医療専門家向け 大腸がんの遺伝学(PDQ®)

    • 原文更新日:2021-07-07
    • 翻訳更新日:2021-08-02

ご利用について

医療専門家向けの本PDQがん情報要約では、大腸がんの遺伝学について、包括的な、専門家の査読を経た、そして証拠に基づいた情報を提供する。本要約は、がん患者を治療する臨床家に情報を与え支援するための情報資源として作成されている。これは医療における意思決定のための公式なガイドラインまたは推奨事項を提供しているわけではない。

本要約は編集作業において米国国立がん研究所(NCI)とは独立したPDQ Cancer Genetics Editorial Boardにより定期的に見直され、随時更新される。本要約は独自の文献レビューを反映しており、NCIまたは米国国立衛生研究所(NIH)の方針声明を示すものではない。

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要旨

本要旨は、大腸がん(CRC)の遺伝学に関するPDQ要約で扱われているテーマをレビューし、各テーマに関する証拠を記述した後述の詳細なセクションへのハイパーリンクを示すものである。

[注: 本要約で用いられている多くの医学および科学用語についての解説がNCI Dictionary of Genetics Termsに用意されている。リンクが張られた用語をクリックすれば、別のウインドウにその定義が表示される。]

[注: 本要約に記載されている多くの遺伝子および病態については、Online Mendelian Inheritance in Man(OMIM)カタログに掲載されている。詳しい情報については、OMIMを参照のこと。]

[注: 現在、遺伝学的多様性を記載するための用語体系を変化させるべく、遺伝学のコミュニティにおいて協調的な取り組みが進められている。その変化とは、研究対象の個人または集団と参照配列との間に存在する遺伝学的な差異、特に生殖細胞系に存在する差異を記述する際に、従来の「mutation(突然変異ないし変異)」ではなく、「variant(多様体ないしバリアント)」という用語を使用するというものである。多様体はさらに、良性(無害)(benign [harmless])、おそらく良性(likely benign)、意義不明(of uncertain significance)、おそらく病原性(likely pathogenic)、病原性(疾患を引き起こす)(pathogenic [disease causing])のいずれかに分類することができる。本要約では、全体を通じて、疾患を引き起こす突然変異に対して病原性多様体(pathogenic variant)という用語を使用する。多様体の分類に関する詳しい情報については、がん遺伝学の概要に関する要約を参照のこと。]

大腸がん(CRC)は男女ともに3番目に診断頻度の高いがんである。

米国で2021年に推定される大腸がんの新規症例数および死亡数:[ 1 ]

大腸がん患者の約75%は散発性疾患で、遺伝によるものであるという明白な証拠がない。残る10~30%の患者には大腸がんの家族歴があり、遺伝的な関与、家系員内で共通の曝露もしくは共有の危険因子、またはこれらが合わさっていることが示唆される。[ 2 ]結腸がんが好発する一部の家系では、遺伝性がんリスクの原因として、高浸透度遺伝子における病原性多様体がいくつか特定されている;これらが大腸がん症例全体に占める割合はわずか5~6%と推定される。[ 3 ][ 4 ]

さらに、低浸透度の遺伝子における病原性多様体も家族性結腸がんリスクに関与している可能性がある。そのような例では、遺伝子-遺伝子および遺伝子-環境の相互作用が大腸がんの発生に関与している可能性がある。

(散発性大腸がんに関する詳しい情報については、大腸がんのスクリーニング大腸がんの予防結腸がんの治療;および直腸がんの治療に関するPDQ要約を参照のこと。)

大腸がん(CRC)の前駆体としての大腸ポリープ

大腸腫瘍は良性増殖から浸潤がんまでの広範囲に及ぶ新生物であり、主に上皮由来である(すなわち、腺腫ないし腺がん)。

いずれかのポリープからがんへの転換は、腺腫-がん連鎖を経由する。従来、非腫瘍性と考えられてきたポリープには、過形成性ポリープ、若年性ポリープ、過誤腫性ポリープ、炎症性ポリープ、およびリンパ性ポリープがある。しかしながら、特定の状況で、過誤腫性ポリープおよび若年性ポリープは、がんに進行することがある。

ただし、若年性ポリポーシス症候群、ポイツ・ジェガース症候群患者における結腸がんリスクがかなり高いことが研究から示唆されるものの、これらの症候群と関連する非腺腫性ポリープは歴史的に非腫瘍性と考えられてきた。[ 5 ][ 6 ][ 7 ]

結腸腺腫の個人歴があると結腸がんの発生リスクが高くなることが疫学研究により示されている。[ 8 ]

このような観察について、2つの相補的な解釈は以下のようなものである:

  1. 腺腫は、結腸が先天的または後天的に腫瘍を形成しやすいという傾向を反映している可能性がある。
  2. 腺腫は、結腸がんの原発性前駆病変である。

95%を超える大腸がんはがん腫であり、そのうちの約95%が腺がんである。腺腫性ポリープは良性腫瘍であるが、悪性転換する可能性があることは十分に認識されている。これらは悪性度が低い順に、管状腺腫、管状絨毛腺腫、絨毛腺腫の3つの組織型に分類されている。腺がんは腺腫から発生すると一般的に考えられており[ 9 ][ 10 ][ 11 ][ 12 ][ 13 ]、それは以下の重要な観察に基づいている:

  1. 大腸腫瘍内には良性と悪性の組織が認められる。[ 14 ]
  2. 腺腫を有する患者を20年間追跡すると、腺腫部位にがんが発生するリスクは25%で、一般集団で予想される発生率よりはるかに高い。[ 15 ]

腺腫における以下の3つの特徴は、がんへ移行する可能性に強く相関している:[ 14 ]

  1. サイズが大きい。
  2. 病理学的に絨毛性。
  3. 腺腫内の異形成度。

さらに、腺腫性ポリープの切除は大腸がん発生率の低下と関連している。[ 16 ][ 17 ]腺腫のほとんどはポリープ様のものであるが、平坦および陥凹病変の割合は従来の認識より多い可能性がある。大きな病変、平坦な病変、および陥凹病変は、高度の異形成を示す可能性が高いと考えられるが、まだ明確に証明されたものではない。[ 18 ][ 19 ]このような病変を同定し、生検を施行して除去するには、特殊な技術が必要であろう。[ 20 ]

大腸がんの危険因子としての家族歴

大腸がんの家族歴に関する最も初期の研究の一部はユタ州の家族に関するもので、その報告によると、大腸がんにより死亡した患者の第一度近親者(FDR)における大腸がんによる死亡率(3.9%)は、性別および年齢を一致させた対照群(1.2%)より多かった。[ 21 ]以来、この差は多数の研究で再現されており、罹患者のFDRは通常の2~3倍の大腸がんリスクを有することが一貫して認められている。研究デザイン(ケースコントロール、コホート)、抽出枠、サンプルサイズ、データの検証方法、分析方法、研究の実施国はさまざまであるが、リスクの大きさは一貫している。[ 22 ][ 23 ][ 24 ][ 25 ][ 26 ][ 27 ]

家族性大腸がんリスクの系統的レビューおよびメタアナリシスが報告されている。[ 28 ]分析に含まれた24件の研究のうち、1件を除くすべてで、罹患したFDRが1人いる場合、大腸がんリスクが増加することが報告された。このプール研究における大腸がんの相対リスク(RR)は、罹患したFDRが1人いる場合、2.25(95%信頼区間[CI]、2.00-2.53)であった。11件の研究中、8件では、発端者のがんが結腸に発生した場合の方が直腸に発生した場合よりもこのリスクがわずかに高かった。プール解析により、結腸がんおよび直腸がん患者の近親者におけるRRはそれぞれ、2.42(95%CI、2.20-2.65)および1.89(95%CI、1.62-2.21)であったことが明らかにされた。この分析では、腫瘍の部位(右側 vs 左側)に基づく結腸がんのRRの差は示されなかった。

罹患した家系員の数およびがん診断時の年齢が大腸がんリスクと相関した。大腸がんのFDRが2人以上いる場合について報告した研究のRRは3.76(95%CI、2.56-5.51)であった。最も高いRRが観察されたのは、発端者が45歳未満で診断された場合(RR、3.87;95%CI、2.40-6.22)であり、45~59歳で診断された発端者の家系員(RR、2.25;95%CI、1.85-2.72)および60歳以上で診断された発端者の家系員(RR、1.82;95%CI、1.47-2.25)と比較された。このメタアナリシスにおいて、FDRにおける腺腫と関連する大腸がんの家系的リスクが分析された。プール解析により、大腸がんのRRは、腺腫を有するFDRが1人いる場合、1.99(95%CI、1.55-2.55)であることが示された。[ 28 ]この知見は既に確認されている。[ 29 ]他の研究により、腺腫の診断時年齢は大腸がんリスクに影響し、腺腫が若い年齢で診断されるほどRRが高くなることが報告されている。[ 30 ][ 31 ]いずれのメタアナリシスでも同様に、分析結果に影響を与える可能性がある潜在的なバイアスがあり、その中には、対象に含めた研究の確認が不完全で非ランダムであること;公表バイアス;ならびにデザイン、対象集団、および対照選択に関する研究間の不均一性といったバイアスがある。この研究は、家族性大腸がんリスク、大腸がんおよび腺腫の両方の診断時年齢、罹患した家系員の多重度の間に重要な関連があることを強く支持している。

表1.大腸がん(CRC)発生で推定される相対および絶対リスク
家族歴 大腸がんの相対リスク 79歳までの大腸がんの絶対リスク(%)
CI = 信頼区間;FDR = 第1度近親者。
aSurveillance, Epidemiology, and End Resultsデータベースからのデータ。
b罹患近親者がいる人の大腸がんの絶対リスクは、大腸がんの相対リスク[ 28 ]および79歳までの大腸がんの絶対リスクaを用いて計算された。
家族歴なし 1 4a
大腸がんのFDRが1人いる 2.3(95%CI、2.0-2.5) 9b
大腸がんのFDRが2人以上いる 4.3(95%CI、3.0-6.1) 16b
45歳までに大腸がんと診断されたFDRが1人いる 3.9(95%CI、2.4-6.2) 15b
大腸腺腫のFDRが1人いる 2.0(95%CI、1.6-2.6) 8b

家族歴に大腸がん患者の近親者が2人以上含まれる場合は、遺伝症候群の可能性はかなり高くなる。この評価の第一段階は、家族歴を詳細に見直し、罹患している近親者の数、相互の血縁関係、大腸がんと診断された年齢、多発性原発性大腸がんの存在、および遺伝性大腸がん症候群と密接な関わりがあるその他のがん(例、子宮内膜がん)の存在について明らかにすることである。(詳しい情報については、本要約の主要遺伝子による症候群のセクションを参照のこと。)今日では、大腸がんの発生確率を推定するために、コンピュータモデルが利用できる。[ 32 ]こうしたモデルは、がん発生のリスクが高い個人だけでなく、平均リスクをもつ個人に対しても、遺伝カウンセリングを提供する際に有用となりうる。さらに、検証済みのモデルの少なくとも3つについては、ミスマッチ修復(MMR)遺伝子における病原性多様体を保有する確率の予測に用いることも可能である。[ 33 ][ 34 ][ 35 ]

図1では、さまざまな家系リスクの設定で生じる大腸がん症例の割合を示している。[ 36 ]

さまざまな家系リスクの設定で生じる結腸がん症例の割合を示す円グラフ。この設定で診断される結腸がん症例の大多数は散発性である。残りのがん症例は、次の通りである:家族性リスクがある症例(10~30%);リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん)(2~3%);家族性大腸腺腫症(1%未満);および過誤腫性ポリポーシス症候群(0.1%未満)。

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図1.さまざまな家族リスクの設定で生じる結腸がん症例の割合。Elsevierから許諾を得て転載:Gastroenterology, Vol. 119, No. 3, Randall W. Burt, Colon Cancer Screening, Pages 837-853, Copyright (2000).

大腸がん素因の遺伝

大腸がんのリスクに関連する数種類の遺伝子が同定されている;これらの遺伝子は本要約の結腸がん遺伝子のセクションにおいて詳細に記載されている。大腸がん素因をもたらすことが知られている病原性多様体は、そのほぼすべてが常染色体優性の形式で受け継がれる。[ 37 ]常染色体劣性遺伝の1例として、MUTYH関連ポリポーシス(MAP)が特定されている。(詳しい情報については、本要約のMUTYH関連ポリポーシス[MAP]のセクションを参照のこと。)このため、ある家系においてがん素因の常染色体優性遺伝が示唆されることは、その家系員での発がんリスクが高く、がん素因をもたらす病原性多様体が存在するという可能性を示す重要な指標である。そうしたものとしては、以下のものがある:

  1. 常染色体優性疾患におけるがん素因の垂直遺伝。(垂直遺伝とは、連続した複数世代内に遺伝的素因が存在する場合をいう。)
  2. 男女の小児ともに、遺伝するリスクは50%である。両親のいずれかが常染色体優性遺伝的素因を有する場合、子供それぞれにその素因が遺伝する可能性は50%である。そのリスクは男児も女児も同等である。
  3. 他に以下の臨床的特徴からも遺伝性大腸がん症候群の存在が示唆される:

遺伝性大腸がんで特に多い原因の2つは、APC遺伝子の生殖細胞病原性多様体によるFAP(AFAPを含む)[ 39 ][ 40 ][ 41 ][ 42 ][ 43 ][ 44 ][ 45 ][ 46 ]、およびDNA MMR遺伝子の生殖細胞病原性多様体により発生するリンチ症候群(以前に遺伝性非ポリポーシス大腸がん[HNPCC]と呼ばれていた)[ 47 ][ 48 ][ 49 ][ 50 ]である。(図2はリンチ症候群の古典的な家系を示しており、上述の遺伝性大腸がんの指標のいくつかが強調されている。)その他多くの家系に大腸がんおよび/または大腸腺腫の集積がみられるが、確認できる遺伝性症候群との間に明らかな関連はみられず、これらはひとまとめにして家族性大腸がんとして知られている。[ 37 ]

母系および父系を通して発生する伝播や結腸がんと子宮内膜がんがともに存在することなど、3世代にわたってリンチ症候群を有する家系の典型的な特徴の一部を示す家系図。

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図2.リンチ症候群家系図。この家系図は、結腸がんまたは子宮内膜がんを一部の個人では若い年齢で、また不完全な浸透性で発症した罹患家系員など、リンチ症候群を有する家系の典型的な特徴の一部を示す。リンチ症候群家系は、これらの特徴の一部またはすべてを示す可能性がある。リンチ症候群家系には、この他に消化管がん、婦人科がん、泌尿生殖器がん、または他の結腸外のがんの個人が存在する場合もある。図に示しているように母系または父系を通して、常染色体優性症候群としてリンチ症候群が伝播する可能性がある。がんリスクが100%ではないため、リンチ症候群の個人ががんを発症するとは限らず、例えば、この家系図で結腸がんの女性の母親は、37歳で診断された(不完全な浸透性と呼ぶ)。

大腸がんの遺伝的リスクが高い個人の識別

American College of Medical GeneticsおよびNational Society of Genetic Counselorsにより、がん遺伝カウンセリングサービスへの紹介が適切な患者を識別するのに役立つガイドラインが策定されている。[ 51 ]

このような個人を同定した場合は、その患者の状況に合わせた選択肢を考慮する。(それぞれの症候群に対する具体的介入に関する情報については、本要約の主要遺伝子による症候群のセクションを参照のこと。)

現時点で、一般集団のスクリーニング手段として、大腸がんの遺伝的感受性を同定するために病原性多様体の検査を使用することは推奨されていない。大腸がん関連遺伝子における病原性多様体がまれで、現行の検査戦略の感度が限られていることから、一般集団検査では誤解を招く恐れがあり、費用効果的ではない。

FAPおよびリンチ症候群のサーベイランスに対して、さまざまな医療専門施設および学会を代表するいくつかの組織から、かなり詳細な推奨が提供されている。そうした組織としては、以下のものがある:

一般的に、これらの記述またはガイドラインの中には推奨事項に対する証拠の根拠が含まれている。多くの場合、これらのガイドラインには専門家の意見が反映されているが、それらの意見がランダム化を用いた前向きの試験を根拠としていることはめったにない。

早期発症型大腸がん

診断時年齢に関する大腸がんの疫学は、50歳前に診断される患者の増加とともに変化しており、多くの場合はポリポーシスもなく遺伝性がん症候群を示唆する大腸がんの家族歴もない状態で診断されている。[ 57 ](一般集団における大腸がん発生率傾向に関する詳しい情報については、大腸がんの予防のPDQ要約を参照のこと。)結腸がん、子宮内膜がん、乳がん、卵巣がん、および/または膵がんのFDRが少なくとも1人いるなどの家族歴がある早期発症型大腸がん患者450人(診断時の平均年齢が42.5歳)を対象に浸透度の高い病原性多様体の保有率を検討したある研究では、75の生殖細胞病原性またはその可能性が高い病原性多様体が72人(16%)で同定された。[ 58 ]同定された多様体の範囲には、従来大腸がんに関係ないとされてきた数種の遺伝子(例えば、BRCA1/BRCA2ATMCHEK2PALB2、およびCDKN2A)などのリンチ症候群および非リンチ症候群関連遺伝子が含まれていた。この著者らは、同定された遺伝性がん症候群の頻度が高く、その種類が多いことを考慮すると、この集団における多重遺伝子(パネル)検査が正当化される可能性があると提言している。

リンチ症候群を示唆する追加の家族歴または個人歴がない場合、36歳前に大腸がんと診断された散発症例がMMR遺伝子病原性多様体に関係していることはまれである。ある研究で、このような個人の6.5%でMMR病原性多様体が発見されたが[ 59 ]、大腸がんのFDRが1人しかいない50歳未満の大腸がん患者を対象とした別の研究では、21%の腫瘍にマイクロサテライト不安定性(MSI)Iの異常がみられ、PMS2およびMSH6遺伝子欠損が過度に多くみられた。[ 60 ]そのため、ポリポーシスが認められない超早発型大腸がんの散発症例では、生殖細胞病原性多様体の解析に直接進むより、MSI/免疫組織化学検査についての腫瘍スクリーニングを実施すべきである。

一般的な大腸がん感受性多様体が認められない個人における大腸がんの早期発症において、多遺伝子リスクスコア(PRS)の使用が研究されており(NCT02863107)、ある大規模な解析からのデータによると[ 61 ]、FDRに大腸がんの家族歴がなく、PRSがなければ現行の診療では大腸内視鏡検査によるスクリーニングの早期開始の対象とならない若年者(年齢50歳未満)における大腸がんリスクの評価において、95-gene PRSの予測能が特に強力である可能性があることが示されている。

大腸がんリスクのある家族歴を同定する上での難しさ

臨床の場で家族歴を用いて個人のリスクを評価する際、またがん研究に適した家系を同定する際には、家族歴データの正確性と完全性を考慮せねばならない。報告された家族歴が間違っている場合や、がんに罹患した近親者に気付いていない場合がある。[ 62 ]大腸内視鏡検査の使用増加により、家族歴で大腸がんが減少し、前がん状態の結腸ポリープが増加している可能性がある。個人がポリープの家族歴(すなわち、血縁者におけるポリープの種類およびポリープの数)について知る可能性は、がんの家族歴について知るよりもはるかに低い。さらに、小家族の場合や若年死が生じた場合には家族歴から得られる情報量に限りがある。また、不完全な浸透度のため、大腸がんの遺伝的素因を有しているにもかかわらず、がんを発症していない人もおり、家系の中で一部の世代が飛び越えているような印象を与える。

患者報告による結腸がんの家族歴の正確さは良好であることが明らかになっているが、最適とはいえない。患者報告については、可能であれば必ず診療記録を入手して検証すべきであり、特に生殖器のがんでは、リンチ症候群のリスクを特定する際に重要となり、一部の患者による報告が信頼性に劣る場合がある。(詳しい情報については、がんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングに関するPDQ要約の家族歴の正確度のセクションを参照のこと。)

新規に大腸がんの診断を受け、がんの遺伝学的症候群を有する疑いがあるまたはない患者の評価にはいくつかのアプローチが利用できる。医師が家族歴および身体診察に基づいて潜在的な遺伝的傾向を疑うことがあるが、このような疑いを確認するために遺伝子検査が利用可能である。American College of Medical Genetics and Genomicsは、結腸がん感受性症候群が疑われる患者を評価するためのガイドラインを公表している。[ 51 ]このガイドラインは、臨床的特徴により遺伝相談に紹介する必要のある人を特定することを目的としている。複数のポリープ(20個超)がある個人では、組織型により、特異的な遺伝子志向性検査が有用な診断ツールとなりうる。同様に、患者の臨床像がリンチ症候群を疑わせるものである場合、この症候群を標的とした生殖細胞遺伝子検査を行うことができる。しかしながら、臨床像がそれほど明確でない場合、診断はより困難となる。現在のところ、リンチ症候群の腫瘍スクリーニングが最も一般的に受け入れられているアプローチである。しかしながら、腫瘍における体細胞変異を特徴付けるパネルが多様な臨床的意思決定のために使用されることが多くなってきている。

多くの症例で、事前のリスク評価検査(がん発症年齢および家族における腫瘍の範囲などの多様な因子に基づくリスクをモデル化したもの)が適切な代替法となることがある。このようなリスクモデルの適用から、多重遺伝子(パネル)検査の使用が予想される;ただし、その正確な役割は今後確定させる必要がある。

結腸がん発生に関連する分子的事象

大腸がんの分子的発生機序に関する初期の知識の大半は、まれな遺伝性大腸がん症候群から得られたもので、分子的にも臨床的にも大腸がんの不均一性が明らかになった。ほとんどの大腸がんが腺腫から発生することはよく知られている。正常上皮組織から腺腫、がん腫へ移行するには後天的な分子的事象が関係している。[ 63 ][ 64 ][ 65 ]現在、大腸がんは、類似した分子遺伝学的特徴に基づき次の3つのカテゴリーに分類できることから、腫瘍発生の分岐経路が示唆される:染色体不安定性(CIN)、MSI、およびCpG island methylator phenotype(CIMP)。大腸腫瘍発生の分子遺伝学的経路の理解はまだ発展途上にあり、先行する知識レベルとの関連で、それぞれ新たなレベルの理解が得られている。それに加え、これらの経路は、大腸ポリープおよびがんの重要な臨床的および組織学的不均一性から浮上してきた。したがって、以下の導入部は、大腸腫瘍発生に関する現在の我々の知識の進展を年代順に捉えている。

染色体不安定性(CIN)経路

大腸がんの大多数がCIN経路を介して発生する。CINがんにおける主要な変化には、染色体数の広範囲に及ぶ変化(異数性)、5q、18q、および17pなどの染色体の一部の分子レベルで頻繁に検出できる欠損(ヘテロ接合性の消失);さらにKRASがん遺伝子の病原性多様体などが挙げられる。これらの染色体欠失に関与する重要な遺伝子には、APC(5q)、DCC/MADH2/MADH4(18q)、およびTP53(17p)がある。[ 64 ][ 66 ]これらの染色体欠失は、分子レベルおよび染色体レベルでの遺伝的不安定性を示している。[ 65 ]大腸腫瘍進行経路の中で最も早期の最も一般的な事象は、APCの欠失または病原性多様体不活性化である。APC遺伝子の病原性多様体不活性化は、罹患者がAPC生殖細胞変化を保有し、その機能喪失に至り、大腸ポリープおよびがんの発生率を劇的に増加させる遺伝性大腸がん症候群の1つであるFAPにおける大腸がんに重要であることが最初に示された。例えば、塩基除去修復、ヌクレオチド除去修復、二本鎖修復、およびMMRなどのDNA損傷修復遺伝子の後天的または先天的病原性多様体は、大腸上皮細胞が病原性多様体を生じやすくなることにも関与している。

マイクロサテライト不安定性(MSI)経路

その後間もなく、大腸がんのサブセット(10~15%)で、染色体不安定性の証拠がみられないが、リンチ症候群患者の腫瘍の特徴[ 69 ]であるマイクロサテライト反復配列の変化がみられること[ 67 ][ 68 ]が特定された。その後、MLH1プロモーターの高メチル化がMSIを有する散発性大腸がんに関与していることが明らかになった。リンチ症候群患者でDNA MMR遺伝子の生殖細胞多様体が発見され、その患者の大腸がんには高頻度でMSIが認められた。そのため、マイクロサテライト不安定性経路(MSI、ときにMINと呼ばれる)が提案された。

MSIがんの主要な特徴は、大半が損傷のない2倍体の染色体をもつ腫瘍であること、およびDNA MMR系に欠陥がある結果として、重要かつしばしばユニークながん関連遺伝子に病原性多様体がより発生しやすいことである。このようなタイプのがんは、分子レベルでDNAマイクロサテライトとして知られるゲノム全体に正常に存在するDNAの反復単位に生じる異常として検出可能である。

腺腫からがんへ進行する速度は、マイクロサテライト不安定性腫瘍の方がマイクロサテライト安定性腫瘍よりも速いと考えられている。[ 70 ]この根拠は、最近の大腸内視鏡検査で正常であった患者に中間期がんが繰り返し報告されていることである。このさらなる裏付けは、鋸歯状経路(以下を参照)でみられ、この経路では中間期がんの高い発生率も観察されている。[ 71 ][ 72 ]MSI、腫瘍内Tリンパ球浸潤/クローン病様反応などが確認された腫瘍で、粘液産生が増加するなどの特徴的な組織学的変化がみられることから、この経路の大腸腫瘍が区別される。

遺伝性大腸がん症候群の研究から得られた知見から、生殖細胞系に異常がみられない患者において腫瘍のイニシエーションおよび腫瘍進行を仲介する分子的事象に関する重要な糸口が得られている。大腸腫瘍進行経路(MSIおよびCINともに)における最も初期の事象の中には、APC遺伝子産物の機能喪失がある。

CpG island methylator phenotype(CIMP)および鋸歯状ポリポーシス経路

1980年代から、現在では鋸歯状ポリポーシス症候群(SPS)と呼ばれる過形成性ポリポーシス症候群(HPS)の患者における大腸がんリスク増加を報告する研究が現れ始めた。[ 6 ][ 7 ][ 73 ][ 74 ][ 75 ][ 76 ][ 77 ][ 78 ]少数のSPSのみが家族性とみられるが、このような家系に共通する生殖細胞多様体はこれまで特定されていない。SPS患者と対照群に認められる過形成性ポリープ(HP)の比較により、SPSのポリープは組織学的に異なっており、以前に報告されたHPおよび腺腫性ポリープ(AP)の特徴を有するポリープである鋸歯状腺腫に類似していることが明らかになった。[ 79 ]この結果、これらの無茎性鋸歯状腺腫(SSA)は右結腸に発生する傾向がみられ、そこで高頻度で大きな無茎性となり、腺窩基底部の増殖、拡張、および鋸歯状の増加、内分泌細胞の減少、ならびに異形成の喪失を示すという観察につながった。[ 80 ]

さらなる鋸歯状ポリープの組織学的特徴から次の亜型が明らかになった:古典的鋸歯状腺腫(TSA)、混合型鋸歯状ポリープ(MP)、およびつい最近の無茎性鋸歯状腺腫/無茎性鋸歯状ポリープ(SSA/SSP)。[ 81 ]TSAは、突出した形態、異所性腺窩形成(骨形成タンパク質シグナリング欠陥を示す)、ならびに絨毛状および異形成の組織病理像を特徴とする。[ 80 ][ 82 ]TSAは、単に異形成を示すSSAではなく、SSAがTSAの前駆体であるという証拠はない。MPは、HP、SSA、およびTSAの特徴が重複したものである。

大腸内視鏡検査によるスクリーニング研究で、大きな鋸歯状ポリープは進行した大腸腫瘍の発生と強くかつ独立して関係していたが、左側のHPはそうではなかった。SSAという用語は、これらに腺腫の従来の特質である核異型が特徴的にみられないが、むしろ他の構築上の特徴のために腺腫と呼ばれていることから、臨床医に関心がもたれている。SSAの分類は、その分子的特徴ががんリスク増加を意味するという知識によって裏付けられる。[ 79 ][ 83 ][ 84 ]

リンチ症候群患者におけるAPがMSIを示すことがあるが、散発性腺腫ではまれである。しかしながら、異形成を伴う鋸歯状ポリープは、MLH1プロモーターの高メチル化を伴うMSIを示す。大きな(1cmを超える)鋸歯状ポリープには、従来の過形成性ポリープより大きながんリスクがあり、がんになった場合は特徴的にMSIを示す。[ 82 ][ 85 ][ 86 ][ 87 ]悪性病巣を伴う鋸歯状ポリープ切除例のレビューでは、すべてのポリープが右結腸に由来し、SSAであった。[ 85 ]悪性病巣はMSIを示し、MLH1免疫活性の喪失が明らかになったことから、SSAと散発性MSI結腸がんとの関係が示唆される。

散発性大腸がんにみられるMSIは、MLH1プロモーターの高メチル化により、その発現が抑制されるためである。他の腫瘍抑制遺伝子のプロモーター領域は、メチル化により「サイレンス化」されていることから、大腸がんのがんゲノム研究が開始された。これらの研究から、大腸がんの約50%で評価遺伝子にメチル化の一定したパターンが示された。[ 88 ]非選択大腸がん患者の数がより多い研究では、MINT1MINT2MINT31CDKN2Ap16)、およびMLH1におけるCpGアイランドの2つ以上の高メチル化として定義されるCIMPが少数の大腸がん(20~30%)にみられることが示された。[ 89 ][ 90 ]CIMPという用語は、これらの臨床的特徴を共有するがんを分類するために作り出された。CIMP陽性とCIMP陰性の大腸がんを区別する初期の試みは成功しなかった。[ 91 ]しかしながら、その後の研究では、大腸がんで重度にメチル化された遺伝子のバイアスのない階層的クラスター分析および集団ベースの研究デザインを用いて、CIMP経路を裏付けるユニークな臨床的および分子的特徴の特定に成功した。[ 88 ][ 92 ]

高CIMPの大腸がんは、MSIを示す可能性(82.1%;P < 0.0001)がマイクロサテライト安定性大腸がん(24.4%;P < 0.0001)よりはるかに高かった。[ 88 ]ある研究で、マイクロサテライト安定性で高CIMP(前述のCIMPマーカーが2つを超える)の大腸腫瘍は、低CIMP(前述のCIMPマーカーが2つ未満)の大腸腫瘍よりも、BRAF V600E多様体、KRAS2多様体、近位部位、米国がん合同委員会による病期が高い、患者年齢が高い、低分化、および粘液性の組織像との関連が著しく強かった。[ 88 ]マイクロサテライト不安定性で高CIMPの大腸腫瘍は、マイクロサテライト不安定性で低CIMPの腫瘍よりも、BRAF V600E病原性多様体、近位部位、患者年齢が高い、およびKRAS2病原性多様体の欠失との関連が著しく強かった。[ 88 ]MSIの有無にかかわらず、高CIMPの大腸腫瘍では、BRAF V600E病原性多様体が著しく多く認められた。[ 88 ]したがって、不安定性の大腸腫瘍を除外した場合のCIMPの生物学的意義に疑問が残る過去の研究[ 91 ]とは異なり、この研究では、いくつかの臨床病理学的変数がマイクロサテライト安定性およびマイクロサテライト不安定性の大腸腫瘍におけるCIMPと確かに関連していることが明らかにされた。[ 88 ]

ポリープの研究では、HPS患者におけるCIMP陽性ポリープおよび右側SSAで最も高頻度なことが明らかになった。[ 72 ][ 93 ][ 94 ][ 95 ][ 96 ]つい最近、ホットスポットのBRAF病原性多様体(V600E)がMSI結腸がんおよび鋸歯状ポリープで多くみられることが明らかになった。[ 97 ][ 98 ][ 99 ]BRAF病原性多様体は、リンチ症候群患者からの大腸がんに認められず、散発性腺腫性大腸ポリープでまれであるが、鋸歯状ポリープの大多数、特にSSAに認められる。[ 94 ][ 96 ][ 100 ][ 101 ][ 102 ]CIMP陽性は小滴性過形成性ポリープ(MVHP)で一般的に認められることから、MVHPからSSAへ、さらに結腸がんへの進行が示唆される。[ 94 ]

結論

CIMPの大腸がんの特性解析およびMSIが腺腫-がん連鎖の後期に発生するという証拠は、MSI(MIN)およびCINの2つの経路で構成された過去の大腸腫瘍発生モデルの変更につながった。MSIとCIMPの経路には多くの重複が認められる。CIMP経路の心臓部は、BRAF病原性多様体を有する鋸歯状ポリープである。CIN経路は、大多数がその経路の早期に発生するAPC病原性多様体を有するAP前駆体を特徴とする。

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大腸がん感受性遺伝子

主要遺伝子

主要遺伝子は、疾患の原因として必要かつ十分なものと定義され、その原因となる機序としては、その遺伝子の重要な病原性多様体(例、ナンセンスミスセンスフレームシフト)を伴う。主要遺伝子は単一遺伝子の障害が関与するものと考えられるのが典型的であり、主要遺伝子によって引き起こされる疾患は比較的まれであることが多い。主要遺伝子における病原性多様体の大部分は疾患リスクを非常に高めるものであり、環境面の寄与を認識するのは多くの場合困難である。[ 1 ]歴史的に、結腸がんの主要感受性遺伝子の大半は高リスク家系を対象とした連鎖解析によって同定されてきた;したがって、この研究デザインがとられた結果として、上記の基準は当然に満たされていた。

この10年間で、主要な大腸がん(CRC)遺伝子の機能はかなりよく明らかになってきている。[ 2 ]腫瘍抑制遺伝子は、遺伝性がん症候群の原因となる最も重要な遺伝子クラスを構成しており、中でも家族性大腸腺腫症(FAP)、リンチ症候群、および若年性ポリポーシス症候群(JPS)に関与している遺伝子クラスに相当している。表2には、実質的な大腸がんリスクの増大をもたらす遺伝子が対応する疾患とともにまとめられている。

表2.大腸がんに対する感受性の高い遺伝子
遺伝子 症候群 遺伝様式 優勢となるがん
FAP = 家族性大腸腺腫症;JPS = 若年性ポリポーシス症候群;PJS = ポイツ・ジェガース症候群;PPAP = ポリメラーゼ校正関連ポリポーシス。
APC FAP、AFAP 優性 大腸、小腸、胃など
TP53p53 リー-フラウメニ 優性 多発性(大腸を含む)
STK11LKB1 PJS 優性 多発性(大腸、小腸、膵臓を含む)
PTEN コーデン 優性 多発性(大腸を含む)
BMPR1ASMAD4MADH/DPC4 JPS 優性 胃および大腸
MLH1MSH2MSH6PMS2EPCAM リンチ症候群 優性 多発性(大腸、子宮内膜などを含む)
MUTYHMYH MUTYH関連ポリポーシス 劣性 大腸
POLD1POLE PPAP 優性 大腸、子宮内膜

自然(de novo)病原性多様体率

1990年代まで、遺伝的に受け継いだポリポーシス症候群の診断は、臨床症状と家族歴に基づいて下されていた。現在では、こうした症候群に関与する遺伝子の一部が同定されているため、これらの集団で自然に発生する病原性多様体率(自然病原性多様体率)を推定しようとしている研究が数件ある。興味深いことに、FAP、JPS、ポイツ・ジェガース症候群、コーデン症候群、およびBannayan-Riley-Ruvalcaba症候群はいずれも自然病原性多様体率が高く、25~30%であると考えられている一方[ 3 ][ 4 ][ 5 ]、リンチ症候群に関連したMMR遺伝子の自然病原性多様体率の推定値は低く、0.9~5%であると考えられている。[ 6 ][ 7 ][ 8 ]リンチ症候群における自然病原性多様体率のこうした推定値は、さまざまな集団の非実父の割合の推定値(0.6~3.3%)と重複していると考えられるため[ 9 ][ 10 ][ 11 ]、リンチ症候群に対する自然病原性多様体率は、比較的高い他のポリポーシス症候群と対照的にかなり低いと考えられる。

遺伝子多型と大腸がんリスク

十分に特徴付けされた結腸がんの家族性症候群以外の状況でも結腸がんの家族内集積が起こるということは、広く認識されている事実である。[ 12 ]複数の疫学研究によると、罹患した患者の第一度近親者(FDR)における結腸がんのリスクは、個人の結腸がんの生涯リスクの2~4.3倍高くなる可能性がある。[ 13 ]表1に、大腸がん(CRC)の相対リスク(RR)および絶対リスクの推定値が家族歴のカテゴリーごとにまとめられている。さらに、結腸がんの生涯リスクは結腸腺腫患者のFDRにおいても増加する。[ 14 ]リスクの大きさは、発端者の診断時年齢、発端者とリスクのある症例との血縁度、および罹患近親者の数によって異なる。現在、中リスクおよび低リスクの症例の多くは、浸透度の低い単一の遺伝子またはそのような複数の遺伝子における変化により影響を受けると考えられている。[ 15 ]このリスク増加の病因を同定することは公衆衛生に影響するため、原因遺伝子に対する精力的な探索が進行中である。

それぞれの遺伝子座の大腸がんリスクに対する影響は比較的小さいと予想されており、リンチ症候群またはFAPにおいてみられる劇的な家族集積は生じないと考えられる。しかしながら、他の一般的な遺伝子座および/または環境因子と組み合わさると、この種の多様体は大腸がんリスクを著しく変化させる可能性がある。こうした種類の遺伝学的多様性はしばしば多型と呼ばれる。多型性の遺伝子座のほとんどが疾患のリスクまたはヒトの形質に対し影響を及ぼさない(良性の多型)一方で、疾患のリスクまたはヒトの形質における差と関連する(ただし程度はわずか)遺伝子座はときに、疾患に関連する多型または機能に関連する多型と呼ばれる。そうした多様性がDNAの単一のヌクレオチドにおける変化に関与している場合、それらは単一ヌクレオチド多様体(SNV)と呼ばれる。

ゲノム全体にわたって存在する候補遺伝子と特徴不明の遺伝子(anonymous gene)における多型パターンについて評価された大腸がん患者の比較的大規模な非選択シリーズを用いて、いくつかのゲノムワイド関連解析(GWAS)が実施されている。[ 16 ][ 17 ][ 18 ][ 19 ]目標は、病原性多様体ではないが、大腸がんリスクを増加させうる(または低下させる能力をもつ)アレルを同定することである。未知の異常な大腸がんアレルの同定により、リスクのある人の遺伝子ベースでのさらなる層別化が可能であろう。そうしたリスク層別化は大腸がんスクリーニングを強力に向上させる可能性がある。数千例の大腸がん症例と対照における全ゲノムスキャンの使用によって、複数の一般的な低リスクの大腸がんSNVが発見されており、National Human Genome Research Institute GWASカタログで見ることができる。GWASの詳細な考察は、がん遺伝学の概要に関するPDQ要約を参照のこと。

大腸がんの多遺伝子リスクスコア

SNVを用いて、大腸がん素因の単一遺伝子性高/中浸透度の形態から、一般集団へより広範に適用可能な可能性がある大腸がんリスク評価の多遺伝子性形態へ、生殖細胞リスク評価を拡張することに関心が高まっている。そのために、他の点では大腸がんリスクが平均的とみなされる人で大腸がんリスク評価を個別化する多遺伝子リスクスコア(PRS)の有用性が多くの研究で調査されている。

ある研究では、日本人の集団ベースレジストリーからの大腸がん男性341人および対照329人を対象に、先にGWASにより大腸がん感受性との関連が認められた36の異なるSNVが調査された。研究者らは、これらのSNVから、この集団内で大腸がんリスクに関連する6つを最終的に同定してPRSを算出したが、これは大腸がんの10年絶対的リスクを評価するうえで妥当な識別能を有していた(曲線下面積[AUC]、0.63)。研究者らは、年齢、肥満指数、および喫煙・飲酒を組み入れた過去に検証済みの非遺伝的リスク予測スコア(AUC、0.60)よりも、PRSの性能がわずかに優れていることを明らかにするとともに、SNVデータとこれらの非遺伝的因子の両方を含む複合モデルは、10年絶対的大腸がんリスクを評価する識別能が優れている(AUC、0.66)ことも明らかにした。[ 20 ]同様に、別の研究では、大腸内視鏡検査によるスクリーニングを受けた50~79歳のドイツ人1,043人を対象に、先にGWASにより大腸がんリスクとの関連が認められた48のSNVからなるPRSの使用が調査された。[ 21 ]研究者らは、進行腫瘍(がんまたは進行腺腫) vs 非進行腺腫および正常な大腸内視鏡検査所見がPRSにより効果的に識別されることを実証した。この研究で、PRSの3分位点が最大の参加者における進行大腸腫瘍のリスクは、PRSの3分位点が最小の参加者より17.5歳高齢の参加者と同程度であると推定されたことから、このようなPRSデータは個人のリスクを十分うまく推定するのに役立つ可能性があり、以前に大腸がんリスクが平均的とみなされた人に対して、大腸内視鏡検査によるスクリーニングを開始する年齢に関して個別化された推奨が可能になることが示唆される。興味深いことに、大腸がん患者2,363人および対照2,198人からなる別のケースコントロール研究で、53のSNVによるPRSおよび大腸がん家族歴は、いずれも高い大腸がんリスクと関連していたが、これらの関連性は、互いに独立しているとみられることが実証された。[ 22 ]研究者らは、そのために家族歴ベースの大腸がんリスク層別化がPRSにより大幅に増強される可能性があり、GWASで同定された大腸がんリスク関連のSNVは、ほとんどの大腸がん家族内集積の基礎となる因子ではない可能性があると結論付けた。

別の研究では、3つの大規模なコンソーシアムからの108,062人を対象として95-SNV PRSを解析した。続いて行われた72,573人を対象としてバリデーションでは、そのPRSが大腸がんの早期発症(年齢50歳未満)および晩期発症(年齢50歳以上)と有意に関連していることが判明した。[ 23 ]興味深いことに、その関連は早期発症の大腸がんの方がかなり強力であり、特にFDRに大腸がんの家族歴がない個人において強力であった(最上位四分位点vs最下位四分位点のオッズ比、4.26;95%信頼区間[CI]、早期発症では3.61–5.01および2.85;95% CI、晩期発症では2.70–3.00)。このような興味深いPRSのデータによって、大腸内視鏡による早期のスクリーニングで便益を得られる可能性のある個人を同定するための個別の予測戦略を利用できる可能性が高まるとともに、大腸がん早期発症の発生率が上昇していることに関する生物学的基礎に対して見込みのある洞察がもたされている。

しかしながら、このような有望なデータにもかかわらず、このようなPRSは現在ルーチンの臨床設定で使用されておらず、現時点で臨床的にアクション可能とみなされていない点を強調することが重要である。これらの有望なデータに基づくと、ルーチンの臨床的ケアにおける大腸がんリスク評価およびスクリーニングの指針とするために、このようなPRSの使用について検討する正式な実施研究が支持される。

APC I1307K

APC I1307K多型は、多重遺伝子(パネル)検査を受けたアシュケナージユダヤ人家系の個人で多く同定されていることを考慮すると、特別に言及する価値があり[ 24 ][ 25 ]、大腸がんのリスク増加と関連するが、結腸ポリポーシスの原因とはならない。このI1307K多型は、アシュケナージユダヤ人の子孫にほぼ完全に限定されたもので、結腸腺腫および腺がんリスクを一般集団の2倍に増加させる。[ 26 ][ 27 ]I1307K多型は、APC遺伝子におけるヌクレオチド3920でのTからAへの転換に起因し、これがA8マイクロサテライトのコード配列をもたらすという事実から、高変異性(hypermutability)領域を生じさせると考えられる。[ 26 ]APC I1307K多型に対しては、これを評価するための臨床的な分析法が存在するが、この分析法のルーチンな使用を支持するほど、関連する大腸がんリスクは高くない。現在までに得られたデータを用いても、I1307Kの保因状態を、スクリーニングの開始年齢、スクリーニングの実施頻度、およびスクリーニング戦略の選択についての決定の指標とすべきか否かは未だ不明である。

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主要遺伝子による症候群

1800年代および1900年代に臨床所見により最初に記述された結腸がん感受性症候群の名称は、その症候群に関連した医師または患者および家系を反映していることが多い(例、ガードナー症候群、ターコット症候群、ムア-トレ症候群、リンチ症候群ポイツ・ジェガース症候群[PJS]、Bannayan-Riley-Ruvalcaba症候群、およびコーデン症候群)。これらの症候群は、大腸腺がんの生涯リスク増加と関連している。これらの大部分は、常染色体優性遺伝パターンを有すると考えられていた。腺腫性結腸ポリープは最初の4つの症候群の特徴である一方、過誤腫は最後の3つの症候群の特徴であることが明らかにされた。

ヒトゲノムプロジェクトの発展および1990年の染色体5q上の大腸腺腫性ポリポーシス(APC遺伝子の同定により、これら家族性症候群間の重複と相違が明らかになった。ガードナー症候群および家族性大腸腺腫症(FAP)は同義であり、どちらもAPC遺伝子における病原性多様体が原因であることが示された。Attenuated FAP(AFAP)は、比較的少ない腺腫および腸以外の徴候を伴う、遺伝子の3'末端または5'末端におけるAPC病原性多様体による症候群として認識された。MUTYH関連ポリポーシス(MAP)は、常染色体劣性遺伝パターンを有する別個の腺腫性ポリープ症候群であると認識された。病原性多様体が同定されれば、その病原性多様体のキャリアに対する大腸がん(CRC)の絶対リスクをより詳しく評価できるようになる(表3を参照のこと)。

表3.遺伝性大腸がん症候群の病原性多様体のキャリアにおける大腸がん(CRC)の絶対リスク
症候群 病原性多様体のキャリアにおける大腸がんの絶対リスク
FAP = 家族性大腸腺腫症;JPS = 若年性ポリポーシス症候群;PJS = ポイツ・ジェガース症候群。
aここに引用したがんリスク推定値は、サーベイランスおよび予防的手術が広範に使用される以前のものである。
FAPa 45歳までで90%[ 1 ]
Attenuated FAP 80歳までで69%[ 2 ]
リンチ症候群 75歳までで10~56%であり、関与する遺伝子により異なる[ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 6 ]
MUTYH関連ポリポーシス 35~53%[ 7 ]
PJS 70歳までで39%[ 8 ]
JPS 60歳までで17~68%[ 9 ][ 10 ]

これらの発見により、遺伝子検査およびリスク管理が可能になった。遺伝子検査とは、さまざまな技術を利用して既知のがん感受性遺伝子における多様体を探すことをいう。包括的な遺伝子検査には、ある遺伝子の全コード領域、イントロン-エクソン境界(スプライス部位)のシークエンシング、および再構成、欠失やその他コピー数の変化の評価(多重ライゲーション依存性プローブ増幅[multiplex ligation-dependent probe amplification:MLPA]、またはサザンブロットなどの技術を用いる)が含まれる。良性の多様体および遺伝子多型から病原性多様体を識別する助けとなる広範に蓄積された経験にもかかわらず、遺伝子検査では、予測の目的に利用できない意義不明の多様体(VUS)が時折同定される。

家族性大腸腺腫症(FAP)

1900年までに、数件の報告で、多数のポリープ(後になって腺腫に亜分類された)のある患者は大腸がんのリスクが非常に高いこと、および家系における伝達パターンが常染色体優性であることが実証されている。20世紀には、腺腫からがんへの進行が確認され、FAPがこの進行の原型的なモデルとして認識された。[ 11 ]古典的なFAPは、10代以降に結腸および直腸に発生する多数(数百~数千個)の腺腫性ポリープを特徴とする(図3を参照のこと)。

多くのポリープが結腸内腔から突出する。

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図3.家族性大腸腺腫症は、10代以降で結腸および直腸に発生する多発性の(100を超える)腺腫性ポリープを特徴とする。

古典的FAPには、attenuatedのサブセットも存在する。AFAPは不均一な疾患実体であり、古典的FAPと比べて大腸内に発生する腺腫性ポリープが少ないことを特徴とする。(詳細情報については、本要約のAttenuated 家族性大腸腺腫症[AFAP]のセクションを参照のこと。)

FAPは最も明確に定義され、十分理解されている遺伝性結腸がん症候群の1つである。[ 1 ][ 12 ][ 13 ]FAPは常染色体優性遺伝疾患であり、発生率は出生の1/7,000~1/22,000の範囲と報告されている。[ 14 ]FAPの有病率に関する民族間の相違の存在が示唆されているが[ 14 ]、ある大規模研究では、CRCとポリープの個人歴および/または家族歴を有し、基準となる大規模検査機関での遺伝子検査に紹介された6,169人を超えるの集団において、民族多様性による有意な差はみられなかった。[ 15 ]FAP症例のほとんどは、染色体5q21上のAPC遺伝子の病原性多様体に起因する。(APC遺伝子と遺伝子検査に関する詳しい情報については、本要約のFAPの遺伝学のセクションを参照のこと。)

FAP患者における高リスクの結腸腺腫に加え、上部消化管(GI)腺腫および腺がん;胃底腺ポリープ;非上皮性良性腫瘍(骨腫、表皮嚢腫、歯の異常);デスモイド腫瘍;先天性網膜色素上皮細胞肥大(CHRPE);および悪性腫瘍(甲状腺腫瘍および脳腫瘍、肝芽腫)などのさまざまな結腸外症状も報告されるようになった。FAPにおけるこれらの結腸外症状のリスクについては、表4を参照のこと。

表4.家族性大腸腺腫症における結腸外腫瘍のリスク
悪性腫瘍 相対リスク 絶対生涯リスク(%)
出典:Giardiello et al.,[ 16 ] Jagelman et al.,[ 17 ] Sturt et al.,[ 18 ] Lynch et al.,[ 19 ] Bülow et al.,[ 20 ] Burt et al.,[ 21 ] and Galiatsatos et al.[ 22 ]
aThe Leeds Castle Polyposis Group.
デスモイド腫瘍 852.0 15.0
十二指腸腺腫および十二指腸がん 330.8 5.0–12.0
甲状腺がん 7.6 2.0
脳腫瘍 7.0 2.0
乳頭部がん 123.7 1.7
膵がん 4.5 1.7
肝芽腫 847.0 1.6
胃がん 未定義 0.6a

FAPは家族性大腸ポリポーシス、または大腸腺腫性ポリポーシス(APC)としても知られている。以前、ガードナー症候群は、大腸ポリポーシス、骨腫、軟部腫瘍を発症しているFAP患者の診断とされていた。しかしながら、ガードナー症候群は遺伝的にFAPの多様体であることが明らかにされているため、ガードナー症候群という用語は臨床現場で基本的に使用されなくなっている。[ 23 ]

