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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

小児星細胞腫の治療(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2015-09-28
    翻訳更新日 : 2017-02-17

 このPDQがん情報要約では、小児星細胞腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

 PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

小児星細胞腫についての一般的な情報

小児星細胞腫は、脳の組織内に良性(がんではない)または悪性(がん)の細胞ができる疾患です。

星細胞腫は、星細胞と呼ばれる星型の脳細胞から発生する腫瘍です。星細胞はグリア細胞の一種です。グリア細胞は、神経細胞を所定の位置に保持するとともに、栄養や酸素を神経細胞に届けており、さらに感染などの疾患から神経細胞を保護する役割を果たしています。グリオーマは、グリア細胞から発生する腫瘍です。星細胞腫は、グリオーマの一種です。

星細胞腫は、小児で最も多く診断される種類のグリオーマです。中枢神経系(脳と脊髄)内のどこにでも発生する可能性があります。

本要約は、脳内の星細胞から発生した腫瘍(原発性 脳腫瘍)の治療法について書かれたものです。転移性脳腫瘍は、体の他の部位から発生したがん細胞が脳に転移してできた腫瘍です。 転移性の脳腫瘍の治療については、ここでは扱われていません。

脳腫瘍は小児と成人のいずれにも発生する可能性があります。しかし、小児の治療は成人の治療とは異なる場合があります。小児と成人における他の種類の脳腫瘍に関する詳しい情報については、以下のPDQ要約をご覧ください:


星細胞腫は、良性の(がんではない)場合もあれば、悪性の(がんである)場合もあります。

良性の脳腫瘍でも増殖すると、周辺の脳を圧迫します。まれですが、他の組織の中まで拡がることもあります。悪性の脳腫瘍は、急速に増殖して、他の脳組織の中まで拡がる傾向がみられます。腫瘍が脳内で増殖したり、脳を圧迫したりすると、その部分の脳が果たすべき機能が阻害される場合があります。脳腫瘍が良性でも悪性でも、徴候症状が現れることがあり、ほぼ全ての例で治療が必要になります。

中枢神経系は多くの重要な身体機能を制御しています。

星細胞腫は、以下の中枢神経系(CNS)の部位に最も多くみられます:


  • 大脳 :脳の中で最も大きな部分で、頭部の上方に位置しています。大脳は、思考、学習、問題解決、会話、感情、読み書き、随意運動などを制御しています。

  • 小脳 :脳の後方下部(後頭部の中央付近)に位置します。小脳は、運動や平衡感覚、姿勢を制御しています。

  • 脳幹 :脳と脊髄を連結する部分で、脳の最下部(首の後ろの真上)に位置します。脳幹は、呼吸や心拍を制御するとともに、見る、聞く、歩く、話す、食べるといった動作に用いられる神経と筋肉の制御を行います。

  • 視床下部 :脳の基底部の中央に位置する領域で、体温、空腹感、喉の渇きを調節します。

  • 視経路:眼と脳を接続する神経群です。

  • 脊髄:柱状の神経組織で、脳幹から始まり、背中の中心を下っています。脊髄は3層の「」と呼ばれる薄い組織で覆われています。脊髄とこれらの膜は椎骨(背骨)に囲まれています。脊髄の神経は、筋肉を動作させる脳からのメッセージや皮膚からの触覚を脳に伝えるメッセージなど、脳と体の他の部位との間でメッセージを伝達します。



脳の解剖図:右図はテント上領域(脳の上部)と後頭蓋窩/テント下領域(脳の下部後方)を示している。テント上領域には、大脳、側脳室、第3脳室、脈絡叢、視床下部、松果体、下垂体、視神経が含まれる。後頭蓋窩/テント下領域には、小脳、視蓋、第4脳室、脳幹(脳橋と髄質)が含まれる。テントと脊髄も示されている。左図は、大脳、脳室(液体で満たされた空間)、髄膜、頭蓋、小脳、脳幹(脳橋と髄質)、脊髄を示している。



脳の解剖図。テント上領域(脳の上部)には、大脳、側脳室、第3脳室(青色は脳脊髄液)、脈絡叢、視床下部、松果体、下垂体、視神経が含まれます。後頭蓋窩/テント下領域(脳の下部後方)には、小脳、視蓋、第4脳室、脳幹(脳橋と髄質)が含まれます。テントにより、テント上とテント下が区切られています(右図)。頭蓋と髄膜は脳と脊髄を保護しています(左図)。



