予想通り、慢性健康障害は、集団対照よりも成人生存者で情動的苦痛症状の有病率が高い一因となっていると報告されている。[ 19 ]女性生存者では、加齢による健康状態の悪化傾向が男性生存者より急激であることが示されている。[ 20 ]臨床的に確認されたコホートにおける晩期合併症(晩期障害)の有病率が高いことは、スクリーニングおよびサーベイランスの手段により検出される無症候性および診断未確定の病態に関連している。[ 9 ]

生存者および同胞で年齢別に慢性健康障害の累積発生率を示す図。

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図2.(A)グレード3~5の慢性健康障害、(B)生存者における複数のグレード3~5の疾患、(C)同胞における複数のグレード3~5の疾患、(D)25歳、35歳、または45歳までの生存者でグレード3~5の疾患の既往がないことに基づく条件付き、(E)25歳、35歳、または45歳までの同胞でグレード3~5の疾患の既往がないことに基づく条件付きでの慢性健康障害の累積発生率。Gregory T. Armstrong, Toana Kawashima, Wendy Leisenring, Kayla Stratton, Marilyn Stovall, Melissa M. Hudson, Charles A. Sklar, Leslie L Robison, Kevin C. Oeffinger; Aging and Risk of Severe, Disabling, Life-Threatening, and Fatal Events in the Childhood Cancer Survivor Study; Journal of Clinical Oncology, volume 32, issue 12, pages 1218-1227. 許諾を得て転載。© (2014) American Society of Clinical Oncology.All rights reserved.

CCSSの研究者らはまた、ヒスパニック系(n = 750)および非ヒスパニック系の黒人(n = 694)参加者と非ヒスパニック系白人参加者(n = 12,397)における晩期死亡率、その後の腫瘍、および慢性的な健康障害を比較することで、人種および民族性が晩期アウトカムに及ぼす影響も評価した。[ 21 ]以下の結果が観察された:

晩期合併症(晩期障害)の認識は、がんの生物学、放射線科学および支持療法の進展と並行して、その有病率および治療の影響範囲に変化をもたらしている。晩期合併症(晩期障害)を減少させ、予防するための取り組みにおいて、ほとんどの小児悪性腫瘍に対する現代の治療は、さまざまな臨床的要因、生物学的要因、およびときには遺伝因子に基づいて決定されるリスク調整アプローチに移行している。CCSSは、1970年から1999年までの数十年の治療で使用された治療用放射線の累積線量および照射頻度の減少により、生存者で二次新生物のリスクに有意な減少が認められることを報告した。[ 23 ]侵攻性または難治性/再燃性の悪性疾患に対する強力な集学的治療(ときに造血細胞移植を含む)が必要であった生存者を除けば、現代的な治療の後、追跡期間の早期(診断から10年後まで)では、命に関わる治療の影響は比較的少ない。しかしながら、生存者では、がん治療による内分泌機能、生殖機能、筋骨格機能、および神経機能に対する影響に関連した、生活を変える病気が依然として高頻度に認められる。

CCSSの1件の研究で、1970年から1999年に治療された生存者における重度から致死的な慢性健康障害の累積発生率の時間的パターンが調査された。1つ以上のグレード3~5の慢性障害が起こる20年累積発生率は1970年から1979年に診断された生存者に対する33.2%から、1980年から1989年に診断された生存者に対する29.3%、および1990年から1999年に診断された生存者に対する27.5%へと有意に低下したが、同胞コホートにおける発生率は4.6%であった。10年ごとの3つ治療期間で慢性障害の発生率が全般的に低下したのは、一部には内分泌障害、その後の悪性新生物、筋骨格系疾患、消化管疾患が実質的に低下したためである一方、この期間で難聴の累積発生率は増加した。診断グループまたは障害の種類で罹病の低下は一様ではなかったが、それは経時的な治療および生存パターンに差があったためである(詳しい情報については、図3を参照のこと)。[ 24 ]

10年間の診断ごとの小児がんの5年生存者および同胞におけるグレード3~5の慢性的な健康障害の累積発生率を示すグラフ。

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図3.10年間の診断ごとの小児がんの5年生存者および同胞におけるグレード3~5の慢性的な健康障害の累積発生率。(A)グレード3~5の最初の障害の累積発生率。(B)グレード3~5の2つ以上の障害の累積発生率。網掛けされた領域は、95%信頼区間(CI)を示す。診断後、5年間隔でリスクのある参加者の数(打ち切られた数)がX軸の下に示されている。打ち切られた数には、競合するリスクイベント(グレード5の慢性的な障害以外の原因による死亡)を経験した患者は含まれていない。Elsevierから許諾を得て転載:The Lancet Oncology, Volume 19, Issue 12, Todd M Gibson, Sogol Mostoufi-Moab, Kayla L Stratton, Wendy M Leisenring, Dana Barnea, Eric J Chow, Sarah S Donaldson, Rebecca M Howell, Melissa M Hudson, Anita Mahajan, Paul C Nathan, Kirsten K Ness, Charles A Sklar, Emily S Tonorezos, Christopher B Weldon, Elizabeth M Wells, Yutaka Yasui, Gregory T Armstrong, Leslie L Robinson, Kevin C Oeffinger, Temporal patterns in the risk of chronic health conditions in survivors of childhood cancer diagnosed 1970-99: a report from the Childhood Cancer Survivor Study cohort.Pages 1590-1601, Copyright (2018).

死亡率

晩期合併症(晩期障害)は、以下に示すように小児がんの長期生存者における早期死亡の過剰リスクの一因ともなっている:

早期の罹病率が高いにもかかわらず、全体的な死亡率は、時間経過とともに低下している。[ 25 ][ 33 ][ 34 ][ 35 ][ 36 ]この低下は、原発がんによる死亡が減少し、二次がんまたは治療関連毒性による死亡に関連した増加がないことに関係している。前者は治療の効力における改善を反映しており、後者は晩期合併症(晩期障害)の原因研究の結果として行われた治療変更を反映している。生存者における死亡率は一般集団のそれを上回り続けるという予想は、達した年齢とともに増加する可能性の高い長期続発症に基づく。治療プロトコルに基づいて治療された患者が成人期まで長期間追跡されれば、特異的治療介入との関連で過剰な生涯死亡率を評価できるであろう。

青年期および若年成人期のがん生存者

診断後5年を超えて生存している青年および若年成人のがん患者で、死亡の条件付き確率に関する情報はほとんど利用できない。SEERデータを用いて、最初に悪性がん(甲状腺がん、黒色腫、精巣腫瘍、乳がん、リンパ腫、白血病、中枢神経系[CNS]腫瘍)と診断された青年および若年成人患者(N = 205,954)のコホートで診断後25年までの条件付き相対生存が研究された。併合したすべてのがん種について、5年まで生存した患者で、その後の5年の相対生存率は、診断後7年まで95%を超えていた。この研究によると、診断後7年以上生存したほとんどの青年および若年成人のがん患者で、一般集団との生存期間の差はほとんどみられなかった。CNS腫瘍、女性の乳がん、ホジキンリンパ腫、および白血病などの特定のがん種では、がん診断後10年を超えて過剰な死亡リスクの証拠が持続または再現した。CNS腫瘍の青年および若年成人患者では、条件付き相対生存率が最低であったが、CNS腫瘍の診断時点で15~29歳の患者では、30~39歳の患者より生存率が高いことが実証された。[ 37 ]

晩期合併症(晩期障害)のモニタリング

治療法に特有な急性および晩期毒性の認識から、がん治療関連障害の病態生理学因子および予後因子を評価する研究の機運が高まってきている。このような研究の成果は、以下の取り組みに重要な役割を果たしている:[ 25 ][ 33 ]

小児がんでよくみられる晩期合併症(晩期障害)は、以下のような複数の広範な領域に関係している:

小児がんに対する治療の晩期続発症は、治療薬物曝露に基づいて予測できるが、リスクの大きさおよび個々の患者における発現は、多くの因子によって影響を受ける。晩期合併症(晩期障害)を考える上で、リスク評価で考慮すべき因子には以下のものがある:

生存者のケアを支援する資源

リスクに基づくスクリーニング

小児がん生存者の長期追跡の必要性は、American Society of Pediatric Hematology/Oncology、International Society of Pediatric Oncology、米国小児科学会、小児腫瘍学グループ(COG)、およびInstitute of Medicineにより支持されている。リスクに基づいた医学的追跡調査が推奨されているが、これには、以下の因子に基づくリスク推定を取り入れた生涯にわたるスクリーニング、調査、および予防に対する体系的な計画が含まれる。[ 38 ]

長期追跡調査の一部は、学習および職業の進展に関する適切なスクリーニングにも焦点を当てている。小児がんに対する特定の治療で、特に神経系の構造に直接影響を与えるものは、感覚系、運動系および神経認知の障害に至る場合があり、それが機能の状態、学業成績、将来の就業機会に有害な結果を及ぼす可能性がある。[ 39 ]CCSSの調査で、これを裏付ける以下の結果が得られた:[ 40 ]

これらのデータは、生存者が救済サービスを受けやすくする重要性を強調しており、そうすることで学業成績に好ましい影響を与え[ 41 ]、それにより就業機会が高まる可能性があることが実証されている。

リスクに基づいた医学的晩期合併症(晩期障害)のスクリーニングに加えて、健康行動ががん関連健康リスクに与える影響も重視される。小児がん生存者に対しては、健康増進行動を重視すべきである。教育を目標とした努力は、以下の面で価値があると考えられる:[ 42 ]

喫煙や飲酒の習慣があり不活発な生活を送る長期生存者の割合は妥当なレベルより高いことが数件の研究調査で確認され、これらは心肺および代謝の晩期合併症(晩期障害)のリスクを増大させるため、不健康で危険な行動に前向きに対処することが適切である。[ 42 ][ 43 ][ 44 ]

リスクに基づく生存者ケアの利用

小児がん生存者の大多数が推奨されているリスクに基づくケアを受けていない。CCSSでは、以下の観察結果が得られた:

健康保険の利用は、リスクに基づく生存者ケアにおいて重要な役割を果たすと考えられる。[ 49 ][ 50 ]健康保険が利用できない場合には、次の各点に影響が及ぶ:

全体的に、小児がん生存者にとって健康保険の欠如は、健康問題、失業、および他の社会的要因の面からみて、依然として重大な懸案事項である。[ 52 ][ 53 ]「医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act:HIPAA)」を含む立法[ 54 ][ 55 ]は、これらの政策に関連した法律の質および限界についての研究が十分ではないものの、生存者の健康保険の利用率および保有率を向上させている。

生存者ケアへの移行

長期追跡プログラム

米国ではほとんどの小児がん生存者に対して、小児から成人へ健康ケア環境を移行する必要がある。

利用可能であれば、小児がんセンターにおける集学的な長期追跡調査プログラムは、地域の医師と協力的に連携し合い、小児がん生存者のケアを提供する。この種の分担ケアは、がんセンターの腫瘍学チームと生存者のケアを提供している地域の医師グループとの間の調整を手助けする最適モデルとして提案されている。[ 56 ]

長期追跡調査プログラムの必要不可欠なサービスは、個人に合わせた生存者ケアプランの組織化であり、そのプランには次の情報が含まれる:

将来の健康とがんリスクの認識について評価したCCSSの調査によって、長期間の追跡評価中、生存者の教育を継続することの重要性が強調された。成人生存者のかなりのサブグループが、リスク増加を伴う治療を受けた後でさえ、将来の健康(24%)およびその後のがんリスク(35%)に関して心配していないことを報告した。これらの知見は、生存者が有益なスクリーニングおよびリスク低減のための行動に従事する可能性が低いという懸念を提示している。[ 57 ]

このような情報が提供されていない生存者に対して、COGは、生存者が個人の治療概要を整理するために使用できるテンプレートを提供している(COGのSurvivorship Guidelines Appendix 1を参照のこと)。

COGのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)

生存者および扶養者が簡潔な情報をリスクに基づくケアの指針として利用しやすいように、COGの研究者は小児がん生存者のケアを標準化する目的をもって、曝露量およびリスクに基づく健康監視の推奨要綱を体系化している。[ 58 ]

リソースの概要は次の通りである:

晩期合併症(晩期障害)に関する情報は本要約全体にわたって複数の表にまとめている。

複数の研究グループは、COGおよび他の小児腫瘍学共同グループが推奨するリスクに基づくスクリーニングの結果を評価する調査を実施した。[ 9 ][ 73 ][ 74 ]これらの研究結果を解釈するにあたって、次の事項が考慮された:

総合すると、これらの研究は、以前に認識されていなかった多様な重症度の治療関連合併症を有する人の割合が相当高いことがスクリーニングにより特定されることを実証している。また、利益の少ない評価も指摘し、スクリーニング推奨事項の改訂を促している。現在実施中の研究では、有益性、リスク、有害性を考慮する観点から、スクリーニングの費用対効果が評価されている。

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二次新生物

二次新生物(SN)は、原発悪性腫瘍に対する治療終了から2ヵ月以上経過して発現した、組織学的に明らかに異なる新生物として定義される。小児がん生存者はSNを発症するリスクが高く、そのリスクは次の因子によって変動する:

SNは無再燃晩期死亡の第一原因である(標準化死亡比、15.2;95%信頼区間[CI]、13.9-16.6)。[ 1 ]Childhood Cancer Survivor Study(CCSS)は、以下の項目についての30年累積発生率を報告している:[ 2 ]

これは、がん生存者では、SNのリスクが一般集団と比べて6倍高いことを示している。[ 2 ]

SNの過剰リスクが数件の研究で記述されている。[ 3 ]

証拠(40歳以降のSNの過剰リスク):

  1. CCSSコホートで、40歳以降に発生する新たなSN(悪性新生物、NMSC、良性髄膜腫、およびその他の良性新生物を含む)の55歳での累積発生率は34.6%であった。悪性SNの発生率は16.3%であった。多変量解析において、女性および治療のための放射線曝露はSN発症のリスク増加と関連していた。さらに、長期追跡により、小児がん生存者が成長すると複数のSNが多くみられることが立証されている。[ 4 ][ 5 ]
  2. CCSSにより、治療の時代がつい最近の治療患者では、初期の治療患者と比較してSN(二次悪性腫瘍、NMSC、良性髄膜腫を含む)のリスク減少が認められ、これは治療用放射線への曝露減少と関連していることが報告された;しかしながら、1990年代に治療を受けた患者では、一般集団と比較して依然としてSNのリスクが高かった。[ 6 ]
  3. CCSSフォローアップ研究では、頭蓋照射療法で治療された4,221人の参加者における髄膜腫に関連した合併症および死亡率が評価された。[ 7 ]
  4. CCSSの研究者らはまた、放射線照射を受けていない長期生存者における化学療法とその後の悪性新生物(SMN)の関連を評価している。[ 8 ]
  5. オランダの研究者らは、1963年から2001年までに診断された小児がん生存者の大規模コホート(追跡期間中央値、20.7年)を対象に固形がんリスクに対する化学療法の関与を評価した。[ 9 ]
  6. St. Jude Lifetime Cohort Studyの研究者らにより、小児がん生存者におけるがん素因遺伝子の病原性変異および病原性の可能性が高い変異のSNのリスクに対する寄与が評価された。[ 10 ]
  7. 悪性または非悪性疾患に対して1969年から2014年の間に移植を受け、中央値で12.5年間追跡された同種造血細胞移植(HCT)の1年生存者4,905人を対象にした研究により、TBIの線量および線量分割がSNのリスクに及ぼす強い影響が実証された。[ 11 ]

SNの発生は、病因において多因子性である可能性が高く、遺伝子と環境の相互作用や遺伝子と遺伝子の相互作用などの影響が複合してもたらされる。小児がん治療に組織耐性限界の薬物累積用量および治療法が含まれていた場合は、一部の組織学的サブタイプに対する治療が困難になる可能性があるため、SNの診断後の転帰はさまざまである。[ 12 ]

SNの発生率および種類は、次の因子によって異なる:

特異的治療上の曝露と特有の関係があるため、SNは次の2つの明らかに異なるグループに分類されている:

治療関連の骨髄異形成症候群および白血病

治療関連の骨髄異形成症候群および急性骨髄性白血病(t-MDS/AML)が、ホジキンリンパ腫(HL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、および肉腫の治療後に報告されており、治療後15年での累積発生率は約2%である。[ 13 ][ 14 ][ 15 ][ 16 ][ 17 ]

t-MDS/AMLには、以下の特徴がみられる:[ 13 ][ 18 ][ 19 ]

t-MDS/AMLは、明らかに異なった染色体変化を特徴とするクローン性疾患である。次の2種類のt-MDS/AMLが、世界保健機関分類で認定されている:[ 20 ]

治療関連固形新生物

治療関連固形SNは全SNの80%を占め、放射線曝露との強い関連性が実証されているほか、潜伏期間が10年を超えるという特徴がある。固形SNのリスクは追跡期間延長に伴って増加する。また、固形SNのリスクは以下の場合に最も高くなる:[ 2 ][ 17 ]

固形SNの組織学的サブタイプには、良性および低悪性度の悪性病変(例えば、NMSC、髄膜腫)から高悪性度の悪性腫瘍(例えば、乳がん、髄芽腫)に及ぶ多種多様な新生物が含まれている。[ 2 ][ 15 ][ 23 ][ 24 ][ 25 ][ 26 ][ 27 ]

小児がん生存者における固形SNは、以下に最もよくみられる:[ 2 ][ 13 ][ 15 ][ 17 ][ 24 ][ 28 ][ 29 ]

小児がんコホートの成人生存者を対象としたさらに長期の追跡で、以下の部位に上皮性新生物が観察されている:[ 2 ][ 13 ][ 23 ][ 30 ]

NMSCおよび髄膜腫などの良性および低悪性度のSNも観察されており、小児がんに対して放射線療法で治療された生存者に多くみられる。[ 2 ][ 24 ][ 25 ]

放射線曝露に加えて、特定の抗がん剤への曝露も固形SNを引き起こすことがある。前処置として高用量のブスルファンおよびシクロホスファミド(Bu-Cy)を用いたHCTのレシピエントでは、新たな固形がんの累積発生率は放射線曝露にかかわりなく、同程度であると考えられる。レジストリーベースのレトロスペクティブ・コホート研究では、TBIを省略したBu-Cyによる前処置は、固形SNのリスクが一般集団と比べて高いという関係が認められた。慢性移植片対宿主病が認められる場合は、特に口腔に障害がある患者でSNリスクが高かった。[ 31 ]

十分に立証された固形SNは以下のセクションで記述されている:[ 32 ]

乳がん

乳がんはHL後に最も多くみられる治療関連固形SNで、この主な理由は、HLの治療に使用される胸部放射線の照射線量が高いためである(二次乳がんのSIR、25-55)。[ 13 ][ 33 ]以下の各点は、小児HLの女性生存者に観察された内容である:

放射線照射によって生じる乳がんは、散発性乳がんの女性と比較すると、15年HL生存者に観察されるエストロゲン受容体陰性、プロゲステロン受容体陰性乳がんのリスクが2倍高いことから明らかなように、悪性度の高い臨床病理学的特徴があることが1件の集団ベースの研究で報告されている。[ 38 ]小児がんに対して放射線で治療された女性に発生するその後の乳がんの臨床的特徴を調査した数件の研究により、年齢でマッチさせた散発性浸潤がんよりも組織学的に侵攻性の高いサブタイプ(例、トリプルネガティブ乳がん)の割合が高いことが観察されている。[ 39 ][ 40 ]このような知見は、原発性乳がん対照と比較した場合にホルモン受容体の状態に特筆すべき変化が特定されていないHL生存者における乳がんを対象とした他の小規模な病院ベースのケースコントロール研究と対照的である。過去の研究でも、高悪性度と低悪性度腫瘍の全リスクに特筆すべき差がないことが明らかにされている。[ 41 ][ 42 ][ 43 ]

アルキル化剤の累積用量が高く、卵巣への放射線照射線量が5Gy以上(早発閉経の素因となる曝露量)による小児HLの治療は、乳がんリスクの減少と相関しており、乳がん発生に対してホルモン刺激が寄与する可能性を強く示している。[ 36 ][ 44 ][ 45 ]

放射線照射によって生じる乳がんのリスクを示したほとんどのデータが、HLに対して15~50Gyの線量範囲で治療を受けた患者を基にしている。しかしながら、乳がんのリスクは、胸部/肺へ転移したがん(例えば、ウィルムス腫瘍、肉腫)の治療に低放射線量を使用し、乳房組織に照射した以下の研究でも増加した:

  1. 肺に対して2~20Gy(中央値14Gy)の照射を受けたCCSSコホートの小児116人では、乳がんのSIRが43.6(95%CI、27.1-70.1)であった。[ 46 ]
  2. National Wilms Tumor Study(NWTS)による研究1~4(1969~1995)の女性参加者2,492人の報告では、乳がんの過剰リスクが扱われた。[ 47 ]

小児がんに対して胸部放射線療法を受けた女性を対象に乳がんのサーベイランスを開始することによる生存利益を立証するには、現在までに得られている証拠では不十分であるが、過去に放射線またはアントラサイクリンへの曝露があるために治療法の選択肢が比較的限定される可能性がある女性では特に、小さな初期の腫瘍の検出を促す介入により予後が改善される可能性がある。

  1. 胸部放射線に曝露していない小児期の肉腫または白血病の生存者もまた、若年での乳がんリスクが高い。[ 48 ]
  2. オランダの研究者らは、1963年から2001年までに診断された小児がん生存者の大規模コホートを対象に固形がんリスクに対する化学療法の関与を評価した。[ 9 ]
  3. St. Jude Lifetime Cohort Studyでは、女性のがん生存者1,467人がその後に乳がんを発症するリスクについて査定され、画像検査によるサーベイランスで乳がんの転帰が影響されるかどうかが評価された。[ 49 ]

後に乳がんを診断されたCCSSの女性参加者(n = 274)とde novo乳がんを有するマッチングされた対照群の女性(n = 1,095)を対象にした研究において、小児がん生存者は乳がんの治療について調整した後でさえ、死亡率が高いことが明らかにされた(HR、2.2;95%CI、1.7-3.0)。生存者は、他の二次悪性新生物および心血管疾患や肺疾患など、他の健康関連の原因の結果として死亡する可能性が5倍高かった(HR、5.5;95%CI、3.4-9.0)。非同時性の二次乳がんの累積発生率は、対照と比較して有意に高かった(5年経過時に、小児がん生存者で8.0% vs 対照で2.7%;P < 0.001)。[ 50 ]

甲状腺がん

甲状腺がんは、次の事象の後に観察されている:[ 2 ][ 13 ][ 51 ]

ホジキン病生存者における甲状腺がんのリスクは一般集団の18倍になることが報告されている。[ 52 ]甲状腺がんの放射線関連リスクの重要な因子には以下のものがある:[ 53 ][ 54 ]

(甲状腺結節および甲状腺がんの検出に関する情報については、本要約の甲状腺結節のセクションを参照のこと。)

CNS腫瘍

脳腫瘍は、組織学的に異なる脳腫瘍に対する頭蓋照射後[ 24 ]、またはALLあるいは非ホジキンリンパ腫の患者における疾患管理のための頭蓋照射後に発生する。[ 14 ][ 56 ]小児がん治療後の二次CNS新生物について報告されたSIRは、研究間で8.1~52.3の範囲であった。[ 57 ]

二次脳腫瘍のリスクは、放射線の照射線量との線形の関係が実証されている。[ 2 ][ 24 ]

頭蓋照射による治療を受けた小児がん生存者では二次CNS新生物のリスクが増大することが十分に立証されているにもかかわらず、近年の文献ではこれらの病変に対するルーチンのスクリーニングの潜在的な害と利益が十分に評価されていない。[ 57 ]

骨および軟部組織腫瘍

遺伝性網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、および他の悪性骨腫瘍の生存者は、その後の骨および軟部組織腫瘍の発症リスクが特に高い。[ 62 ][ 63 ][ 64 ][ 65 ][ 66 ]

20歳前にがんを診断された5年生存者69,460人を対象にした集団ベースの研究により、以下が観察された:

放射線療法と関連して、線形の線量反応関係がみられる。[ 62 ][ 67 ]放射線療法について調整した後、アルキル化剤による治療も骨がんと関連しており、累積薬物曝露量に従ってリスクが増加する。[ 62 ]これらの初期の研究から得られたデータは、CCSSまたは他の研究者らが観察した以下のデータと一致している:

  1. CCSSコホートにおける二次性骨肉腫または軟部肉腫のリスク上昇は、放射線療法、肉腫の一次診断、他のSNの既往歴、およびアントラサイクリン系薬剤またはアルキル化剤の高用量による治療と関連していた。[ 68 ]CCSSの参加者における二次性肉腫の30年累積発生率は、放射線療法を受けた生存者で1.08%、受けなかった生存者で0.5%であった。[ 68 ]
  2. 1942年から1986年に治療を受けた小児固形がんの生存者4,171人のレトロスペクティブ・コホート(追跡期間中央値26年)において、用量-リスクのモデリングを用いて骨肉腫のリスクが研究された。[ 67 ]
  3. オランダの研究者らは、1963年から2001年までに診断された小児がん生存者の大規模コホートを対象に肉腫のリスクを調査した。[ 9 ]
  4. 両側性網膜芽細胞腫の生存者で、最もよくみられるSNは肉腫であり、特に骨肉腫が多い。[ 69 ][ 70 ][ 71 ][ 72 ]固形悪性腫瘍の発がんに対する化学療法の寄与は、1914年から1996年の間に診断され、2009年まで観察された遺伝性網膜芽細胞腫の5年生存者906人の長期追跡研究で明らかになった。[ 63 ]
  5. 1914年から2006年の間に診断された遺伝性網膜芽細胞腫の放射線照射を受けた生存者952人のコホートにおいて、CCSS研究者らにより、骨肉腫および軟部肉腫のリスク増加は年齢、位置、および性別で異なることが観察された。[ 73 ]
  6. 遺伝性網膜芽細胞腫の放射線照射を受けた患者160人を対象にした1件のレトロスペクティブ研究では、外照射療法が実施される年齢(生後12ヵ月前または後)およびその後の悪性腫瘍の発症間で相関は確認されなかった。その後の悪性腫瘍を発症した患者と発症しなかった患者で、RB1変異型による差は認められなかった。また、変異型とSMNの位置、またはSMNの種類と診断時年齢との関連も認められなかった。この研究で、低浸透度の変異を有し、外照射療法を受ける患者はSMNのリスクが依然として高く、慎重に監視すべきであると示された。[ 66 ]