臨床表現型

結腸腺腫およびCRC

APC遺伝子の病原性多様体を受け継いだ個人では、結腸腺腫が発生する可能性がきわめて高く、そのリスクは90%超と推定されている。[ 1 ][ 12 ][ 13 ]結腸腺腫発生時の年齢は多様であり、大腸腺腫の発現年齢の中央値は16歳である。[ 24 ]10歳までに腺腫が発生するのはAPC生殖細胞多様体のキャリアのわずか15%であり;この割合は20歳までに75%に増大し;30歳までに90%がFAPを呈する。[ 1 ][ 12 ][ 13 ][ 24 ][ 25 ]例外はAFAPであり、罹患者では通常、より少数の結腸ポリープが主に右側結腸に発生し、後に大腸がんを発症する。(詳しい情報については、本要約のAttenuated 家族性大腸腺腫症[AFAP]のセクションを参照のこと。)何らかの介入が実施されなければ、FAP患者のほとんどは30代までに大腸がんを発症する。[ 1 ][ 12 ][ 13 ]このため、APC遺伝子の病原性多様体のキャリアやリスクを有する個人に対するサーベイランスおよび介入として、慣例的に思春期頃から年1回の大腸内視鏡検査が開始され、結腸ポリープを早期に発見し、結腸切除術の施行時期の計画に役立てるために実施されている。[ 26 ][ 27 ](詳しい情報については、本要約のFAPに対する介入のセクションを参照のこと。)

結腸外症状

先天性網膜色素上皮細胞肥大(CHRPE)

CHRPEは網膜に発生する平坦で暗色の色素性病変であり、発生率は一般集団の1.2%に対し、[ 30 ]FAP患者では約75%に及ぶ。[ 28 ][ 29 ]この病変はしばしば出生時または幼年期に認められ、FAP患者では頻繁に多発する、または両側性である。[ 31 ]FAPと診断された個人17人とリスクのある家族13人を対象とした研究で、FAPの慢性ポリープに関連するCHRPE病変の存在の感度は76%、特異度は92%、陽性的中率は93%、陰性的中率は75%であることが報告された;したがって、CHRPEを有するリスクのある個人に対するスクリーニングは、FAPを発見するための合理的な方法となりうる。[ 28 ]

デスモイド腫瘍

デスモイド腫瘍は、コラーゲン基質に生じる増殖性、局所浸潤性かつ非転移性の線維腫性腫瘍である。この腫瘍が転移することはないが、きわめて侵攻的に増殖し、生命に関わりうる。[ 32 ]デスモイド腫瘍は散発性に発生し、古典的FAPの一部として、またはFAPの結腸所見がみられない遺伝形態で発現する。[ 19 ][ 33 ]デスモイド腫瘍は結腸の典型的な腺腫性ポリポーシスを伴っていない場合にも、遺伝性のAPC病原性多様体を有している。[ 33 ][ 34 ]

大半の研究から、FAP患者の10%(8~38%)がデスモイド腫瘍を発症することが分かった。その発生率は、確認の手段およびAPC遺伝子に病原性多様体が生じる位置によって異なる。[ 33 ][ 35 ][ 36 ]コドン1445と1578との間に発生するAPC遺伝子の病原性多様体は、FAP患者におけるデスモイド腫瘍の発生率増加と関連している。[ 34 ][ 37 ][ 38 ][ 39 ]晩期に発症し、より軽度の腸ポリポーシス表現型を有するデスモイド腫瘍(遺伝性デスモイド疾患)が、コドン1924に病原性多様体を有する患者において報告されている。[ 33 ]

デスモイド腫瘍を発症する可能性が高い患者を同定する試みとして、デスモイド危険因子スケールが記述されている。[ 40 ]デスモイド危険因子スケールは、性別、結腸外症状の有無、デスモイド腫瘍の家族歴、および利用可能であれば遺伝子型に基づいていた。このスケールを用いることで、デスモイド腫瘍発症についてFAP患者の低リスク、中リスク、および高リスク群への層別化が可能となった。著者らは、外科治療の計画にデスモイド危険因子スケールを用いることができると結論付けた。このスケールに含まれる危険因子の妥当性は、欧州の大規模な複数登録のレトロスペクティブ研究によって支持された。[ 41 ]

デスモイド腫瘍の自然経過は多様である。線維芽細胞の機能異常が腸間膜斑様のデスモイド前駆病変となり、一部の症例ではそれが手術の前に発生し、手術による外傷後に腸間膜線維腫症に進行して、最終的にデスモイド腫瘍を引き起こすというデスモイド腫瘍形成のモデルを提案している著者もいる。[ 42 ]デスモイドの10%が消失、50%が長期間にわたり安定した状態を維持し、30%が変動、10%が急速に増殖すると推定されている。[ 43 ]デスモイド腫瘍は外科的損傷および生理的損傷を受けたのちにしばしば発生し、内分泌性因子および遺伝因子の両因子の関わりが考えられている。FAPにおける腹腔内デスモイドの約80%は手術による外傷後に生じる。[ 44 ][ 45 ]

FAP患者のデスモイド腫瘍はしばしば腹腔内に位置し、早若年期にみられ、腸閉塞または梗塞、および/または尿管閉塞に至ることがある。[ 36 ]一部のシリーズでは、デスモイド腫瘍はFAP患者で大腸がんに次いで2番目に多い死因である。[ 46 ][ 47 ]腹腔内デスモイドの層別化を疾患の重症度によって容易にする病期分類システムが提案されている。[ 48 ]腹腔内デスモイドに対して提案されている病期分類システムは以下の通りである:症候のない非増殖性のデスモイドにはI期;最大径が10cm以下の症候のある非増殖性のデスモイドにはII期;11~20cmの症状のあるデスモイドまたは症候のない増殖が遅いデスモイドにはIII期;20cmを超えるデスモイド、急速に増殖するデスモイド、または致死的な合併症を伴うデスモイドにはIV期。[ 48 ]

これらのデータから、遺伝子検査はFAP患者および/または多発性デスモイド腫瘍患者の医学的管理に価値があることが示唆される。デスモイド腫瘍形成の素因となるAPC遺伝子型(例えば、APC遺伝子のコドン1445の3'末端)を有する患者では、リスク低減のための結腸切除術および腹腔鏡検査などの外科的サーベイランス処置を含む外科処置を受けた後でも、デスモイド腫瘍の発生リスクが高いと考えられる。[ 35 ][ 43 ][ 49 ]

胃の腫瘍

FAPと関係する最も一般的な胃ポリープは胃底腺ポリープ(FGP)である。FGPはしばしばびまん性で内視鏡による除去を施行できない。FGPの発生率は、一般集団の0.8~1.9%に対し、FAP患者では60%に及ぶと推定されている。[ 20 ][ 22 ][ 50 ][ 51 ][ 52 ][ 53 ][ 54 ]このポリープは、胃底腺上皮細胞または胃小窩粘液細胞(foveolar mucous cell)により裏打ちされた小嚢腫を含む、ゆがんだ胃底腺で構成される。[ 55 ][ 56 ]

過形成性表面上皮は定義上、非腫瘍性である。したがって、FGPは前がん性と考えられていない。しかしながら、FGPから発生したと思われる胃がんの症例が報告されており、この問題が再調査されている。[ 22 ][ 57 ]1件のFAPのシリーズによると、FGPの表面上皮における限局性異形成はFAP患者の25%で明らかであったのに対し、散発性FGPでは1%であった。[ 56 ]食道胃十二指腸鏡検査によるサーベイランスを受けていたFAP患者を対象とした1件のプロスペクティブ研究において、患者の88%にFGPが発見された。これらの患者の38%に低悪性度の異形成が発見されたのに対して、高悪性度の異形成はこれらの患者の3%に発見された。この研究の著者らは、高悪性度の異形成を伴うポリープが同定された場合は、3~6ヵ月間隔で内視鏡サーベイランスを繰り返すポリープ切除術を検討するよう推奨している。[ 58 ]

鑑別診断の問題を複雑にしていることとして、FGPはプロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用している非FAP患者で認められることが多くなっている。[ 56 ][ 59 ]この状況におけるFGPは一般的に、胃壁細胞内の分泌顆粒のうっ滞から成るPPI作用を示し、胃底腺管腔につながる個々の細胞の不規則な膨隆を引き起こす。訓練を受けた人が見ると、異形成が存在し同時に特徴的なPPI作用が認められない場合に、基礎にあるFAPの存在が強く示唆されるとみなされる。FGPの数は、一部重複はあるものの、PPIを服用している患者にみられるよりもFAP患者の方が多い傾向がある。

FAP患者では胃腺腫も発生する。西洋諸国の患者における胃腺腫の発生率が2~12%と報告されている一方で、日本人患者の発生率は39~50%と報告されている。[ 60 ][ 61 ][ 62 ][ 63 ]こうした腺腫はがんに進行することがある。韓国および日本のFAP患者は、これらの国々の一般集団のリスクより3~4倍高い胃がんリスクを有することが報告されているが、西洋諸国の集団ではこの知見は観察されていない。[ 64 ][ 65 ][ 66 ][ 67 ][ 68 ]アジアのFAP患者における胃腺腫の有病率が西洋のFAP患者にみられる率より高いことに対して考えられる説明の1つとして、ヘリコバクターピロリ菌(Helicobacter pylori)への感染率の高さを挙げることができる。[ 61 ]

最近になって、西洋のFAPデータベースで胃腺がんの発生率の上昇が認められた。[ 69 ]胃腺がんおよび近位胃ポリポーシス(GAPPS)の家系で、胃体部および胃底部に限局した多数の胃ポリープが主に胃底腺ポリープとして発現し、異形成または胃腺がんの領域を有しており、大腸または十二指腸ポリポーシスの形跡が認められない人に、APCのプロモーター(1B)の変化が同定された。これらの多様体は複数のGAPPS家系において、胃の表現型により分離していた。胃ポリポーシスの表現型の浸透度は高いが、この表現型は無症状の成人から著しい症状のある胃ポリポーシスが認められる10代の個人まで多様であり、内視鏡検査で病変のない42~77歳の非罹患者であるキャリアも含まれる。しかし、胃がんの浸透度は明確ではない。胃底腺ポリープおよび結腸ポリポーシスのあるFAP家系で、APCのプロモーター1Bに変化が起こることはまれである。[ 70 ]

十二指腸/小腸腫瘍

十二指腸腺腫の発生率は上部消化管内視鏡検査を受けた非選択の患者のわずか0.4%であるが[ 71 ]、FAP患者においては80~100%で発見される。ほとんどは十二指腸の球部および下行脚、特に膨大部周囲領域に位置する。[ 50 ][ 51 ][ 72 ]FAP患者における十二指腸腺がんの生涯における発生率は4~12%である。[ 17 ][ 66 ][ 73 ][ 74 ]北欧のFAP罹患者368人が参加して実施された十二指腸腺腫の多施設プロスペクティブ・サーベイランス研究において、ベースライン時の評価(平均年齢38歳)では65%に腺腫がみられ、70歳までの累積有病率は90%に達した。サーベイランスの下でがんが発生したのはわずか4.5%であったものの、臨床経過は緩慢であろうという当初の認識とは対照的に、平均8年間のサーベイランスの間に腺腫は増大し、異形成の程度も上昇した。[ 20 ]この研究は大規模研究であるが、側視型ではなく直視型の内視鏡を使用したこと、およびこの研究に関与した研究者の数が多かったことから限界がある。FAP患者では、カプセル内視鏡を用いて腸管ポリープが評価できることもある。[ 75 ][ 76 ][ 77 ]コンピュータ断層撮影(CT)十二指腸造影に関する1件の研究により、比較的大きな腺腫サイズは正確に測定できるが、腺腫が小さく扁平になるほど正確にカウントできないことが明らかにされた。[ 78 ]

FAP患者を対象としたレトロスペクティブ・レビューから、膨大部領域がんについて腺腫、高悪性度異形成、腺がんの診断時平均年齢がそれぞれ39歳、47歳、54歳であったことが示され、adenoma-carcinoma sequenceの順を追った発生が示唆された。[ 79 ]FAP患者601人を対象とした意思決定に関する分析では、定期的なサーベイランスを30歳から開始することで7ヵ月間の余命延長という有益性がもたらされたことが示唆された。[ 73 ]十二指腸ポリープは治療困難となりうるが、少数の症例報告からは、潜在的な合併症-主に膵炎、出血、および十二指腸穿孔-を伴わなければ、内視鏡でうまく管理できるということが示唆されている。[ 80 ][ 81 ]

特に、密集性ポリポーシスと呼ばれることもある重症の十二指腸ポリポーシスまたは組織学的に進行した十二指腸腺腫をもつFAP患者は、十二指腸腺がんの発症リスクが最も高いと考えられる。[ 20 ][ 74 ][ 82 ][ 83 ]十二指腸腺がんのリスクは、ポリープの数と大きさおよびポリープの異形成の程度と相関することから、十二指腸腺がんの発症リスクが最も高いFAP罹患者を同定するために、これらの特徴を組み入れた層別化システムが作り出された。[ 83 ]Spigelman分類(表5を参照のこと)として知られるこのシステムによれば、十二指腸ポリポーシスの病期が最も進行した患者の36%ががんを発症する。[ 74 ]

Spigelman分類の予測的有用性には疑問が投げかけられている。異形成のポイント分類では異形成は軽度、中等度、重度に分類されるが、病理医は中程度の異形成と軽度のものを慣習的には区別しようとしない。絨毛要素の分類または異形成の程度の解釈における観察者間の一致を検証する研究はない。Cleveland Clinicの研究では、がんの有無にかかわらずFAP患者を対象としたSpigelman分類とその要素が比較されたが、腺腫数も絨毛要素もがんリスクの予測因子ではないことが明らかにされた。[ 84 ]進行(Spigelman IV)分類の患者はがんを発症する可能性がより高かったが、がんを有する患者の半数近くはSpigelman IVの基準を満たさなかった。

表5.Spigelman分類
ポイント ポリープ数 ポリープの大きさ(mm) 組織型 異形成
I期、1-4ポイント;II期、5-6ポイント;III期、7-8ポイント;IV期、9-12ポイント。[ ]
1 1–4 1–4 管状腺腫 軽度
2 5–20 5–10 管状絨毛腺腫 中程度
3 >20 >10 絨毛腺腫 重度

その他の腫瘍

FAP患者に発生するその他の結腸外腫瘍には、甲状腺乳頭がん、副腎腫瘍、肝芽腫、脳腫瘍などがある。

甲状腺乳頭がん(篩状モルラ型)はFAP患者の1~2%が罹患すると報告されている。[ 85 ]しかしながら、FAP女性6人の甲状腺乳頭がんに関する最近の研究[ 86 ]では、6つの腫瘍のコドン545および1061~1678の野生型アレルにおけるヘテロ接合性の消失(LOH)または病原性多様体が実証されなかった。さらに、これらの患者の5人中4人は、検出可能な体細胞性のRET/PTCキメラ遺伝子を有していた。この病原性多様体は一般に散発性甲状腺乳頭がんに限定されており、APC遺伝子の病原性多様体以外の遺伝的因子の関与を示唆している。FAP患者における甲状腺乳頭がんの原因に関してRET/PTCキメラ遺伝子など他の遺伝的因子が独立して原因となっているか、あるいはAPC遺伝子の多様体との共同により発現しているかどうかを明らかにするためにはさらなる研究が必要である。

副腎腫瘍はFAP患者において報告されており、ある研究では、FAP患者の副腎皮質がん(ACC)でAPC遺伝子座のLOHが示された。[ 87 ]腹腔内デスモイド腫瘍の評価のために腹部CTを受けたFAP患者162人の研究で、15人の患者(女性11人)が副腎腫瘍を有することが示された。[ 88 ]これらのうち、2人はコルチゾル過分泌による症状を示した。これらの患者のうちの3人はその後手術を受け、ACC、両側性結節性過形成、副腎皮質腺腫があったことが明らかになった。このコホートにおける副腎腫瘍の有病率は予想外のもので、非FAP患者の有病率0.6~3.4%に対して7.4%であった(P < 0.001)。[ 88 ]このシリーズで切除された腫瘍に対する分子遺伝学的解析は提供されなかった。その後の研究により、FAP患者の26%(90人中23人)、AFAP患者の18%(11人中2人)、およびMAP患者の24%(21人中5人)に副腎病変が確認された。このシリーズにおけるほとんどの病変は良性の徐々に進行する経過をたどった;ACC症例は報告されなかった。[ 89 ]

肝芽腫はまれな急速に進行する、通常致死的な小児悪性腫瘍であり、肝に限局している場合は根治的外科的切除術により治癒可能である。複数の肝芽腫症例がAPC病原性多様体を認める小児において報告されている。[ 90 ][ 91 ][ 92 ][ 93 ][ 94 ][ 95 ][ 96 ][ 97 ][ 98 ][ 99 ]複数の研究シリーズでもまた、これらの腫瘍におけるAPCのLOHを証明している。[ 91 ][ 93 ][ 100 ]肝芽腫を伴うFAP患者では、特異的な遺伝子型と表現型の相関は確認されていない。[ 101 ](詳しい情報については、小児肝がんの治療のPDQ要約の肝芽腫のセクションを参照のこと。)

大腸がんおよび脳腫瘍の集団はターコット症候群と呼ばれている;しかしながら、ターコット症候群は分子的に不均一である。分子的研究により、結腸ポリポーシスおよび髄芽腫はAPCの病原性多様体(FAPの発現につながる)と関連しているのに対し、結腸がんおよび膠芽腫はミスマッチ修復(MMR)遺伝子の病原性多様体(リンチ症候群の発現につながる)と関連していることが実証されている。[ 102 ]

高悪性度の中枢神経系胚芽腫である髄芽腫は、FAPでみられる脳腫瘍の約80%を占め、主に小児に発生し、70%は16歳未満で診断される。高悪性度の星細胞腫と上衣腫もFAP患者の症例が報告されている。FAP家系員の相対生涯リスクは脳腫瘍全般で7倍、髄芽腫で90倍、また脳腫瘍全般の絶対生涯リスクはおよそ1~2%である。[ 102 ]

FAPの遺伝学

大腸腺腫性ポリポーシス(APC)遺伝子

染色体5q21上のAPC遺伝子は、細胞接着およびシグナル伝達に重要な役割をもつ2,843個のアミノ酸からなる蛋白をコードする;APC蛋白の主要な機能は、Wntシグナル伝達経路の主なメディエータであるβ-カテニンの細胞内濃度を調節することである。APC遺伝子は腫瘍抑制遺伝子で、APC遺伝子の欠失は、染色体不安定性大腸腫瘍発生経路における最も初期の事象の1つである。FAPおよびAFAPは、末梢血白血球から得られたDNAにおけるAPC遺伝子の生殖細胞病原性多様体を検査することによって、遺伝学的に診断が可能である。APC遺伝子のさまざまな疾患関連病原性多様体が300以上報告されている。[ 103 ]これらの変化のほとんどは、挿入、欠失、ナンセンス多様体であり、これにより起こる遺伝子の転写産物においてフレームシフトおよび/または早期終止コドンが生じる。最もよくみられるAPCの病原性多様体(FAP患者の10%)はコドン1309にみられるAAAAG配列の欠失である;これ以外の病原性多様体は優勢ではないようである。APC蛋白の産生を完全阻止するのではなく減少させるような多様体もまた、FAPの原因となりうる。[ 104 ]

遺伝子型と表現型の相関

コドン169とコドン1249との間に発生するAPC遺伝子の病原性多様体のほとんどは、古典的FAPの表現型となる。[ 105 ][ 106 ][ 107 ]遺伝子内の病原性多様体の発生位置と以下の臨床的表現型との相関に高い関心がもたれている。

低浸透度のAPC多様体I1307Kは、大腸がんとの関連が研究されている。(詳しい情報については、本要約の大腸がん感受性遺伝子のセクションのAPC I1307Kのセクションを参照のこと。)

FAPの遺伝子検査

発端者

古典的FAP表現型を呈する個人は、APC検査の候補者である。しかし、各種のポリポーシスに遺伝的不均一性があり、関連する症候群の間に表現型の重複があることから、ポリポーシスの個人歴または家族歴をもつ多くの発端者に対して多重遺伝子パネル検査を検討することは妥当な選択肢である。

大腸腺腫性ポリープの数が100個未満の患者は、特に診断が困難となる場合がある。鑑別診断には、AFAP、MAP、ポリメラーゼ校正関連ポリポーシス(PPAP)、両アレル性ミスマッチ修復欠損(BMMRD)を含めるべきである。[ 110 ]AFAPは、生殖細胞系のAPC病原性多様体に対する検査で診断可能である。(詳しい情報については、本要約のAttenuated 家族性大腸腺腫症[AFAP]のセクションを参照のこと。)MAPは、MUTYH遺伝子の両アレル性生殖細胞病原性多様体に起因し、常染色体劣性様式で遺伝する。[ 111 ]PPAPはPOLEおよびPOLD1へテロ接合型病原性多様体に起因する。[ 112 ][ 113 ]BMMRDは、いずれかのMMR遺伝子(MLH1MSH2MSH6PMS2EPCAM)の両アレルに病原性多様体が遺伝している病態である。[ 114 ](詳しい情報については、本要約のMUTYH関連ポリポーシス[MAP]オリゴポリポーシス両アレル性ミスマッチ修復欠損[BMMRD]のセクションを参照のこと。)

例えば、ある大規模横断研究では、APCの病原性多様体が、1000個以上の腺腫を有する人の80%(95%信頼区間[CI]、71%–87%)にみられ、腺腫が100~999個の人では56%(95%CI、54%–59%)、20~99個の人では10%(95%CI、9%–11%)、10~19個の人では5%(95%CI、4%–7%)にそれぞれみられた。[ 115 ]同じ研究で、両アレル性MUTYH病原性多様体の保有率はattenuated型(20~99個の腺腫)の個人のAPCと同等であったが、MUTYH病原性多様体は古典的ポリポーシスを有する個人の少数(2%)にも認められた。[ 115 ]

ほとんどの民間検査機関では、完全な遺伝子塩基配列決定だけでなく、APCや他の遺伝子に対する欠失/重複の解析も実施している。しかし、それぞれの機関とともに検査法を検証することが重要である。FAPの患者の8~12%では、APC遺伝子に全エクソンの欠失またはプロモーター1Bの欠失がみられ、これらが塩基配列決定で検出されない場合があるため、欠失の解析はFAPの個人にとって特に重要である。[ 116 ][ 117 ][ 118 ][ 119 ]上述のように、ポリポーシスを呈している患者の場合は、すべての遺伝子を一度に評価して検査コストを合理化して削減するために、複数のポリポーシス遺伝子を含む多重遺伝子パネルが依頼されることがよくある。(詳しい情報については、がんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングに関するPDQ要約の多重遺伝子[パネル]検査のセクションを参照のこと。)

段階的な検査

APC遺伝子に病原性多様体が同定されている家系では、リスクのある近親者に対する予測検査により、決定的に多様体を同定または除外することができる。こうした検査はリスクのある近親者が侵襲的なスクリーニングを受ける必要があるか否かや、そうした手技が不要もしくは中止してもかまわない(すなわち、その近親者に対する家族性病原性多様体の検査結果が陰性)かどうかを見極めるために重要である。

FAPの患者のほとんどは親も罹患しており、家系内に常染色体優性遺伝のパターンが認められることがある。したがってリスクのある家族にも、段階的な遺伝カウンセリングと遺伝検査が行われることがある。しかし推定でFAP患者の25%では、APCde novoの病原性多様体が認められ、これらはすなわち、どちらの親からも遺伝したものではないとみられる。[ 120 ]多様体がどちらの親の白血球DNAにも認められない場合は、生殖細胞モザイクでこの所見を説明できる可能性がある。そのため同胞には必ずAPC検査を提案すべきであるが、発端者のおじ、おば、いとこに対する検査は適応とされない。

FAPの臨床的特徴の早期発現と、その後の思春期から開始されるサーベイランスの推奨については、未成年者の遺伝子検査に関する特別な問題が提起されている。[ 121 ]一般に、遺伝性がん症候群に関する未成年者の遺伝子検査は、その結果が小児の医学的管理を明らかにすると期待される場合を除いて推奨されない。FAPは医学的利益が未成年者の遺伝子検査を正当化する一例を提示しており、特にそのことはリスクのある小児の推定50%が病原性多様体のキャリアではないと判明し、サーベイランスを免れることができる点において顕著である。加えて、乳幼児に対するFAPの検査により、5歳未満の時点で肝芽腫のサーベイランスが可能になる。他方で、リスクのある未成年者にこの検査を実施しない場合は、10~15歳の時点で大腸内視鏡検査またはS状結腸内視鏡検査が開始される。[ 122 ]このような検査による心理的影響については、本要約の遺伝性結腸がん症候群における心理社会的問題のセクションでも扱われている。

FAPに対する介入

結腸サーベイランス

家系または自身における既知のAPC病原性多様体のためにFAPのリスクがある個人は、S状結腸内視鏡検査または大腸内視鏡検査によるポリポーシス発生の評価を受ける。FAPの家系員にポリープの発生がいったん明らかになれば、大腸がんを予防するための効果的な管理は結腸切除術のみである。予防的手術により、FAP患者における生存が改善することが示されている。[ 123 ]登録とサーベイランスにより大腸がんの発生率および死亡率が低下することがレトロスペクティブに示されているため、可能であれば、患者とその家系員を登録に含めるべきである。[ 124 ]経過のごく初期で同定された古典的FAPの患者では、社会的に重要な段階を達成するために、外科医、内視鏡医、および家族が数年間の手術延期を選択することがある。また、慎重に選択したAFAP患者(ポリープ負荷が最低限で高齢の患者)において、結腸切除術の決定を延期し、ポリープ負荷または異形成の進行に直面した場合にのみ手術を実施することは妥当であろう。

フィンランドの全国集団ベースレトロスペクティブ研究では、FAP家系員のサーベイランスが全死亡率を低下させ、生存期間を延長したか否かを評価した結果、スクリーニングプログラムで募集された発端者の家系員の生存期間は一般集団と同等であり、FAPの診断後、最長20年であったことが報告された。[ 125 ]この研究では、1963年から2015年までに臨床的にFAPと診断された家系員が1人以上いる154家系が対象とされた。発端者は194人、家系員は225人(遺伝子検査で83人、内視鏡検査で142人)であり、追跡期間中央値は11.8年であった。この研究で、FAP家系員の生存解析は、相対生存率推定値を用いて算出された。[ 126 ]この推定値は、FAP発端者および家系員の生存率を、FAPがなく性別と暦年での年齢が同じである個人について予測される生存率と比較する。発端者に関する追跡10年後の相対生存率は67%(95%CI、60%-75%)、および20年後の相対生存率は66%(95%CI、58%-76%)であった。また家系員の相対生存率は、追跡10年後で98%(95%CI、95%-101%)、20年後で94%(95%CI、88%-100%)であった。追跡25年時点の家系員の相対生存率は87%(95%CI、79%-96%)であり、一般集団より低かった。発端者の相対生存率は家系員より有意に低かった(P < 0.001)。死亡率をみると、発端者では標準化死亡比が追跡0~5年および5~10年の両期間で上昇したが、家系員では追跡20年まで安定していた。発端者では、おそらくほとんどに症状があり、ほとんどが診断時に大腸がんであった可能性が高いという事実を考慮に入れると、この違いは、追跡を開始する時点でより顕著であった。著者らは、大腸がんの治療が成功し、再発がなければ、発端者の生存率が家系員の率に近くなることを指摘した。

内視鏡サーベイランスは早期(10~15歳)に開始するのが通常である。[ 122 ](早期サーベイランスの社会的および感情的影響に関する詳しい情報については、本要約の遺伝性結腸がん症候群における心理社会的問題のセクションを参照のこと。)歴史的に、S状結腸鏡検査は大多数の患者で早期腺腫を同定する際に合理的なアプローチとなっている場合がある。しかしながら、(a)結腸全体の大腸内視鏡検査のために向上した器具操作、(b)鎮静、(c)AFAPの認識(この疾患は典型的にほとんどが右側結腸に発生する)、および(d)手術を数年間延期する傾向の高まりに照らして、大腸内視鏡検査が選択すべきツールである。[ 122 ]他の点では既知の家族性病原性多様体に対する検査が陰性であった個人は、FAPに対する内視鏡サーベイランスを受ける必要はない。こうした個人は平均リスク集団のスクリーニングを受けることがNCCNにより推奨される。罹患者において家族性多様体が同定されていない家系の場合は、臨床的サーベイランスが必要である。APC病原性多様体を保有することが判明しているが、まだポリープが発生しない個人では、場合によっては30~40代まで腺腫が発生しないこともあるため、結腸サーベイランスを中断しない。(これらの方法に関する詳しい情報については、大腸がんのスクリーニングのPDQ要約を参照のこと。)

大腸手術

APC遺伝子の病原性多様体が陽性の人では、結腸腺腫がほぼ100%の割合で発生する;そのため、ポリープが発生して、内視鏡的切除術を用いて安全にモニターするにはあまりにも数が多かったり、組織学的に進行していたりする場合は、リスク低減のための手術が大腸がんを予防する標準治療となる。

FAP患者と担当医師は、手術をいつ施行するかを決定するため、個別協議を行う必要がある。この場合、術後におけるデスモイド腫瘍の発生リスクと、女性の場合は生殖能力を検討に加えることが有用である。リスク低減手術のタイミングは通常、ポリープの数、大きさ、組織型、および総体的症状による。[ 127 ]多数のポリープがいったん発生してしまうと、結腸切除術の実施時期を見極める上で、サーベイランスとしての大腸内視鏡検査はもはや有用でなくなるが、これはポリープの数が多すぎてすべてのポリープについての生検や摘出が不可能となるためである。この時点で患者は、結腸全摘除術および再建性直腸結腸切除術など、利用可能な選択肢の経験がある外科医と相談することが適切である。[ 128 ]直腸温存手術とS状結腸鏡検査による残存直腸のサーベイランスの継続は、直腸のポリープが比較的少なく、説明を受けた上で結果を理解し、定期的なサーベイランスにもかかわらず直腸がんの発生リスクが残存することを受け入れるという意思決定をしたコンプライアンスの良好な患者において、結腸全摘除術の妥当な代替法になる。[ 129 ]

手術の選択肢には、回腸嚢肛門吻合術(IPAA)を伴う再建性直腸結腸切除術、回腸直腸吻合術(IRA)を伴う結腸全摘除術、および回腸造瘻術を伴う全直腸結腸切除術(TPC)がある。TPCは括約筋を残せない下部直腸がんの患者または技術的問題のためにIPAAを実施できない患者にのみ用いられる。TPC実施後には、リスクのある粘膜がすべて切除されているため、直腸がんの発生リスクはなくなる。これらの手技は、最小限の侵襲的方法で施行することができる。

IRAを伴う結腸切除術と再建性直腸結腸切除術のいずれが施行されるにせよ、大半の専門家は、すべてのポリープを摘出または切除するために、直腸または回腸嚢の生涯にわたる定期的なサーベイランスの実施を推奨している。初期に行われた非選別の研究では、結腸全摘除術後の直腸がんの発生リスクは、IRAの20年後で25%程度と報告されている。[ 130 ][ 131 ]IRAに関する患者の選別が行われた研究では、このリスクとして、より低い確率が報告されている。[ 128 ][ 132 ]IRA実施後の直腸がんリスクを増加させると報告されている因子には、結腸全体に存在するポリープの数、直腸内に存在するポリープの数、IRA実施時の結腸がんの存在、直腸基部の長さ、IRA実施後の追跡期間、および遺伝子型が挙げられる。[ 39 ][ 133 ][ 134 ][ 135 ]FAPに対する一次手術としてのIRAを併用した腹式結腸全摘術は、制御できない直腸ポリープおよび/または直腸がんのために後でIPAAへと転換することを妨げない。Danish Polyposis Registryで、患者24人を対象とした二次IPAA(先にIRA施行後)の合併症発生率および機能的結果が報告され、一次IPAAを受けた患者59人と同程度であった。[ 136 ]

ほとんどの症例では、手術時の直腸における臨床的ポリープ負荷から外科的介入の種類、すなわち、再建性直腸結腸切除術にIPAAとIRAのいずれを用いるかが決まる。表現型が軽度(結腸腺腫が1,000未満)で直腸ポリープが20未満の患者は、予防的手術時にIRAの候補となりうる。[ 137 ]しかしながら、一部の症例ではポリープ負荷がはっきりせず、このような症例に対して研究者らは直腸に関するその後の転帰を予測する上で遺伝子型の役割を検討している。[ 138 ]IRA後の直腸がんリスクおよび最終的なcompletion proctectomyを増加させると報告されている病原性多様体には、エクソン15のコドン1250、エクソン15のコドン1309および1328における多様体、ならびにエクソン15のコドン1250とコドン1464との間の多様体が挙げられる。[ 139 ][ 130 ][ 140 ][ 141 ] IPAAを受けた患者では、回腸嚢での腺腫発生の累積リスクが15年で75%と報告されていることから、年1回のペースで回腸嚢のサーベイランスを継続していくことが重要である。[ 142 ][ 143 ] まれではあるが、再建性直腸結腸切除術を受けたFAP患者の回腸嚢および肛門移行部にがんが報告されている。[ 144 ] 再建性直腸結腸切除術とIPAAの実施後のQOLに関するメタアナリシスにより、FAP患者では、瘻孔形成、回腸嚢炎、排便頻度、および漏出の点で、炎症性腸疾患の患者よりも経過がわずかに良好であることが示唆された。[ 145 ]

化学予防

特異的シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)阻害薬のセレコキシブ、およびスリンダク(非ステロイド性抗炎症薬[NSAID])などの非特異的COX-2阻害薬は、FAP患者におけるポリープのサイズと数を減少させる効果が明らかにされており、この疾患の治療における化学予防薬としての役割が示唆される。[ 146 ][ 147 ]セレコキシブは、米国食品医薬品局(FDA)により承認されていたが、その認可は、製造者により自主的に取り下げられた。現在のところ、FAPに対する化学予防薬で承認された薬剤はない。それでも、セレコキシブおよびスリンダクのような薬物が十分に広く使用されており、化学予防の臨床試験では、対照群としてこれらの薬物の1つがよく利用される。1件のランダム化試験では、セレコキシブ単独との比較で、セレコキシブおよびジフルオロメチルオルニチンの併用がポリープ負荷をわずかに改善する可能性が示された。[ 148 ]

小児集団(10~14歳)を対象としたセレコキシブの小規模なランダム化プラセボ対照用量漸増試験では、セレコキシブを3ヵ月間投与した場合の安全性が全用量群で実証された。[ 149 ]この研究では腺腫性ポリープ負担において用量依存性の軽減が認められた。16mg/kg/日の用量(成人で承認された400mg1日2回の用量に近い)で得られたポリープ負担軽減は、セレコキシブで成人を対象に実証されたものと同等であった。

遊離脂肪酸の一種であるオメガ3多価不飽和脂肪酸エイコサペンタエン酸により直腸ポリープの数およびサイズが減少することが、結腸亜全摘術後のFAP患者を対象とした小規模な研究で示されている。[ 150 ]ランダム化試験で直接比較されたわけではないが、その効果は過去にセレコキシブで認められたものと大きさの点で同程度であるとみられる。

リスク低減手術を受けていないFAP患者の管理にCOX-2阻害薬をどのように組み込むかについてはまだ明確にされていない。APC病原性多様体キャリアで未だポリポーシスが発生していない小児および若年成人41人を対象としたプラセボ対照二重盲検試験では、スリンダクがFAPの一次治療として効果的ではない場合があることが実証されている。4年間にわたる治療の間、ポリープの発生率、数、大きさのいずれについてもスリンダク群とプラセボ群との間に統計的有意差は認められなかった。[ 147 ]

結腸ポリープに対するCOX-2阻害薬の効果と一致して、ランダム化プロスペクティブ二重盲検プラセボ対照試験において、FAP患者32人における十二指腸ポリープが、セレコキシブによる6ヵ月で1コースの治療後に消失こそしなかったものの数が減少した。重要なことは、ベースライン時にポリープが十二指腸の5%を超えて発生している人においてのみ400mgの1日2回の経口投与で、統計的に有意な効果がみられたことである。[ 151 ]スリンダクで6ヵ月治療したFAP患者24人の以前のランダム化研究で、十二指腸ポリープの減少の傾向は有意ではなかった。[ 152 ]結腸ポリープの治療に対するCOX-2阻害薬の使用をめぐる問題と同様のことが十二指腸ポリープの治療におけるその使用にも当てはまる(例えば、ポリープが部分的にしか除去できないこと、COX-2阻害薬による合併症、および投薬が中止された後の効果の消失)。[ 151 ]

十二指腸乳頭(胆管が腸につながる場所)の周囲では腺腫性ポリープが集積しやすく、Apc生殖細胞多様体を有するマウスにおいてウルソデオキシコール酸塩により腸腺腫が抑制されることを示唆する前臨床データのために[ 153 ]、ウルソデオキシコール酸塩を用いる2件の試験が実施されている。[ 154 ][ 155 ]両研究において、ウルソデオキシコール酸塩は十二指腸ポリープに対する有意な化学予防効果を有していなかった;逆説的に、1件の研究では、セレコキシブと併用するウルソデオキシコール酸塩はFAP患者においてポリープの密度を増進させたようである。

複数の報告で、ロフェコキシブおよびセレコキシブを投与中の患者における心臓関連イベントの増加が実証されたため[ 156 ][ 157 ][ 158 ]、同種の薬物のFAP患者および一般集団への長期使用が安全かどうかは不明である。また、これらの試験は、短期試験(6ヵ月)であったことから、現在のところCOX-2阻害薬投与中のFAP患者における心イベントについての長期的な臨床情報はない。

証拠レベル(セレコキシブ):1b

1件のコホート研究によって、FAPにおけるスリンダク治療で結腸腺腫および直腸腺腫の退縮が明らかにされている。この研究で報告される結果には、主要な関心事である大腸がんの発生率という臨床転帰の代替指標として、ポリープの数ならびに大きさが用いられた。[ 159 ]

証拠レベル(スリンダク):1b

Apcmin/+マウスにおける小分子上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬および低用量スリンダクの前臨床研究で腸腺腫の発生が87%減少し[ 160 ]、EGFR阻害薬にFAP患者における十二指腸ポリープを抑制する可能性があることが示唆された。十二指腸ポリープを生じたFAPまたはAFAP患者を対象にした6ヵ月間の二重盲検ランダム化プラセボ対照試験で、プラセボとの比較でスリンダク1日2回150mg、およびエルロチニブ1日1回75mgの有効性が検討された。[ 161 ]FAPまたはAFAPの患者92人が試験薬またはプラセボの投与にランダムに割り付けられ、近位十二指腸の10cmの区域におけるポリープ径の合計およびポリープ数の変化を検討するために治療の前後で上部内視鏡検査を受けた。この試験は主要エンドポイントが満たされたために早期に終了された。ITT(intent-to-treat)解析から、スリンダク/エルロチニブ群では十二指腸ポリープ負荷(径の合計)が中央値で8.5mm減少したのに対し、プラセボ群では8mm増加したことが示された(P < 0.001)。グレード1およびグレード2の有害事象の発生率は治療群の方がプラセボ群より有意に高かった:治療群では60.9%がざ瘡様の発疹を、32.6%が口腔粘膜炎を生じた;プラセボ群では19.6%がざ瘡様の発疹を、10.9%が口腔粘膜炎を生じた。FAP患者82人を対象とした2018年の試験では、スリンダク(150mg、1日2回)およびエルロチニブ(75mg、1日1回)による併用療法によって、プラセボと比較した場合、6カ月間の治療後に大腸ポリープ負荷が有意に低下したことが(69.4%)明らかにされた(95%CI、28.8%-109.2%;P=0.009)。P = .009).[ 162 ]全大腸を有する患者と直腸嚢または直腸のみを有する患者の両方でポリープ負荷の減少が認められた。しかしながら、スリンダクが下部消化管で効果的であることが証明されていることを考慮すると、エルロチニブがこの減少にどの程度寄与したかは不明である。

これまでのFAP患者の十二指腸ポリープに対するスリンダクおよびセレコキシブのわずかな効果[ 147 ][ 159 ]、およびApcmin/+マウスにおける腸腺腫発生に対するEGFRの遺伝的阻害の劇的な効果[ 163 ]に基づけば、これらの試験の成功の原因はエルロチニブにある可能性が高い。進行中の臨床試験(NCT02961374)で、より低用量のエルロチニブ単独でFAPおよびAFAP患者における十二指腸ポリープ負荷を有意に低下させるのに十分であるかどうかが検討されている。

証拠レベル(スリンダク + エルロチニブ):1b

結腸外腫瘍の管理

APC遺伝子に生殖細胞病原性多様体を有する患者は、デスモイド腫瘍、胃腫瘍、十二指腸がん、小腸がん、肝芽腫、甲状腺がん、脳腫瘍など、他の種類の悪性腫瘍のリスクが高い。以下では、これらの結腸外腫瘍の管理について記述する。

デスモイド腫瘍

FAPにおけるデスモイド腫瘍の管理は困難が予想され、その予防努力は複雑になりうる。デスモイド腫瘍の標準治療として受け入れられている治療法は存在しない。デスモイド腫瘍の管理という点では、複数の医学的治療をもってしても成功が得られていない。治療法のなかでは、抗エストロゲン薬、NSAID、化学療法、放射線療法などが用いられてきた。いくつかの研究で、ラロキシフェン単独、スリンダクと併用するタモキシフェンまたはラロキシフェン、およびピルフェニドン単独の使用が評価されている。[ 164 ][ 165 ][ 166 ]

腹腔内デスモイド腫瘍がみられ、かつ/または他の医学的治療への反応が不良で、デスモイド腫瘍組織にエストロゲンα受容体の発現が認められた患者13人が、120mg/日の用量で投与するラロキシフェンのプロスペクティブ研究に含められた。[ 164 ]患者のうち6人は、ラロキシフェンによる治療の前にタモキシフェンまたはスリンダクの投与を受けており、7人の患者は未治療であった。腹腔内デスモイド腫瘍の患者13人はすべて、治療開始後7~35ヵ月で部分奏効または完全奏効を示し、ほとんどのデスモイド腫瘍は治療後4.7ヵ月(±1.8ヵ月)でサイズが縮小した。デスモイドプラーク(desmoid plaques)のほか、別の病変を有する患者において反応がみられた。研究の限界としては、サンプルサイズが小さいこと、および反応の臨床評価がすべての患者で一貫していないことなどが挙げられる。ラロキシフェンを受けているエストロゲンα受容体を発現していないデスモイド腫瘍の患者とその治療成績に関して、およびこの潜在的な治療によりどの患者が利益を得られるのかに関して、いくつかの問題が依然として残る。

FAP関連デスモイド腫瘍を有し、スリンダク300mg/日と併用してタモキシフェン120mg/日またはラロキシフェン120mg/日で治療された患者13人の第2の研究では、10人の患者が6ヵ月以上疾患の安定(n = 6)または部分・完全奏効(n = 4)を示し、3人の患者では30ヵ月以上にわたって疾患の安定が得られたことが報告された。[ 165 ]これらの結果から、これらの薬物の併用はデスモイド腫瘍の増殖を遅らせるのに有効であるということが示唆されている。しかしながら、デスモイド腫瘍の自然経過は多様であり、自然退縮するものも、増殖速度が定まらないものもある。

第3の研究では、FAP関連デスモイド腫瘍に対してピルフェニドンでの治療が2年間行われた患者14人で雑多な結果が報告された。[ 166 ]この研究では、退縮がみられた患者、疾患増悪がみられた患者、および疾患が安定していた患者が認められた。

FAP患者のデスモイド腫瘍を治療するためにメシル酸イマチニブを使用し、ある程度の成功を収めた事例の報告がある。[ 167 ][ 168 ]ニロチニブは、デスモイド腫瘍のある患者でイマチニブによる治療が失敗した後にデスモイド腫瘍の増殖を安定させる作用が実証されている。[ 169 ]

証拠レベル:4

デスモイド腫瘍の治療におけるチロシンキナーゼ阻害薬ソラフェニブの有益性は、切除不能で進行性のまたは症状のあるデスモイド腫瘍の患者87人を対象とした第III相ランダム化試験において、ソラフェニブ(400mg/日)とプラセボの比較により実証された。[ 170 ]試験でプラセボ群の治療を受けていた患者に疾患の増悪がみられた場合は、ソラフェニブ群へのクロスオーバーが許容された。客観的奏効はソラフェニブ群の患者49人中16人(33%)に確認された一方で、プラセボ治療を受けた患者では35人中7人(20%)であった。さらに2年無増悪生存(PFS)率は、プラセボ群(36%)よりもソラフェニブ群(81%)で有意に高く、増悪または死亡のハザード比は0.13(95%CI、0.05–0.31;P < 0.001)であった。頻繁に報告された有害事象はグレード1またはグレード2の発疹(73%)、疲労(67%)、高血圧(55%)、下痢(51%)であった。比較的良好な毒性プロファイルにもかかわらず、患者の約20%が毒性のためにソラフェニブを中止したことから、有害事象を治療するために適切な投与延期と中断を行うことの重要性が強調される。

証拠レベル:1

合併症発生率と再発率が高いことから、腹腔内デスモイド腫瘍の治療では一般に外科的切除は推奨されない。ある病院での経験に関するレビューでは、腹腔内デスモイドへの外科手術の結果はそれまでに考えられていたものよりも良好となりうることが示唆された。[ 171 ][ 172 ]ただし外科手術の結果に関するデータを評価する上では、対象の選択の問題がきわめて重要となる。[ 171 ]腹壁デスモイド腫瘍は外科的切除により治療可能であるが、再発率が高い。

胃の腫瘍

胃腺腫に対する治療法は明らかになっていない。現在、唯一の利用可能な研究であるレトロスペクティブ・ケースシリーズでは、FAP患者における胃腺がんの有病率は比較的低いことが指摘されている。[ 173 ][ 174 ]最近になって、胃腺がんの発生率の上昇が西洋のFAPデータベースで確認され[ 69 ]、FAPにおける胃腫瘍発生の管理に対して何らかの変更が適切となりうることが示唆される。あるグループは胃腺腫の管理法として内視鏡的ポリープ切除術を推奨している。[ 69 ]胃の腺腫の管理は、腺腫の大きさおよび異形成の程度によって個別に考慮すべきである。

証拠レベル:5

十二指腸/小腸腫瘍

FAP患者では25~30歳の間に側視型十二指腸鏡検査を含めてベースラインの上部内視鏡検査が典型的に実施される。[ 67 ]その後の内視鏡検査を実施する間隔は、その前の内視鏡検査の所見(しばしば、Spigelman病期に基づく)に応じて異なる。推奨される間隔は専門家の意見に基づくが、0~II期の疾患に対する比較的長くとられた間隔は、オランダ/スカンジナビアの十二指腸サーベイランス試験(表6を参照のこと)で引き出された自然史のデータに部分的に基づいている。[ 20 ]

Spigelman分類の主な利点は、この分野の医療関係者がこの分類法を長年利用して精通していることで、研究間の転帰を比較する上で妥当な標準化が可能なことである。[ 63 ][ 175 ]しかしながら、Spigelman分類を適用する場合には、以下の制限がある:

表6.Spigelman病期により推奨されるスクリーニングの間隔と介入法
Spigelman病期 NCCN(2020) ESMO(2013)
ESMO = European Society for Medical Oncology;NCCN = National Comprehensive Cancer Network。
Spigelman病期のIV期疾患における外科的切除の使用に関する追加の情報については、下記を参照のこと。
0(ポリープなし) 4年ごとの内視鏡検査 規定なし
I 2~3年ごとの内視鏡検査 5年ごとの内視鏡検査
II 1~3年ごとの内視鏡検査 3年ごとの内視鏡検査
III 6~12ヵ月ごとの内視鏡検査 1~2年ごとの内視鏡検査
IV 外科的評価 6~12ヵ月ごとの内視鏡検査
十二指腸乳頭に病変が見られる場合は、粘膜完全切除または十二指腸切除、もしくはWhipple法
3~6ヵ月ごとの専門医による内視鏡サーベイランス 手術の選択肢は、ポリープ切除術、膵臓温存十二指腸切除術、膵頭十二指腸切除術(Whipple法)など

北欧諸国およびオランダのFAP患者を対象に十二指腸腺腫を長期間サーベイランスした結果、FAP患者において十二指腸がんの有意なリスクが明らかにされた。[ 179 ]プロトコルに従って、1990年から2000年まで2年ごとに正面像の内視鏡検査が実施された。その後、患者は国際的なガイドラインに従ったサーベイランスで追跡された。研究群には、内視鏡検査を2回以上受けた患者304人中261人(86%)が含められた。追跡期間中央値は14年(範囲、9~17年)であった。十二指腸腺腫症の生涯リスクは88%であった。44%の患者では時間の経過とともにSpigelman病期が悪化した一方、12%は改善し、34%は変化が認められなかった。20人の患者(7%)が年齢中央値56歳(範囲、44~82歳)で十二指腸がんを発症した。累積がん発生率は75歳で18%(95%CI、8%-28%)であった。症状が認められるがんを有した患者の生存は、サーベイランスのための内視鏡検査で診断されたがん患者よりも不良であった。

証拠レベル(十二指腸/小腸腫瘍のスクリーニング):3

ポリポーシスの程度をはじめ、ポリープ以外の疾病の合併、患者の意向、そして十分な訓練を積んだ医師がいるかどうかなど多くの要素によって、ポリープの処置に外科的治療か内視鏡的治療のどちらが選択されるかが決まる。大きな、または組織学的に進行した腺腫の内視鏡的切除術または焼灼術(ablation)は十二指腸腺がん発生の短期リスクの低下に安全で、有効と思われる[ 80 ][ 81 ][ 180 ];しかし、腺腫の内視鏡的切除の処置を受けた患者には、十二指腸内に腺腫が再発するリスクがかなり残る。[ 176 ]腺がんリスクを低下させる最も根治的な手技は、膨大部と十二指腸の外科的切除であるが、これらの手技はまた、内視鏡的治療を実施する以上に、治療に伴う罹病率および死亡率も高い。十二指腸切開術および十二指腸ポリープの局所切除または粘膜切除が報告されているが、これらの手技ではその後例外なくポリープの再発がみられている。[ 181 ]FAPおよびSpigelman病期がIII期またはIV期疾患で根治的手術を受けた患者47人を対象としたシリーズにおいて、局所再発率は平均追跡期間44ヵ月の時点で9%と報告された。この局所再発率は、同じ研究の内視鏡または手術によるどの局所アプローチよりも劇的に低かった。[ 176 ]膵頭十二指腸切除と膵臓温存十二指腸切除術は、膨大部周囲の腺がん発生リスクを実質的に低下させると考えられる適切な外科的治療である。[ 177 ][ 181 ][ 182 ][ 183 ]そのような外科手術の選択が考えられる場合、大半の患者はIRAとともに結腸亜全摘術を受けるか、またはIPAAとともに結腸全摘除術を受けることになるため、この患者群では幽門の温存が特に有益である。北欧の研究[ 20 ]や他の研究[ 184 ][ 185 ]で指摘されているように、十二指腸腺腫患者のほとんどはがんを発症せず、内視鏡検査による経過観察が可能である。しかしながら、進行性腺腫(Spigelman病期がIII期またはIV期の疾患)を有する患者は一般に、ポリープの内視鏡的または外科的治療を必要とする。FAP患者の十二指腸腺腫に対する化学的予防研究が進められているため、将来は従来のものに代わる戦略を提供できるだろう。(詳しい情報については、本要約の化学予防のセクションを参照のこと。)