小児の脳腫瘍はそのほとんどが原因不明です。

病気になるリスクを増大させるものは、全てリスク因子と呼ばれます。リスク因子を持っていれば必ずがんになるというわけではありませんし、リスク因子を持っていなければがんにならないというわけでもありません。お子さんのリスクについて不安がある場合は、担当の医師にご相談ください。星細胞腫のリスク因子には、以下のものがあります:


お子さんがNF1の場合は、視経路グリオーマと呼ばれる特定の種類の腫瘍のリスクが高くなる可能性があります。これらの腫瘍では、症状が見られないのが普通です。NF1の小児が視経路グリオーマを発症しても、視覚の問題などの徴候や症状が見られる場合や腫瘍が増殖している場合以外は、治療の必要はありません。

星細胞腫の徴候や症状は、全てのお子さんで同じとは限りません。

徴候や症状は、以下の因子に左右されます:


  • 脳または脊髄内での腫瘍の位置。

  • 腫瘍の大きさ。

  • 腫瘍が増殖する速度。

  • 小児の年齢と発育状況。

腫瘍によっては、徴候や症状が現れないことがあります。徴候や症状が小児星細胞腫により引き起こされることがありますが、その他の病態によって生じることもあります。お子さんに以下の症状が1つでも認められた場合は、医師の診察を受けてください:


  • 朝方に起こる頭痛や嘔吐すると治まる頭痛。

  • 吐き気と嘔吐。

  • 視覚、聴覚、発話機能の問題。

  • 平衡感覚の喪失と歩行困難。

  • 字が汚くなる、または話し方が遅くなる。

  • 体の左右どちらか半分に生じる脱力や感覚の変化。

  • 異常な眠気。

  • 活力がいつもより高いまたは低い。

  • 性格や行動の変化。

  • 痙攣発作

  • 原因不明の体重の増減。

  • 頭部の大きさの増大(乳児)。

小児星細胞腫の発見には、脳と脊髄を調べる検査法が用いられます。

以下のような検査法や手技が用いられます:


  • 身体診察と病歴聴取:疾患の徴候に注意しながら、総体的に身体を調べる診察法。しこりなどの通常みられない疾患の徴候のチェックも含まれます。患者さんの健康習慣、過去の病歴、治療歴なども調べます。

  • 神経学的検査 :脳、脊髄および神経の機能を調べる目的で行われる一連の問診と検査のこと。この検査のチェック項目には、患者さんの精神状態、協調運動、歩行能力、それに筋肉や感覚、反射がどの程度機能しているかなどが含まれます。この検査は神経検査や神経学的診察と呼ばれることもあります。

  • 視野検査:患者さんの視野(物を見ることができる全範囲)を調べる検査。この検査は、中心視野(まっすぐ前を見た状態で見える範囲)と周辺視野(まっすぐ前を見つめたまま他の全方向に見える範囲)の両方を測定します。検査は片眼ずつ行われます。検査を行っていない方の眼は覆います。

  • ガドリニウムを使用するMRI(磁気共鳴画像法):磁気、電波、コンピュータを用いて、脳と脊髄の精細な連続画像を作成する検査法。まずガドリニウムと呼ばれる物質を静脈内に注射します。ガドリニウムにはがん細胞の周辺に集まる性質があるため、撮影された画像ではがん細胞が明るく映し出されます。この検査法は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれます。場合によっては、MRIスキャンと同時に磁気共鳴分光画像法(MRS)を実施し、脳組織の化学組成を調べることもあります。

小児星細胞腫では通常、診断とともに手術による摘出が行われます。

医師は星細胞腫の可能性があると考えた場合、生検組織のサンプルを採取するため生検を行います。 脳に腫瘍がある場合、頭蓋骨の一部を切開し、針を用いて組織を採取します。コンピュータによる誘導の下で針が挿入される場合もあります。切除された組織を病理医顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を調べます。ここでがん細胞が発見された場合には、そのまま手術が継続され、安全を確保できる範囲内で可能な限りの腫瘍の摘出が行われます。脳腫瘍の種類の違いを見分けるのは困難な場合があるため、脳腫瘍の診断経験のある病理医に、小児の組織のサンプルを確認してもらうのもよいでしょう。