軟部肉腫にはさまざまな組織学的サブタイプが存在し、具体的には、非横紋筋肉腫性軟部肉腫、横紋筋肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、ユーイング腫瘍/原始神経外胚葉性腫瘍、および他のまれな型の腫瘍などがある。CCSSは、小児がん生存者14,372人を対象にしたネステッドケースコントロール研究の症例105例および対応対照422例に関して、以下の結果を報告した。[ 74 ]

皮膚がん

非黒色腫皮膚がん(NMSC)は小児がん生存者に最もよくみられるSNの1つで、放射線療法と強い相関を示す。[ 75 ]CCSSでは、以下の観察結果が得られた:

Dutch Childhood Oncology Group(DCOG)-LATERコホートにおける小児がん生存者5,843人では、研究者らにより、小児がん生存者はBCC発症リスクが30倍高いことが明らかにされた。最初のBCC診断後、患者の46.7%がその後さらにBCCを発症した。このリスクは最初の放射線領域への何らかの放射線療法(HR、14.32)に関連し、また照射野内の皮膚表面積の推定割合(曝露面積26%-75%:HR、1.99;76%-100%:HR、2.16 vs 1%-25%;曝露におけるP傾向 = 0.002)に関連していた。BCCリスクは、規定された放射線量および日光に曝露した可能性のある皮膚領域に関連しなかった。調査されたすべての化学療法群のうち、ビンカアルカロイドのみがBCCリスクを増加させた(HR、1.54)。[ 77 ]

最初のSNとしてNMSCが発生することで、将来的に浸潤性悪性SNのリスクが高い集団が特定されることが報告されている。[ 4 ]CCSSの研究者らは、放射線曝露を受けた生存者における15年時点での悪性新生物の累積発生率について、最初のSNとしてNMSCを発症した生存者では20.3%(95%CI、13.0%-27.6%)であったのに対して、最初のSNが浸潤性悪性腫瘍であった生存者では10.7%(95%CI、7.2%-14.2%)あったことを認めた。

小児がん生存者コホートでは、悪性黒色腫もSNとして報告されているが、発生率はNMSCよりはるかに低い。19件のオリジナル研究(合計生存者 N = 151,575;追跡調査期間中央値13年)からのデータを含む系統的レビューにより、悪性黒色腫の年間発生率が小児がん生存者100,000人当たり10.8例であることが確認された。[ 78 ]

これらの研究で、次のような悪性黒色腫の危険因子が特定された:[ 78 ]

黒色腫は、HL、遺伝性網膜芽細胞腫、軟部肉腫、および性腺腫瘍の生存者に最も高頻度に発生したが、関連研究で報告された生存者の中で、他の種類の小児がんで黒色腫リスクの評価がなされていない生存者の数は比較的少なかった。[ 78 ]

CCSSの研究者らによる観察では、コホート構成員では黒色腫のリスクが約2.5倍高かった(SIR、2.42;95%CI、1.77-3.23、発症までの期間中央値、21.0年)。最初のがん診断から35年経過時におけるそれ以降の最初の黒色腫の累積発生率は0.55%(95%CI、0.37%-0.73%)、絶対過剰リスクは1,000人年当たり0.10(95%CI、0.05-0.15)であった。がんの家族歴、人口統計学的因子、または治療関連因子は黒色腫のリスクを予測しなかった。[ 79 ]

肺がん

肺がん:小児がん生存者コホートで、肺がんは比較的まれなSNである;CCSSの参加者における肺がんの30年累積発生率は0.1%(95%CI、0.0%-0.2%)であった。[ 2 ]以下の各点は、小児HLの成人生存者に観察された内容である:[ 80 ]

消化管(GI)がん

小児がんの生存者では一般集団よりも頻繁かつ若い年齢で消化管悪性腫瘍が発生するという実質的な証拠が存在する。[ 13 ][ 81 ][ 82 ][ 83 ][ 84 ]

以下の各点は、小児がんの成人生存者に観察された内容である:

  1. Late Effects Study Groupは、小児HLの成人生存者では胃がんのリスクが63.9倍に増大し、大腸がんのリスクが36.4倍に増大することを報告した。以前の放射線療法に加え、原発がんの治療時に若年(0~5歳)であることもリスクを顕著に増大させた。[ 13 ]
  2. 17歳未満で小児固形がんと診断された生存者を対象としたフランスと英国のコホート内ケースコントロール研究によると、消化器官にSNを発症するリスクは治療法によって異なっていた。以下の結果も観察された:[ 81 ]
  3. CCSS研究者らは、研究参加者における消化管のSNリスクが、一般集団の4.6倍(95%CI、3.4-6.1)であることを報告した。さらに、以下の結果も報告している:[ 82 ]
  4. St. Jude Children's Research Hospitalの研究者らは、米国集団の対照と比較した二次性大腸がんのSIRが10.9(95%CI、6.6-17.0)であったことを明らかにした。さらに、次の結果も報告している:[ 83 ]
  5. 多施設プロスペクティブ研究で、10年以上前に腹部/骨盤部に放射線照射を受け、35~49歳で大腸内視鏡検査によるスクリーニングを受けた小児がん生存者の27.8%で前がん性の可能性がある腫瘍性ポリープが発見されたことが観察された。[ 85 ]
  6. DCOG-LATERレコードリンケージ研究により、中央値で24.9年追跡された小児がんの5年生存者5,843人において組織学的に確認された大腸腺腫のリスクが評価された。[ 86 ]
  7. 2つの施設の大規模シリーズにおいて、(1914年から2016年に診断された)網膜芽細胞腫患者2,053人が確認された。[ 87 ]

まとめると、これらの研究から、高リスクの線量に曝露された生存者では、大腸がんサーベイランスを若い年齢で開始する必要性が支持される。[ 13 ][ 81 ][ 82 ][ 83 ][ 88 ]

腎がん

成人発症型がんの生存者における報告と一致しているが、小児がん生存者では腎がんのリスク増加が観察されている。[ 30 ][ 89 ][ 90 ]

CCSSの研究者らにより、一般集団と比較してコホートの5年生存者14,358人ではその後の腎がんの有意な過剰が報告された(SIR、8.0;95%CI、5.2-11.7)。[ 89 ]全体的な絶対過剰リスクは105人年当たり8.4と報告され、これらの症例が比較的まれであることを示している。以下の集団で最も高いリスクが観察された:

腎がんのまれな症例が結節性硬化症の小児に観察されたため、根底にある遺伝的素因も関与している可能性がある。[ 89 ]

SN後の生存転帰

Surveillance, Epidemiology, and End Results (SEER) Programからのデータを用いて、最初の原発性悪性腫瘍を有する60歳未満の患者(n = 1,332,203)が、2回目の原発性悪性腫瘍を有する小児がん生存者(n = 1,409)と比較された。2回目の原発性悪性腫瘍を診断された小児がん生存者は、研究でがんの種類、年齢、性別、人種、および診断の10年間で調整後、がんの既往のない同等の患者よりも全生存が不良であった(HR、1.86;95%CI、1.72-2.02)。小児がんの既往は、最も一般的に診断される2回目の原発性悪性腫瘍(乳がん、甲状腺がん、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、黒色腫、骨がん、軟部肉腫など)による死亡リスクの2~3倍の増加に一貫して関連していた。[ 94 ]

後に乳がんを診断されたCCSSの女性参加者(n = 274)とde novo乳がんを有するマッチングされた対照群の女性(n = 1,095)を対象にした研究において、小児がん生存者は乳がんの治療について調整した後でさえ、死亡率が高いことが明らかにされた(HR、2.2;95%CI、1.7-3.0)。生存者は、他のSMNおよび心血管疾患や肺疾患など、他の健康関連の原因の結果として死亡する可能性が5倍高かった(HR、5.5;95%CI、3.4-9.0)。非同時性の二次乳がんの累積発生率は、対照と比較して有意に高かった(5年経過時に、小児がん生存者で8.0% vs 対照で2.7%;P < 0.001)。[ 50 ]

二次新生物と遺伝的感受性

文献によると、SN発生における化学療法と放射線療法の役割が明確に裏付けられている。しかしながら、個人間変動が存在し、遺伝子変異が遺伝毒性薬曝露に対する脆弱性に関与しており、リー-フラウメニ症候群のような遺伝的感受性症候群ががんリスクを増大させることを示唆している。[ 95 ][ 96 ]過去の研究により、特にリー-フラウメニ症候群の家族歴またはがんの家族歴を有する小児がん生存者は、SNの発症リスクが高いことが明らかにされている。[ 97 ][ 98 ]

SNのリスクは、これらの重篤な遺伝性疾患(例えば、リー-フラウメニ症候群)の原因となる、浸透度が高い遺伝子の変異によって潜在的に変化する可能性がある。[ 98 ]しかしながら、浸透度が高い遺伝子における変異の保有率はきわめて低いため、寄与リスクは非常に小さいと予測される。

同様に、神経線維腫症1型(NF1)を認め原発腫瘍を発症する小児は、NF1を認めない小児がん生存者と比較してSNのリスクが高い。放射線による治療(ただし、アルキル化剤ではない)によって、NF1を認める生存者におけるSNのリスクが増大する。[ 99 ]

表1に、多種多様な新生物、欠陥遺伝子、および遺伝性がん素因の中から選択された症候群のメンデル型遺伝モードについて要約している。

表1.遺伝性がん素因の中から選択された症候群a
症候群 主要な腫瘍型 欠陥遺伝子 遺伝モード
AML = 急性骨髄性白血病;MDS = 骨髄異形成症候群;WAGR = ウィルムス腫瘍(W)、無虹彩症(A)、泌尿生殖器奇形(G)、精神遅滞(R)。
a 出典:Schwartz et al.[ 100 ]
b患者の一部で優性遺伝がみられ、自然突然変異が生じている可能性がある。
結腸の腺腫性ポリポーシス 結腸がん、肝芽腫、腸のがん、胃がん、甲状腺がん APC 優性遺伝
毛細血管拡張性運動失調症 白血病、リンパ腫 ATM 劣性遺伝
ベックウィズ-ヴィーデマン症候群 副腎がん、肝芽腫、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍 CDKN1C/NSD1 優性遺伝
ブルーム症候群 白血病、リンパ腫、皮膚がん BLM 劣性遺伝
ダイアモンド-ブラックファン貧血 結腸がん、骨原性肉腫、AML/MDS RPS19および他のRP遺伝子 優性遺伝、自然突然変異b
ファンコニー貧血 婦人科腫瘍、白血病、扁平上皮がん FANCA、FANCB、FANCC、FANCD2、FANCE、FANCF、FANCG 劣性遺伝
若年性ポリポーシス症候群 消化管の腫瘍 SMAD4/DPC4 優性遺伝
リー-フラウメニ症候群 副腎皮質がん、脳腫瘍、乳がん、白血病、骨肉腫、軟部肉腫 TP53 優性遺伝
多発性内分泌腫瘍1型 膵島細胞腫瘍、副甲状腺腺腫、下垂体腺腫 MEN1 優性遺伝
多発性内分泌腫瘍2型 甲状腺髄様がん、褐色細胞腫 RET 優性遺伝
神経線維腫症1型 神経線維腫、視経路グリオーマ、末梢神経鞘腫瘍 NF1 優性遺伝
神経線維腫症2型 前庭神経鞘腫 NF2 優性遺伝
母斑基底細胞がん症候群 基底細胞がん、髄芽腫 PTCH 優性遺伝
ポイツ・ジェガース症候群 腸のがん、卵巣がん、膵がん STK11 優性遺伝
網膜芽細胞腫 骨肉腫、網膜芽細胞腫 RB1 優性遺伝
結節性硬化症 過誤腫、腎血管筋脂肪腫、腎細胞がん TSC1/TSC2 優性遺伝
フォン・ヒッペル-リンダウ症候群 血管芽細胞腫、褐色細胞腫、腎細胞がん、網膜および中枢神経系の腫瘍 VHL 優性遺伝
WAGR症候群 性腺芽細胞腫、ウィルムス腫瘍 WT1 優性遺伝
ウィルムス腫瘍症候群 ウィルムス腫瘍 WT1 優性遺伝
色素性乾皮症 白血病、黒色腫 XPA、XPB、XPC、XPD、XPE、XPF、XPG、POLH 劣性遺伝

薬物代謝酵素とDNA修復多型

SNリスクにおける個人差は、浸透度が低い遺伝子によくみられる多型に関連しており、その多型が薬の活性代謝産物の利用能を調節したり、DNA修復に関与したりしている可能性が高い。遺伝子と環境の相互作用は、遺伝的変異に起因する微妙な機能差を誇張する場合がある。

薬物代謝酵素

遺伝毒性薬物の代謝は2段階で発生する。

  1. 第I段階は、基質を活性化して、きわめて反応性に富み、DNAを傷つける可能性がある求電子的中間物質を生じる、主に酵素のチトクロムp450(CYP)ファミリーが働く反応を伴う。
  2. 第II段階の酵素(接合)は、遺伝毒性基質を不活化する働きをする。その第II段階の蛋白は、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)酵素、NAD(P)H:quinone oxidoreductase-1(NQO1)酵素、およびその他で構成される。

この2組の酵素のバランスは、生体異物に対する細胞反応にきわめて重要である;例えば、第I段階の酵素活性が高く、第II段階の酵素活性が低いと、DNA損傷を引き起こす可能性がある。

DNA修復多型

DNA修復メカニズムは、がんの発生および進行に至る可能性がある腫瘍抑制遺伝子およびがん遺伝子の変異から体細胞を守っている。個々のDNA修復能力は、遺伝的に決まると考えられる。[ 101 ]多くのDNA修復遺伝子が多型変異体を含んでおり、DNA修復能力における大きな個人差の原因となっている。[ 101 ]DNA修復に影響する多型がSNのリスクに及ぼす役割に関する評価は活発に研究されている領域である。

二次新生物のスクリーニングおよび経過観察

小児がん生存者には、慎重なスクリーニングを行うことが重要である。[ 102 ]小児がん生存者の集団は比較的小さいことや、有病率および治療関連の合併症の発症までの時間により、スクリーニングの推奨事項が晩期合併症(晩期障害)に関連した罹病率および死亡率に及ぼす影響を評価する臨床研究は実施が困難である。

小児がん生存者の大規模集団に対するよく管理された研究は、特異的治療への曝露と晩期合併症(晩期障害)との関連性の有力な証拠を提示している。この証拠は、複数の国内および国際共同グループ(Scottish Collegiate Guidelines Network、Children's Cancer and Leukaemia Group、小児腫瘍学グループ[COG]、DCOG)が、医学的に脆弱な小児がん生存者に対する即時ケアの必要性についての認識を広め、標準化することを目的に、コンセンサスに基づいた臨床診療ガイドラインを作成するために用いられている。[ 103 ]

小児がん生存者に対するすべての健康スクリーニングガイドラインは、証拠に基づくアプローチ(治療的曝露と晩期合併症(晩期障害)との確立された関連性を利用して高リスクのカテゴリーを特定する)と専門家の臨床経験の集積に基づくアプローチ(リスクの大きさとスクリーニング推奨事項の強さを一致させる)の両方を混合的に採用している。これらのガイドラインのスクリーニング推奨事項は、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)の専門家で構成される委員会のコンセンサスを表明している。[ 102 ][ 103 ]

悪性SNに対するCOGガイドラインは、小児がん生存者の中の特定の高リスク集団には、素因となる宿主因子、行動因子、治療因子があるため、強化したサーベイランスを行う価値があることを指摘している。[ 102 ]

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心血管系の晩期合併症(晩期障害)

最初のがんが再発した後および二次原発がんの発生後の心血管疾患は、小児がん長期生存者における若年死亡の第一原因であることが報告されている。[ 1 ][ 2 ][ 3 ]

証拠(心血管疾患による若年死亡の過剰リスク):

  1. 1970年から1986年に治療を受けた20,000人以上の北米の小児がん5年生存者(Childhood Cancer Survivor Study [CCSS])において、心疾患による死亡の標準化死亡比は7.0(95%信頼区間[CI]、5.9-8.2)であり、この比は1,000人年当たり0.36の超過死亡に変換された。[ 4 ]より近年(すなわち、1990年代)に治療を受けた小児における晩期の心臓死は減少しているようである(例、累積発生率は1970年から1974年で0.5%であったのに対し、1990年から1994年では0.1%であった)。[ 1 ]
  2. 1940年から2006年に診断された小児がんの5年生存者34,489人を対象とした集団ベースのBritish Childhood Cancer Survivor Studyで観察されているように、心疾患は小児がん生存者が熟年期に達するにつれてますます重要になる。[ 2 ][ 5 ]

このセクションで取り上げる晩期合併症(晩期障害)には以下のものがある:

このセクションでは、これらの晩期合併症(晩期障害)に関して、高血圧、異脂肪血症、糖尿病などの関連疾患の影響についても簡潔に説明するが、小児がん治療の結果生じるこれらの疾患の詳細を直接レビューするわけではない。American Heart Associationによるがんの小児生存者と若年成人生存者における長期心血管毒性の包括的レビューが公開されている。[ 6 ]

心血管系転帰に対する証拠資料

証拠(心血管系転帰について記述している一部のコホート研究):

  1. CCSSの研究者らは、1970年から1999年の間に小児がんを診断された参加者における主要な心イベントについて報告した。[ 17 ]
  2. CCSSでは、1970年から1999年に診断された5年生存者24,214人のデータを用いて、放射線療法の線量と曝露した心臓容積、選択された化学療法薬、および曝露時の年齢が晩発性の心疾患のリスクに及ぼす影響を評価した(図4を参照のこと)。[ 18 ]
    小児がん生存者における治療関連の心疾患リスクを示す図。

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    図4.小児がん生存者における治療関連の心疾患リスクの累積発生率;(A-C)心臓への平均線量、(D-F)20Gy以上の放射線療法(RT)を受けた心臓の容積(%)、および(G-I)心臓への最大線量が20Gy未満である場合は、5Gy以上のRTを受けた心臓の容積(%)に基づく。(J-L)アントラサイクリンの累積用量。(*)0%は心臓への最大放射線量が0.1~19.9Gyである。(†)0%は心臓への最大放射線量が0.1~4.9Gyである。許諾を得て転載。© 2019 American Society of Clinical Oncology.All rights reserved.Bates JE, Howell RM, Liu Q, et al: Therapy-Related Cardiac Risk in Childhood Cancer Survivors: An Analysis of the Childhood Cancer Survivor Study.J Clin Oncol, Vol. 37 (Issue 13), 2019: 1090-1101.
  3. フランスの多施設コホートで1942年から1986年に治療を受けた5年生存者3,162人が追跡期間中央値26年にわたりモニターされた。[ 9 ]
  4. オランダの病院ベースの小児がん5年生存者コホート1,362人(到達年齢中央値29.1歳)が診断から追跡期間中央値22.2年にわたりモニターされた。[ 19 ]
  5. CCSSにより、小児がん生存者において重篤な心イベント(心筋梗塞、うっ血性心不全、心膜疾患、および心臓弁膜異常)の累積発生率が45歳以降も増大し続けることが実証された。[ 7 ]
  6. St. Jude Children's Research Hospital(SJCRH)で治療を受け、10年以上生存しているホジキンリンパ腫の生存者670人のうち、348人の患者がSt. Jude Lifetime Cohort Studyで臨床的に評価された。[ 20 ]
  7. 別のSt. Jude Lifetime Cohort Studyでは、2,715人の参加者と268人の地域の対照者における心電図(ECG)の重大な異常と軽微な異常の有病率が比較された。[ 21 ]
  8. Teenage and Young Adult Cancer Survivor Studyでは、青年および若年成人がんの20万人以上の5年生存者(年齢15~39歳)を対象にして心疾患による死亡が調査された。[ 3 ]

治療の危険因子

放射線療法を伴う化学療法(特に、アントラサイクリン系およびアントラキノン系)は、単独でも併用でも、小児がん生存者の心血管疾患のリスクを高め、この集団における早発心血管疾患に寄与する最も重要な危険因子であると考えられる(図5を参照のこと)。[ 19 ]

5つの表は、小児がん生存者における異なる治療群に応じた心イベントの周辺累積発生率および原因特異的累積発生率を示している。

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図5.小児がん生存者における異なる治療群に応じた心イベント(CE)の(A、B)周辺(Kaplan-Meier法)累積発生率および原因特異的(競合リスク)累積発生率。(A)すべての心イベントに対する周辺累積発生率で、潜在的な心毒性(CTX)療法または心毒性療法なしに応じて層別化される(ログランクP < 0.001)。(B)すべての心イベントに対する周辺累積発生率で、異なる心毒性療法に応じて層別化される(ログランクP < 0.001)。(C)うっ血性心不全に対する原因特異的累積発生率で、異なる治療群に応じて層別化される(ログランクP < 0.001)。(D)心虚血に対する原因特異的累積発生率で、心臓への放射線照射(RTX)または心臓への放射線照射なしに応じて層別化される(ログランクP = 0.01)。(E)弁膜症に対する原因特異的累積発生率で、心臓への放射線照射または心臓への放射線照射なしに応じて層別化される(ログランクP < 0.001)。色の付いた影付きの背景は95%CIを指す。Ant、アントラサイクリン。Helena J. van der Pal, Elvira C. van Dalen, Evelien van Delden, Irma W. van Dijk, Wouter E. Kok, Ronald B. Geskus, Elske Sieswerda, Foppe Oldenburger, Caro C. Koning, Flora E. van Leeuwen, Huib N. Caron, Leontien C. Kremer, High Risk of Symptomatic Cardiac Events in Childhood Cancer Survivors, Journal of Clinical Oncology, volume 30, issue 13, pages 1429-1437. (許諾を得て転載。)© (2012) American Society of Clinical Oncology.All rights reserved.

アントラサイクリン系薬剤および関連薬剤

アントラサイクリン系薬剤(例、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、エピルビシン)およびアントラキノン系薬剤(例、ミトキサントロン)は、心筋細胞におけるトポイソメラーゼ2βの阻害および活性酸素種の形成を通じて心筋細胞に直接損傷を与え、その結果、細胞死経路の活性化およびミトコンドリア性アポトーシスの阻害を来すことが知られている。[ 22 ][ 23 ]細胞死が起きた結果、心臓の構造に壁厚減少などの変化が生じて心室負荷や病的なリモデリングにつながり、やがて機能不全を来して、最終的に臨床的心不全に至る。[ 24 ][ 25 ]

アントラサイクリン系薬剤に関連する心筋症の危険因子には以下のものがある:[ 18 ][ 26 ]

表は、アントラサイクりンの累積投与量に応じて、アントラサイクリンにより誘発される臨床的心不全(A-CHF)のリスクを示す。

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図6.アントラサイクリンの累積投与量に応じて、アントラサイクリンにより誘発される臨床的心不全(A-CHF)のリスク。Elsevierから許諾を得て転載:European Journal of Cancer, Volume 42, Elvira C. van Dalen, Helena J.H. van der Pal, Wouter E.M. Kok, Huib N. Caron, Leontien C.M. Kremer, Clinical heart failure in a cohort of children treated with anthracyclines: A long-term follow-up study, Pages 3191-3198, Copyright (2006).