比較的大きなおよび/または扁平な十二指腸腺腫に対する内視鏡的アプローチは、膨大部に病変が見られるかどうかによって異なる。エピネフリンおよび/またはインジゴカルミンなどの色素を併用する、または併用しない生理食塩水の粘膜下注入後の内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、膨大部以外の病変に使用できる。膨大部病変には、胆管または膵管に病変の証拠がないか、超音波内視鏡検査で評価するなど、さらに慎重なケアが必要である。膵管のステント術は一般に、狭窄と膵炎を予防するために実施される。ステントは1~4週間後に内視鏡で除去する必要がある。膨大部は管の開口部で接続しているため、典型的には生理食塩水の注入を行っても均一には持ち上げ(lift)られず、したがって一般的に注入は利用されない。EMRまたは膨大部切除術を検討する場合には常に、豊富な経験と優れた判断力が必要であり、病変を治療しない場合の自然史を注意深く検討し、内視鏡による積極的な介入を行っても腺腫の再発率が高いことを理解しておかなければならない。[ 81 ][ 176 ][ 177 ][ 182 ][ 186 ][ 187 ][ 188 ][ 189 ]Spigelman病期がIV期の疾患に対して、文献は一様に十二指腸切除術を支持している。Spigelman病期がII期およびIII期の疾患については、認められる最も不良な1つまたは2つの病変に一定して焦点を当てる内視鏡的治療が役割を果たしている。

外科的切除の検討に対する躊躇は、手術に関係する短期の罹病率および死亡率の高さや長期の合併症と関係がある。こうした懸念は強調されすぎている可能性があるが[ 176 ][ 177 ][ 183 ][ 186 ][ 190 ][ 191 ][ 192 ][ 193 ][ 194 ][ 195 ][ 196 ]、外科的介入の恐怖が積極的でいくぶん助言が不十分な内視鏡的介入につながっている可能性がある。状況によっては、膨大部および/または他の十二指腸腺腫の内視鏡的切除術は内視鏡による手技では完全にまたは安全に行えず、十二指腸切除術は短腸症候群のリスクなしに実施できず、あるいは腸間膜線維症のために全く実施できないことがある。このような症例では、経十二指腸的膨大部切除術/ポリープ切除術が実施できる。しかしながら、この手術の局所再発リスクは高く、内視鏡的治療の再発リスクとほぼ同じである。

証拠レベル(十二指腸/小腸腫瘍の治療):4

その他の腫瘍

証拠レベル1の証拠は不足しているが、統一見解ではFAP患者において甲状腺乳頭がんがないかのスクリーニングを行うため10代後半に開始する年1回の甲状腺検査を行い、結果が正常であれば2~5年毎に超音波検査を繰り返すことが推奨されている。[ 122 ][ 197 ][ 198 ]

証拠レベル(甲状腺がんの超音波検査によるスクリーニング):4

証拠レベル1の証拠は不足しているが、コンセンサス・パネルでは、FAPの素因を有する小児において生後5年間、3~6ヵ月ごとの肝臓触診、腹部超音波検査、および血清αフェトプロテインの測定を検討することを提案している。[ 122 ][ 199 ]5歳以降にスクリーニングを継続する必要はない。

証拠レベル(肝芽腫または副腎がんのスクリーニング):5

髄芽腫は高悪性度の腫瘍であり、通常は診断前の6ヵ月未満の間しか症状がみられない。無症状の患者に対する年1回のサーベイランスでは十分とはいえない場合がある。したがって、定期的なCTまたは磁気共鳴画像法によるサーベイランスを提唱することはできない。FAP患者の半数以上においてポリポーシスの診断前に脳腫瘍が存在していることから、ポリポーシスはまだ認められないが、脳腫瘍を示唆する徴候や症状がみられるFAP家系員には、神経画像検査による評価を実施すべきである。家族内集積が発生しているために家系員の1人がすでに脳腫瘍を有しているFAP家系においては、入念な評価も必要となる。そうしたFAP関連脳腫瘍がみられる家系の40%では、2人の家系員が罹患していた。[ 102 ]

Attenuated 家族性大腸腺腫症(AFAP)

臨床表現型

AFAPは1990年に、腺腫の発生数が多様であったある大規模家系において、臨床で初めて記述された。この家系における腺腫の平均個数は30個であったが、個々の発生数は数個から数百個までの広範囲に及んでいた。[ 200 ]AFAP患者の管理には、腺腫が主として右側性に発生する可能性があることから、S状結腸内視鏡検査ではなく大腸内視鏡検査の使用が推奨されている。[ 201 ]AFAPにおける腺腫は20歳代半ばから後半に形成されると考えられている。[ 57 ]古典的FAPと同様に、AFAPを有する人では大腸がんのリスクが高い;しかしながら、診断時の平均年齢は古典的FAPより高く、56歳であった。[ 105 ][ 106 ][ 202 ]罹患した家系員はきわめて少数の同時性ポリープを伴う大腸がんを発症していた。[ 2 ]古典的FAPと類似した結腸外症状がAFAPにおいても発現する。そうした症状としては、上部消化管ポリープ(FGP、十二指腸腺腫、および十二指腸腺がん)、骨腫、類表皮嚢胞、デスモイド腫瘍などが挙げられる。[ 57 ]AFAPを引き起こすAPC病原性多様体が特定の位置にあるため、典型的にこれらの患者ではCHRPE病変がみられない。

AFAPの遺伝学

AFAPは、APC病原性多様体の特定のサブセットと関連している。AFAPを引き起こす位置特異的なAPC病原性多様体について、以下の3つのグループが特徴付けられている: [ 105 ][ 106 ][ 107 ][ 108 ] [ 203 ][ 204 ]

同じように罹患した近親者の家族歴が認められない場合、鑑別診断には、AFAP(MAPを含む)、リンチ症候群、BMMRD、DNAポリメラーゼ校正サブユニット(POLD1またはPOLE)の生殖細胞多様体、または他には分類されない散発性または遺伝性の問題が挙げられる。家族歴の慎重な調査でAFAPまたはリンチ症候群が示される可能性がある。

APCの検査は、AFAPの疑いがある患者の評価に重要な要素である。[ 201 ]生殖細胞系のAPC遺伝子の病原性多様体検査が、AFAPが疑われる個人において陰性の場合、MUTYHPOLEPOLD1の病原性多様体を調べる遺伝子検査の実施が必要となる場合がある。[ 116 ]

臨床管理

年齢に応じた大腸内視鏡検査で腺腫数が異常にまたは容認できないほど多いことが分かった患者では、鑑別診断が困難である。[ 206 ][ 207 ] AFAPにおけるリスク低減のための結腸切除術の役割とタイミングについては意見の分かれるところである。[ 208 ]

表7では、AFAPのサーベイランスに関して、異なる専門家学会による臨床診療ガイドラインを要約している。

表7.Attenuated 家族性大腸腺腫症(AFAP)の結腸サーベイランスのための臨床診療ガイドライン
団体 疾患 スクリーニング法 スクリーニング頻度 スクリーニング開始年齢 解説
IPAA = 回腸嚢肛門吻合術;IRA = 回腸直腸吻合術;NCCN = National Comprehensive Cancer Network。
aポリープ切除機能を備えた大腸内視鏡検査を使用してポリープを効果的に除去できるように、それぞれの直径が1cm未満の腺腫が20個未満で、組織学的に進行していないこと。
Europe Mallorca Group(2008)[ 209 ] AFAP 大腸内視鏡検査 2年ごと;腺腫が検出された場合は1年ごと 18~20歳  
NCCN(2020)[ 122 ] 腺腫の程度が低いAFAPの個人歴a 大腸内視鏡検査 1~2年ごと   患者がIRAによる結腸切除術を受けた場合は、ポリープ量に応じて6~12ヵ月ごとの内視鏡的評価。
ポリープ負荷が悪化している選択された患者において、術後に残存する直腸または嚢の管理を容易にするために化学予防を考慮してもよい。
NCCN(2020)[ 122 ] 腺腫の程度が内視鏡的に対処できないAFAPの個人歴 該当せず 該当せず 該当せず IRAによる結腸切除が望ましい。高密度直腸ポリポーシスであれば、IPAAによる直腸結腸切除を検討。
NCCN(2020)[ 122 ] リスクを有し症状がみられない家系員;家族性病原性多様体が既知;APC病原性多様体状態が不明または陽性 大腸内視鏡検査 APC陽性の場合は1~2年ごと;不明な場合は2年ごと 10代後半 APC病原性多様体状態が検査されていなければ、遺伝子検査の利点を話し合う。

MUTYH関連ポリポーシス(MAP)

MAPは、Mut Y homolog遺伝子の病原性多様体に起因し、常染色体劣性様式で遺伝するポリポーシス症候群である。MUTYHとして知られるMut Y homolog遺伝子は、もともとMYHと呼ばれていたが、これがミオシン重鎖遺伝子に指定されていたため、その後に変更された。MUTYHは、染色体1p34.3-32.1に位置する。[ 210 ]MUTYHにコードされる蛋白は、塩基除去修復グリコシラーゼであり、酸化損傷の最も一般的な形式の1つを修復する。MUTYHには、100以上の独特な塩基配列多様体が報告されている(Leiden Open Variation Database)。MUTYH病原性多様体については、民族分化を伴う創始者病原性多様体が仮定されている。北欧系の白人集団では、Y179CおよびG396D(以前はY165CおよびG382Dとして知られていた)の2つの主要な多様体がMAP患者における両アレル性病原性多様体の70%を占めており、これらの患者の90%がこのような病原性多様体を1つ以上保有している。[ 211 ]発見されているこの他の原因となる多様体としては、P405L(以前はP391Lとして知られていた)(オランダ)[ 212 ][ 213 ]、E480X(インド)[ 214 ]、Y104X(パキスタン)[ 215 ]、1395delGGA(イタリア)[ 216 ][ 217 ]、1186-1187insGG(ポルトガル)[ 218 ]、およびp.A359V(日本および韓国)が挙げられる。[ 219 ][ 220 ][ 221 ]

MUTYH遺伝子は、多発性結腸腺腫および大腸がんが認められるものの、APC病原性多様体がみられない3人の同胞において2002年に最初にポリポーシスと関連付けられた。[ 111 ]MAPは広範な臨床スペクトラムを有する。MAPの臨床像は最も頻繁にはAFAPに類似するが、表現型が古典的FAPおよびリンチ症候群に類似した個人にもMAPが報告されている。[ 222 ]MAP患者は、APCに病原性多様体が認められる患者よりも高齢での腺腫の発生が少ない傾向にあるが[ 223 ][ 224 ]、大腸がんのリスクがまだ高い(35~75%)。[ 7 ][ 225 ][ 226 ]7,225人を対象とした大腸腺腫の程度に関する2012年の研究では、両アレル性MUTYH病原性多様体の保有率が10~19の腺腫を有する患者で4%(95%CI、3%-5%)、20~99の腺腫を有する患者で7%(95%CI、6%-8%)、100~999の腺腫を有する患者で7%(95%CI、6%-8%)であることが報告された。[ 115 ]この広範な臨床症状は、MUTYH遺伝子がホモ接合性でも、複合型のヘテロ接合性でも疾患を引き起こす能力を有する結果である。複数のFAP登録からの諸研究によると、FAPの表現型を有しているが検出可能なAPC生殖細胞病原性多様体は認められない患者の約7~19%に、MUTYH遺伝子の両アレル性多様体が認められる。[ 7 ][ 214 ][ 224 ][ 227 ]

MAP患者では、腺腫、鋸歯状腺腫、および過形成性ポリープがみられることがある。[ 228 ]大腸がんは発症時に右側性および同時性に発生する傾向があり、散発性大腸がんよりも予後良好なようである。[ 210 ]MAPに対する臨床管理ガイドラインでは、18~30歳で開始する大腸内視鏡検査によるサーベイランスを年1回から3年ごとに繰り返し[ 122 ][ 209 ][ 225 ]、上部内視鏡によるサーベイランスを25~30歳で開始する。[ 209 ](MAP患者を対象とした結腸サーベイランスについて利用可能な臨床診療ガイドラインに関する詳しい情報については、表8を参照のこと。)推奨される上部内視鏡によるサーベイランスの間隔は、Spigelman病期に応じた病変量に基づくことができる。[ 209 ]MUTYH関連ポリポーシス患者では、全体のポリープ負荷に応じて、回腸直腸吻合術または結腸亜全摘術とともに行う結腸全摘除術が必要な場合がある。[ 225 ][ 229 ]

MAPは、これまでに報告された中で唯一知られる両アレル性(劣性)腺腫がん素因症候群であるが、MMR遺伝子が関与する小児腫瘍で、両アレル性症例が認められた例がある。(詳しい情報については、本要約のリンチ症候群のセクションの両アレル性ミスマッチ修復欠損のセクションを参照のこと。)

表8では、両アレル性MAPの結腸サーベイランスに関して、異なる専門家学会による臨床診療ガイドラインを要約している。

表8.MUTYH関連ポリポーシス(MAP)の結腸サーベイランスのための臨床診療ガイドライン
団体 疾患 スクリーニング法 スクリーニング頻度 スクリーニング開始年齢 解説
CRC = 大腸がん;FDR = 第一度近親者;IPAA = 回腸嚢肛門吻合術;IRA = 回腸直腸吻合術;NCCN = National Comprehensive Cancer Network;SDR = 第二度近親者。
aポリープ切除機能を備えた大腸内視鏡検査を使用してポリープを効果的に除去できるように、それぞれの直径が1cm未満の腺腫が20個未満で、組織学的に進行していないこと。
Europe Mallorca Group(2008)[ 209 ] MUTYH病原性多様体キャリア 大腸内視鏡検査 2年ごと 18~20歳  
Nieuwenhuis et al.(2012) [ 225 ] MUTYH病原性多様体キャリア 大腸内視鏡検査 1~2年ごと    
NCCN(2020)[ 122 ] 腺腫の程度が低いMAPの個人歴a 大腸内視鏡検査 1~2年ごと   患者がIRAによる結腸切除術を受けた場合は、ポリープ量に応じて6~12ヵ月ごとの内視鏡的評価。
ポリープ負荷が悪化している選択された患者において、術後に残存する直腸または嚢の管理を容易にするために化学予防を考慮してもよい。
NCCN(2020)[ 122 ] 腺腫の程度が内視鏡的に対処できないMAPの個人歴 該当せず 該当せず 該当せず IRAによる結腸切除が望ましい。高密度直腸ポリポーシスであれば、IPAAによる直腸結腸切除を検討。患者がIRAによる結腸切除術を受けた場合は、ポリープ量に応じて6~12ヵ月ごとの直腸の内視鏡的評価。
NCCN(2020)[ 122 ] リスクを有し症状がみられない家系員;家族性病原性多様体が既知;MUTYH病原性多様体状態が不明または陽性(両アレル性) 大腸内視鏡検査 1~2年ごと 25~30歳 単一のMUTYH病原性多様体について陽性であれば、40歳か、該当すればFDRの大腸がん診断時年齢の10歳若い時点から大腸内視鏡検査を開始して5年ごとに繰り返す。以下の状況でスクリーニングの推奨に関する情報を得るには、エビデンスが必要である:MUTYH多様体が存在し、大腸がんのSDRがいる場合;および大腸がんの家族歴がなく、大腸がんに罹患していない片アレル性のMUTYHキャリア。

MAP患者では、胃がん、小腸がん、子宮内膜がん、肝がん、卵巣がん、膀胱がん、甲状腺がん、および皮膚がん(黒色腫、扁平上皮がん、基底細胞がん)など、多くの結腸以外のがんが報告されている。[ 230 ][ 231 ]また、少数のMAP患者において、脂肪腫、先天性網膜色素上皮細胞肥大、骨腫、デスモイド腫瘍などの非がん性の結腸外症状が報告されている。[ 216 ][ 224 ][ 231 ][ 232 ]女性のMAP患者では、乳がんのリスクが高い。[ 233 ]MAPのこれらの結腸外症状は、FAP、AFAP、またはリンチ症候群におけるほどの頻度では発生しないようである。[ 234 ][ 235 ]

MAPにおける十二指腸ポリープ

FAPと同様に、MAPの個人にはしばしば十二指腸ポリープがみられ、十二指腸がんの発症リスクがある。FAPと比較してMAPの特定が比較的最近であったことを考慮すると、MAPにおける十二指腸ポリープの発生率および十二指腸がんのリスクは、ほとんど確定していない。少規模なケースシリーズでは、MAPにおける十二指腸ポリープの発生率が約30%であり、FAPより大幅に低いことが示唆されている。レジストリーをベースとした研究で、十二指腸ポリープの有病率は17%であった;しかしながら、この研究で上部消化管(GI)内視鏡検査を受けた人はわずか50%であったことから、十二指腸ポリープの発生率が過小評価されている可能性が高い。十二指腸がんの生涯リスクは4%と推定された。[ 231 ]

英国およびオランダからのレジストリー研究では、定期的な十二指腸サーベイランスを受けているMAP患者の集団で十二指腸ポリープおよび十二指腸がんの発生率が検討された。[ 236 ]患者92人のうち、31人(34%)で十二指腸ポリープの証拠が得られた。十二指腸腺腫検出時の年齢中央値は50歳であり、患者の65%では、十二指腸腺腫がベースラインの内視鏡検査で診断された。84%の患者は、ポリープの初回切除時のSpiegelman病期がI期またはII期のポリポーシスであり、IV期のポリポーシス患者はおらず、高度の異形成も検出されなかった。その後のサーベイランスにおいて、Spiegelman病期でIV期のポリポーシスに進行した患者は2人のみで、それぞれ3.6年後および7.0年後であった。さらに膨大部が温存されているとみられ、この2人のみが膨大部に異形成を認めない小さいポリープを有していた。これらのレジストリーで上部消化管サーベイランスプログラムに登録された患者において、がんは検出されなかった。MAPの2人は、初めての上部消化管内視鏡検査時の年齢が83歳および63歳で、それぞれ膨大部および十二指腸のがんと診断された。したがって、MAPにおける十二指腸ポリープは、FAPと比較して有病率が低いと考えられ、高齢でみられる。これらの結果に基づいて著者らは、MAPにおける上部消化管内視鏡によるスクリーニングを35歳で開始するように提案している。

MAPは常染色体劣性遺伝様式であることから、罹患者の同胞も両アレル性のMUTYH病原性多様体を保有する確率が25%あり、遺伝子検査を受診すべきである。同様に、罹患患者のパートナーに対しても、子供のリスクを評価できるように検査が提供されることがある。

片アレル性のMUTYH病原性多様体の臨床的表現型では、発生率および関連する臨床的表現型の特徴が十分に明らかにされておらず、ポリポーシスと大腸がんに対する感受性における役割については依然として不明である。一般集団の約1~2%がMUTYHの病原性多様体を有する。[ 7 ][ 111 ][ 224 ]2011年のメタアナリシスにより、片アレル性のMUTYH病原性多様体キャリアは、大腸がんのリスクがわずかに高い(オッズ比[OR]、1.15;95%CI、0.98-1.36)ことが明らかになった;しかしながら、片アレル性の病原性多様体キャリアがまれなことを考えると、大腸がん症例全体に占める割合はごくわずかである。[ 237 ]MUTYH病原性多様体を有する大腸がんの264症例の近親者9,504人のうち、2,332のヘテロ接合体を対象とした大規模な研究では、70歳での大腸がんリスクは、家族歴にかかわらず男性で7.2%、女性で5.6%であった。50歳前に大腸がんと診断されたFDRを有する人で、70歳でのリスクは、男性で12.5%、女性で10%であった。[ 226 ]この研究から得られるキャリア状態の大多数が補完されており、遺伝子型に基づいたものではないことから、この研究の解釈には注意が必要である。大腸がんのFDRを有する人のMUTYHヘテロ接合体のリスクは、一般集団より強力なサーベイランスが十分に正当化されるほど高い(ただし、50歳前に大腸がんと診断されたFDRを有する人に対するものと同じ)と著者らは考えた。[ 223 ][ 226 ]

MMR遺伝子はMUTYHと相互作用し、大腸がんリスクを増加させうる。MUTYHとMSH6との関連が報告されている。両蛋白は、塩基除去修復過程でともに相互作用する。ある研究において、大腸がんを有する片アレル性のMUTYH病原性多様体キャリアでは、非キャリアと比較してMSH6病原性多様体が有意に多くみられることが報告された(11.5% vs 0%;P = 0.037)。[ 238 ]しかしながら、ドイツの研究では、これらの知見が再現できなかった。[ 239 ]さらに、より大規模な研究で、MUTYH多様体を伴うMMR病原性多様体キャリアのがんリスクは、MMR病原性多様体のみのキャリアと比較して高くないことが明らかにされた。[ 240 ]

オリゴポリポーシス

オリゴポリポーシス(oligopolyposis)は、ポリープ数または負荷が平均リスクの患者群における一連のスクリーニングでの期待値よりも多いが、FAPの診断に必要とされる量には達していないという臨床像を示すためによく使用される用語である。したがって、ギリシャ語で「少数」を意味するoligo-は、観察者によって異なる事態を指すことがある。この件について共通の見解が得られていないことを認めながらも、National Comprehensive Cancer Network(NCCN)の大腸がん(CRC)スクリーニング委員会は、生涯で集積して10~99個の腺腫が存在している場合、AFAPの診断を検討する価値があると提案している。本稿でオリゴポリポーシスの用語は、付随する何らかの家族歴の有無にかかわらず、内視鏡医に遺伝的感受性の可能性を想定させるほどポリープ数(一般的に腺腫)が多いという状況を示すために用いる。

腺腫を有するオリゴポリポーシスの患者の大半では、既知の素因遺伝子における病原性多様体について評価した場合、基礎にある素因がないことが確認されている。一般的にそうした症例は、たとえ内視鏡的に結腸内のポリープが一掃された状態であっても、腺腫の再発リスクが高い患者の場合と同様に管理される。

生殖細胞APC病原性多様体に起因するAFAPは、オリゴポリポーシスで最も一般的な原因となる可能性があり、原因となる特異的な生殖細胞変化を認めるがんが同定されている。オリゴポリポーシスを認める一部のAFAP症例では、発症年齢が高く、右側結腸の微小腺腫が優性で、左側結腸のポリープが少なく大型であることが多いにもかかわらず、最終的に100を超える腺腫が発生する。家族歴が陽性でAPC病原性多様体が認められる症例は、AFAPという用語が示すように明らかにFAPの多様体である。[ 241 ]しかし、直接の家族歴がなく、腺腫の程度が低い患者では、APC病原性多様体が認められない場合がある。ポリープ数が少ないほど、APC病原性多様体を保有する可能性が低くなる。これらの症例の一部は、両アレル性のMUTYH病原性多様体またはオリゴポリポーシスと関連する他の遺伝子における多様体を有していることが現在知られている。[ 242 ]

関連するDNAポリメラーゼ遺伝子POLEおよびPOLD1の病原性多様体は、オリゴポリポーシス、大腸がん、および子宮内膜がんの家系で報告されており、この疾患は、ポリメラーゼ校正関連ポリポーシス(PPAP)として知られるようになってきている。[ 243 ][ 244 ]10個以上の腺腫を有する60歳未満の患者15人を対象に、全ゲノム配列決定を使用した優れた手法が実施された。患者の何人かについては、近親者が5個以上の腺腫を有し、また全ゲノム配列決定を受けていた可能性があった。検査を受けたすべての患者は大腸がんを患っていたか、大腸がんの第一度近親者(FDR)がいた。APCMUTYH、MMR遺伝子病原性多様体の検査結果は、全員が陰性であった。評価を受けた家系に多く認められた多様体はなかった。しかし1つの家系では、連鎖により共有領域が確立され、その領域において1つの共有多様体が認められ(POLE p.Leu424Val;c.1270C>G)、蛋白の構造と機能に主要な異常が予測された。検証段階では、複数の腺腫の存在が豊富に認められるほぼ4,000の罹患症例を対象に、この多様体についての検査が実施され、約7,000の対照との比較が行われた。その中で、関連のない12症例にL424Vの多様体が認められることが新たに判明し、対照にはこの多様体が存在しなかった。罹患家系では、複数腺腫リスクの遺伝は常染色体優性であると考えられる。

同様に共有多様体についての全ゲノム検査を実施し、さらに連鎖解析による「フィルタリング」を行った結果、POLD1遺伝子に多様体(p.Ser478Asn; c.1433G>A)が同定された。このS478N多様体は、最初に評価された家系のうちの2つにおいて同定され、祖先が共通している証拠を示していた。この検証では、この多様体を有しポリープが認められる患者が1人判明したが、対照ではこの多様体は見つからなかった。体細胞突然変異パターンはPOLE変異体に類似していた。早発型子宮内膜がんが数例みられた。POLE L424V多様体から腺腫とがんが発生するメカニズムは、複製に関連するポリメラーゼ校正の忠実性低下であると考えられる。これが次に塩基置換に関連する多様体を導くと考えられる。その後の研究で、POLE病原性多様体は、オリゴポリポーシスおよび早期発症型大腸がんのまれな原因であることが確認された。[ 245 ]この研究で、APCMUTYH、およびMMR遺伝子における生殖細胞病原性多様体の検査結果は、全員が陰性であった。POLE多様体L424Vは、大腸ポリポーシスおよび早期発症型大腸がんの発端者485人のうち3人にみられた。腫瘍はマイクロサテライト不安定性(MSI)を示し、発端者の3人中2人で、1つまたは複数のMMR蛋白が欠乏していた。MMR遺伝子の体細胞変異は、POLE欠乏による高変異性の結果である可能性があり、これらの2症例で検出された。Cancer Genome Atlas Networkは、大腸がん276例の広範な塩基配列決定解析を実施し、POLE遺伝子内の体細胞変異の存在は、MSIを認める大腸がんにおける存在よりも変異量がかなり大きい超変異表現型と関連していることを明らかにした。そのため、ポリメラーゼ多様体では、腫瘍内にウルトラ超変異表現型が生じるとみられる。[ 246 ]

48家系の多発性結腸腺腫を有する51人の個人において全エクソーム配列決定を用いた検査により、血縁関係にない3家系の7人の罹患者に塩基除去修復遺伝子、NTHL1の生殖細胞系列ホモ接合性ナンセンス病原性多様体が同定された。[ 247 ]これらの個人は大腸がん、複数の腺腫(8~50)を有し(いずれも過形成性または鋸歯状ではなかった)、3人の罹患女性では子宮内膜がんまたは複雑型子宮内膜増殖症のいずれかが認められた。別の2人は十二指腸腺腫または十二指腸がんを発症した。すべての家系が常染色体劣性遺伝を示していた。異なる罹患者の3つのがんおよび5つの腺腫を調査したところ、MSIを示したものはなかった。これらの新生物ではシトシンからチミンへの変換が多く示された。表現型をさらに明確にするには追加の研究が必要である。大腸がんの863家系と大腸がんではない1,600家系を調査したその後の研究で、両アレル性NTHL1病原性多様体と遺伝性大腸がんリスクとの関連が確認された。[ 248 ]現時点で、単一の片アレル性生殖細胞NTHL1病原性多様体を有する人について、がんリスク増加は知られていない。

しばしば腺腫性ポリープおよび過形成性ポリープを含む組織像を特徴とする遺伝性混合ポリポーシスは、少数のアシュケナージユダヤ人家系においてGREM1病原性多様体に関連している。この症候群におけるポリープの数は非常に多様であるが、その範囲はしばしばオリゴポリポーシスと一致する。(詳しい情報については、本要約の遺伝性混合ポリポーシス症候群[HMPS]のセクションを参照のこと。)

NTHL1POLEPOLD1、およびGREM1の病原性多様体検査は、APCおよびMUTYHとともに、商業化されている大腸がん感受性の多重遺伝子(パネル)検査に組み込まれつつある。NTHL1(両アレルキャリアのみ)、POLE、またはPOLD1に生殖細胞病原性多様体を有することが判明した人に対する至適なサーベイランスアプローチに関するデータは少数であるが、大腸がんリスクはリンチ症候群でみられるものと同程度であることが推測され、一部のガイドラインでは、同様に早期かつ高頻度の大腸内視鏡検査によるスクリーニングを推奨している。

他のポリポーシスの組織型により生じるオリゴポリポーシスは、単純な内視鏡的根拠と組織学的根拠から腺腫性ポリポーシスと区別できる。例えば、若年性ポリポーシス症候群(JPS)、PJS、またはPTEN過誤腫腫瘍症候群(コーデン症候群)は、他のより一般的なポリープ組織型(例:腺腫)と同様に、いずれも過誤腫ポリープを含むことが多いオリゴポリポーシスを示す可能性がある。

鋸歯状ポリポーシスも同様に非常に多様な形態で発現されることがある。世界保健機関(WHO)の鋸歯状ポリポーシスの基準(S状結腸の近位に1cm以上のポリープ2個を含む鋸歯状ポリープが5個以上存在するか、鋸歯状ポリポーシスの近親者がいる場合でS状結腸の近位に数を問わずポリープが存在するか、または結腸内に場所を問わず20個を超える鋸歯状ポリープが存在する)については、妥当性が確認されていない。まれに、鋸歯状ポリポーシスの家系が生殖細胞RNF43病原性多様体を有することが同定できるが、鋸歯状ポリポーシスのほとんどの症例で、原因となる遺伝的根拠との関連が認められない。[ 249 ][ 250 ][ 251 ]したがって、そうした患者は遺伝カウンセリングに紹介され、遺伝子検査が考慮されるケースが増加している。リンチ症候群にみられることのある鋸歯状ポリポーシスと鋸歯状ポリープの特徴が少なくともいくつか認められる患者において、MUTYH両アレル性病原性多様体の症例が時折認められている。しかしながら、典型的に鋸歯状ポリポーシスを有する人の生殖細胞評価では明らかにならない。[ 252 ][ 253 ][ 254 ][ 255 ][ 256 ]

2件の非常に小規模なケースシリーズで、過去に小児悪性腫瘍に対して化学療法および放射線療法を受けたことのある人において、さまざまなポリープ組織型のオリゴポリポーシス(例:腺腫、鋸歯状、炎症性、および過誤腫性ポリープ)が報告されている。[ 257 ][ 258 ]この現象は治療関連ポリポーシス(TAP)と呼ばれ、過去の抗腫瘍治療により生じた後天性の非家族性表現型の可能性があり、過去に化学療法および/または放射線療法を受けたことのある人で非家族性オリゴポリポーシスが同定された場合に鑑別診断となる。最近の別の研究で、過去に化学療法および/または放射線療法を受けたことのあるホジキンリンパ腫生存者101人のコホートのうち、6%に鋸歯状ポリポーシス症候群(SPS)のWHO基準を満たすオリゴポリポーシスが同定されたことから、ホジキンリンパ腫生存者は、TAPを示すことがある特に重要な集団である可能性が示唆される。[ 259 ]

リンチ症候群

リンチ症候群は最も一般的な遺伝性大腸がん症候群であり、新たに大腸がんと診断された症例の約3%を占めている。遺伝子EPCAM(epithelial cellular adhesion molecule、以前はTACSTD1として知られていた)に加え、MMR遺伝子MLH1(mutL homolog 1)、MSH2(mutS homolog 2)、MSH6(mutS homolog 6)、およびPMS2(postmeiotic segregation 2)の病原性多様体により引き起こされる常染色体優性疾患であり、EPCAMの欠失はMSH2エピジェネティックサイレンシングを引き起こす。リンチ症候群は、子宮内膜および卵巣の皮脂腺腫およびがん、胃、小腸、尿管および腎盂の移行上皮がん、肝胆道系、膵臓、脳など、いくつかの結腸外症状を発症する素因とも関係している。リンチ症候群関連がんはMSIを示す;そのため、腫瘍検査は家族歴に加えてリンチ症候群の診断で鍵となる要素である。すべての大腸がんに対する普遍的腫瘍検査は、リンチ症候群をスクリーニングして、その結果として生殖細胞遺伝子検査から利益が得られる可能性があるリンチ症候群の個人を特定する戦略として現在推奨されている。リンチ症候群患者では、リスク低減のための手術とともに、頻繁な大腸内視鏡検査などの集中的がんスクリーニングとサーベイランス戦略が中心である。

リンチ症候群の歴史

1913年から1993年にかけて、大腸がんが明らかに多い家系の症例報告が多数報告された。一連のそうした報告が蓄積されるにつれて、次のようなある特有の臨床的特徴が現れてきた:低い年齢での大腸がん発症;同時性(および異時性)大腸腫瘍のリスクが高いこと;病変が右側結腸に優先的に認められること;良好な臨床転帰;および子宮内膜、卵巣、消化管の他の部位、尿路上皮、脳、皮膚(脂腺腫瘍)をはじめとするこの症候群に関連した広範な結腸以外の腫瘍。がん家族症候群および遺伝性非ポリポーシス大腸がんHNPCC)などの用語は、この疾患を記述するために使用された。[ 260 ]

リンチ症候群という用語はHNPCCと置き換えられており、遺伝子的根拠がDNA MMR遺伝子における生殖細胞病原性多様体に関連付けられることが確信される症例に適用される。さらに、HNPCCは、多くの患者がポリープを有しており、多くが大腸がん以外の腫瘍であることから、誤解されやすい。

大腸がん発症の遺伝的素因を有するとみなされた家系の認識が高まるとともに、原因となる病因に関する研究は、1990年のアムステルダム基準の策定につながった。[ 261 ]アムステルダム基準は最初に高リスク家系の特定に使用され、以下のすべてを満たすことが含められた:2世代以上で3人以上の大腸がん症例が認められる、50歳前に診断された者が少なくとも1人はいる、FAPの証拠が認められない。

1987年に、5qの小セグメントの染色体欠失からFAPとこのゲノム領域との遺伝的連鎖が発見され[ 262 ]、そこから1991年にAPC遺伝子が最終的に分離された。[ 263 ]これは、常染色体優性の形式で遺伝し、若い時期にがん発症がみられる大腸がん症例が複数あり、リンチ症候群が疑われる家系を対象とした同様な連鎖の研究につながった。APC遺伝子は、アムステルダム基準を満たす家系で評価されたいくつかの遺伝子(DCCおよびMCCとともに)の1つであったが、リンチ家系で連鎖は確認されなかった。1993年に大規模な家系を対象とした拡大全ゲノム検索により、2番染色体に候補となる感受性遺伝子座が確認された。最初のリンチ症候群関連遺伝子であるMSH2の配列が決定されると、大腸がんの体細胞変異パターンから、MMRの遺伝子ファミリーが関与している可能性が高いことが明らかになった。その後、MLH1MSH6PMS2など、追加のMMR遺伝子がリンチ症候群と関連付けられた。現在リンチ症候群は、これらのDNA MMR遺伝子の1つにおける生殖細胞多様体により引き起こされる遺伝性疾患とされており、大腸がんの他の家族内集積とは区別される。

2009年に、EPCAM遺伝子の生殖細胞欠失がMSH2における生殖細胞病原性多様体を認めないMSH2不活性化の別の原因として特定された。EPCAMにおける多様体は、MSH2プロモーターの高メチル化につながった。そのため、DNA MMR遺伝子ではないEPCAMもリンチ症候群に関与しており、現在では前述のDNA MMR遺伝子とともにリスクのある患者を対象にルーチンで検査される。

リンチ症候群家系の定義

大腸がんが圧倒的に多く遺伝的素因の可能性がある家系は、最初に若年発症型大腸がんの個人歴とともに、家族歴基準を基にリンチ症候群家系に分類された。分子的腫瘍診断検査の出現およびリンチ症候群と関連する生殖細胞変化の発見に伴い、この臨床基準は、性能が劣るために、現在は支持が低下している。しかしながら、これらの使用、つまりリンチ症候群予測モデルにより得られるリスク推定値は、がんの個人歴を認めないが、リンチ症候群が示唆される家族歴がある個人、または大腸がんであるが、分子的診断検査用の腫瘍が得られなかった同様な個人に対して適用できる可能性がある。(詳しい情報については、本要約のリンチ症候群のスクリーニングのための普遍的腫瘍検査およびMMR遺伝子の病原性多様体の可能性を予想する臨床リスク評価モデルのセクションを参照のこと。)

リンチ症候群家系を定義するための最初の基準は、1990年にアムステルダムで行われたInternational Collaborative Groupの会議で確立されたもので、アムステルダム基準として知られている。[ 261 ]これらの研究基準は、家族性大腸がんの診断に限定されていた。1999年にアムステルダム基準が改訂され、いくつかの結腸外のがん、主に子宮内膜がんが追加された。[ 264 ]これらの基準はリンチ症候群家系同定の一般的アプローチを提供するが、包括的とは考えられない;アムステルダム基準を満たす家系のほぼ半数では、病原性多様体が検出されない。[ 265 ]

    アムステルダム基準I(1990):
  1. 1人の家系員が50歳前に大腸がんと診断されている。
  2. 2世代にわたり罹患者が存在する。
  3. 罹患近親者が3人おり、そのうちの1人が残る2人のFDRである。
  4. FAPを除外すべきである。
  5. 病理検査によって腫瘍を確認すべきである。

これらの基準は、その後に研究目的を超えて、マイクロサテライトおよび生殖細胞検査に対して可能性のある候補者を特定するために使用された。しかしながら、アムステルダム基準では、リンチ症候群家系のかなり大きな集団を特定できなかった;アムステルダム基準Iを満たしたが、MSIの証拠が得られず、DNA MMR遺伝子に生殖細胞病原性多様体が認められなかった家系は、家族性大腸がんタイプX(FCCX)と呼ばれた。(詳しい情報については、本要約のFCCXのセクションを参照のこと。)

リンチ症候群腫瘍に関連したMSIの顕著な特徴、および低い感度に関連するアムステルダム基準の限界により、1997年にBethesdaガイドラインが導入された。Bethesdaガイドラインは、MSI腫瘍スクリーニングが正当化される大腸がん症例を特定する臨床的、病理組織学的、がん家族歴の特徴を組み合わせたものである。Bethesdaガイドラインは(その後の2004年改訂版とともに)、大腸がんのMMR欠損に関する腫瘍評価を検討すべき患者を標的とするとともに、変異DNA解析の候補となる個人を特定するために用いる臨床基準の感度を改善するように考案された。[ 266 ][ 267 ](MSIおよびIHCの検査に関する詳しい情報については、本要約のリンチ症候群の遺伝子および分子検査のセクションを参照のこと。)

    Bethesdaガイドライン(1997):
  1. アムステルダム基準に適合する家系にがんがみられる。
  2. 同時性および異時性大腸がんまたは関連する結腸外のがんなど、リンチ症候群関連がんが2つ認められる。[注: 子宮内膜、卵巣、胃、肝胆道系、または小腸のがんか、腎盂または尿管の移行上皮がん。]
  3. 大腸がんが認められ、大腸がん、リンチ症候群関連の結腸外のがん、大腸腺腫のいずれか1つ以上がFDRにみられる;45歳前に1つのがんが診断されている、および40歳前に腺腫が診断されている。
  4. 45歳前に大腸がんまたは子宮内膜がんが診断されている。
  5. 45歳前に、病理組織所見で未分化パターン(充実型/篩状型)を示す右側の大腸がんが診断されている。[注: 充実型/篩状型は、好酸球性大細胞の不規則な充実性シートからなり、小さな腺様スペースを含む低分化または未分化がんと定義された。]
  6. 45歳前に大腸印環細胞がんが診断されている。[注: 50%を超える印環細胞からなる。]
  7. 40歳前に腺腫が診断されている。
    Bethesdaガイドライン改訂版(2004)*:
  1. 50歳未満の1人が大腸がんと診断されている。
  2. 同時性または異時性の大腸腫瘍か、他のリンチ症候群関連腫瘍が認められる。**
  3. MSI-high(MSI-H)という病理学的特徴を有する大腸がんが60歳未満の個人1人で診断されている。[注: 腫瘍浸潤リンパ球の存在、クローン病様のリンパ球反応、粘液/印環分化、または髄様の増殖パターン。]
  4. 50歳未満のFDRの1人以上が大腸がんまたはリンチ症候群関連腫瘍**と診断されている。
  5. 年齢に関係なく2人のFDRまたは第二度近親者で大腸がんまたはリンチ症候群関連腫瘍が**診断されている。

*その腫瘍をMSIの検査対象とみなすには、1つの基準を満たさなければならない。

**リンチ症候群関連腫瘍には、大腸、子宮内膜、胃、卵巣、膵臓、腎盂・尿管、胆管、および脳の腫瘍;ムア-トレ症候群における皮脂腺腺腫、角化棘細胞腫;ならびに小腸のがん腫が含まれる。[ 267 ][ 268 ]

Bethesdaガイドラインでは、アムステルダム基準より多くのリンチ症候群キャリア集団を特定することができるが、それでも約30%のリンチ症候群家系が見逃された。[ 269 ]さらに、Bethesdaガイドラインは、MSI腫瘍検査を受けるべき大腸がんの個人サブセットを特定するために臨床医療で一貫して使用されているわけではない;このガイドラインは医療提供者による留意が面倒で困難であるとみなされ、遺伝学的評価に紹介する機会が見逃された。[ 270 ]

MSIに関して(診断時年齢またはがん家族歴を問わず)、新たに大腸がんと診断されたすべての症例に対する普遍的検査を含む代替アプローチの出現に伴い、リンチ症候群についての臨床基準は時代遅れとなっている。Bethesdaガイドラインはがんの個人を対象にすることを意図していたが、がんに罹患していない個人におけるその実行がまだ有用な場合がある。罹患していない個人をリンチ症候群について評価するために利用できる方法が限られていることを考慮すると、さらに遺伝学的評価および検査を行うことが正当化される個人を特定する際に家族歴および臨床基準の使用が適切な場合がある。

MMR遺伝子の病原性多様体の確率を予測する臨床リスク評価モデル

医療提供者は、リンチ症候群に対する遺伝学専門医への紹介および評価に大腸がん患者を選択するために臨床基準を効率的に使用していないため、コンピュータによる臨床予測モデルが開発され、2006年にリンチ症候群に対する体系的な遺伝学的リスク評価を提供する代替法として導入された。このリスクモデルには、PREMM(PREdiction Model for gene Mutations)モデルMMRpredict、およびMMRproが含まれる。[ 271 ][ 272 ][ 273 ][ 274 ]

3つのモデル(PREMM[1,2,6]、MMRpredict、およびMMRpro)は、個人のMSH1MLH2、およびMSH6におけるMMR遺伝子多様体の保有について定量化する。PREMM(1,2,6)モデルは、その後に拡張されて病原性のPMS2およびEPCAM多様体の予測が含まれるようになり、リンチ症候群に関連する5つの遺伝子すべての予測を提供する唯一のモデル(PREMM5)となった。[ 274 ]

これらのモデルはすべて同じ目的で作成されたが、開発された方法およびリスク予測に用いられる変数が異なっている。さらに、その妥当性が検証された集団は、各モデルに特有な特徴を示し、精度に影響を及ぼす可能性がある。[ 275 ][ 276 ][ 277 ][ 278 ][ 279 ][ 280 ][ 281 ][ 282 ][ 283 ][ 284 ]リスク評価の過程で使用するモデルの決定は、それを適用する臨床状況および評価する患者集団に依存する。MMRproの予測では、家系の大きさと非罹患血縁者、リスク解析に分子的腫瘍データが含まれる可能性、および生殖細胞検査後の病原性多様体キャリア状態を予測する選択肢を考慮している。ルーチンの診療においてMMRproを広範に使用する上で主な限界は、家系全体(がんでない個人を含む)からのデータを入力する必要性であり、これには比較的時間がかかる。最もよいのは、その利用可能性も限定されているため、おそらく高リスク専門のクリニックまたは研究の設定において遺伝カウンセリングのツールとして使用することである。PREMMの主な利点には、使用しやすいこと、オンラインツールとして利用可能なこと、および胃腸クリニックで自己管理されている状況を含めて広く有効性が検証されていることがある。[ 285 ]PREMMには、多種多様な結腸外のがんについて、第二度近親者までのがんの個人歴および家族歴に基づくリスク予測が含まれる。しかしながら、このモデルは家系の大きさを考慮に入れておらず、大腸がんまたは子宮内膜がんに非罹患の高齢家系員が複数含まれる家系において病原性多様体の確率を過大評価する可能性がある。PREMMモデルは容易に使用できる(妥当性研究でMMRproより時間を要しないとみなされている)ことを考慮すると[ 280 ]、このモデルは、遺伝学的評価に紹介すべき患者を特定することを主な目的とするさまざまな医療提供者によって使用されることがある上に、意思決定過程を予め検証する際に最も有用となる可能性が高い。最後に、MMRpredictの使用は、リンチ症候群関連がんの家系および大腸がんに罹患した高齢者を評価するために用いた場合、リスク推定値の正確性が乏しいため、全体的に限定される可能性がある[ 286 ];このモデルは、若年発症型大腸がん症例(55歳未満で診断された患者)からのデータを用いて開発され、結腸以外の悪性腫瘍が含まれていなかった。さらに、このモデルは、腫瘍検査の結果を取り入れていないか、遺伝子塩基配列決定法の結果に基づく事後リスク推定値を提供していない。

全体として、これらの各モデルでは、リンチ症候群の診断および評価のための既存の臨床ガイドラインと比較して、その使用を支持する感度、特異度、陽性および陰性適中率の性能特性が優れていることを示す証拠が十分にある。医療提供者がリンチ症候群について個人を評価する機会がある臨床設定が多様なことから、予測モデルは、大腸がんに罹患しているかどうかを問わず、リスクを有する個人を体系的に特定するために実現可能性のある有用な戦略を提供する。

要約

結論すると、大腸がんにおけるMSIを認める腫瘍の存在は、説得力のあるがんの個人歴および家族歴とともに、リンチ症候群の生殖細胞遺伝子検査を正当化し、ほとんどの臨床診療ガイドラインではこのようなアプローチを提供している。これらのガイドラインは、遺伝カウンセリングおよび検査戦略を臨床でのスクリーニングおよび治療手段と組み合わせている。これらのガイドラインは、医療提供者も患者も同じように使用でき、利用可能な選択肢と意思決定の重要なポイントをより良く理解できる。(リンチ症候群の診断および結腸のサーベイランスのための実践的なガイドラインに関する詳しい情報については、表13を参照のこと。)

リンチ症候群の遺伝学

腫瘍および生殖細胞のいずれの遺伝学もリンチ症候群の発生および診断で重要な役割を果たす。特徴的なMSIを示すリンチ症候群関連腫瘍およびそのような症例における腫瘍のDNAでは、典型的にMMR遺伝子に関連した1つまたは複数の蛋白の発現がIHCにより検出されない。MSIおよび/またはIHCによる分子検査は、新たに大腸がんおよび子宮内膜がんと診断された患者におけるリンチ症候群の診断のための普遍的スクリーニングとして採用されている。IHC検査の結果によっては、遺伝子特異的生殖細胞検査に向かう可能性がある。多くの遺伝子検査機関がすべてのリンチ症候群関連遺伝子(およびしばしば遺伝性のがん感受性に関連する別の遺伝子)における病原性多様体を同時に検査する多重遺伝子(パネル)検査を提供している。

リンチ症候群の遺伝子および分子検査

MSI

大腸腫瘍標本におけるMSIの存在は、リンチ症候群の顕著な特徴であり、生殖細胞病原性MMR遺伝子多様体が疑われる原因になることがある。マイクロサテライトは、ゲノム全体にわたってみられるが、主にイントロンまたは遺伝子間の配列に位置するDNA(単ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、または4ヌクレオチド)の短い反復性の配列である。[ 287 ][ 288 ]MSIという用語は、大腸、子宮内膜、または転移巣の腫瘍DNA[ 289 ]で、正常組織と比較してマイクロサテライト領域に挿入または欠失がみられる場合に用いられる。MSIは、MMR遺伝子に欠損がある可能性が高いことを示しており、体細胞変異、生殖細胞多様体、または後成的変化に起因している場合がある。[ 290 ]ほとんどの場合、MSIは、1つ以上のMMR蛋白(MSH2、MLH1、MSH6、およびPMS2)の蛋白発現の欠如に関連している。しかしながら、蛋白発現の消失はMSIを伴うすべての腫瘍にみられるわけではなく、IHCで蛋白発現の消失がみられるすべての腫瘍がマイクロサテライト不安定性であるわけでもない。

腫瘍浸潤リンパ球の存在(図4を参照)、クローン病様の反応、粘液性の組織像、ダーティネクロシス(dirty necrosis)が認められないこと、組織学的異質性といった特定の病理組織学的特徴は、MSI表現型を強く示唆している。[ 291 ]

顕微鏡下でリンパ球および腫瘍中の細胞核がみられる大腸腫瘍の病理組織スライド。

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図4.腫瘍浸潤リンパ球は. マイクロサテライト不安定性を示唆する病理組織学的特徴である。

大腸腺がんがマイクロサテライト不安定性であるとの最初の指摘は、米国国立衛生研究所(NIH)のコンセンサス会議で選択された2ヌクレオチド反復が3つおよび単ヌクレオチド反復が2つのパネルから規定の割合の不安定な遺伝子座が検出されることに基づいていた。不安定性を示す腫瘍マーカーが30%を超える場合は、MSI-H腫瘍と評価された;不安定性を示すマーカーが1つ以上認められるが、30%未満の場合は、MSI-low(MSI-L)腫瘍と呼ばれた。不安定な遺伝子座が存在しない場合は、マイクロサテライト安定(MSS)腫瘍と呼ばれた。リンチ症候群の状況において発生する大部分の腫瘍はMSI-Hとなる。[ 292 ]MSI-L腫瘍の臨床的意義については依然として異論がある;これらの腫瘍がMMR遺伝子における生殖細胞病原性多様体と関係している可能性は非常に小さい。

最初のBethesdaパネルは、単ヌクレオチド反復が5つのpentaplexパネルに置き換えられ[ 292 ]、MSI-H腫瘍の検出が改善されている。

(MSI検査の治療への影響に関する詳しい情報については、本要約のMSIの予後および治療上の意義のセクションを参照のこと。)

(リンチ症候群が疑われる患者の診断的精密検査におけるMSI状態の利用に関する情報については、本要約のリンチ症候群のスクリーニングのための普遍的腫瘍検査のセクションを参照のこと。)

IHC

IHC検査法は、安価で理解しやすく、MSIの代替法としてより広く利用可能であり、このような理由のために、ほとんどの検査機関でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースのMSI検査と置き換えられている。IHCは、大腸腫瘍または子宮内膜腫瘍(または転移巣)を対象に[ 289 ]、MSH1、MLH2、MSH6、およびPMS2蛋白に対するモノクローナル抗体を用いた蛋白発現について実施される。これらの蛋白のいずれかに孤立した発現消失がみられる場合は、特定の患者で変化している特異的なMMR遺伝子が示唆される可能性がある。[ 293 ][ 294 ][ 295 ][ 296 ]しかしながら、特定の蛋白はヘテロダイマーを形成する(または他の結合パートナーをもつ)ことがあり、その場合、IHCで2つの蛋白の発現消失がみられる。