開頭術の図:頭皮の一部を切り取り、頭蓋骨片を切除し、脳を覆う硬膜を切開して脳を露出させている。頭皮の下の筋層も示されている。



開頭術:頭蓋骨に開口部を設け、頭蓋骨片を切除して脳の一部を露出させる手技。



摘出された組織に対して、以下の検査が行われることがあります:


  • 免疫組織化学検査 抗体を利用して、組織のサンプルに含まれる特定の抗原を調べる臨床検査。この抗体には通常、放射性物質または色素が結合されており、その作用によって顕微鏡で観察したときに組織が明るく見えます。この種の検査法は、様々な種類のがんを判別するのに用いられることがあります。MIB-1検査は、免疫組織化学検査の一種で、腫瘍の組織にMIB-1と呼ばれる抗原が存在するかどうかを調べます。これにより腫瘍がどの程度速く増殖するかが分かる場合があります。

ときに、腫瘍が切除困難な場所に発生することがあります。腫瘍を切除すると重度の身体障害、情緒障害、または学習障害が生じる可能性がある場合、生検を実施して、その後にさらに治療を行います。

NF1のお子さんでは、腫瘍を切除する生検や手術が必要ない場合があります。

特定の要因が予後(回復の見込み)や治療法の選択肢に影響を及ぼします。

予後回復の見込み)と治療の選択を左右する因子には以下のものがあります:


  • 星細胞腫が発生したCNSの部位とそれが拡がっているかどうか。

  • 手術後にがん細胞が残存しているかどうか。

  • 星細胞腫の種類と悪性度

  • 小児がNF1かどうか。

  • 遺伝子に特定の変化がみられるか。

  • 小児の年齢。

  • 初めて診断された星細胞腫か、再発した(再び現れた)星細胞腫か。

再発星細胞腫における予後や治療法は、治療の終了時点から星細胞腫が再発するまでの期間の長さにより異なります。

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小児星細胞腫の病期

がんの治療計画を立てるために、腫瘍の悪性度が用いられます。

病期分類とは、どれほど大きながんなのか、またはがんが転移しているかどうかを調べるために行うプロセスのことです。治療計画を立てるためには病期を把握しておくことが重要です。

小児星細胞腫には、標準的な病期分類システムがありません。治療法は、以下に基づいて決定されます:


腫瘍の悪性度は、がん細胞顕微鏡で観察したときの異常の度合いと、腫瘍の増殖や拡がりの速さを表します。

以下のような悪性度の分類法が用いられます:

低悪性度の星細胞腫

低悪性度の星細胞腫は増殖の遅い腫瘍で、脳や脊髄内の他の部位や体内の他の部位に拡がることはめったにありません。低悪性度の星細胞腫は、以下のいずれかと考えられます:


  • 悪性度Iの腫瘍–毛様細胞性腫瘍で、細胞が嚢胞を形成します。

  • 悪性度IIの腫瘍–線維性腫瘍で、細胞の外観は細長いか、線維に似ています。

低悪性度星細胞腫には、多くの種類があります。本要約では、以下に示すいくつかの種類の低悪性度星細胞腫について解説しています:


神経線維腫症1型のお子さんでは、脳に複数の低悪性度腫瘍がみられることもあります。

高悪性度の星細胞腫

高悪性度の星細胞腫は増殖が速く、しばしば脳や脊髄内に拡がります。高悪性度の星細胞腫は、以下のいずれかと考えられます:


通常、小児星細胞腫は体の他の部位に拡がることはありません。

手術後にMRIを実施します。

手術の数日後にMRI(磁気共鳴画像法)を実施します。これによって、手術後に腫瘍細胞が残存していれば、その量を明らかにし、さらなる治療計画を立てます。

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再発小児星細胞腫

再発小児星細胞腫とは、治療後に再発した(再び現れた)星細胞腫のことをいいます。がんは、最初に腫瘍が発見された部位や体の他の部位に再発することもあります。高悪性度の星細胞腫は3年以内に再発することがよくあります。