アントラサイクリン用量の同等性

伝統的に、アントラサイクリン用量の同等性は主として、晩期の心毒性というよりもむしろ急性の血液毒性の同等性に基づいている。[ 29 ]

  1. ほとんどの小児専門家学会とグループは、一般にダウノルビシンをドキソルビシンと同等か、またはほぼ同等とみなしているが、歴史的にはより低い割合も提案されている。[ 30 ][ 31 ]
  2. 40歳までモニターされた(399例の心筋症症例が発見された)小児がんの長期生存者28,000人以上を併合した解析により、こうした以前の想定が問題にされている。[ 31 ][ 32 ]

アントラサイクリンに対する心保護

以下の心保護的戦略が検討されている:

  1. 心毒性の低い新規薬剤とリポソーム製剤。 一般的に、アントラサイクリン系のリポソーム製剤が小児の心毒性を低減するかどうかに関するデータは限られている。[ 33 ][ 34 ]
  2. 注入時間の延長。 注入時間の延長は、成人患者において心不全の減少に関連しているが、小児では関連がみられない。[ 35 ][ 36 ]
  3. 心保護薬の同時投与。 さまざまな薬剤が心保護薬としての検証を受けてきた(アミフォスチン、アセチルシステイン、カルシウムチャネル遮断薬、カルベジロール、コエンザイムQ10、Lカルニチン)が、十分な有益性が示されたものはなく、いずれも標準治療にはなっていない。[ 37 ][ 38 ]
  4. デクスラゾキサン。主に成人がん患者についてのものではあるが、心保護薬としてのデクスラゾキサンに関するデータは多く存在し、米国食品医薬品局は、アントラサイクリン系薬剤300mg/m2を投与され、さらなるアントラサイクリンをベースとした療法の有益性が見込まれる転移性乳がんの女性に対し、その使用を承認している。[ 37 ]

放射線療法

アントラサイクリン系薬剤は心筋細胞に直接損傷を与え、放射線療法は主に心臓の微細血管系に影響を及ぼす。[ 6 ]

心血管疾患

心臓への放射線療法によって、特に以下の晩期合併症(晩期障害)が生じる:

これらの心臓への晩期合併症(晩期障害)は以下に関連している:

心血管系に影響を及ぼす放射線療法と心毒性の化学療法薬に曝露した患者は、晩期の心血管系転帰のリスクがよりいっそう高くなる。[ 9 ][ 18 ]

脳血管疾患

放射線療法に曝露した後の脳血管疾患も、生存者に観察される可能性のある別の晩期合併症(晩期障害)である。

証拠(脳血管障害[CVA]/血管疾患の有病率および危険因子を報告した選択された研究):

  1. オランダの1件の多施設レトロスペクティブ研究では、51歳以前(25%は小児患者)に診断されたホジキンリンパ腫の5年生存者2,201人のうち、追跡期間中央値18年で96人の患者が脳血管疾患(CVAおよび一過性脳虚血発作[TIA])を発症した。[ 49 ]
  2. フランスの研究者は、小児がんの5年生存者4,227人(追跡期間中央値、29年)において、脳への放射線量と長期的な脳血管死亡率の間に有意な関連性を認めた。[ 50 ]
  3. 頭蓋照射または頸部照射による治療を受けた小児がんの生存者325人を対象とした、単一施設のレトロスペクティブ・コホート研究で、頭蓋照射は生存者における初発または再発脳卒中のリスクを高めると判定された。[ 52 ]
  4. CCSSの研究者らにより、初発脳卒中を報告した参加者における再発脳卒中の割合および予測因子が評価された。[ 53 ]
  5. 小児がん5年生存者3,172人を平均で26年間にわたりモニターしたレトロスペクティブ研究は、Euro2Kコホートから構成され、フランスおよび英国の8施設が含まれていた。放射線療法を受けた2,202人の各小児についてウィリス動脈輪に対する放射線量が見積もられた。[ 55 ]
  6. Teenage and Young Adult Cancer Survivor Study(N = 178,962)の研究者らにより、15~39歳の間に診断されたがんの5年生存者における脳血管性イベントによる入院のリスクが評価された。[ 56 ]

静脈血栓塞栓症

がんの小児は診断から最初の5年以内に静脈血栓塞栓症を発症する過剰リスクを有する;しかしながら、小児がん生存者における静脈血栓塞栓症の長期リスクはあまり研究されていない。[ 57 ]

CCSSの研究者らにより、コホート集団における自己報告の晩期に発生する(がん診断から5年以上)静脈血栓塞栓症が評価された(追跡期間中央値、21.3年)。[ 58 ]

通常の心血管疾患

その他の危険因子

性。 すべてではないが、一部の研究では、女性であることとアントラサイクリン関連心筋症のリスク増大に関連がある可能性が示されている。[ 6 ]

遺伝学。 薬物の代謝および分布を調節する遺伝子における一塩基多型のような遺伝因子で、アントラサイクリンによる心臓損傷への感受性における不均一性を説明できる可能性があり、このことを示す証拠が新たに得られつつある。[ 62 ][ 63 ][ 64 ][ 65 ][ 66 ][ 67 ] しかし、これらの遺伝学的発見は、臨床スクリーニングアルゴリズムに統合する前に、さらに検証を重ねる必要がある。[ 68 ]

周産期の心機能不全

潜在的に心毒性を有する治療に過去に曝露した小児、青年、および若年成人における悪性腫瘍の長期生存者は周産期の心機能不全のリスクが高い。

一般集団における周産期心筋症(PPCM)は、妊娠中(通常は妊娠第3期ないし分娩後5ヵ月未満)の心不全を特徴とするまれな疾患である。一般集団における推定発生率は、1:3,000生児出生である。[ 69 ]

心毒性を有する治療を受けた小児、青年、および若年成人の悪性腫瘍生存者における有病率に関して利用可能なデータは限られている。リスクを有する患者には周産期の心臓評価が推奨される。

小児がん後の心臓移植

心臓移植が必要な心不全が認められる生存者の有病率および転帰に関するデータは限られている。

十分に解明されていない領域

過去20年以上にわたって多くの知見が蓄積され、小児がん生存者における心血管疾患の長期負荷と危険因子についての理解は進んだが、現在も以下のような多くの領域で研究が進められている:

スクリーニング、サーベイランス、カウンセリング

米国国立衛生研究所が後援している小児腫瘍学グループ(COG)(表2を参照)などのさまざまな国際グループが、小児がん生存者を対象とした心血管系やその他の晩期障害のスクリーニングとサーベイランスに関する推奨を公表している。[ 75 ][ 76 ][ 77 ](詳しい情報については、COGの長期追跡ガイドラインを参照のこと。)

専門家グループ(小児および成人の両方)がエビデンスに基づく健康サーベイランスの推奨を策定しており、今後の研究の指針として役立てるために、十分に解明されていない領域を特定している。[ 26 ][ 78 ]

成人腫瘍学の専門グループと国際グループも、心毒性のモニタリングに関する推奨を発表している。[ 79 ]

スクリーニング、サーベイランス、カウンセリングの証拠に関するコンセンサス

心血管疾患リスクの予測

心血管系疾患のリスク予測

  1. 大規模で説明の豊富な4つの小児がん生存者コホート(CCSS、National Wilms Tumor Study Group、オランダの施設、SJCRH)のデータを使用して、入手が容易な人口統計学的特性と治療上の特徴に基づく心不全リスクの計算モデルの作成と検証が行われ、最近治療が完了した小児がんの5年生存者について、このモデルで患者ごとに40歳までの臨床的な心不全リスク推定を示すことが可能になった。この推定モデルには、ベースラインの予測(5年生存)時に参加者が若年であるため、高血圧、異脂肪血症、または糖尿病などの通常の心血管疾患に関する情報が組み込まれていないという制限がある。[ 27 ]
  2. 別の共同研究で、CCSS、オランダ、およびSJCRHからのデータを用いて、小児がんの5年生存者で50歳までの虚血性心疾患および脳卒中のリスク予測モデルが開発された。性別、化学療法の曝露、および放射線療法の曝露を含む標準予測モデルから得られたリスクスコアで、統計的に異なる低リスク、中間リスク、および高リスクが識別された。CCSS低リスク群における50歳での累積発生率は、5%未満であったのに対して、高リスク群では約20%で、同胞でわずか1%であった。[ 91 ]
  3. 高血圧、異脂肪血症、糖尿病などの従来の心血管系危険因子に関する情報と組み合わせて心毒性を有するがん治療への曝露を説明する予測モデルを構築したCCSSの調査で実証されているように、小児がんの成人生存者における心血管疾患のリスクを予測する上で、従来の心血管系危険因子は依然として重要である。人口統計学、がん治療、高血圧、異脂肪血症、および糖尿病の情報に基づくリスクスコアは、発見コホートおよび複製コホートに適用するモデルにおいて心血管イベントを予測する上で良好な性能(受信者動作特性曲線下面積および一致性統計量が0.70以上)を示した。最も影響力の強い曝露は、アントラサイクリン系薬物を含む化学療法、放射線療法、糖尿病、および高血圧であった。[ 89 ]
表2.心血管系の晩期合併症(晩期障害)a,b
素因となる治療 潜在的な心血管系の影響 健康スクリーニング
a小児腫瘍学グループ(COG)ガイドラインには、肥満および糖尿病/糖代謝障害など、心血管系リスクに影響を与えうる他の病態も記載されている。
b出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
アントラサイクリンおよび/または心臓に対する放射線照射 心毒性(不整脈、心筋症/心不全、心膜疾患、弁膜症、虚血性心疾患) 年1回の病歴聴取および身体診察
初回の心電図と長期追跡
初回の心電図と長期追跡、以前の曝露とその他の危険因子に基づく定期的な再実施
頸部および頭蓋底への放射線照射(特に40Gy以上) 頸動脈および/または鎖骨下動脈疾患 年1回の病歴聴取および身体診察;曝露の10年後にドプラ超音波検査を検討する
脳/頭蓋に対する放射線照射(特に18Gy以上) 脳血管疾患(海綿腫、もやもや病、閉塞性脳血管症、脳卒中) 年1回の病歴聴取および身体診察
腹部への放射線照射 糖尿病 2年ごとの糖尿病スクリーニング
全身放射線照射(通常14Gy未満) 異脂肪血症;糖尿病 2年ごとに空腹時脂質組成および糖尿病スクリーニング
重金属(カルボプラチン、シスプラチン)、およびイホスファミドへの曝露;腎臓に対する放射線照射;造血細胞移植;腎摘出術 高血圧(腎毒性の結果として) 年1回の血圧;初回の腎機能臨床検査と長期追跡で、臨床的に適応であれば繰り返す
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中枢神経系の晩期合併症(晩期障害)

神経認知的

神経認知的晩期合併症(晩期障害)は、中枢神経系(CNS)に対する治療を必要とする悪性腫瘍の治療後に現れることが最も多い。この転帰については多数の証拠が発表されているが、少ないサンプルサイズ、コホート選択および参加バイアス、横断的評価 vs 縦断的評価、治療への曝露から評価までの時間が不定であることによって質がしばしば限定される。中枢神経系(CNS)に対する治療には以下のものがある:

脳腫瘍または急性リンパ芽球性白血病(ALL)の小児が罹患する可能性が最も高い。神経認知的晩期合併症(晩期障害)の発生に関する危険因子には以下のものがある:[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 6 ][ 7 ]

ALLおよびCNS腫瘍の小児生存者における認知的表現型は、従来の発達障害とは異なる場合がある。例えば、ALLおよび脳腫瘍の生存者における注意力障害の表現型は、重大な多動性/衝動性を示す生存者がほとんど見られないことから、発達上の注意欠陥障害/多動性障害とは異なるが、代わりに処理速度と実行機能の障害に関連していると考えられる。[ 8 ][ 9 ]

Childhood Cancer Survivor Study(CCSS)の研究者らは、頭蓋照射のような神経毒性療法の直接的な影響に加えて、非神経毒性療法(例、胸部放射線療法)の曝露からもたらされる慢性的な健康障害が神経認知的機能に有害な影響を与える可能性があることを観察した。[ 10 ]彼らは、長期生存者における健康的な脳の成長を支援する介入を促進する重要性を強調して、治療後に発生する慢性的な心肺および内分泌機能不全が神経認知機能に対する神経毒性曝露の影響を調節しており、さらに悪化させるのではないかと仮定した。

脳腫瘍生存者における神経認知機能転帰

脳腫瘍の小児の生存率は、ここ数十年間で増加している;しかしながら、病気自体および病気に伴う治療による長期的な認知的障害は、この生存者グループ内において十分に確立された障害である。小児期および青年期の脳腫瘍からの生存者では、有害な神経認知的障害の危険因子として、以下のような因子が挙げられる:

放射線療法の有害な影響は、IQスコアの変化に特徴的に現れ、IQスコアは診断から約2~5年間で低下する;その後、5~10年にわたって低下し続けるが、診断から数十年後にIQスコアが安定するか、またはさらに低下するかについてはよく分かっていない。[ 21 ][ 22 ][ 23 ]通常、この経時的なIQスコアの低下は、能力および知識の進行性消失よりも、むしろ新しい能力または情報を同年齢の子供と同程度の速度で獲得できないことを反映している。[ 12 ]さらに、障害のある小児は他の認知領域の障害、例えば、学習困難(読解および数学)や注意、処理速度、記憶、視覚および知覚運動能力の問題を抱える場合がある。[ 22 ][ 24 ][ 25 ]

これらの認知機能の変化は、磁気共鳴画像法(MRI)により評価される、放射線療法誘発性の正常白質容積の減少または白質経路の完全性の低下によって、部分的に説明可能である。[ 26 ][ 27 ][ 28 ]実際に、白質統合性の低下は脳腫瘍生存者の認知的処理速度の低下に直接関連している一方で、[ 29 ]白質容積の大きさと作業記憶の良好さは、特に女性において関連している。[ 28 ]注目すべきことに、現行のプロトコルから得られたデータによると、頭蓋照射の線量を低くし、照射容積をより限定することで、治療による神経認知的障害が軽減されるようである。[ 14 ][ 16 ][ 30 ]

長期にわたるコホート研究により、CNS腫瘍の生存者における認知力低下の経過と予測因子に対する洞察が得られている。

証拠(CNS腫瘍の生存者における認知力低下の予測因子):

  1. St. Jude Children's Research Hospital(SJCRH)は、低悪性度グリオーマの診断を受けた20歳未満の小児78人(平均9.7歳)を対象とする研究を行った。[ 31 ]
  2. 生後1年以内に診断された低悪性度グリオーマおよび低悪性度グリア神経細胞性腫瘍の小児51人を対象にした研究では、平均IQスコアは75.5であった;小児の75%でIQスコアが85未満であった。低いIQを予測する因子には、原発腫瘍がテント上に位置することおよび多くの化学療法レジメンを用いた治療が挙げられたが、放射線の使用は挙げられなかった。年齢に応じた課題を完了する小児の能力も、IQスコアと同様に影響を受けた。[ 32 ]
  3. 23.4Gyまたは36~39.6Gyの頭蓋脊髄照射(原発腫瘍床に対する55.8Gyの原体ブースト照射)を受けた髄芽腫の生存者126人を対象とした研究では、処理速度、注意、および記憶能力が評価された。[ 33 ]
  4. 1件のプロスペクティブ研究で、後頭蓋窩症候群を経験した36人の小児髄芽腫患者と、後頭蓋窩症候群は経験しなかったが、治療および診断時年齢をマッチさせた36人の髄芽腫患者が比較された。[ 36 ]
  5. カナダの研究者らは、髄芽腫生存者113人のコホート(診断時平均年齢、7.5歳;診断から最終評価までの平均期間、6年)を対象に、知的機能パターンに対する放射線療法(線量およびブースト量)および神経学的合併症の影響について評価した。[ 37 ]
  6. 組織学的に明らかに異なるサブタイプの脳腫瘍における認知的転帰について検討する研究が開始されている。例えば、髄芽腫患者121人のサンプルからのデータにより、4つの異なる分子的亜型での認知的転帰における変動および経時的な変化パターンにおける違いが実証された。[ 38 ]この研究では、小児脳腫瘍の生物学的に異なるサブタイプ間で神経認知機能転帰について検討する研究がさらに必要なことが強調されている。

治療後5~10年以内に観察された有害な神経認知的転帰は広汎性であり経時的に増悪しうると推定されるが、非常に長期のCNS腫瘍生存者の神経認知的機能に関して参照できる経験的データはほとんど存在しない。

CNS疾患および治療の神経認知的結果は、脳腫瘍生存者の機能的転帰に相当な影響を及ぼす可能性がある。

陽子線治療後の認知的転帰

CNSへの陽子線治療後の認知的転帰に関するデータが得られつつある[ 46 ][ 47 ][ 48 ][ 49 ];しかしながら、こうした研究は、比較的小規模の臨床的に不均質な小児脳腫瘍コホートにおける認知的転帰のレトロスペクティブ解析および比較群として過去に治療された光子放射線患者または集団の標準を用いていることによって制限がある。

放射線からの追跡期間が比較的短期間であったことを考慮すると、陽子線治療が光子線治療と比較して認知機能を温存する上で臨床的に意義のある有益性をもたらすかどうかを明らかにするために長期の追跡が重要である。

急性リンパ芽球性白血病(ALL)生存者における神経認知機能転帰

ここ数十年間にわたってALL小児の治癒率が上昇したことで、生存者の神経認知的障害および生活の質への注目が高まっている。現在のALL治療の目標は、高い生存率を維持しながら有害な晩期合併症(晩期障害)を最小限に抑えることである。晩期続発症のリスクを最小化するために、患者は再燃リスクに応じた治療法に層別化される。頭蓋照射は、CNS再燃のリスクが高いとみなされる小児の20%未満に対してのみ行われる。[ 50 ]

低リスク、標準リスク、および最も高リスクの患者に対して、現在では化学療法単独のプロトコルにより治療されるが、ALL患者の神経認知的晩期合併症(晩期障害)に関する初期の報告は、髄腔内化学療法、放射線療法、および大量化学療法の(同時または順次)併用療法を受けた生存者の不均一な治療群に基づいたものであるため、個々の治療要素による影響を区別することが困難である。しかし、化学療法単独治療を受けた小児ALL生存者の神経認知的晩期合併症(晩期障害)のリスクに関して、利用できる転帰データは次第に増加している。

ALLと頭蓋照射

ALLの生存者では、頭蓋照射療法が以下を含む臨床上およびX線検査での神経学的晩期続発症をもたらすことがある:

ALLと化学療法単独によるCNS治療

CNSへの移行性がよく、全身メトトレキサート療法は白血病のCNS予防として低用量と高用量のさまざまなレジメンにおいて使用されている。高用量の全身メトトレキサートを放射線療法と併用する場合と併用しない場合のいずれにおいても、まれではあるが詳細な報告のある白質脳症を引き起こすことがあり、神経認知的障害に関連していた。[ 51 ]放射線療法と化学療法単独のレジメンによる治療後の神経認知的な転帰を直接比較した場合の証拠は、化学療法単独による治療を受けた患者の転帰が良好なことを示しているが、有意差が示されていない研究もある。[ 60 ][ 61 ]小児ALL生存者210人の縦断的解析で、化学療法のみでのCNS治療時の急性白質脳症の発症によって、長期の神経行動学的問題(例:組織化および課題開始[実行機能の要素]の欠損)の発生リスクが高いことが予測されるとともに、脳の前頭部における大脳白質の完全性が低下する。[ 62 ]

頭蓋照射と比較すると、化学療法のみによるCNSに向けた治療法は、注意力、情報処理速度、記憶力、言語の理解力、視覚空間能力、視覚運動神経機能、および実行機能の過程に関与する神経認知的障害をもたらす;全体の知的機能は典型的に温存される。[ 54 ][ 60 ][ 63 ][ 64 ][ 65 ][ 66 ]化学療法単独による治療後に長期的な神経認知的転帰を評価し、全体のIQ低下に関する十分なデータを報告している縦断的研究はほとんどない。[ 64 ]ALLからの長期生存者の学力達成度は、読解および筆記についてはおおむね平均的で、主に計算能力に影響を与える障害があると考えられている。[ 60 ][ 67 ][ 68 ]化学療法単独によるCNSに対する治療後の神経認知的転帰が不良な危険因子は、低年齢および女性である。[ 66 ][ 69 ][ 70 ]

記憶形成に必須の神経解剖学的領域における完全性低下(例、活性化を伴う海馬容積の低下および頭頂葉萎縮)に関連して、認知状態の低下が観察されている。しかしながら、小児ALLに対して、特に化学療法単独を用いた現代のアプローチで治療された、年齢を重ねつつある成人においてこうした有病率の高い神経認知的および神経画像検査による異常が機能状態に及ぼす長期的影響は、引き続き盛んに研究されている分野である。

証拠(大規模な小児がん生存者コホートにおける神経認知的機能):

  1. CCSSは、1970年から1999年にかけて化学療法のみで治療を受けた小児ALLの青年生存者1,560人の親が報告した認知、行動、および学習の問題について検討した。[ 71 ]
  2. 予防的頭蓋照射が省略されたSJCRH Total XV(NCT00137111)試験では、120週目に参加者243人に包括的な認知学的検査が実施され、以下が明らかになった:[ 72 ]
  3. 新たにALLと診断された小児を対象とした神経認知機能転帰に関する大規模なプロスペクティブ研究で、リスクグループに基づいてCNSに向けた治療を受ける群に小児555人がランダム化された。[ 74 ]
    1. 低リスク群:髄腔内メトトレキサート vs 高用量メトトレキサート。
    2. 高リスク群:高用量メトトレキサート vs 24Gyの頭蓋照射療法。
  4. 持続性の認知障害と進行性の知的機能低下は、小児期にALLの治療を受けた成人の複数のコホートで観察されており、学業成績の低下と失業に関連している。[ 53 ][ 56 ][ 59 ]小児ALLの500人を超える成人生存者(診断後、平均26年)を対象とした研究の結果から以下が示された:[ 53 ]

ALLとステロイド療法

ALLの全身治療に用いられる種類のステロイドは認知機能に影響を及ぼす可能性がある。治療中にデキサメタゾンまたはプレドニゾンのいずれかの投与を受けた標準リスクのALLの既往を有する92人の小児を対象に長期神経認知機能検査を実施した研究(追跡期間中央値9.8年)で、神経認知的能力および学業成績の平均スコアに意味のある差は認められなかった。[ 75 ]対照的に、小児白血病の成人生存者567人(平均年齢、33歳;診断後の追跡期間平均値、26年)を対象とした研究で、デキサメタゾン曝露量は、メトトレキサート曝露量とは無関係に、注意力障害(RR、2.12;95%信頼区間[CI]、1.11-4.03)および実行機能障害(RR、2.42;95%CI、1.20-4.91)のリスク増加と関係していた。髄腔内ヒドロコルチゾンも注意力障害のリスクを高める(RR、1.24;95%CI、1.05-1.46)。[ 53 ]

その他のがん

神経認知異常は、他のがん生存者群において報告されている。小児非CNSがんの成人生存者(ALLを含む、n = 5,937)を対象とした1件の研究では、生存者の13~21%が作業効率、組織能力、記憶能力、または感情調節の障害を報告した。この障害比率は、同胞の比較群で報告された値より、約50%高かった。診断時年齢が6歳未満、女性、頭蓋照射療法、および聴覚障害といった因子が障害と関連していた。[ 55 ]さらに、新たに表れたデータにより、成人期の慢性的な健康障害の発生は、CNS以外のがんの長期生存者における認知障害に関与する可能性があることが示唆される。

神経認知異常は、以下のがんで報告されている:

幹細胞移植

小児における幹細胞移植による認知および学業への後遺症についても評価されており、以下のものがあるが、これだけに限定されるわけではない:

  1. 患者268人が幹細胞移植による治療を受けたSJCRHからの報告で、晩期の認知および学業への後遺症の軽微なリスクが観察された。[ 84 ]
  2. 造血幹細胞移植(HSCT)および髄腔内化学療法を受けた患者38人を対象としたシリーズでは、移植後1年以内に視覚運動能力および記憶スコアに有意な低下が認められた。[ 85 ]

幹細胞移植後に現れる神経認知的晩期合併症(晩期障害)の大部分は、脳の白質損傷に関連していると考えられる。これは、HSCTによる治療を受けた白血病の小児を対象に研究された。36人の患者を対象とした1件のシリーズでは、典型的に白質に関連する神経認知的尺度の成績が、灰質機能に関連する尺度の成績と比較された。複合白質スコアは、複合灰質スコアより有意に低かったという結果が得られ、この結果は、白質損傷がこの集団における神経認知的晩期合併症(晩期障害)に寄与するという考えを支持している。[ 86 ]

神経学的後遺症

神経学的合併症のリスクは、以下の因子により高まる可能性がある:

CNS腫瘍を患っている小児では、腫瘤による圧排、腫瘍浸潤、頭蓋内圧亢進により、運動または感覚欠損、小脳障害が発現する可能性があり、さらに痙攣発作および脳血管合併症などの二次的な影響が生じうる。CNSの完全性と機能の異常を示す報告は多数存在しているが、そうした研究は一般的に、少ないサンプルサイズ、コホート選択および参加バイアス、転帰の横断的確認、治療への曝露から評価までの時間が不定であることによって限定されている。それに対して、末梢神経系機能に関する転帰を包括的または系統的に確認する研究は比較的少数である。

CNS腫瘍生存者は、同胞よりも生涯にわたって神経学的有害事象を新たに発症するリスクが高いままである。CCSSからのCNS腫瘍の5年生存者1,876人を対象にした1件の縦断研究によると、診断から30年経過しても新規の有害な続発症についてプラトーに達していない。診断からの期間中央値は23年で、調査された患者の年齢中央値は30.3歳であった。[ 87 ]

小児がんの生存者に起こりうる神経学的合併症を以下に示す:

表3では、CNSの晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表3.中枢神経系晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 神経学的影響 健康スクリーニング
IQ = 知能指数;IT = 髄腔内;IV = 静脈内。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
プラチナ製剤(カルボプラチン、シスプラチン) 末梢性知覚神経障害 神経学的検査
植物性アルカロイド薬(ビンブラスチン、ビンクリスチン) 末梢性知覚または運動神経障害(反射消失、脱力、下垂足、感覚異常) 神経学的検査
メトトレキサート(高用量IVまたはIT);シタラビン(高用量IVまたはIT);脳に影響する放射線 臨床上の白質脳症(痙攣、運動失調、構音障害、嚥下困難、片側不全麻痺、痙攣発作);頭痛;痙攣発作;感覚欠損 既往:認知、運動、および/または感覚欠損、痙攣発作
神経学的検査
脳血管構造に影響する放射線 脳血管合併症(脳卒中、もやもや病、閉塞性脳血管症) 既往:一過性/持続性の神経学的イベント
血圧
神経学的検査
神経外科-脳 運動および/または感覚欠損(麻痺、運動障害、運動失調、眼の障害[視神経麻痺、注視不全麻痺、眼振、乳頭浮腫、視神経萎縮]);痙攣発作 神経学的検査
神経学的評価
神経外科-脳 水頭症;シャント機能不良 腹部X線
神経学的評価
神経外科-脊椎 神経因性膀胱;尿失禁 既往:血尿、尿意切迫/頻尿、尿失禁/尿閉、排尿障害、夜尿症、異常尿流
神経外科-脊椎 神経因性膀胱;便失禁 既往:慢性便秘、便失禁
直腸検査
素因となる治療 神経心理学的影響 健康スクリーニング
メトトレキサート(高用量IVまたはIT);シタラビン(高用量IVまたはIT);脳に影響する放射線;神経外科-脳 神経認知的障害(実行機能、記憶、注意、処理速度、他);学習障害;IQ低下;行動上の変化 教育および職業訓練の進捗評価
正式な神経心理学的評価

心理社会的

多くの小児がん生存者は、生活の質の低下や他の有害な心理的転帰を報告している。小児がん後の心理社会的な適応不良に関する証拠は、患者報告または代理報告の転帰から集団ベースのレジストリーのデータに及ぶ多くのソースから得られている。前者の報告は少ないサンプルサイズ、コホート選択および参加バイアス、評価の方法と立場のばらつき(臨床 vs 距離ベースの調査)により制限される場合がある。後者は、心理社会的欠如のリスクが高い生存者の特定を可能にする臨床上および治療上の特徴に、十分相関しないことが多い。

神経認知的障害のある生存者は、成人に期待される社会的転帰の達成に影響する有害な心理社会的転帰に対し、特に脆弱である。

小児がん生存者は心理的苦痛の症状を発症するリスクも高い。生存者4,500人以上を対象とした1件の縦断研究によると、生存者の複数のサブグループは、16年の間に持続的で漸増する不安と抑うつ症状を呈するリスクが高かった。疼痛と健康状態の悪化を報告した生存者は、経時的な不安、抑うつ、身体化の症状の発現リスクが最大であった。[ 103 ]

小児がんの成人生存者は、同胞に比べて自殺念慮のリスクも高く、中でもCNS腫瘍の生存者は最も自殺願望を報告する可能性が高い。小児がんの成人長期生存者9,128人における反復性自殺念慮の有病率を評価したCCSS研究によると、生存者は同胞と比べて晩期の自殺念慮(オッズ比[OR]、1.9;95%CI、1.5-2.5)および反復性自殺念慮(OR、2.6;95%CI、1.8-3.8)を報告する傾向が高かった。痙攣発作の既往は、生存者が自殺念慮を抱く可能性が倍増することと関連していた。[ 104 ]25歳前にがんの治療を受けた成人における自殺について評価した集団ベースの研究で、自殺の絶対リスク(死亡3,375例中24例)は低かったが、自殺のHRは、がんの治療を受けた時期が小児期(0~14歳;HR、2.5;95%CI、1.7-3.8)、青年および若年成人期(15~24歳;HR、2.3;95%CI、1.2-4.6)で高かった。[ 105 ]

