ご利用について
このPDQがん情報要約では、乳がんのスクリーニングに関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
CONTENTS
- スクリーニングとは
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スクリーニングとは、症状が現れてくる前に乳がんなどの病気の徴候を発見しようとする試みのことです。スクリーニング検査の目的は、治療が可能で治癒の見込みがある早期のうちにがんを発見することです。ときにはスクリーニング検査で、非常に小さいまたは非常に成長の遅いがんが見つかることがあります。こうしたがんは、その人の生涯で死や病気につながる可能性が低いがんです。
ある種類のがんにかかりやすいのはどのような人々なのか、ということをより深く理解しようと科学者たちは挑み続けています。例えば、年齢や家族歴、生涯のうちで特定の対象に曝された経験などを調査します。こうして得られた情報は、どういった人ががんのスクリーニングを受けるべきか、どのスクリーニング検査を用いるべきか、そしてその検査をどのくらいの頻度で受けるべきかについて、医師が患者さんに助言をしていく際に役立てられています。
担当の医師からスクリーニング検査を勧められたとしても、必ずしもがんの存在を疑ってそうしているわけではないということを覚えておくことが重要です。スクリーニング検査はがんの症状が現れる前に実施されます。がんの強い家族歴や個人歴、もしくはその他のリスク因子を持つ女性は、遺伝子検査を受けるように提案されることもあります。
スクリーニング検査の結果が異常であれば、がんの存在を確認するために、さらなる検査が必要になる場合もあります。こうした検査はスクリーニング検査ではなく、診断検査と呼ばれます。
がんのスクリーニングに関する詳しい情報については、以下のPDQの要約をご覧ください:
- 乳がんについての一般的な情報
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乳がんは、乳房の組織の中に悪性(がん)細胞ができる疾患です。
乳房は葉と乳管から構成されています。乳房には葉と呼ばれる組織の集まりが左右それぞれで15~20個存在し、さらにそれぞれの葉は小葉と呼ばれる多数の小さな組織から構成されています。小葉の先には小さな腺房という構造が多数存在しており、そこで乳汁が作られています。これらの葉、小葉、腺房は乳管と呼ばれる細い管でつながっています。
乳房の中にはさらに血管とリンパ管が通っています。リンパ管にはリンパ液と呼ばれるほぼ無色の水のような液体が流れています。リンパ管はリンパ節の間でリンパ液を運びます。リンパ節はリンパ液のろ過を行う豆のような形をした小さな構造物で、感染や疾患に対する防御を担う白血球の貯蔵場所にもなっています。腋窩(わきの下)の乳房付近や鎖骨の上、胸部などには、このリンパ節が群れを成すように存在しています。
- 乳がんのスクリーニング
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各種のがんを見つけるために、症状が現れていない人を対象として検査を実施し選別を行います。
最小の害で最大の利益が得られる方法を発見するために、科学者たちによってスクリーニング検査の研究が進められています。また、がんスクリーニングの臨床試験を行う目的には、早期発見(症状が現れる前にがんを発見すること)によって寿命が延びるか、あるいは疾患により死亡する確率が下がるかどうかを明らかにすることも含まれています。一部の種類のがんでは、早期のうちに発見し治療することで、回復の見込みが高まる場合があります。
乳腺X線撮影(マンモグラフィ)は、最も一般的な乳がんのスクリーニング検査法です。
マンモグラフィとは乳房内部の画像のことです。乳腺X線撮影では、触診では発見できない小さな腫瘍を検出できることがあります。さらに、非浸潤性乳管がん(DCIS)の検出も可能です。DCISでは、乳管の内側を覆う細胞に異常がみられ、患者さんによっては浸潤がんへと進行することがあります。
マンモグラフィには以下の3種類があります:
DBTは2018年に米国食品医薬品局(FDA)の承認を受け、現在では4分の3の施設で使用されています。ある研究では、DBTの使用により、偽陽性の検査結果(実際にはがんが存在しないのに、がんがあるという結果が出ること)が減少し、乳がんによる死亡も少なくなる可能性が高いことが示されました。デジタルマンモグラフィとDBTを比較したデータを得るために、さらなる研究が行われています。
乳房組織の乳腺密度が高い女性では、乳腺X線撮影により乳房の腫瘍が発見されにくい傾向にあります。腫瘍と乳腺密度の高い組織は、いずれも乳腺X線写真に白く映し出されるので、組織密度が濃い乳房では腫瘍の発見が難しくなります。若い女性ほど、乳腺密度が高い傾向にあります。
多くの要因が、乳腺X線撮影で乳がんを検出(発見)できるかどうかに影響します:
スクリーニング乳腺X線撮影を受けた50~69歳の女性は、スクリーニング乳腺X線撮影を受けていない女性よりも、乳がんで死亡する確率が低くなります。
米国では乳がんにより死亡する女性が少なくなっていますが、この死亡リスクの低下はスクリーニングでのがんの早期発見によるものかどうか、また治療の向上によるものかどうかは不明です。
乳がんのリスクが高い女性のスクリーニングに磁気共鳴画像法(MRI)が使用されることがあります。