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治療選択肢の概要

小児星細胞腫の患者さんには様々な治療法が存在します。

小児星細胞腫の患者さんは様々な治療を受けることができます。そのなかには標準治療(現在使用されている治療法)もあれば、臨床試験において検証中のものもあります。治療法の臨床試験は、既存の治療法を改良したり、がんの患者さんのための新しい治療法について情報を集めたりすることを目的とした調査研究です。複数の臨床試験で現在の標準治療より新しい治療法のほうが良好であることが明らかになった場合は、その新しい治療法が標準治療となります。

小児がんはまれな疾患ですので、臨床試験への参加を検討すべきです。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

小児星細胞腫の治療では、小児脳腫瘍の治療に精通した医療提供者で構成されるチームによって治療計画が作成されるべきです。

この疾患の治療は、小児腫瘍医(小児がんの治療を専門とする医師)が統括します。小児腫瘍医は、小児脳腫瘍の治療に精通し、特定の医療分野を専門とする他の医療提供者と協力しながら治療に取り組んでいきます。具体的には以下のような専門家が挙げられます:


小児脳腫瘍では、がんと診断される前に徴候や症状が現れ、それが数ヵ月~数年にわたって続くことがあります。

腫瘍により引き起こされる徴候症状診断の前にみられることがあります。これらの徴候や症状は数ヵ月あるいは数年も持続する場合があります。治療を行っても腫瘍による徴候や症状が続く場合は、担当の医師とよく相談することが重要です。

がんの治療のなかには、治療が終わってから何ヵ月または何年もたって副作用が現れるものがあります。

がんの治療の副作用のうち、治療中またはその後に始まり、何ヵ月または何年も続くものは、晩期障害と呼ばれます。がん治療の晩期障害には以下のようなものがあります:


  • 身体的問題。

  • 気分、感情、思考、学習、記憶における変化。

  • 二次がん(新しい種類のがん)。

晩期障害には治療や制御することが可能なものもあります。がんの治療によってお子さんに生じうる影響について担当医とよく相談することが重要です。(詳しい情報については、PDQ小児がん治療の晩期障害に関する要約をご覧ください。)

治療法としては、以下の6種類が用いられています:
手術

本要約の一般的な情報のセクションで述べているように、小児星細胞腫の診断と治療には手術が用いられます。手術後にがん細胞が残存している場合、さらなる治療法の選択肢は以下の要因によって異なります:


  • がん細胞が残存している位置。

  • 腫瘍の悪性度

  • 小児の年齢。

たとえ医師が手術の際に確認できる全てのがんを切除したとしても、患者さんによっては、残っているがん細胞を全て死滅させることを目的として、術後に化学療法放射線療法が実施される場合があります。このようにがんの再発リスクを低減させるために手術の後に行われる治療は、術後補助療法と呼ばれます。

経過観察

経過観察とは、徴候や症状の出現や変化がみられるまで、治療を一切行わずに患者さんの状態を注意深く監視していくことです。経過観察は、神経線維腫症1型の患者さん、または増殖や転移がみられない腫瘍の患者さんに対してよく使用されます。

放射線療法

放射線療法は、高エネルギーX線などの放射線を利用してがん細胞の死滅や増殖阻止を図る治療法です。放射線療法には、以下の2種類があります:


小児星細胞腫の治療には、外照射療法が用いられます。放射線療法の実施方法は、腫瘍の種類のほか、脳や脊髄における腫瘍の発生部位に応じて異なります。

脳に対して放射線療法を行うと、幼児期の成長や発育に影響を及ぼすことがあります。ある特殊な方法で照射する以下のような放射線療法では、健全な脳組織に対する損傷を抑えることができます:


  • 三次元原体照射療法は、コンピュータを用いて腫瘍の三次元(3D)画像を作成するもので、腫瘍の形状に合わせて放射線ビームを調整します。これにより、腫瘍だけに高線量の放射線を照射することが可能になり、腫瘍付近の正常な組織に対する損傷が抑えられます。

  • 強度変調放射線療法(IMRT)は、コンピュータを駆使して腫瘍の大きさと形状を示す映像を作成し、それを利用するものです。強度の異なる照射幅の狭い放射線ビームが様々な角度から腫瘍に向けて照射されます。