慢性的な健康障害の存在も、心理学的健康面に影響を及ぼす可能性がある。HSCTによる治療を受けた長期生存者における心理学的転帰を評価した1件の研究では、生存者の22%および同胞対照の8%が有害な転帰を報告した。最も多い訴えは身体的苦痛で、HSCT生存者の15%が訴えており、リスクは同胞の3倍であった。重度/命に関わる病態で活動性の慢性GVHDを有するHSCT生存者は、身体的苦痛のリスクが2倍高かった。[ 106 ]CCSSからの報告で、慢性の肺疾患、内分泌障害、および心疾患の存在は、小児がんの成人生存者5,021人のサンプルで心理的苦痛の症状を認めるリスクが高いことに関係していることが明らかになった。[ 107 ]

神経芽腫の生存者における長期の心理学的転帰および教育成果を評価したCCSSの調査において、生存者は特別な教育サービスの利用および低い教育達成度に関連する心理的な障害のリスク増加を示した。2つ以上の慢性的な健康障害の存在(ただし、一般的な治療への曝露ではない)は、心理的な障害を予測した。特に、肺疾患は5つすべての心理的領域の障害を予測した一方、内分泌疾患および末梢性神経障害はそれぞれ、3つの心理的領域の障害を予測した。[ 108 ]

小児がん生存者では、心理学的スクリーニングを臨床来院に組み込むことが有用な可能性がある;しかしながら、そうした評価を、長期フォローアップを実施する診療室に再来院する患者に限定することは、障害のより多い生存者のサンプルに偏った結果につながり、正確な有病率の確定が困難となる可能性がある。小児脳腫瘍の生存者における行動、情動、および社会的適応に関するレビューはこの点を明示しており、心理学的適応障害の有病率は25~93%の範囲である。[ 109 ]小児がんの成人生存者101人の研究において、Dana Farber Cancer Instituteの生存者クリニックでのルーチンの年1回の評価中に心理学的スクリーニングが実施された。症状チェックリスト90改訂版では、32人の被験者がスクリーニング陽性(心理的苦痛を示す)となり、14人の被験者が少なくとも1つの自殺の恐れのある症状を示した。心理的苦痛の危険因子は、被験者の身体的外観に対する不満、不十分な肉体的健康、頭蓋照射による治療などであった。この研究では、心理学的スクリーニングが30分以内に完了したため、臨床訪問設定においてその手段が実行できることが示された。さらに、その手段を完遂すること自体は、症例の80%において生存者の苦痛を引き起こさなかったようである。[ 110 ]これらのデータは、医療クリニックにおける心理社会的苦悩の一貫した評価について、その実施可能性と重要性を裏付けている。

(心理的苦痛とがん患者に関する詳しい情報については、がんへの適応:不安と苦痛に関するPDQ要約を参照のこと。)

小児がん後の心的外傷後ストレス

がんの診断および治療に関連して多くのストレスがあるにもかかわらず、がん患児では一般に心的外傷後ストレス症候群および心的外傷後ストレス障害(PTSD)の程度は低く、健常比較対照の小児より典型的に高くないことが複数の研究で示されている。[ 111 ]患者および親の適応様式は、小児腫瘍学領域でPTSDの重大な決定因子であると考えられる。[ 112 ][ 113 ]

PTSDおよび心的外傷後ストレス症候群の有病率は、小児がんの若年成人生存者の15~20%と報告されており、これらの疾患を定義するために使用した基準によってこの率は異なっている。[ 114 ]

PTSDではがんに関連する場所や人物の回避がその一症状であるため、適切な医療を得る上でこの症候群が妨げとなる場合がある。PTSDの患者は、自身またはその子供の生命に関してより大きな脅威を感じていた。他の危険因子としては、家族機能の不良、社会的支援の不足、がん以外のストレス因子などが挙げられる。[ 118 ]

小児期、青年期、および若年成人期のがん生存者における心理社会的転帰

がんの晩期合併症(晩期障害)に関する大半の研究では、小児期にがんが発現した個人に焦点を当てている。青年期に発生したがんの診断に特有な影響、または青年および若年成人(AYA)の心理社会的転帰に対する小児がんの影響についてはほとんど知られていない。

証拠(AYAのがん生存者における心理社会的転帰):

  1. 青年期(15~18歳)にがんと診断された成人生存者(N = 825)が年齢を一致させた一般集団のサンプルおよびがんになったことがない成人の比較群と比較された。[ 119 ]
  2. AYAのがん生存者4,054人およびがんの既往歴がない回答者345,592人の調査で以下が報告された:[ 121 ]
  3. CCSSでは、青年生存者2,979人および小児がん生存者の同胞649人の転帰を評価し、6つの行動的および社会的領域(抑うつ/不安、強情、注意の欠陥、同級生との対立/引きこもり、反社会的行動、社会的能力)における障害の発生率を明らかにした。[ 122 ]
  4. 別のCCSS研究では、青年期および若年成人期に診断されたがんの長期生存者2,589人において心理学的および神経認知機能が評価された。[ 123 ]
  5. CCSSフォローアップ研究では、がん治療を受けた青年3,993人(13~17歳)における併存症の症状プロファイルが評価された。[ 124 ]潜在的プロファイル解析で、以下の4つの症状プロファイルが特定された:

    総合結果は、青年生存者で行動、情動、および社会的症状がしばしば同時に発生し、治療曝露(頭蓋照射、コルチコステロイド、およびメトトレキサート)および晩期合併症(晩期障害)(肥満、がん関連痛、および感覚障害)と関係していることを裏付けている。

小児がんの診断はまた心理社会的アウトカムおよび成人してから期待される機能的および社会的自立の達成に影響する可能性もある。数件の調査で、小児CNS腫瘍の生存者は特に影響を受けやすいことが実証されている。[ 125 ][ 126 ]

証拠(機能的および社会的自立):

  1. CNS腫瘍の生存者665人(54%が男性;52%が頭蓋照射による治療を受けた;年齢中央値、15歳;診断から12年)を対象とした研究で、CCSSの研究者らにより、以下が観察された:[ 125 ]
  2. St. Jude Lifetime Cohort Studyで、CNS腫瘍の生存者306人(星細胞腫[n = 130]、髄芽腫[n = 77]、上衣腫[n = 36]、およびその他[n = 63];年齢中央値、25歳;診断からの期間、16.8年)における機能的および社会的自立が調査された。[ 126 ]

青年期の引きこもりは、成人の肥満や身体的不活動に関連している。[ 127 ]結果として、これらの心理学的問題は将来の慢性的な健康障害のリスクを増大させる可能性があり、がん治療後の心理学的問題に対する定期的なスクリーニングおよび治療が必要なことを裏付けている。

これらの課題は、がん診断時および長期の追跡期間で青年および若年成人が経験するため、この集団では、生存への過渡期に影響を及ぼす心理社会的、教育的、職業的に特有な問題に取り組むプログラムが利用できることにより利益が得られる可能性がある。[ 128 ][ 129 ]

CNSおよび心理社会的晩期合併症(晩期障害)の危険因子、評価、および健康カウンセリングを含む情報については、小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)を参照のこと。

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消化器系の晩期合併症(晩期障害)

歯科

概要

化学療法、放射線療法、および局所手術は、口腔および歯に多くの美容的および機能的異常をもたらす可能性がある。この転帰に関する現在のエビデンスの質は、レトロスペクティブなデータ収集、少ないサンプルサイズ、コホート選択および参加バイアスのほか、治療アプローチ、治療期間、および確認方法における不均一性により制限される。

小児がん生存者で報告されている口腔および歯の合併症には以下のものがある:

口腔における放射線骨壊死および二次がんも発生する。

歯の発育異常

小児がん生存者で報告されている歯の発育異常には以下のものがある:[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 6 ][ 7 ][ 8 ][ 9 ][ 10 ][ 11 ]

歯数不足の有病率は、診断時年齢、治療法、および確認方法に応じて、シリーズ間で大幅に異なっている。

歯の形成異常との関連が認められているがん治療法には以下のものがある:[ 3 ][ 11 ]

5歳未満の小児は、幼少期におけるエナメル芽細胞(エナメル質産生)および象牙芽細胞(象牙質産生)の活性障害に関連する歯根無形成、歯牙発生遅延、エナメル質欠損、および/または過剰な齲蝕を含む歯の異常のリスクが最も高い。[ 3 ]

がん治療による歯の成育への影響に関連する重要な知見には以下のものがある:

  1. 放射線療法。 エナメル芽細胞は10Gy程度の低い線量でも永久的な損傷を受ける可能性があるため、口腔またはその周囲構造に向けた放射線照射は歯の異常のリスクを高める。[ 3 ][ 5 ][ 6 ][ 12 ] しかし、最も著しい歯牙形成不全または発生遅延は、20Gy以上の放射線照射を受けた幼児(4歳未満)にみられる。[ 13 ]

    発育中の歯列は、頭頸部肉腫、ホジキンリンパ腫、神経芽腫、中枢神経系白血病、上咽頭がん、脳腫瘍を治療する過程で、また全身放射線照射(TBI)の一部として照射を受ける場合がある。10~40Gyの線量は、歯根短縮または異常な弯曲、萎縮、および低石灰化を引き起こすことがある。[ 14 ]40Gyを超える線量で治療を受けた頭頸部横紋筋肉腫の85%を超える生存者で、下顎骨または上顎骨発育不全、齲蝕増加、歯数不足、小歯症、歯根分路、および口腔乾燥を含む重大な歯の異常が報告されている。[ 4 ][ 5 ]

  2. 化学療法。 化学療法で、特にアルキル化剤への曝露は、歯の発育に影響を与える可能性がある。[ 3 ][ 6 ][ 7 ] 白血病または神経芽腫治療のための化学療法は、小臼歯歯根の短縮および菲薄化のほか、エナメル質の異常に関連することがある。[ 15 ][ 16 ][ 17 ] Childhood Cancer Survivor Study(CCSS)の研究者らは、小児がんの長期生存者における発育上の歯牙の異常に対する重大な危険因子として、5歳未満の年齢およびシクロホスファミドに対する高い曝露を特定した。[ 3 ]
  3. HSCT。HSCT前処置で、特にTBIを含むレジメンは、歯根無形成および歯根形成異常をもたらすことがある。永久歯が生えていない低年齢小児が最も影響を受けやすい。[ 1 ][ 2 ][ 6 ]TBIを伴うHSCTを受けた小児では、短いV型の歯根、小歯症、エナメル質形成不全、および/または早熟性の先端閉鎖が発生することがある。[ 1 ][ 2 ][ 8 ]HSCTによる治療を受けた患者が若いほど、歯牙の発育阻害がより重度で、顔面下部の垂直方向への成長不全がより大きくなる。このような高リスク患者では、綿密なサーベイランスと適切な介入が必要である。[ 9 ]TBIを併用しないHSCTを受けた患者(特に移植時年齢が2歳未満の患者)において、歯牙の異常が報告されている。[ 18 ]

唾液腺機能不全

口の渇きを覚える口腔乾燥は、頭頸部放射線照射またはHSCT後に発生する可能性のある副作用で、生活の質に重度の影響を与えることがある。唾液分泌減少の合併症には以下のものがある:[ 19 ][ 20 ]

がん治療後における唾液腺機能不全の有病率は、測定方法に応じて異なる(患者報告 vs 刺激下または非刺激下での唾液分泌速度)。[ 21 ]一般に小児がん生存者では、自己報告による持続的な治療後口腔乾燥の有病率は低い。CCSSによると、自己報告による口腔乾燥の有病率は、同胞の0.3%と比較すると、生存者では2.8%で、30歳を超えた生存者でリスクが高かった。[ 3 ]

がん治療による唾液腺機能への影響に関連する重要な知見には以下のものがある:

  1. 放射線療法。 頭頸部悪性腫瘍またはホジキンリンパ腫の治療に付随する唾液腺への放射線照射は、唾液流量における質的および量的変化を招き、この変化は40Gy未満の線量後は可逆的であるが、より高線量の後には不可逆的な場合があり、これは感作化学療法も投与されるかどうかによって左右される。[ 19 ]
  2. HSCT。HSCTレシピエントは、移植前処置または移植片対宿主病(GVHD)に関係する唾液腺機能不全のリスクが高い。GVHDは、唾液分泌減退および口腔乾燥と、それによる歯科疾患を引き起こすことがある。小児HSCT生存者の研究では、シクロホスファミドと10Gyの単回TBIによる前処置レジメンに曝露された患者の60%に唾液分泌量の減少がみられ、これに対してシクロホスファミドとブスルファンが投与された患者では26%であった。[ 22 ]対照的に、別の研究では、長期生存者における唾液分泌減少の有病率に、前処置レジメン(単回TBI、47%;分割TBI、47%;ブスルファン、42%)による違いはみられなかった。[ 23 ]
  3. 化学療法。 化学療法単独と口腔乾燥との関連性については、依然として意見が分かれている。[ 19 ] シクロホスファミドによる治療を受けた患者における刺激下での唾液流量減少の過剰リスク(オッズ比、12.32[2.1-74.4])を明らかにした小児患者の研究は1件のみである;しかしながら、齲蝕の増加は認められず、患者報告による口腔乾燥は評価されなかった。[ 7 ]

治療中および治療後の感染合併症および細菌叢の変化の影響は不明である。[ 6 ]

頭蓋顔面発育異常

頭蓋顔面形成異常は、頭頸部への高線量放射線療法を受けた小児で多くみられる有害転帰であり、歯の異常、口腔乾燥、開口障害といった他の口腔後遺症を伴って発生することが多い。[ 5 ][ 24 ][ 25 ]筋骨格の外観損傷の範囲および重症度は、治療時の年齢および放射線療法の容積と線量に関連しており、若い患者および30Gy以上の照射を受けた患者でリスクが高かった。

顎の放射線骨壊死は、頭蓋顔面への高線量の放射線照射(40Gy超)による治療を受けた小児生存者において観察されるまれな合併症で、特に照射された下顎の抜歯後に多い。[ 26 ][ 27 ]

美容的および機能的異常の改善には、しばしば多くの外科的介入が必要である。

治療後の管理

数件の研究から、放射線療法を受けた患者にはフッ化物製品またはクロルヘキシジン含嗽薬が有益となる可能性が示唆されている。[ 28 ]齲蝕は、唾液の質および量の減少による結果として問題である。局所フッ化物の使用は齲蝕の頻度を劇的に減少させることができ、唾液の代替物および唾液分泌促進薬は口腔乾燥などの続発症を改善できる。[ 20 ]

小児がん生存者の歯の検診の頻度は、すべての成人は年1回歯科医にかかるようにとの米国歯科医師会(American Dental Association)の勧告を下回ることが報告されている。[ 29 ]小児腫瘍学グループのLong-term Follow-Up Guidelinesでは、すべての小児がん生存者に対して年2回の歯牙清掃と検査を推奨している。これらの知見は、医療提供者が小児がん治療の生存者へのルーチンの歯科治療および歯科衛生評価を奨励することを、さらに活発化させる。(がん患者における口腔合併症に関する詳しい情報については、化学療法と頭頸部放射線療法の口腔合併症に関するPDQ要約を参照のこと。)

表4では、口腔や歯科の晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表4.口腔/歯牙の晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 口腔/歯牙の影響 健康スクリーニング/介入
CT = コンピュータ断層撮影法;GVHD = 移植片対宿主病;MRI = 磁気共鳴画像法。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
任意の化学療法;口腔に影響する放射線 歯牙の発育異常;歯牙/歯根の発育不全;小歯症;歯根の菲薄化/短縮;エナメル質形成不全 6ヵ月ごとの歯科検診と歯科清掃
フッ化物塗布を含む定期的な歯科治療
放射線療法を受けた小児がん生存者の管理の経験を積んだ矯正歯科医の診察
歯科手術前に歯根の発育を評価するためのベースラインのパノラマX線撮影
口腔に影響する放射線 不正咬合;顎関節機能不全 6ヵ月ごとの歯科検診と歯科清掃
フッ化物塗布を含む定期的な歯科治療
放射線療法を受けた小児がん生存者の管理の経験を積んだ矯正歯科医の診察
歯科手術前に歯根の発育を評価するためのベースラインのパノラマX線撮影
顎開口のための補助用具について耳鼻咽喉科医への紹介
口腔に影響する放射線;慢性GVHDの既往を伴う造血細胞移植 口腔乾燥/唾液腺機能不全;歯周疾患;齲蝕;口腔がん(扁平上皮がん) 6ヵ月ごとの歯科検診と歯科清掃
代用唾液、湿潤剤および催涎剤(ピロカルピン)による支持療法
フッ化物塗布を含む定期的な歯科治療
疑わしい病変を生検するための紹介
口腔に影響する放射線(40Gy以上) 放射線骨壊死 既往:歯科処置後の治癒の障害または遅延
検査:持続性の顎の疼痛、腫脹または開口障害
画像検査(X線、CTキャンおよび/またはMRI)は診断決定に役立つ場合がある
外科的生検は診断確定に必要な場合がある
高圧酸素療法を検討

消化管

概要

消化(GI)管は、化学療法、放射線療法、および手術による急性毒性に対する感受性が高い。しかしながら、これらの重要な治療法は、治療依存性および用量依存性でいくつかの長期的問題をもたらすこともある。長期的な消化管の転帰について公表された報告は、レトロスペクティブなデータ収集、少ないサンプルサイズ、コホート選択および参加バイアスのほか、治療アプローチ、治療期間、および確認方法における不均一性により制限される。

治療関連の晩期合併症(晩期障害)には以下のものがある:

消化管関連の晩期合併症(晩期障害)には以下のものがある:

選択したコホート研究による消化管転帰

証拠(選択したコホート研究による消化管転帰):

  1. CCSSに参加した小児がんの5年生存者の中では、自己報告した消化管障害の累積発生率は、がん診断から20年で37.6%(上部消化管合併症で25.8%、下部消化管合併症で15.5%)であり、同胞対照と比較した過剰リスクは、上部消化管合併症(相対リスク[RR]、1.8;95%信頼区間[CI]、1.6-2.0)および下部消化管合併症(RR、1.9;95%CI、1.7-2.2)でほぼ2倍を示した。[ 30 ]

    特定の消化管合併症のリスクが高いことを予測する因子には以下のものがある:

  2. 急性骨髄性白血病に対して化学療法単独による治療を受けた小児のコホート研究によると、消化管疾患は比較的まれで、同胞対照から報告されたものと有意差はないことが明らかになった。[ 31 ]
  3. 放射線による消化管への晩期合併症(晩期障害)は、血管損傷に起因する。壊死、潰瘍形成、狭窄、または穿孔が生じることがあり、吸収不良、疼痛、および腸閉塞再発のほか、穿孔および感染という特徴がみられる。[ 32 ][ 33 ][ 34 ]

    一般に、20~30Gyの分割照射線量は明らかな長期の病的状態なしに小腸に照射可能である。40Gyを超える線量は、腸閉塞または慢性腸炎リスクの増加に関連する。[ 35 ]ダクチノマイシンまたはアントラサイクリン系薬物などの感作化学療法薬はこのリスクを増大させうる。

消化管転帰に対するがん組織型の影響

横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、リンパ腫、胚細胞腫瘍、神経芽腫などのいくつかの小児悪性腫瘍で、腹腔内腫瘍は比較的よくみられる部位である。腹腔内腫瘍では、しばしば集学的治療が必要になり、場合によっては、腸切除、腸傷害性の化学療法、および/または放射線療法が必要になる。そのため、このような腫瘍では、長期的な消化管の問題が特に生じやすいと予想される。

以下のように、放射線療法で治療された泌尿生殖器固形腫瘍の小児患者における消化管合併症を記述した少数の報告がある:[ 36 ][ 37 ][ 38 ][ 39 ][ 40 ]

  1. 全腹部(10~40Gy)および病変部(25~40Gy)に放射線療法を実施し、さらに腹部開腹術を受けた43人(98%)および化学療法を受けた25人(57%)の患者を含めて、消化管合併症の素因となる追加介入を受けたがん患児44人を対象に、腸症状を包括的に評価した研究が1件ある。[ 36 ]
  2. CCSSにより、5年生存者12,316人(腹部骨盤領域の腫瘍を有していた2,002人と有さなかった10,314人)と同胞4,023人において手術を要する後発性腸閉塞の発生率およびリスクが評価された。腹部骨盤領域の腫瘍を有していた生存者における最も一般的な診断はウィルムス腫瘍と神経芽腫であったが、軟部肉腫、リンパ腫、骨腫瘍も含まれた。[ 41 ]
  3. 小児がん生存者は骨盤部照射曝露後、晩期肛門直腸疾患のリスクが高い。CCSSの報告で、以下の結果が示された:[ 42 ]
  4. 泌尿生殖器横紋筋肉腫長期生存者を対象に胃腸毒性を評価しているIntergroup Rhabdomyosarcoma Studyによる報告では、放射線を照射した腸の異常はまれにみられた。[ 37 ][ 38 ][ 40 ]

表5では、消化管の晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表5.消化管の晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 胃腸の影響 健康スクリーニング/介入
GVHD = 移植片対宿主病;KUB = 腎臓、尿管、膀胱(腹部単純X線撮影)。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
食道に影響する放射線;何らかの慢性GVHDの既往を伴う造血細胞移植 胃食道逆流症;食道運動障害;食道狭窄 既往:嚥下困難、胸やけ
食道拡張、逆流防止手術
腸に影響する放射線 慢性腸炎;瘻孔;狭窄 既往:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
慢性的な下痢または瘻孔がある患者では血清蛋白およびアルブミン値を毎年1回
症候性の患者では外科および/または胃腸科の診察
腸に影響する放射線;開腹術 腸閉塞 既往:腹痛、腹部膨満、嘔吐、便秘
検査:圧痛、腹壁防御、腹部膨満(急性発症)
臨床的に閉塞症状を認める患者ではKUBを得ること
内科的管理に対して不応性の患者では外科の診察
骨盤の手術;膀胱切除術 便失禁 既往:慢性便秘、便失禁
直腸検査

肝胆汁系

概要

小児がん治療に起因する肝合併症は、主に急性治療毒性として観察される。[ 43 ]多くの化学療法薬および放射線療法は肝毒性であるため、治療中に一過性の肝機能異常がよくみられる。重度の急性肝合併症が発生するのはまれである。小児がん生存者は、ときに長期にわたり肝損傷を来すことがある。[ 44 ]

小児がんに関連する肝毒性に関する一般的概念には以下のものがある:

化学療法の種類、放射線曝露の線量と範囲、外科的介入の影響、ウイルス性肝炎および/または他の感染合併症の進展中の影響など、特定の因子については、今後の研究でさらに注意していく必要がある。

肝胆道系晩期合併症(晩期障害)の種類

肝酵素の無症候性の上昇は最も一般的な肝胆道系合併症である。

低頻度で報告される肝胆道系合併症には以下のものがある:

肝胆道系晩期合併症(晩期障害)の治療関連危険因子

過去の治療の種類および強度は、後発性肝胆道系の結果についてリスクに影響する。治療関連毒性のリスクに加えて、HSCTレシピエントは、微小血管性、免疫学的、感染性、代謝性、および他の毒性の病因に関連する慢性肝機能不全を頻繁に経験する。

がん治療による肝胆道系合併症への影響に関連する重要な知見には以下のものがある:

  1. 化学療法。肝毒性の可能性が立証されている化学療法薬には、6-メルカプトプリン、6-thioguanine、メトトレキサートのほか、まれにダクチノマイシンのような代謝拮抗薬がある。チオプリン系薬剤の特に6-thioguanine投与後に静脈閉塞疾患/類洞閉塞症候群(VOD/SOS)および胆汁うっ滞性疾患が観察されている。6-thioguanineによる治療後にVOD/SOSを発症した小児の一部に進行性線維症および門脈圧亢進症が報告されている。[ 60 ][ 61 ][ 62 ]小児固形腫瘍に対してダクチノマイシンによる治療を受けた小児に、急性・用量依存性・可逆性のVOD/SOSが観察されている。[ 63 ][ 64 ]

    移植の状況でも、シクロホスファミド/TBI、ブスルファン/シクロホスファミド、およびカルムスチン/シクロホスファミド/エトポシドを含む前処置レジメン後にVOD/SOSが観察されている。[ 65 ]大量のシクロホスファミドはこれらのレジメンすべてに共通しており、潜在的な原因因子と推定されている。

  2. 放射線療法。 急性放射線誘導性肝疾患も、VOD/SOSの特徴である内皮細胞傷害を引き起こす。[ 66 ] 成人では、通常分割で30~35Gyまで肝全体は耐えられ、放射線誘導性肝疾患の有病率は、肝病巣容積および肝臓予備力により6~66%と幅がある。[ 66 ][ 67 ]

    ウイルス性肝炎または鉄過剰症のような素因となる疾患がない長期生存者では、現代的な治療後の放射線肝障害はまれであると考えられる。[ 68 ]不可逆的な損傷に対する線量の閾値は不明であるが、Pediatric Normal Tissue Effects in the Clinic(PENTEC)の主導で調査されている。小児における損傷リスクは、放射線量、肝容積、若い治療時年齢、部分肝切除の既往、ならびにダクチノマイシンおよびドキソルビシンのような放射線様作用性の化学療法併用に伴って増加する。[ 69 ][ 70 ][ 71 ][ 72 ]放射線量40Gyを肝容積の3分の1以上、30G以上を全腹部または肝全体を含む上腹部野に照射した生存者は、肝機能障害のリスクが最も高い。[ 44 ]

  3. HSCT。HSCT後の患者における慢性肝機能不全は、病因学的に多因子性である。最も一般的な慢性肝機能不全の病因は、鉄過剰、慢性GVHD、およびウイルス性肝炎である。[ 73 ]消化管の慢性GVHDで、ビリルビン高値を示す患者は、予後および生活の質が不良である。[ 74 ]慢性肝機能不全は、幹細胞移植の長期生存者の過半数にみられる場合があり、本疾患の経過は緩徐なようであるが、生存者の健康に及ぼす長期的影響を確立するために追跡の継続が必要である。[ 75 ]

肝胆道系晩期合併症(晩期障害)での感染の危険因子

B型およびC型ウイルス性肝炎は、小児がんの治療経過を悪化させ、慢性肝機能障害に至る場合がある。B型肝炎の方が侵攻性で急性の臨床経過を示し、慢性感染症の割合が低い傾向がある。C型肝炎の特徴は、急性感染症が軽度で、慢性感染症の割合が高いことである。小児がん生存者における輸血関連C型肝炎の発生率は、報告した施設の地理的位置により、5%から50%の幅がある。[ 76 ][ 77 ][ 78 ][ 79 ][ 80 ][ 81 ][ 82 ]

