患者さん向け 消化管の合併症(PDQ®)

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このPDQがん情報要約では、便秘、宿便、腸閉塞、下痢、放射線腸炎などの消化管の合併症に関する原因と治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

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一般的な情報

消化管は、摂取した食物中の栄養素ビタミンミネラル炭水化物、脂質、蛋白質、水分)の消化吸収と、老廃物の体外への排出という役割を担う消化器系の一部を成しています。消化管にはが含まれます。胃は上腹部にあるアルファベットのJに似た形をした臓器です。咽頭(喉)を通過した食べ物は、食道と呼ばれる筋肉でできた中空の管を通って胃へと運ばれます。胃で一部消化された食べ物は、さらに小腸から大腸へと送られていきます。 結腸(太い)は大腸の最初の部分で、長さは約5フィート(およそ152cm)です。加えて、大腸の終端部に直腸肛門管があり、これらの長さは6~8インチ(15~20cm)です。そしてこの肛門管の終端部が肛門(大腸の体外への開口部)です。

消化器系の解剖図;食道、肝臓、胃、結腸、小腸、直腸、および肛門を示す。

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下部消化器系の解剖図:結腸と他の臓器を示しています。

消化管の合併症がん患者さんによくみられます。合併症とは、疾患を患っている間や処置または治療の後に発生する医学的問題です。その疾患や処置、治療が原因となって生じる場合も、他の原因により引き起こされる場合もあります。本要約では、以下にあげる消化管の合併症と、その原因および治療法について説明します。

本要約は、がんを患っている成人に起こる消化管の合併症について書かれたものです。小児に起こった消化管の合併症の治療は、成人の場合とは異なります。

便秘

便秘になると、排便が困難になったり、通常より回数が少なくなったりします。

便秘は、大腸を通る便の動きが鈍くなっている状態です。便は大腸を通過する時間が長くなればなるほど水分が失われ、乾燥して硬くなります。それにより、排便できなくなる、強くきばらなければ便が排出されない、あるいは通常より排便回数が少なくなるなどの状態が生じます。

便秘の一般的な原因には、特定の薬剤、食事の変化、水分の摂取不足、活動性の低下などがあります。

便秘はがん患者さんによくみられる問題です。がん患者さんの便秘は、健康な人の場合にもみられる通常の原因によって発生することがあります。こうした原因には、加齢、食事の変化、水分摂取、運動不足などがあります。これらの一般的な原因に加えて、がん患者さんの便秘には他の原因もあります。

他の便秘の原因には下記のようなものがあります:

治療計画を立てるために、評価が実施されます。

評価では、身体診察のほか、患者さんの普段の排便状況とその変化について尋ねる質問が行われます。

便秘の原因を探るために、以下のような検査法と手技が用いられます:

がん患者さんの排便に、「正常な」回数というものはありません。個人差があります。患者さんは、排便習慣、食べ物、使用している薬剤について、次のような質問を受けます:

人工肛門を形成している患者さんの場合は、人工肛門のケアに関する質問が行われます。

便秘の治療は、患者さんの快適さを保ち、より深刻な問題を予防するために重要です。

便秘の予防は、軽減させるよりも容易です。医療チームは患者さんと協力して便秘の予防に努めます。オピオイドの投与を受ける患者さんは、直ちに下剤の服用を開始して便秘を予防する必要があります。

便秘が非常に不快で、苦悩の種になる場合があります。治療せずに放置していると、便秘により宿便が生じることもあります。これは便が結腸や直腸から出てこなくなる深刻な病態です。 宿便を予防するには、便秘を治療することが重要です。

予防と治療の方法は、患者さんごとに異なります。便秘の予防と治療では、以下の対策が実施されます:

オピオイドが原因で生じた便秘の治療では、オピオイドの作用を抑止する薬や他の薬剤、便軟化剤、浣腸が用いられるほか、手で便を除去する方法がとられることもあります。

宿便

宿便は、乾燥して硬くなり、結腸や直腸から出てこなくなった便の塊です。

宿便は体外に排出できない乾燥した便です。宿便の患者さんの中には、消化管症状がみられない人もいます。代わりに、血液循環、心臓、呼吸の問題がみられることがあります。宿便を治療せず放置しておくと、悪化して死を招くことがあります。