MRIは、磁気、電波、コンピュータを利用して、体内領域の精細な連続画像を作成する検査法です。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。MRIではX線が使用されないため、放射線に曝されることはありません。
MRIは乳がんのリスクが高い女性に対するスクリーニング検査法として使用されることがあります。女性のリスクが高くなる因子には以下のものがあります:
MRIでは乳腺X線撮影より頻繁に、乳房にがんではない腫瘤が見つかります。
乳腺密度が高い女性が追加のスクリーニング(MRIなど)を受けると、乳がんの検出率は高くなりますが、それが健康上のアウトカムの改善につながるかどうかについては証拠が限られています。
乳がんのスクリーニングを受けるべきかどうかや、どのスクリーニング検査が用いられるかは、いくつかの要因に左右されます。
BRCA1またはBRCA2遺伝子に特定の変異がみられる、または特定の遺伝性症候群を抱えているなど、乳がんのリスク因子を持つ女性は、若い時期からより多くのスクリーニングを受けることがあります。
胸部への放射線療法を受けたことのある女性(特に若年の女性)では、若いうちに定期的な乳がんのスクリーニングが開始されることがあります。ただし、こうした女性に対する乳腺X線撮影とMRIの有益性およびリスクは研究で明らかになっていません。
乳がんのスクリーニングは以下に当てはまる女性に対する有益性が証明されていません:
この他にもスクリーニング検査が臨床試験で研究されており、現在研究中のものもあります。
複数の研究により、以下の乳がんスクリーニング検査が乳がんを発見したり乳がんの女性の寿命を延ばしたりするために有用かどうかが検討されています。
乳房検査
臨床的乳房検査とは、医師やその他の医療専門家が行う乳房の診察のことです。乳房とわきの下の触診を入念に行って、しこりなどの異常がないかを調べます。臨床的乳房検査を受けることで、乳がんによって死亡する確率が低くなるかどうかは不明です。
乳房自己検査は、女性または男性が自身の乳房にしこりなどの変化が生じていないかを確かめる検査法です。ご自身で乳房にしこりなどの異常を感じた場合は、担当の医師にご相談ください。定期的な乳房自己検査を行うことで、乳がんによって死亡する確率が低くなるかどうかは不明です。
サーモグラフィ
サーモグラフィは、熱を感知する特殊なカメラを使用して、乳房を覆う皮膚の温度を記録する検査法です。腫瘍によって体温の変化が生じている場合は、その様子がサーモグラムに表示されます。
乳がんの検出に関するサーモグラフィの有効性やこの検査法がもたらす害について検証するランダム化臨床試験は、これまでに実施されていません。
組織採取
乳房組織採取とは、顕微鏡での検査のために乳房組織から細胞を採取することです。スクリーニング検査として乳房組織採取を行うことで、乳がんによる死亡リスクが低下するかどうかは不明です。
現在、乳がんのスクリーニング検査法が臨床試験で検証されています。
NCIが支援する臨床試験に関する情報は、NCIの臨床試験検索ウェブページで探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。他の組織によって支援されている臨床試験は、ClinicalTrials.govウェブサイトで探すことができます。
- 乳がんスクリーニングの害
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スクリーニング検査は害を伴うことがあります。
全ての乳がんが患者さんの人生に死や病をもたらすわけではなく、なかには発見や治療の必要がないがんもあります。
スクリーニング検査に関する判断は難しくなる場合があります。全てのスクリーニング検査が役に立つわけではなく、ほとんどには害があります。スクリーニング検査を受けようとする場合は、その前に検査について担当の医師とよく話し合っておくのがよいでしょう。検査がもたらす害を把握し、さらにがんによる死亡リスクを低減する効果が実証されているかどうかを知っておくことが重要です。
乳腺X線撮影には以下の害があります:
偽陽性の検査結果が出る可能性があります。
実際にはがんが存在していないにもかかわらず、スクリーニング検査の結果が異常となる場合もあります。偽陽性の検査結果(実際にはがんは存在しないのに存在すると判定された検査結果)が出ると、通常はその後も検査(生検など)が実施されるため、そうした検査のリスクも生じます。
乳房生検で異常な結果が出た場合は、セカンドオピニオンとして別の病理医の見解を求めることで、正確な乳がん診断の裏付けが得られる場合があります。
異常な検査結果の大半は、後にがんではないことが判明します。偽陽性の検査結果は、以下の人によくみられます:
初回のスクリーニング乳腺X線撮影では、それ以降のスクリーニング時よりも偽陽性の結果が出やすくなります。乳腺X線写真を1回撮影した女性が10人いれば、うち1人に偽陽性の結果が出ます。乳腺X線撮影を受ける回数が増えると、偽陽性の結果が出る確率は上がります。現在と過去の乳腺X線写真を比較することで、偽陽性の結果が生じるリスクは低下します。
検査を行う放射線科医の技量も偽陽性の発生に影響します。
偽陽性の検査結果は余分な検査につながり、不安を引き起こします。
