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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

財政的な毒性(財政的な苦痛)とがん治療(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2017-06-29
    翻訳更新日 : 2018-03-27

 このPDQがん情報要約では、がんの治療と財政的な毒性(財政的な苦痛)に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

 PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

財政的な毒性(財政的な苦痛)とがん治療についての一般的な情報

財政的な毒性とは、がん患者さんが抱える治療費に関連する問題のことです。

財政的な毒性または財政的な苦痛という用語は、自己負担医療費がどのように患者の財政的問題を引き起こすかを表す際に用いられます。自己負担医療費は、健康保険で支払われない医療費です。米国の場合、自己負担医療費には以下のようなものがあります:


  • Copayment(受診時負担):診察や処方など、医療サービスごとに支払う金額。

  • Deductible(免責額):健康保険プランの払い戻しが開始されるまでに、患者さんが支払う医療費。

  • Coinsurance(共同負担):Deductible(免責額)を支払った後に、健康保険が適用されるサービスに患者さんが支払う費用の割合。例えば、患者さんが20%を負担し、保険で80%が支払われるなど。

これらの費用には、入院、外来患者サービス(入院せずに受けられる手技や検査)、受診、処方などにかかるコストが含まれます。

多くの場合、がん 生存者の方は、がんでない人よりも高額の医療費を報告します。一部のがん生存者は、年収の20%以上を医療費として支払っていると報告しています。

財政的な毒性は、財政的なストレス、財政的な苦境、財政的な負担、経済的な負担、経済的な苦境とも呼ばれます。

がん患者さんと財政的な毒性について検討したランダム化臨床試験は、これまでに実施されていません。本要約の情報は、主に特定のがんの患者さんと生存者のみを対象とした研究に基づいているため、すべてのがん患者さんに当てはまるとは限りません。

数件の研究によると、がんの患者さんや生存者は、がんでない人よりも財政的な毒性を感じやすい傾向がみられます。

がんは米国で最も治療費の高い病態の1つです。現在、健康保険に加入しているがん患者さんは、以前よりも高額の保険料(毎月の健康保険の掛け金)を支払っています。また、Copayment(受診時負担)、Deductible(免責額)、Coinsurance(共同負担)の支払いも増えています。

現在の患者さんは、10年前より高額の化学療法免疫療法、あるいは他の新しい治療を受けるようになりました。高額の薬剤や先発医薬品(ジェネリック薬でなく)を使用すると、健康保険の対象となる処方薬に対するCopayment(受診時負担)も高くなります。こうした薬剤に対するCopayment(受診時負担)とCoinsurance(共同負担)は、健康保険に加入しているがん患者さんにも財政的な毒性をもたらすことがあります。

がん生存者の方は、がんの診断を受けてから何年も経ってから財政的な問題を抱えることがあります。なぜなら、こうした人々は継続的ながん治療を受けていたり治療の晩期合併症(晩期障害)に対するケアを受けていたりして、その支払いがあるからです。

財政的な毒性の程度は、患者さんの家庭におけるいくつかの要因に左右されます。

がんと診断された場合は、以下のような家庭の要因が財政的な毒性のリスクに影響を及ぼします:


  • 患者さんが家計の主な稼ぎ手かどうか。

  • 患者さん以外の家族にどのくらいの収入があるか。

  • がんと診断される前に、どのくらいの借金を抱えていたか。

  • 患者さんの資産状況(現金、各種の投資、不動産、自動車など、所有している財産)。

  • がん関連の費用。

  • がんとその治療が労働能力に及ぼす影響。

  • 健康保険や身体障害保険(身体障害をきたして働けなくなった人の収入の一部を補償する保険)に加入しているかどうかと、その対象範囲。

がんと診断されることによって、患者さんとご家族に以下のような問題が生じることがあります:


  • 収入と資産の減少。

  • がんの医療費を支払うための借金。

  • 住居費、食費、各種料金の支払いの困難。

  • 破産(借金を返済できない状態になること)。

がん治療は、患者さんの労働能力と支払い能力に影響を及ぼすことがあります。

がんを患うと、身体と精神の両面で業務をこなすことが難しくなる場合があります。患者さんは、仕事の時間が減ったり、まったく仕事ができなくなったりすることもあります。ある研究では、がん治療を受けている患者さんは、がん治療を受けたことのない人に比べて、勤務日数が年間22日以上少ないことがわかりました。仕事ができなくなると、雇用に基づく健康保険に影響することがあります(保険料の一部または全部を雇用主が支払っている場合)。

患者さんはがんに関連する医療費の支払いを心配し、それがストレスになることもあります。がん患者さんは、具合の悪いときや診察を受ける間に失われる賃金についての心配を報告しています。複雑な医療費を理解しようとして、困難やストレスを感じることもあります。

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財政的な毒性(財政的な苦痛)に関連するリスク因子

患者さんのがんの種類や重症度、行われる治療法が、財政的な毒性のリスクに影響を及ぼすことがあります。

以下のような病気の患者さんは、財政的な毒性のリスクが高い状態です:


これは一部には、がんやその治療によって、患者さんが仕事につけなくなる可能性があることに起因します。

化学療法放射線療法による治療を受けた患者さんは、それらの治療を受けていない患者さんよりも自己負担費が高くなり、財政的な毒性が増える可能性が高くなります。

患者さんの年齢、人種、収入、仕事の有無が、財政的な毒性に影響を及ぼすこともあります。

複数の研究によると、がんの診断を受けた年齢が若いと財政的な毒性のリスクが増大します。比較的若いがん患者さんに財政的な毒性が生じる理由には、次のようなものがあります:


  • 貯蓄や資産が少ない。

  • 子どもを育てるなど、他の財政的責任がある。

  • 健康保険に加入していない(65歳未満の患者さんはメディケアへの加入資格がない)またはDeductible(免責額)の高い健康保険プランに加入していて自己負担費が高い。

若いがん患者さんや生存者では、より高齢のがん患者さんや生存者、またはがんを患っていない人より破産のリスクも高くなります。

数件の研究で、少数派の民族に属する人々は、がんの診断を受けた後に財政的な問題を抱えやすいという傾向が明らかになりました。この問題については、さらなる研究が必要です。

収入の少ない家庭の患者さんは、収入の多い家庭の患者さんよりも財政的な毒性のリスクが高くなります。失業も借金や破産のリスク因子であることがわかっています。

数件の研究によると、がん患者さんは次のような状態に陥る場合があります:


  • 失業。

  • パートタイマーに移行したり長期間休職したりするなど、職場での立場の変化。

  • 職場復帰が困難になる。

  • 収入の低下。

  • 全般的な生産性の喪失。

加入している健康保険の種類、あるいは健康保険に未加入であることは、患者さんの財政的な毒性のリスクに影響することがあります。

がんに関するコストが増大していることなどもあって、患者さんが健康保険に加入していないと財政的な毒性のリスクが高くなります。しかし、健康保険に加入していても、がん医療を受けるための自己負担費が高額になる可能性があります。

メディケアに加入している患者さんは、追加プランに登録して自己負担費を減らすことができるかもしれません。また、通常の保険プランで補償されない医療費に対応している追加保険に入る方法や、処方 の支払いをカバーするメディケアパートDに登録する方法もあります。

ある研究では、公的健康保険(メディケイドまたはメディケア)に加入している患者さんは、民間健康保険に入っている患者さんに比べて、財政的な毒性のリスクが高いことが示されました。さらに公的健康保険に加入している患者さんは、貯蓄や資産が少ないという、財政的な毒性に対するリスク因子を持っている場合もあります。

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がん患者さんに対する財政的な毒性(財政的な苦痛)の影響

患者さんは、Copayment(受診時負担)を節約しようとして、指示どおりに薬剤を使用しないことがあります。

一部の患者さんは、処方薬をより長くもつようにして費用を節約するために、 の服用を抜かしたり、処方された用量より少なく使用したりすることがあると報告しています。また複数の患者さんが、費用がかかるために指示に従わないことがあると報告しています。

Copayment(受診時負担)が高くなればなるほど、患者さんは薬剤使用の指示に従わなくなります。

財政的な毒性のせいで、患者さんの生活の質(QOL)が低くなることがあります。

複数の研究によると、財政的な毒性を抱えている患者さんは、生活の質(QOL)がより低く、症状の数や痛みも多いことを報告しています。ある研究では、財政的な毒性を感じている患者さんは、身体的、情動的、社会的な苦悩や、家族に関する苦悩がより深刻でした。

財政的な毒性を抱える患者さんは、生活の質(QOL)が低くなることに加えて、以下の点を報告する可能性が高くなります:


  • 体調が悪い。

  • 抑うつなど、メンタルヘルスの不調。

  • 社会的な活動や社会的な人間関係に対する不満足感。

  • がんの再発に対する心配。

財政的な毒性は借金や破産につながる可能性があります。

ある研究では、一部のがん生存者が財政的な毒性に関連する以下の問題が報告されました。


  • がんに関連する多額の支払いが心配。

  • 借金を抱える。

  • 破産申請をする。

別の研究では、破産を申請する患者さんは破産しない人よりも死亡する可能性が高いことが示されています。

患者さんは医療費を支払うにあたって、次のような必要が生じるかもしれません:


  • 貯金を使う。

  • 借金する。

  • 余暇活動、食事、衣服、公共料金の支出を抑える。

  • 株式や投資、所有物や財産を売却/処分する。

  • 家賃が安い物件に引っ越す。

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財政的な毒性(財政的な苦痛)を減らす方法

いくつかの方法で、財政的な毒性を減らすことができます。

以下の方法は、財政的な毒性を減らす方法として研究されています:


  • 資金面のアドバイザーに相談し、各人に適した医療保険プランと医療費の節約法を示してもらう。

  • 病院が料金表を提示し、医療専門家と患者さんが検査と治療に関する意思決定を行う際に費用を認識できるようにする。

  • 価値に基づく料金設定(医療提供者が提供したケアのコストと質に基づいて支払われる料金)を導入し、患者さんがより少ない自己負担額で高価値の治療を選択できるようにする。

  • がん患者さんを支援する施策を取り入れて健康保険を再編する。

がん医療の費用を管理する方法についての詳細は、Managing Costs and Medical Information(費用と医療情報の管理)をご覧ください。

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本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、がんの治療と財政的な毒性(財政的な苦痛)に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Adult Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Adult Treatment Editorial Board.PDQ Financial Toxicity (Financial Distress) and Cancer Treatment.Bethesda, MD: National Cancer Institute.Updated <MM/DD/YYYY>.Available at: https://www.cancer.gov/about-cancer/managing-care/financial-toxicity-patient-pdq.Accessed <MM/DD/YYYY>.

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。

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