よくみられる宿便の原因は、頻繁な緩下薬の使用です。

緩下薬を次第に用量を増やして何度も使用していると、排便の必要が生じた際に結腸で自然に起きる反応が弱くなっていきます。これが宿便が生じる一般的な原因です。他に次のような原因があります:

特定の精神疾患が宿便を招くこともあります。

宿便の症状には、排便できなくなることや腹部または背中の痛みなどがあります。

宿便によって起こりうる症状を以下に示します:

これらの症状がみられた場合は医療提供者に報告してください。

評価では、身体診察と便秘の場合と同様の質問が行われます。

医師は、便秘の評価の場合と類似した、以下のような質問を行います:

医師は患者さんに宿便がみられるかどうかを明らかにするために身体診察を実施します。また、以下の検査と手技を行うこともあります:

宿便は通常、浣腸による治療を行います。

宿便の治療では、主に便を湿らせて柔らかくし、体外に取り出すか排出させる方法がとられます。多くの場合には浣腸が用いられます。浣腸は、使い過ぎるとを傷つける恐れがあることから、必ず医師の処方に基づいて使用します。便を柔らかくして排便を容易にするために、便軟化剤やグリセリン座剤を使用することもあります。場合によっては、軟らかくした便を直腸から手で取り除く必要があります。

便の移動を促す緩下薬は、腸に損傷を与える恐れがあるため、用いられません。

腸閉塞

腸閉塞とは、宿便以外の原因によって小腸または大腸が塞がることです。

腸閉塞が起こると、便小腸または大腸を通過できなくなります。この状態は身体的な変化によって生じることも、の筋肉が正常に動かなくなる病態によって起こることもあります。は部分的に、または完全に閉塞します。ほとんどの閉塞は小腸で起こります。

身体的な変化

腸が身体的な変化で閉塞している場合は、閉塞部分への流が減少します。血流を正常に戻さなければ、対象範囲の組織が壊死することもあります。

腸の筋肉に影響を及ぼす病態

腸閉塞を引き起こすことが多いがんは、結腸がん、胃がん、卵巣がんです。

ほかにも、肺がん乳がん黒色腫などのがん腹部に拡がり、腸閉塞を来すこともあります。腹部の手術または放射線療法を受けた患者さんは、腸閉塞のリスクが高くなります。腸閉塞は、進行のがんで最もよくみられます。

評価では、身体診察と画像検査が行われます。

腸閉塞を診断するために、以下の検査と手技が行われることがあります:

腸閉塞の治療法は、急性か慢性かによって異なります。

急性腸閉塞

急性腸閉塞は突然発生し、長くは続かず、初回の発生である場合もあります。治療法には以下のようなものがあります:

症状が悪化し続けている患者さんには、ショックの徴候や症状がみられないか、また、閉塞が悪化していないかを調べるフォローアップ検査が実施されます。

慢性の悪性腸閉塞

慢性腸閉塞は時間とともに悪化します。進行がんの患者さんには、ときに手術で解消することができない慢性腸閉塞が起こります。こうした場合には、腸の複数箇所で閉塞または狭窄が生じていたり、完全には除去できないほど大きな腫瘍が存在していたりすることがあります。以下の治療が行われます:

下痢

下痢とは、水様の緩い便が頻繁に排泄されることです。

下痢は、水様の緩い便が頻繁に出る排便のことです。急性下痢は、継続期間が4日間以上で2週間未満のものを指します。急性下痢の症状には、便が緩くなることに加え、1日に4回以上、軟便の排泄があることが挙げられます。2ヵ月以上続く下痢は、慢性(長期)の下痢です。

下痢は、がん治療のどの段階でも起こりえます。がんの患者さんには、身体的にも精神的にも大きなストレスとなるでしょう。

がん患者さんの下痢の原因で特によくみられるものは、がん治療です。

がん患者さんにおける下痢の原因には、以下のものがあります:

評価では、身体診察と臨床検査のほか、食事や排便習慣についての質問が行われます。

下痢は生命を脅かす場合があるため、早急に原因を突き止め、治療を開始することが大切です。医師は下記の質問を行い、治療計画の参考とすることがあります:

以下のような検査法と手技が行われます:

下痢の治療法は原因によって異なります。

下痢の原因によって、治療法は異なります。医師は、使用する薬剤や食事、飲み物に対して、以下のような調整を行います。

放射線腸炎

放射線腸炎は、放射線療法により引き起こされる腸の炎症です。

放射線腸炎は、腹部骨盤直腸への放射線療法を受けている期間中やその後に、の内壁が腫大し炎症を起こす病態です。小腸大腸放射線に対して非常に高い感受性を示します。放射線の線量が高いほど、正常な組織が受ける損傷が大きくなります。腹部と骨盤の腫瘍には、ほとんどの場合に大量の放射線照射が必要です。腹部や骨盤、直腸に放射線の照射を受けた患者さんは、ほぼ全員が腸炎を起こします。

腹部と骨盤のがん細胞を殺傷する放射線療法は、腸の内壁に存在する正常細胞にも影響を及ぼします。放射線療法は、がん細胞や他の急速に増殖する細胞の成長を停止させます。腸の内壁に存在している正常な細胞も増殖が速いので、この領域に対する放射線療法により、これらの細胞の増殖が妨げられる場合があります。その結果、組織の自己修復が遅れることになります。細胞が死んで新しい細胞と入れ替わらないと、その後、数日~数週間にわたって消化管の問題が発生します。

放射線療法、化学療法手術を実施する順序が、腸炎の重症度に及ぼす影響について研究が行われています。

症状は放射線療法の実施中に生じることも、数ヵ月~数年後に始まることもあります。

放射線腸炎には急性のものと慢性のものがあります:

照射される放射線の総量とその他の要因が、放射線腸炎のリスクに影響を及ぼします。

腹部への放射線治療を受ける患者さんのうち、慢性的な問題が起こるのはわずか5~15%です。腸炎が続く期間と症状の程度は、以下の因子に左右されます:

急性腸炎と慢性腸炎の症状はよく似ています。

急性腸炎の患者さんには、下記の症状がみられることがあります:

急性腸炎の症状は通常、治療終了後2~3週間で消失します。

慢性腸炎の症状は通常、放射線療法の終了後6~18ヵ月の間に現れます。その診断は困難な場合があります。医師は最初に、症状の原因が小腸に生じた再発腫瘍かどうかを確認します。また、その患者さんが受けた放射線療法の治療歴を把握しようとします。

慢性腸炎の患者さんには、下記のような徴候と症状がみられます:

放射線腸炎の評価では、身体診察と問診が行われます。

患者さんには身体診察と下記に関する問診が行われます:

放射線腸炎が急性と慢性のどちらかによって、治療法は異なります。

急性放射線腸炎

急性腸炎の治療では、症状の治療が行われます。通常は治療によって症状は改善しますが、症状が悪化する場合は、がんの治療が一時的に中止されることもあります。

急性放射線腸炎の治療法には以下のようなものがあります:

慢性放射線腸炎

慢性放射線腸炎の治療法には以下のようなものがあります:

最新の臨床試験

NCIの臨床試験検索から、現在患者さんを受け入れているNCI支援のがん臨床試験を探すことができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。)。がんの種類、患者さんの年齢、試験が実施される場所から、臨床試験を検索できます。 臨床試験についての一般的な情報もご覧いただけます。

本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、便秘、宿便、腸閉塞、下痢、放射線腸炎などの消化管の合併症に関する原因と治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("原文更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

NCIのウェブサイトで臨床試験を検索することができます。より詳細な情報については、NCIのコンタクトセンターであるCancer Information Service(CIS)(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Supportive and Palliative Care Editorial Board.PDQ Gastrointestinal Complications.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/about-cancer/treatment/side-effects/constipation/GI-complications-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389438]

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