MSIは、塩基ペアリングの翻訳スリップ(ループ形成)につながることがあり、その場合、一塩基ミスペアを生じる。MMR蛋白のヘテロダイマーが形成され、このエラーを識別して、これらの部位でDNAに結合する。[ 290 ][ 297 ]例えば、MSH2蛋白はMSH6蛋白と複合体を形成してMutSαとなり、単ヌクレオチド反復塩基配列の複製中に発生することがある1塩基ペアのミスマッチおよび1塩基ペアのループアウト損傷を修復する主要な能力を発揮する。MSH6蛋白がない場合、MSH2蛋白はMSH3蛋白と二量体を形成してMutSβ複合体となり、より大きなループアウトDNAミスマッチの修復を誘発する能力を発揮するが、通常はMutSαにより修復される損傷を修復する重複した能力もいくつかある。

1人の患者で正常組織と大腸腫瘍組織の蛋白染色を示している。腫瘍からの染色(4つの小さな図)は、MSH2とMSH6の存在(濃い染色がみられる)およびMLH1とPMS2の消失(濃い染色がみられない)を示している。

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図5.大腸がんの1人の患者で示したリンチ症候群と関係するミスマッチ修復遺伝子の蛋白発現についての免疫組織化学腫瘍検査。蛋白発現は、MSH2とMSH6で温存され(小さな図)、MLH1とPMS2で消失している(小さな図)。MMR蛋白発現の消失は、リンチ症候群を示唆するもので、さらなる評価が必要である。

結果として、生殖細胞病原性多様体がMSH2遺伝子にみられる場合、安定するためにMSH6蛋白がMSH2と結合する必要があるため、腫瘍のIHCでMSH2とMSH6の両方が発現していない可能性がある。この場合、いずれの遺伝子にも病原性多様体がみられず、まだ検査に含めていなければ、EPCAMの生殖細胞病原性多様体検査を考慮すべきである。IHCでMSH2およびMSH6の蛋白発現が認められず、MSH2またはMSH6の病原性多様体も確認されなかった患者の約20%には、EPCAMに生殖細胞欠失がみられる。[ 298 ]すべてのリンチ症候群症例の約5%を後者の機序が占めている。[ 298 ]MSH2の開始部位のすぐ上流で同じ方向にあるEPCAMTACSTD1)遺伝子のエクソン9における片側アレルの欠失は、EPCAMを発現するいずれの組織においてもMSH2プロモーターの転写読み過ごし(read-through)およびメチル化から、その後のMSH2のサイレンシングにつながることがある。同様のメチル化媒介性のMSH2消失を示すEPCAM病原性多様体の存在は、多くの家系で報告されている。[ 299 ]これらの観察の強さに基づいて、大腸がんのIHC検査でMSH2蛋白発現の消失を示すが、検出可能なMSH2生殖細胞病原性多様体が認められない患者を対象に生殖細胞EPCAM検査が実施され、MSH2検査とともに結腸がんのすべての遺伝子パネルに含められている。

これらの遺伝子のいずれにも多様体が認められない患者では、腫瘍の塩基配列決定法により、ダブルの体細胞MSH2変異が明らかになる可能性がある。(詳しい情報については、本要約のEPCAMおよびリンチ様またはHNPCC様症候群のセクションを参照のこと。)

同様に、腫瘍におけるMLH1の消失(生殖細胞病原性多様体またはMLH1プロモーターの高メチル化のいずれかによる)は、MLH1とPMS2の両蛋白の発現消失に至る。大腸腺がんにおけるDNA MMR蛋白で最もよくみられるIHCの異常パターンは、MLH1およびPMS2の発現の欠如である。PMS2およびMLH1は、MutLαとして知られる安定したヘテロダイマーとして機能する。MutLαはMutSβに結合し、新たに合成されたDNA鎖の除去修復をガイドする。[ 290 ]MLH1の機能的欠失ではMLH1とPMS2の両方の分解が生じるのに対し、PMS2の欠失はPMS2の発現のみにマイナスの影響を及ぼす。このため、MLH1およびPMS2の欠如がMLH1の変化(プロモーターの高メチル化または生殖細胞多様体)を示すのに対し、PMS2発現の欠如はPMS2の生殖細胞多様体を示唆する。しかしながら、PMS2欠失大腸がん患者88人のうち、PMS2生殖細胞病原性多様体検査とその後のMLH1生殖細胞病原性多様体検査により、49人(74%)でPMS2の病原性多様体および8人(12%)でMLH1の病原性多様体が明らかとなった。[ 300 ]MLH1の変化の83%はミスセンス多様体であったが、2人の親族が同一のMLH1多様体を保持し、MLH1発現を保持する2つの腫瘍を発症した1人が、エクソン8のスキッピングに至るイントロンの多様体を保持していた。[ 300 ]このため、PMS2発現の孤立性欠失が認められる大腸がんで、PMS2生殖細胞多様体が認められない場合は、MLH1の生殖細胞病原性多様体を検索すべきである。MSIがみられ、かつMSH2とMSH6蛋白発現の消失がみられる腫瘍は、一般的にMSH2の生殖細胞多様体が根底にある(MSH2病原性多様体が推定される)ことを示す。MLH1多様体を有する症例とは異なり、MSH2消失を伴うMSIがプロモーターの体細胞性の高メチル化に関連することはまれである。

MLH1およびMSH2(いずれも他の蛋白と二量体を形成したり、他のパートナーと結合したりする)とは異なり、MSH6およびPMS2の生殖細胞病原性多様体は、IHCによるこれらの特定蛋白の孤立した消失につながる。しかしながら、MSH6病原性多様体キャリアから採取した腫瘍では、IHC検査で蛋白発現が完全には否定されず偽陰性の結果を生じる病原性ミスセンス多様体がみられるため、MLH1およびMSH2キャリア(DNA MMR系の不活性化にもかかわらず)と同様に高い頻度でのMSI表現型を示さない場合がある。[ 279 ][ 301 ]Colon Cancer Family Registryを通して登録されたMMR生殖細胞多様体キャリアにおける腫瘍検査の結果を報告した研究で、MSH6病原性多様体キャリア24人中7人(28%)が腫瘍のIHC検査で正常な蛋白発現を示した。腫瘍のIHC検査では、MLH1およびMSH2の病原性多様体キャリアで情報価値が高く、そのうちMLH1キャリアの93%で関連するMLH1蛋白発現の消失がみられ、MSH2キャリアの96%でMSH2蛋白発現の消失がみられた。[ 279 ]

一部の症例で、腫瘍がMSIを示し、かつ/またはIHCでDNA MMR蛋白発現の消失を示すが、生殖細胞病原性多様体は特定されない。この疾患は、リンチ様(またはHNPCC様)症候群として知られており、腫瘍の表現型は、主にDNA MMR遺伝子の両アレルの体細胞性不活性化によるものであり、病原性生殖細胞変化のためではない。(詳しい情報については、本要約のリンチ症候群関連症候群のセクションを参照のこと。)

表9.蛋白消失と潜在的生殖細胞欠損
蛋白発現の消失 IHCでの蛋白発現消失により予測される生殖細胞MMR欠損
IHC = 免疫組織化学、MMR = ミスマッチ修復。
MLH1/PMS2 X        
MSH2/MSH6   X     X
MSH6     X    
PMS2 X     X  
MLH1 X        
MSH2   X      

体細胞MLH1の高メチル化

この腫瘍に限定される体細胞性のイベントであるMLH1プロモーターの高メチル化がIHCでの異常なMLH1蛋白発現につながることがある点を認識することが重要である。散発性大腸がん症例の約10~15%は、MLH1の高メチル化のためにマイクロサテライト不安定性腫瘍の表現型を示し、遺伝性ではない。これらの散発性MSI結腸がん[ 302 ]では、全身で過剰なDNA高メチル化がみられ、CIMPと呼ばれる。[ 303 ](詳しい情報については、本要約ののセクションにおけるCIMPおよび鋸歯状ポリポーシス経路のセクションを参照のこと。)IHCでのMLH1蛋白発現の消失はリンチ症候群と散発性腫瘍のいずれにも起こるため、生殖細胞MMR遺伝子多様体の予測に対する特異度は、他のMMR蛋白よりも低く、MLH1消失の病因を明らかにするには追加の分子検査が必要なことが多い。

BRAF病原性多様体は、MLH1プロモーターの高メチル化を伴う大腸がん腫瘍の68%で検出され、リンチ症候群患者からの大腸がんでは、あったとしても非常にまれである。[ 304 ][ 305 ][ 306 ][ 307 ]このことから、大腸がんにおけるBRAF V600Eの体細胞変異の検出は、生殖細胞多様体検査から患者を除外する際に役立つ可能性が示唆される。結果として、BRAF V600検査および/またはMLH1の高メチル化分析は、高メチル化により発生するMLH1蛋白発現の消失と生殖細胞MLH1病原性多様体を区別する試みにおいて普遍的なリンチ症候群検査アルゴリズムに利用されることが増えている。このような区別を行うことは、個人が生殖細胞検査をしなくて済む点で、より費用効果的なアプローチでもある。

両アレル性ミスマッチ修復欠損(BMMRD)

まれであるが、MMR遺伝子多様体を有する患者で、このような多様体を親からの両アレルに保有する患者がいる。2つの多様体アレルが特定された場合、ホモ接合性または複合ヘテロ接合性を問わず、両アレル性ミスマッチ修復欠損(BMMRD)または構成的ミスマッチ修復欠損(CMMRD)と呼ばれる。ホモ接合性MMR遺伝子病原性多様体を伴うBMMRDの可能性は、血縁のある結婚で必然的に高くなる。血族関係の発生率は、田舎の集団およびそれ以外は地理的に、かつ/または文化的に隔離された集団で高い可能性がある。[ 308 ]

腫瘍の検査では特徴的な異常がみられる。BMMRDを有する患者28人のシリーズ[ 114 ]では、17の脳腫瘍において、腫瘍細胞に加えて正常な間質細胞でMMR蛋白の染色がみられなかったことから、非腫瘍細胞で正常な染色が保たれているリンチ症候群患者における腫瘍との対比を示している。このIHCでみられた特徴的な所見と対照的に、PCRベースのMSI分析では、腫瘍28中20がMSSであったことから信頼性に劣る。MSI-Hであった腫瘍のうち、基本的にすべてが結腸がんであった。

PMS2遺伝子は、BMMRD症例で著しく過剰発現している。他のMMR遺伝子における多様体がホモ接合性で存在すると、出生前に致死状態となる一方で、親からの両アレルに多様体が存在すると、それ以外にPMS2発現がより軽度であることが生存に一致することが示唆されている。

(BMMRDの臨床的表現型に関する詳しい情報については、リンチ症候群の有病率、臨床症状、およびそれに伴うがんリスクのセクションにおけるBMMRDサブセクションを参照のこと。)

表10.遺伝性大腸がん(CRC)症候群とそれに伴う腫瘍表現型a
臨床表現型 DNA MMRにおける生殖細胞病原性多様体 体細胞DNA MMRの不活性化 腫瘍表現型
BMMRD = 両アレル性ミスマッチ修復欠損;FCCX = 家族性大腸がんX型;MMR = ミスマッチ修復;MSI = マイクロサテライト不安定性;MSS = マイクロサテライト安定性。
a出典:Carethers et al.[ ]
リンチ症候群 1つのアレルに存在 1つのアレルに存在 MSI
MLH1プロモーターの高メチル化を伴う散発性大腸がん なし +BRAF MSI
BMMRD 2つのアレルに存在 なし MSI(腫瘍および正常組織)
リンチ様 なし 2つのアレルに存在 MSI
FCCX なし なし MSS

構成的エピ変異

体細胞性のMLH1プロモーターの高メチル化は後天性で、まれではないが、MLH1プロモーターの高メチル化の例は、生殖細胞で報告されており、一般的に安定的なメンデル遺伝と関連していない。この構成的なMMR遺伝子のメチル化は、MSH1で最も多く、程度は低いがMLH2でも発生し、構成的エピ変異と呼ばれている。[ 310 ]構成的エピ変異(原発性エピ変異とも呼ばれる)は、正常組織における後天性の変化であり、活性遺伝子を不活性化させたり、不活性遺伝子を活性化させたりする。[ 311 ]このようなエピ変異は、母方アレルに最も多くみられる。一部の症例では、体細胞のすべての細胞が関与しているとみられる一方で、モザイク現象の証拠を示す症例もある。原発性エピ変異を伴う患者の腫瘍は、一般的に発症年齢、腫瘍の範囲、およびMSIおよびIHCで異常の存在など、他の点では典型的なリンチ症候群生殖細胞多様体キャリアの腫瘍と区別できない。これらはメンデル様式で遺伝することがないため、先祖の腫瘍の家族歴が少なく、子孫に対するリスクはやや予測不能である。エピ変異は、新規(de novo)の症例に存在し、典型的に配偶子形成の過程で「消し去られ(erased)」、次の世代に受け継がれないと考えられる。遺伝性MLH1エピ変異の非常にまれな症例が報告されている。[ 312 ][ 313 ]

腫瘍における分子的変化の解釈および同様な原発性エピ変異症例と散発性MSI症例との区別は、大きな課題をもたらしている。MLH1発現欠失のほとんどの例が、MLH1プロモーターの散発的な高メチル化によって引き起こされる。MLH1のde novoの構成的エピ変異[ 314 ]または遺伝性生殖細胞MLH1メチル化[ 315 ]のまれな例があることで、MLH1発現欠失を伴うMSIの解釈に、ある程度の複雑さが加わっている。散発性MSIと類似して、原発性エピ変異腫瘍は、MLH1プロモーターのメチル化を示し、同様にBRAF多様体を有することがある。前述したように、このような症例におけるがんの家族歴は、真の散発性MSIでみられるように、わずかにあるか、ない傾向がある。このような症例と散発症例との区別では、真の散発症例になく、従来のリンチ症候群のMMR病原性多様体のキャリアにないMLH1メチル化の証拠について、正常組織(血液または正常な結腸組織など)の分析が必要になることがある。

このようなMLH1で支配的な原発性エピ変異は、上流のEPCAM遺伝子における遺伝性多様体の結果としてMSH2がメチル化された場合に生じるような二次性エピ変異と区別される。(詳しい情報については、本要約のEPCAMのセクションを参照のこと。)

臨床診療でのリンチ症候群のスクリーニングのための分子遺伝学的診断法による腫瘍検査

多くの分子病理検査機関がMSIとIHCの両方を評価できるが、MMR活性の欠陥についての初回スクリーニングとしてIHC検査を使用するアプローチは、それほど労力を要さず、より費用効果的であるため好まれている。[ 316 ][ 317 ]この根拠の1つは、MSIのみの使用が指示されると考えられるすべてのリンチ症候群関連MMR遺伝子の包括的な検査戦略とは対照的に、IHCで得られる情報は、1つの特異的なMMR遺伝子(MLH1発現の消失を除いて)に向けた生殖細胞遺伝子検査を目的としている場合がある点である。[ 269 ][ 316 ][ 318 ][ 319 ][ 320 ][ 321 ]MSI検査は最初に大腸がん患者の予後および治療上の意義についての腫瘍学的評価で支持されたが、リンチ症候群のスクリーニングでは、IHC検査の方がより効果的に方向付けできる。

リンチ症候群のスクリーニングのための普遍的腫瘍検査

新たに大腸がんと診断された症例では、MSIおよび/またはIHC検査を使用することで、診断時年齢またはがんの家族歴にかかわらず、リンチ症候群の最初のスクリーニングの感度が高まるが、特にMSH6およびPMS2病原性多様体のキャリアで顕著である。このアプローチは、リンチ症候群の多くの個人が高齢(50歳を超える)で診断され、大腸がんの家族歴が以前に認識されていたより顕著ではないことから、既存の臨床基準より感度が高い。このMSIまたはIHCのいずれかの検査を用いた大腸(および子宮内膜)腫瘍の普遍的検査は、多くの専門医療機関により推奨されており、広く採用されている。[ 322 ][ 122 ][ 323 ][ 324 ][ 325 ]

新たに大腸がんと診断された個人における遺伝的リスク評価およびMMR遺伝子多様体検査は、患者およびリスクのある家系員の転帰改善につながる可能性がある。2009年までさかのぼると、疾病予防管理センター(CDC)のOffice of Public Health Genomicsにより開発されたプロジェクトであるEvaluation of Genomic Applications in Practice and Prevention(EGAPP)から、血縁者における罹病率および死亡率を低減させるために、新たに大腸がんと診断された個人に対してリンチ症候群の腫瘍スクリーニングを提供することが十分に推奨される証拠があることが報告された。[ 326 ][ 327 ]その時点で、MSIとIHCの間で特定の検査戦略を推奨するには証拠が不十分であった。

リンチ症候群に対する普遍的スクリーニングの実施可能性を実証している研究がいくつかある。ある施設における初期の経験では、MSIおよびIHCを使用するスクリーニングを受けた患者1,566人のうち、44人(2.8%)がリンチ症候群であることが明らかにされた。その後、発端者ごとに、平均して3人の家系員がさらにリンチ症候群と診断された。[ 269 ]続いて行われたプール解析では、4つの大規模研究に含まれるMSI/IHC検査を受けた大腸がん患者10,206人について、病原性多様体の検出率が3.1%であることが明らかになった。[ 328 ]この研究では、リンチ症候群を診断する腫瘍検査について以下の4つの戦略が比較された:(1)Bethesdaガイドラインの基準を1つ以上満たす個人すべてを検査、(2)Jerusalemの推奨を満たす個人すべてを検査[ 329 ]、(3)70歳以下で大腸がんと診断された個人、または70歳を過ぎてもBethesdaガイドラインの基準を1つ以上満たす個人すべてを検査、(4)大腸がんの個人すべての普遍的検査。[ 328 ]MSIによる腫瘍検査は、各検査機関で個別化されたパネルを含み、IHCでは、すべての検査施設でリンチ症候群と関連するDNA MMR遺伝子の4つすべての検査を含んでいた。70歳以下で大腸がんと診断されたすべての個人、および70歳を過ぎても改正Bethesdaガイドラインのいずれかを満たす個人の腫瘍検査戦略により、95.1%の感度、95.5%の特異度、および2.1%の診断率が得られた。この戦略では、リンチ症候群症例の4.9%が見逃されたが、一般的なアプローチよりもIHC/MSI検査を必要とした症例は34.8%少なく、生殖細胞検査を受けた症例は28.6%少なかった。

年齢(70歳)により分子的腫瘍検査の推奨をさらに層別化する考慮は、普遍的スクリーニング戦略の検査費用対効果に影響を及ぼすため、注意が必要である。

体細胞高メチル化によるMLH1およびPMS2の消失は珍しくなく、大腸がんの診断時年齢増加に伴い検出頻度が高まる。[ 330 ]そのため、IHCでMLH1およびPMS2の発現消失がみられる症例では、BRAFおよびMLH1の高メチル化検査を含む追加の分子的腫瘍検査が推奨され、それにより、不必要な生殖細胞遺伝子検査に紹介される個人の数が低下する。IHCでMLH1の消失が認められた70歳以下の大腸がん患者におけるMLH1の高メチル化分析を含む検査戦略は、1,117人を対象とした集団ベース研究で費用効果的であることが示された。[ 331 ]

大腸がん患者のリンチ症候群についてのスクリーニングは、リンチ症候群に関連する4つのMMR遺伝子について蛋白発現を評価するIHC腫瘍検査の結果を基に、段階的に実施されることが最も多い。提案されている1つの戦略を図6に要約する。この枠組みは、選択された患者集団で有用な可能性がある複数のがん感受性遺伝子を同時に評価する生殖細胞検査アプローチ(多重遺伝子[パネル]検査)を組み込んでいない。(詳しい情報については、本要約の多重遺伝子[パネル]検査のセクションを参照のこと。)

大腸がん患者をリンチ症候群について評価するための多段階プロセスを示すフローチャート。

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図6.免疫組織化学による腫瘍検査の結果を基に大腸がん患者のリンチ症候群についての評価に提案されている戦略。出典:Geiersbach KB, Samowitz WS.Microsatellite instability and cancer.Arch Pathol Lab Med 135(10):1269-77, 2011.

より個別化されたアプローチで、特に転移病変を有する患者において、治療決定を推進するために、腫瘍の塩基配列決定法を利用する臨床医が増えている。多施設共同集団ベース研究で募集された大腸がん症例419人を対象に、大腸がんの次世代腫瘍塩基配列決定法(NGS)によるリンチ症候群の検出能がMSI検査およびIHC染色法(BRAF p.V600E検査による)を含む既存のスクリーニングプロトコルと比較された。[ 332 ]12人の参加者が生殖細胞DNA検査によりリンチ症候群キャリアであると同定され、腫瘍塩基配列決定法によりすべて正確に同定された一方で、MSI + BRAF検査およびIHC + BRAF検査では、それぞれ5例および6例のリンチ症候群が見逃された。腫瘍塩基配列決定法は、IHC + BRAF検査法(100% vs 89.7%;P = 0.04)およびMSI + BRAF検査法(100% vs 91.4%;P = 0.07)より感度が高かった一方で、特異度はすべての戦略で同程度であった(腫瘍塩基配列決定法で95.3%、IHC + BRAF検査法で94.6%、およびMSI + BRAF検査法で94.8%;P = 有意差なし)。大腸がんでリンチ症候群の病原性多様体キャリアであることが知られている検証コホート46人では、腫瘍塩基配列決定法により同様な結果が得られ、キャリアの100%が正確に同定された。さらに、著者らは、参加者283人における腫瘍塩基配列決定法により同定された体細胞変化について報告することで、潜在的な治療上の意義を強調した。この研究により、腫瘍塩基配列決定法はリンチ症候群を同定する方法として有効性が高いことが示唆された;しかしながら、この戦略の費用対効果はまだ決定されていない。

2019年のレトロスペクティブ研究では、大規模な地域社会ベース統合米国医療システムからのデータを用いて、大腸がん全例を対象としたMMRのIHC反射試験によるリンチ症候群に対する年齢制限スクリーニング戦略の診断性能を年齢上限なしの普遍的スクリーニング戦略と比較した。[ 333 ]リンチ症候群の同定は、70歳後から75歳まで大幅に低下し、80歳後は漸増が最低であった。リンチ症候群の1症例を同定するためにスクリーニングが必要な大腸がん症例数は、50歳未満で大腸がんと診断された患者で20例であったが、71歳から80歳までに大腸がんと診断された患者では208例に増加し、80歳後に診断された患者では668例であった。

リンチ症候群についての普遍的腫瘍スクリーニングの費用対効果

新たに大腸がんと診断された70歳以下の人でリンチ症候群を同定する戦略の有効性および費用対効果を推定するために、大腸がん、子宮内膜がん、および卵巣がんのリスクを組み込んだMarkovモデルの結果が利用できる。[ 317 ]このモデルに組み込まれた戦略は、臨床基準、予測アルゴリズムのほか、腫瘍検査または事前の生殖細胞病原性多様体検査後に必要となったスクリーニングおよびリスク低減手術に基づいていた。この研究では、IHCとその後のBRAF病原性多様体検査による戦略が優先された。この戦略により、1人の患者の生存を1年間延長させるための増分費用効果比は$36,200であった。このモデルでは、発端者1人当たりに検査される近親者数(3~4人)が有効性と費用対効果の両方のきわめて重要な決定因子であった。これらの結果はEGAPPにより実施された初期の解析と類似しており、この解析で最も費用対効果の高いアプローチは、MSH2、MLH1、MSH6、およびPMS2の蛋白発現の消失についてすべての腫瘍を検査した後に、蛋白が消失している遺伝子に応じて提供されるMSH2MLH1、またはMSH6を標的とした生殖細胞検査であることが明らかにされた。MLH1が認められない場合、BRAF多様体陰性腫瘍についての検査が行われた。[ 327 ]

2020年のNCCNガイドラインでは、IHCおよび/またはMSIによるすべての大腸がんの普遍的スクリーニング、および/または包括的な腫瘍NGSパネルまたは生殖細胞多重遺伝子(パネル)検査が支持されている。[ 122 ]年齢に関係なく全員に普遍的スクリーニングを実施した場合、その費用は70歳未満の人を対象としたスクリーニングに比べ、救命年数当たりで2倍になった。[ 317 ]この分析の著者らは、70歳未満の個人に対するスクリーニングは合理的であると考えられ、また年齢を問わず全員にスクリーニングを実施する方法も、費用負担に対する合意があれば許容できると結論している。

しかしながら、この研究から得られた結論は、家系内の大腸がんの発端者における生殖細胞MMR遺伝子多様体の特定に基づき(カスケードスクリーニングとして知られるプロセスを通して)生殖細胞検査を受けたリスクのある血縁者の数を条件としていた点に留意することが重要である。これらのモデルでは、受け入れられる$50,000の費用対効果の閾値を満たすために、最低でも3~4人の血縁者を検査することが必要であった。[ 317 ]これは、医療提供者と患者のコミュニケーション、家族内のコミュニケーション、および原因遺伝子が確認されたリンチ症候群家系における生殖細胞検査の受診率改善を確実にする必要性の重要性を強調している。(家族内のコミュニケーションおよびリンチ症候群家系における遺伝子検査の受診率に関する詳しい情報については、本要約の遺伝性結腸がん症候群における心理社会的問題のセクションを参照のこと。)

他にリンチ症候群関連遺伝子における病原性多様体検査の費用対効果に取り組み、臨床基準、臨床的リンチ症候群予測モデル、および分子的腫瘍検査を含む21のスクリーニング戦略を評価した研究がある。[ 334 ]このモデルには、2つのステップ、(1)新たに特定されたリンチ症候群診断の数の判定、および(2)健康キャリアでリンチ症候群を確認した結果として得られる余命の判定がある。モデル化された戦略の中でも、PREMM(1,2,6)のような予測モデルによる発端者のスクリーニングとその後のMMR蛋白発現を調べるIHCおよび生殖細胞遺伝子検査が最善のアプローチであり、費用対効果比の増分は得られた余命当たり$35,143であった。すべての発端者に対する生殖細胞遺伝子検査は、最も有効なアプローチであったが、費用は得られた余命当たり$996,878であった。この著者らは、リンチ症候群スクリーニングの最初のステップでは発端者に予測モデルを利用すべきで、普遍的検査および一般集団スクリーニング戦略はいずれもリンチ症候群に対して費用対効果の高いスクリーニング戦略といえないと結論した。

普遍的腫瘍検査に対する年齢上限の確定には依然として異論がある。一部の専門家は、70歳未満の大腸がん患者に対してのみ検査を支持している(70歳以上の患者における検査は、改訂Bethesda基準を満たす患者に対してのみ実施する;この戦略であれば、見逃されるキャリアが5%である)。[ 335 ]しかしながら、カスケードスクリーニングを介したより若い世代に対する潜在的有益性、および既知の家族性病原性多様体を保有することが確認された個人におけるサーベイランスやその他の予防的介入の機会の増加を考慮して、検査に対する年齢上限に対して反対を支持している専門家もいる。

70歳以下で子宮内膜がんと診断された連続登録患者179人からのデータを用いて実施された別の費用対効果の解析では、MMR IHCでスクリーニングが行われ、MLH1プロモーターの高メチル化が反映されて、このうち7人のリンチ症候群キャリア(3.9%)が同定された。[ 336 ]リンチ症候群創始者7人のうち、子宮内膜がんの診断時年齢が50歳以下であったのは1人のみであった。この著者らは、51~70歳で子宮内膜がんと診断された女性のスクリーニングにより得られる余命が追加の29.3年(50歳以下で診断された女性のスクリーニングにより得られる余命が最高の45.4年に対して)であり、70歳以下での診断 vs 50歳以下での診断で、すべてスクリーニングした費用対効果比の増分は、得られた余命当たり5,252ユーロであると算定した。70歳以下のすべての女性を対象とした普遍的腫瘍ベーススクリーニングもMMRおよびMSI検査の指針にBethesdaガイドラインを用いた戦略と比較して費用効果的であり、費用対効果比の増分は、得られた余命当たり6,668ユーロであった。

大腸がんと子宮内膜がんの両方における普遍的腫瘍検査の費用対効果は、大半がカスケードスクリーニングを前提とすることにより得られ、このスクリーニングを通して、リスクのある他の家系員が特定され、検査を受けて、その結果として自身のがんリスクの低減を求める。[ 317 ]

生殖細胞遺伝子検査の費用は、多重遺伝子(パネル)検査を介した悪性腫瘍に関連する複数の生殖細胞多様体の同時検査などのDNA変異解析の進歩に伴って減少を続けている。結果として、生殖細胞検査に関連する最新のデータを用いた追加の費用対効果解析の実施が必要である。多重遺伝子(パネル)検査は、今後、より有益な費用効果の高いアプローチとなる可能性がある。

リンチ症候群に対する普遍的腫瘍検査に関連する考慮事項と限界

普遍的スクリーニングは国内での採用が続いているが、受診率および分子検査へのアプローチには著しい変動がみられる。米国遺伝カウンセラー学会(National Society of Genetic Counselors)による2011年の調査では、回答者の25%が自身の施設で何らかの普遍的スクリーニングを実施したと答えている。腫瘍スクリーニング法はさまざまであった;新たに診断された大腸腫瘍に対し、53施設のうち34施設(64.2%)がIHCから開始し、11施設(20.8%)がMSI検査から開始したほか、8施設(15.1%)が両方の検査を実施した。[ 337 ]2012年の調査では、米国国立がん研究所(NCI)のComprehensive Cancer Centerの71%で何らかの普遍的スクリーニングがルーチンに実施されていたが、ランダムに抽出された地域病院のがんプログラムの間では、実施率が15%に低下することが示された。[ 338 ]

リンチ症候群に対する普遍的スクリーニングの遵守率は劣る場合があるため(多くの患者が遺伝学的評価および遺伝子検査に紹介されない)、大腸がんの若い患者での普遍的遺伝子スクリーニングの実施率を改善するために、Six Sigmaの概念的枠組みを利用したプロスペクティブ品質改善研究が実施された。[ 339 ]この研究の主要目的は、早期発症型大腸がん患者(18~50歳)でMMR欠損の腫瘍検査の割合を高めることであった。この介入には、ポイントオブケアで得られる視覚的手がかりに加えて、患者および医療提供者の教育が含められた。この研究では、大腸がんの若年成人における12ヵ月の介入後期間で、介入前期間と比べてIHC検査の割合に21.5%の改善が実証された。

リンチ症候群についての遺伝子検査の受診を報告した研究は、大半が家族歴または臨床的特徴に基づいてリンチ症候群の潜在的リスクについて選択した個人および家系に重点が置かれている。普遍的腫瘍スクリーニングは、生殖細胞多様体を保有する可能性がある新たに診断された患者を特定するために、採用が増加しているが、普遍的腫瘍検査後の遺伝子検査受診について検討した研究はほとんどない。リンチ症候群に関する普遍的スクリーニングの重要な意義は、スクリーニングの結果、該当する個人に対し自動的に生殖細胞検査が実施されるわけではないことである。臨床設定では、スクリーニングの結果で異常な腫瘍が認められた患者に対して遺伝カウンセリングへの紹介を促すために、医療チームによるフォローアップをより多くすることで、遺伝子検査の完遂率が改善する可能性がある。[ 340 ]異常な腫瘍のスクリーニング後に遺伝子検査を完遂した患者の割合が高いことは、この過程でスクリーニング陽性の結果開示、腫瘍検査後のカウンセリングの提供、または紹介の促進に関与する遺伝カウンセラーがいることに関連している可能性がある。[ 341 ]

続いて行われる遺伝カウンセリングでは、病理医、紹介先の外科医または腫瘍専門医、がん遺伝学サービス間での協調が求められる。例えば、ある集団ベースのスクリーニング研究では、IHC-欠失腫瘍(BRAF病原性多様体は陰性)を有する患者のうち、最終的に生殖細胞系列のMMR遺伝子検査に同意し受診した患者は54%に過ぎなかった。[ 342 ]ある施設では、大腸がんの診断後にルーチンのMSIおよびIHC検査を受けた患者1,100人で、病原性多様体が21例に認められた。この研究では、外科医と遺伝カウンセラーの両方が異常なMSI/IHC検査結果のコピーを受け取った場合に、遺伝カウンセリングと生殖細胞MMR遺伝子検査の受診率が明らかに高くなり、特に遺伝カウンセラーが患者のフォローアップに積極的な役割を果たした場合に顕著であった。[ 340 ]

前もって患者に知らせないで実施されることの多い腫瘍検査とは対照的に、MMR病原性多様体の生殖細胞検査のような生殖細胞遺伝子検査では、一般に遺伝カウンセリングが含まれており、実施前に患者の許可を必要とする。米国のがんプログラム(NCIが指定したComprehensive Cancer Centerの20のがんプログラムと地域病院の49のがんプログラム)の横断的調査により、すべての症例または選択された症例を対象に結腸がん診断時にMSIおよび/またはIHC検査を標準の病理学的評価の一部として実施したプログラムのうち、腫瘍検査前に文書によるインフォームド・コンセントを要求したものはなかったことが明らかにされた。[ 338 ]

子宮内膜がんと診断されたすべての患者に対する診断戦略

MMR病原性多様体キャリアで子宮内膜がんの有病率が増加していることを考慮して、子宮内膜がん患者でリンチ症候群のスクリーニングを行うコンセンサスが増大している。

診断時年齢またはがんの家族歴にかかわらず、すべての子宮内膜がんの腫瘍スクリーニングを実施する実現可能性および望ましさについて検討した研究では、新規診断患者の少なくとも2.3%(95%CI、1.3%-4.0%)がリンチ症候群であった。[ 343 ][ 344 ]リンチ症候群と診断された13例のうち、8例が50歳以上で、8例は公表されたリンチ症候群の家族歴の基準を満たさず、2例はMSI検査で見逃されていた。子宮内膜がんの有病率が増加していること、およびこの研究の結果を理由に、著者らはリンチ症候群についての子宮内膜がんの普遍的スクリーニングを支持している。(MMR蛋白発現についてのIHC実施に関する詳しい情報については、本要約のIHCのセクションを参照のこと。)

別の子宮内膜がんの連続症例242人を対象とした小規模な研究では、体細胞MLH1プロモーターの高メチル化を認めないMMR欠損症例の有病率が4.5%(11/242)であることが実証され、このうち4例(1.7%)が生殖細胞MMR変異、4例(1.7%)がNGSでの2つの体細胞MMR変化、2例(0.8%)がそれ以外の説明不可能なMMR欠損であった。[ 345 ]このような知見は、子宮内膜がんの普遍的MMR腫瘍スクリーニングによって、基礎にリンチ症候群を有する個人およびMMR欠損がさまざまな形の非リンチ症候群の多種多様な症例が同定されることを示している。

別の研究により、診断時年齢に関係のない、大腸がんと子宮内膜がんの両方の症例に対するIHCに基づいた普遍的なスクリーニングがプロスペクティブに評価された。[ 346 ]三次施設と地域の両方の設定において、大腸がんの1,290例および子宮内膜がんの484例の症例が2011年から2013年にスクリーニングを受けた。この研究では、生殖細胞病原性多様体が発見されたすべての患者に対して、追加でPREMM(1,2,6)およびPREMM5スコアが算出された。異常染色は、子宮内膜がんの22%および大腸がんの18.8%で観察された。BRAFの存在および/またはMLH1の高メチル化のために散発性であると考えられた症例を除外した後に、大腸がん患者の10.8%および子宮内膜がん患者の6.6%が遺伝カウンセリングに紹介された。リンチ症候群が24人の個人(1.4%)で診断され、そのうち66%が大腸がんを有した。リンチ症候群の全発見率は、子宮内膜がん症例で1.7%および大腸がん症例で1.2%であった。アムステルダム基準、Bethesdaガイドライン、PREMM(1,2,6)、およびPREMM5の中で、最も性能の高いモデルはPREMM5で、このモデルなら普遍的スクリーニングで確認された症例の82%が発見されていたであろう。

子宮内膜がんと診断された女性の腫瘍検査の費用対効果は、モデルベースのシミュレーション研究で検討され、以下のシナリオでIHC検査を含んでいた:(1)50歳前に診断、(2)60歳前に診断、(3)診断時年齢を問わず、リンチ症候群関連がんのFDRが1人いる、(4)診断時年齢および家族歴を問わず、すべての症例。アムステルダムIIの基準を満たす女性またはリンチ症候群関連がんのFDRが少なくとも1人いる50歳前に診断された女性は、IHC検査なしに遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査に直接紹介された。リンチ症候群関連がんのFDRが1人いる子宮内膜がんのすべての患者でMMR蛋白発現についてのIHC検査を実施する戦略は、リンチ症候群を検出する上で費用効果的であると報告された。[ 347 ]この戦略では、50歳前に子宮内膜がんと診断され、リンチ症候群関連がんのFDRが少なくとも1人いるすべての女性に対して遺伝子検査を実施する最も費用が安価な戦略と比べて、増分費用比が延命1年当たり$9,126であった。診断時年齢または家族歴を問わず、子宮内膜がんのすべての女性にIHC検査を実施する最も包括的な検査戦略で余命が最も長かったが、増分費用比は延命1年当たり$648,494で最も好ましくなかった。NCCNは、すべての子宮内膜がんのIHCおよび/またはMSIによる腫瘍検査、包括的な腫瘍NGSパネル、または生殖細胞多重遺伝子(パネル)検査を推奨している。[ 122 ]これらの推奨にもかかわらず、新たに子宮内膜がんと診断された女性における普遍的スクリーニングの受診率は不明である。

(リンチ症候群の一部としての子宮内膜がんに関する詳しい情報については、乳がんおよび婦人科がんの遺伝学に関するPDQ要約を参照のこと。)

すべてのがんにおけるMSI

すべての腫瘍型にわたるMSI検査の使用は、免疫チェックポイント阻害薬療法に良好な反応を示す可能性のある症例を選択する重要なスクリーニングツールとなっている。これらの結果は、大腸がん以外の腫瘍におけるリンチ症候群のスクリーニングで使用される可能性がある。ある研究で広範にわたる悪性腫瘍を対象にMSIが評価され、腫瘍型にかかわらず、リンチ症候群を同定する可能性のある手段として、その使用が評価された。[ 348 ]単一施設研究で評価された50種類を超えるがんの15,000人を上回る患者の研究では、MSI状態の判定に、注釈が十分に付された腫瘍に関するデータ、およびペアの生殖細胞MMR遺伝子検査と一致させた正常DNA塩基配列決定法の結果が用いられた。MSIは、ペアの腫瘍-正常ゲノム塩基配列決定法のデータからのスコアとして不安定なマイクロサテライトの割合が報告されると同時に、MSI部位の包括的探索が可能なソフトウェアツールを用いて決定された。使用されたアプローチでは、MMR欠損(dMMR)について典型的にスクリーニングが行われないがん全体で、PCRを用いた5つの単ヌクレオチドのマイクロサテライト病巣のMSI検査よりも感度が高いことが報告されている。[ 349 ]この研究で大腸がんおよび子宮内膜がんは、MSI-Hであるがんの大多数を占めていたが、38%(125/326)のMSI-H腫瘍および90%を超える中程度のMSI腫瘍は、他のがん種であった。生殖細胞検査では、MSIがみられない0.3%の症例に加え、MSI-Hおよび中程度のMSIの腫瘍のそれぞれ16.3%および1.9%でリンチ症候群の診断が確認された。重要な点として、MSI-H/中程度の腫瘍を有するリンチ症候群の全キャリアの半数が大腸がんまたは子宮内膜がん以外の原発がんであり、多くの悪性腫瘍がリンチ症候群と無関係であった。非標準のリンチ症候群がんの人のうち、がん診断またはがん家族歴に基づくリンチ症候群検査の臨床基準をほぼ半数が満たしていなかった。さらに、中程度のMSIおよびMSS表現型は、古典的にリンチ症候群と関連していないがん、および生殖細胞PMS2多様体を有する人に最も多く観察された。この研究は、臨床基準のみで同定することが困難なMMR遺伝子の変化およびその関連悪性腫瘍への広範な集中に基づいて、リンチ症候群のさまざまな表現型発現に関連する他の知見を裏付けている。加えて、研究者らは、腫瘍ごとにユニークな遺伝子多様体署名をさらに解析し、遺伝子多様体キャリアのがんがリンチ症候群およびMMR欠損により引き起こされたのかどうか、または偶発的所見の可能性に関して、いくつかの間接的データを提供するために、観察されたMSI表現型および生殖細胞MMR状態に対して結果の相関性を評価した。これは、リンチ症候群との関連性が不明で議論の余地がある乳がんおよび前立腺がんなどのがんを評価する際に妥当である。この非常に大きなコホートにおけるリンチ症候群の乳がん患者で、MSI腫瘍が認められなかった著者らの知見は、これらの個人的な生殖細胞MMR遺伝子多様体が単に偶発的所見であり、そのがん診断の病因ではない可能性があるという仮説を支持している。

生殖細胞遺伝子検査

MLH1MSH2MSH6PMS2、およびEPCAMの生殖細胞病原性多様体に対する遺伝子検査は、多様体陽性罹患者およびリスクのある家系員(そのうちの多くががんに罹患していない可能性がある)に対する適切な介入戦略を考案する助けとなりうる。

罹患者に病原性多様体が同定された場合、その後、リスクを有するすべての家系員に同一の病原性多様体の検査を提供すべきである。リスクのある血縁者で、家系内で同定された病原性多様体の検査が陰性であった場合、大腸がんまたは他のリンチ症候群関連悪性腫瘍のリスクは高くなく、一般集団に適用されるサーベイランスの推奨に従うことができる。家族性病原性多様体を保有する家系員には、リンチ症候群向けのサーベイランスおよび管理ガイドラインを紹介する。(詳しい情報については、本要約のリンチ症候群の管理のセクションを参照のこと。)

罹患家系員に病原性多様体が同定されなかった場合、その個人ではリンチ症候群の検査が陰性であるとみなされる。DNA塩基配列決定法の技術にみられる進歩によって、現行の遺伝子検査では、検査対象遺伝子で病原性多様体を十分に検出できる感度がないという可能性は低い。ほとんどの民間検査施設によるNGSの一般的使用を含めた検査の進歩によって、広範な欠失またはゲノム再構成に加え、PMS2における偽遺伝子PMSCLの存在などの特定の変化の検出に関して改善がみられている。

病原性多様体が検出されない可能性がある理由として考えられるのは、以下のものである:

病原性多様体が検出されなかったことは、遺伝子的根拠が示唆される臨床像がみられるにもかかわらず、その家系には遺伝的リスクが全くないことを意味する可能性がある(例えば、その患者はMMR遺伝子にダブルの体細胞変異を有する可能性がある)。罹患家系員に多様体が同定できない場合、その血縁者に対する検査結果は情報価値がないため、リスクを有する家系員に対して検査を行うべきではない。その家系は家族歴があるという理由から依然として大腸がんのリスクが高く、推奨されている集中的スクリーニングを継続して受診すべきである。

(詳しい情報については、本要約のリンチ症候群の管理のセクションを参照のこと。)

多重遺伝子(パネル)検査

MSIおよび/またはMMR蛋白のIHCについて検査するための腫瘍組織が個人から得られない場合は、MLH1MSH2EPCAMを含む)、MSH6、およびPMS2の生殖細胞変異解析を考慮できる。このアプローチは、いくつかの臨床検査施設により単一遺伝子検査に匹敵するほどの価格で現在提供される多重遺伝子(パネル)検査の進展とともに安価になってきている。多重遺伝子検査の費用は、腫瘍スクリーニングの費用に近づいているものもあり、大腸がんに罹患した個人で費用効果的なアプローチであることが証明されているものもある。現時点で、多重遺伝子検査は、新たに大腸がんと診断されたすべての患者でリンチ症候群に対するルーチンでの普遍的スクリーニングに推奨されていないが、早期発症型大腸がんの患者[ 350 ]または家族性で高リスククリニックをベースにした集団からの患者のような選択された集団で非常に有用な可能性がある。病原性多様体は、リンチ症候群の枠を超えて他のがん関連遺伝子に検出されることがある点に留意することが重要である。リンチ症候群の検査に対するNCCN基準を満たし、25遺伝子の多重遺伝子検査を受けた1,112人を対象とした研究では、予想されたように、114人(9.0%)がMMR遺伝子に病原性多様体を有することが明らかになった;しかしながら、71人(5.6%)では、BRCA1BRCA2APCMUTYH(両アレル性)、およびSTK11などの非リンチ症候群がん素因遺伝子に病原性多様体を有することが明らかになった。最後に、多重遺伝子検査では、VUSが高い割合で生じる。上述の研究では、計479人(38%)の患者でVUSが1つまたは複数認められた。[ 351 ]

早期発症型大腸がんの個人では、生殖細胞病原性多様体の頻度が高く、その種類の範囲も広いことが示されていることから、この集団におけるパネル検査は有益な可能性があることを示している。結腸がん、子宮内膜がん、乳がん、卵巣がん、および/または膵がんのFDRが少なくとも1人いるなどの家族歴がある早期発症型大腸がん患者450人(診断時平均年齢が42.5歳)を対象とした研究では、75の生殖細胞またはその可能性が高い病原性多様体が72人(16%)で同定された。[ 350 ]同定された多様体の範囲には、従来大腸がんに関係ないとされてきた数種の遺伝子(例えば、BRCA1/BRCA2ATMCHEK2PALB2、およびCDKN2A)などのリンチ症候群および非リンチ症候群関連遺伝子が含まれていた。この著者らは、同定された遺伝性がん症候群の頻度が高く、その種類が多いことを考慮すると、この集団における多重遺伝子検査が正当化される可能性があると提言した。同様に、他の小規模な単一施設解析では、大腸がん患者151人について、9.9%の患者で生殖細胞病原性多様体が同定された。[ 352 ]

多重遺伝子検査は、診断時年齢、個人歴、家族歴、またはMSI/MMR検査結果で選択していない大腸がん患者1,058人を対象としたより大規模な研究でも検討されている。[ 353 ]がん感受性遺伝子における生殖細胞病原性多様体は、105人(9.9%)で同定された。33人(3.1%)がリンチ症候群遺伝子に病原性多様体を保有していた一方で、74人(7.0%)がAPCMUTYHBRCA1/BRCA2PALB2CDKN2ATP53、およびCHEK2などの非リンチ症候群関連遺伝子に病原性多様体を保有していた。これらのデータは、選択していない大腸がん患者で同定される可能性のある多様体の広がりを例示している;そのため、包括的な多重遺伝子検査の使用が正当化される可能性がある。

2017年の研究では、2012年から2015年に米国の1つの民間検査機関で多重遺伝子検査を受けた個人を対象に病原性リンチ症候群関連遺伝子多様体の頻度が調査され、これらのうちリンチ症候群と確認されたキャリアの特徴が報告された。[ 354 ]本研究では、これまでに多重遺伝子検査で評価された個人で最大規模のコホートに関して報告された;MMRおよびEPCAM遺伝子を含むさまざまな多重遺伝子パネル検査を受けた34,980人のデータが報告され、検査の適応はリンチ症候群に限定されなかった。612人(1.7%)で計618の病原性多様体が同定され、(リンチ症候群関連の多様体および二次MMR多様体または別のがん素因遺伝子におけるその他の病原性多様体を有する33人が除外された後に)579人の被験者について解析が実施された。キャリアの大多数が非リンチ症候群関連悪性腫瘍を含むがんに罹患しており、乳がんが最も高い頻度(124/423人、23.5%)で報告された。MSH6多様体が最も多く(29.3%)、次にPMS2(24.2%)、MSH2(23.7%)、MLH1(21.6%)、およびEPCAM(1.2%)が多かった。この知見は、大腸がんの個人歴および/または家族歴により個人がリンチ症候群特異的検査に選択されることがより多かったために、MSH2およびMLH1多様体がより多くみられた既存のデータと異なっている。

本研究では、リンチ症候群キャリア528人で遺伝子型-表現型の相関について報告され、その大多数が大腸がん(186人、35.2%)および子宮内膜がん(136人、25.8%)で、次に乳がん(124人、23.5%)および卵巣がん(74人、14%)であった。[ 354 ]145人のキャリアがセンチネル腫瘍として乳がんまたは卵巣がんを呈し、多重遺伝子検査の時点までに大腸がんまたは子宮内膜がんの先行診断を受けていなかった。腫瘍特異的サブグループでMMR遺伝子多様体の分布を調査した場合、乳がんのみのキャリアでMSH6およびPMS2多様体の頻度がMLH1およびMSH2より高いことが検出され、後者の病原性多様体は大腸がんのみの被験者で頻度が高かった。乳がんのみの患者では、PMS2遺伝子多様体の頻度が集団推定値より有意に高く、このことは、MLH1MSH2、またはMSH6には当てはまらなかった。類似のレトロスペクティブ研究により同様の所見が報告された。MMR遺伝子に病原性またはその可能性が高い病原性多様体を有する423人の女性集団において観察される乳がんの頻度を一般集団の女性における頻度と比較することで、乳がんの標準化発生比(SIR)が算出された。著者らは、MSH6キャリア(SIR = 2.11;95%CI、1.56-2.86)およびPMS2キャリア(SIR = 2.92;95%CI、2.17-3.92)について、乳がんの統計的に有意な年齢標準化リスクを報告した。[ 355 ]これらの研究双方の重大な制限は、全照会集団において乳がん症例が過剰であったことのほか、MSH6およびPMS2生殖細胞病原性多様体の既知の背景集団保有率が高かったことであった。

この研究で、アムステルダム基準、改訂Bethesdaガイドライン、またはPREMM(1,2,6)リスク予測モデルなど、リンチ症候群を同定する臨床基準では、27.3%のリンチ症候群キャリアが同定できていないと考えられる。[ 354 ]乳がんおよび卵巣がんの有病率が増加していることを前提として、BRCA1/BRCA2検査のNCCNガイドラインを58.9%が満たし、リンチ症候群検査のNCCNガイドラインも36.7%が満たした。最後に、腫瘍検査結果に関するデータは限られており、利用可能なのは病原性多様体キャリアの18.8%のみで、MSH6およびPMS2キャリアで報告されることが最も多い変化遺伝子と結果がしばしば一致しない。この研究の結果は、リンチ症候群に対する多重遺伝子検査の使用およびそれぞれのがんリスクに関する今後の研究を支持しており、これは、現行の検査戦略では、リンチ症候群キャリアおよび関連悪性腫瘍の同定が限られているためである。

最後に、生殖細胞MMR遺伝子は、乳がんや前立腺がんなど、一般にはリンチ症候群と関係のないがんに対する多重遺伝子検査を受けた個人で予想されずに検出されている。そのため、リンチ症候群に関連するがんの範囲は、これまでの予想より広い可能性がある。(詳しい情報については、本要約および前立腺がんの遺伝学の要約の乳がんおよび前立腺がんのセクションを参照のこと。)