乳腺X線写真に異常が見つかると、がんを診断するために追加で検査が実施されることがあります。そうした診断検査の間、検査を受ける側は不安になるでしょう。たとえ、検査結果が偽陽性でがんと診断されなくても、その結果が、数日~数年にわたって場所を問わずに不安を引き起こすことがあります。
いくつかの研究で、偽陽性の検査結果を受けて不安を感じた女性は、それ以降、定期的な乳がんスクリーニング検査を計画するようになる傾向が示されました。
偽陰性の検査結果は診断や治療を遅らせることがあります。
実際には乳がんが存在しているのにもかかわらず、スクリーニング検査の結果が正常と出る場合もあります。このような結果は、偽陰性の検査結果と呼ばれます。偽陰性の検査結果を受けた女性は、たとえ症状が現れていても医療機関の受診が遅れる場合があります。およそ5つに1つのがんが、乳腺X線撮影で見逃されます。
偽陰性結果が発生する確率は、次の女性で高くなります:
乳がんが発見されると、乳がんの治療が行われ副作用が発生することもある一方で、健康状態の改善や余命の延長につながらない場合があります。
乳腺X線撮影によるスクリーニングでのみ発見される乳がんのなかには、健康上の問題を引き起こさない、あるいは命を脅かす心配のないものも含まれています。こうしたがんの発見は過剰診断と呼ばれます。そのようながんが発見された場合に治療を行っても、深刻な副作用が発生する可能性があり、患者さんの長く健康な人生につながるとは限りません。
乳腺X線撮影では乳房が低線量の放射線に曝されます。
高線量の放射線に曝されること(曝露)は、乳がんのリスク因子の1つです。乳腺X線写真で受ける放射線はごく少量です。50歳以降に乳腺X線撮影を開始した女性の場合は、一生涯の乳腺X線撮影で浴びる放射線により害が生じるリスクはほとんどありません。乳房が大きな女性や乳房インプラントを使用している女性は、スクリーニングの乳腺X線撮影で通常よりわずかに高い線量の放射線を照射されることがあります。
乳腺X線撮影の実施中に痛みや不快感が生じることがあります。
乳腺X線撮影では、乳房を2枚の板に挟んで圧迫します。乳房を圧迫することで、よりはっきりした乳房のX線画像が得られます。女性によっては、この撮影の間に痛みや不快を感じる場合があります。痛みの強さは以下の要因に影響されることもあります:
ご自身に関する乳がんのリスクやスクリーニング検査の必要性については、担当の医師にご相談ください。
ご自身の乳がんのリスク、スクリーニング検査を受けることが適切かどうか、スクリーニング検査の害について担当医や他の医療提供者と話し合ってください。スクリーニング検査を受けるかどうかの決定に患者さんも参加し、ご自身が一番優先するものに基づいて決定を下すようにします。(詳しい情報については、PDQのがんのスクリーニングの概要に関する要約をご覧ください。)
- 本PDQ要約について
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PDQについて
PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。
PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。
本要約の目的
このPDQがん情報要約では、乳がんのスクリーニングに関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。
査読者および更新情報
PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。
患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Screening and Prevention Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。
臨床試験に関する情報
臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。
NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。
本要約の使用許可について
PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。
本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:
PDQ® Screening and Prevention Editorial Board.PDQ Breast Cancer Screening.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/types/breast/patient/breast-screening-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389160]
本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、3,000以上の科学関連の画像が収載されています。
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PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。
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