  • 定位放射線治療は、堅いヘッドフレームを頭蓋に取り付け、腫瘍に向けて直接放射線が照射されるようにしたもので、腫瘍周辺の正常な組織に対する損傷が抑えられます。放射線の総線量は、少線量ごとに数日間に分けて照射されます。この手法は、定位体外照射療法や定位放射線治療とも呼ばれます。

  • 陽子線治療は、高エネルギー外照射療法の一種で、陽子(正の電荷を帯びた小さな粒子)の流れを利用して腫瘍細胞を殺傷します。

3歳未満の小児の場合、代わりに化学療法を実施し、放射線療法の実施を遅らせたり必要性を減らす場合があります。

化学療法

化学療法は、を用いてがん細胞を殺傷したりその細胞分裂を妨害したりすることによって、がんの増殖を阻止する治療法です。化学療法が経口投与や静脈内または筋肉内への注射によって行われる場合、投与された薬物は血流に入って全身のがん細胞に到達します(全身化学療法)。脳脊髄液内や臓器内、あるいは腹部などの体内に薬剤を直接注入する化学療法では、その領域にあるがん細胞に薬が集中的に作用します(局所化学療法)。併用化学療法は、複数の抗がん剤を使用する治療法です。

小児星細胞腫の治療には、全身化学療法が用いられます。化学療法の実施方法は、腫瘍の種類のほか、脳や脊髄における腫瘍の発生部位に応じて異なります。

幹細胞移植を伴う大量化学療法

幹細胞移植を伴う大量化学療法は、高用量の化学療法を実現する手段で、このようながん治療によって破壊された造細胞を外部から補充します。まず患者さん自身またはドナーから採取した血液や骨髄から幹細胞(成熟前の血液細胞)を取り出して、それを凍結保存しておきます。そして化学療法の終了後に、保存していた幹細胞を解凍して、これを点滴によって患者さんの体内に戻します。こうして再注入された幹細胞が血液細胞に成長することにより、血液の機能が回復していきます。

治療後に再発した高悪性度星細胞腫では、腫瘍の量が少ない場合にのみ、幹細胞移植を伴う大量化学療法が用いられます。

標的療法

標的療法は、薬物または他の物質を用いて、正常な細胞を傷つけずに、特定のがん細胞だけを認識して攻撃する治療法の1つです。

標的療法には、以下のように、様々な種類があります:


  • キナーゼ阻害薬は、細胞分裂を阻止するほか、腫瘍の増殖に必要となる新たな血管の成長を妨げる作用も考えられます。エベロリムスシロリムスは、小児上衣下巨細胞星細胞腫の治療に用いられるキナーゼ阻害薬です。

  • モノクローナル抗体療法は、ある1種類の免疫系細胞から製造ラボで作成した抗体を用いて、がん細胞を阻止します。これらの抗体は、がん細胞の表面にある物質や、がん細胞の増殖を助けていると考えられる通常の物質を識別することができます。そのような物質に抗体が結合することで、がん細胞を死滅させたり、がん細胞の増殖を阻止したり、あるいはがん細胞がそれ以上拡がらないようにします。モノクローナル抗体は、点滴によって静脈内に投与されます。モノクローナル抗体は、単独で使用することもあれば、薬物や毒素、あるいは放射性物質をがん細胞に直接送り届けるために使用することもあります。ベバシズマブは、モノクローナル抗体の一種で、小児星細胞腫の治療に用いられます。

  • プロテインキナーゼ阻害薬は、細胞増殖に必要な蛋白を阻害することで、がん細胞を殺傷できる可能性があります。ベムラフェニブBRAFキナーゼ阻害薬であり、高悪性度の再発小児星細胞腫の治療に用いられます。セルメチニブダブラフェニブは、プロテインキナーゼ阻害薬の一種で、小児星細胞腫の治療薬として研究されています。

詳しい情報については、脳腫瘍に対する使用が承認されている薬剤(英語)をご覧ください。

臨床試験では新しい形の治療法が検証されています。

本項では、臨床試験で研究されている治療法を記載しています。現在研究中の新しい治療法の全てが紹介されているわけではありません。臨床試験に関する情報は、NCIのウェブサイトから入手することができます。