(遺伝に関する教育とカウンセリングでの考慮事項および多重遺伝子検査の使用について検討する研究など、多重遺伝子検査に関するより詳しい情報については、がんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングに関するPDQ要約の多重遺伝子[パネル]検査のセクションを参照のこと。)

多重遺伝子(パネル)検査の費用対効果

遺伝子検査がまれではなくルーチンで使用されるようになるにつれ、検査費用に関する疑問が避けられない。歴史的に、質調整余命(QALY)当たり$50,000という費用対効果比がケアの良好な価値としてベンチマークに利用されている。[ 356 ]時がたつにつれ、この閾値は低すぎるため、$100,000または$150,000のような他の閾値を使用することが提案されている。[ 356 ]

2015年の研究では、がん遺伝子クリニックに紹介された患者を対象とした大腸がんおよびポリポーシス症候群についての多重遺伝子検査の費用対効果が評価された。[ 357 ]これらの著者らは、評価のために紹介された患者に対する、および病原性多様体キャリアとして同定された家系員を対象とした大腸がんサーベイランスに関する即時および下流の費用を見積もるための決定モデルを開発した。この費用は、CDCおよび学術分子遺伝学研究所から公表されたモデルに基づいて見積もられた。ここでは、遺伝様式および大腸がんの浸透度を基に症候群が分類された。4つの特別仕立てのパネルが標準ケアと比較された。この4つのパネルでは、(1)リンチ症候群関連遺伝子のみ(MLH1MSH2MSH6PMS2、およびEPCAM);(2)パネル1の遺伝子に加え、常染色体優性遺伝および高い大腸がん浸透度に関連する遺伝子(APCBMPR1ASMAD4、およびSTK11);(3)パネル1および2の遺伝子に加えて、常染色体劣性遺伝および高い大腸がん浸透度に関連する遺伝子(MUTYH);または(4)最初の3つのパネルのすべての遺伝子に加え、常染色体優性状態で低い浸透度に関連する遺伝子(PTENTP53CDH1GALNT12POLEPOLD1GREM1AKT1、およびPIK3CA)について検査された。それぞれの費用は以下の通りである:パネル1が$144,235/QALY;パネル2が$37,467/QALY;パネル3が$36,500/QALY;およびパネル4が$77,300/QALY。パネル3と比較した場合、著者らは、高い浸透度の大腸がん、ポリポーシス症候群、およびリンチ症候群のがん遺伝子を含むNGS多重遺伝子検査の使用が費用対効果の高い形で臨床的に意味のある結果が得られる可能性が最も高いアプローチであると結論した。

生殖細胞遺伝子検査の費用は、このモデル解析が実施された時点から、技術の進歩に伴って減少を続けている;この検査アプローチの費用対効果の評価を継続するには、追加の研究が必要である。

リンチ症候群の有病率、臨床症状、およびそれに伴うがんリスク

リンチ症候群は、低い年齢での大腸がん発症、同時性および異時性の過剰な大腸新生物、好発部位が右側結腸、および結腸外の腫瘍で特に子宮内膜がんを特徴とする常染色体優性症候群である。リンチ症候群は、DNA MMR遺伝子、すなわち染色体3p21上のMLH1(mutL homolog 1);[ 358 ][ 359 ]染色体2p22-21上のMSH2(mutS homolog 2);[ 360 ][ 361 ]染色体2p16上のMSH6[ 362 ]および染色体7p22上のPMS2(postmeiotic segregation 2)における病原性多様体により引き起こされる。[ 358 ][ 359 ][ 360 ][ 361 ][ 363 ][ 364 ][ 365 ][ 366 ]これらの遺伝子の機能はDNA複製過程における忠実性の維持である。リンチ症候群は、染色体2p21上のEPCAM(epithelial cellular adhesion molecule、以前はTACSTD1として知られていた)遺伝子の病原性多様体とも関連しており、この遺伝子のすぐ下流に位置するMSH2のエピジェネティックサイレンシングを引き起こす。[ 367 ][ 368 ]

リンチ症候群は、新たに大腸がんと診断される全症例の約3%を占める。[ 316 ]初期の研究で、リンチ症候群の病原性多様体キャリアにおける大腸がんの診断時平均年齢が44~52歳と若いのに対して[ 269 ][ 316 ][ 369 ]、散発性大腸がんでは71歳であることが報告された。[ 370 ]がん関連リスクの推定値および遺伝子型と表現型の関連性を判定するために、その後の研究で確認バイアスに対して補正し、リンチ症候群関連の病原性多様体キャリアにおける大腸がんの診断時平均年齢が61歳と報告された。[ 371 ]

リンチ症候群の全有病率および遺伝子特異的有病率の推定値に関する最初の報告は、世界の家族性がん登録からのレトロスペクティブデータに強く依存していた。リンチ症候群で報告された初期の大腸がん(および子宮内膜がん)のリスク推定値は、主に家族性がん登録からデータが得られており、若年発症型大腸がんまたは血縁者で大腸がん症例数が多いことに基づいて症例が確認される場合が多かったことを考慮すると、確認バイアスおよび過剰評価を受けていた。これらのがんリスク推定値の補正は、修正された分離比分析により可能になっており、この統計的方法で、より正確な推定値が得られ、確認バイアスについて調整される。逆に、子宮内膜がんを除く結腸外の悪性腫瘍に関するリスク推定値は、多くの家系で血縁者におけるこれらのがんが過少報告されている場合があるため、過小評価されやすい可能性がある上に、リンチ症候群関連腫瘍は高齢期に発生する可能性がある。

米国、オーストラリア、およびカナダから、がんの家族歴の有無にかかわらず募集された大腸がん症例5,744人を対象とした大規模な集団ベースの研究では、この集団の279人に1人がリンチ症候群に関連するMMR病原性多様体のキャリアであると推定された。[ 372 ]

大腸がんであるが、50歳前に診断された若年発症型に限定した患者450人を対象とした別の集団ベースの研究では、450人中72人(16%)に生殖細胞病原性多様体が同定され、これは遺伝性がん感受性遺伝子を対象とした多重遺伝子(パネル)検査により検出された。予想されたように、同定された多様体の大多数が大腸がん(主にリンチ症候群)と関係することが知られている遺伝子にみられた(患者72人中37人、51.4%)。しかしながら、72人中13人(18.1%)の患者では、従来大腸がんと関連しないとされていた遺伝子に病原性多様体がみられ、この中には、同定された多様体の8%を占めるBRCA1/BRCA2も含まれているが、これだけに限定されるわけではない。同定された病原性多様体の頻度が高く、種類も多いため、著者らは、早期発症型大腸がんのすべての個人に対して多重遺伝子検査を考慮するように提言した。[ 350 ]

遺伝子に特有な考慮事項および関連する大腸がんリスク

MLH1およびMSH2遺伝子は、リンチ症候群にみられるMMR遺伝子の病原性多様体のほとんどを占めていると最初は考えられていた。しかしながら、DNA変異解析およびすべての大腸がんの普遍的腫瘍スクリーニングの進展に伴い、MSH6およびPMS2の病原性多様体の保有率が増加してきている。[ 372 ]MSH6およびPMS2の多様体[ 372 ]は、高リスク大腸がんクリニックからの個人により多く同定されるMLH1およびMSH2の多様体[ 373 ][ 374 ]と比べて、大腸がん(および子宮内膜がん)の非選択症例により多くみられる場合がある。Prospective Lynch Syndrome Database(PLSD)からの一連の論文では、(主に欧州の)レジストリーによりプロスペクティブに追跡した患者のがん転帰を報告している。重要な知見として、PMS2キャリアでは大腸がんリスクが低く、特に50歳未満で顕著であったことから、PMS2キャリアのサーベイランスは安全に規模を縮小できると著者らは結論した。これらの知見に照らして、大腸内視鏡検査の開始遅延およびおそらくより長い実施間隔が徐々に適用されてきている。[ 122 ][ 178 ]PMS2キャリアにおける結腸外のがんの相対的リスクは、集団予想より低いか、わずかに高いだけであることから、PMS2キャリアでは結腸外のがんのサーベイランスをしないよう著者らは一般的推奨を行った。[ 375 ]PMS2病原性多様体を保有する人および規模がより小さいMSH6病原性多様体を保有する人のスクリーニングに対するアプローチは、臨床的論争が進行中の課題である。

MLH1

初期の研究で、リンチ症候群の個人におけるMLH1病原性多様体の保有率は、41.7%[ 376 ]から50%[ 377 ]の間であると報告されており、リンチ症候群家系でMLH1が最も多く変化したMMR遺伝子となっている。これは、リンチ症候群の集団ベースの有病率に関する報告まで不明であったが、大腸がん症例5,744人を対象とした大規模な国際的研究で推定されたように、MLH1病原性多様体は、PMS2(714人に1人)およびMSH6(758人に1人)に次いで3番目に多い1,946人に1人であると推定された。[ 372 ]

MLH1病原性多様体は、リンチ症候群に関連した多種多様な悪性腫瘍のすべてにおいて関係が認められている。[ 377 ]MLH1病原性多様体キャリアにおける70歳までのあらゆるリンチ症候群関連がんの生涯リスクは、59%から65%までの範囲であることが明らかにされている。[ 297 ]MLH1病原性多様体キャリアにおける最高リスクは大腸がんにみられ、41~68%と推定されており[ 3 ][ 4 ][ 371 ]、罹患者137人を含むある研究では、大腸がん診断時の平均年齢が42.8歳(範囲16~81歳)であった。[ 378 ]がんではないMLH1キャリア944人に関する併合した欧州登録データを用いたごく最近のプロスペクティブ研究で、大腸がんの累積発生率は、大腸内視鏡検査によるサーベイランス(実施間隔はさまざま)にもかかわらず、70歳で46%であった。[ 5 ]

FAPの APC遺伝子では、重症度および疾患のスペクトラムが異なるいくつかの表現型がみられるが、これとは異なり、MMR遺伝子では遺伝子型と表現型の関係は捉えどころがない。MLH1の病原性多様体キャリアを対象とした大規模シリーズにおいて、切断型のMLH1病原性多様体を有する女性では、切断型ではない多様体を有する女性と比べて子宮内膜がんの発症が有意に遅かった。[ 379 ]切断型のMLH1病原性多様体を有する患者では、大腸がんの発症が遅くなるという有意ではない傾向も同定された。MLH1または他のMMR遺伝子における特定の種類の多様体との相関は他に認められなかったため、これらの関連は人為的なものである可能性があり、さらなる検証が必要である。

MSH2

リンチ症候群の患者またはその家系におけるMSH2病原性多様体の保有率は研究によって異なる。大規模ながん登録および早期発症型大腸がんコホート(55歳未満)を含めた研究では、MSH2病原性多様体がリンチ症候群の家系の38~54%で報告された。[ 271 ][ 380 ]MSH2病原性多様体で報告された保有率は、家族性消化器がんの共同研究を扱っている大規模な専門機関であるInternational Society for Gastrointestinal Hereditary Tumors(InSiGHT)の2012年のデータベースで32.8%であり[ 376 ]、その家系は、MSH2関連リンチ症候群における結腸外のがんの存在を基に容易に確認された。しかしながら、MSH2病原性多様体の保有率は、米国、オーストラリア、およびカナダから募集された大腸がん症例5,744人からなる集団ベースのコホートで、2,841人に1人と推定された[ 372 ]MSH2は、リンチ症候群に関連するMMR病原性多様体で最小の保有率であった。

MSH2病原性多様体キャリアにおける70歳までのあらゆるリンチ症候群関連がんのリスクは、57%から約80%までの範囲であることが明らかにされている。[ 297 ]MSH2病原性多様体に関連した結腸がんの生涯リスクは48~68%と推定される。[ 3 ][ 4 ][ 371 ]リンチ症候群患者のケースシリーズにおいて、生殖細胞MSH2病原性多様体キャリア(49人、女性が45%)では、結腸外のがんの生涯リスク(60歳のカットオフ年齢)が48%であったのに対して、MLH1病原性多様体キャリア(56人、女性が50%)では11%であった。[ 381 ]がんではないMSH2キャリア616人に関する併合した欧州登録データを用いたごく最近のプロスペクティブ研究で、大腸がんの累積発生率は、大腸内視鏡検査によるサーベイランスにもかかわらず、70歳で35%であった。[ 5 ]

MSH2キャリアにおける大腸がん診断時の平均年齢は、MLH1キャリアとほぼ同じとされている。MSH2病原性多様体の罹患者143人を含むある研究で、大腸がん診断時の平均年齢は43.9歳(範囲、16~90歳)であることが明らかにされた。同じ研究で、MLH1病原性多様体キャリア137人における大腸がん診断時の平均年齢が42.8歳(16~81歳)であることが報告された。[ 378 ]

MSH6

ほとんどのシリーズで報告されている生殖細胞MSH6病原性多様体の保有率は、高リスククリニックからのリンチ症候群家系が約10%で、選択していない大腸がん患者の集団で高く、約50%であった。[ 362 ][ 382 ][ 383 ][ 384 ][ 385 ][ 386 ][ 387 ]InSiGHTデータベースで報告されたMSH6病原性多様体の保有率は、2012年で18%であった。[ 376 ]MSH6病原性多様体で推定される保有率が広範囲となったのは、少ないサンプルサイズおよび確認バイアスに加えて、MSH6関連リンチ症候群家系では、MLH1およびMSH2関連リンチ症候群家系と比較して、大腸がん発症年齢が遅く、顕著な家族歴が少ないことによる結果であった。[ 382 ]これは、有害なMSH6生殖細胞病原性多様体のキャリア42人を対象とした集団ベース研究からの知見と一致しており、そのうち30人(71%)でアムステルダム基準IIに適合しないがん家族歴がみられた。[ 6 ]大腸がん症例5,744人を対象とした最近の国際的な集団ベースの研究で、MSH6病原性多様体の保有率は758人に1人と推定され、MMR遺伝子はPMS2に次いで2番目に多い保有率であると位置付けられた。[ 372 ]

MSH6病原性多様体キャリアにおけるリンチ症候群関連がんの生涯リスクは約25%であり[ 297 ]、大腸がんの生涯リスクは12~22%と推定されるほか[ 4 ][ 6 ]MSH6キャリアは、MLH1およびMSH2キャリアより遅い年齢で大腸がんと診断される。20家系からのMSH6キャリア146人(男性59人、女性87人)を対象とした初期の研究では、そのすべてがMSH6の切断型病原性多様体であり、70歳までの大腸がんの有病率は、MLH1MSH2、およびMSH6キャリアで同程度であった(P = 0.0854)。しかしながら、大腸がん診断時の平均年齢は、(a)男性のMSH6キャリアが55歳(n = 21;範囲、26~84歳) vs MLH1およびMSH2病原性多様体のキャリアでそれぞれ43歳および44歳、ならびに(b)女性のMSH6キャリアが57歳(n = 15;範囲、41~81歳) vs MLH1およびMSH2病原性多様体のキャリアでそれぞれ43歳および44歳であった。[ 388 ]

これまでに報告されたMSH6病原性多様体キャリアを対象とした最大規模のシリーズでは、家族がんクリニックおよび集団ベースがん登録を通して5ヵ国から確認された113家系が含まれている。[ 6 ]一般集団の発生率と比較すると、MSH6病原性多様体キャリアでは、性別および年齢と無関係に大腸がんの発生率が8倍高かった(ハザード比[HR]、7.6;95%CI、5.4-10.8)。70歳までに、男性のMSH6病原性多様体キャリアの22%(95%CI、14%-32%)が大腸がんを発症したのに対して、女性のキャリアでは10%(95%CI、5%-17%)であった。80歳までに、男性のMSH6病原性多様体キャリアの44%(95%CI、28%-62%)が大腸がんと診断されたのに対して、女性のキャリアでは20%(95%CI、11%-35%)であったことから、大腸がんの有病率は男性が2倍高かった。

がんではないMSH6キャリア305人に関する併合した欧州登録データを用いたごく最近のプロスペクティブ研究で、大腸がんの累積発生率は、大腸内視鏡検査によるサーベイランスにもかかわらず、70歳で20%であった。[ 5 ]

PMS2

PMS2は、MMRの遺伝子ファミリーの遺伝子として最後に同定された。これは、家系での浸透度が低いほど、臨床基準を用いて同定することがより困難になるためであり[ 389 ]、偽遺伝子の干渉に起因するDNA変異解析の限界のためでもあった。

大腸がんでリンチ症候群が疑われる個人を対象とした初期の研究で、PMS2病原性多様体の保有率は2.2%から5%とさまざまで[ 269 ][ 390 ]、2012年には、InSiGHTデータベースで報告されたように7.5%に増加した。[ 376 ]スイスにおける選択していない大腸がん症例の普遍的腫瘍検査について検討した研究からの連続登録症例1,000人のIHC評価では、腫瘍の1.5%にPMS2発現の孤立性欠如が明らかにされた。このようなPMS2欠損大腸がんの頻度がすべてのPMS2関連リンチ症候群を代表するものであったならば、リンチ症候群と関連する遺伝子でPMS2が最も多くなるはずである。[ 391 ]大規模な集団ベースの大腸がんコホートから得られた結果では、PMS2病原性多様体の保有率は、すべてのMMR多様体のうち最も高く、714人に1人がPMS2遺伝子多様体キャリアであった。[ 372 ]

あらゆるがんの生涯リスクは、ヘテロ接合性PMS2病原性多様体キャリアで25%から32%の範囲であることが明らかにされている。[ 297 ]3件の集団ベースの研究および1件のクリニックベースの研究を対象としたメタアナリシスでは、PMS2病原性多様体キャリアについて、70歳までの大腸がんのリスクは男性で20%、女性で15%であり、子宮内膜がんのリスクは15%であると推定された。[ 392 ]同様に、クリニックベース登録の欧州コンソーシアムでは、確認バイアスを修正することに留意されており、PMS2病原性多様体を有する場合の生涯(70歳まで)の大腸がん累積リスクが男性で19%、女性で11%に過ぎなかったことが明らかにされた。[ 393 ]さらに、PMS2病原性多様体を有する患者では、大腸がんの発症時期がMLH1およびMSH2病原性多様体を有する患者より7~8年遅かった。[ 390 ]がんではないPMS2キャリア77人に関する併合した欧州登録データを用いたプロスペクティブ研究で、大腸がんの累積発生率は、大腸内視鏡検査によるサーベイランスにもかかわらず、70歳で10%であった。[ 5 ]さらに2つの登録データが補充された欧州コンソーシアムのPMS2の284家系から5,000人近い患者を対象にした解析は、PMS2に関連するがんリスクのより強固な推定値を提供するように意図されていた。[ 375 ]80歳までの大腸がんのリスクは男性で13%(95%CI、7.9%-22%)および女性で12%(95%CI、6.7%-21%)であったのに対し、一般集団のリスク推定値はそれぞれ6.6%および4.7%であった。子宮内膜がんリスクは13%(95%CI、7%-24%)と明らかにされた。これらのコホートでは、他のリンチ症候群腫瘍の過剰リスクは確認されなかった。著者らは、このことは特に研究されたわけではないが、これらのデータから大腸内視鏡検査の開始を35~40歳まで延期し、追跡の間隔をより長期(2~3年)にする検討が正当化されると結論付けた。European Prospective Lynch Syndrome Databaseからの最初の報告と同様に、このような大腸内視鏡検査およびポリープ切除術によって、発見される大腸がんの割合がどの程度減少するかを評価することは不可能であった。

PLSDは、リンチ症候群のがんリスクを評価する進行中の重要なイニシアチブである。スクリーニングの実施に関して具体的な詳細が欠けているが、PLSDには欧州の多くのプログラムからの年齢、性別、およびMMR遺伝子により分類された転帰データが含まれている。[ 5 ][ 394 ][ 395 ]より大規模なPLSDにおける限界を認識したうえで、より詳細なサーベイランスデータが得られたサブセットが提供されている。[ 396 ]これらのドイツ、オランダ、およびフィンランドからのプロスペクティブな大腸内視鏡検査データには、患者2,747人が含まれており、そのうち62人ではサーベイランス開始時点でがんの既往歴がなかった。サーベイランスの実施法に差があるため、大腸内視鏡検査の実施間隔は、ドイツで1年、オランダで2年、フィンランドで3年と近似された。大腸内視鏡検査回数の中央値は5回、患者当たりの観察期間の中央値は約8年であった。サーベイランスの間隔に差があるにもかかわらず、腺腫検出率は、がん既往歴のある患者(14%)とない患者(15.6%)で同程度であることが明らかになった。追跡期間10年で、最初のがんの発生率は異時性腫瘍でそれぞれ8.4%および14%であった。リスクを高める因子は、男性、大腸がんの既往、MLH1またはMSH2病原性多様体の存在、40歳を超える年齢、および指標となる大腸内視鏡検査時の腺腫であった。注目すべき点として、1年、2年、および3年のスクリーニング期間で大腸がん検出および検出時の病期に有意差は認められなかった。

両アレル性PMS2病原性多様体のキャリアでは、より重度の表現型が見られる点に留意することが重要である。(詳しい情報については、本要約のリンチ症候群の遺伝学のセクションのBMMRDのサブセクションを参照のこと。)

これらの病原性多様体キャリアにおける大腸がんおよび子宮内膜がんの生涯リスクを表11に要約する。

表11.リンチ症候群関連病原性多様体キャリアにおける大腸がんおよび子宮内膜がんの生涯リスク
遺伝子 大腸がんの生涯リスク(%) 子宮内膜がんの生涯リスク(%) 参考文献
MLH1 41–50 34–54   [ ][ ][ ]
MSH2 35–56 21–51   [ ][ ][ ]
MSH6 10–22 16–49   [ ][ ][ ]
PMS2 10 24   [ ]

EPCAM

リンチ症候群患者のサブセット(約1%)では、EPCAMに病原性多様体がみられ、これはMSH2プロモーターの高メチル化および不活性化につながる。[ 397 ]EPCAM欠失キャリア194人を対象とした欧州の研究で、70歳までの大腸がんの累積リスクは75%で、発症時の平均年齢は43歳であった。これは、MSH2キャリアにおけるリスク(70歳まで最大68%)と同程度である。しかしながら、この研究でEPCAM欠失を認める女性における子宮内膜がんのリスクが12%であったのと比較すると、MSH2キャリアにおけるリスクは最大71%であった。[ 398 ]関連する表現型は、EPCAM遺伝子の3'末端における欠失多様体の位置に依存する;欠失が大規模でMSH2のプロモーター部分を含む場合、表現型は他のMSH2関連リンチ症候群家系と類似する。[ 398 ]欠失にEPCAMの終止シグナルが含まれるが、MSH2遺伝子およびプロモーターのすべてが残っている場合、表現型は主に大腸がんに限定される。[ 399 ]

同じEPCAM欠失でも3'末端に限定され、MSH2のプロモーターに伸びていない場合の2家系を対象としたある研究では、結腸外のがんはほとんどみられず、子宮内膜がんは全くみられなかった。[ 399 ]しかしながら、その後の研究により、EPCAM多様体により生じたMSH2蛋白発現の消失が認められる女性では、子宮内膜がんのリスクも高いことが実証された。[ 398 ]

BMMRD

上述したように、BMMRDとして知られている状態では、親からの両アレルにMMR遺伝子多様体を保有することがある。(詳しい情報については、本要約のリンチ症候群の遺伝学のセクションのBMMRDのサブセクションを参照のこと。)

このような両アレル性多様体の発生は、特徴的であるが診断の根拠とならない臨床表現型に関連している。臨床的特徴には、小児における血液悪性腫瘍および脳腫瘍が含まれる。消化管腫瘍がみられる場合、発症時年齢は著しく低く、ときには20歳前に発症する。カフェオレ斑(Caf・au lait spot)およびそれ以外に神経線維腫症が示唆される所見が特徴的である。ときに、多発性腺腫を呈する患者もいる。

リンチ症候群における民族多様性および創始者病原性多様体

集団間でMMR多様体の頻度に著しい差はみられず、異なる多くの国で同程度の頻度が特定された。遺伝性乳がんと卵巣がん(HBOC)と同様に、特定の民族集団内で発生頻度が高い特定の多様体がある。HBOCで注目に値する点は、頻発性のアシュケナージユダヤ人多様体が多くみられることで、これらの一般的な多様体に対して消費者向け検査が提供されるほど多い。(詳しい情報については乳がんおよび婦人科がんの遺伝学に関するPDQ要約の BRCA1またはBRCA2病原性多様体を有する可能性の集団推定値セクションならびにがんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングに関するPDQ要約の消費者向け(DTC)遺伝子検査のセクションを参照のこと。)見掛け上の創始者多様体の古さは、一般にハプロタイプ解析により確立されている。いくつかの例で、創始者多様体ではないかとみられるものは、単に高頻度で頻発するde novoの多様体である。[ 400 ]

リンチ症候群のMMR遺伝子に関する最初の集団での知見は、フィンランドで非常に多くみられる2つのMLH1多様体の確認であり、この国におけるリンチ症候群の大多数の症例を占めていた。[ 401 ][ 402 ]その時以来、比較的選択性の低い大腸がん患者のシリーズで多様体検査を受けたほとんどの集団で、創始者多様体が特定されている。その報告の多くが欧州からである。フィンランドと同様に、移民が少ないかなり均一な民族の設定で、特定することが容易な可能性がある。欧州における創始者多様体は、英国、スウェーデン、スイス、イタリア[ 403 ]、ポルトガル、フランス、スペイン、およびハンガリーで確認されており、すべての民族集団に存在する可能性が高い。このような報告が少ないのは、アジア[ 404 ]、ラテンアメリカ、中東諸国、およびアフリカである。

米国では、MSH2遺伝子のエクソン1~6における欠失が本遺伝子における多様体の20%と高い割合を占めていると推定されている。このいわゆるAmerican Founder Mutationは、約500年前から現在までのハプロタイプ解析により測定されている。[ 405 ]

ウルグアイ、コロンビア、ブラジル、アルゼンチン、およびチリからのデータを併合した南米の研究でも、アムステルダムおよびBethesda特性に従って関心のある症例が選択され、MLH1の60%の頻度およびMSH2の40%の頻度が得られている。MSH6およびPMS2は評価されなかった。多様体の頻度に加え、おそらくMLH1およびMSH2による相対的な寄与に選択バイアスが影響を及ぼしている可能性が高い。コロンビアで可能性のある創始者多様体が注目された。[ 406 ]

所定の民族/地理的地域で多く再現される創始者多様体の検査は、段階的な戦略が採用される場合の費用対効果の最初の段階であるとみなされているが、広範なパネル検査のアプローチが基本的戦略としてますます多く実施されると、必要なくなる可能性が高い。

民族に関して1つの考慮事項は、特定集団内での血族関係発生率増加およびその後のBMMRDリスクに関するものである。(詳しい情報については、本要約の両アレル性ミスマッチ修復欠損[BMMRD]のセクションを参照のこと。)

米国における民族多様性

本セクションでは、米国における異なる民族集団間でのMMR遺伝子多様体の分布を探索するデータを示している。これらの研究の解釈は、選択および確認バイアスの存在を考慮すると、困難を伴う。さらに、集団ベース研究であっても、多くの民族集団でサンプルサイズが小さいことおよび民族/人種の自己報告により制限される。

地理または民族性によるリンチ症候群の頻度に多くの多様性が存在することを示すデータは少ない。小規模かつ/または均一な民族集団内での創始者多様体の存在は、その特定の遺伝子における多様体の保有率を増加させる可能性があると考えられる。MLH1およびMSH2多様体の割合におけるわずかな違いが集団間に存在する。MSH6およびPMS2は、その相対的頻度の推定を可能にすることに関して、集団レベルでの研究が不十分である。

オハイオ州コロンバスにおける研究のように、米国で最も代表的な集団ベースの研究は、その全体の数が大きいことに一致して、白人により代表過剰となっている。結果的に、ヒスパニック系およびアフリカ系米国人などの少数民族に関するデータは、代表サンプルがより少なく、厳密性に欠ける問題を抱えている。

プエルトリコで実施された研究では、アムステルダム基準またはBethesdaガイドラインを根拠として疑われるカリブ海ヒスパニック系のリンチ症候群患者89人における多様体が検討された。[ 407 ]患者は、即時の生殖細胞検査または腫瘍のMSI/IHCから始まる段階的評価のいずれかを受けた。遺伝子別の多様体の頻度は、MSH2が67%、MLH1が25%、およびMSH6が8%であった。確定的な創始者多様体は明らかにならなかった。明らかに、臨床家族歴基準による参加者の選定は、浸透度の低いMSH6およびPMS2遺伝子の過少報告につながったと考えられる。

カリフォルニア、テキサス、およびプエルトリコからのクリニックベースのシリーズでは、報告されたものと同様な多様体全体の保有率が得られ、MLH1MSH2よりわずかに多かったが、MSH6およびPMS2も含まれていた。スペインおよび欧州までさかのぼることができる潜在的創始者多様体の存在が注目された。[ 408 ]

ヒスパニック系に最も近い集団をベースとしたリンチ症候群に関する情報は、California Tumor Registryに基づく南カリフォルニアの研究で、そこでは265人が特定された。[ 409 ]腫瘍がMSI-Hの患者のうち、13人(62%)がMMR多様体であった。MMR多様体の頻度は、MLH1が46%(13人中6人)、MSH2が31%(13人中4人)、MSH6が15%(13人中2人)、PMS2が8%(13人中1人)であった。

数が少ない問題は、米国で実施されているより正確な集団ベース研究からの知見により浮き彫りになっている。オハイオ州コロンバスからの研究で、連続シリーズ患者のうちアフリカ系米国人であったのはわずか8%で、白人のサブセットとしてのヒスパニック系集団には言及されなかった。[ 350 ]Dana-Farber Cancer Instituteで治療を受けたほぼすべての大腸がん患者のパネル検査を含む別の研究で、アフリカ系米国人は5%未満、ヒスパニック系は3%未満であり、少ないサブセットから意味のあるデータを抽出する困難性を浮き彫りにしている。[ 353 ]

アフリカ系米国人におけるリンチ症候群

アフリカ系米国人におけるリンチ症候群の有病率およびMMR多様体に伴うがんリスクを評価する際の問題は、ヒスパニック系のものと類似している;研究が進んでいない不均一な集団である。米国における13の紹介施設からのクリニックベースのデータの研究では、リンチ症候群の51家族が特定され、MMR遺伝子多様体の頻度は以下の通りであった:MLH1が61%、MSH2が21%、MSH6が6%、およびPMS2が12%。がん発症年齢の分布曲線は、白人集団でみられるものと非常に似ていた。[ 410 ]ヒスパニック系のほとんどの研究と同様に、普遍的な腫瘍検査などの一貫した計画的な評価に従って特定された症例はなかった。

異時性大腸がんのリスク

リンチ症候群で顕著な特徴は、病原性MMR遺伝子多様体のキャリアで、同時性および異時性の大腸新生物の発症リスクが高いことである。Colon Cancer Family Registryからのリンチ症候群患者382人を対象としたある研究で、異時性大腸がんの発生率は、結腸部分切除術後10年で16%、20年で41%、30年で63%であった。[ 411 ]異時性大腸がんのリスクは、切除した結腸が10cmごとに段階的に31%低下し、広範囲の結腸切除を受けた50人で異時性大腸がんと診断された患者はいなかった。がんの既往があるリンチ症候群の患者1,273人を対象とした別のプロスペクティブ研究で、その後の大腸がんの累積発生率は、MLH1キャリアで46%、MSH2キャリアで48%、MSH6キャリアで23%と報告された。これは、過去にがんの診断を受けていない病原性多様体キャリアよりも新たながんのリスクがわずかに大きいのみであることを示している。ここでも優れた生存がみられ、予後良好な腫瘍病理像およびサーベイランスの効果が複合したものとみなされた。[ 394 ]

リンチ症候群に関連する結腸外悪性腫瘍のリスク

リンチ症候群患者は、その他のがんのリスクが高く、特に子宮内膜がんのリスクが高い。86家系の女性1,018人で、70歳までの結腸外のがんの累積リスクは20%と推定されたのに対して、一般集団では3%であった。[ 412 ]個々のがんの割合は家系によって変化するという証拠がいくつかある。[ 413 ][ 414 ][ 415 ]

子宮内膜がん

リンチ症候群で最もよくみられる結腸外悪性腫瘍は子宮内膜腺がんであり、リンチ症候群家系の約50%で1人以上の女性が罹患する。さらに、MMR遺伝子の病原性多様体を有する女性の50%が最初の悪性腫瘍として子宮内膜がんを発症する。[ 416 ]

子宮内膜がんの生涯リスクは、MLH1病原性多様体キャリアの44%からMSH2病原性多様体キャリアの71%に及ぶと推定されているが、初期のいくつかの研究では、確認バイアスのためにリスクを過大評価している可能性がある。[ 6 ][ 273 ][ 371 ][ 380 ][ 417 ]113家系におけるMSH6病原性多様体キャリアにおける子宮内膜がんの生涯リスクは、70歳で26%、80歳で44%と推定された[ 6 ];全体として、MSH6病原性多様体キャリアの女性では、一般集団の女性よりも子宮内膜がんのリスクが25倍高い(HR、25.5;95%CI、16.8-38.7;P < 0.001)。[ 6 ]別の研究で、子宮がんの累積生涯リスクは、MSH6病原性多様体キャリア(71%)の方がMLH1(27%)およびMSH2(40%)の病原性多様体キャリアより高く(P = 0.02)、診断時の平均年齢は、MSH6病原性多様体キャリアが54歳(n = 29;範囲、43~65歳)に対して、MLH1病原性多様体キャリアが48歳、MSH2病原性多様体キャリアが49歳であった。[ 388 ]PMS2病原性多様体キャリアでは、70歳での子宮内膜がんのリスクが15%であることが報告されている。[ 392 ]Colon Cancer Family Registryプログラムでプロスペクティブに収集されたデータでは、MMR遺伝子病原性多様体を有する女性において、5年子宮内膜がんリスクが約3%、10年子宮内膜がんリスクが約10%という結果が得られた。[ 418 ]がんの既往がないMMRキャリア1,942人の併合された欧州登録データを用いたプロスペクティブ研究では、子宮内膜がんの累積リスクがMLH1キャリアで34%、MSH2キャリアで51%、MSH6キャリアで49%、PMS2キャリアで24%であることが報告された。[ 5 ]EPCAM病原性多様体に起因するMSH2蛋白発現の消失が認められる女性もEPCAMにおける多様体の位置に応じて子宮内膜がんのリスクがある。1件の研究により、EPCAM欠損キャリアでは子宮内膜がんの累積リスクが12%(95%CI、0%-27%)であることが明らかにされた。[ 398 ]

指標となるがん(index cancer)として子宮内膜がんが認められたリンチ症候群の女性127人を対象にした研究では、他のがんのリスクが有意に高いことが示された。次のがんのリスク増大が報告された:大腸がん、48%(95%CI、27.2%-58.3%);腎がん、腎盂がん、および尿管がん、28%(95%CI、11.9%-48.6%);膀胱がん、24.3%(95%CI、8.56%-42.9%);および乳がん、2.51%(95%CI、1.17%-4.14%)。[ 419 ]

Colon Cancer Family RegistryからのMSH6病原性多様体を保有する113家系を対象とした研究で、女性のMSH6キャリアでは、子宮内膜がんの発生率が一般集団と比べて26倍高かった(HR、25.5;95%CI、16.8-38.7)。他のリンチ症候群関連がんの6倍高い発生率(HR、6.0;95%CI、3.4-10.7)は、一般集団と比較して観察されたが、男性のMSH6キャリアでは認められなかった。[ 6 ]

リンチ症候群関連の子宮内膜がんは、類子宮内膜亜型に限定されず、リンチ症候群における多種多様な子宮腫瘍には、明細胞がん、子宮の乳頭状漿液性がん、および悪性ミュラー管混合腫瘍も含まれる。[ 420 ]また、子宮内膜がんは、最も一般的に子宮下部からも発生する。(スクリーニング方法に関する詳しい情報については、本要約のリンチ症候群における子宮内膜がんのスクリーニングのセクションを参照のこと。)

リンチ症候群における大腸がんおよび子宮内膜がん以外のがんリスク

複数の研究により、リンチ症候群に関連するその他の悪性腫瘍のリスク増加が実証されており、その中には、胃、膵臓、卵巣、小腸、脳のがん、膀胱、尿管、および腎盂の移行上皮がん、皮膚の皮脂腺腺腫がある。[ 412 ][ 413 ][ 421 ][ 422 ][ 423 ][ 424 ]これに加え、いくつかの研究では、乳がん、前立腺がん、および副腎皮質がんとの関連性が示唆されている。[ 418 ][ 422 ][ 425 ][ 426 ][ 427 ]これらの多くの悪性腫瘍との関連性の強さは、大半の研究でサンプルサイズが小さい(および結果的に相対リスク[RR]に伴うCIが幅広い)、解析のレトロスペクティブな性質、ならびに紹介バイアスまたは確認バイアスにより限定的である。

これまでの最大規模のプロスペクティブ研究は、結腸がん家族登録(Colon Cancer Family Registry)で収集された非罹患の病原性多様体キャリア446人を対象にしたものである。[ 418 ]Colon Cancer Family Registryは、北米およびオーストラリアの6施設から集団ベースおよびクリニックベースで募集された国際的なコホートである。対照被験者は、MMR病原性多様体が確認された家系からの非キャリアであった。3つのサブコホートが用いられ、大腸がん(キャリアが365人、非キャリアが903人)、子宮内膜がん(キャリアが215人、非キャリアが523人)、およびその他のがん(キャリアが446人、非キャリアが1,029人)のリスクが解析された。最長で10年間追跡された参加者は、大腸がん(SIR、20.48;95%CI、11.71-33.27;P < 0.01)、子宮内膜がん(SIR、30.62;95%CI、11.24-66.64;P < 0.001)、卵巣がん(SIR、18.81;95%CI、3.88-54.95;P < 0.001)、胃がん(SIR、9.78;95%CI、1.18-35.30;P = 0.009)、腎がん(SIR、11.22;95%CI、2.31-32.79;P < 0.001)、膀胱がん(SIR、9.51;95%CI、1.15-34.37;P = 0.009)、膵がん(SIR、10.68;95%CI、2.68-47.70;P = 0.001)、女性の乳がん(SIR、3.95;95%CI、1.59-8.13;P = 0.001)のSIRが増大していたことを示した。[ 418 ]

表現型に多発性皮膚腫瘍(皮脂腺腫、皮脂腺がん、角化棘細胞腫など)および大腸がんを含むリンチ症候群で十分な報告がある多様体はムア-トレ症候群である。[ 428 ][ 429 ]MLH1MSH2、およびMSH6遺伝子における病原性多様体がムア-トレ症候群家系に認められており、MSH2キャリアで保有率の増加が報告されている。[ 430 ][ 431 ][ 432 ][ 433 ][ 434 ][ 435 ][ 436 ][ 437 ]MSH1およびMLH2の非血縁発端者1,914人を対象とした研究により、ムア-トレ症候群の表現型を有する個人ではMSH2がより一般的であることが明らかにされた。皮脂腺腫瘍患者15人のうち、13人(87%)でMSH2病原性多様体が認められたのに対して、MLH1病原性多様体は2人に認められた(P = 0.05)。[ 438 ]IHCまたはMSI検査を用いたDNA MMR活性欠損の証拠は、ランダムに収集された皮脂腺腫瘍患者163人中69人(42%)で報告されたことから、これが皮脂腺腫瘍発生の一般的機序であり、皮脂腺腫瘍におけるMMR欠損の検査は、リンチ症候群またはムア-トレ症候群のスクリーニングに無効な手段と考えられることが示唆される。[ 439 ](ムア-トレ症候群における皮膚腫瘍の詳しい情報については、皮膚がんの遺伝学に関するPDQ要約の皮脂腺がんのセクションを参照のこと。)

表12.リンチ症候群関連がんおよび70歳までの累積リスクa
がんの部位 一般集団のリスク(%) リンチ症候群患者におけるリスク(%) 参考文献
CNS = 中枢神経系。
a 出典:Syngal et al.[ ]
b データの進展により、リンチ症候群と乳がんおよび前立腺がんとの間で可能性のある関連性が示唆される。(これらのがんに関する詳しい情報については、本要約のその他のリンチ症候群と関係する可能性のあるがんのセクションを参照のこと。)
c Howlader et al.[ ]
d がんリスク推定値の範囲は、研究のサンプルサイズ、被験者の確認、および統計手法に基づき、さまざまである。
<1 0.2–13   [ ][ ][ ][ ][ ][ ][ ][ ][ ]
卵巣 1.3 3.4–22   [ ][ ][ ][ ][ ][ ][ ][ ][ ][ ][ ]
肝胆管 <1 0.02–4   [ ][ ][ ][ ][ ]
尿路 <1 0.2–25.5   [ ][ ][ ][ ][ ][ ][ ][ ][ ]
小腸 <1 0.4–12   [ ][ ][ ][ ][ ][ ]
脳/CNS <1 1.2–3.7   [ ][ ][ ][ ]
脂腺腫瘍 <1 9.0   [ ][ ][ ]
膵臓 1.6 0.4–3.7   [ ][ ][ ]

その他のリンチ症候群と関係する可能性のあるがん

その他の腫瘍は、多種多様なリンチ症候群の一部とみなされているが、これには異論がある。乳がんおよび前立腺がんは、リンチ症候群関連の可能性がある腫瘍として発生するとされているため、MMR遺伝子は現在これらのがんに対する多重遺伝子(パネル)検査に含められている。

乳がん

リンチ症候群における乳がんのリスクの問題については見解が分かれている。複数のレトロスペクティブ研究の結果は一致していないが、いくつかの研究では、リンチ症候群患者が罹患する乳がんの一部にマイクロサテライト不安定性がみられた;[ ][ ][ ][ ]これらの研究の1つでは、リンチ症候群患者が有する乳がんリスクを評価し、リスクが増大しないことを明らかにした。[ ]しかしながら、これまでの最大規模のプロスペクティブ研究[ ]では、Colon Cancer Family Registryで収集された非罹患の病原性多様体キャリア446人を対象に最長で10年間追跡され、乳がんのSIRは3.95(95%CI、1.59-8.13;P = 0.001)と高値であることが報告されている。[ ]その後、同じグループは、以前に大腸がんと診断されたMMR遺伝子病原性多様体キャリア764人のデータを解析した。その結果、大腸がん後の乳がんの10年リスクは2%(95%CI、1-4%)、SIRは1.76(95%CI、1.07-2.59)であった。[ ]臨床的に紹介されたリンチ症候群家系からなる英国のシリーズでは、確認について修正するよう努め、MLH1キャリア157人で乳がんリスクが2倍に増加することが示されたが、他のMMR多様体を有するキャリアでは増加が示されなかった。[ ]腫瘍の分子検査の結果が得られた15の研究を対象にリンチ症候群における乳がんリスクについて検討したメタアナリシスの結果では、MMR病原性多様体キャリアにおける乳がん患者122人中62人(51%;95%CI、42%-60%)がMMR欠損であったことが明らかにされた。さらに、計21の研究での乳がんリスク推定値によると、MMR多様体キャリアと非キャリアを比較した8の研究でリスクが2倍から18倍高かった一方で、13の研究では乳がんリスクとリンチ症候群との関連性に統計的な証拠が観察されなかったことが示された。[ ]

その後の一部の研究で、以前に発表されたものよりも高い乳がんリスクの存在が示唆されている[ ][ ][ ][ ]が、これは一貫して観察されているわけではない。[ ]主にMLH1およびMSH2キャリアを含むリンチ症候群の325のカナダ人家系を対象にした研究では、MSH2キャリアにおける乳がんの生涯累積リスクは22%と報告された。[ ]同様に、リンチ症候群の423人の女性を対象にした研究でも乳がんリスクが高く、MLH1およびMSH2病原性多様体と比較してMSH6およびPMS2病原性多様体キャリアでは実質的にリスクが高かった。[ ]実際、60歳までの乳がんリスクは、PMS2で37.7%、MSH6で31.1%、MSH2で16.1%、およびMLH1で15.5%であった。これらの知見は、リンチ症候群関連病原性多様体(MLH1MSH2MSH6PMS2EPCAMなど)を有する528人の患者を対象にした別の研究(この研究において、PMS2およびMSH6多様体は、大腸がんのみを有する患者と比較して、乳がんのみを有する患者においての方がはるかに頻度が高かった;P = 2.3 x 10-5)と一致していた。[ ]乳がんとMSH6の関連を裏付ける追加のデータが、遺伝子検査を受けた米国の1万人を超えるがん患者の研究を介して提供された。[ ]この研究の知見から、MSH6は乳がんと関連し、オッズ比(OR)は2.59(95%CI、1.35-5.44)であることが示された。以上を合わせると、これらの研究から、多重遺伝子パネル検査を受ける個人が多くなるにつれてリンチ症候群患者におけるリスクプロファイルが進化し続けている過程が強調されており、以前の研究と比較してPMS2およびMSH6病原性多様体を有する多くの個人が代表となっている。決定的なリスク推定がないため、リンチ症候群の個人は、家族歴に基づいて乳がんのスクリーニングを受ける。[ ]

前立腺がん

最初は家系選択基準に前立腺がんが含まれていなかった2つの米国リンチ症候群登録からの198家系を対象とした研究で、前立腺がんはリンチ症候群と関連することが明らかにされた。MMR遺伝子病原性多様体キャリアの血縁者における前立腺がんリスクは、60歳で6.3%、80歳で30%であったのに対して、一般集団のリスクは60歳で2.6%、80歳で18%であり、全体のHRは1.99(95%CI、1.31-3.03)であった。[ 425 ]2014年のメタアナリシスでこの関連が支持され、既知のMMR病原性多様体を有する男性における前立腺がんの推定RRは3.67(95%CI、2.32-6.67)であることが示された。[ 465 ]MSH2病原性多様体を有する男性では、このリスクが高い可能性がある。[ 427 ][ 465 ]ルーチンの前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングをめぐっては広く議論されているが、それにもかかわらず本研究の著者らが示唆したところによると、男性のMMR遺伝子キャリアを対象に40歳時に開始するPSAおよび直腸指診法によるスクリーニングは「検討が妥当」と考えられる。[ 425 ]がんの家族歴または診断時年齢で選択していない転移性前立腺がんの男性692人を対象とした研究では、4人(0.5%)の男性で生殖細胞MMR病原性多様体が同定された。[ 466 ]現在、分子的および疫学的証拠から、リンチ症候群のがんの1つとして前立腺がんが支持されている。乳がんの場合と同様に[ 465 ]、MMR病原性多様体キャリアに対する前立腺がんのサーベイランスガイドラインを策定できるようになる前に、絶対リスクと年齢分布を規定するための研究がさらに必要である。(前立腺がんとリンチ症候群に関する詳しい情報については、前立腺がんの遺伝学に関するPDQ要約のMMR遺伝子のセクションを参照のこと。)

副腎皮質がん

ACC症例が114人で、そのうち94人の患者が詳細な家族歴評価を受け、リー-フラウメニ症候群が除外されたシリーズで、リンチ症候群が示唆される家族歴が3人の患者にみられた。94家系におけるMMR遺伝子病原性多様体の保有率は3.2%で、非選択の大腸がんおよび子宮内膜がん患者におけるリンチ症候群の割合と同程度であった。同プログラムからのMMR遺伝子病原性多様体陽性リンチ症候群の135家系を対象としたレトロスペクティブ・レビューで、2人の発端者がACCの既往を有していたことが判明した。MSI検査が実施可能であった4例のACCのうち、すべてがMSSであった。これらのデータから、他にリンチ症候群がACC発端者で疑われる場合、MSIまたはIHCを用いたACCの初期の評価は誤った結論を導く可能性があることが示唆される。[ 426 ]

その他のがん

数件の研究で、その他のいくつかのがんがリンチ症候群と関連していることが明らかにされているが、さらなる研究が必要である。表12では、一般集団におけるこれらのがんのリスクをリンチ症候群患者と比較している。

リンチ症候群の管理

リンチ症候群におけるスクリーニングおよびサーベイランス

リンチ症候群における結腸がんのスクリーニングおよびサーベイランス

リンチ症候群患者における大腸がんおよびその前駆病変である腺腫性ポリープの生物学的挙動のいくつかの側面から、一般集団における平均リスクの人に推奨されるものと比較して、この集団における大腸がんスクリーニングのアプローチが異なることが支持される。現時点で、リンチ症候群におけるがんのスクリーニングおよびサーベイランスに対する推奨では、MMR系における原因となる生殖細胞欠損のために、一般集団と比較してがんリスクに違いがあることを考慮に入れている。以下の生物学的相違がリンチ症候群で現在実施されているスクリーニング戦略の基礎をなしている:

リンチ症候群における大腸がんのスクリーニングおよびサーベイランスに対する大腸内視鏡検査の使用の証拠

リンチ症候群における大腸がんのリスクは、1980年代初期から現在に至るまで実施されているフィンランドのスクリーニング試験で研究され、データが更新されている。[ 471 ][ 475 ]この試験の経過を通して、縦断的研究のデザインが進化してきている。最も初期には、各個人の多様体状態に関する情報が不明であり、研究参加者は、臨床基準の適合性に基づいて適格であった;この研究は、無症状でスクリーニングを受けたがんまたは腺腫の診断歴がある人およびそのような既往がない人から構成されたが、比較群はスクリーニングを拒否したこのような同じ家系の人から構成された。これらの人の多く(68%)が造影/バリウム注腸X線検査によるスクリーニングを受けた。大腸内視鏡検査は、この情報が得られてからMMR病原性多様体キャリアに用いられたアプローチで、この研究からの経時的な結果に基づいて、検査と検査の間隔が5年から3年、さらに2年に短縮された。

このシリーズで15年にわたり実施された対照群を設けたスクリーニング試験では、リンチ症候群家系からの個人で大腸内視鏡検査により、大腸がんの発生率、大腸がん特異的死亡率、および全死亡率の減少が実証された。[ 471 ]リンチ症候群家系からの133人において3年間隔で長期的なスクリーニングが提供され、これらの家系からの対照群119人はスクリーニングを受けなかった。スクリーニングを受けた8人(6%)が大腸がんを発症したのに対して、対照群では19人(16%)であり、スクリーニングによるリスク減少は62%であった。さらに、スクリーニング群における大腸がんはすべて局所性で、死亡の原因にはならなかったが、対照群では9人が大腸がんにより死亡した。スクリーニング群では全死亡率にも有益性がみられ、死亡はスクリーニング群が10例、対照群が26例であった(P = 0.003)。