小児がん生存者は、慢性肝炎により、肝硬変、末期肝疾患、および肝細胞がんに罹患しやすくなる。他の向肝性ウイルスと組み合わさって、または他の向肝性ウイルスと同時発生したB型およびC型肝炎の同時感染は、肝疾患の進行を速める。

ほとんどの患者が小児がん治療中に何らかの血液製剤の投与を受けており、多くが輸血歴に気付いていないため、患者が何らかの血液または血液製剤の投与を受けていないことが絶対確実でない限り、診断日/治療日を基にしたスクリーニングが推奨される。[ 83 ]したがって、1972年より前に治療を受けた小児がんの生存者はすべてB型肝炎についてのスクリーニングを実施し、1993年より前に治療を受けた生存者はすべてC型肝炎についてのスクリーニングを実施するとともに、スクリーニング結果が陽性の場合は、治療法の選択肢に関する相談を求めるべきである。

治療後の管理

肝機能不全の生存者に対しては、肝損傷を予防するためのリスク低減方法に関して助言すべきである。標準的な推奨事項には、健康体重の維持、アルコール摂取の自制、およびA型およびB型肝炎ウイルスの予防接種を含む。慢性肝炎の患者では、家族へのウイルス伝播を減らすための予防措置および性的接触も見直すべきである。

表6では、肝胆汁系の晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表6.肝胆道系の晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 肝臓の影響 健康スクリーニング/介入
ALT = アラニンアミノトランスフェラーゼ;AST = アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ;HSCT = 造血幹細胞移植。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
メトトレキサート;メルカプトプリン/thioguanine;HSCT 肝機能障害 臨床検査:ALT、AST、ビリルビンの値
HSCTによる治療を受けた患者ではフェリチン
メルカプトプリン/thioguanine;HSCT 静脈閉塞疾患/類洞閉塞症候群 検査:強膜黄疸、黄疸、腹水、肝腫大、脾腫
臨床検査:ALT、AST、ビリルビン、血小板の値
HSCTによる治療を受けた患者ではフェリチン
肝臓/胆管に影響する放射線;HSCT 肝線維化/肝硬変;局所性結節性過形成 検査:黄疸、くも状血管腫、手掌紅斑、黄色腫肝腫大、脾腫
臨床検査:ALT、AST、ビリルビンの値
HSCTによる治療を受けた患者ではフェリチン
肝臓スクリーニング検査で異常を認めた患者では、肝の合成機能を評価するためのプロトロンビン時間
肝機能異常が持続する患者または1993年以前に輸血を受けたすべての患者では、ウイルス性肝炎のスクリーニング
肝機能障害が持続する患者では、胃腸科/肝臓科の診察
免疫力が劣る患者では、A型およびB型肝炎の予防接種
鉄過剰に対しては、瀉血およびキレート療法を検討
肝臓/胆管に影響する放射線 胆石症 既往:高脂肪食に関連する仙痛性腹痛、過度の鼓腸
検査:右上腹部または心窩部の圧痛(急性発症)
慢性腹痛を訴える患者では、胆嚢の超音波検査を検討

膵臓

膵臓は、膵臓に関係した晩期合併症(晩期障害)に関する情報が不足しているため、放射線への感受性が比較的低いと考えられている。しかしながら、TBIまたは腹部放射線照射による治療を受けた小児および若年成人は、インスリン抵抗性および糖尿病のリスクが高いことが知られている。[ 84 ][ 85 ][ 86 ]コルチコステロイドおよびアスパラギナーゼは膵臓への急性毒性に関連している一方、急性損傷を経験している患者については膵外分泌または膵内外分泌機能における晩期続発症が報告されている。

証拠(糖尿病のリスク):

  1. 1件のレトロスペクティブ・コホート研究では、フランスと英国で治療を受けた小児がんの5年生存者2,520人の自己報告に基づいて、膵臓への放射線の照射線量とその後の糖尿病の診断リスクとの関連性が調査された。[ 87 ]
  2. 別の研究では、ホジキンリンパ腫の5年生存者2,264人(42%が診断時に25歳未満であった)における追跡期間中央値21.5年後の糖尿病のリスクが評価された。[ 88 ]
  3. CCSSの研究者は、小児がんの5年生存者20,762人および同胞4,853人における糖尿病のリスクを評価した。[ 89 ]
  4. St. Jude Lifetime Cohortの研究者らにより、治療後10年以上臨床的に評価されていた小児急性リンパ芽球性白血病の成人生存者1,044人(平均年齢、34歳)および地域の対照368人(平均年齢、35歳)における糖尿病の有病率および危険因子が評価された。[ 90 ]

消化器系晩期合併症(晩期障害)の危険因子、評価、および健康カウンセリングを含む情報については、小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)を参照のこと。

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内分泌系晩期合併症(晩期障害)

内分泌機能不全は、小児がん生存者で非常に多くみられ、特にホルモン産生臓器に関わる手術または放射線療法を受けた場合およびアルキル化剤による化学療法を受けた場合に顕著である。

表は、最近のフォローアップの来診時における内分泌異常の有病率を男女別に示している。

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図8.最近のフォローアップ来診時における男女別の内分泌異常の有病率。Brignardello E, Felicetti F, Castiglione A, et al.: Endocrine health conditions in adult survivors of childhood cancer: the need for specialized adult-focused follow-up clinics.European Journal of Endocrinology 168 (3): 465-472, 2013. Copyright © 2013, European Society of Endocrinology.

特定の内分泌異常の有病率は以下により影響を受ける:[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ]

内分泌系晩期合併症(晩期障害)は、視床下部/下垂体の損傷または末梢の障害に起因するものとして大まかに分類できる。[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ]前者は、中枢神経系(CNS)腫瘍に対する治療後に最も多くみられ、2年を超えて生存した生存者718人を対象とした全国コホート研究で有病率は24.8%と報告されており、すべての視床下部/下垂体軸に障害が認められた。[ 3 ]

以下のセクションでは、下垂体、甲状腺、副腎、および性腺の機能に影響を及ぼす内分泌機能不全のリスクのある生存者の臨床的特徴について明らかにする研究を要約する。

甲状腺

甲状腺機能低下症

危険因子

甲状腺機能低下症のリスク増大は、頭頸部に対する放射線療法で甲状腺にも照射を受けた小児がん生存者(特にホジキンリンパ腫の生存者)の間で報告されている。[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ]

ヨウ素 131メタヨードベンジルグアニジン(131I-MIBG)による治療は、ヨウ化カリウム、過塩素酸塩、またはヨウ化カリウム、チロキシン(T4)、およびチアマゾールの併用(131I-MIBG誘発性の甲状腺機能低下症のリスクは低下するが、完全に排除できるわけではない)により甲状腺を保護しても、原発性甲状腺機能低下症を引き起こすことがある。[ 5 ]

臨床像

証拠(甲状腺機能低下症の有病率および危険因子):

  1. German Group of Paediatric Radiation Oncologyは、甲状腺および/または下垂体に対する放射線療法を受けた患者404人(年齢中央値、10.9歳)を含む62施設で治療を受けた患者1,086人について報告した。[ 7 ]追跡調査の情報は、264人(60.9%;追跡期間中央値、40ヵ月)の患者について得られており、60人(22.7%)の患者が病理学的値を示している。
  2. Childhood Cancer Survivor Study(CCSS)により、12,015人の生存者において連続した質問票を介して評価された自己報告の甲状腺機能低下症の有病率が調査された。計1,193例の甲状腺機能低下症が観察され、このうち777例(65%)はがん診断から5年以上経過後に発生した。[ 8 ]
  3. CCSSでは、1970年から1986年に治療を受けた小児ホジキンリンパ腫生存者のコホートにおいて、生存者が自己報告式質問票を用いて甲状腺疾患について評価された。[ 9 ]
    小児がんの5年生存者における放射線量別の甲状腺機能低下症の発生確率;グラフには、RTなし、3,500cGy未満、3,500~4,499cGy、および4,500cGy以上で、診断からの経過年数による罹患しなかった患者の割合を示している。

    画像を拡大する

    図9.小児がんの5年生存者における放射線量別の甲状腺機能低下症の発生確率。Childhood Cancer Survivor Studyによるデータ。Sklar C, Whitton J, Mertens A, Stovall M, Green D, Marina N, Greffe B, Wolden S, Robison L: Abnormalities of the Thyroid in Survivors of Hodgkin's Disease: Data from the Childhood Cancer Survivor Study.The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 85 (9): 3227-3232, September 1, 2000. Copyright 2000, The Endocrine Society.
  4. CCSSからの追跡研究で、生存者14,290人からの自己報告データが同胞対照4,031人からのデータと比較された。[ 2 ]
  5. 陽子線治療を受けた脳腫瘍の小児および若年成人(年齢26歳未満)189人を対象にした1件の研究で実証されているように、放射線療法送達の精度が向上し続けており、一部の患者において甲状腺が受ける放射線量の低下に有望である。[ 10 ]

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能低下症よりも一般的ではないが、小児がん生存者ではまた甲状腺機能亢進症のリスクも高い。[ 2 ][ 9 ][ 11 ]

証拠(甲状腺機能亢進症の有病率および危険因子):

  1. CCSSの研究者らにより、1970年から1986年までに治療された小児ホジキンリンパ腫生存者1,791人における甲状腺疾患の有病率が評価され、中央値で14年間追跡された。[ 9 ]
  2. CCSSの別の研究により、甲状腺および下垂体への治療域の線量を同一にして甲状腺機能亢進症のリスクが評価された。[ 11 ]

甲状腺結節

小児がん生存者における甲状腺新生物の臨床症状は、無症状の孤立性小結節から隣接構造物を圧迫する大きな胸腔内甲状腺腫にまで及ぶ。

危険因子

甲状腺結節の発生リスク増大に関する因子には以下のものがある:

  1. 放射線量、診断からの経過期間、および女性であること。
  2. 放射線療法施行時の年齢。
  3. 131I-MIBGへの曝露。
  4. 化学療法。

甲状腺がんのスクリーニング

(二次甲状腺がんに関する情報については、本要約の二次新生物のセクションを参照のこと。)

移植後の甲状腺機能障害

小児における造血幹細胞移植(HSCT)の生存者は、甲状腺機能障害のリスクが高い。[ 25 ]

TSH欠乏症(中枢性甲状腺機能低下症)については、下垂体に影響を及ぼす晩期合併症(晩期障害)で考察している。

表7では、甲状腺の晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表7.甲状腺の晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 内分泌系/代謝系の影響 健康スクリーニング
131I-MIBG = ヨウ素 131メタヨードベンジルグアニジン;T4 = チロキシン;TSH = 甲状腺刺激ホルモン。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
甲状腺に照射された放射線;甲状腺摘出術 原発性甲状腺機能低下症 TSH値
甲状腺に照射された放射線 甲状腺機能亢進症 遊離T4
TSH値
131I-MIBGなど、甲状腺に照射された放射線 甲状腺結節 甲状腺検査
甲状腺超音波検査

視床下部/下垂体軸

小児がん生存者には、主に視床下部に対する放射線療法の影響により、広範な神経内分泌異常が発現するリスクがある。

小児がん生存者における下垂体の内分泌障害に関する文献の質は、しばしばレトロスペクティブなデータ収集、少ないサンプルサイズ、コホート選択および参加バイアスのほか、治療アプローチ、治療からの期間、および確認方法における不均一性により制限されるが、この転帰と放射線療法、手術、腫瘍浸潤の関連を示す証拠は、罹患者が通常、追跡初期に代謝上および発育上の異常を呈しているため、有力である。

中枢性尿崩症

中枢性尿崩症は、頭蓋咽頭腫、鞍上胚細胞腫瘍、またはランゲルハンス細胞組織球症の診断の前兆となる場合がある。[ 29 ][ 30 ][ 31 ]

下垂体前葉ホルモン欠乏症

下垂体前葉ホルモンと主な視床下部調節因子の欠乏症は、頭蓋照射を受けた生存者でよくみられる晩期合併症(晩期障害)である。[ 28 ]

証拠(下垂体前葉ホルモン欠乏症の有病率):

  1. 単一施設研究で、小児がんおよび脳腫瘍の成人生存者1,713人(年齢中央値32歳)が追跡期間中央値25年にわたりモニターされた。[ 27 ]
  2. 頭蓋照射による治療を受け、平均27.3年にわたり観察された小児がん生存者748人を対象とした研究で、以下のことが報告された:[ 4 ]

6種類の下垂体前葉ホルモンとその主な視床下部調節因子を表8に要約している。

表8.下垂体前葉ホルモンおよび主な視床下部調節因子
下垂体ホルモン 視床下部因子 下垂体ホルモンの視床下部調節
(-) = 阻害;(+) = 刺激。
成長ホルモン(GH) 成長ホルモン放出ホルモン +
ソマトスタチン
プロラクチン ドパミン
黄体形成ホルモン(LH) ゴナドトロピン放出ホルモン +
卵胞刺激ホルモン(FSH) ゴナドトロピン放出ホルモン +
甲状腺刺激ホルモン(TSH) 甲状腺放出ホルモン +
ソマトスタチン
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH) コルチコトロピン放出ホルモン +
バソプレシン +

成長ホルモン欠乏症

成長ホルモン欠乏症は、小児がん生存者に最も早くみられる頭蓋照射療法関連のホルモン欠乏症である。

証拠(小児脳腫瘍生存者における成長ホルモン欠乏症の放射線量と反応の関係):

  1. CNS腫瘍を有する小児を対象とした原体照射療法(CRT)に関する研究では、視床下部の線量-容積作用にもよるが、通常は放射線療法から12ヵ月以内に成長ホルモン不全が明らかになることを示している。[ 34 ]
  2. 放射線療法を受けた限局性脳腫瘍患者118人のデータをまとめた報告では、CRTからの経過時間および視床下部に対する平均照射線量の指数関数として成長ホルモンピーク値がモデル化された。[ 35 ]

グラフでは、視床下部への平均放射線量および照射開始からの経過時間(月)について成長ホルモンのピーク値(ng/mL)を示している。

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図10.視床下部への平均放射線量および照射開始からの経過時間による成長ホルモン(GH)のピーク値。次の方程式2による:GHピーク値 = exp{2.5947 + 経過時間 × (0.0019 − [0.00079 × 平均放射線量])}。Thomas E. Merchant, Susan R. Rose, Christina Bosley, Shengjie Wu, Xiaoping Xiong, and Robert H. Lustig, Growth Hormone Secretion After Conformal Radiation Therapy in Pediatric Patients With Localized Brain Tumors, Journal of Clinical Oncology, volume 29, issue 36, pages 4776-4780. 許諾を得て掲載。© (2011) American Society of Clinical Oncology.All rights reserved.

証拠(小児ALL生存者における成長不足のリスク):

  1. ある研究で、ALLに対して24Gyもしくは18Gyの頭蓋照射療法を受けた患者または頭蓋照射療法を受けなかった患者127人が評価された。[ 36 ]
  2. 化学療法単独で治療を受けた小児ALL生存者も成人低身長のリスクが高かったが、低年齢で頭蓋照射または頭蓋脊髄照射による放射線療法を受けた小児のリスクが最も高かった。[ 37 ]1件の横断研究では、CCSSに参加したALL生存者2,434人で到達成人身長が測定された。
  3. ALLの現行レジメンによる治療を受けた生存者67人の成長に化学療法単独が及ぼした影響は、-0.59 SDと統計的に有意であった。この研究では成長能の喪失と成長ホルモンの状態に相関がみられず、この集団で観察された成長障害に対する他の因子の関与がより強調されている。[ 38 ]
  4. 単一施設の化学療法単独試験で治療を受けたALLの生存者372人の縦断研究において、以下が観察された:[ 39 ]

造血幹細胞移植(HSCT)後の成長

証拠(小児HSCT生存者における成長ホルモン欠乏症):

  1. HSCT後に発生する晩期合併症(晩期障害)が研究されており、Late Effects Working Party of the European Group for Blood and Marrow Transplantationによってレビューされている。思春期前にHSCTを受けた再生不良性貧血、白血病、リンパ腫の患者181人において、以下の結果が観察された。[ 46 ][ 47 ]
  2. 成長ホルモン欠乏症は、10Gyの単回照射および12~18Gyの分割線量のTBIという低い線量の照射後に報告されている。[ 48 ]

成長ホルモン補充療法

証拠(成長ホルモン欠乏症の補充療法後の二次新生物のリスク):

  1. CCSSに登録され、成長ホルモンによる治療を受けたがん生存者361人を評価した研究が1件あり、成長ホルモンによる治療を受けた生存者と受けていない生存者で、再発リスク、二次新生物のリスク、および死亡リスクが比較された。[ 52 ]
  2. 既存データのレビューによると、成長ホルモンによる治療は、CNS腫瘍の進行もしくは再発、または白血病の新たな発症もしくは再発のリスク増加と無関係であることが示唆される。[ 54 ]
  3. CCSSによる研究で、長期追跡後の二次CNS新生物のリスクに関して具体的な報告が行われた。[ 55 ]

一般に、成長ホルモン療法で治療された小児がん生存者における二次がんについて検討したデータは、イベント数が少ないことを考慮して、注意して解釈すべきである。[ 28 ][ 50 ][ 51 ][ 52 ][ 56 ]

黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)に関する障害

中枢性思春期早発症

中枢性思春期早発症の診断

有病率および危険因子

中枢性思春期早発症の治療および関連する転帰

LH/FSH欠乏症

有病率、危険因子、および治療

TSH欠乏症

小児がん生存者におけるTSH欠乏症(中枢性甲状腺機能低下症とも呼ばれる)は、顕著な臨床的帰結を有し、正当に評価されない可能性がある。

臨床像および診断

有病率および危険因子

TSH欠乏症の管理

副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)欠乏症

有病率および危険因子

診断および管理

高プロラクチン血症

表9では、下垂体の晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表9.下垂体の晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 内分泌系/代謝系の影響 健康スクリーニング
BMI = 肥満指数;FSH = 卵胞刺激ホルモン;LH = 黄体形成ホルモン;T4 = チロキシン;TSH = 甲状腺刺激ホルモン。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
b化学療法または直接精巣に放射線照射を受けた男児の思春期発達に対する評価では、精巣容積の測定値は信頼性が低い。
c診断時に限り適切。TSH値は、補充療法中の追跡には有用でない。
視床下部/下垂体に影響する腫瘍または手術。視床下部-下垂体軸に照射された放射線。 成長ホルモン欠乏症 栄養状態の評価
身長、体重、BMI、タナー段階b
視床下部/下垂体または視覚経路に影響する腫瘍または手術;水頭症。視床下部-下垂体軸に照射された放射線。 思春期早発症 身長、体重、BMI、タナー段階b
FSH、LH、エストラジオール、またはテストステロンの値
視床下部/下垂体に影響する腫瘍または手術。視床下部-下垂体軸に照射された放射線。 ゴナドトロピン欠乏症 既往:思春期、性機能
検査:タナー段階b
FSH、LH、エストラジオールまたはテストステロンの値
視床下部/下垂体に影響する腫瘍または手術。視床下部-下垂体軸に照射された放射線。 中枢性副腎機能障害 既往:成長障害、食欲不振、一過性脱水、低血糖、嗜眠、原因不明の低血圧
30Gy以上の線量の放射線を受けた患者では内分泌科医受診
視床下部-下垂体軸に照射された放射線。 高プロラクチン血症 既往/検査:乳汁漏出
プロラクチン値
視床下部-下垂体軸に照射された放射線。 過体重/肥満 身長、体重、BMI
血圧
メタボリックシンドロームの構成疾患(腹部肥満、高血圧、異脂肪血症、糖代謝障害) 空腹時血糖値および脂質組成
視床下部/下垂体に影響する腫瘍または手術。視床下部-下垂体軸に照射された放射線。 中枢性甲状腺機能低下症 TSHc、遊離チロキシン(遊離T4)値

精巣および卵巣

精巣および卵巣のホルモン機能については、本要約の生殖器系の晩期合併症(晩期障害)のセクションで考察している。

メタボリックシンドローム

小児がん生存者の間にメタボリックシンドロームまたはその構成要素のリスク増大があることが認識されている。この転帰の証拠は、生存者の自己報告による臨床的に顕在化した病態から、レトロスペクティブに評価された医療記録および病院のレジストリーのデータ、さらには臨床的特徴が十分明らかになっているコホートの体系的な臨床評価に及んでいる。複数の研究が、コホート選択および参加バイアスのほか、治療アプローチ、治療期間、および確認方法における不均一性により制限されている。これらの制限にかかわらず、有力な証拠により、メタボリックシンドロームが心血管イベントおよび死亡率に強く関連することが示されている。

メタボリックシンドロームの定義には変遷がみられるが、一般に中心性(腹部)肥満と合わせて、以下の特徴の2つ以上が含まれる:[ 73 ]

証拠(小児がん生存者におけるメタボリックシンドロームの有病率および危険因子):

  1. ある研究で、小児ALLの長期生存者784人(年齢中央値31.7歳)が追跡期間中央値26.1年にわたりモニターされた。[ 74 ]
  2. フランスの研究者らにより、HSCTを用いずに治療された小児白血病の成人生存者650人におけるメタボリックシンドロームとその構成要素について、全体および年齢別の有病率のほか、危険因子が評価された。[ 75 ]
  3. 腹部放射線療法で治療された胚芽腫の長期生存者164人を対象にしたプロスペクティブ研究(追跡期間中央値、26年)で、腎芽腫(OR、5.2)および神経芽腫(OR、6.5)の生存者は、対照群よりも多くのメタボリックシンドロームの構成疾患を有していた。[ 76 ]

修正可能な危険因子に対する生活様式の影響

証拠(小児がん生存者における心血管リスクを低下させる生活様式の変更):

  1. St. Jude Lifetime Cohort Studyに参加し、心臓の健康に配慮した生活様式を守った生存者では、メタボリックシンドロームのリスクが低下した。[ 78 ]
  2. CCSSの調査で、ホジキンリンパ腫生存者において運動が心血管疾患のリスクに及ぼす効果が評価された。[ 79 ]
  3. CCSSの別の調査で、小児がんの成人生存者における運動と死亡率との関連が評価された。[ 80 ]

糖代謝異常

腹部放射線療法およびTBIは、小児がん生存者における糖尿病の独立した危険因子としての認識が高まってきている。[ 2 ][ 81 ][ 82 ][ 83 ][ 84 ][ 85 ]

証拠(小児がん生存者における糖尿病の危険因子):

  1. 成人(年齢中央値25.6歳)の長期(追跡期間中央値17.9年)生存者532人を対象にした単一施設のコホート研究では、以下が観察された:[ 83 ]
  2. 小児がんの診断から5年以上の生存者319人および同胞対照208人からなる臨床的に不均一なコホートを対象とした横断研究で、心血管リスクおよびインスリン抵抗性が評価された。[ 86 ]
  3. 小児がん生存者2,520人(追跡期間中央値、28年)を含む1件のヨーロッパの多施設コホートでは、糖尿病と膵尾部に対する放射線照射線量の増加との間に有意な関連がみられたことから、この集団において、放射線誘発性の島細胞損傷がグルコース恒常性障害の一因になっていることを裏付けている。[ 84 ]
  4. CCSSからの報告では、小児がん生存者8,599人とランダムに選択した同胞対照2,936人が年齢、BMI、およびいくつかの人口統計学的因子で調整した後に比較された。[ 87 ]

表10では、メタボリックシンドロームの晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表10.メタボリックシンドロームの晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 潜在的な晩期合併症(晩期障害) 健康スクリーニング
BMI = 肥満指数。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
腹部放射線照射;全身放射線照射。 メタボリックシンドロームの構成疾患(腹部肥満、高血圧、異脂肪血症、糖代謝障害) 身長、体重、BMI、血圧
臨床検査:空腹時の血糖および脂質

身体組成:低体重、過体重、および肥満

低体重

過体重/肥満

証拠(過体重/肥満の危険因子):

  1. CCSSの研究者らにより、小児がん生存者における肥満に対する次の独立した危険因子が報告された:治療、生活様式、および医薬品の使用。[ 99 ]

小児ALL後の身体組成変化

  1. ALL生存者における中等度線量の頭蓋照射療法(18~24Gy)は、特に低年齢で治療を受けた女性で肥満と関連している。[ 90 ][ 92 ][ 100 ]
  2. 身体組成変化は男性では減弱するようである。
  3. ALL治療レジメンは、治療終了から短期間で生じるBMIの増加に関連し、おそらくは長期的な肥満リスクの増大にも関連している。[ 93 ][ 94 ][ 104 ][ 105 ][ 106 ]

証拠(小児ALLの成人生存者における身体組成の変化):

  1. ALLの成人生存者365人(149人が頭蓋照射療法を含めた治療を受け、216人が頭蓋照射療法を含まない治療を受けた)を対象としたコホート研究で、身体組成、エネルギーバランス、および健康について、年齢、性別、および人種を一致させた同輩と比較された。[ 110 ]
  2. 自己報告の身長および体重の測定値に基づくCCSSによる1件の報告では、化学療法単独による治療を受けた小児ALLの成人生存者は、同胞対照と比べて肥満率が有意に高かったわけではなく[ 90 ]、治療に続いて平均7.8年の追跡期間が経過した後も、これらの群間でBMIの変化に差はみられなかった。[ 92 ]
  3. スイスの研究者らにより、小児ALLのほか、非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫の成人生存者1,936人(年齢中央値、24歳;診断からの期間中央値、17年)における自己報告の体重が評価され、同胞および一般集団と比較された。[ 111 ]

研究間の転帰の変動は、異常な身体組成の測定基準としてBMIを用いたことに関係している可能性が高く、BMIでは、この集団において代謝リスクに寄与する可能性のある内臓脂肪が適切に評価されない。[ 112 ]

CNS腫瘍治療後の身体組成変化

より高い線量の頭蓋照射療法による治療を受けた脳腫瘍の生存者で肥満リスクが最も高いのは、若い時期に治療を受けた女性であると観察されている。[ 113 ]

頭蓋咽頭腫の生存者では、腫瘍部位、および外科的切除に起因する視床下部の損傷のために、極度の肥満が生じるリスクがかなり高い。[ 114 ][ 115 ][ 116 ][ 117 ]

造血幹細胞移植後の身体組成変化

身体組成と虚弱

小児がん生存者の若年成人には、筋肉量の減少、自己報告の消耗、エネルギー消費量の減少、歩行速度の低下、脱力の発現を特徴とする虚弱が予測を上回る割合で認められる。[ 122 ]

表11では、身体組成の晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表11.身体組成の晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 潜在的な晩期合併症(晩期障害) 健康スクリーニング
BMI = 肥満指数。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
頭蓋照射療法 過体重/肥満 身長、体重、BMI、血圧
臨床検査:空腹時の血糖および脂質