その他の薬物療法

レナリドミドは、血管新生阻害薬の一種です。腫瘍の増殖に必要な新たな血管の成長を妨げます。

脳や脊髄の周りに液体が溜まった場合、脳脊髄液転換の処置が行われることがあります。

脳脊髄液転換は、脳と脊髄の周りに溜まった液体排出するために用いられる方法です。シャント(長くて細いチューブ)を脳室(液体で満たされた空間)の中に差し込み、皮膚の下を通して体の別の部分(通常は腹部)まで留置します。このシャントは、脳にある過剰な液体を体の他の部位に運び、そこで吸収されるようにします。

脳脊髄液(CSF)転換:図は、余分なCSFをチューブ(シャント)で脳室から腹部に排出する様子を示している。シャントは脳室から頸部と胸部の皮膚の下を通って腹部に達している。CSFの流れを調節する弁も示されている。



脳脊髄液(CSF)転換。余分なCSFが、脳室からシャント(管)を介して腹部に排出されています。弁はCSFの流れを調節しています。



患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。

患者さんによっては、臨床試験に参加することが治療に関する最良の選択肢となる場合もあります。臨床試験はがんの研究プロセスの一部を構成するものです。臨床試験は、新しいがんの治療法が安全かつ有効であるかどうか、あるいは標準治療よりも優れているかどうかを確かめることを目的に実施されます。

今日のがんの標準治療の多くは以前に行われた臨床試験に基づくものです。臨床試験に参加する患者さんは、標準治療を受けることになる場合もあれば、新しい治療法を初めて受けることになる場合もあります。

患者さんが臨床試験に参加することは、将来のがんの治療法を改善することにもつながります。たとえ臨床試験が効果的な新しい治療法の発見につながらなくても、重要な問題に対する解答が得られる場合も多く、研究を前進させることにつながるのです。

患者さんはがん治療の開始前や開始後にでも臨床試験に参加することができます。

ただし一部には、まだ治療を受けたことのない患者さんだけを対象とする臨床試験もあります。一方、別の治療では状態が改善されなかった患者さんに向けた治療法を検証する試験もあります。がんの再発を阻止したり、がん治療の副作用を軽減したりするための新しい方法を検証する臨床試験もあります。

臨床試験は米国各地で行われています。詳しくは、治療選択肢のセクションにある現在進行中の治療臨床試験へのリンクを参照してください。そこで検索された情報はNCIの臨床試験一覧のものです。

フォローアップ検査が必要となることもあります。

がんの診断病期判定のために実施された検査が再び使用されることもあります。(検査の一覧については、一般的な情報のセクションをご覧ください。)治療の奏効の程度を確かめるために繰り返し行われる検査もあります。治療の継続、変更、中止などの決定はこうした検査の結果に基づいて判断されます。

治療が終わってからも、定期的にMRIを継続して実施します。MRIの結果から、お子さんの状態の変化や星細胞腫の再発(再び現れること)の有無を知ることができます。MRIの結果から脳内に腫瘤が確認された場合、それが死んだ腫瘍細胞で構成されているかどうか、または新しいがん細胞が増殖しているかどうかを調べるために、生検が実施されることがあります。

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小児星細胞腫の治療選択肢

新たに診断された小児低悪性度星細胞腫

腫瘍が最初に診断された時点における小児低悪性度 星細胞腫に対する治療法は、腫瘍の位置にもよりますが、通常は手術です。手術後にMRIによって腫瘍が残存していないかどうかが調べられます。

手術で腫瘍が完全に摘出された場合は、それ以上の治療を必要としない可能性があるため、お子さんは、徴候症状の発現や変化がないか注意深く観察されます。これを経過観察と呼びます。

手術後に腫瘍が残存している場合には以下のような治療法があります:


場合によっては、視経路グリオーマのお子さんに経過観察が実施されます。その他の場合は、腫瘍を切除する手術、放射線療法、または化学療法などの治療法があります。治療の目標は、可能な限り視覚を保持することです。腫瘍の増殖が患者さんの視覚に及ぼす影響は、治療中にも綿密に監視されます。

神経線維腫症1型(NF1)のお子さんでは、腫瘍が増殖している場合や視覚の問題などの徴候や症状が見られる場合以外は、治療の必要がないことがあります。腫瘍が増殖している場合や徴候や症状がみられる場合は、腫瘍を切除する手術、放射線療法、化学療法のうち1つ以上の治療法があります。