このシリーズのその後の注目は、腺腫またはがんの診断歴のない被験者に限定された。適格な病原性多様体キャリア420人は平均年齢が36歳で、追跡期間中央値6.7年で平均2.1回の大腸内視鏡検査を受けた。腺腫は被験者の28%で検出された。60歳までに1つ以上の腺腫が発生する累積リスクは男性で68.5%、女性で48.3%であった。注目すべき点として、ベースライン時の検査でがんがみられなかった人にがん(そのため中間期がんとみなされる)が60歳までに検出されるリスクは、男性が34.6%、女性が22.1%であった。60歳までの腺腫またはがんの累積リスクを統合すると、男性が81.8%、女性が62.9%であった。腺腫およびがんはいずれも約半数が脾湾曲よりも近位に位置していた。大腸内視鏡検査を用いるサーベイランスにもかかわらず大腸がんの割合は高いようであるが、この非ランダム化シリーズでは推奨された短い間隔での検査が規則正しく守られなかった。これらの著者らは2年間隔でのサーベイランスを推奨した。これは、ほとんどのコンセンサスガイドライン(表13を参照)に沿ったもので、大腸内視鏡検査による適切なスクリーニング間隔は依然として1~2年ごとである。検査から10年後の病原性多様体キャリア242人における大腸内視鏡サーベイランスデータの解析では、大腸がんおよび子宮内膜がんに対するサーベイランス処置のコンプライアンスが95%であったことが示されている。すべての大腸がんが予防されたわけではないが、死亡率は多様体陰性の近親者とほぼ同じであった。しかしながら、これは研究のサンプルサイズが比較的小さかったためであろう。[ 475 ]

リンチ症候群の患者では同時性大腸がんの発生リスクが高い。Danish HNPCC Registerに登録された大腸がん症例5304人(リンチ症候群774人を含む)のうち、原発性大腸がんから1年以内にリンチ症候群と診断される同時性大腸がん(>1 CRC)、家族性大腸がん(Amsterdam IまたはIIの基準を満たす症例)、および異時性大腸がん(50歳未満で1例の大腸がん、または50歳以上で2例を超える大腸がん)の相対リスクは、散発性大腸がんと比較してそれぞれ5.6、3.2、および1.9であった。したがって,大腸がんの強い家族歴を有する患者(特にリンチ症候群を有する患者)における同時性大腸がんのリスク上昇は、術前の大腸内視鏡検査で考慮すべきである。[ 476 ]

大腸内視鏡検査は結腸がんのサーベイランス方法として受け入れられている検査であるため、インジゴカルミンなどを用いた色素内視鏡検査の実施により組織学的に進行した小さな腺腫の検出率が増加しうるということが、予備的データから示唆されている。[ 477 ][ 478 ]

腺腫が発見された場合は、その腺腫についてMSI/IHCの検査を実施するかどうかという問題が生じる。大腸がんの既往があり、既知のMMR病原性多様体を有する患者を対象としたある研究では、腺腫12個中の8個にMSIとIHCの両蛋白の消失が認められた。[ 479 ]しかしながら、この研究の著者らは、腺腫組織でのMSI/IHC検査の結果が正常でもリンチ症候群は除外されないということを強調している。MSI/IHC検査異常は、最も小さい腺腫でまれであり、8mmを超える大きさの腺腫でより高頻度であることから、MMR欠損が腺腫の増殖段階で獲得されることも示唆される。[ 480 ]

証拠レベル(結腸サーベイランス):2ai

特別な考慮事項:リンチ症候群での大腸がんスクリーニング推奨に対するがんリスクにおける遺伝子特異的変動の影響

遺伝子特異的大腸がんリスクの変動のために、この分野の専門家は遺伝子特異的スクリーニングおよびサーベイランスの推奨を提案している。例えば、欧州コンソーシアム[ 393 ]は、MSH6病原性多様体キャリアに対するスクリーニングの開始を遅らせる推奨に沿って、大腸がんおよび子宮内膜がんのスクリーニングの開始を30歳まで遅らせる臨床的推奨を行った。また、リンチ症候群の患者と家族のケアに携わる米国の実際の臨時ワークグループによる2015年のレビューで、片アレル性のPMS2キャリアでは浸透度が低いことを示す複数の研究があるにもかかわらず、この集団にリンチ症候群のがんがないかを調べるサーベイランスガイドラインの変更を推奨することはできないことが結論付けられた。[ 389 ]

リンチ症候群の患者における結腸サーベイランスのための推奨は表13に要約されている。このような推奨に対しては、ほとんどの組織は遺伝子特異的なアプローチを採用している。[ 122 ][ 481 ][ 482 ][ 483 ]スクリーニングの推奨は全て,所見が正常であると仮定している。より積極的なスクリーニングスケジュールを個人ベースで検討してもよい。

表13.リンチ症候群の結腸サーベイランスのための遺伝子特異的な臨床ガイドラインa
団体
CRC = 大腸がん;EHTG = European Hereditary Tumor Group;ESCP = European Society of Coloproctology;ESMO = European Society for Medical Oncology;MMR = ミスマッチ修復;NCCN = National Comprehensive Cancer Network。
a本表では2014年以降に利用可能なガイドラインを要約している。米国がん協会など、他の組織は2014年以前にガイドラインを発表している。[ ]
bU.S. Multi-Society Task Force on Colorectal Cancerには、以下の組織が含まれる:American Academy of Family Practice、American College of Gastroenterology、American College of Physicians-American Society of Internal Medicine、American College of Radiology、American Gastroenterological Association(米国消化器病学会)、American Society of Colorectal Surgeons、およびAmerican Society for Gastrointestinal Endoscopy。
cMSH6キャリアにたいしては年齢を遅らせることを考慮。[ ]
dPMS2キャリアに対しては、5年ごとに大腸内視鏡検査を繰り返し施行することを考慮。[ ]
eConsider starting at age 30 for MSH6キャリアに対しては30歳で、PMS2キャリアに対しては35歳で開始することを考慮。MMRキャリアに対しては年一度の大腸内視鏡検査を考慮。[ ]
NCCN(2020)[ ] 20~25歳、あるいは最も早い診断時年齢が25歳前であれば、その年齢の2~5歳前に大腸内視鏡検査;1~2年ごとに繰り返し施行 20~25歳、あるいは最も早い診断時年齢が25歳前であれば、その年齢の2~5歳前に大腸内視鏡検査;1~2年ごとに繰り返し施行 30~35歳、あるいは最も早い診断時年齢が30歳前であれば、その年齢の2~5歳前に大腸内視鏡検査;1~2年ごとに繰り返し施行 30~35歳、あるいは最も早い診断時年齢が30歳前であれば、その年齢の2~5歳前に大腸内視鏡検査;1~2年ごとに繰り返し施行 EPCAM キャリアは、MSH2病原性多様体を有する個人と同様に管理すべきである。
ESMO(2020)[ ] 25歳、あるいは最も早い診断時年齢が25歳前であれば、その年齢の5歳前に大腸内視鏡検査;1~2年ごとに繰り返し施行 25歳、あるいは最も早い診断時年齢が25歳前であれば、その年齢の5歳前に大腸内視鏡検査;1~2年ごとに繰り返し施行 35歳、あるいは最も早い診断時年齢が25歳前であれば、その年齢の5歳前に大腸内視鏡検査c;1~2年ごとに繰り返し施行 35歳、あるいは最も早い診断時年齢が25歳前であれば、その年齢の5歳前に大腸内視鏡検査;1~2年ごとに繰り返し施行 N/A
British Society of Gastroenterology (BSG)/ Association of Coloproctology of Great Britain and Ireland (ACPGBI)/ United Kingdom Cancer Genetics Group (UKCGG) (2020)[ ] 25歳時に大腸内視鏡検査;2年ごとに75歳まで繰り返し施行 25歳時に大腸内視鏡検査;2年ごとに75歳まで繰り返し施行 35歳時に大腸内視鏡検査;2年ごとに75歳まで繰り返し施行 35歳時に大腸内視鏡検査;2年ごとに75歳まで繰り返し施行 EPCAM キャリアは、MSH2病原性多様体を有する個人と同様に管理すべきである。
European guidelines from the EHTG and ESCP; updated Mallorca group guidelines (2020) [ ] 25歳時に大腸内視鏡検査;2~3年ごとに繰り返し施行 25歳時に大腸内視鏡検査;2~3年ごとに繰り返し施行 35歳時に大腸内視鏡検査;2~3年ごとに繰り返し施行 35歳時に大腸内視鏡検査;2~3年ごとに繰り返し施行d N/A
U.S. Multi-Society Task Force on Colorectal Cancer(2014)b [ ]

リンチ症候群における結腸外のがんのスクリーニング

リンチ症候群における婦人科がんスクリーニング

リンチ症候群における子宮内膜がんのスクリーニング

注:一般集団における子宮内膜がん(子宮体がん)のスクリーニングについては、別のPDQ要約が用意されている。

子宮内膜がんは、リンチ症候群家系で最も多く観察される結腸外のがんであり、リンチ症候群家系の約50%で1人以上の女性が罹患する。(MMR病原性多様体キャリアにおける子宮内膜がんの遺伝子特異的リスクに関する詳しい情報については、本要約の子宮内膜がんのセクションを参照のこと。)

一般集団では、女性に異常出血や閉経後出血などの症状が現れた際に子宮内膜がんと診断されるのが一般的である。診断用の組織学的標本を得るために子宮内膜のサンプリングが実施される。子宮内膜がんの女性の80%はI期で受診し、リンチ症候群の女性で臨床症状が一般集団と異なることを示唆するデータはない。

子宮内膜がんのリスクが相当に高くなることから、リンチ症候群の女性に対する子宮内膜スクリーニングが提唱されている。提唱されているスクリーニング方法には、経膣超音波検査(TVUS)および/または子宮内膜生検がある。TVUSは依然として広く推奨されているが、その使用を支持するデータはない;現行のNCCNガイドラインでは、リンチ症候群で子宮内膜がんのスクリーニングを支持する明確な証拠がないことを提唱している。[ 122 ]2件の研究で、リンチ症候群の女性に対する子宮内膜スクリーニングにおけるTVUSの使用の検証が行われた。[ 485 ][ 486 ]リンチ症候群家系またはリンチ症候群様/HNPCC様家系に属する女性292人を対象としたある研究で、TVUSによって子宮内膜がんが検出された症例はなかった。加えて、症状を呈した女性2人でスクリーニング時以外でのがんの検出があった。[ 485 ]第2の研究では、リンチ症候群の女性41人がTVUSスクリーニングプログラムに登録された。179回のTVUSが実施され、異常が検出されたのは17回であった。この17人の女性のうち、3人では子宮内膜組織採取にて複雑で非典型的な過形成が認められたが、14人では子宮内膜組織採取は正常であった。しかしながら、TVUSでは正常所見の8ヵ月後に異常膣出血を呈した1人の女性を検出することができず、この女性は後にIB期の子宮内膜がんであることが判明した。[ 486 ]これらの研究はともに、TVUSは感度も特異度も高くないと結論付けている。

リンチ症候群の女性175人を対象に子宮内膜組織採取およびTVUSの両検査を含めた研究では、子宮内膜組織採取の方がTVUSと比較して感度が高いことが示された。子宮内膜がんの14症例のうちの11症例が子宮内膜組織採取によって発見された。他の3症例のうち、2例はスクリーニングの実施間隔の間に症状から発見されたものであり、もう1例は子宮摘出術の実施時に発見された潜伏子宮内膜がんであった。子宮内膜組織採取では、さらに14例の子宮内膜過形成も同定された。子宮内膜がんの女性14人のうち、10人は子宮内膜組織採取に加えてTVUSによるスクリーニングも受けていた。その10人のうち、4人ではTVUSも異常であったが、残りの6人ではTVUSが正常であった。[ 487 ]このコホート研究では、子宮内膜スクリーニングに対して子宮内膜組織採取によりTVUSを上回る利益が得られることが実証されたが、リンチ症候群の女性における子宮内膜がん生存率については、他のどの検査方法を用いたスクリーニングでも利益が得られると予測するようなデータはない。

一部の研究では、臨床的または遺伝学的にリンチ症候群と診断された女性が必ずしも集中的な婦人科スクリーニングを受けているわけではないということが示唆されている。[ 488 ][ 489 ](詳しい情報については、本要約の遺伝性結腸がん症候群における心理社会的問題のセクションのリンチ症候群における婦人科がんスクリーニングのセクションを参照のこと。)

証拠レベル:5

リンチ症候群における卵巣がんのスクリーニング

リンチ症候群における卵巣がんの生涯累積リスクの推定値は3.4%から22%の範囲である。[ 4 ][ 371 ][ 443 ][ 444 ][ 445 ]しかしながら、リンチ症候群家系で現在利用可能な卵巣スクリーニングの有効性に関する研究はない。子宮内膜がんのスクリーニングに用いられているTVUSは、婦人科のがんの予防のためにリスク低減手術を受けていない女性に対する臨床診療での卵巣がんのスクリーニングに含めるように拡張されている。しかしながら、NCCNは、利用可能なスクリーニング方法の感度および特異度が不足しているために、リンチ症候群に対するルーチンの卵巣がんスクリーニングを支持するデータはないと主張している。[ 122 ]

証拠レベル:指定されていない

リンチ症候群における婦人科がんの予防のためのリスク低減手術

リンチ症候群家系における子宮内膜がんおよび卵巣がんの予防に効果的な戦略はリスク低減手術である。病原性MMR遺伝子多様体を有する女性315人を対象としたレトロスペクティブ研究では、子宮摘出および卵巣摘除を受けた女性および受けていない女性で子宮内膜がんおよび卵巣がんの発生率が比較された。子宮内膜がんについて追跡した女性で、平均追跡期間は、手術群で13.3年、非手術群で7.4年であった;卵巣がんについて追跡した女性で、平均追跡期間は、手術群で11.2年、非手術群で10.6年であった。手術群の女性でがんは診断されなかった一方で、非手術群における子宮内膜がんの発生率が33%、卵巣がんの発生率が5.5%であった。[ 490 ]リンチ症候群に関連するMMR遺伝子多様体を有する30歳の理論的キャリア集団におけるリスク低減手術(予防的子宮摘出術および両側卵管卵巣摘除) vs 非手術スクリーニングの費用対効果の解析モデリングでは、予防的手術が費用効果的であり、費用が低く、高いQALYが得られることが明らかになった。[ 450 ]その後のモデリング研究では、複数のスクリーニングおよび手術戦略が評価され、30歳で年1回のスクリーニングを開始し、40歳でリスク低減手術を受けることが、最も効果的な戦略であることが明らかになった。[ 491 ]

証拠レベル:3aii

リンチ症候群におけるその他の結腸外のがんのスクリーニング

他のリンチ症候群関連がんのスクリーニングを行う決定は、個々の患者ごとに行い、リンチ症候群のFDRおよび第二度近親者で報告されたがんに依存する。

胃がん

胃がんの生涯リスクは、男性のリンチ症候群キャリアで約8%、女性のリンチ症候群キャリアで5%である。[ 446 ]最近の疫学データでは、胃がんの診断において以前の13%と高い報告よりも減少傾向が報告されている。ほとんどのリンチ症候群関連胃がんの組織学的特徴は腸型であるため、食道胃十二指腸内視鏡検査(EGD)によるスクリーニングを用いて検出できる可能性がある。[ 446 ][ 492 ]胃がん、十二指腸がん、およびより遠位の小腸がんに関するサーベイランスを支持する明確なデータはないが、ベースライン検査を40歳で実施したリンチ症候群患者では、大腸内視鏡検査時点で、十二指腸が視認可能なEGDが使用できる。H. pylori感染が認められた場合は、その評価および治療が推奨される。適切なサーベイランス間隔に関するデータは限られているものの、サーベイランスを3~5年ごとに実施するという一般的コンセンサスが得られており、特に胃がん、十二指腸がん、またはより遠位の小腸がんの家族歴がある場合またはアジア系の人に推奨される。[ 122 ]

証拠レベル:5

小腸がん

リンチ症候群に関連する小腸がんの生涯リスクに関しては、1%未満から12%の範囲に及ぶ、さまざまな報告がある。[ 4 ][ 378 ][ 442 ][ 443 ][ 444 ][ 447 ]小腸のほとんどの悪性腫瘍は、十二指腸および回腸に限定され、それぞれEGDおよび大腸内視鏡(回腸挿管専用のもの)を用いて内視鏡が届く範囲内である。他に小腸病変を評価する方法には、CT腸運動記録法およびカプセル内視鏡検査などがあるが、費用対効果解析によると、リンチ症候群におけるルーチンのスクリーニングに、これらの評価法の使用は支持されない。[ 445 ]

証拠レベル:5

尿路がん

尿路の悪性腫瘍には、腎盂または尿管の移行上皮および膀胱の悪性腫瘍がある。これらの悪性腫瘍に関連する生涯リスクは、1%未満から25%と高い割合まで、さまざまであり、尿路内および膀胱を含む異なる部位に認められたがんを併合した推定値が高い。[ 4 ][ 378 ][ 443 ][ 444 ][ 447 ][ 448 ]可能性のあるスクリーニング方法として尿細胞診を評価した研究では、感度が低く、偽陽性率が高いことに関連しており、最終的にしばしば侵襲性となる追加の評価(すなわち膀胱鏡検査)につながることが明らかになった。現在、リンチ症候群の症状のない個人におけるルーチンのスクリーニングに使用される有効な方法はない。

証拠レベル:5

膵がん

リンチ症候群キャリアで上昇している膵がんのリスクは、確認バイアスについて調整している2つのコホート研究で支持されている。1つ目の研究では、膵がんの70歳までの累積リスクが3.7%で、一般集団と比較して8.6倍高いと報告された。[ 454 ] もう1つのColon Cancer Family Registryからのデータを用いたプロスペクティブ研究では、SIRが10.7で、累積リスクが0.95%と報告された。[ 418 ] これらの研究の結果は、同程度のリスクを有する他の高リスク集団と同様に、リンチ症候群であり、膵がんのFDRを有する個人を対象とした膵がんのスクリーニングを推奨した専門家のコンセンサスを支持している。[ 493 ]

注意すべき点として、尿路、膀胱、肝胆道系、および膵臓のがんについて、一般集団に対するものを超えるスクリーニングは推奨されない;しかしながら、NCCNでは、尿路上皮がんの家族歴がある人で尿路上皮がんのサーベイランスを考慮することを提案している。[ 122 ]

証拠レベル:5

リンチ症候群における化学予防

Colorectal Adenoma/Carcinoma Prevention Programme(CAPP2)は、多くの国際センターで実施されたサーベイランスプログラムに参加したリンチ症候群患者を対象に、大腸がん予防におけるアスピリンの役割を判定する二重盲検プラセボ対照ランダム化試験であった。[ 494 ]この研究では、861人の参加者(平均年齢45歳)を対象に、アスピリン(600mg/日)、アスピリンのプラセボ、レジスタントスターチ(30g/日)、またはスターチのプラセボを最大4年間服用する群にランダムに割り付けた。この研究に登録されたリンチ症候群患者746人を対象とした初期のCAPP2試験の結果は2008年に公表され[ 495 ]、追跡期間が短く(平均29ヵ月;範囲、7~74ヵ月)、結腸腺腫または結腸がんに対する有意な予防効果を示すことができなかった(相対リスク、1.0;95%CI、0.7-1.4)。2011年(平均追跡期間55.7カ月)に、アスピリンvsアスピリン-プラセボの投与にランダムに割り付けられた861人に関するその後のデータが公表されたが、その結果、2年以上のアスピリン投与を完了した参加者(per-protocol解析)では、アスピリン-プラセボの投与にランダムに割り付けられた参加者と比べて大腸がんの発生数が有意に少なかったことが示された(HR、0.41;95%CI、0.19-0.86、P=0.02;発生率比[IRR]、0.37;95%CI、0.18-0.78、P=0.008)が、intention-to-treat解析による有意差は認められなかった(HR、0.63;95%CI、0.35-1.13、P=0.12)。[ 494 ]

2020年の全ての被験者が10年を超えた時点での長期追跡データでは、per-protocol解析(HR、0.56;95%CI、0.34-0.91)とintention-to-treat解析(HR、0.65;95%CI、0.43-0.97)の両方において,アスピリン投与群にランダムに割り付けられた被験者における大腸がん発生率の有意な低下が示された。[ 496 ]これらの長期データから、アスピリンの予防効果はアスピリン開始後約5年が経過するまで現れないことが示され、興味深いことに、アスピリンの予防効果(盲検解除後のアスピリン使用に関するデータは存在しないが、この研究では限られた期間しか使用されなかった)は少なくとも20年間のフォローアップまで持続したことが示された。これらのデータから、1回の大腸がん発症を予防するために、この限定的なアスピリン投与による治療が必要であったリンチ症候群キャリアは24人のみであったことが実証された。アスピリンvsアスピリンプラセボを投与する群にランダムに割り付けられたCAPP2を有する女性では、子宮内膜がんの発生率も低かったが(7例vs17例)、この差は統計的有意に達しなかった(HR、0.50;95%CI、0.22-1.11、P=0.09)。アスピリンvsアスピリンプラセボの投与群にランダムに割り付けられた患者において、大腸がんおよび子宮内膜がん以外のがんの発生率に有意差は認められなかった。有害事象についてアスピリン群とプラセボ群の間に有意差は認められず、重篤な有害事象はいずれの治療群でもみられなかった。[ 494 ]CAPP2の研究者らは、アスピリン600mg/日がリンチ症候群患者の大腸がん予防に明らかな便益をもたらすと結論した。このCAPP2試験の重要な限界は、さまざまなセンターで実施されたサーベイランスの調査頻度が標準化されたものとして報告されなかったことである。

現時点では、CAPP2の被験者をレジスタントスターチ群とスターチプラセボ群にランダムに割り付けた場合の有意な予防効果は確認されていない(大腸がん発症のHR、1.40;95%CI、0.78-2.56、P = 0.26)。[ 497 ]

専門家の推測によると、将来発生する大腸がんのリスクが低い特定のリンチ症候群キャリア(例、生殖細胞系のPMS2病原性多様体を有する個人、大腸切除術の既往がある個人、高齢者)では、アスピリンによる化学予防から便益が得られる可能性が低く、より低用量での投与が適切である可能性がある。[ 498 ]さらに、CAPP2研究のサブグループ解析でも、化学予防効果は主に肥満者にみられる可能性が示唆され、[ 499 ] アスピリン化学予防の推奨を個別化する努力がリンチ症候群において適切である可能性が示唆された。

CAPP3試験では、より低用量のアスピリンが評価されているが(100、300、600mgの腸溶性アスピリンの盲検)、2019年に1882人のリンチ症候群キャリアの登録が完了しており、少なくとも5年間のフォローアップが完了するまでデータは得られないと予想される。[ 500 ]

アスピリン化学予防を支持する証拠レベル1の証拠があることから、臨床診療ガイドラインでは一貫して、リンチ症候群キャリアにおけるアスピリン使用の考慮が推奨されているが、これらのガイドラインの大半では、至適なアスピリン用量に関する不確実性が依然存在することに注意が払われている。[ 122 ]

アスピリンを服用できないリンチ症候群キャリアに対して、NSAIDが同等の化学予防効果を有するかどうかは不明である。2015年のColon Cancer Family Registry参加者1,858人の調査では、アスピリンおよびイブプロフェンがともにリンチ症候群キャリアにおける大腸がんの発症を低下させる可能性が示唆された。[ 501 ]さらに、最近のトランスレーショナル研究により、6カ月間ナプロキセンを服用する群にランダムに割り付けられたリンチ症候群のキャリアでは、大腸粘膜プロスタグランジンE2が(プラセボを服用する群にランダムに割り付けられたキャリアと比べて)有意に低く、これに免疫細胞の活性化および上皮分化と一致する遺伝子発現パターンが伴うことが実証され、リンチ症候群における大腸がんの化学予防の潜在的な機序が示唆された。[ 502 ]

証拠レベル:1aii

リンチ症候群関連大腸がんの管理

リンチ症候群における大腸がんの外科的管理

リンチ症候群の顕著な特徴の1つは、同時性および異時性の大腸がんの存在である。異時性大腸がんの発生率は、結腸部分切除術後10年で16%、20年で41%、および30年で63%であると報告されている。[ 411 ]同時性および異時性の新生物の発生率が高いため、結腸に腫瘍性病変を有するリンチ症候群患者に対して推奨される外科的治療は、一般的に広範な結腸切除術(全摘術または亜全摘術)である。それにもかかわらず、治療は個別化しなければならず、しばしば結腸部分切除術が含まれている。複数の数学モデルにより、67歳以上の患者における広範な手技の利益は比較的若年の早期発症型のがん患者で得られる利益と比較して、最低限しか得られないことが示唆されている。Markov意思決定分析モデルによると、早期発症型大腸がんで広範な手技を受けた若年患者の生存の優位性は同じ患者が部分切除術を受けた場合に得られるよりも最大で4年長い可能性がある。[ 503 ]広範な手技の推奨は、患者の併存疾患、疾患の臨床病期、患者の希望、および外科的専門知識と比較検討する必要がある。部分的な手技よりも広範な切除術を受けたリンチ症候群患者の方が生存的に有利であることを示したプロスペクティブ研究もレトロスペクティブ研究も存在しない。

2件の研究により、広範な手技を受けた患者は部分切除術を受けた患者よりも異時性大腸がんおよび大腸がんに関係する追加の外科的手技が少ないことが示されている。[ 411 ][ 504 ]広範な手技 vs 部分的な手技の機能的結果を比較検討することが、何よりも重要である。大多数の患者は腹式結腸全摘術後、十分に適応するが、一部の患者には止瀉薬による薬物療法が必要となる。1つの決定モデルにより、腹式結腸全摘術 vs 結腸部分切除術を受けた30歳の患者についてQALYが比較された。[ 505 ]このモデルでは、広範な手技および部分的な手技間であまり差は認められず、広範な手技を受けた患者よりも部分的な手技を受けた患者でQALYが0.3年長かったのみである。[ 505 ]

Creighton University Hereditary Cancer Centerによるレトロスペクティブ研究では、近位結腸切除術または全結腸切除もしくは結腸亜全摘術を受ける右側結腸がんを有する64人のリンチ症候群病原性多様体キャリアを対象として、異時性大腸がんの発生率および生存率が評価された。[ 506 ]広範切除を多く受けた患者では発生率が低く、6例中1例(6.3%)で異時性大腸がんが発生した。近位結腸切除術を受けた患者では、48例中13例(27%)に異時性大腸がんが発生した。初回手術後25年以内の生存率に統計的な差は認められなかった。著者らは、初診時に右側結腸がんが認められたリンチ症候群患者の治療は、生活の質、機能的結果者の希望を考慮して個別化すべきであると結論した。

手術の選択肢を検討する場合には、結腸亜全摘術または結腸全摘術により直腸がんリスクが排除されるわけではないと認識することが重要である。腹式結腸全摘術後の残存直腸にがんが発現する生涯リスクは、結腸摘除後12年で12%であると報告されている。[ 507 ]手術による一般的な合併症に加えて、広範な結腸切除術後の排尿障害、性機能不全、および下痢の潜在的リスクもある;これらのリスクは、吻合術が遠位になるほど大きくなる。そのため、手術の選択は、外科医および患者によって、個々の場合に基づいて決定する必要がある。

リンチ症候群で直腸がんを有する患者にも、同様の手術の選択肢(広範な切除 vs 部分的切除)を提案し、検討を行う必要がある。広範な手技としては、括約筋が温存できる場合の再建性直腸結腸切除術およびIPAA、または括約筋が温存できない場合のループ回腸瘻造設を伴う直腸結腸切除術がある。指標直腸がんに対する部分切除術後の異時性結腸がんのリスクは15~27%であると報告されている。[ 459 ][ 508 ]2件のレトロスペクティブ研究により、リンチ症候群患者における直腸がん部分切除術後の異時性結腸がんの発生率は15%および18%と報告された。[ 509 ][ 510 ]これらの研究の1件で、異時性の高リスク腺腫およびがんの複合リスクは、直腸切除後中央値で101.7ヵ月の追跡時に51%であった。[ 510 ]

リンチ症候群患者における手術後の妊孕性に関するデータはない。女性のFAP患者では、腹式結腸全摘術およびIRA後の生殖能力に差はみられないことが報告されているが、IPAAを伴う再建性直腸結腸切除術を受けた患者では、一般集団と比べて生殖能力に54%の低下がみられる。[ 511 ]FAP患者に質問票を送付した別の研究では、終末型回腸瘻(end ileostomy)を伴うIRA、IPAA、および直腸結腸切除術を受けた患者で妊孕性の問題の有病率が同程度であることが報告された。その研究で、手術時の年齢が若いほど、より大きい妊孕性の問題を伴うことが報告された。[ 512 ]

あるデンマークの大規模な登録研究では、散発性大腸がんと比較して,異時性大腸がんの発生率はリンチ症候群患者で5倍高かったが、家族性大腸がんおよび中等度の家族性リスクの大腸がん症例では有意に高いということはなく、異時性大腸がんのリスクはほぼ例外なくリンチ症候群症例で発生したことが示された。[ 476 ]異時性大腸がんに対するIRRは、散発性大腸がん症例と比較した場合、MLH1およびMSH2の生殖細胞系変化を有するリンチ症候群患者で最も高く、MSH6キャリアでは中間であったが、PMS2キャリアではそうではなかった。さらに、リンチ症候群症例における原発性大腸がんに対して実施された結腸切除術の範囲を比較した場合、異時性大腸がんに対するIRRは結腸全摘除術および結腸亜全摘術で5.5、結腸部分切除術で0.9であった。60歳以前に原発性大腸がんと診断されたリンチ症候群症例における異時性大腸がんの絶対リスク低下は大腸全摘/亜全摘vs区域切除で、男性で63.5%,女性で40.9%であった。これらの結果は、根底にMLH1 またはMSH2のほか、おそらくMSH6の生殖細胞系変化があるリンチ症候群患者において、切除可能な大腸がんに対する結腸亜全摘術または結腸全摘除術と髄節切除術を比較することを強く支持する。

リンチ症候群患者を治療する臨床医のほとんどは、大腸がん診断時の広範な手技を支持している。しかしながら、上述のように手術の選択は、外科医および患者によって、個々の場合に基づいて決定する必要がある。[ 513 ][ 514 ][ 515 ]

証拠レベル:4

MSIの予後および治療上の意義

上のセクションで考察したように、MSIはリンチ症候群の分子的特徴であるだけでなく、大腸がん散発例の10~15%にも存在する(主にMLH1の高メチル化またはMMR遺伝子における両アレル性体細胞変異に起因する)。MSI検査は最初に病原性MMR遺伝子多様体を保有する可能性がある患者のスクリーニングに利用されたが、MSIには予後および治療上で重要な意義があるという認識が高まってきている。MSI検査の有用性は、リンチ症候群の同定を超えて、universal MSIスクリーニングの事例をより説得力のあるものにし、その広範な適用に貢献している。いくつかの研究で、MSI-H大腸がんでは病期特異的生存がMSSがんと比較して優れていることが示唆されている。さらに、化学療法薬のフルオロウラシル(5-FU)は、切除後のMSI-H大腸がんに対する補助療法で効果がないとみられ、この目的にこの薬が広く使用されているMSS大腸がんとは対照的である。最後に、チェックポイント阻害薬などの薬による免疫調節は、初期の第1相および第2相試験に基づいて、進行したMSI-H大腸がんの治療に有効であるとみられるが、これらの薬は、少なくとも単剤療法として使用した場合、MSS大腸がんでの活性はほとんど示されていない。

MSIの予後

MSI-H腫瘍は、すべての散発性大腸がんの15%を占めているが、III期の大腸がんと比較してII期で頻度が高いとみられ[ 516 ]、転移例ではかなり少なく、転移例の3~4%にしかみられない。[ 517 ]この病期による区別は、基礎にあるMSI-H状態に伴う良好な予後の可能性を暗示する。

その後のいくつかの研究で、II期のMSI-H大腸がんの生存がMSS症例と比較して長いことが確認された。MSI-H症例1,277件を含む症例7,642人の32の研究のメタアナリシスで、MSIと関連する全生存(OS)の併合HR推定値が0.65(95%CI、0.59-0.71;不均一性のP = 0.16;I2[偶然ではなく不均一性に起因する研究間変動割合の測定値] = 20%)であることが示された。= 20%).[ 518 ]しかしながら、データが限られているものの、MSIを示す腫瘍は、5-FU補助療法から利益が得られなかった(HR、1.24;95%CI、0.72-2.14)。その後のいくつかの大規模ランダム化臨床試験からのデータで、MSI-Hに伴う良好な予後が確認された。これらの試験には、QUick And Simple And Reliable(QUASAR)試験があり、切除後のII期大腸がん患者1,900人を対象に手術単独と比較して5-FUをベースとした補助化学療法の有益性が明らかにされた。この研究で、MSI-H腫瘍では再発リスクがMSS腫瘍の半分(リスク比[RR]、0.53;95%CI、0.40-0.70)であるという関係がみられた。[ 519 ]切除後のII期またはIII期大腸がんを対象にイリノテカンを併用または非併用とした5-FUのランダム化試験であるPan European Trial Adjuvant Colon Cancer(PETACC)-3試験でも同様な結果がみられた。[ 520 ]MSI-H状態には、OSのオッズ比(OR)が0.39(95%CI、0.24-0.65)であるという関係がみられ、この利点はII期およびII期のいずれでもみられた。

過去の他のデータと一致して、リンチ症候群関連大腸がん患者85人および散発性のdMMR大腸がん患者67人の臨床病理学的解析で、リンチ症候群であり、さらに診断時年齢が若く、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の数が多い患者で有意に優れた生存が実証された。[ 521 ]このコホートからの大腸がん腫瘍16人(8人がリンチ症候群の大腸がん、8人が散発性のdMMR大腸がん)のサブセットから得られたエクソーム配列解析およびネオアンチゲンのデータから、体細胞変異量およびネオアンチゲン量は、リンチ症候群関連の大腸がんの方が散発性のdMMR大腸がんより有意に高いことが示唆される;これは、生存転帰の改善およびTILの増加が起源であると推測される。

MSI-H腫瘍が右側結腸に発生する傾向を考慮すると、直腸に発生したMSI-H腫瘍の転帰および予後に関するデータが不足している。ある研究で、MSI-Hは直腸がんの2%に過ぎないことが示唆された。[ 519 ]単一施設からのMSI-H結腸がん患者62人の研究では、中央値6.8年にわたり追跡された。5年直腸がん特異的生存率は、I期およびII期で100%、III期で85.1%、IV期で60.0%であったことから、MSI-Hに伴う良好な予後は直腸に発生したがんにも適用できることが示唆される。[ 508 ]著者らは、さらに放射線療法と併用した5-FUにより良好な26%の病理学的完全奏効率を報告したことから、直腸がんの局所領域治療に放射線療法と併用した5-FUは、MSI-H腫瘍の設定で依然として有効な可能性が示唆される。この研究で実証されたかなり高い病理学的完全奏効率により、治療開始前にMSI状態を評価する十分な生検の必要性も強固になる。

リンチ症候群における大腸がんに対する手術後の補助化学療法の使用

大腸がんにおけるMSIの所見から、切除後のII期またはIII期結腸がんにおける5-FUによる補助化学療法の有益性の欠如が予測されることがいくつかの研究で示されている。[ 522 ]これは、歴史的に異論の多い領域とされている。培養された結腸がん細胞におけるDNA MMR活性の欠失は、回復できないDNA損傷に反応して細胞周期を停止させるシグナルの消失を介して、DNAを損傷する薬物(細胞傷害性化学療法の一般的機序)に対する抵抗性に関与することが判明した。[ 523 ]これは、DNA dMMR腫瘍がアルキル化剤、5-FU、および白金含有製剤に対して完全な感受性を有するわけではないという予測につながる。[ 524 ][ 525 ][ 526 ]予想外に、2000年にMSIを認めるデュークスC(III期)の大腸がん患者が5-FUベースの補助化学療法を受けた場合に大きな生存利益が得られることを示唆する論文が公表された。[ 527 ]しかしながら、この解析対象となった患者は治療群へランダムに割り付けられていなかった;臨床状態に基づいて補助化学療法が選択され、不注意により、治療群の年齢中央値は対照群より13歳若かった。

しかしながら、2003年に結腸がん患者570人を対象とした補助化学療法のランダム化対照プロスペクティブ試験で、MSIを認める群では5-FUによる補助療法から利益が得られないことが実証された。さらに、MSIを認める結腸がんの治療時に死亡率が増加する有意ではない傾向が認められた;死亡率はIII期のがんで2倍、II期のがんで3倍であった。[ 528 ]その後、10のすべての研究で、5-FUベースの化学療法を受けた大腸がん患者で有益性を示せなかったことから、このことが確認された。[ 522 ]対照的に、5-FU群 vs 観察群のランダム化試験のメタアナリシスでは、MSIのIII期の患者で5-FUにより利益が得られる可能性が示唆された。探索的サブセット解析では、これらのうちリンチ症候群関連のMSI患者にのみ有益性が示唆された。この研究で、II期患者の解析は行われなかった。[ 529 ]

非臨床データから、5-FUへのオキサリプラチンの追加により、MSI-H腫瘍にみられる5-FU単剤療法に対する抵抗性が克服される可能性が示唆される。[ 530 ]MSI-HのII期およびIII期の大腸がん症例(散発性およびリンチ症候群からの続発性の両症例)433人のレトロスペクティブ解析では、手術単独と比較してFOLFOX(5-FUおよびオキサリプラチン)により無病生存(DFS)で利益が得られることが示唆された。[ 531 ]リンチ症候群によるMSIの患者サブセットでFOLFOXを利用することで、DFSの改善傾向がみられたが、この結果に統計的有意性は認められなかった。その他の研究では、FOLFOXを含む補助化学療法により、MSI状態にかかわらず同様な生存転帰が実証されている。[ 532 ][ 533 ]

証拠レベル(補助療法の使用に反対する):1ai

免疫療法

MSI経路を介して生じる腫瘍では、他の経路を介して生じる腫瘍よりも体細胞変異が多い。このことは、dMMR腫瘍に潜在的抗原(ネオアンチゲンと呼ばれる)がMMR非欠損(pMMR)腫瘍より多く、免疫系操作に対する反応性が高い可能性があることを暗示していると考えられる。顕微鏡所見で、MSI-H腫瘍は、しばしば腫瘍浸潤リンパ球が豊富なことを示し、ときにクローン病様の反応がみられる。この組織学的特徴から、MSI-Hがんで腫瘍免疫監視が強化される可能性が長く提案されており、これはMSI-Hでみられる病期特異的生存がMSSと比較して良好なことを示す主要な仮説の1つである。

MSI-H腫瘍で免疫調節が有効な仮説を検証するため、MSI-HまたはMSSがん患者の小規模コホートを対象に、プログラム細胞死-1(PD-1)阻害薬の第2相試験が実施された。さまざまな化学療法レジメンで無効となった転移巣を有する患者が抗PD-1免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブによる治療を受けた。[ 534 ]この小規模第2相研究で、大腸がん患者32人(11人はdMMR、21人はpMMR、他の9人は大腸以外のdMMR腫瘍)が14日ごとにペムブロリズマブの静脈内投与による治療を受けた。評価可能な患者における免疫関連の奏効率は、dMMR大腸腫瘍が40%(10人中4人)、pMMR大腸腫瘍が0%(18人中0人)、大腸がん以外のdMMR腫瘍が71%(7人中5人)であった。免疫関連の20週無増悪生存率は、dMMR大腸がん腫瘍を有する患者が78%(9人中7人)、pMMR大腸がん腫瘍を有する患者が11%(18人中2人)、大腸がん以外のdMMR腫瘍を有する患者が67%(6人中4人)であった。dMMR腫瘍にみられる体細胞変異は、pMMR腫瘍より多く、平均して24倍であった。加えて、本研究では体細胞変異量がPFS延長と関連していた。著者らはMMRの状態がペムブロリズマブによる免疫チェックポイント阻害の臨床的有益性を予測すると結論している。

以前の細胞毒性化学療法(5-FU、イリノテカン、およびオキサリプラチンを含む)で進行したMSI-H/dMMRの大腸がん患者74人を対象に、別のPD-1阻害薬であるニボルマブ単群の第2相試験(CheckMate 142)が実施された。[ 535 ]全体で、患者の31%(74人中23人)で、治療に対する客観的奏効が認められ、69%(74人中51人)で、2週間以上にわたる疾患制御が得られた。ニボルマブに奏効した患者では、研究の解析時点(追跡中央値12ヵ月)で奏効期間中央値が未到達であった。この研究で、リンチ症候群関連の転移性MSI-H/dMMR大腸がん vs 非リンチの転移性MSI-H/dMMR大腸がんの患者において奏効率に有意な差はみられなかった。研究参加者の20%でグレード3以上の毒性が認められ、アミラーゼおよび/またはリパーゼの上昇が最も多く、ニボルマブに起因する死亡はなかった。

これらのデータを基に、ペムブロリズマブ200mgの3週間ごとの静脈内投与は、2017年5月に標準治療に不応性のMSI-H/dMMR転移性がんの治療に対してFDAにより承認され、ニボルマブ240mgの2週間ごとの静脈内投与は、2017年8月に細胞毒性化学療法に不応性のMSI-H/dMMR大腸がんの治療に対してFDAにより迅速承認を受けた。

CheckMate 142の別の群で、転移性dMMR大腸がん患者119人がニボルマブ + イピリムマブによる治療を受けた。[ 536 ]客観的奏効率は55%、12週間疾患制御率は80%、12ヵ月PFS率は71%、奏効期間中央値は未到達であった。グレード3およびグレード4の毒性は、参加者の32%にみられ(最も多かったのは肝機能検査値増加)、毒性による治療中止は、全参加者の13%であった。これは非ランダム化研究であったため、免疫チェックポイント阻害薬の併用療法がPD-1阻害薬単独より優れているかどうかに関しては、特に併用療法で毒性が明らかに増加することを考慮すると、疑問が残る。これらのデータに基づいて、2018年7月にFDAは、以前にフルオロピリミジン、オキサリプラチン、およびイリノテカンによる化学療法を受けて進行したdMMR/MSI-Hの転移性大腸がんの治療に対して、ニボルマブ + イピリムマブによる治療に迅速承認を与えた。

証拠レベル:3b

MSI関連大腸がんの治療または予防におけるワクチン

MSI-H大腸がんにおける免疫療法の代替アプローチには、腫瘍標的ワクチンの使用が含まれる。これまでに最も有望なアプローチには、腫瘍特異的T細胞免疫を増強するエピトープとして、腫瘍関連ネオアンチゲンの使用がある。切除後のIII期大腸がんの補助療法(NCT01461148)、転移巣を有する患者(NCT01885702)、およびリンチ症候群患者の大腸がん予防(NCT01885702)における研究が現在進行中である。

リンチ症候群に関連する症候群

リンチ様またはHNPCC様症候群

リンチ様症候群は、リンチ症候群が疑われるが、生殖細胞検査で病原性MMR遺伝子多様体を同定できなかった症例の最大70%を占める可能性がある。[ 309 ]リンチ症候群にみられる腫瘍表現型と同様に、大腸がんではMSIおよびIHC検査でDNA MMR蛋白の消失がみられる。しかしながら、MMRが欠損した大腸がんは、DNA MMR遺伝子の両アレル性体細胞不活性化によるものであり[ 537 ][ 538 ][ 539 ]、ここでは、2つの体細胞塩基配列変異が存在する場合よりも、MMR遺伝子の一方のアレルに体細胞変異がみられると同時に、もう一方のアレルにヘテロ接合性消失がみられる場合が最も可能性が高い。(リンチ様症候群の腫瘍表現型に関する詳しい情報については、表10を参照のこと。)

リンチ様症候群の原因として考えられる説明には以下のものがある:(1)現行の検査により一部の生殖細胞DNA多様体が検出されない可能性;(2)リンチ症候群と関係することが現在知られているDNA MMR遺伝子以外の遺伝子における生殖細胞病原性多様体を罹患者が保有している可能性;または(3)生殖細胞の変化に関係するもの以外にDNA MMRを不活性化する他の機序の存在。

リンチ様症候群の発端者および家系における大腸がんリスクはSIRが2.12で、リンチ症候群におけるSIRの6.04より低いという証拠が増えてきている。[ 309 ]予備的な推定値では、結腸外のがんのリスクが低いことが明らかになり、リンチ様症候群でのSIRが1.69に対して、リンチ症候群では2.81である。別のレトロスペクティブ研究では、早期発症型(50歳未満)大腸がんでdMMRの患者14人について、43%の患者がリンチ症候群で、57%の患者がリンチ様症候群であったことが報告された。[ 540 ]長期の追跡を行った大規模な研究がない状況で、リンチ様症候群における腫瘍への進行割合に関するデータに加えて、強化されたがんのスクリーニングの推奨は、現時点でリンチ症候群のガイドラインのものと類似している。

家族性大腸がんX型(familial colorectal cancer type X)

家族性大腸がんX型つまりFCCXという用語は、アムステルダム基準を満たすが、MSI/IHCの異常は認められない家系を表すために造り出された。[ 265 ]アムステルダム基準を満たす家系の約50%では、病原性MMR遺伝子多様体がみられず、そのためにFCCX家系として特徴付けられる。FCCXの遺伝的病因を判定する研究が進行中であるが、ほとんどの部分がまだ不明であり、不均一な疾患であると考えられている。しかしながら、リンチ症候群とFCCXの鑑別には、がんのリスク評価および罹患者やリスクのある血縁者に対するスクリーニング推奨に関して重要な意義がある。この大腸がんのリスクは、一般集団の2倍に達しているが、リンチ症候群(6倍を超える)より低く、結腸外の悪性腫瘍の重大なリスクはない。そのため、がんのスクリーニングの推奨が修正されており、5年ごとの大腸がんサーベイランスが推奨される。[ 265 ]

遺伝性大腸がんにおける内視鏡画像法の進歩

FAPおよびリンチ症候群における腺腫に対する内視鏡療法の実施、ならびに外科への紹介および治療計画に関する意思決定では、腺腫の存在を正確に推定することが要求される。AFAPとリンチ症候群の両方において、非常に微細な腺腫の存在は特に難題を投げかける-AFAPの症例における微小腺腫およびリンチ症候群における平坦であるが、ときに大きな腺腫。

色素内視鏡検査

他の点では平均リスクの被験者における扁平腺腫や無茎性鋸歯状ポリープ、AFAPにおけるきわめて軽症型の腺腫表現型、およびリンチ症候群における微細な扁平腺腫が認識されるとともに、微細なポリープを内視鏡で発見するための感度の高い手段の必要性が増している。現代の高解像度内視鏡により腺腫の検出数が改善されているが、さまざまな生体用染料、特にインジゴカルミン色素スプレーの使用によって検出はさらに改善されている。インジゴカルミンを用いることで達成される粘膜造影の改善により、腺腫の検出率を高められることを示している研究がいくつかある。家族歴が明らかであるかどうかにかかわらず、拡大撮影を伴うまたは伴わない色素スプレー大腸内視鏡検査(dye-spray colonoscopy)(インジゴカルミンまたはメチレンブルー)[ 477 ][ 541 ][ 542 ][ 543 ][ 544 ][ 545 ][ 546 ]、または狭帯域光観察(narrow band imaging)などのなるべく新しい画像技術[ 547 ]からなる慎重な臨床評価により、多数の微小腺腫の特徴的な右側に偏った集積が明らかになることがある。十二指腸腺腫または表面の異形成を伴う胃底腺ポリープがみられる場合は、上部消化管の内視鏡検査が情報価値のある検査となる可能性がある。APCまたはMUTYHの検査が実施される場合は、こうした知見により多様体検出の可能性が増す。

平均リスク集団を対象にしたさまざまな大規模シリーズにおいて、症例の約5~10%に高悪性度異形成および浸潤性腺がんを伴う腺腫などの微細な平坦病変が検出された。[ 548 ]これらの研究の一部ではタンデム手技-白色光検査実施後に「集中的」(盲腸から20分以上かけて引き戻す)検査 vs 色素内視鏡検査にランダム化-が行われ、色素内視鏡検査群で有意に多くの腺腫が検出された。[ 549 ]しかしながら、数件のランダム化試験では検出数に有意差がみられなかった。[ 550 ][ 551 ]

リンチ症候群の被験者を対象にしたランダム化試験[ 552 ]において、適応がある場合はポリープ切除術を行う標準の大腸内視鏡検査の後に、インジゴカルミン色素内視鏡検査または再度行う「集中的な」白色光大腸内視鏡検査(上述の平均リスクのスクリーニング群とほぼ同じデザイン)のいずれかが実施された。このシリーズでは、色素内視鏡検査群と集中的な白色光検査群とで腺腫の検出数に有意差がみられなかった。しかしながら、これらの患者は比較的年齢が低く、多くの症例が以前に数回検査を受けており、ポリープ除去を受けていた可能性がある。

ドイツの研究[ 553 ]で、リンチ症候群患者を対象とした1件のシリーズでは、白色光検査後に色素内視鏡検査が実施され、別のシリーズでは、狭帯域光観察(narrow-band imaging)による大腸内視鏡検査後に色素内視鏡検査が実施された。両シリーズにおける扁平ポリープの検出に関して、発見された病変の一部は過形成性であったものの、色素内視鏡検査を支持する有意差が示された。リンチ症候群の被験者を対象にしたフランスのシリーズにおいても白色光検査実施後に色素内視鏡検査が用いられ、色素内視鏡検査によって有意に多くの腺腫が発見された。[ 478 ]

AFAPでは色素内視鏡検査による評価の実施がリンチ症候群より少なくなっている。1件の研究では、AFAPであると推定され白色光検査では腺腫が20未満であった4人の患者が調査された。[ 554 ]色素内視鏡検査では全員が1,000以上の小さい腺腫を有していたことが明らかにされ、結腸切除後の病理学評価の結果と一致していた。

FAPにおける十二指腸を評価するために色素内視鏡検査に対する同様の役割が提唱されている。十二指腸腺腫を検出するためにインジゴカルミン色素スプレーを使用したオランダの1件の研究により、いくつかの大きな腺腫を含めて、腺腫の数および大きさが増えたことが示された。全体的なSpigelmanスコアに有意な影響はみられなかった。[ 555 ]

小腸の画像検査法

PJSおよびJPSの患者は疾患に関係して小腸に合併症(例、出血、閉塞、腸重積症、またはがん)を来すリスクが比較的高い。FAP患者では十二指腸新生物のリスクが高いが、空回腸に病変が発生するリスクは比較的低い。リンチ症候群では小腸の悪性疾患のRRがかなり高いが、絶対リスクは10%未満である。小腸新生物のリスクは各疾患でサーベイランスの検討が必要になるほど十分に高いが、小腸のサーベイランスは技術的に困難であるため気力をくじく作業となっている。技術的に困難であり、比較的有病率が低いために、リンチ症候群では小腸スクリーニングの証拠基盤が実質的に示されていない。

歴史的に、小腸中央部および遠位小腸は内視鏡でのアクセスが相対的に困難であるため、その評価にはバリウム小腸シリーズや、より正確な画像を得るため造影剤の全量が小腸に迅速にかつ胃酸で薄まることなく届くように経鼻胃十二指腸チューブを挿管する小腸経管造影法などの放射線学的測定法が必要であった。これらの測定法はいずれも小さな病変に対する感度が低かった。以前は、病変の治療的除去には開腹が必要であった。しかしながら、小腸内視鏡検査の技術的限界を克服するために複数の新しい内視鏡アプローチが開発されており、これによりポリープ切除の目的で空腸および回腸に到達できるようになった。