内分泌系およびメタボリックシンドロームの晩期合併症(晩期障害)の危険因子、評価、および健康カウンセリングを含む情報については、小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)を参照のこと。

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免疫系の晩期合併症(晩期障害)

免疫系の晩期合併症(晩期障害)は、特に現代的な療法による治療を受けた生存者については、十分に研究されていない。長期的な免疫系の転帰について公表された報告は、レトロスペクティブなデータ収集、少ないサンプルサイズ、コホート選択および参加バイアスのほか、治療アプローチ、治療期間、および確認方法における不均一性により制限される。

無脾症

外科的または機能的な脾臓摘出は、命を脅かす侵襲性細菌感染のリスクを高める。[ 1 ]

無脾の個人は、無脾状態となった理由に関係なく、特に被包性細菌に関連する劇症型菌血症のリスクが高く、劇症型菌血症では死亡率が高い。菌血症のリスクは、年長児よりより年齢の低い小児の方が高く、このリスクは脾臓摘出術直後の数年間がより高い可能性がある。ただし、脾臓摘出術から最大25年経過後の成人で、劇症型敗血症が報告されている。

無脾の生存者では、以下の細菌により菌血症が引き起こされる場合がある:

機能的または外科的無脾症の人は、致死的なマラリアおよび重度のバベシア症のリスクも高い。

治療後の管理

臨床医は、すべてのがんおよび移植生存者において推奨された用量とスケジュールで不活化ワクチン(例、インフルエンザ)と、精製抗原(例、肺炎球菌)、菌体成分(例、ジフテリア-破傷風-百日咳)、または遺伝子操作による組換え抗原(例、B型肝炎)で構成されるワクチンの投与を検討し、勧めるべきである。[ 7 ][ 8 ][ 9 ]

無脾の小児では、2歳から青年期に四価髄膜炎菌結合ワクチンの初回接種を2ヵ月空けて2回投与すべきであり、5年ごとに追加接種を実施すべきである。[ 10 ](詳しい情報については、Red BookのImmunization Schedules for 2019のセクションを参照のこと。)しかしながら、無脾の小児における髄膜炎菌ワクチンの効力は確立されていない。(詳しい情報については、Red BookのMeningococcal Infectionsのセクションを参照のこと。)これらのワクチンを別の必要なワクチンと同時に、別の注射器で、異なる部位に接種することについて、既知の禁忌は存在しない。

肺炎球菌結合ワクチン(PCV)および肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV)は、無脾のすべての小児に対して推奨される年齢で適応とされる。適切な回数のPCV13の接種後は、生後24ヵ月経過時に開始するPPSV23を接種すべきである。2回目の接種は5年後に実施すべきである。PCV7は完了したが、PCV13は接種していない2~5歳の小児に対しては、PCV13の補助的追加接種を実施すべきである。PCV13を接種していない6~18歳の無脾の個人に対しては、PCV13の補助的追加接種を検討すべきである。[ 11 ][ 12 ](詳しい情報については、Red BookのPneumococcal Infectionsのセクションを参照のこと。)Hib予防接種は生後2ヵ月で開始すべきであり、他の点では健康な幼児および以前に接種を受けていない無脾の小児に推奨される。[ 11 ](詳しい情報については、Red BookのImmunization Schedules for 2019のセクションを参照のこと。)

無脾の幼児については、予防接種を受けたかどうかにかかわらず、肺炎球菌感染に対する日常の抗微生物予防が推奨される。日常の抗微生物予防の効力は鎌状赤血球貧血の患者でしか証明されていないが、この経験は悪性腫瘍やサラセミアの既往を有する無脾の小児など、他の高リスクの小児にも拡張されている。一般的に、5歳未満の無脾のすべての小児には脾臓摘出術から少なくとも1年間、(予防接種に追加する)抗微生物予防を検討すべきである。

抗微生物予防を中止する年齢は経験で決定される。1件の鎌状赤血球症に関する多施設研究によれば、定期的な診察を受けており、重度の肺炎球菌感染または外科的脾臓摘出術を経験していない小児では、予防的ペニシリンを5歳で中止できる。他の原因によって無脾状態となった小児に対する予防の適切な期間については不明である。小児の間、さらに無脾の特に高リスクの患者では成人してからも予防を継続する専門家もいる。

表12では、脾臓の晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表12.脾臓の晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 免疫学的影響 健康スクリーニング/介入
GVHD = 移植片対宿主病;HSCT = 造血幹細胞移植;IgA = 免疫グロブリンA;T = 体温。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
脾臓に影響する放射線;脾臓摘出術;現時点で活動性のGVHDを伴うHSCT 無脾症/小脾症;重篤な脾臓摘出後敗血症 発熱(T > 38.5℃)中の血液培養;経験的抗生物質
莢膜を有する微生物に対する予防接種(肺炎球菌、B型ヘモフィルスインフルエンザ菌、および髄膜炎菌ワクチン)
何らかの慢性GVHDの既往を伴うHSCT 免疫学的合併症(IgA分泌不足、低ガンマグロブリン血症、B細胞減少、T細胞機能障害、慢性感染症[例えば、結膜炎、副鼻腔炎、および慢性GVHDに関連した気管支炎]) 既往:慢性結膜炎、慢性副鼻腔炎、慢性気管支炎、反復性または異常な感染症、敗血症
検査:眼、鼻/副鼻腔、および肺に注意

移植後予防接種に関する詳しい情報については、疾病予防管理センター(CDC)のGuidelines for Preventing Opportunistic Infections Among Hematopoietic Stem Cell Transplant Recipientsを参照のこと。

液性免疫

免疫系は積極的な化学療法および放射線療法の影響から回復するようにみえるが、リンパ系の一部はすべての生存者で正常化するわけではないという証拠がいくつかある。小児白血病の生存者では、先天性免疫、胸腺細胞増殖、および放射線に対するDNA損傷応答は、異常なことが示されている。[ 13 ]B細胞の枯渇を特徴とする免疫系回復不良が、標準リスクおよび中リスク急性リンパ芽球性白血病(ALL)の2年生存者において観察されている。[ 14 ]ALLに対する治療を1年以上受けていない患者でも、過去のワクチン接種に対する抗体量が減少していることから[ 15 ][ 16 ]、液性免疫の異常[ 17 ]およびそのような小児では再接種が必要なことが示唆される。小児がん生存者は、ワクチンで予防可能な感染症に依然としてなりやすいことがある。治療の強度、診断時年齢、および治療からの期間は既存の免疫を喪失するリスクに関連している。[ 18 ][ 19 ]

この集団における能動免疫投与の有益性に関するデータは不足しているが、再免疫は保護抗体を獲得させるために必要である。推奨される再免疫スケジュールは、以前に受けたワクチン接種や治療の強度に依存する。[ 20 ][ 21 ]強度の治療を受けた一部の小児では、再接種の必要性を判定するために、一般的なワクチン接種抗原に対する抗体の評価を検討してもよい。(詳しい情報については、Red BookのImmunization Schedules for 2019のセクションを参照のこと。)

HSCT後は、特にGVHDに関連して免疫状態も障害を受けている。[ 22 ]同種HSCTによる治療を受けた生存者210人を対象としたプロスペクティブ縦断研究において、破傷風(95.7%)、風疹(92.3%)、ポリオウイルス(97.9%)ではほとんどの患者で、またジフテリア(100%)ではジフテリア-破傷風-無菌性百日咳(DTaP)予防接種患者で予防接種後の抗体反応が5年を超えて持続していることが観察された。しかしながら、百日咳(25.0%)、麻疹(66.7%)、おたふく風邪(61.5%)、B型肝炎(72.9%)、および破傷風-ジフテリア(Td)(48.6%)予防接種患者への反応はあまり良好ではなかった。ワクチン失敗に関連する因子としては、予防接種時に年齢が高いこと;CD3、CD4、またはCD19数が低いこと;免疫グロブリンM濃度が高いこと;予防接種患者のサイトメガロウイルス血清学が陽性であること;予防接種前の抗体価が陰性であること;急性または慢性GVHDの既往歴;および放射線療法による前処置が挙げられる。[ 23 ]

主要な北米および欧米の移植グループ、CDC、およびInfectious Diseases Society of Americaから、移植を受けた患者に対する追跡の推奨事項が発表されている。[ 24 ][ 25 ]

免疫系の晩期合併症(晩期障害)の危険因子、評価、および健康カウンセリングを含む情報については、小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)を参照のこと。

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筋骨格系の晩期合併症(晩期障害)

成長期の小児または青年の筋骨格系は、手術、化学療法、放射線療法などのがん治療による細胞毒性作用の影響を受けやすい。明らかにされた晩期合併症(晩期障害)には以下のものがある:

これらの晩期合併症(晩期障害)は個々に考察しているが、筋骨格系の要素は相互に関係していることに留意することが重要である。例えば、筋肉グループに対する低形成は長骨の機能に悪い影響を与えることがあり、それにより生じる機能障害は、次に廃用性骨粗鬆症をもたらす可能性がある。

がん治療を受けた小児および青年における筋骨格系晩期合併症(晩期障害)について公表された文献の大きな強みは、ほとんどの研究が転帰と曝露量を明確に定義している点である。しかしながら、多くの研究が観察的かつ横断的に行われるレトロスペクティブデザインである。単一施設研究が一般的で、一部の転帰については少数の都合のよいコホートのみが報告されている。そのため、追跡検査への参加者に死亡または不動状態のために最も重度の筋骨格系障害がある患者を除外した研究、または最も重度の筋骨格系晩期合併症(晩期障害)がある患者は合併症関連の経過観察で再来院することから、入手しやすいために余分な症例数とした研究のいずれかになる可能性がある。さらに、特に放射線療法など、この数年間で毒性が明らかになるにつれて、抗がん治療法の実施が変化してきているため、小児がんの成人生存者で報告された結果の一部は、現在治療を受けている患者には重要ではない可能性がある。[ 1 ][ 2 ]

骨成長異常

骨成長に対する放射線の影響は、以下のように照射部位に依存する:

頭部および脳に対する放射線療法

放射線は、年齢依存性および線量依存性の形で、正常な骨および筋肉の成熟および発育を阻害することがある。頭部に対する放射線(例、頭蓋、眼窩、側頭下、または上咽頭への放射線療法)は、特に5歳未満で、20Gy以上の放射線量で治療を受けた小児[ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 6 ][ 7 ][ 8 ]または同時化学療法で治療された小児[ 9 ]では、頭蓋顔面異常を引き起こす可能性がある。軟部肉腫のうち、眼窩横紋筋肉腫および網膜芽細胞腫は、これらの領域に放射線が照射されるがんのタイプでよくみられる2つである。多くの場合、頭蓋顔面異常の外観的影響に加えて、関連した歯および鼻の障害がある可能性がある。

頭蓋照射療法は、年齢依存性および線量依存性で視床下部-下垂体軸に損傷を与えるため、成長ホルモン欠乏症を来すことがある。[ 10 ][ 11 ][ 12 ][ 13 ]成長期に成長ホルモン欠乏症を治療しない場合、ときには適切な治療法を用いた場合でも、最終身長がかなり低くなる。18Gy以上の頭蓋照射療法で治療した中枢神経系(CNS)腫瘍[ 10 ][ 14 ]または急性リンパ芽球性白血病(ALL)[ 15 ][ 16 ][ 17 ]の患者はリスクが最も高い。また、全身放射線照射(TBI)、特に単回照射のTBIによる治療を受けた患者[ 18 ][ 19 ][ 20 ][ 21 ]およびCNS以外の固形腫瘍に対して頭蓋照射で治療された患者[ 22 ]は成長ホルモン欠乏症のリスクがある。さらに、脊椎にも放射線を照射した場合(例、髄芽腫に対する頭蓋脊髄放射線療法または1960年代の初期ALL治療)、成長が2つの別個の機序-成長ホルモン欠乏症および脊椎に対する直接傷害-によって影響を受ける可能性がある。

脊椎および長骨に対する放射線療法

放射線療法は、脊椎および長骨(および関連する筋肉群)の成長に直接影響を及ぼすこともあるため、骨端の早期閉鎖を引き起こし、以下の原因となることがある:[ 23 ][ 24 ][ 25 ][ 26 ][ 27 ][ 28 ][ 29 ][ 30 ][ 31 ]

1970年より前によく使用された常用電圧放射線療法は、骨に対して高線量の放射線を照射するため、その後に骨の成長異常を伴うことが多かった。しかしながら、現代の放射線療法でも、固形腫瘍の位置が骨端または脊椎に近い場合は、骨の正常な成長における変質を避けることが困難になる可能性がある。

ウィルムス腫瘍の生存者を対象に、脊椎に照射した放射線療法による身長への影響が評価されている。

証拠(脊椎および長骨に対する放射線療法の影響):

  1. National Wilms Tumor Study(NWTS)による研究1~4では、小児2,778人を対象に身長低下が評価された。[ 24 ]長期間の追跡中に繰り返し身長の測定値が収集された。放射線の照射線量、治療時の年齢、および化学療法が身長に及ぼす影響について、性別および加齢を考慮した通常の身長変化を説明する統計モデルを使用して解析された。そのモデルから得られた予測は、患者205人の17~18歳時点で測定された身長に関する記述的解析により検証された。
  2. 脊柱側弯症の発生に対する放射線療法の影響も再評価されている。1968年から1994年にウィルムス腫瘍の治療を受けた小児42人のグループで、18人の患者に脊柱側弯症が認められ、1人の患者のみが整形外科的介入を必要とした。[ 32 ]

骨粗鬆症および骨折

小児がんの長期生存者において骨折率の増加は報告されていないが[ 33 ]、最大ピークの骨量はより年齢の高い患者における骨粗鬆症および骨折のリスクに影響する重要な因子である。骨ミネラル損失に影響を及ぼす治療関連因子には以下のものがある:

骨石灰化に対するがんおよびその治療の影響に関する知識のほとんどは、ALL小児の研究により得られている。[ 34 ][ 40 ]このグループでは、白血病経過および可能性のあるビタミンD不足が、骨代謝および診断時にみられる骨量における変化において役割を果たしている可能性がある。[ 41 ]抗白血病治療により、骨塩密度の損失がさらに大きくなるが[ 42 ]、時間経過とともに正常化するとの報告[ 43 ][ 44 ]、または治療完了後も長年にわたって持続するとの報告[ 45 ][ 46 ]がある。骨塩密度低下の比較的高いリスクを予測する臨床的因子には以下の治療がある:[ 38 ][ 45 ][ 47 ][ 48 ][ 49 ]

ALLに対する治療中の骨壊死発症もまた、高リスクの骨塩密度低下を予測する。[ 50 ]

小児ALLに対する治療を受けた成人における骨塩密度の臨床的評価によると、ほとんどの骨ミネラル不足は、骨傷害性治療の中止後、時間とともに正常化することが示唆される。

証拠(骨塩密度の低下):

  1. 小児ALLの成人生存者845人のコホートが年齢中央値31歳時に評価された。[ 38 ]
  2. ALL生存者862人(年齢中央値、31.3歳)の椎骨をL1~L2まで定量的コンピュータ断層撮影で評価したところ、生存者の30%で骨塩密度が低く(zスコア-1未満)、18.6%が虚弱または前虚弱の基準を満たした。[ 51 ]

    前虚弱(prefrail)の表現型は、5つの特徴(筋肉量の減少、自己報告の消耗、エネルギー消費量の減少、歩行速度の低下、脱力)のうち2つを認めることを特徴とし、虚弱(frail)の表現型は、これらの特徴のうち3つ以上を認めることを特徴とする。成長ホルモン欠乏症、喫煙、飲酒などの修正可能な因子は、これらの転帰に対する有意な予測因子であり、性別によって影響が異なった。これらのデータは、長期生存者における追跡評価中のホルモン不足に対する生活様式のカウンセリングとスクリーニングの重要性を強調している。

骨塩密度損失の病因がおそらく多因子性であることは、TBIで前処置を受け同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者について報告されている。[ 52 ][ 53 ]フランスの研究者らは、HSCTによる治療を受けた性腺欠損がある小児白血病の成人生存者において、大腿骨の骨塩密度が低くなる有意なリスクを認めた。[ 54 ]ホルモン療法により、HSCT後に性腺機能低下症と診断された青年女性の骨塩密度が増加することが示されている。[ 55 ]

疾患関連および治療関連の骨塩密度低下のリスクがあるにもかかわらず、Childhood Cancer Survivor Study(CCSS)参加者における自己報告の骨折の有病率は、同胞対照によって報告された値よりも低かった。多変量解析による骨折有病率増加の予測因子は、以下のものであった:[ 33 ]

放射線誘発性骨折は、放射線量が50Gy以上で発生する可能性があり、この線量は四肢のユーイング肉腫に対する治療でよく使用されている。[ 56 ][ 57 ]

二重エネルギーX線吸収法によるスクリーニングを必要とする小児がんの成人生存者を特定する臨床および治療上の特徴に基づいて、低いおよび非常に低い骨塩密度に対する予測モデルを開発し、検証するために、St. Jude Lifetime Cohort(開発)およびオランダのErasmus Medical Center(検証)からのデータが用いられた。低い骨塩密度は、腰椎骨塩密度および/または全身の骨塩密度のZスコアが-1以下と定義された;非常に低い骨塩密度は、Zスコアが-2以下と定義された。低い骨塩密度は、St. Jude Lifetimeおよびオランダの参加者の51%および45%に認められ、それぞれ血液悪性腫瘍および固形悪性腫瘍の両方の生存者により代表されていた;非常に低い骨塩密度は、それぞれ20%および10%に認められた。このモデルには男性、身長、体重、到達年齢、現在の喫煙状態、および頭蓋照射が含まれ、低い骨塩密度のリスクの予測に良好な性能を示した(曲線下面積、St. Jude Lifetime Cohortで0.72およびオランダのコホートで0.69)。このモデルには男性、身長、体重、到達年齢、頭蓋照射、および腹部放射線照射が含まれ、非常に低い骨塩密度のリスクの予測に良好な性能を示した(曲線下面積、St. Jude Lifetime Cohortで0.76およびオランダのコホートで0.75)。これらのモデルでは、簡単に測定された患者と治療上の特徴を用いて40歳までのほとんどが白人の成人生存者における現在の骨塩密度状態が確認された。[ 58 ]

骨壊死

骨壊死(無菌壊死または虚血性壊死としても知られる)はまれであるが、広く認知された骨合併症として、コルチコステロイドによる治療を受けた小児血液悪性腫瘍の生存者に主に観察されている。[ 59 ][ 60 ][ 61 ]骨壊死の有病率は、研究対象集団、治療プロトコル、評価方法、および治療からの経過時間によって1%から22%の幅で変動している。[ 61 ][ 62 ][ 63 ][ 64 ][ 65 ][ 66 ][ 67 ][ 68 ]

この疾患は、1ヵ所以上の骨が壊死し、ほとんどの場合、体重を支える関節、特に股関節および膝関節に影響を及ぼすという特徴がある。縦断的コホート研究により、無症候性で画像上自然に消失する変化から、痛みを伴う進行性の関節崩壊で関節置換術を必要とするものまで、広範囲にわたる骨壊死の臨床症状が特定されている。[ 69 ][ 70 ]疼痛、関節腫脹、および可動性低下を特徴とする症候性の骨壊死は、特にALL患者で治療の最初の2年間に典型的にみられる。これらの症状は、治療完了後数年で、時間とともに改善する場合、持続する場合、または進行する場合がある。[ 71 ]1件のシリーズによると、骨壊死の診断から追跡期間中央値4.9年で、60%の患者に症状が引き続き認められた。[ 72 ]重度の症状が持続性の患者では、コア除圧術、骨切り術、関節置換術などの外科的処置が施行されることがある。[ 72 ]

骨壊死リスクを高める因子には以下のものがある:

骨壊死に対する男女別の影響を評価した研究で出された結果は相反しており、女性の発生率が高いことを示唆する研究もあるが[ 69 ][ 72 ][ 80 ]、他では確認されていない。[ 60 ][ 69 ]

骨軟骨腫

骨軟骨腫は良性の骨膨隆で、自然に発生する場合も放射線療法に関連する場合もある。骨軟骨腫は一般に単一病変として発生する;しかしながら、遺伝性多発性骨軟骨腫症の場合は、複数の病変が発生することがある。[ 84 ]骨髄破壊的HSCTを受けた小児の約5%に骨軟骨腫が発生するが、これは長骨の骨幹端部に最もよくみられる。[ 84 ][ 85 ]

証拠(骨軟骨腫のリスク):

  1. 大規模なイタリアの研究では、移植後15年での骨軟骨腫発症の累積リスクは6.1%で、若い年齢(3歳以下)での移植、およびTBI使用と関連してリスクが高まることが報告された。[ 86 ]
  2. 骨軟骨腫は局所放射線療法、抗GD2モノクローナル抗体療法、およびイソトレチノインを受けた神経芽腫の患者において報告されている。[ 87 ]

成長ホルモン療法は、骨軟骨腫の発症および成長速度に影響する可能性がある。[ 21 ][ 88 ]

これらの病変の悪性への変性はきわめてまれなため、放射線学的追跡よりも臨床的な追跡が最も適している。[ 89 ]病変が関節のアライメントおよび運動を阻害する場合は、外科的切除のみが必要である。[ 90 ]

切断術および患肢温存手術

切断術および患肢温存手術は、肉眼的な病変および顕微鏡的な病変を切除することで骨腫瘍の局所再発を防ぐ。最適に実施されれば、両手技により、病巣以外の正常な組織の縁で腫瘍の一塊(en bloc)切除が達成される。外科的手術の種類、原発腫瘍部位、および患者年齢が術後合併症のリスクに影響する。[ 40 ]切断術による治療を受けた生存者の合併症には、人工装具適合の問題、残肢の慢性疼痛、幻肢痛、および骨の過成長がある。[ 91 ][ 92 ]患肢温存手術は外見的により好ましい結果を得ることができるが、これらの手術を受けた生存者では、切断術による治療を受けた生存者よりも合併症が高頻度で報告されている。患肢温存手術後の合併症には、偽関節、病的骨折、無菌性弛緩、四肢長不一致、人工装具内部骨折、および関節可動域制限がある。[ 91 ][ 93 ]ときには、患肢温存手術後に難治性の合併症が発生し、切断術が必要になる。[ 94 ][ 95 ]

多くの研究で、切断術および患肢温存手術後の機能的な転帰が比較されているが、機能性の評価方法が一貫しておらず、コホートサイズが小さいため、結果は限定されている。全体的に、患肢温存手術は切断術より良好な機能性が得られることをデータは示唆しているが、その差は比較的小さい。[ 91 ][ 95 ][ 96 ]同様に、切断術および患肢温存手術を受けた生存者では、生活の質の長期的な転帰もそれほど異なっていない。[ 94 ]CCSSにおける四肢肉腫生存者の健康状態の縦断的解析によると、下肢切断術と加齢に伴う活動制限増加との関連性、および上肢切断術と教育達成度の低下との関連性が示唆される。[ 97 ]

関節拘縮

HSCTによる慢性GVHDの既往は、関節拘縮に関連している。[ 98 ][ 99 ][ 100 ]

表13では、骨や関節の晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表13.骨および関節の晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 筋骨格系の影響 健康スクリーニング
CT = コンピュータ断層撮影法;DXA = 二重エネルギーX線吸収法;GVHD = 移植片対宿主病;HSCT = 造血幹細胞移植。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
筋骨格系に影響する放射線 低形成;線維症;低成長/不均等成長(側弯症、後弯症);四肢長不一致 検査:照射野の骨および軟部組織
頭頸部に影響する放射線 頭蓋顔面異常 既往:次のものに注目した心理社会的評価:教育および/または就業の進捗、うつ病、不安、外傷後ストレス、引きこもり
頭頸部の検査
筋骨格系に影響する放射線 放射線誘発性骨折 患骨の検査
メトトレキサート;コルチコステロイド(デキサメタゾン、プレドニゾン);骨格構造に影響する放射線;HSCT 骨塩密度の低下 骨塩密度検査(DXAまたは定量的CT)
コルチコステロイド(デキサメタゾン、プレドニゾン) 骨壊死 既往:関節痛、腫脹、不動、可動域制限
筋骨格系の検査
口腔に影響する放射線 放射線骨壊死 既往/口腔検査:歯科処置後の回復の障害または遅延、顎の痛みまたは腫脹の持続、開口障害
切断術 切断術関連の合併症(外見上の障害、機能/活動制限、残肢完全性、慢性疼痛、エネルギー消費増加) 既往:疼痛、機能/活動制限
検査:残肢完全性
人工装具の評価
患肢温存手術 患肢温存手術の合併症(機能/活動制限、線維症、拘縮、慢性感染症、慢性疼痛、四肢長不一致、エネルギー消費増加、人工装具不良[緩み、癒着不能、破損]) 既往:疼痛、機能/活動制限
検査:残肢完全性
患肢のX線検査
整形外科的評価
何らかの慢性GVHDの既往を伴うHSCT 関節拘縮 筋骨格系の検査

筋骨格系の晩期合併症(晩期障害)の危険因子、評価、および健康カウンセリングを含む情報については、小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)を参照のこと。

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生殖器系の晩期合併症(晩期障害)

視床下部-下垂体軸または性腺の何らかの要素に悪影響を及ぼす手術、放射線療法、または化学療法は、小児がん生存者における生殖機能転帰を損なう可能性がある。小児がん生存者のこの転帰に関する証拠は、少ないサンプルサイズ、コホート選択および参加バイアス、横断的評価のほか、治療アプローチ、治療期間、および確認方法における不均一性により制限される。特に、生殖能力(例、男性の精液検査、女性の原始卵胞数)の確かな転帰、および現行のリスク調整治療アプローチを施行した後の転帰に関する文献が不足している。[ 1 ][ 2 ]

不妊症のリスクは、一般にがんおよび特定の細胞傷害性治療の種類、用量、および併用により影響を受ける組織または臓器に関係している。

抗がん治療、治療時年齢、および性別に加えて、遺伝因子も永久的な不妊症のリスクに影響する可能性が高い。小児がん治療プロトコルでは、集学的治療が行われることが多いため、生殖能の評価では性腺傷害性曝露の付加的な影響を考慮する必要があることに注意すべきである。特定のがん治療法で、特殊な外科処置、化学療法薬の種類と累積用量、および放射線療法の治療容積および線量などに関する詳細情報として、性腺機能不全および不妊症のリスクを推定する必要がある。

精巣

精巣機能および生殖機能を損なう可能性のあるがん治療には以下のものがある:

性腺機能に影響を及ぼす手術

精巣捻転で片側の精巣摘除術を受けた患者は、長期の追跡で精子数が正常以下となることがある。[ 4 ][ 5 ]逆行性射精は精巣新生物の男性で実施される両側後腹膜リンパ節郭清で高頻度にみられる合併症で[ 6 ][ 7 ]、また前立腺の横紋筋肉腫を切除するための広範な骨盤切開後に勃起不全が発生することがある。[ 8 ][ 9 ]

精巣機能に影響を及ぼす放射線療法

小児がんに対する治療を受ける男児では、放射線療法の照射野に骨盤および性腺が含まれていたり、全身に照射したりする場合は、性腺損傷の可能性がある。胚上皮は、放射線損傷に対してアンドロゲン産生ライディッヒ細胞よりもはるかに影響を受けやすい。このような放射線照射から3~6週間後に精子数の減少がみられることがあり、用量にもよるが、回復には1~3年を要する場合がある。胚上皮はライディッヒ細胞(20~30Gy)よりもはるかに低い線量(1Gy未満)で損傷を受ける。不可逆的な胚細胞不全は2~4Gyを超える線量の分割放射線で発生する可能性がある。[ 10 ]24Gyのように高い線量の放射線照射は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)の精巣再燃の治療で使用されたが、胚細胞不全およびライディッヒ細胞機能障害の両方を引き起こす。[ 11 ]

ライディッヒ細胞に対する放射線傷害は、照射線量および治療時年齢に関係している。精巣に対して12Gy未満の分割照射による治療を受けた思春期前の男児では、テストステロン産生量が正常である場合があるが、この集団でみられる黄体形成ホルモンの血漿濃度上昇は、無症候性の損傷を示す。思春期前の男児が精巣に対して20Gyを超える線量の放射線療法を受けた場合は、典型的に性腺機能不全となる;男性化にはアンドロゲン療法が必要となる。性的に成熟した男性患者では、放射線量が30Gyを超えなければ、ライディッヒ細胞機能は通常温存される。利用可能なデータからは、ライディッヒ細胞は思春期以前に放射線に曝露した場合に、より脆弱であることが示唆されるが、この観察の信頼性は検査時の年齢や精巣摘除術および化学療法の両方の影響などの交絡因子によって制限される。[ 12 ]

精巣機能に影響を及ぼす化学療法

アルキル化剤(シクロホスファミド、メクロレタミン、ダカルバジン)の累積用量は、精巣胚細胞の損傷リスクを推定する上で重要な因子であるが、臨床的特徴が十分明らかになっているコホートを対象とした精液検査の結果と相関しているデータで利用できるものは限られている。[ 13 ]一般に、ライディッヒ細胞機能は温存されるが、シクロホスファミドの累積用量が高く(7,500mg/m2以上)、アルキル化剤の併用療法が3ヵ月を超える男性では、胚細胞不全がよくみられる。ほとんどの研究で、思春期前の男性は、化学療法誘発性精巣損傷のリスクが思春期を過ぎた患者ほど低くないことが示唆される。[ 14 ][ 15 ][ 16 ][ 17 ]

放射線療法併用の有無にかかわらず、アルキル化剤投与後における低精子症または無精子症により明らかな精巣胚細胞損傷の研究では、以下のことが報告されている:

造血幹細胞移植(HSCT)後の精巣機能

全身放射線照射(TBI)による前処置、高用量アルキル化剤による化学療法、またはその両方に関係する性腺機能不全および不妊症のリスクは、かなり大きい。再燃または難治性がんに対してしばしば移植が施行されるため、アルキル化剤による化学療法、または視床下部-下垂体軸もしくは性腺に対する放射線療法を用いた以前の治療により、リスクが上乗せされる可能性がある。治療時の年齢も性腺損傷のリスクに影響を及ぼす。高用量シクロホスファミド(200mg/kg)による治療を受けた低年齢の男児および青年では、一般にライディッヒ細胞の機能およびテストステロン産生が保たれるが、胚細胞不全がよくみられる。TBIによる前処置後、ほとんどの男性患者は、テストステロン産生能力を保持するが、胚細胞不全を経験する。[ 34 ]

ブスルファン/シクロホスファミドによる骨髄除去的前処置を受けた男児と比較して、フルダラビン/メルファランによる強度縮小前処置を受けた後、かなりの割合の男児が胚機能を維持するか、精子形成を回復する(思春期進行およびゴナドトロピン値に基づく)ことを示唆するデータは限られている。[ 35 ]

性腺機能の回復

細胞毒性化学療法および放射線療法後も性腺機能が回復する可能性がある。オランダの研究者らは、レトロスペクティブ横断研究で小児がんの男性生存者201人を対象に性腺機能の代替マーカーとしてインヒビンBを用い、診断からの追跡期間中央値は15.7年(範囲、3~37年)となった。コホート内のインヒビンB値の中央値は、中央値3.3年以上(範囲、0.7~11.3年)にわたって実施された連続測定で増加した。血清インヒビンB値が回復する確率は、ベースライン時のインヒビンB値、診断時年齢ではなく研究評価時の年齢、治療中止から研究評価までの期間、性腺への放射線照射、アルキル化剤用量スコアによる有意な影響を受けた。これらの結果から、回復の可能性があることが示唆されている(ただし、インヒビンB値が既に決定的に低い場合は回復しない)。[ 36 ]

インヒビンB値およびFSH値は精子濃度と相関しており、精子形成がみられるかどうかの評価にしばしば用いられる;ただし、これらの検査の特異度および陽性適中率には限界があることが報告されている。[ 37 ]したがって、男性生存者には、精子形成が十分であるかどうかの評価は精液検査が最も正確であると助言すべきである。

小児がんの長期生存者におけるライディッヒ細胞の機能

小児がん生存者におけるライディッヒ細胞の機能については、十分な研究が行われていない。St. Jude Lifetime Cohortの研究者らにより、1,516人の男性(年齢中央値、30.8歳;診断からの期間中央値、22年)におけるライディッヒ細胞不全およびライディッヒ細胞機能障害の有病率および危険因子が評価された。[ 38 ]

卵巣

卵巣機能/温存を損なう可能性のあるがん治療には以下のものがある:

卵巣機能に影響を及ぼす手術

胚細胞腫瘍の管理で施行される卵巣摘出術により、卵巣の蓄えが減少することがある。このリスクを減らすため、現代の治療では、全身化学療法と併用して生殖機能を温存する外科処置を使用している。[ 39 ]

卵巣機能に影響を及ぼす放射線療法

小児がんに対する治療を受ける女児では、放射線療法の照射野に腰仙椎、腹部、および骨盤が含まれていたり、全身に照射したりすると、一次的性腺損傷の可能性がある。腹部放射線療法後の卵巣機能不全の頻度は、照射時の女性の年齢および卵巣が受けた放射線療法の線量のいずれとも関連している。低年齢女性の卵巣は、原始卵胞の補充量が多いため、高年齢女性よりも放射線損傷を受けにくい。

線量が20Gy以上の全腹放射線照射に伴って、卵巣機能不全のリスクが最も高くなる。1件のシリーズでは女性の71%が思春期を迎えることができず、線量が20~30Gyの全腹放射線療法を受けた後に早発閉経が26%にみられた。[ 40 ]他の研究では、小児期に腹部全体への照射[ 41 ]または頭蓋脊髄への照射[ 42 ][ 43 ]を受けた女性で同様な結果が報告されている。

卵巣機能に影響を及ぼす化学療法

アルキル化剤とプロカルバジンを含む併用療法による治療後に、卵巣機能が損傷することがある。一般に女児は、男児よりも高いアルキル化剤の累積用量でも性腺機能を維持する。小児がんでリスク調整化学療法による治療を受けた女性生存者のほとんどで、卵巣機能の保持または回復がみられる。しかしながら、アルキル化剤による化学療法および腹部または骨盤への放射線療法を用いた集学的治療、またはHSCT前の骨髄破壊的前処置レジメンとしての高用量アルキル化剤が治療に含まれる場合は、急性卵巣不全および早期閉経のリスクがかなり大きい。[ 44 ][ 45 ][ 46 ][ 47 ][ 48 ]

早期卵巣機能不全

早期卵巣機能不全は、小児がん生存者で、特にアルキル化剤および腹部放射線療法の両方による治療を受けた女性では十分に明らかにされている。[ 44 ][ 48 ][ 49 ][ 50 ]

その研究では、早期卵巣機能不全(急性卵巣障害および早発閉経)の発生率増加に関して、以下の因子に関連していた:

化学療法終了後の一見正常な卵巣機能の割合は、卵巣への障害が起きなかった証拠として解釈してはならない。

証拠(小児がん生存者における急性卵巣障害および早発閉経):

  1. CCSSに適格な参加者3,390人のうち、215人(6.3%)が急性卵巣障害(月経完全停止または診断から5年以内に月経停止として定義される)を発症した。[ 45 ]
  2. CCSSに参加した生存者2,930人の閉経状態が同胞1,399人の閉経状態と比較された。非外科的早発閉経は、妊娠、手術、または医薬品を原因とせずに、がん診断から5年後に始まり6ヵ月以上に及ぶ持続的な月経停止(ただし40歳前であること)と定義された。非外科的早発閉経を来した生存者110人において、年齢中央値34歳の集団における40歳での有病率は9.1%であった。[ 48 ]
  3. 小児固形がんの女性生存者1,109人を対象としたフランスのコホート研究で、以下の非外科的閉経の危険因子が特定された:[ 50 ]
    1. 特に青年期のアルキル化剤への曝露とその用量。
    2. 卵巣への照射線量。
    3. 卵巣摘出術。
  4. ヨーロッパでは、15~40歳の間にホジキンリンパ腫の治療を受け、ホルモン避妊薬を服用していなかった生存者を対象に、早発性の卵巣機能不全の発生が調査された。[ 49 ]
  5. St. Jude Lifetime Cohortの研究者らにより、この研究に参加した小児がんの女性生存者921人における早期卵巣不全の有病率および危険因子が評価された。早期卵巣不全は臨床的に評価され、40歳前の持続性の無月経と30 IU/L以上のFSH値の同時発生と定義された。[ 51 ]

HSCT後の卵巣機能

HSCTによる治療を受けた女性における卵巣機能の温存は、治療時年齢、移植前のアルキル化剤化学療法および腹部-骨盤放射線療法の実施のほか、移植前処置レジメンに関係している。[ 46 ][ 52 ]

証拠(HSCTによる治療を受けた女性における卵巣機能):

  1. TBIまたはブスルファンベースのレジメンによる前処置を受けた女児および若年女性は、シクロホスファミド単独による前処置を受けた患者と比較して、卵巣機能の低下および早期閉経のリスクが同程度で高かった。[ 46 ]再生不良性貧血に対してHSCT前に大量のシクロホスファミド(50mg/kg/日×4日)投与を受けたすべての女性が移植後に無月経となった。
  2. TBIは、特に単回照射の場合に傷害性が高い。[ 46 ]HSCT前にTBIを受けた思春期後の女性のほとんどが無月経になる。
  3. 白血病の女性では、移植前の頭蓋照射により卵巣機能保持の可能性がさらに低下した。[ 46 ]
  4. ブスルファン/シクロホスファミドによる骨髄除去的前処置を受けた女性と比較して、フルダラビン/メルファランによる強度縮小前処置を伴うHSCTを受けた女性では卵巣機能が良好に維持される(思春期進行およびゴナドトロピン値に基づく)可能性がある。[ 35 ]

妊孕性

不妊症は、依然として長期小児がん生存者が最も多く経験する生活を変える治療障害の1つである。小児がんコホート研究で、生殖機能転帰に対する細胞毒性治療の影響が明らかにされている。CCSSの調査では、小児がん生存者における低妊孕率の原因となる因子が解明されている。[ 53 ][ 54 ]

10,938人のCCSS参加者(男性5,640人、女性5,298人)と同胞3,949人における妊孕性が評価された。[ 53 ]

妊孕性は、精子および卵子の欠如以外の因子によって障害を受けることがある。受胎には、精子を子宮頸部まで届けること、受精を達成するための卵管の開通性、および着床に適切な子宮の状態が必要である。[ 6 ][ 7 ][ 55 ]

CCSSの生存者2,930人を対象として生殖機能転帰に関する閉経状態の研究では、研究者らにより、最終的に非外科的早発閉経を発症した生存者に対する妊娠および生児出生が得られる割合は、31~40歳の年齢で非外科的早発閉経の発症前でも実質的に低かったことが明らかにされた。しかしながら、21~30歳の生存者については、最終的な閉経状態に基づく妊娠および生児出生が得られる割合の差は認められなかった。多変量解析による非外科的早発閉経の発症に対する有意な治療変数は、4,000mg/m2を超える用量のプロカルバジンへの曝露、すべての卵巣に対する放射線照射、および幹細胞移植であった。[ 48 ]単変量解析で、プロカルバジンを含む6,000mg/m2以上のシクロホスファミド同等品用量が有意であったが、多変量解析では有意性を達成しなかった。[ 48 ]

生殖

妊孕性を維持している生存者では、小児期にがんに対する治療を受けた成人を対象に妊娠合併症の有病率および危険因子が多くの研究で評価された。高血圧、胎位異常、胎児消失/自然流産、早期陣痛、および低出生体重を含む妊娠合併症は、特定の診断および治療グループに関連して観察された。[ 56 ][ 57 ][ 58 ][ 59 ][ 60 ]

証拠(小児期にがんに対する治療を受けた成人における妊娠合併症):

  1. CCSSにより追跡された1,915人の女性における4,029の妊娠の研究では、63%が生児出生、1%が死産、15%が流産、17%が中絶、3%が不明または妊娠中であった。[ 56 ]
  2. 全米ウィルムス腫瘍研究では、妊娠期間が20週を超える1,021件に関する記録が得られた。このグループでは、955例の単生児出産がみられた。[ 62 ]
  3. 別の研究により男性生存者のパートナーの妊娠転帰が評価された。[ 57 ]
  4. デンマークの研究からの結果によると、子宮への放射線照射と自然流産との関連性が確認されたが、他の種類の中絶では確認されなかった。Danish Cancer Registryで小児がん女性生存者1,688人が同定され、また3万4,000の妊娠が評価された。生存者、姉妹2,737人、および集団の比較女性16,700人の妊娠の結果が同定された。[ 58 ]
  5. がんで生存していた男性1,148人および女性1,657人を対象にしたCCSSのレトロスペクティブ・コホート解析で、4,946例の妊娠が確認された。[ 59 ]
  6. HSCT生存者とそのパートナーによる報告では、ほとんどの妊娠で生児出生が得られている。[ 60 ]
  7. HSCT後でも妊孕性の保持および妊娠成功がみられる可能性があるが、TBI、シクロホスファミド、およびブスルファンなどの前処置レジメンは性腺毒性が強い。ある研究で、HSCTによる治療を受けた女性集団における妊娠転帰が評価された。[ 63 ]
  8. ドイツの1件の研究により、ホジキンリンパ腫の女性生存者が出産できる割合は一般集団の割合と同等であるが、骨盤への放射線療法を受けた生存者では出産できる割合が低いことが実証された。[ 64 ]
  9. 英国CCSSの研究者らは、英国CCSSのコホートデータを全国病院レジストリーと関連付けることによって、腹部放射線照射による治療を受けた小児がんの女性生存者における妊娠および分娩の合併症について評価した。[ 65 ]
  10. 1件の系統的レビューで、小児および若年成人の白血病およびリンパ腫生存者について発表された妊娠および小児の健康上のアウトカムのデータが、がんの既往のない対照からのデータと比較された。[ 66 ]

生殖機能温存

生殖内分泌学の進歩により、毒性を有する可能性のある化学療法または放射線療法を受ける予定の患者において、妊孕性を保持または可能にするためのいくつかの選択肢が利用可能になっている。[ 67 ]男性については、治療前の精子の冷凍保存は、治療の不妊化作用を回避するための有効な方法である。がん患者における治療前の精液の質は、健康なドナーにおける質よりも劣っていると示されることがあるが、精液の質のパーセント値低下およびがん患者からの精子に対する冷凍障害は正常ドナーの場合と類似している。[ 68 ][ 69 ]精子を銀行に保存できない患者では、精巣内精子採取法などの新しい技術が選択肢となりうる。細胞質内精子注入法および同様の手技のような微細操作技術のさらなる進歩は、精子の外科的採取を可能にし、あるいはがん患者からの質の良くない冷凍保存精子でさえも受精成功を可能にするであろう。[ 70 ]

女性では、生殖補助医療技術の成功のほとんどが、思春期後患者の卵母細胞の採取および保管のほか、性腺毒性治療前の未受精卵母細胞または胚の冷凍保存に依存している。[ 71 ]思春期前患者に対する選択肢は、研究段階にある後日の自己移植を目的とした卵巣組織の冷凍保存に限られており、卵巣がんおよび血液がん以外の女児に対して提供される場合がある。[ 72 ]

小児がん生存者の子供

子供のいる小児がん生存者については、その子供の先天異常、遺伝病、またはがんのリスクについての心配がある。がん生存者の子供には、変異原性のあるがん治療に両親が曝露していることによる先天異常の有意なリスク増加はみられない。

証拠(先天異常のリスクがそれほど高くないがん生存者の小児):

  1. CCSSに参加した男性1,128人および女性1,627人の子供4,699人において先天異常が確認された症例を対象にしたレトロスペクティブ・コホート解析では、以下が観察された:[ 73 ]
  2. ある研究で、1945年から1975年に小児がんに対する治療を受けた成人生存者の子供2,198人が同胞対照の子供4,544人と比較された。[ 74 ]
  3. 小児がん生存者の存命子孫2,630人と生存者の同胞の存命子孫5,504人を比較した集団ベースの研究では、生存者の子孫と同胞の子孫との間において、異常核型、またはダウン症候群あるいはターナー症候群の発生率の割合に差異は見られなかった。[ 75 ]

    同じ集団ベースのコホートで、腹部放射線療法および/またはアルキル化剤による治療を受けた生存者では、これらの治療を受けていない生存者と比較して、子供が遺伝性疾患を有するリスクが高くなることはなかった。

  4. 北欧5ヵ国で治療を受けた小児がん生存者の子供5,847人の研究では、(遺伝性網膜芽細胞腫などの)遺伝性がん症候群がなければ発がんリスクの増加は認められなかった。[ 76 ]この5ヵ所の施設の研究から得られたデータでも、同胞の子と比べ、かつて患者だった人の子では、単一遺伝子疾患、先天性奇形、または染色体症候群の過剰リスクはないことが示された。[ 77 ]
  5. European Group for Blood and Marrow Transplantationの研究者らは、同種移植患者19,412人および自家移植患者17,950人を対象に妊娠転帰を評価した研究で、男女のHSCTレシピエントの子孫における先天性欠損、発育遅延、またはがんのリスク増加を認めなかった。[ 60 ]
  6. フィンランドの全国規模の集団ベース登録研究で、1953年から2004年の間に治療された小児、青年、および若年成人がんの長期生存者6,862人の子孫における先天異常のリスクが、同胞35,690人の子孫における先天異常のリスクと比較された。[ 78 ]

表15では、生殖の晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表15.生殖の晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 生殖の晩期合併症(晩期障害) 健康スクリーニング
AMH = 抗ミュラー管ホルモン;FSH = 卵胞刺激ホルモン;LH = 黄体形成ホルモン。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
アルキル化剤;性腺照射 精巣ホルモン機能障害:テストステロン欠乏症/不全症;思春期遅発/未発来 タナー段階
朝のテストステロン
LH
精子形成障害:妊孕性低下;低精子症;無精子症;不妊 精液検査
FSH
インヒビンB
卵巣ホルモン機能異常:思春期遅発/未発来;早期卵巣不全/早発閉経。卵胞プール減少:卵巣の蓄え減少;不妊。 タナー段階
月経周期の記録
エストラジオール
FSH
LH
AMH
胞状卵胞数

生殖の晩期合併症(晩期障害)の危険因子、評価、および健康カウンセリングを含む情報については、小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)を参照のこと。

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呼吸器系の晩期合併症(晩期障害)

以下の治療法で治療された小児がんの長期生存者では、呼吸機能が損なわれうる:

通常の加齢、他の併存する慢性健康障害、または喫煙に伴う肺機能低下により、がん治療による早期の肺損傷の影響が深刻化する場合がある。この転帰に関する現在のエビデンスの質は、レトロスペクティブなデータ収集、少ないサンプルサイズ、コホート選択および参加バイアス、時代遅れの治療アプローチ後の転帰の記述、治療期間および確認方法の違いにより制限される。臨床評価に機能的評価および生活の質の評価を加えた大規模なコホート研究は実施されていない。

小児がん生存者における肺機能不全の真の有病率または発生率は明らかではない。HSCTによる治療を受けた小児で、重大な臨床疾患が観察されている。

証拠(長期の肺機能転帰について記述している一部のコホート研究):

  1. 中枢神経系悪性腫瘍で頭蓋脊髄放射線照射を受けた成人における自己報告による肺機能不全の発生率(1,000人年当たり)は、肺気腫/閉塞性細気管支炎で9.1(95%信頼区間、7.8-10.6)、喘息、慢性咳嗽、および酸素補充の必要性で3.0を超えていた。診断後5年を過ぎてから発生する晩期発症型肺機能不全の発生率も高いことが観察された。[ 1 ]
  2. オランダの研究者らは、小児がん生存者193人について診断後の追跡期間中央値18年で肺機能検査により評価した転帰について報告した。[ 2 ]
  3. 肺毒性の可能性がある治療法(例、ブレオマイシン、ブスルファン、肺への放射線療法)で治療された小児がん生存者121人において肺機能不全の大きさおよび経過を評価した1件の縦断研究(診断から最終の評価までの期間中央値、17.1年)において、生存者は健康な対照よりも拘束性障害および拡散障害を有する可能性が有意に高かった。[ 3 ]
  4. Childhood Cancer Survivor Studyの研究者らは、がんの5年生存者(中央値で診断から25年)および同胞コホートを対象に、自己報告による肺の転帰およびその日常生活への影響を比較した。[ 4 ]

放射線療法後の呼吸器合併症

肺実質に対する放射線療法により、肺容積減少、動的コンプライアンス障害、および肺と胸壁の両方の変形に関係する肺機能不全を来すことがある。肺の慢性続発症の可能性は、照射した放射線量、肺の照射容積、分割放射線療法の線量に関係している。[ 5 ]放射線療法および肺毒性化学療法または胸部/胸壁手術などの集学的治療は、肺機能障害のリスクを高める。[ 2 ][ 6 ]

小児悪性腫瘍の治療後に報告されている慢性の肺合併症には、拘束性または閉塞性の慢性肺疾患、肺線維症、自然気胸がある。[ 7 ]これらの続発症は、現代的な治療の後ではまれで、ほとんどが画像検査または正式な肺機能検査によってのみ検出される不顕性の損傷であることが多い。

証拠(肺転帰について記述している一部のコホート研究):

  1. 肺全体に中央値で12Gy(範囲、10.5~18Gy)の放射線を受けた後、中央値で9.7年間追跡された小児悪性固形腫瘍の生存者48人を対象にした研究では、以下が報告された:[ 8 ]
  2. 小児ホジキンリンパ腫の生存者で、現行の浸潤領域法を用いた肺症状の有病率は低いと報告されている。しかしながら、多くの生存者がかなりの非顕性の機能不全を呈している。[ 11 ]
  3. 転移性ウィルムス腫瘍に対して全肺放射線療法で治療された小児において、肺機能の変化が報告されている。[ 9 ][ 10 ]
  4. ブレオマイシンの単独投与は肺毒性を引き起こすことがあり、放射線療法と併用される場合は放射線に対する反応を強めることがある。ドキソルビシン、ダクチノマイシン、ブスルファンなどの化学療法薬は放射線様作用薬であり、基礎にある放射線障害を再活性化させうる。[ 9 ][ 10 ][ 12 ]

化学療法後の呼吸器合併症

小児悪性腫瘍の治療に一般的に使用されている肺毒性作用の可能性がある化学療法薬には、ブレオマイシン、ブスルファン、およびニトロソウレア(カルムスチンおよびロムスチン)がある。これらの薬剤は、それ自体で肺損傷を誘発するか、肺への放射線の障害作用を増強する。肺毒性化学療法および胸部放射線療法または胸部/胸壁手術などの集学的治療は、肺機能障害のリスクを高める。[ 2 ]

証拠(肺毒性化学療法を受けたコホートにおける転帰):

  1. ブレオマイシンに関連した持続性の拘束性疾患を伴う肺線維症の発現は用量依存性であり、通常は小児悪性腫瘍向け治療プロトコルで使用される用量よりも高い200 U/m2~400 U/m2を超える用量で発生する。[ 12 ][ 13 ][ 14 ]
  2. ホジキンリンパ腫に対して放射線療法とドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、およびダカルバジン(ABVD)を用いるより新しい小児レジメンでは、無症候性肺機能障害の発生率が有意に高く、治療後に時間経過とともに改善すると考えられることが示されている。[ 15 ][ 16 ][ 17 ]しかしながら、12サイクルのABVD後に21Gyの広範囲放射線照射を受けた小児の9%で、グレード3および4の肺毒性が報告された。[ 14 ]
  3. ABVDに関連した肺毒性作用は、ブレオマイシンにより誘発された線維症、またはドキソルビシン投与に関連した「radiation recall」による肺臓炎に起因する可能性がある。
  4. 肺静脈閉塞性疾患がまれに観察されており、ブレオマイシンによる化学療法に起因している。[ 18 ]

HSCTに伴う呼吸器合併症

HSCTを受けた患者は、以下に関係する肺毒性作用のリスクが高い:[ 19 ][ 20 ][ 21 ]

移植生存者のほとんどは、臨床的な障害を生じやすくはないが、拘束性肺疾患を発症することがあり、長期追跡コホートからの限定されたデータを基にすれば、HSCTからの経過時間とともに有病率が高くなることが報告されている。[ 22 ][ 23 ]拘束性および閉塞性疾患を含む晩期発症肺症候群と同様に、閉塞性疾患は少ない。器質化肺炎、びまん性肺胞損傷、および間質性肺炎を伴う、または伴わない閉塞性細気管支炎が、一般に移植後6~12ヵ月の間にこの症候群の構成要素として起こることがある。正常な胸部X線またはびまん性/斑状浸潤を伴って咳嗽、呼吸困難、または喘鳴が起こることがある;しかしながら、ほとんどの患者には症状がない。[ 20 ][ 24 ][ 25 ]