結節性硬化症のお子さんでは、上衣下巨細胞星細胞腫(SEGA)と呼ばれる良性のがんではない)腫瘍ができることがあります。手術の代わりに、エベロリムスまたはシロリムスによる標的療法を実施して、腫瘍を縮小することもあります。

NCI支援のがん臨床試験リストから、小児低悪性度未治療星細胞腫またはその他の膠細胞由来の腫瘍の患者さんを現在受け入れている臨床試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験の場所、治療のタイプ、薬剤の名前など、他の検索要素を用いて絞り込み検索を行うと、より具体的な結果が得られます。お子さんに適した臨床試験については、担当の医師にご相談ください。NCIのウェブサイトから臨床試験についての一般的な情報をご覧いただけます。

再発小児低悪性度星細胞腫

がんの治療をさらに実施する前に、画像検査生検、または手術を実施して、がんが存在するかどうかや、その量を明らかにします。

低悪性度再発小児星細胞腫の治療法には以下のようなものがあります:


  • 最初に腫瘍が診断された時に実施した唯一の治療法が手術であった場合は、腫瘍を切除する再手術

  • 最初に腫瘍が診断された時に放射線療法を実施していない場合は、腫瘍への放射線療法単独。原体照射療法を実施する場合もあります。

  • 腫瘍が手術で切除できない場所に再発した場合や、最初に腫瘍が診断された時に放射線療法を受けた患者さんでは、化学療法

  • 化学療法とベバシズマブによる標的療法

NCI支援のがん臨床試験リストから、再発小児星細胞腫またはその他の膠細胞由来の腫瘍の患者さんを現在受け入れている臨床試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験の場所、治療のタイプ、薬剤の名前など、他の検索要素を用いて絞り込み検索を行うと、より具体的な結果が得られます。お子さんに適した臨床試験については、担当の医師にご相談ください。NCIのウェブサイトから臨床試験についての一般的な情報をご覧いただけます。

新たに診断された小児高悪性度星細胞腫

小児高悪性度 星細胞腫の治療法には以下のようなものがあります:


  • 手術で腫瘍を切除した後に、化学療法放射線療法

  • 化学療法と合わせて、場合により放射線療法を併用する臨床試験への参加。

  • 新しい治療法を試みる臨床試験への参加。

NCI支援のがん臨床試験リストから、小児高悪性度未治療星細胞腫またはその他の膠細胞由来の腫瘍の患者さんを現在受け入れている臨床試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験の場所、治療のタイプ、薬剤の名前など、他の検索要素を用いて絞り込み検索を行うと、より具体的な結果が得られます。お子さんに適した臨床試験については、担当の医師にご相談ください。NCIのウェブサイトから臨床試験についての一般的な情報をご覧いただけます。

再発小児高悪性度再発星細胞腫

がんの治療をさらに実施する前に、画像検査生検、または手術を実施して、がんが存在するかどうかや、その量を明らかにします。

再発小児高悪性度 星細胞腫の治療法には以下のようなものがあります:


NCI支援のがん臨床試験リストから、再発小児星細胞腫またはその他の膠細胞由来の腫瘍の患者さんを現在受け入れている臨床試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。試験の場所、治療のタイプ、薬剤の名前など、他の検索要素を用いて絞り込み検索を行うと、より具体的な結果が得られます。お子さんに適した臨床試験については、担当の医師にご相談ください。NCIのウェブサイトから臨床試験についての一般的な情報をご覧いただけます。

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本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、小児星細胞腫の治療に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Pediatric Treatment Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

PDQ® Pediatric Treatment Editorial Board. PDQ Childhood Astrocytomas Treatment. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Updated <MM/DD/YYYY>. Available at: http://www.cancer.gov/types/brain/patient/child-astrocytoma-treament-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.[PMID: 26389391]

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

免責事項

PDQ要約の情報は、保険払い戻しに関する決定を行うために使用されるべきではありません。保険の適用範囲についての詳細な情報は、Cancer.govのManaging Cancer Careページで入手可能です。

お問い合わせ

Cancer.govウェブサイトを通じてのお問い合わせやサポートの依頼に関する詳しい情報は、Contact Us for Helpページに掲載しています。ウェブサイトのE-mail Usから、Cancer.govに対して質問を送信することもできます。

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