PJS患者では、ダブルバルーン内視鏡検査または他の形態の深部小腸内視鏡検査(シングルバルーンオーバーチューブまたはスパイラルオーバーチュー))が、小腸の評価に望ましい方法である。[ 556 ]これには、小腸のより完全な評価を達成するために、経口小腸鏡検査または逆行性小腸鏡検査のいずれかが含まれる。こうした手技には時間がかかり、合併症のリスクがあるため、深部小腸鏡検査の前には通常、バリウム検査、カプセル内視鏡検査、CTまたは磁気共鳴腸運動記録法などの画像検査が実施される。[ 75 ]

FAPにおけるカプセル内視鏡検査のデータ[ 75 ]により、Spigelman病期がIII期またはIV期の十二指腸病変を有する患者における空腸および/または回腸ポリープの有病率は50~100%であることが示されているが、Spigelman病期がI期またはII期の疾患ではこのようなポリープが実質的に認められていない。ポリープは10mm未満で、生検も切除も行われなかった。したがって、これらのポリープの臨床的意義は不明のままであるが、FAPにおける空回腸のがんはまれであるため、おそらく限定的であろう。

PJS患者の小規模シリーズに関する上述のカプセル内視鏡検査[ 75 ]では、同様の頻度(50~100%)でポリープが存在することが示されたが、認められるポリープはFAPのポリープよりもはるかに大きく、症候性となる可能性が高く、内視鏡的または外科的切除が必要であった。カプセル内視鏡検査は、カプセル内視鏡の感度が高いため放射線検査の適切な代替として提唱された。

家族性大腸がん

複数の遺伝子研究により、家族性大腸がん家系における結腸腫瘍、腺腫、およびがんに対する一般的な常染色体優性遺伝様式が示されており[ 557 ]、腺腫および大腸腺がんに対する遺伝子頻度は0.19である。[ 558 ]MSI陰性の家族性大腸腫瘍の家系の一部は、染色体9q22.2-31.2に連鎖していることが判明した。[ 559 ]最近の研究により、家族性大腸がん家系において11番、14番、および22番染色体上の3つの潜在的な遺伝子座が関連付けられている。[ 560 ]10年を過ぎても、これらの推定される家族がん遺伝子座に関してほとんど進展がみられない。

家族性大腸がんX型(FCCX)

リンチ症候群に対するアムステルダムI基準を満たすもののMSI検査でMMRの欠陥の証拠が示されない家系では、古典的リンチ症候群とMMRの欠陥の明確な証拠を示す家系と比べて、大腸がんリスクやその他のがんリスクが異なってくるようである。MMR系が無傷であるこうしたアムステルダムI基準による家系はFCCXと記載されており[ 265 ][ 561 ][ 562 ][ 563 ][ 564 ][ 565 ]、こうした家系は別個のグループとして分類すべきであることが示唆されている。

FCCXの遺伝的病因は依然として不明である。全ゲノム連鎖解析およびエクソーム配列解析を利用して、FCCX家系に属する大腸がん患者4人にリボソーム蛋白遺伝子であるリボソーム蛋白S20(RPS20)内の切断型多様体が同定された。[ 565 ]この多様体は家系内で大腸がんと同時分離し、対数尤度比は3であった。さらに、対照292人ではこの多様体は同定されなかった。腫瘍サンプルにLOHは認められず、成熟RNA形成のin vitro解析で、RPS20に関するハプロ不全のモデルが確認された。研究対象となった別の25のFCCX家系でRPS20に生殖細胞多様体が認められなかったことから、RPS20多様体はFCCXの低頻度の原因であることが示唆される。同じ集団では以前、18のFCCX家系のうち2家系に属する罹患した個人において、骨形成蛋白受容体1A(BMPR1A)遺伝子の多様体が同定されていた。[ 566 ]FCCXにおけるRPS20またはBMPR1Aの役割を決定的に確認または否定するには、さらなる研究が必要である。

これらの初期研究の後、大腸がんの家族性非リンチ症候群集団で、他の推定されるFCCX遺伝子がいくつか発見されており、その中には、ポリペプチドN-アセチルガラクトサミン転移酵素12(GALNT12)遺伝子[ 567 ]BUB1およびBUB3[ 568 ]SEMA4A遺伝子[ 569 ]RINT1[ 570 ]FAN1[ 571 ]、および1つの大規模な家系におけるHNRNPA0およびWIF1の病原性多様体の複合作用[ 572 ]が含まれていた。この潜在的候補遺伝子のリストは、増大を続けており、これらの家系を取り扱う容易なアプローチをすべて複雑にしている。

リンチ症候群における大腸がん発症年齢は44歳(登録シリーズ)から平均52歳(集団ベースのシリーズ)に及ぶ。[ 269 ][ 316 ][ 369 ]FCCXは定義上、少なくとも1人の早期発症例が必要であり、ほぼ確実に非常に不均質であるうえに、予測可能な未来に集団ベースの数値が利用できる可能性が低いため、FCCXにはリンチ症候群のデータに対応する集団ベースのデータが存在しない。FCCXとリンチ症候群の発症年齢を直接比較した諸研究により、発症年齢はFCCXの方がわずかに高く[ 265 ][ 561 ][ 563 ]、大腸がんの生涯リスクは実質的に低いことが示唆されている。1件の大規模研究では、MMR系が無傷の家系(FCCX家系)における大腸がんに対するSIRは2.3(95%CI、1.7-3.0)であったのに対し、MMRに欠陥がある家系(リンチ症候群家系)では6.1(95%CI、5.7-7.2)であった。[ 265 ]FCCX家系では結腸外腫瘍のリスクも高くないことが明らかにされていることから、大腸がんに対するサーベイランスの強化で十分なことが示唆された。さらなる研究が必要であるものの、FCCX家系内に生じる腫瘍はまた病理的表現型が異なるようであり、腫瘍浸潤リンパ球がリンチ症候群家系のそれよりも少ない。[ 562 ]

大腸がん感受性と関連するまれな症候群

PTEN過誤腫腫瘍症候群(コーデン症候群を含む)

コーデン症候群およびBannayan-Riley-Ruvalcaba症候群(BRRS)は、集合的にはPTEN過誤腫腫瘍症候群として知られる一連の疾患群の一部である。コーデン症候群と診断された患者の約85%とBRRS患者の約60%には、同定可能なPTEN病原性多様体が存在する。[ 573 ]さらに、臨床的に大きく異なった表現型を有する患者でPTEN病原性多様体が確認されている。[ 574 ]PTEN過誤腫腫瘍症候群という用語は、臨床症状にかかわらず、PTEN病原性多様体を有する患者であれば使用される。

PTENは、チロシン、セリンおよびスレオニンからリン酸基を除去する両特異性ホスファターゼとして機能する。PTENの病原性多様体はさまざまで、ナンセンス、ミスセンス、フレームシフト、およびスプライス部位の多様体がある。多様体の約40%はホスファターゼコアモチーフをコードするエクソン5にみられ、いくつかの反復病原性多様体が認められている。[ 575 ]PTEN遺伝子の5'末端またはホスファターゼコア内に多様体を有する個人は、複数の器官系が罹患する傾向がある。[ 576 ]

コーデン症候群の診断に関する実用的な基準は既に公開されており、その後の更新も行われている。[ 577 ][ 578 ]これらには、大基準、小基準、ならびに特定の皮膚粘膜症状および成人発症型小脳異形成性神経節細胞腫(Lhermitte-Duclos病)からなる疾病特徴的基準がある。系統的文献レビューに基づく一連の基準の更新版が提示されており、[ 579 ]現在はNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドラインで使用されている。[ 464 ]以前の基準とは対照的に、著者らは、どの特徴についても特徴的なものとして分類するには証拠が不十分であると結論付けた。遺伝子検査、特に多重遺伝子パネルの使用の増加に伴い、コーデン症候群の臨床基準は、確認されている生殖細胞系PTEN病原性多様体を有していながら、これらの基準に適合しない個人の表現型に合わせて調整される必要がある。その調整が行われるまでは、臨床的所見と遺伝子検査結果のどちらに基づいて、コーデン症候群およびその他のPTEN過誤腫腫瘍症候群を定義するかについて、あいまいさが残る。American College of Medical Genetics and Genomics(ACMG)は、1)成人発症型Lhermitte-Duclos病、または2)コーデン症候群の診断について確立されている大基準または小基準のいずれか3つを満たす個人歴を有する、または第一度近親者のいる個人について、遺伝相談への紹介を考慮すべきであることを示唆している。[ 580 ]コーデン症候群の診断基準を含む詳細な推奨については、NCCNおよびACMGのガイドラインで閲覧可能である。[ 464 ][ 580 ]その上、PTEN病原性多様体の確率を推定するために、臨床基準を用いる予測モデルが利用可能である;費用対効果解析から、生殖細胞系PTEN検査は多様体の確率が10%より大きい場合に費用対効果が高いことが示唆されている。[ 581 ]

International Cowden Consortium(ICC)は、米国、ヨーロッパ、アジアにおいて、緩和されたPTEN検査のICC基準に適合する成人および小児患者の連続シリーズを10年間にわたりプロスペクティブに募集した。[ 582 ]ほとんどの個人はコーデン症候群またはBRRSの診断に対する臨床基準を満たさなかった。募集に応じて検査を受けた3,399人のうち、発端者295人(8.8%)と73人の家系員が生殖細胞系PTEN病原性多様体を有していることが認められた。乳がん、甲状腺がん、子宮内膜がんに加え、著者らはがんリスクに基づいて、黒色腫、腎がん、大腸がんを生殖細胞系PTEN病原性多様体に起因するがんスペクトルの一部と捉えるべきであると結論した。2つ目の研究では、生殖細胞系PTEN病原性多様体を有する患者約100人について、これらの知見が確認され、70歳までのがんの累積リスクが85%であることが示された。[ 583 ]

年齢調整後の大腸がんリスクは、両研究で病原性多様体キャリアにおいて増大していた(SIR、5.7~10.3)。[ 582 ][ 583 ]さらに、1件の研究では、PTEN病原性多様体を有し、少なくとも1回の大腸内視鏡検査を受けたことのある個人の93%にポリープが認められた。[ 582 ]腺腫および無茎性鋸歯状ポリープも観察されたが、最もよくみられた組織像は過形成であった。PTEN病原性多様体キャリアの間で大腸がんのリスクが高いことから、これらの患者には大腸内視鏡検査によるサーベイランスが推奨されている。[ 583 ][ 584 ]しかし、開始時年齢(30~40歳)および以降の大腸内視鏡検査の頻度(2年ごとから3~5年ごと)はいずれも非常に多様であり、それぞれ専門家の意見に基づいている。

表14.生殖細胞系PTEN病原性多様体を有する個人のがんリスクa
がん 年齢調整SIR(95%CI) 年齢に関連した浸透度の推定値
CI = 信頼区間;SIR = 標準化発生比。
a出典:Tan et al.[ 582 ]
b別の複数の歴史的研究は、乳がんの生涯リスクを25~50%と、より低く提示している。[ 579 ](詳しい情報については、乳がんおよび婦人科がんの遺伝学に関するPDQ要約のPTEN過誤腫腫瘍症候群(コーデン症候群を含む)のセクションを参照のこと。)
乳房 25.4 (19.8–32.0) 30歳前後以降で85%b
大腸 10.3 (5.6–17.4) 40歳前後以降で9%
子宮内膜 42.9 (28.1–62.8) 25歳前後以降で28%
腎臓 30.6 (17.8–49.4) 40歳前後以降で34%
黒色腫 8.5 (4.1–15.6) 発症年齢が最も若い3歳で6%
甲状腺 51.1 (38.1–67.1) 出生時から生涯にわたって35%

ポイツ・ジェガース症候群(PJS)

ポイツ・ジェガース症候群は、若年発症する常染色体優性疾患であり、口唇、口周囲部、頬部のメラニン細胞性斑(melanocytic macule)のほか;過誤腫性および腺腫性の多発性消化管ポリープを特徴とする。[ 585 ][ 586 ][ 587 ]染色体19p13.3に位置するSTK11遺伝子の生殖細胞病原性多様体は、ポイツ・ジェガース症候群家系の大多数で同定されている。[ 588 ][ 589 ][ 590 ][ 591 ][ 592 ]ポイツ・ジェガース症候群において最も一般的にみられるがんは消化管のがんである。しかしながら、他の臓器も悪性腫瘍を発症するリスクが高い。例えば、累積リスクは乳がんで32~54%[ 8 ][ 593 ][ 594 ]、卵巣がん(主に卵巣性索腫瘍)で21%と推定されている。[ 593 ]膵がんのリスクは、一般集団の100倍より高いと推定されている。[ 593 ]PJS患者において、系統的レビューで、すべての部位を合わせたがんの生涯累積リスクが最大93%であることが明らかになった。[ 593 ][ 595 ]表15は、これらの腫瘍の累積リスクを示している。

PJSの女性は、非常に侵攻性が高いまれな子宮頸部の腺がんである頸部悪性腺腫の素因も有している。[ 596 ]加えて、PJSの女性では良性の卵巣性索腫瘍と輪状細管が発生することがよくあり、一方でPJSの男性はセルトリ細胞腫瘍の素因を有している;[ 597 ]これら2種類の腫瘍はいずれも悪性ではないが、エストロゲン産生の増加に関連する症状を引き起こす場合がある。

発表されている文献によると、ポイツ・ジェガース症候群の個人では悪性腫瘍のリスクがきわめて高いようであるが、選択バイアスおよび紹介バイアスの結果としてこれらのリスクが過剰評価されている可能性を考慮すべきである。

表15.ポイツ・ジェガース症候群における特定年齢までの累積がんリスクa
部位 年齢(歳) 累積リスク(%) 参考文献
GI = 消化管。
aMacmillan Publishers Ltdから許諾を得て転載:Gastroenterology [ ], copyright 2010.
b子宮頸がんおよび精巣腫瘍を除いた他のすべてのがんで、累積リスクは一般集団よりも高かった(P < 0.05)。
c消化管がんには、大腸がん、小腸がん、胃がん、食道がん、膵がんが含まれる。
dWesterman et al.:消化管がんに膵がんは含まれない。[ ]
e子宮頸部の悪性腺腫または精巣のセルトリ細胞腫は含まれなかった。
すべてのがん 60–70 37–93   [ ][ ][ ][ ][ ][ ]
消化管がんc、d 60–70 38–66   [ ][ ][ ][ ]
婦人科がん 60–70 13–18   [ ][ ]
原発部位ごと      
65 29   [ ]
小腸 65 13   [ ]
大腸 65 39   [ ][ ]
膵臓 65–70 11–36   [ ][ ]
65–70 7–17   [ ][ ][ ]
乳房 60–70 32–54   [ ][ ][ ]
子宮 65 9   [ ]
卵巣 65 21   [ ]
子宮頸部e 65 10   [ ]
精巣e 65 9   [ ]

ポイツ・ジェガース遺伝子

ポイツ・ジェガース症候群は、染色体19p13上に位置するSTK11LKB1とも呼ばれる)腫瘍抑制遺伝子の病原性多様体によって引き起こされる。[ 589 ][ 590 ]家族性大腸腺腫症にみられる腺腫とは異なり、ポイツ・ジェガース症候群で生じるポリープは過誤腫である。PJS患者の過誤腫性ポリープとがんに関する諸研究から、2ヒット仮説に一致するアレルの不均衡(LOH)が示されており、よってSTK11が腫瘍抑制遺伝子であることは実証されている。[ 600 ][ 601 ]しかしながら、ヘテロ接合性のSTK11ノックアウトマウスでは残存する野生型アレルの不活化がなくても過誤腫が発生してくることから、PJSにおいてはハプロ不全だけで初発腫瘍の発生に十分な可能性が示唆されている。[ 602 ]STK11+/-マウスに起こるがんはその後LOHを示す[ 603 ];実際、STK11+/-における病原性多様体がヘテロ接合性で、TP53-/-における病原性多様体はホモ接合性の複合型ミュータントマウスでは過誤腫とがんのいずれについても発症が早まっている。[ 604 ]

STK11遺伝子の生殖細胞多様体は、ナンセンス、フレームシフト、ミスセンスなどの一連の多様体のほか、スプライス部位多様体および広範な欠失を示す。[ 8 ][ 588 ]

多様体の約85%は、発現蛋白のキナーゼドメイン領域に局在している。遺伝子型と表現型の強い相関は確認されていない。[ 8 ]STK11の1つまたは複数のエクソンを含む大規模欠失である多様体は最大30%であることから、PJSが疑われる症例における欠失解析の重要性が過少評価される。[ 588 ]

STK11がPJSを引き起こすことが明白に実証されている。DNAの直接塩基配列決定法を用いた初期の推定では、STK11における病原性多様体の検出率が50%であることが示されたが、広範な欠失を検出する技術を加えた研究では、ポイツ・ジェガース症候群の臨床基準を満たす患者のうち、94%までに病原性多様体が認められている。[ 588 ][ 595 ][ 605 ]これらの研究結果を考えると、他の主要な遺伝子がPJSを引き起こす可能性は低い。

臨床管理

ポイツ・ジェガース症候群ではがんの累積リスクが高いため、さまざまなスクリーニングが推奨されており、大腸がんの遺伝学に関するPDQ要約のポイツ・ジェガース症候群(PJS)におけるがん診断とサーベイランスのために公表されている推奨事項の表に要約されている。

若年性ポリポーシス症候群(JPS)

若年性ポリポーシス症候群は、小児期から若年成人期に発症する遺伝的に不均質でまれな常染色体優性疾患で、消化管のいたるところでの過誤腫性ポリポーシスの発生を特徴とするものの、大腸ポリープが優位を占める。[ 606 ]JPSは下痢、消化管出血、蛋白漏出性胃腸症、逸脱したポリープを来すことがある。[ 606 ][ 607 ][ 608 ] JPSの定義は、若年性ポリープと呼ばれる特定の種類の過誤腫性ポリープが存在することであり、JPSの家族歴が認められることも多い。若年性ポリープの診断は、発症時年齢というよりもむしろポリープの組織学的外観に基づく。結腸または直腸の孤立性の若年性ポリープは乳児や幼児では散発性にみられ、若年性ポリポーシス症候群の診断を意味しない。若年性ポリポーシス症候群の臨床診断は、以下の基準を1つ以上満たす個人に下される:[ 609 ]

  1. 結腸または直腸に6つ以上の若年性ポリープが認められる。
  2. 他の消化管部位に若年性ポリープが認められる。
  3. 若年性ポリープ(数は問わない)が認められ、若年性ポリポーシス症候群の家族歴を有する。

若年性ポリポーシス症候群は、症例の約15~60%で染色体18q21上のSMAD4遺伝子(MADH4/DPC4としても知られる)における生殖細胞病原性多様体[ 610 ]が原因となっており[ 606 ]、また症例の約25~40%では、染色体バンド10q22上でbone morphogenic protein receptor 1ABMPR1A)をコードしている遺伝子の病原性多様体が原因である。[ 611 ][ 612 ]SMAD4およびBMPR1Aにおける病原性多様体が若年性ポリポーシスの原因となることが知られているため、臨床医はポリープが5つ未満の若年患者を遺伝子検査に紹介している。77人の患者の計84個のポリープに実施された研究で、ポリープの数が限られている患者における遺伝子検査の生産高はごくわずかであることが明らかにされた;検出された生殖細胞多様体のうち、明確に病原性であるか、または病原性の可能性が高いものとして分類されたものはなかった。[ 613 ]

遺伝子型/表現型の相関から、SMAD4多様体は重度の胃ポリープ症のリスク増加[ 614 ]および遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)の特徴と関連している可能性があることが示唆されている(下記のHHTの特徴を参照のこと)。[ 606 ]若年性ポリポーシス症候群における大腸がんの生涯リスクは39%と報告されている。[ 615 ]大腸がんのリスクよりはるかに低いものの、胃がんのリスクも高いようである。[ 606 ]ポリポーシス登録に基づいて単一施設で追跡された若年性ポリポーシス症候群患者の12%に心臓弁の異常が認められ[ 606 ]、同定可能な病原性多様体を有していた全員にSMAD4多様体が認められた。

SMAD4病原性多様体を有するJPS患者は、動静脈奇形、粘膜皮膚毛細血管拡張症、ばち状指、骨関節症、肝動静脈奇形、小脳海綿状血管腫などのHHTの徴候と症状を呈することもあることから、2つの症候群が重複して発生していることが示唆される。[ 616 ]JPSとHHTの両方の特徴を示すことが臨床的に明らかな患者では、SMAD4遺伝子に病原性多様体が認められる。ほとんどの孤発性HHT患者では、アクチビン受容体様キナーゼ1(ALK1)遺伝子内またはエンドグリン(ENG)遺伝子内に病原性多様体が認められるが、SMAD4病原性多様体もきわめてまれながら(HHT患者の約1~2%)報告されている。[ 617 ]あるシリーズで、非選択HHT患者でSMAD4病原性多様体の発生率がわずかに高いことが指摘されている。この研究では、JPSの臨床診断を受けていないHHT患者30人中3人(10%)で、SMAD4に生殖細胞多様体が認められた。[ 618 ]逆に、臨床的にJPSと診断された患者を対象とした2件の研究では、SMAD4病原性多様体キャリアの21~22%にHHTの特徴が認められた。[ 606 ][ 619 ]9つの若年性ポリポーシス症候群家系に属するSMAD4病原性多様体キャリア21人を対象にした1件の研究では、患者の81%(21人中17人)がHHTを呈した。[ 620 ]この研究での高い有病率は、単一の家系に属する近親者が複数含まれていたこと、ならびに同じ病原性多様体を有する複数の家系が含まれていたことが原因の可能性がある。[ 620 ]

生殖細胞系SMAD4病原性多様体を有する若年性ポリポーシス症候群患者では、HHTに対するサーベイランスの実施が提唱されている。[ 606 ][ 620 ]一方で、ALK1またはENGの生殖細胞多様体が認められないHHT患者については、SMAD4の生殖細胞系の遺伝子検査を検討してもよい;SMAD4の生殖細胞病原性多様体が確認された場合は、消化管を評価すべきである。[ 621 ](詳しい情報については、表17、若年性ポリポーシス症候群におけるがん診断とサーベイランスのために公表されている推奨事項を参照のこと。)

生後数年間のうちにポリープが形成される重度の若年性ポリポーシス症候群は、乳児期の若年性ポリポーシス症候群と呼ばれる。乳児期の若年性ポリポーシス症候群は、多くの場合、BMPR1APTENを含む染色体領域10q22-23の微小欠失が原因で発生する。(PTENの詳しい情報については、本要約のPTEN過誤腫腫瘍症候群[コーデン症候群を含む]のセクションを参照のこと。)その表現型として巨頭症や発達遅滞などの特徴がみられることが多く、これらはPTENの機能が消失した結果と考えられる。[ 622 ]関連する発達遅滞に加え、反復性の消化管出血、下痢、滲出性腸疾患はこれらの乳児の罹病率と死亡率が非常に高くなることに関連しているため、こうした症例の遺伝率は限定的である。[ 622 ]

若年性ポリポーシス遺伝子

若年性ポリポーシス症候群は、症例の約15~60%では、SMAD4遺伝子における生殖細胞病原性多様体が原因となっており、また症例の約25~40%では、BMPR1Aの病原性多様体が原因である。[ 606 ][ 611 ][ 612 ]多様体の頻度に大きなばらつきがあるのは、個別の研究で報告されている患者数が比較的少数であることを反映していると考えられる。若年性ポリポーシス症候群の臨床基準を満たす患者のあるサブセットでは、SMAD4またはBMPR1Aのいずれの病原性多様体も同定されない。

SMAD4は、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-βシグナル伝達経路の構成要素である蛋白をコードし、この蛋白は細胞表面から核への増殖抑制シグナルを媒介する。SMAD4遺伝子における生殖細胞病原性多様体は、若年性ポリープおよびがんを形成しやすい素因となり[ 610 ]、生殖細胞多様体は11のエクソン中6つで発見されている。多様体の大部分は固有であるが、いくつかの反復病原性多様体が複数の別個の家系で同定されている。[ 619 ][ 623 ]SMAD4病原性多様体を有する患者は、胃がんなどの結腸外の消化管がんを発症するリスクも高く、胃ポリポーシスの状況で多くみられる。[ 619 ]

BMPR1A遺伝子は、TGF-βスーパーファミリーのセリンスレオニンキナーゼI型受容体であり、活性化するとSMAD4のリン酸化を招く。BMPR1A遺伝子は、SMAD4における同定可能な病原性多様体を有さなかった若年性ポリポーシス症候群の家系における連鎖解析によって最初に同定された。BMPR1Aの多様体には、ナンセンス、フレームシフト、ミスセンス、およびスプライス部位の多様体がある。[ 611 ]若年性ポリポーシス症候群患者においてBMPR1ASMAD4の両方で、大規模なゲノムの欠失がMLPAにより検出されたことが報告されている。[ 619 ][ 623 ]まれな若年性ポリポーシス症候群家系ではENGおよびPTEN遺伝子における多様体が示されているが、これらは他の研究では確認されていない。[ 624 ][ 625 ]

CHEK2

最初は数件の研究により、遺伝性乳がんおよび結腸がんの家系のサブセットが、CHEK2遺伝子の病原性多様体によって引き起こされたがん家族症候群を有する可能性があることが示唆された。[ 626 ][ 627 ][ 628 ]しかしながら、その後の研究で、CHEK2多様体は大腸がんリスクの増加とはわずかしか関連していないこと(すなわち、低浸透度)が示唆されている。CHEK2における切断型多様体には大腸がんと有意な関連性が認められないことを示した大規模研究が1件ある;しかしながら、特異的ミスセンス病原性多様体(I157T)は大腸がんのリスクがわずかに高いことと関連していた(OR、1.5;95%CI、1.2-3.0)。[ 629 ]

ポーランドで実施された別の研究において同様の結果が得られた。[ 630 ]この研究では、リンチ症候群家系およびリンチ症候群関係家系の発端者463人および対照5,496人が、I157Tなど4つのCHEK2病原性多様体について遺伝型を調べられた。ミスセンスI157Tのアレルは、MMRの多様体陰性例においてのみリンチ症候群関連がんと関連していた(OR、2.1;95%CI、1.4-3.1)。切断型多様体との関連は示されなかった。この知見を確認し、これらがFCCXと関係しているかどうかを明らかにするには、さらなる研究が必要である。

(詳しい情報については、乳がんおよび婦人科がんの遺伝学に関するPDQ要約のCHEK2のセクションを参照のこと。)

遺伝性混合ポリポーシス症候群(HMPS)

遺伝性混合ポリポーシス症候群は、鋸歯状腺腫や異型若年性ポリープ、腺腫などのさまざまな種類の結腸ポリープと、結腸腺がんの発生を特徴とする、まれな家族性がん症候群である。遺伝性混合ポリポーシス症候群遺伝子座は当初は6q16-q21にマッピングされたが、現在では15q13-q14に位置すると考えられている。[ 631 ][ 632 ]若年性ポリポーシス症候群および遺伝性混合ポリポーシス症候群の間には表現型の重複がかなり認められるが、1つの大規模家系で第15染色体の遺伝子座に連鎖が示されていることから、これらは異なる疾患である可能性が高いと考えられる。遺伝性混合ポリポーシス症候群のアシュケナージユダヤ人家系に連鎖解析を行ったところ、染色体15q13.3上でのハプロタイプの共有が明らかにされた。[ 633 ]遺伝性混合ポリポーシス症候群の個人および家系員とは完全に分離し、非罹患対照とは分離しなかったgremlin 1GREM1)の上流に、まれなヘテロ接合性で40kbの単一コピーの重複が発見された。[ 633 ]遺伝性混合ポリポーシス症候群の個人にこの重複が存在すると、正常な腸上皮でGREM1転写産物レベルの発現が増加した。[ 633 ]GREM1は骨形成蛋白(BMP)アンタゴニストであり、したがって理論上、腸内における幹細胞表現型の発現を促進する。若年性ポリポーシス症候群の根底にはBMPシグナル伝達の欠陥に至る生殖細胞多様体も存在するため、遺伝性混合ポリポーシス症候群および若年性ポリポーシス症候群間の潜在的な関連が示されている。

きわめてまれであるが、いくつかの追加のアシュケナージユダヤ人家系において臨床像がさまざまなGREM1病原性多様体が記述されている。 ほとんどの家系でポリポーシスは統一的な特徴のようであるが、ポリープ数、組織像、および発症年齢については高度の変動性がみられる。さらに、数人の病原性多様体のキャリアでは結腸以外の悪性腫瘍が記述されているが、罹患者が少なくGREM1病原性多様体との因果関係を確実に実証することはできない。データが比較的限られているため、原因不明のポリポーシスおよび/または家族性大腸がんを発症したアシュケナージユダヤ人家系においてGREM1多様体解析を検討することは合理的である。[ 634 ]そのような家系では、GREM1の非コード領域における重複に対する検査を含む包括的な多様体解析が必要である。

鋸歯状ポリポーシス症候群(SPS)/過形成性ポリポーシス症候群(HPS)

孤立性の多数の過形成性ポリープ(HP)(典型的に、白色、扁平、小さい)は、一般集団においてよくみられ、それらの存在は遺伝的基礎疾患を示唆しない。歴史的に、SPSの臨床診断はWHOにより定義されており、以下の基準の1つを満たす必要がある:

[注: この他の集団には、SPSについて改定された臨床基準の一部として鋸歯状腺腫が含まれている。[ 636 ]]

SPS症例の大多数ではHPの家族歴が認められないものの、SPS症例の約半数が大腸がんの家族歴を有する。[ 637 ][ 638 ]数件の研究で、正式に定義されたSPSの基準を満たした患者における大腸腺がんの有病率は50%以上であることが示されている。[ 639 ][ 640 ][ 641 ][ 642 ][ 643 ][ 644 ][ 645 ][ 646 ]SPS(SPSは、S状結腸よりも近位に発生する組織学的に診断されたHPおよび/または無茎性鋸歯状ポリープ[SSA]が少なくとも5つあり、そのうち2つが直径10mmを超えること、または結腸全体にわたって20を超えるHPおよび/またはSSAが分布していることと定義された)について少し変更を加えたWHO基準を用いた1件の研究で、57家系の347人のFDR(41%が男性)における大腸がんのRRは5.4(95%CI、3.7-7.8)であったことが明らかにされた。[ 636 ]

WHO基準は専門家の意見に基づいている;この障害と再現性のある関連が示されている既知の感受性遺伝子またはゲノム領域は存在しないため、遺伝子診断は不可能である。2件の研究で、SPSの個人において原因と考えられる生殖細胞多様体が報告されている。[ 637 ][ 647 ]

HPが20個を超える、1つのHPが大きい(1cm超)、または近位結腸にHPを有する患者38人の研究で、塩基除去修復遺伝子のMBD4およびMUTYHにおける分子的変化が調査された。[ 637 ]1人の患者が両アレル性のMUTYH病原性多様体を有することが明らかにされ、MUTYH関連ポリポーシスと診断された。病原性多様体は、検査された27人の患者のMBD4では検出されなかった。しかしながら、6人の患者で意義不明の単一ヌクレオチド多様体が認められた。SPSの既知の家族歴を有した患者は2人だけであり、大腸がんが発生したのは38人中10人であった。このシリーズにはおそらく、SPSの他の患者とともに、散発性HPを有する患者が混在していたようである。

6つ以上のHPを有するか、または4つ以上のHPを有し、そのうち2つが直径1cmを超えることとして定義されたSPS患者40人のコホートにおいて、1人の患者がEPHB2遺伝子(D861N)における生殖細胞多様体を有することが明らかにされた。[ 647 ]この女性患者には58歳のときに結腸に鋸歯状腺腫および100を超えるHPが認められ、そしてこの患者の母親は36歳で結腸がんにより死亡していた。EPHB2生殖細胞多様体は、大腸がんの個人歴を有する他の100人の患者または集団を一致させた200人の健常な対照患者では認められなかった。

SPS患者に起こる結腸腫瘍でみられる体細胞性の分子遺伝学的変化についてはさらに多くのことが明らかになっている。結腸内のHPが20個を超える患者、直径1cmより大きいHPが4個を超える患者、または結腸内のHPが多発性(5~10個)の患者を対象とした研究で、ポリープ組織中に特異的な体細胞性BRAF突然変異(V600E)が発見された。[ 648 ]これらの患者から採取したHPの50%(40個中20個)で、V600EのBRAF病原性多様体が明らかになった。これらの患者のHPはまた、左側に偏った散発性HPよりも有意に高いCpG islandのメチル化表現型(CIMP-high)、および少ないKRAS多様体も示した。このグループの以前の研究では、SPS患者の21%(76人中16人)ではHPが染色体1pの欠損を示したのに対し、HPが大きい(1cmを超える)か、HPがわずか5~10個の患者のHPでは0%であった。[ 640 ]

SPS患者のHPで見つかる遺伝学的および組織学的変化の多くは、大腸腺がんのCIMP経路でよくみられる。散発性鋸歯状ポリープは、CIMP経路の大腸がん前駆体である。(詳しい情報については、本要約ののセクションにおけるCIMPおよび鋸歯状ポリポーシス経路のセクションを参照のこと。)

まれな結腸がん症候群に対する介入

PJSおよびJPSの個人は、大腸がんのほか、結腸以外のがんのリスクも高い。これらの症候群はまれであるため、証拠に基づいたサーベイランスの推奨は存在しない。これらの症候群では大腸がんおよび他のがんのリスクが著しく高いため、レトロスペクティブ・シリーズおよびケースシリーズに基づいて(すなわち、もっぱら専門家の意見のみに基づいて)、多くのガイドラインが発表されている。[ 649 ][ 650 ][ 651 ][ 652 ][ 653 ]発表されたガイドラインに基づいてスクリーニングの推奨を行う際には、臨床判断を用いる必要がある。

表16.ポイツ・ジェガース症候群(PJS)におけるがん診断とサーベイランスのために公表されている推奨事項
団体 推奨される 結腸スクリーニング開始年齢 頻度 方法 結腸外スクリーニング推奨 解説
ACPGBI = Association of Coloproctology of Great Britain and Ireland;BE = バリウム注腸;C = 大腸内視鏡検査;FS = S状結腸内視鏡検査;NCCN = National Comprehensive Cancer Network。
aSTK11検査には、塩基配列決定法で多様体が発見されなかった場合に、塩基配列決定法の後に欠失がないかの解析(例、多重ライゲーション依存性プローブ増幅)が含まれる。
b肺がんリスクは増加しているが、禁煙および症状の認識強化に勝る推奨はない。
(ポイツ・ジェガース症候群と乳がんおよび卵巣がんリスクに関する詳しい情報については、乳がんおよび婦人科がんの遺伝学に関するPDQ要約の乳がんおよび婦人科がんに関連する他の高浸透度の症候群のセクションを参照のこと。)
Johns Hopkins(2006)[ 652 ] 推奨、8歳時 18年 2~3年に1回 C 乳がん、婦人科がん(子宮頸がん、卵巣がん、子宮がん)、膵がん、小腸がん、胃がん、精巣腫瘍  
Johns Hopkins(2007)[ 653 ] 推奨、年齢の規定なし 10代後半または症状発現時 3年 C 乳がん、婦人科がん(子宮頸がん、卵巣がん、子宮がん)、膵がん、小腸がん、胃がん、精巣腫瘍 10代後半または症状発現時の遺伝子検査。
ACPGBI(2007)   18年 3年 CまたはFS + BE 結腸外スクリーニングについての言及はない 遺伝子検査についての推奨はない;STK11/LKB1検査の検討が必要。
Cleveland Clinic(2007)[ 654 ]   18年 3年 C 乳がん、婦人科がん(子宮頸がん、卵巣がん)、膵がん、小腸がん、胃がん  
Erasmus University Medical Center(2010)[ 595 ]   25~30歳   C 乳がん、婦人科がん(子宮頸がん、卵巣がん、子宮がん)、膵がん、小腸がん、胃がん  
NCCN(2020)[ 122 ] 特別な推奨はない 10代後半 2~3年に1回 C 乳がん(女性)、婦人科がん(子宮頸がん、卵巣がん、子宮がん)、肺がんb、膵がん、小腸がん、胃がん、精巣腫瘍 専門チームへの紹介。

証拠レベル:5

表17.若年性ポリポーシス症候群(JPS)におけるがん診断とサーベイランスのために公表されている推奨事項
組織/著者 推奨される スクリーニング開始年齢 頻度 方法 解説
ACPGBI = Association of Coloproctology of Great Britain and Ireland;BE = バリウム注腸;C = 大腸内視鏡検査;CRC = 大腸がん;EGD = 食道胃十二指腸鏡検査;FS = S状結腸内視鏡検査;GI:消化管;HHT = 遺伝性出血性毛細血管拡張症;NCCN = National Comprehensive Cancer Network。
aSMAD4/BMPR1A検査には、塩基配列決定法で多様体が発見されなかった場合に、塩基配列決定法の後に欠失がないかの解析(例、多重ライゲーション依存性プローブ増幅)が含まれる。[ 623 ]
b患者に症状が認められる場合はより若年で開始する。
ACPGBI(2007)   15~18歳b 1~2年に1回 CまたはFS + BE 70歳まで遺伝子キャリアおよび罹患者のサーベイランスを実施、および予防的手術の検討。
Cleveland Clinic(2007)[ 654 ]   15年 3年 C、EGD SMAD4病原性多様体を有する一部の家系ではHHTもみられる;このような人ではHHTについてもスクリーニングが必要な場合がある。
Johns Hopkins(2007)[ 653 ] 推奨、Cより遺伝子検査が好ましい 15歳または症状発現時 ポリープが消失するまで毎年、その後は2~3年ごと C 50~100を超えるポリープ、内視鏡的管理が不可能、重度の消化管出血、腺腫性変化を伴うJPS、大腸がんの強い家族歴が認められる場合は予防的手術。
St. Mark's(2012)[ 606 ] 推奨、4歳で遺伝子検査を実施 12年 重症度に基づいて1~3年ごと C、EGD HHTの精密検査を検討。
NCCN(2020)[ 122 ] 実施する 15年 2~3年ごと、またはポリープが発見された場合はより短い期間にて C 専門チームへの紹介。病原性多様体が同定されていない家系では、リスクがありポリープのない個人に対して大腸内視鏡検査/上部消化管内視鏡検査の間隔を20歳で開始して2~3から5年まで延長し、その後40歳から10年に延長することを考慮する。

証拠レベル:5

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遺伝性結腸がん症候群における心理社会的問題

がんの遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査における心理社会的研究は、疾病危険度、心理学的転帰、対人および家族内の影響、文化的反応および地域社会的反応のレベルがさまざまである集団内の検査に対する関心に主眼を置いている。この研究は、サーベイランスやその他の健康行動を促進または妨げる行動因子の同定も目的としている。心理社会的研究から得たデータの結果は、患者と交流する臨床家の指針となるものであり、以下のものがある:

本要約のこのセクションでは、リンチ症候群家族性大腸腺腫症(FAP)、およびポイツ・ジェガース症候群(PJS)の遺伝カウンセリングと遺伝子検査の心理社会的側面を中心に言及しており、これらの症候群に対する医学的スクリーニング、リスク低減手術、および化学予防を取り巻く問題も含めている。

リンチ症候群における心理社会的問題

リンチ症候群に対する遺伝カウンセリングと遺伝子検査への参加

遺伝カウンセリング/遺伝子検査受診に関する初期の研究

遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査の受診を評価した初期の研究では、大腸がん(CRC)患者と主に家族歴に基づいて大腸がんリスクが高いことが確認されている非罹患家系員など、選択された高リスク研究集団に焦点が当てられた。参加者は主に臨床での設定および家族性結腸がん登録から募集された。ほとんどの研究では、指標となるがん症例(典型的には大腸がん)を募集し、特に遺伝カウンセリングおよびミスマッチ修復(MMR)遺伝子多様体に対する生殖細胞検査が提供された;これらは無料サービスとして提供されることが多かった。[ 1 ][ 2 ][ 3 ][ 4 ][ 5 ][ 6 ][ 7 ][ 8 ][ 9 ]遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査は、病原性多様体を有する発端者の近親者にも同様に提供された。これらの初期の研究について要約したレビューでは14~75%に及ぶ広範な検査受診率が報告され、発端者と検査を提案された高リスクの近親者の両者における受診が含まれた。[ 10 ]レビューでは、遺伝子検査を受けた主な理由として、子供のリスクについて知りたい、早期発見やスクリーニングの必要性について知りたいという願望のほか、不確実性の軽減が挙げられたことが示された。検査を断った理由としては、費用、保険差別の懸念、自身や家族に対する不都合な感情的影響の可能性、予想される有益性の低さ、時間の不足などが挙げられた。

マイクロサテライト不安定性(MSI)に対する普遍的な腫瘍スクリーニングおよび/または免疫組織化学(IHC)検査後の遺伝カウンセリングおよび生殖細胞検査の受診

遺伝子検査の受診に関するこれらの初期の研究は、個人が検査を受ける動機付けとなるまたはならない理由について予備的洞察を提供した一方で、遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査を提供する過程は、現在の臨床診療に発展したものとは異なっていた。臨床診療では、検査から利益が得られる可能性のある個人を特定するため、家族歴のみに依存しているわけではなく、代わりにリンチ症候群に対する最初のスクリーニングとしてMSIおよび/またはIHCを用いて、新たに診断された患者における大腸がんおよび子宮内膜がんの普遍的な分子的診断検査を利用する。(詳しい情報については、本要約のリンチ症候群のスクリーニングのための普遍的腫瘍検査のセクションを参照のこと。)

普遍的MSI/IHCスクリーニングは、生殖細胞多様体を保有する可能性がある新たに診断された患者を特定するために、採用が増加しているが、重要なこととして、生殖細胞検査に適切な個人全員が推奨される遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査サービスを最後まで受けるわけではない。単一施設の2件の報告により、IHCの結果が異常であった大腸がんおよび子宮内膜がんの発端者のうち、リンチ症候群に対する生殖細胞多様体検査を最後まで受けたのは、それぞれ20%および13%であったことが明らかにされた。[ 11 ][ 12 ]これらの研究では、遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査を最後まで受ける理由を求めなかった。しかしながら、MSI/IHCの結果が異常であった後に遺伝子検査を完遂した患者の割合が高いことは、この過程でスクリーニング陽性の結果開示、MSI/IHC検査後のカウンセリングの提供、または紹介の促進に関与する遺伝カウンセラーがいることに関連している可能性があると示唆されている。[ 13 ]

MSIの結果を受ける前に調査されたKaiser Permanente Northwest医療制度の大腸がん患者145人を対象にした研究において、ほとんどの患者がMSI/IHCスクリーニングに対して積極的な態度を示していた。[ 14 ]大多数(84.8%)がMSI/IHCスクリーニングについて6つ以上の有益性を支持していた;しかしながら、89.4%が潜在的に3つ以下の障壁(主に追加の検査とサーベイランスの費用)についても認めていた。がんの強い家族歴を有する患者は、MSI/IHCスクリーニングの障壁について比較的少なく述べる可能性が高かった。またスクリーニングに伴う患者の苦痛の経験は最低限で、参加者の77.2%ではスコアがゼロ(苦痛なしを示す)であった。

家族歴およびがんリスクに関する教育や検査を受けるための医療提供者による奨励は、遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査の受診を促進しうる。新たに大腸がんと診断され、がんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングに紹介される高リスク基準を満たした患者を対象とした小規模な(n = 19)定性的研究では、患者が推奨されるカウンセリングを求めない潜在的理由が特定された。これらの理由には、がんの家族歴の知識が不十分で、個人のがん診断に対する家族歴の重要性に気付いていない;カウンセリングについて医師から具体的な推奨が直接ない;新たながんの診断の迅速な要求に対処することよりカウンセリングの優先度を低いとみなしているなどがあった。[ 15 ]リンチ症候群のリスクがある個人における大腸内視鏡検査スクリーニングを促進するためのランダム化試験において、91人の個人を対象にしたフォローアップ調査では、医師と遺伝子検査について話し合った経験を報告したのは24%のみで、検査の受診に対する最も一般的な障壁は、検査を受けるための医療提供者による助言の不足であった。[ 16 ]

リスクのある近親者によるカスケードスクリーニングの受診

臨床診療では、新たに診断された腫瘍についてリンチ症候群ではないかの普遍的スクリーニングの採用が増加している。しかしながら、この過程の臨床的有益性および費用対効果はカスケードスクリーニング、すなわち生殖細胞病原性多様体を有することが明らかにされたがん発端者のリスクのある近親者における予測検査の受診に起因している。1件の系統的レビューで、リンチ症候群発端者の第一度近親者(FDR)による遺伝子検査の受診の頻度と予測因子が評価された。[ 17 ]このレビューに含められ、FDRにおける受診率について報告した4件の研究の結果から、34~52%のFDRが検査を受けたことが示された。近親者における検査受診に関連する因子として、年齢(50歳未満)、女性であること、親であること、雇用状態、教育レベル、医療調査への参加、心理学的因子(抑うつ症状が認められないこと)、およびがんに罹患した近親者の数が挙げられた。

リンチ症候群レジストリーに登録されたフィンランド人家系の3世代にわたる遺伝子検査の受診に関する1件の大規模レトロスペクティブ研究でも、病原性多様体を有する個人のリスクのある近親者において予測検査の受診が不完全であり、世代ごとの受診率の低下が明らかにされた。[ 18 ]リンチ症候群多様体を有する発端者1,184人について、予測検査を受けたのはリスクのある成人の第一世代、第二世代、第三世代近親者のそれぞれ、67%、43%、および24%であった。リンチ症候群の第一世代多様体キャリア539人のうち、リスクのある成人した子の62%が検査を受けた。多変量解析では、比較的高い年齢、家族に特異的な多様体(MLH1およびMSH2 vs MSH6)、同胞がいないことまたは病原性多様体を有する同胞がいること、親が大腸内視鏡検査を用いるサーベイランスを遵守していることが予測検査の受診に関連していた。この研究により、予測検査およびスクリーニング行動といった家族レベルの因子が、リンチ症候群関連多様体を有する個人のリスクのある近親者における予測検査に影響を及ぼしうることが示唆された。

リンチ症候群家系におけるカスケードスクリーニングの受診を増加させるための介入について発表されている報告は限られている。オーストラリアの論文では、リンチ症候群を含む遺伝性がんの病原性多様体についてリスクのある近親者に知らせる2つのアプローチが比較された。[ 19 ]この研究で、遺伝子検査を受けた33家系の発端者は、臨床医が詳細な手紙を、リスクのある近親者に送付し、その家系における遺伝性がん素因を確認するように近親者に助言することに同意した。手紙には、医師または遺伝学の専門家とこの情報を話し合う推奨も含まれており、遺伝学評価に含まれる意味合いに関する情報も提供された。最初の2年間の追跡で、第一度および第二度近親者の40%は、予測的遺伝子検査を受け、非キャリアであると推定されることが明らかとなるか、評価を受けたが遺伝子検査は断った。著者らはこれらの知見を、臨床医が作成した手紙を送付する以前に示されていた41家系のコホート(このコホートの多様体陽性発端者は、遺伝子検査が利用可能であると近親者に助言するようにだけ依頼されていた)と比較した。先行するコホートでは、リスクのある近親者の23%が遺伝的リスク状態を明らかにするためのサービスを求めたが、これは医師が作成した手紙を受け取ったグループと比較して有意に少なかった(P = 0.001)。手紙の受け取りによって、プライバシーまたは自律性の侵害に関する懸念は生じなかった。

警告義務を含む倫理的な問題に関する情報については、がんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングに関するPDQ要約の倫理的、法的、および社会的意味合いのセクションを参照のこと。

リンチ症候群に対する遺伝カウンセリングと遺伝子検査に参加することの心理的影響

リンチ症候群の遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査の実施前後および実施中の個人の心理的状態に関する研究が行われている。そうした研究には、リンチ症候群関連がんの個人歴がない人のみを対象としたものもあれば[ 20 ][ 21 ][ 22 ][ 23 ]、大腸がん患者に加えて、リンチ症候群病原性多様体を有するリスクのあるがん非罹患者を対象としたものもある。[ 24 ][ 25 ][ 26 ][ 27 ][ 28 ]リンチ症候群の遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査を受けている個人の心理社会的特性の横断的評価では、検査前の心理的機能の平均スコアはほとんどの参加者で正常範囲内にあることが示されているが[ 24 ][ 25 ][ 26 ]、がんに罹患している個人と非罹患の個人を比較した1件の研究により、罹患している個人はリンチ症候群に関連したより大きな苦痛および心配を有することが示された。[ 29 ]

数件の縦断的研究では、リンチ症候群の遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査の実施前の時点と検査結果開示後の1年間における複数の時点での心理学的アウトカムの評価が行われた。検査前の遺伝カウンセリングの面談前とその2週間後における不安の変化を、がん個人歴、性別、および年齢(50歳未満 vs 50歳以上)に基づいて調べた研究が1件ある。両年齢層の罹患および非罹患の女性参加者、ならびに50歳を過ぎた罹患男性は、時間経過とともに不安の有意な低下を示した。50歳未満の非罹患男性では不安レベルが低いままであった;しかしながら、50歳未満の罹患男性では、検査前のカウンセリング時点で報告した不安レベルに低下がみられなかった。[ 30 ]がん罹患者と非罹患者の両方を対象にカウンセリングから8週間経過時(検査結果の開示前)の心理的苦痛を評価した研究では、一般的不安、がんの心配、および苦痛が有意に低下したことが示された。[ 29 ]一般的に、病原性多様体状態の開示直後の期間内(例えば、2週間~1ヵ月)で行われた研究から得られた知見によると、ミスマッチ修復(MMR)病原性多様体キャリアでは、全般的苦痛[ 22 ][ 27 ]、がん特異的苦痛[ 20 ][ 21 ]、またはがんの心配[ 27 ]に関して、検査前の測定値と比べて増大する可能性があることが示唆された。キャリアでは、過去に家系内に病原性多様体が確認されていない人(非キャリア)よりも、検査結果開示後に有意に強い苦痛を経験することが多かった。[ 20 ][ 21 ][ 22 ][ 27 ]しかしながら、キャリアの苦痛の強さは開示後の1年間の経過の中で治まっていき[ 22 ][ 27 ]、開示1年後時点での苦痛の強さは検査前と差がない[ 20 ][ 21 ]場合がほとんどである。これらの研究からの知見により、非キャリアでは結果開示から最大1年後まで苦痛の軽減が認められるか、苦痛に変化がみられないことも示された。[ 20 ][ 21 ][ 22 ][ 27 ]非罹患者と大腸がん患者を対象としたある研究では、キャリアと情報価値のない結果または意義不明の多様体を示す結果を受けた個人との間で、患者の苦痛の強さには検査後1年間のどの時点でも差は認められず、また検査前の苦痛の強さもほぼ同等であったことが示された。[ 28 ]