呼吸器晩期合併症(晩期障害)に関係する他の因子

慢性肺毒性作用の一因となる別の因子には、重複感染、基礎の肺症(例、喘息)、胸壁異常、呼吸毒性作用、慢性GVHD、および腫瘍自体または腫瘍に対する反応による慢性肺障害の影響がある。[ 6 ]小児期の肺葉切除術は、長期的な肺機能に重大な影響を与えないと考えられるが[ 26 ]、がん患児に対する肺手術の長期的な影響は十分には定義されていない。

肺合併症は、喫煙または他の物質の吸引により深刻化することもある。小児がん生存者の喫煙率は、一般集団より低い傾向がみられるが、この個別集団では、喫煙の開始を防止し、禁煙を促すことが依然として重要である。[ 27 ]

証拠(前喫煙者または現在喫煙者における肺機能不全):

  1. 肺毒性治療法を受けた小児がんの成人生存者433人の肺機能評価では、喫煙者における肺機能不全のリスクが非喫煙者よりも有意に高いことが明らかになった。[ 28 ]

表16では、呼吸器の晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表16.呼吸器晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 呼吸器への影響 健康スクリーニング/介入
DLCO = 一酸化炭素の肺拡散能力;GVHD = 移植片対宿主病。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
ブスルファン;カルムスチン(BCNU)/ロムスチン(CCNU);ブレオマイシン;肺へ影響する放射線;肺機能に影響する手術(肺葉切除術、転移巣切除術、楔状切除術) 不顕性肺機能不全;間質性肺炎;肺線維症;拘束性肺疾患;閉塞性肺疾患 既往:咳嗽、息切れ、運動時呼吸困難、喘鳴
肺検査
肺機能検査(DLCOおよび肺気量測定を含む)
胸部X線
喫煙回避/禁煙に関する相談
肺機能検査および/または胸部X線が異常な患者では、全身麻酔の前に反復評価を考慮すること
症候性の肺機能不全がある患者に対しては肺の診察
インフルエンザおよびI肺炎球菌の予防接種
何らかの慢性GVHDを伴う造血幹細胞移植 肺毒性(閉塞性細気管支炎、慢性気管支炎、気管支拡張症) 既往:咳嗽、息切れ、運動時呼吸困難、喘鳴
肺検査
肺機能検査(DLCOおよび肺気量測定を含む)
胸部X線
喫煙回避/禁煙に関する相談
肺機能検査および/または胸部X線が異常な患者では、全身麻酔の前に反復評価を考慮すること
症候性の肺機能不全がある患者に対しては肺の診察
インフルエンザおよびI肺炎球菌の予防接種

呼吸器晩期合併症(晩期障害)の危険因子、評価、健康カウンセリングを含む情報については、小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)を参照のこと。[ 29 ]

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特殊感覚の晩期合併症(晩期障害)

聴力

治療の晩期合併症(晩期障害)としての難聴は、白金化合物(シスプラチンおよびカルボプラチン)への曝露または頭蓋照射療法後、もしくはその両方の施行後に発生することがある。これらの治療上の曝露は、中枢神経系(CNS)固形腫瘍および非CNS固形腫瘍の治療で最もよく生じる。小児は、プラチナ製剤による耳毒性への感受性が成人より高い。[ 1 ][ 2 ]Childhood Cancer Survivor Study(CCSS)の報告(N = 2,061)では、生存者における聴覚障害の有病率が10%に対して、同胞で3%と推定された。聴覚障害は、CNS腫瘍(25%)、神経芽腫(23%)、肝腫瘍(21%)、胚細胞腫瘍(20%)、骨腫瘍(16%)、および軟部肉腫(16%)の生存者で特に多くみられた。[ 3 ]スイスCCSSからのデータは、最初に聴覚合併症(聴力障害、耳鳴、聴覚低下、難聴)がみられる相対的発生率が診断から5年までの期間で最も大きいことを示している;しかしながら、診断後5年以上でも、このような障害が生存者に発生するリスクは、依然として同胞より有意に高かった。[ 4 ]

難聴に関連した危険因子には以下のものがある:

難聴とプラチナ製剤をベースにした療法

プラチナ製剤関連の感音難聴は、急性毒性として発生し、一般に不可逆性かつ両側性である。最初に聴力低下が高頻度で現れ、累積曝露量増加に伴い音声周波数帯に進行する。聴力低下の有病率は、シリーズごとに大幅に異なっており、プラチナ製剤の治療法(例えば、プラチナ製剤の種類、用量、投与期間);宿主因子(例えば、年齢、遺伝的感受性、腎機能);耳毒性治療(頭蓋照射療法、アミノグリコシド系、ループ利尿薬)の追加実施;ならびに聴力低下の有病率および重症度の報告に用いられるグレード判定基準に基づいて決まる。[ 5 ][ 6 ]

難聴と頭蓋照射

頭蓋照射療法は、単独療法として使用した場合、耳毒性作用を引き起こす可能性があり、曝露後数ヵ月から数年で現れる緩徐な発症を示すことがある。放射線療法単独後の耳毒性の閾線量は、小児で35~45Gyの範囲である。[ 16 ]35Gyを下回る累積放射線量での高周波感音難聴はまれであり、45Gy未満の線量では重度になることはまれである。[ 17 ]例外は、テント上腫瘍で脳室腹腔シャントを有する患者で、30Gyを下回る線量でも中間周波数(1,000~2,000Hz)の難聴が現れることがある。[ 16 ][ 18 ]聴力低下のリスクを低減するため、蝸牛への平均線量は30~35Gyを超えてはならず、6週間を超えて照射できない。若い患者、ならびに脳腫瘍および/または水頭症の存在は、難聴になる感受性を高める可能性がある。

頭蓋照射療法後の感音難聴は経時的に進行しうる。原体放射線療法または強度変調放射線療法で治療され(シスプラチンを併用せず、既存の難聴が認められない)、中央値で9年間監視された小児脳腫瘍患者235人を対象にした研究では、感音難聴の有病率は患者の14%であり、放射線療法から発症までの期間中央値は3.6年であった。29人の患者における追跡評価により、聴覚感度における持続的な低下が確認された。頭蓋照射関連感音難聴に対する危険因子としては、放射線療法開始時に若年であること、蝸牛への高い放射線量、および脳脊髄液シャントが挙げられた。[ 19 ]

シスプラチンと同時使用した場合、放射線療法は、プラチナ製剤による化学療法に関連する難聴を大幅に悪化させる可能性がある。[ 16 ][ 20 ][ 21 ][ 22 ]CCSSからの報告によると、5年生存者は、同胞と比較して、聴力障害(相対リスク[RR]、2.3)、耳鳴(RR、1.7)、補助を必要とする難聴(RR、4.4)、および補聴器により補正されない片耳または両耳の難聴(RR、5.2)のリスクが高かった。側頭葉(30Gy超)および後頭蓋窩(50Gy超および30~49.9Gy)への放射線照射はこれらの有害な転帰と関連していた。プラチナ製剤への曝露は聴覚障害(RR、2.1)、耳鳴(RR、2.8)、補助手段が必要な難聴(RR、4.1)に関連していた。[ 4 ]

難聴と生活の質

重要な点として、悪性腫瘍の治療を受けた小児には、難聴が早期または晩期に発生するリスクがあり、学習、会話、学業、社会的交流、および全体的な生活の質に影響する可能性がある。

小児腫瘍学グループにより、リスクのある生存者の早期特定および救済サービスへの適時紹介を促進するため小児がんおよび青年がんの生存者における難聴の評価と管理のための推奨事項が発表されている。[ 26 ]

表17では、聴覚の晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表17.聴覚の晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 潜在的な聴覚の影響 健康スクリーニング/介入
FM = 周波数調節。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
プラチナ製剤(シスプラチン、カルボプラチン);耳に影響する放射線 耳毒性; 感音難聴;耳鳴;めまい;乾型耳垢症;伝音難聴 既往:難聴、耳鳴、めまい
耳鏡検査
聴力評価
難聴が進行性の患者では増幅
難聴の小児に対しては言語治療
難聴を悪化させたり、原因となったりする慢性感染、乾性耳垢、または解剖学的問題がある患者では耳鼻咽喉科医の診察
教育上の調節(例えば、優先的な教室座席、FM増幅システム、その他)

眼窩と視力

眼窩の合併症は、全身放射線照射(TBI)の後や網膜芽細胞腫に対する放射線療法後、または小児頭頸部肉腫およびCNS腫瘍でよくみられる。

網膜芽細胞腫

網膜芽細胞腫の生存者については、眼球除去または放射線療法の結果、眼窩容積が小さくなることがある。1歳未満の年齢はリスクを増大させうるが、このことは研究間で一貫していない。[ 27 ][ 28 ]温熱療法、凍結療法、および封入剤による放射線療法に加えて、良好な摘出インプラント、静注ケモリダクション、および動注化学療法により、網膜芽細胞腫の管理が進歩している。こうしたより現代的な治療法を受けた患者の視力に対する効果を評価するには、さらに長期の追跡が必要である。[ 27 ][ 29 ][ 30 ]過去に、黄斑および中心窩付近に位置する腫瘍は、失明に至る合併症のリスク増加と関連していたが、これらの腫瘍に対する中心窩レーザー焼灼による治療は、視力保持に有望なことが示されている。[ 31 ][ 32 ][ 33 ][ 34 ]

(網膜芽細胞腫の治療に関する詳しい情報については、網膜芽細胞腫の治療に関するPDQ要約を参照のこと。)

横紋筋肉腫

眼窩横紋筋肉腫の生存者は30~65Gyの放射線療法後、ドライアイ、白内障、眼窩形成不全、眼瞼下垂、網膜症、角結膜炎、視神経症、眼瞼上皮腫、および視力障害のリスクがある。より高線量(50Gy超)では、眼瞼上皮腫、角結膜炎、涙管萎縮、および重度のドライアイと関連している。網膜炎および視神経症はまた、50~65Gyの線量の結果としても起こることがあり、個々の分割線量が2Gyを超える場合にはより低い総線量でも生じる。[ 35 ]白内障は比較的低い線量の10~18Gyの後に報告されている。[ 36 ][ 37 ][ 38 ]

(小児横紋筋肉腫の治療に関する詳しい情報については、小児横紋筋肉腫の治療に関するPDQ要約を参照のこと。)

低悪性度視経路グリオーマおよび頭蓋咽頭腫

視経路グリオーマおよび頭蓋咽頭腫の生存者も視覚に関する合併症のリスクが高く、腫瘍が視神経の付近に存在していることが部分的な原因である。

1990年から2014年にかけて散発性視経路グリオーマと診断された小児患者59人を対象としたレトロスペクティブ・コホート研究(追跡期間中央値5.2年)で、長期的な視力障害の重大な負担が認められた。この研究結果では、3分の2を超える患者に長期の視力喪失の証拠がみられ、半数を超える患者の少なくとも片眼に重度の視力喪失があり、4分の1の患者に重度の両眼視力喪失があることが示された。不良な視覚の転帰で特定された危険因子は、視交叉後部病変、低年齢、および初診時の視神経蒼白であった。[ 39 ]

視経路グリオーマの患者21人に対する長期追跡(平均、9年)によると、治療前には患者の81%に視力低下、同じく81%に視神経蒼白がみられたほか、すべての患者において片眼または両眼に視覚誘発電位の低下を認めた。治療により4~5年の間、視力低下が抑制された。最終追跡時に、患者の33%に視力の安定または改善がみられた;しかし、平均では低下していた。追跡時の視力は初発時の腫瘍容積に関連があった。[ 40 ]

生後1年以内に診断された低悪性度グリオーマおよび低悪性度グリア神経細胞性腫瘍の小児51人を対象にした研究では、患者48人中27人(56%)で視力が低下しており、患者のうち13人(27%)が法定盲人であった。腫瘍の位置(視床下部または視経路)は視力の低下に有意に関連していた(P = 0.002)。[ 41 ]

頭蓋咽頭腫の診断を受けた患者25人を対象とした1件の研究では、平均追跡期間11年の時点で67%に視覚的な合併症がみられた。[ 42 ]頭蓋咽頭腫を有する小児30人を対象とした1件のレトロスペクティブ・レビューでは、患者19人に術前の失明が生じていた;また、患者21人に術後の視力低下がみられた。術前の失明は術後の失明を断定した。[ 43 ]

CCSSの研究者らにより、小児低悪性度グリオーマの成人生存者1,233人において視力障害が認知的および心理社会的転帰に及ぼす影響が評価された。ある程度の視力障害が患者の22.5%に認められ、患者の3.8%は両眼を失明していた。両眼を失明した生存者では、結婚していない、独立した生活ができない、および雇用されていない可能性が視力障害のない生存者と比較して高かった。しかしながら、両眼の失明は、自己報告による認知的転帰または感情的結果に影響しなかった。視力障害(一部の視力が残っている)は、心理学的結果または経済的結果と関連しなかった。[ 44 ]

治療に特異的な影響

小児がん生存者には、グルココルチコイドおよび眼の放射線曝露のいずれにも関連する眼の晩期合併症(晩期障害)のリスクが高い。

証拠(放射線曝露による眼への影響):

  1. CCSSの報告によると、診断から5年以上の生存者は、白内障(RR、10.8)、緑内障(RR、2.5)、法的盲(RR、2.6)、複視(RR、4.1)、およびドライアイ(RR、1.9)の発症リスクが同胞に比べて高かった。[ 45 ]
  2. 白内障の15年累積発生率は、細隙灯顕微鏡検査により系統的に評価した場合、小児急性リンパ芽球性白血病の生存者517人(診断から中央値で10.9年)において4.5%であった。CNSへの放射線療法は、白内障発症で特定された唯一の治療関連危険因子で、放射線照射を受けた生存者の11.1%にみられたのに対して、放射線照射を受けていない生存者では2.8%であった。[ 46 ]
  3. CCSSからの報告により、白内障発症と関係する放射線療法からの期間および放射線量に関する追加データが得られる。[ 47 ]

白内障およびドライアイ症候群のような眼の合併症は、小児期の幹細胞移植後によくみられる。

証拠(幹細胞移植による眼への影響):

  1. ブスルファンまたは他の化学療法による治療を受けた患者と比べて、単回照射または分割照射による治療を受けた患者では、白内障のリスクが高い。リスクは治療後10年で総線量および分割線量に応じて約10%から60%の幅があり、単回照射後とより高い線量または線量割合のTBI後に、潜伏期がより短く、より重度の白内障が認められている。[ 48 ][ 49 ][ 50 ][ 51 ]
  2. TBIを40Gy未満の線量で受けた患者は、重度の白内障を発症する可能性が10%未満である。[ 51 ]
  3. コルチコステロイドおよび移植片対宿主病は、リスクをさらに増加させる可能性がある。[ 48 ][ 52 ]
  4. Leucémie Enfants Adolescents(LEA)プログラムへの参加者271人(平均追跡期間、20.3年)において細隙灯顕微鏡検査により連続して評価した白内障の有病率は41.7%で、8.1%が外科的介入を要した。[ 53 ]このコホートにおいて、TBIで治療された参加者の白内障の累積発生率は5年経過時の30%から15年経過時の70.8%、20年経過時の78%へと経時的に増加した。白内障の発生にプラトーが認められないことから、TBIで治療されたほぼすべての患者が追跡期間の増加とともに白内障を発症すると示唆されている。対照的に、ブスルファンを用いて処置レジメンを受けた参加者における白内障の15年累積発生率は12.5%であった。多変量解析により、白内障リスクに対するTBIの潜在的な補因子としてステロイドの高い累積投与量が同定された。
  5. ドライアイ症候群は、患者が反復投与された高トラフ濃度のシクロスポリンに曝露された場合により多くみられることが示されている。[ 54 ]

表18では、眼の晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表18.眼の晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 眼/視力の影響 健康スクリーニング/介入
GVHD = 移植片対宿主病;131I = ヨウ素 131。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
ブスルファン; コルチコステロイド;眼に影響する放射線 白内障 既往:視力低下、光輪、複視
眼の検査:視力、眼底検査(年1回)
眼科受診
放射性ヨウ素(131I)を含め、眼に影響を与える放射線 眼毒性(眼窩形成不全、涙管萎縮、眼球乾燥症[乾性角結膜炎]、角膜炎、末梢血管拡張、網膜症、視交叉神経障害、眼球陥没、慢性的な眼の痛み、黄斑症、乳頭症、緑内障) 既往:視覚変化(視力低下、光輪、複視)、ドライアイ、持続性の眼の刺激、過剰な流涙、光過敏性、夜間視力低下、眼の痛み
眼の検査:視力、眼底検査(年1回)
眼科受診
何らかの慢性GVHDを伴う造血幹細胞移植 眼球乾燥症(乾性角結膜炎) 既往:ドライアイ(灼熱感、そう痒、異物感、炎症)
眼の検査:視力、眼底検査(年1回)
核出術 美観上の障害;人工装具の装着不具合;眼窩形成不全 眼の人工装具の評価
眼科

特殊感覚の晩期合併症(晩期障害)の危険因子、評価、健康カウンセリングを含む情報については小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)を参照のこと。

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泌尿器系の晩期合併症(晩期障害)

がん治療による泌尿器系の急性毒性はよく知られていない。長期生存者における泌尿生殖器の転帰については、ほとんど知られていない。[ 1 ]小児がん生存者の長期腎障害に関する証拠は、少ないサンプルサイズ、コホート選択および参加バイアス、横断的評価のほか、治療アプローチ、治療期間、および確認方法における不均一性により制限される。特に、糸球体機能障害の推定式による慢性腎機能障害の診断ミスを検討すべきである。[ 2 ]晩期における腎障害および/または高血圧の素因となるがん治療には以下のものがある:

腎機能障害のリスクおよび程度は、治療の種類および強度に依存し、研究結果の解釈は、検査法の違いにより複雑化している。

潜在的に腎毒性を有する方法で治療された生存者における腎臓の健康状態の晩期アウトカムおよび腎機能障害に対する危険因子について評価した大規模研究はほとんどない。

証拠(小児がん生存者における腎機能障害):

  1. 1,442人の小児がん生存者(到達年齢中央値、19.3歳;診断からの期間中央値、12.1年)を対象にした大規模横断研究で、オランダの研究者らは、イホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、大量シクロホスファミド(1コース当たり1g/m2以上)、または大量メトトレキサート(1コース当たり1g/m2以上)、腎臓領域への放射線療法、全身放射線照射(TBI)、または腎摘出術による治療を受けた生存者におけるアルブミン尿、低マグネシウム血症、低リン酸血症、および高血圧の存在を評価し、糸球体濾過率(GFR)を推定した。[ 3 ]

腎臓に影響を及ぼす治療関連因子

晩期腎臓損傷および高血圧の素因となるがん治療には以下のものがある:[ 4 ][ 5 ][ 6 ]

腎機能障害の素因となる遺伝因子

慢性腎不全を起こしたウィルムス腫瘍の小児生存者の多くが、腎疾患の素因となるWT1変異または欠失を伴う症候群であった。National Wilms Tumor Study GroupおよびU.S. Renal Data Systemのデータは、末期腎疾患の20年累積発生率を示しており、片側性ウィルムス腫瘍およびDenys-Drash症候群の小児では74%、WAGR(ウィルムス腫瘍、無虹彩症、泌尿生殖器異常、精神遅滞)症候群の小児では36%、泌尿生殖器奇形の男性患者では7%、これらの病態に該当しない患者では0.6%であった。[ 28 ]両側性ウィルムス腫瘍患者での末期腎疾患の発生率は、Denys-Drash症候群の患者で50%、WAGRの患者で90%、泌尿生殖器奇形の患者で25%、その他の患者で12%であった。[ 28 ][ 29 ]WAGRおよび泌尿生殖器奇形の患者での末期腎疾患は、発生時期が比較的遅い傾向にあり、しばしば青年期かそれ以降にみられる。[ 28 ]

治療関連の膀胱合併症

骨盤または中枢神経系の手術、シクロホスファミドまたはイホスファミドなどのアルキル化剤含有化学療法、骨盤への放射線療法、ならびに特定の脊髄および泌尿生殖器の外科処置は、以下のように膀胱晩期合併症(晩期障害)との関連性が認められている:[ 30 ]

腎臓移植

Childhood Cancer Survivor Studyの生存者13,318人における固形臓器移植の調査において、71人の生存者が腎臓移植を要する末期の腎疾患を有し、このうち50人が腎臓移植を受けた。がん診断から35年経過時の腎臓移植の累積実施率は0.39%であり、待機リストに登録されているか、腎臓移植を受けようとしている累積割合は0.54%であった。イホスファミドへの曝露およびTBIを受けていると、待機リストに登録しているか、または腎臓移植を受けようとしていることへのハザード比が最も高くなった。腎臓移植後の5年生存率は93.5%であったが、これは同じ年齢層の一般集団における生存率とほぼ同じである。[ 37 ]

表19では、腎や膀胱の晩期合併症(晩期障害)および関連する健康スクリーニングについて要約している。

表19.腎および膀胱の晩期合併症(晩期障害)a
素因となる治療 腎臓/泌尿生殖器の影響 健康スクリーニング
BUN = 血中尿素窒素;NSAID = 非ステロイド性抗炎症薬;RBC/HFP = 400倍強拡大(顕微鏡検査)による赤血球数。
a出典:小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)
シスプラチン/カルボプラチン;イホスファミド;カルシニューリン阻害薬 腎毒性(糸球体損傷、尿細管損傷[腎尿細管性アシドーシス]、ファンコニー症候群、低リン血症性くる病) 血圧
BUN、クレアチニン、Na、K、Cl、CO2、Ca、Mg、PO4の値
尿検査
電解質消耗が持続する患者では、電解質補充
高血圧、蛋白尿、進行性腎不全の患者では、腎臓科受診
メトトレキサート;腎臓/尿道に影響する放射線 腎毒性(腎不全、高血圧) 血圧
BUN、クレアチニン、Na、K、Cl、CO2、Ca、Mg、PO4の値
尿検査
高血圧、蛋白尿、進行性腎不全の患者では、腎臓科受診
腎摘出術 腎毒性(蛋白尿、過剰濾過、腎不全) 血圧
BUN、クレアチニン、Na、K、Cl、CO2、Ca、Mg、PO4の値
尿検査
コンタクトスポーツ、自転車の安全性(例、ハンドルによる傷害を避けること)、およびシートベルトの適正使用(すなわち、胴ではなく腰の周りに膝ベルトを装着)について相談
NSAIDの使用は注意して勧める
高血圧、蛋白尿、進行性腎不全の患者では、腎臓科受診
腎摘出術;骨盤の手術;膀胱切除術 水腫 精巣の検査
膀胱切除術 膀胱切除術関連合併症(慢性尿路感染、腎機能障害、膀胱尿管逆流、水腎症、結石保有、自然発生的新生膀胱穿孔、ビタミンB12/葉酸/カロチン欠乏[回腸-腸膀胱形成術の患者のみ]) 泌尿器学的評価
ビタミンB12の値
骨盤の手術;膀胱切除術 尿失禁;尿路の閉塞 既往:血尿、尿意切迫/頻尿、尿失禁/尿閉、排尿障害、夜尿症、異常尿流
適切な水分摂取、定期的な排尿、排尿機能不全または尿路感染の症状について医療を求めること、推奨された膀胱カテーテルのレジメンのコンプライアンスに関して相談
排尿機能障害または再発性の尿路感染の患者では、泌尿器科受診
シクロホスファミド/イホスファミド;膀胱/尿道に影響する放射線 膀胱毒性(出血性膀胱炎、膀胱線維症、排尿障害、膀胱尿管逆流現象、水腎症) 既往:血尿、尿意切迫/頻尿、尿失禁/尿閉、排尿障害、夜尿症、異常尿流
尿検査
顕微鏡的血尿(5個以上のRBC/HFPが2回以上認められることで定義)を示す患者では、尿培養、スポット尿中カルシウム/クレアチニン比、および腎臓および膀胱の超音波
培養陰性の顕微鏡的血尿で、かつ超音波検査異常および/またはカルシウム/クレアチニン比異常の患者では、腎臓科または泌尿器科受診
培養陰性の肉眼的血尿の患者では、泌尿器科受診

泌尿器系の晩期合併症(晩期障害)の危険因子、評価、および健康カウンセリングを含む情報については、小児腫瘍学グループのLong-Term Follow-Up Guidelines for Survivors of Childhood, Adolescent, and Young Adult Cancers(小児がん、青年がん、若年成人がんの生存者に対する長期追跡ガイドライン)を参照のこと。

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本要約の変更点(04/02/2020)

PDQがん情報要約は定期的に見直され、新情報が利用可能になり次第更新される。本セクションでは、上記の日付における本要約最新変更点を記述する。

心血管系の晩期合併症(晩期障害)

このセクションは包括的に見直され、広範囲にわたって改訂された。

内分泌系晩期合併症(晩期障害)

このセクションは包括的に見直され、広範囲にわたって改訂された。

本要約はPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが作成と内容の更新を行っており、編集に関してはNCIから独立している。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたはNIHの方針声明を示すものではない。PDQ要約の更新におけるPDQ編集委員会の役割および要約の方針に関する詳しい情報については、本PDQ要約についておよびPDQ® - NCI's Comprehensive Cancer Databaseを参照のこと。

本PDQ要約について

本要約の目的

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、小児がん治療の晩期合併症(晩期障害)について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

査読者および更新情報

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Pediatric Treatment Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

委員会のメンバーは毎月、最近発表された記事を見直し、記事に対して以下を行うべきか決定する:

要約の変更は、発表された記事の証拠の強さを委員会のメンバーが評価し、記事を本要約にどのように組み入れるべきかを決定するコンセンサス過程を経て行われる。

本要約の内容に関するコメントまたは質問は、NCIウェブサイトのEmail UsからCancer.govまで送信のこと。要約に関する質問またはコメントについて委員会のメンバー個人に連絡することを禁じる。委員会のメンバーは個別の問い合わせには対応しない。

証拠レベル

本要約で引用される文献の中には証拠レベルの指定が記載されているものがある。これらの指定は、特定の介入やアプローチの使用を支持する証拠の強さを読者が査定する際、助けとなるよう意図されている。PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardは、証拠レベルの指定を展開する際に公式順位分類を使用している。

本要約の使用許可

PDQは登録商標である。PDQ文書の内容は本文として自由に使用できるが、完全な形で記し定期的に更新しなければ、NCI PDQがん情報要約とすることはできない。しかし、著者は“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks succinctly:【本要約からの抜粋を含める】.”のような一文を記述してもよい。

本PDQ要約の好ましい引用は以下の通りである:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board.PDQ Late Effects of Treatment for Childhood Cancer.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/childhood-cancers/late-effects-hp-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389273]

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