リンチ症候群の遺伝カウンセリングと遺伝子検査の実施後に生じる長期間の心理社会的アウトカムについて調査した研究は限られている。[ 20 ][ 31 ][ 32 ]遺伝子検査の前後で心理的苦痛を評価した複数の縦断研究では、病原性多様体のキャリアおよび非キャリアに認められた長期の苦痛レベル(検査後3年または7年時点で測定)はベースライン時の苦痛レベルに類似していることが認められた。[ 20 ][ 32 ]ただし、以下の例外があった:ある研究[ 20 ]における非キャリアのがん特異的苦痛スコアは検査後も低い値が続き、そのベースラインスコアおよびキャリアの検査1年後時点のスコアと比較して有意に低い結果となり、検査3年後の時点でも同様の傾向が認められた。ある研究では、キャリアは検査7年後の時点で大腸がんのリスクに対して不安を抱く傾向が強かった;しかし、大腸がんに対する不安を訴えていた非キャリア(「多少の不安を感じる」、「非常に不安だ」など)は、不安を報告しなかった非キャリアよりも検査結果の妥当性を疑う傾向が強かった。[ 32 ]検査を受けるという決定についての満足度に関する質問では、キャリアと非キャリアの大半が最長で検査後7年の時点でも強く満足しており、再検査を受ける意思があることを示した。[ 32 ]

一部の研究から得られた知見から、検査実施前の全般的苦痛またはがん特異的苦痛の測定で比較的高いスコアを示す人など、検査結果開示後に心理的苦痛を経験するリスクの高いサブセットが存在する可能性が示唆された。[ 24 ][ 25 ][ 26 ][ 27 ][ 28 ][ 33 ]リンチ症候群の検査用に血液を提供した大腸がん患者に関する研究によって、抑うつ症状および/または不安の程度は、女性、若者、非白人のほか、正規の教育レベルが低い者、社会的支援財源が少ないおよび十分でない者の間で高いことが明らかにされた。[ 24 ]これと同じ集団から、心理的苦痛の強さ、QOLの低さおよび社会的支援の少なさを示す個人のサブグループが同定されている;さらに、このサブグループでは、リンチ症候群病原性多様体のキャリアであることが判明することについての心配と検査結果の告知に対処できるかについての心配を経験することが多かった。[ 25 ]大腸がん患者とリンチ症候群病原性多様体を有するリスクのある近親者を対象に検査結果開示後の心理的アウトカムを評価したあるフォローアップ報告によると、同一の心理社会的特性を有するサブグループでは、多様体の状態とは無関係に、全般的苦痛および開示した年に遺伝子検査を受けるという経験に特有な苦痛の程度が高かった。非白人と教育水準の低い個人では、それぞれ白人と教育水準の高い個人と比較して、抑うつと不安のスコアがすべての時点において高くなっていた。[ 27 ]別の研究により、重度または軽度のうつ病の既往歴がある、検査前のがん特異的苦痛が大きい、がんに罹患した第一度近親者の数が多い、悲嘆反応が大きい、ならびに疾病に関係する情緒的表出が大きいといったことで、検査結果開示から1~6ヵ月後の苦痛が大きいことが予測されたことも明らかになっている。[ 28 ][ 33 ]この領域ではさらなる調査研究が必要とされている一方で、症例研究から示されるように、精神医学的苦痛を経験するリスクの高い人を識別すること、ならびに遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査の全過程を通じて心理的支援とフォローアップを提供していくことが重要である。[ 34 ]

がんリスクの理解度に対するリンチ症候群の遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査の影響についても、検証研究が行われている。1件の研究の報告では、病原性多様体のキャリアおよび非キャリアは、そのほぼ全員が開示1年後の時点で自身の検査結果を正確に想起できた。キャリアより多くの非キャリアが結果開示から1ヵ月後および1年後の両時点で自身の大腸がんの発生リスクを正確に同定した。自身の大腸がんリスクを正確に同定できなかった病原性多様体キャリアには、自身のリスク水準を正確に同定できたキャリアと比較して、検査前の主観的なリスク認知の水準が低いという傾向がみられた。[ 22 ]別の研究で、キャリアと非キャリアのいずれも多様体の状態の開示後に、大腸がんおよび子宮内膜がんリスクを推定する正確度が改善したことが報告された。[ 23 ]

リンチ症候群に対するスクリーニングとリスク低減のための介入の心理社会的側面

スクリーニング

リンチ症候群の大腸スクリーニング

リンチ症候群に対する遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査の有益性には、個人がスクリーニングおよびリスクを低下させるための手術など、がんの早期発見と予防のための選択肢について学ぶ機会が含まれる。諸研究により、リンチ症候群リスクのある多くの人が遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査前に、何らかの大腸がん(CRC)スクリーニングを受けたことがあるが、ほとんどはリンチ症候群スクリーニングの推奨を遵守する可能性が低いということが示唆されている。18歳以上で、大腸がんの個人歴がなく、リンチ症候群に対する遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査を提供している米国を基盤とした研究プロトコルに参加した人では、52~62%が遺伝子検査前に大腸内視鏡検査を受けたことがあると報告した。[ 1 ][ 3 ][ 35 ][ 36 ]ベルギーおよびオーストラリアにおいて同様の研究に参加したがんに罹患していない個人では、研究への登録前に大腸内視鏡検査を受けたことがあったのはそれぞれ51%と68%であった。[ 23 ][ 37 ]遺伝子検査を受ける前に大腸内視鏡検査を受診していたことに関連する因子は、高所得かつ高齢であること[ 35 ]、大腸がん発症リスクの認識が高いこと[ 37 ]、教育水準が高いこと、大腸がんリスクが高いという事実を告知されていることなどであった。[ 36 ]

リンチ症候群に対する臨床基準を満たす、がんに罹患したおよびがんに罹患していない人の研究において、92%が遺伝子検査前に少なくとも1回は大腸内視鏡検査および/またはS状結腸内視鏡検査を受けたことがあると報告した。[ 38 ]リンチ症候群、FAP、またはAPC I1307K遺伝子検査に関する遺伝的リスクの評価および考えられる考慮事項のために受診した非罹患者を対象とした別の研究では、77%がスクリーニング検査(大腸内視鏡検査、S状結腸内視鏡検査、バリウム注腸のいずれか)を少なくとも1回受けていたと報告した。

3件の研究で、がんに罹患していない人が、遺伝子検査前のリンチ症候群に対する大腸内視鏡検査によるスクリーニングの推奨事項を遵守するかどうかが調査され、10%[ 23 ]、28%[ 36 ]、および47%[ 38 ]の遵守率が報告された。

数件の縦断研究で、既知のリンチ症候群病原性多様体に対する検査を受けた後のがん非罹患者によるスクリーニングのための大腸内視鏡検査の利用が調査された。[ 23 ][ 35 ][ 36 ][ 37 ]これらの研究では、リンチ症候群遺伝子検査前の大腸内視鏡検査の使用と、検査結果開示後1年以内の大腸内視鏡検査の使用が比較された。リンチ症候群の病原性多様体キャリアは、非キャリアおよび検査を辞退した人と比較して大腸内視鏡検査を受ける傾向が高いこと(73% vs 16% vs 22%)、およびキャリアでは、結果の開示から1年以内に大腸内視鏡検査の利用率が高かったこと(36% vs 73%)を報告した研究が1件ある。[ 36 ]別の2件の研究では、結果の開示後1年時におけるキャリアの結腸鏡検査の受診率(71%および53%)は検査前の受診率と有意差がない[ 35 ][ 37 ]が、非キャリアの結腸鏡検査の受診率は同じ期間に低下したことが報告された。結果の開示後1年時の大腸内視鏡検査の利用と関連する因子には、リンチ症候群素因となる病原性多様体を有していること[ 35 ][ 36 ][ 37 ]、高齢であること[ 35 ]、および大腸がんを制御しているという認識の高さが含まれていた。これらの知見から、大腸内視鏡検査の受診率は結果の開示後1年以内は病原性多様体キャリアにおいて増加または維持され、非キャリアでは受診率が低下することが示唆されている。過去にリンチ症候群に関連したがんの診断を受けたかどうかにかかわらず、MMR病原性多様体キャリア134人を含めた縦断的研究から得られたデータによると、遺伝子検査の結果を受け取ってから6ヵ月以内にサーベイランスで大腸内視鏡検査を受けなかった人は、疫学研究所うつ評価尺度(Center for Epidemiological Studies-Depression:CES-D)スケールによる測定で、臨床的に意味のある抑うつ症状を報告する傾向が6倍も高かったことが明らかになった(オッズ比[OR]、6.06;95%信頼区間[CI]、2.09-17.59)。遺伝子検査前に測定した大腸がんの不安レベルが高いことも、臨床的に有意な抑うつ症状と関連していた(OR、1.53;95%CI、1.19-1.97)。[ 39 ]

2件の研究では、リンチ症候群の遺伝子検査後、多様体の状態に基づいて発表されているスクリーニングのガイドラインへの遵守レベルが調査された。1件の研究では、病原性多様体キャリアにおいて100%の大腸内視鏡検査遵守率が報告された。[ 23 ]別の研究は、キャリアの35%および非キャリアの13%が適切な大腸がんスクリーニングのために発表されているガイドラインを遵守していないこと[ 35 ]を明らかにし、どちらのグループも約半数は発表されているガイドラインの推奨よりもスクリーニング受診の頻度が高く、半数はスクリーニング受診頻度が低かった。

上述の縦断研究では、遺伝子検査の結果を受けた後、比較的短期間(1年)の大腸スクリーニングに対する行動は調査されたが、より長期のスクリーニングに対する行動についてはほとんど不明である。遺伝子検査の結果開示から3年後のがん非罹患者の心理面および行動面のアウトカムを評価した縦断研究(N = 73)では、キャリア全員(n = 19)が開示から1~3年後の間に少なくとも1回の大腸内視鏡検査を受けていたことが明らかとなった。[ 20 ]検査から7年後までの同様のアウトカムを調査した1件の縦断研究でも、すべてのキャリアが大腸内視鏡検査を受けていたことが明らかになった;大半(83%)が推奨に従って3年ごとかそれ以上の頻度で検査を受けていたほか、11%はそれよりも長いスクリーニング間隔を報告した。[ 32 ]この研究では、推奨よりも長いスクリーニング間隔を報告した被験者は早期の死に対する恐怖を報告しやすい傾向がみられた。また、非キャリアの16%は検査後7年以内に大腸内視鏡検査を受けたことを報告した;自身の検査結果の妥当性に疑いを示した被験者は、大腸内視鏡検査を受ける傾向が強かった。[ 32 ]ある1件の研究では、94%のキャリアが将来的に年1回または2回の大腸内視鏡検査を受ける意思を表明した;非キャリアでは64%がその後も大腸内視鏡検査を受ける意思がないか、明確な返答をしなかった、33%は5~6年間隔もしくはそれより低い頻度で大腸内視鏡検査を受ける意思をもっていた。[ 23 ]オランダで実施されたある横断研究では、CRCの患者、子宮内膜がんの患者、またはリスク評価後およびカウンセリング後2~18年の間にリンチ症候群の臨床的または遺伝子診断を受けた患者におけるS状結腸内視鏡検査または大腸内視鏡検査の使用が調査された。[ 40 ]診療記録から入手したデータに基づくと、リンチ症候群病原性多様体キャリアの86%、検査を受けなかったか、リンチ症候群遺伝子検査が情報価値のない結果であった人の68%、および臨床的リンチ症候群の診断を受けた人の73%がスクリーニングの推奨事項を遵守すると考えられた。参加者はスクリーニングの遵守度に関する質問にも回答し、標本全体の16%が、推奨された頻度よりも少ない頻度でスクリーニングを受けていると報告した。標本全体では、スクリーニングに対する障害をより強く認識することは、診療記録の再検討によって決定されるスクリーニングの非遵守と関連し、スクリーニング方法での困惑は、自己申告型の非遵守と関連した。同じくオランダで実施された第2の横断研究では、がんに罹患していないリンチ症候群多様体キャリア(n = 42)を対象にして、病原性多様体の保有状況を告知された後(範囲、6ヵ月~8.5年)の大腸スクリーニング行動に関する調査が行われた。回答者の31%がリンチ症候群の遺伝子検査を受ける前から年1回の大腸内視鏡検査を受けていたと報告し、88%が遺伝子診断以来、大腸内視鏡検査を受け続けていると報告した(P < 0.001)。[ 31 ]

生殖細胞病原性多様体を有するリスクがあるが、そのリスク状態について知るために遺伝カウンセリングおよび/または遺伝子検査を受けない人におけるリンチ症候群スクリーニングの行動に関してはほとんど知られていない。Australian Colorectal Cancer Family Registryからのリンチ症候群の生殖細胞病原性多様体キャリアの血縁者で、遺伝カウンセリングおよび/または遺伝子検査を受けなかった26人が今後10年間に大腸がんとなるリスクの認識度を評価し、大腸内視鏡検査の受診状況を自己報告する質問を受けた。[ 41 ]リスクの平均認識度は30.5%であり、MMRproソフトウェアで計算した4%のリスクの予測平均認識度を上回っていた。[ 42 ]73%(n = 19)が大腸内視鏡検査を受けたことがある(診断の理由の1つ)と報告した;35%が過去2年以内に大腸内視鏡検査を受けており、推奨に従うと判断された。リスクの認識度では、最後の大腸内視鏡検査からの経過年数とわずかに正相関(ピアソン係数 r、0.49;範囲、0.02-0.79)が認められたが、それ以外は他のスクリーニングまたは個人の特性と関係していなかった。著者らは、遺伝カウンセリングおよび/または遺伝子検査を受けなかったリンチ症候群病原性多様体キャリアの血縁者における大腸内視鏡検査受診の予測因子として、リスクの認識度単独では十分ではない可能性があると結論した。[ 41 ]

リンチ症候群における婦人科がんスクリーニング

いくつかの小規模な研究により、リンチ症候群と関連する子宮内膜がんおよび卵巣がんに対するスクリーニングの利用が調査されている(表18を参照)。これらの研究にはいくつかの限界があり、サンプルサイズが少ないこと、追跡期間が短いこと、レトロスペクティブのデザインであること、データソースとして自己報告に依存していること、およびリンチ症候群遺伝子検査を受けている患者が一部に含まれていないことが挙げられる。いくつかの研究がスクリーニング受診解析でスクリーニング受診の最低年齢基準を満たさない人を含んでいる。家系内における既知の病原性多様体に関する検査結果が陰性であった後のスクリーニング利用を評価した研究のうち、以前に特定された異常の追跡といったスクリーニングの適応を評価したものはほんのわずかであった。最後に、いくつかの研究が受診解析に他のがんに対して積極的な治療を受けている患者を含んでおり、提供者のスクリーニング推奨に影響を与える可能性がある。そのため、表18では、リンチ症候群遺伝子検査を受けた患者を含み、サンプルサイズが多く、追跡期間が長い、スクリーニング年齢が適切な人を含めた解析を行った研究に限定している。

表18.リンチ症候群遺伝子検査を受けた女性における婦人科スクリーニングの受診率
研究の引用番号 調査集団 遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査前の婦人科スクリーニングの受診率 遺伝子検査結果を受領後の婦人科スクリーニングの受診率 フォローアップ期間 解説
EC = 子宮内膜がん;ES = 子宮内膜サンプリング;RRH = リスク低減のための腹式子宮全摘出術;RRSO = リスク低減のための卵管-卵巣摘出術;TVUS = 経膣超音波検査。
非キャリア = 家系内で既知の病原性多様体が陰性。
1プロスペクティブ研究デザイン。
2レトロスペクティブ研究デザイン。
aデータソースとして自己報告。
Claes et al.(2005)1,a [ ] キャリア(n = 7) 報告されていない TVUS 1年 1人の非キャリアが既往の子宮内膜障害に対してTVUSを受けたことを報告した一方で、3人の非キャリアが予防を理由としてこの検査を受けたことを報告した。
- キャリア 86%(6/7)
非キャリア(n = 16)
- 非キャリア 27%(4/15)
Collins et al.(2007)1,a [ ] キャリア(n = 13) 報告されていない TVUS 3年 キャリア4人中2人が3年の追跡評価までにRRH/RRSOを受けた。
- キャリア 69%(9/13)
- 非キャリア 6%(2/32)
非キャリア(n = 32) ES
- キャリア 54%(7/13)
- 非キャリア 3%(1/32)
Yurgelun et al.(2012) :コホート12,a [ ] 77人がリンチ症候群関連のECリスクあり;45人がキャリア;19人が遺伝子検査を受けていないもののリンチ症候群関連家族歴あり 75%(58/77)がECスクリーニングまたはECリスク低減介入を受けた;42人が年1回のTVUSおよび/またはESを受けた;16人がRRHを受けた 報告されていない 非適用  
Yurgelun et al.(2012) :コホート21,a [ ] 40人の女性がリンチ症候群の臨床的リスクあり 65%(26/40)がECスクリーニングまたはリスク低減を遵守;6人がRRHを受けた;13人が年1回のESおよび/またはTVUSを受診;6人が推奨スクリーニング年齢に未到達 キャリア:100%(n = 16)がECスクリーニングまたはリスク低減戦略を遵守;4人が検査前RRHを受けた;5人がRRHを受けた;5人がECスクリーニング(TVUSおよび/またはES)を受診;2人が推奨スクリーニング年齢に未到達 1年  
キャリア(n = 16)
非キャリア(n = 9);14人が不確定な結果;1人が意義不明の多様体 非キャリア:11%(1/9)がECスクリーニングを受診;11%(1/9)がRRHを受けた

全体として、これらの研究は、比較的少数の女性を対象としているが、リンチ症候群関連婦人科がんのスクリーニング率が遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査の実施前では低いということを示唆している。しかしながら、遺伝教育および遺伝カウンセリングに参加し、リンチ症候群病原性多様体検査結果を受領した後では、キャリアで婦人科がんスクリーニングの受診率がおおむね増加しているが、非キャリアで利用が減少している。

リスク低減のための手術

リンチ症候群に対するリスク低減目的の結腸切除術の施行については見解の一致は未だみられておらず、このリンチ症候群に対するリスク低減目的の結腸切除術に関する意思決定や心理的続発症についてはほとんど理解されていない。

陽性の検査結果を受けた人では、結果開示の後にリスク低減目的の結腸切除術の施行に対して検査前よりも高い関心を示した割合が多かった。[ 3 ]この研究ではまた、リンチ症候群に対するリスク低減手術の検討が遺伝子検査への参加を動機付けうるということも示された。結果受領前の時点では、46%がリスク低減のための結腸切除術を検討していることを表明し、また女性の69%がリスク低減のための腹式子宮全摘出術(RRH)とリスク低減のための両側卵管卵巣摘出術(RRSO)を検討していた;しかしながらこの研究では、これらの個人に検査結果が告知された後に実際にリスク低減のための手術が施行されたか否かは評価されなかった。リンチ症候群の遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査を受診する前の時点では、縦断研究でMMR遺伝子の多様体リスクを有するがん非罹患者の5%が結腸切除術を検討すると報告し、病原性多様体が陽性であることが判明した後では、女性の5%がRRHおよびRRSOを受けたいと表明した。結果開示から3年後の時点では、リスク低減のための結腸切除術を受けた参加者は1人もいなかった。[ 20 ][ 37 ]遺伝子検査前にRRHを受けていた2人の女性は、検査から1年以内にRRSOを受けたが[ 37 ]、この研究の病原性多様体の他の女性キャリアで検査結果の開示から3年後の時点でどちらかの処置を受けたと報告した者はいなかった。[ 20 ]

広範囲の切除(結腸亜全摘術)または比較的狭い範囲の切除(部分切除術あるいは半結腸切除術)を受けたリンチ症候群患者におけるQOLと腸機能の転帰に関する横断的調査では、広範囲の切除を受けた患者で排便頻度が多く、排便に関係する機能障害が多かったものの、全般的なQOLは同程度であったことが報告された。[ 44 ]

家族内のコミュニケーション

遺伝性大腸がんの易罹患性に関する遺伝子検査についての家族内でのコミュニケーションは複雑であり、そうした検査の結果に関するコミュニケーションは特に難しくなる。遺伝的リスクの情報に関する家族内でのコミュニケーションについては大部分が家系員自身の責任であるとの認識が一般的である。数件の研究から、リンチ症候群の遺伝カウンセリングと遺伝子検査を提案されている家系におけるコミュニケーションのパターンが調査されている。研究では、患者がリンチ症候群の遺伝子検査に関する情報を家系員に開示したかどうか、この情報を誰に開示したか、およびそのようなコミュニケーションを促進または抑制した、家族に基づいた特徴または問題に焦点が当てられている。これらの研究では、医療専門家によるリンチ症候群素因に関する告知後の家庭内におけるコミュニケーションおよび開示の過程が調査されたが、含まれているサンプルは比較的少数である。

研究による知見から、一般的に人々は、リンチ症候群の病原性多様体があることに関して家系内で情報を共有したいと望んでいることが示されている。[ 45 ][ 46 ][ 47 ][ 48 ]遺伝的リスク情報の共有を望む動機付けには、個人的リスク、健康増進のための選択肢および予測的遺伝子検査に関して家族の意識を高めたいという欲求のほか、感情的な支えに対する欲求、家族内の誰かを助けるという道徳的義務および責任の認識がある。[ 46 ][ 47 ][ 48 ]研究での知見から、ほとんどの研究参加者は、リンチ症候群の遺伝的リスクの情報が家族内で隠さずに共有されていると考えていることが示唆される;しかしながら、そうしたコミュニケーションは、比較的遠い近親者とよりも第一度近親者(例、同胞、子供)との間で行われる傾向が高い。[ 45 ][ 46 ][ 47 ][ 48 ]

フィンランドの1件の研究では、MMR病原性多様体のキャリアであることが分かっている40歳以上の親を募集し、その親が成人および未成年の子孫と遺伝的リスクの知識をどのように共有したかを調べる質問票への記入が依頼された。この研究でも、コミュニケーションの過程における問題が特定された。[ 49 ]248人の親の87%が子供に結果を知らせたと回答した。秘密にした理由は、過去の研究と一致していた(子供が幼い、社会的に関係が疎遠である、またはこの話題について話し合うのが難しいと考えている)。[ 46 ][ 47 ][ 50 ]ほぼすべての親は、成人の子孫に遺伝的リスクと遺伝子検査の可能性についての情報を与えたが、約3分の1の親は、子孫がその情報をどのように利用したか把握していなかった。親は子供のがんリスクについて話し合うのがコミュニケーションの過程で最も困難な面だと認めた。情報を知らされた191人の長子のうち69%が遺伝子検査を受けた。3分の1の親が、医療関係者は情報の開示に関与すべきで、遺伝子クリニックでの開示の席に家族も参加させるべきであることを進言した。

第二度または第三度近親者への通知に関しては、カスケードアプローチを好む人もいる:例えば、家系のリンチ症候群リスクに関する情報を知らされた近親者は、次に自身の第一度近親者に通知する責任があるといったことが想定される。[ 45 ][ 46 ][ 47 ]コミュニケーションに対するこのカスケードアプローチは、近親者の子孫、特に未成年の子孫に知らせる場合に明らかに好まれており、この大多数の意見は、このような情報を、家系の関係階層の最初で開示せずに第二度または第三度近親者に開示することは不適切ではないかということを示唆している。[ 45 ][ 46 ][ 47 ][ 50 ]1件の研究において、リンチ症候群の遺伝子検査を受け、リンチ症候群の素因となる病原性多様体を保有することが明らかになった個人は、真陰性の結果または情報価値のない結果を受け取った個人と比較して、遺伝子検査の結果について少なくとも1人の第二度または第三度近親者に通知する傾向が強かった。[ 48 ]

遺伝的リスクに関するコミュニケーションは、一般的に隠し立てのない過程とみなされるが、コミュニケーションにはいくつか障壁があることが複数の研究で報告された。近親者に通知しない理由として、その人との親密な関係がなく、交際がないなどが挙げられた;実際、関係よりも感情的な親密度の方が、リスクコミュニケーションの程度を決定するより重要な因子であると考えられた。検査結果に関する情報によって近親者を心配させたくないという願望および近親者がこの情報の意味を理解しないだろうという認識もまた、コミュニケーションの障壁として挙げられている。[ 48 ]リスクを有する人が情報を得るには若すぎる場合(すなわち、小児の場合)、遺伝性のがんリスクに関する情報が原因で以前に家系内に衝突が生じたことがある場合[ 47 ]、あるいは近親者が検査についての情報に関心をもっていないとみなされる場合には、情報が開示される可能性は低いと考えられた。[ 46 ]以前に衝突があったことは、遺伝性のがんリスクに関する話し合いが妨げられる原因になるようであった(話し合いに悪いニュースの開示が含まれる場合は特にその傾向が強かった)。[ 47 ]

これらの研究へのほとんどの参加者にとって、家族性がんに対して遺伝性の原因が疑われており、がんについて家庭内で以前に話し合いが行われていると、家系内におけるがんのパターンがリンチ症候群素因となる病原性多様体によるものであるという報告は驚くべきことではなかった。[ 45 ][ 46 ]家系内におけるリンチ症候群素因となる病原性多様体の同定は個人的な問題と考えられていたが、必ずしも秘密というわけではなく[ 45 ]、多くの人が家系以外の人と自らの家系の病原性多様体状態について話し合っていた。家系内におけるリンチ症候群素因となる病原性多様体の発見に関する認識はスティグマとはみなされなかったが、この情報が保険の区別に影響する可能性についての心配が示された。[ 45 ]また、家系内における病原性多様体の存在についての情報を開示する意思がある一方で、1件の研究では個人的な結果の開示に関してはより内密にして、家系のリスク情報と個人的な結果とを区別する傾向が示唆されている。[ 50 ]2~3の症例では、家系のリンチ症候群リスクについての報告を受けた後に近親者が、怒り、ショック、またはその他の否定的な情動反応を示したことが報告された[ 47 ];しかしながら、ほとんどの人は近親者に知らせる際に問題はほとんど、あるいは全くなかったと報告した。[ 46 ]がんに関係した話し合いに問題がなく率直な家族は、遺伝的リスクについての報告に対する受容力が高く、素直に聞き入れることが示唆された。[ 47 ]

一部の例では、発端者は、遺伝性がんリスクについて家系員に知らせる義務が特にあると感じていると報告し[ 47 ]、多くの場合、家族性病原性多様体についての遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査を家系員に受けるよう促すことについて最も強く支持していた。[ 45 ]遺伝性がんリスクの情報の浸透に関しても、性別による役割および家族の役割の差異がみられた。1件の研究により、女性の発端者は男性の発端者よりも遺伝情報について話し合うことに問題がなく、男性の発端者は家族内でのコミュニケーションの過程で専門家の支援をより必要としたことが報告された。[ 46 ]別の研究では、健康リスクの情報を伝達する場合に、母親は家族のネットワークの中で特に影響力のある家系員であることが示唆された。[ 51 ]病原性多様体陰性の人、検査を受けないことを選択した人、およびリスクのある人の配偶者は、発端者および遺伝子検査を受けたその他のリスクのある人と比べて、リスクコミュニケーションの過程には個人的に関与していないと考えていることを報告した。[ 45 ]

コミュニケーションのさまざまな方法(例、直接会って、電話で、または文書での連絡)が、家族内での遺伝的リスク情報の開示に典型的に用いられる。[ 45 ][ 46 ][ 47 ] 1件の研究では、遺伝カウンセリングの要約文書またはリンチ症候群の小冊子などのコミュニケーションの補助は、コミュニケーションの過程における有用な付属物とみなされたが、その成功のために中心となる、または必要なものとは考えられなかった。[ 46 ]複数の研究によって、遺伝性がんリスクについて近親者に知らせるための、医療提供者による推奨はリンチ症候群に関するコミュニケーションを促し[ 47 ]、医療専門家による支援がそのような情報を家系員に伝達する際の障害の克服に有用であることが示唆されている。[ 50 ]

今日までに公表されている家族間コミュニケーションに関する文献の多くが検査結果の開示に焦点を当てたものである;ただし、家族間コミュニケーションの他の要素については、現在調査段階にある。リンチ症候群患者とその家系員(33家系から206人の回答者)の間で、さまざまな種類の支援(例えば、物理的支援、情緒的支援、危機に対する支援、いざとなったときの信頼性など)を提供する際における高齢の家系員の役割を評価した研究が1件ある。[ 7 ][ 52 ]回答者は、家族社会ネットワーク(生物学的な血縁家族と非血縁家族、および家族以外の他人)、および家族内コミュニケーションのパターンに関する面談を受けた。回答者とその家族社会ネットワークのメンバーの年齢の中央値に相違はみられなかった(43歳)。この研究により、家族社会ネットワークのメンバーの23%が大腸がんスクリーニングを勧めたことが明らかになった(社会的支援など、他の種類の支援の頻度は、はるかに多かったことが報告された)。スクリーニングを勧めた人は、高齢者および女性であったほか、家族以外の人よりむしろ、大切な人つまり生物学的な血縁家族であった。家族社会ネットワークのメンバーの多くが同一世帯に暮らしていなかったことを考慮すると、この研究はスクリーニングの推奨および支援との関連で拡大家族の重要性を指摘している。

家族性大腸腺腫症(FAP)における心理社会的問題

FAPに対する遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査への参加

FAPの遺伝子検査の受診率は、リンチ症候群の検査よりも高いとみられる。米国においてFAPのリスクがある無症状の人を対象に、大腸がんレジストリーに登録し、遺伝カウンセリングを提供した研究では、成人の82%および未成年者の95%が遺伝子検査を受診したことが明らかになった。[ 53 ]英国では、100%に近い受診率が報告されている。[ 54 ]APC遺伝子検査の受診率がきわめて高いことについて考えられる解釈は、この検査の費用効果が年1回の内視鏡によるスクリーニング[ 55 ]よりも高く、しばしば思春期前から開始しなければいけない年1回のスクリーニングによる精神的負担を取り除けるということである。リスク低減手術の可能性に関する心配を取り除けることは、FAPに関する遺伝子検査のもう1つの利益となりうる。APCの遺伝子検査を受診する決定は、医学的管理上の決定としてみられ[ 56 ]、FAPの検査受診の決定に影響を与える潜在的心理社会的因子が研究されていないのは、他の遺伝性がん症候群の場合と同様である。APC病原性多様体の浸透度がより高いこと、疾患発症がより若年期であること、および明白な表現型であることも、この疾患についての遺伝子検査受診の意思決定に影響を与える場合があるが、それはおそらくこの疾患に対する意識がより高いこと、また複数の家系員が罹患しているという経験の多さによると思われる。

現在、FAPの遺伝子検査は両親が罹患している子供に提供されており、多くの場合は10~12歳で、内視鏡によるスクリーニングが推奨される。大腸がんを予防するにはFAPの診断を18歳までに行うことが適切であること、ならびにAPC病原性多様体キャリアであると確認された時点でスクリーニングおよび場合によっては手術が必要になることから、このような例では未成年者に対する遺伝子検査が正当化される。(小児における遺伝子検査に関わる倫理的、心理社会的、遺伝カウンセリングの問題に関する詳しい考察については、がんの遺伝学的リスク評価とカウンセリングに関するPDQ要約の小児における検査のセクションを参照のこと。)

FAPの家系員を対象にオランダで実施された調査では、3分の1(34%)が12歳前の小児にAPC遺伝子検査を勧めることが最も適切であると考えていたが、38%はDNA検査の過程をより良く理解できると考えられる12~16歳の小児に検査を勧めることを望んだ。子供はDNA検査を全く受けるべきではないと考えていたのは4%のみであった。[ 57 ]

米国でFAPと診断された親28人の定性的面談データの結果では、リスクがある子供(10~17歳)にAPC多様体の遺伝子検査を望む親は61%であったことが示された;71%は子供に検査結果を教えるべきだと考えていた。親が子供の検査を選ぶ主な理由には、早期発見および早期管理、親の心配や不安の軽減、サーベイランスに関する意思決定に役立つなどがあった。検査を選ばない理由は、差別に対する心配および費用が中心であった。[ 58 ]

FAP罹患家系員をもつ小児はリスク低減手術の可能性を非常によく自覚しており、そうした手術の必要性を見極める要因として検査結果に重点を置いているということが、臨床観察から示唆されている。[ 53 ]子供の年齢、発達の問題およびFAPに関する心理的な懸念の点から、遺伝子検査の結果を子供に開示する時期を考えることは重要である。APC病原性多様体を有する小児は周囲の小児が自分のことをどう思うかについて心配を示しており、自尊心を保てるような周囲への説明方法を支援することが有益となりうる。[ 53 ]

FAPに対する遺伝カウンセリングと遺伝子検査に参加することの心理的影響

FAPの遺伝子検査後の心理的アウトカムを評価した研究から、特に病原性多様体キャリアなど、人によって大きな苦痛を経験するリスクがある可能性が示唆される。APC遺伝子検査を以前に受けた成人の横断研究では、病原性多様体キャリアは非キャリアに比べてより高度の状態不安を示し、また臨床的に有意な不安のレベルを示す傾向が強かった。[ 59 ]この研究において、楽観的なところが少なく自尊心が低いことは、不安を高めることに関連があり[ 59 ]、またFAPに関連した苦痛やFAPの深刻さの認知および遺伝子検査の精度への信頼が、キャリアのより高度な状態不安と関連していた。[ 60 ]しかしながら、FAP、ハンチントン病、および遺伝性乳がん/卵巣がん症候群で遺伝子検査を受診した成人を比較した初期の研究では、FAPに特異的な苦悩は、陽性または陰性の検査結果が開示されてから1週間以内にいくぶん高まったが、これ以外の症候群より全体的に低かった。[ 56 ]

FAPと診断された18~35歳の比較的若い成人(N = 88)に焦点を当てたオーストラリアの横断研究では、参加者はFAPに関係する以下の問題に対して中程度から高度の支援または援助の必要性を感じたと最も多く報告した:子供がFAPを発症するリスクに関する不安、がんを発症することについての恐れ、およびFAPが与える影響に関する先行きの不安。[ 61 ]75%がFAPについての出生前検査を検討する意思を示した;61%がPGTを検討する意思を示し、61%が出生時または10歳までの間に子供に遺伝子検査を受けさせたいと考えていた。回答者のうちのごく一部(16%)ではあるものの、FAPに関係する差別を経験したと報告した者もおり、その中で第一に指摘されたのは、自身の医学的ニーズや自己ケアのニーズ(例、スクリーニング受診のために欠勤しなければならないこと、頻繁にトイレに行かなければならないこと、身体的な制限があること)に対応していくことで同僚や上司に否定的な態度を生じさせてしまう場合があるというものであった。

FAP家系を対象にオランダで実施された別の大規模な横断研究では、FAPと診断された人、APC病原性多様体を有するリスクが50%ある人、またはAPCの非キャリアと証明された人のいずれかである16~84歳の被験者が対象とされた。[ 62 ]APC検査を受けた人の48%が、この研究の5年以上前に検査を受けていた。FAPと診断された人の76%が予防的な結腸切除術を受けており、その中の78%は術後5年以上経過していた。この研究では、全般的な心理的苦悩、特にFAPに関連する苦悩、およびがんに伴う不安について、その有病率を評価した。全般的な苦悩を評価するSF-36のサブスケールであるMental Health Index-5の平均スコアは、オランダの一般集団と同程度であった。IES(Impact of Event scale)により判定したFAP特異的苦悩レベルでは、回答者の20%が中等度から高度に分類され、この範囲のスコアを記録した回答者は、FAPと診断された人の23%、FAPのリスクがある人の11%、非キャリアの17%であった。IESにおいて高度で臨床的に重要な苦悩を示すスコアを報告した人は5%であった;そのうちの大半(78%)がFAPの診断を受けていた。全体的に、Cancer Worry Scaleによる平均スコアは、リンチ症候群の家系を対象とした他の研究において明らかにされたスコアと同程度であった。FAPと診断された人はがんに伴う不安を高頻度で報告する傾向が高く、最も多く報告された不安は、追加手術が必要と考えられること(26%)、および自身(17%)または家族(14%)ががんになる可能性であった。多変量解析でFAP特異的苦悩レベルが高いことに関連する因子は、がんになるリスクの認識度が高いこと、家族や友人とFAPについて相談した頻度が高いこと、および子供がいないことであった。がん特異的不安レベルが高いことに関連する因子は、女性であること、家族関係が悪いこと、家族や友人とFAPについて実際に相談したりそれを望んだりしたことが多いこと、がんリスクの認識度が高いこと、全般的な健康状態が良くないと感じていること、およびがんの家族を介護していることであった。著者らは、がんおよびFAPに特異的な苦悩または不安のレベルが高いことに関連していた因子のほとんどが、臨床的因子または人口統計学的因子ではなく心理社会的因子であったことに注目した。

オランダで実施された別の横断研究では、FAP患者の37%がこの疾患が子供をもうけたいという願望に影響した(すなわち、子供をほとんどまたは全く望まない)と表明したことが明らかにされた。33%がFAPについてのPNDを検討する意思を示した;30%がPGTを検討する意思を示した。より高いレベルの罪悪感と妊娠の中絶に対するより積極的な態度は、PNDとPGTの両方への強い関心と関連した。[ 57 ]米国の別の研究では、出生前検査を検討する意思の予測因子として、罹患した子供がいることおよびFAPに続発した第一度近親者の死を経験していることが挙げられた。[ 63 ]

検査を受ける子供が心理的に傷つきやすいことは、FAPの遺伝子検査において特に懸念されることである。研究結果からは、ほとんどの小児がAPC検査後に臨床的に有意な心理学的苦痛を経験しないことが示唆される。しかしながら成人を含めた複数の研究によると、サブグループは苦痛の増加に対して脆弱であり、心理学的サポートを継続する利点が得られる。FAPの遺伝子検査を受診した小児に関する研究では、小児の気分および行動は、遺伝カウンセリングおよび検査結果の開示が終了した後も正常範囲のままであった。母親または兄弟姉妹の1人に病気があるなどの家族の状況の側面が、抑うつ症状の潜在的増大に関連していた。[ 64 ]FAPの検査を受けた48人の子供の長期にわたる追跡調査によると、ほとんどの子供は心理的苦痛に苦しんでいない;しかしながら、検査を受けた子供の少数は、臨床的に有意な検査後の苦痛を示した。[ 65 ]別の研究により、APC病原性多様体陽性の小児の発症リスクに関する認識度は結果開示後に増したが、不安および抑うつのレベルについては、開示後も年内は変化がみられないことが明らかになった。[ 59 ]この研究では、これと同期間中に、病原性多様体陰性の子供たちは不安が減少し、自尊心を取り戻した。

FAPに対するスクリーニングとリスク低減のための介入の心理社会的側面

スクリーニング

FAPに対する大腸スクリーニング

FAPに対するスクリーニングの心理学的側面についてはほとんど知られていない。FAPの家族歴を有し遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査プロトコルへの参加を提案された少数の個人(17~53歳)を対象としたある研究では、無症候の個人の全員がこの研究に参加する以前に内視鏡サーベイランスを1回以上受けたことがあると報告した。[ 38 ]推奨されている間隔でスクリーニングを継続していると報告したのは、33%のみであった(患者6人中の2人)。結腸切除術を受けていた罹患患者のうち、92%(患者12人中の11人)が推奨されている大腸のサーベイランスを遵守していた。古典的FAPまたはAttenuated FAP(AFAP)であることが臨床的または遺伝学的に診断された人およびそのリスクがある近親者からなる150人を対象とした横断研究では、FAP患者の52%およびFAPリスクのある近親者の46%が、推奨された内視鏡スクリーニングを受診していた。[ 66 ]AFAPの患者およびそのリスクのある人のうち、それぞれ58%および33%がスクリーニングを受けていた。推奨された受診間隔内でスクリーニングを受けていた人と比較すると、スクリーニングを受けていなかった人は、医療提供者によるスクリーニングの推奨を忘れやすい、スクリーニングに対する健康保険または保険金が不足しやすい、自身の大腸がんのリスクは高くないと考えやすいといった傾向がみられた。この研究の対象集団では、遺伝カウンセリングの受診経験があったのはわずか42%であった。スクリーニングを「necessary evil(避けられない弊害)」と表現したのは参加者のうちのごく少数(14~19%)であったが、これは腸検査前処置への嫌悪や経験したことのある痛みや不快感を示したものであった。こうした問題が将来の内視鏡検査の受診の弊害となりうると報告したのは、参加者の90%に上った。技術改良および麻酔使用によってスクリーニング処置に対する忍容性が改善されると報告したのは、参加者の19%であった。

リスク低減のための手術

FAPのリスクを有する個人に多発ポリープが発生した場合には、大腸がんリスクを低減するには結腸亜全摘術または直腸結腸切除術によるリスク低減手術が唯一の効果的な方法である。FAPの個人の大半では、永久的造瘻術を回避して肛門および/または直腸を温存することができ、それにより便通をある程度までコントロールすることが可能となる。(FAPの外科的管理方法の詳しい情報については、本要約のFAPに対する介入のセクションを参照のこと。)これらの介入によるQOLの結果に関する証拠は現在も蓄積されているが、表19にその要約を示す。

表19.家族性大腸腺腫症(FAP)のQOLに関する変数を測定する研究
集団 フォローアップ期間 手技の種類 排便頻度 排便抑制 身体イメージ 性機能 解説
EORTC QLQ = European Organization for Research and Treatment of Cancer Colorectal Quality of Life Questionnaire;IPAA = 回腸嚢肛門吻合術;IRA = 回腸嚢肛門吻合術;SD = 標準偏差;SF-36 = Short Form(36)健康調査票。
aEORTC QLQ-C38のスコアは0~100である。機能尺度:0 = 最低レベルの機能、100 = 最高/健常レベルの機能。症状尺度:0 = 最低レベルの機能、100 = 最高/健常レベルの機能。
bSF-36のスコアは0~100で、0 = 想定される最低の健康状態、100 = 想定される最高の健康状態。
c同年齢層の正常範囲内。
結腸切除術後にFAPに罹患した個人279人(女性135人、男性144人);対照はオランダの一般集団に属する個人1,771人[ ] IRA平均:12年(SD、7.5年) IRA:n = 161 評価されていない 評価されていない EORTC QLQ-CR38a EORTC QLQ-CR38a SF-36b(オランダ版)の全サブケールのスコアは、一般集団のスコアより有意に低かった(IRA:P < 0.001;IPAA:P < 0.001)。
IRA:87.5(SD、21.9) IRA:38.9(SD、26.6)
IPAA平均:6.8年(SD、4.9年) IPAA:n = 118 IPAA:84.4(SD、22.7) IPAA:42.2(SD、26.3)
18~35歳のオーストラリア人88人(女性63人、男性25人)、うち57人は結腸切除術後であり、14人はFAPに罹患していたが手術未実施[ ] 報告されていない IRA:n = 33 評価されていない 評価されていない SF-36b SF-36b  
IPAA:n = 21 IRA:89.9(SD、16.1) IRA:86.2(SD、21.6)
回腸造瘻術:n = 1 IPAA:72.1(SD、23) IPAA:77.5(SD、26.2)
手術の種類が不明:n = 2 手術未実施:94.1(SD、9.4) 手術未実施:91(SD、19)
525人(女性283人、男性242人)、うち296人は結腸切除術後であり、45人はFAPに罹患していたが手術未実施、50人はFAPのリスクを有していたが手術未実施、134人は非キャリア[ ] 範囲:0~1年から10年超 IRA:n = 136 評価されていない 評価されていない EORTC QLQ-CR38a EORTC QLQ-CR38a FAP患者の41%が雇用の中断を報告した:
結腸切除術後:85.4(SD、20.5) 結腸切除術後:42.2(SD、23.2) 部分的または完全な障害:n = 73(59%)
IPAA:n = 112 FAPで手術未実施:91.9(SD、16.1) 結腸切除術後:42.2(SD、23.2) 労働量減少:n = 30(24%)
回腸造瘻術:n = 42 リスクあり:94.0(SD、13.1) リスクあり:47.6(SD、23.7) 労働量増加:n = 5(4%)
その他:n = 6 非キャリア:92.3(SD、13.1) 非キャリア:45.7(SD、21.2) 期間により労働量が増加または減少:n = 16(13%)
FAPに罹患し結腸切除術を受けた18~75歳のスウェーデン人209人(女性116人、男性93人)[ ] 最後の手術からの平均期間:14年(SD、10;範囲、1~50年) IRA:n = 71 評価されていない 日中:71%(n = 149) 評価されていない 評価されていない 評価された21の腹部症状の平均症状数は7(SD、4.61;範囲、1~18)。女性は男性より多くの症状を報告したが、症状の問題の程度に性差はみられなかった。症状数が多いことは、身体面および精神面の健康不良に関する独立した予測因子であった。
IPAA:n = 82
回腸造瘻術:n = 39 夜間:61%(n = 128)
禁制型回腸造瘻術:n = 14
その他:n = 3
結腸切除術を受けた14歳以下の個人28人(女性10人、男性18人)[ ] 12年(SD、8.4;範囲、1~37年) IRA:n = 7 日中 日中 Rosenberg自己評価尺度:25.53/30c 評価されていない 10/28が結腸切除術後のがんに関する心配を報告し、若年(18歳未満)とがんに関する心配の高さとの間に関連がみられた。
IRA:3.8(SD、1.5) IRA:71.4%(n = 7)
IPAA:5.3(SD、2.4) IPAA:85.7%(n = 21)
IPAA:n = 21 夜間 夜間
IRA:1.3(SD、0.6) IRA:50.0%(n = 7)
IPAA:1.3(SD、0.5) IPAA:61.9%(n = 21)

FAPに対するリスク低減手術に関する諸研究によると、総合的なQOL評価は正常範囲内で、大多数が身体イメージに悪い影響はなかったと報告したことが明らかになっている。しかしながら、これらの研究は、FAPに対するリスク低減手術が少なくとも一部の罹患者のQOLにマイナスの影響を及ぼすことを示唆している。

化学予防

リンチ症候群およびFAPのリスクを有する個人に対するさまざまな治療法の有効性を評価すべく、化学予防の試験が現在進行中である。[ 72 ][ 73 ]FAPの診断を受け、腺腫性ポリープの発生に対するビタミンおよび食物繊維の効果を評価する5年間の臨床試験への参加を勧められた個人からなる標本のうち、55%が参加に同意した。[ 74 ]参加者した個人には、比較的に若年である、FAPと診断されて比較的間もない、ならびに居住地が試験施設から遠いという傾向がみられたものの、他の心理社会的変数ではいずれにも非参加者との間に差はみられなかった。

リンチ症候群またはFAP患者における生殖の考慮事項

補助的生殖技術(ART)

子供に病原性多様体を遺伝させる可能性から、遺伝性大腸がん症候群に罹患している家系には、出産を避けるキャリアも出るほどの懸念が生じる場合がある。これらの懸念から、伝達リスクの低減に役立てるために出生前診断(PND)の利用を検討する人もいる。PNDは、胎児における遺伝学的障害の存在を評価するために実施される何らかの医学的手技を示す場合に用いられる包括的な用語である。方法としては、羊水穿刺および絨毛膜絨毛サンプリングなどがある。[ 75 ][ 76 ]いずれの方法も流産のリスクがわずかにある。[ 75 ][ 77 ]さらに、胎児ががんになりやすい多様体のキャリアであることが判明すると、両親は妊娠の継続または中絶に関する難しい意思決定を迫られる場合があり、専門家によるカウンセリングおよび支援がさらに必要となる可能性がある。

こうした検査に代わる方法としては、受精した胚について遺伝学的障害がないか子宮着床前に検査するために用いられる手技である着床前遺伝子検査(PGT)がある。[ 78 ][ 79 ]遺伝子検査から得られる情報を利用して、妊娠を希望する両親は着床させるかどうかを決定できる。PGTは、APCなど、遺伝性がん素因遺伝子における病原性多様体を検出するために用いることができる。[ 57 ][ 63 ][ 80 ]

現在までに発表されている限られた研究から、FAP、リンチ症候群、およびPJSに対するARTの使用について関心が寄せられているようである。[ 57 ][ 63 ][ 81 ][ 82 ][ 83 ]しかしながら、実際の受診率は報告されていない。

表20.家族性大腸腺腫症(FAP)a、リンチ症候群b、およびポイツ・ジェガース症候群(PJS)aに対する補助的生殖技術(ART)の使用への態度、関心、または意思を評価した諸研究の要約
調査集団 参加人数 ARTへの関心または意思 解説
GT = 遺伝子検査;PGT = 着床前遺伝子検査;PND = 出生前診断。
a研究は横断研究デザインを用いて、米国[ 63 ]およびオランダ[ 57 ][ 82 ]で実施された。
b参加者は、リンチ症候群の臨床的遺伝子検査実施前の時点と遺伝子検査結果開示後の3ヵ月および1年経過時点で質問票に記入するように求められた。
c特別の規定がない限り、18歳以上の参加者の数を示す。
dAPC病原性多様体を有する個人の総数。すべての個人が回答したわけではなく、また各質問に回答する上で適切でない場合もあった。
e遺伝子検査前に質問票に回答した計130人のうち、将来に子供をもうけることを検討していると述べた人数を示す。[ 81 ]
fリンチ症候群病原性多様体を有する個人の総数。すべての個人が回答したわけではなく、また各質問に回答する上で適切でない場合もあった。
FAP罹患者[ 63 ] 20 95%(19/20)がFAPに対する出生前のGTを検討し;90%(18/20)がPGTを検討し;75%(15/20)が羊水穿刺または絨毛膜絨毛サンプリングを検討している  
FAP罹患者[ 57 ] 341 33%(16/64)がFAPに対してPNDを検討し;30%(76/256)がPGTを検討し;15%(52/341)がFAPに対する中絶は受け入れられると考えていた 24%および25%の患者が、それぞれPNDとPGTへの態度に関する質問に返答しなかった。
FAPに関連するAPC病原性多様体を有する個人[ 83 ] 65d 25%(16/64)がPGTについて認識があり;78%(50/64)がPGTを提案されるべきであると考え;55%(31/56)がPGTを検討している  
リンチ症候群に対する遺伝子検査を受けた個人[ 81 ] 48e 21%(10/48)がPNDおよび/またはPGTを検討し;19%(9/48)がPNDのみを検討し;2%(1/48)がPGTのみを検討している GT結果開示後1年経過時に、キャリア9人中2人が将来の妊娠に対してPGTを検討していることを報告した。
リンチ症候群病原性多様体が同定された個人[ 83 ] 43f 19%(8/42)がPGTについて認識があり;69%(29/42)がPGTを提案されるべきであると考え;41%(16/39)がPGTを検討している  
PJS罹患者a[ 82 ] 52 15%(8/52)がPNDで胎児がPJSであると確認されれば中絶は受け入れられると述べた;52%(27/52)はPJSの個人に対するPGTは受け入れられると述べた 10人(19%、このうち9人が女性であった)が、PJSのために子供をもうけない決定をしたと報告した。
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