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最新の研究成果に基づいて定期的に更新している、
科学的根拠に基づくがん情報の要約です。

がんへの適応:不安と苦悩(PDQ®)

  • 原文更新日 : 2015-01-07
    翻訳更新日 : 2017-02-17

概要

不安と苦悩は、がん患者さんと家族の生活の質に影響を及ぼします。

がんを抱えて生きている患者さんは、不安苦悩など、多様な感情を経験します。


  • 不安とは、ストレスによって生じる恐れ、恐怖、心配のことです。

  • 苦悩とは、感情的、精神的、社会的、霊的な苦しみのことです。苦悩を感じている患者さんが経験する感情は、弱気や悲しみから、抑うつや不安、パニック孤独感に至るまで、非常に幅広いです。

患者さんは、がんのスクリーニングを受ける際や検査の結果を待つ間、さらにはがんの診断を受けるときやがんの治療中、またはがんの再発(再び現れること)が懸念されるときなどに不安や苦悩を感じます。

不安と苦悩は、患者さんががんの診断や治療に対処する能力に影響する場合があります。これによって、患者さんが定期検査を受けなかったり、治療を受けるのが遅れたりすることがあります。不安は痛みを強め、睡眠に影響するほか、吐き気嘔吐の原因になります。軽度の不安でも、がん患者さんと家族の生活の質に影響を及ぼすことがあり、治療が必要な場合もあります。

がんの患者さんは、様々な程度の苦悩を経験することがあります。

がんの患者さんのなかには、苦悩の程度が軽い人もいれば、重い苦悩を抱える人もいます。苦悩の程度は、がん患者としての生活に適応できるレベルから、大うつ病など深刻なメンタルヘルスの問題が起こるレベルまで多岐にわたります。ただし、ほとんどのがん患者さんには、メンタルヘルスに関する特定の問題の徴候や症状はみられません。この要約では、がんを抱えている患者さんに生じる、次のような比較的軽度の苦悩について説明します:


  • 正常な適応—個人ががんの診断などのストレスの大きい出来事に取り組むために、自身の人生に変化をもたらしている状態。正常な適応では、人は感情面の苦悩にうまく対処することや、がんに関連する問題を解決することを学びます。

  • 心理的および社会的苦悩—個人ががんの診断などのストレスの大きい出来事に取り組むために、自身の人生に変化をもたらそうとするなかで、多少の問題が生じている状態。新しい対処技術を学ぶために、専門家による支援が必要な場合もあります。

  • 適応障害—個人ががんの診断などのストレスの大きい出来事に取り組むために、自身の人生に変化をもたらそうとするなかで、多くの問題が生じている状態。うつ病や不安などの症状や、その他の感情的、社会的、行動的な諸問題が生じ、個人の生活の質を悪化させます。新たな変化を起こすために、薬剤の利用と専門家による支援が必要な場合もあります。

  • 不安障害—個人が極度の不安を感じている状態。がんの診断のような強いストレスが生じる出来事が原因として考えられますが、明確な理由なく生じる場合もあります。不安障害の症状には、心配、恐れ、極度の恐怖などがあります。症状が重篤になると、通常の生活を送る能力に悪影響が及びます。不安障害には次のように多くの種類があります:

がん患者さんが深刻な苦悩を感じるようになるリスク因子がいくつか存在します。

半数近くのがん患者さんが苦悩を多く抱えていることを報告しています。肺がん膵がん、脳腫瘍の患者さんは苦悩を報告する頻度が高い傾向にありますが、一般的にみると、がんの種類による違いはありません。不安と苦悩のリスクを増大させる因子はがんに関連しているとは限りません。がん患者さんにみられる高レベルの苦悩に関するリスク因子には、以下のようなものがあります:


  • 日常生活活動の障害。

  • 身体症状や副作用(疲労、吐き気、痛みなど)。

  • 家庭での問題。

  • うつ病や他の精神面または感情面の問題。

  • 年齢が若いこと、非白人であること、女性であること。

  • 教育水準が低いこと。

スクリーニングでは、患者さんががんに適応するための支援を必要としているかどうかが調べられます。

一般的にスクリーニングでは、問診や用紙に回答してもらう形式で患者さんに質問を行います。高レベルの苦悩に苛まれている患者さんには、多くの場合、自身の抱えている懸念について、ソーシャルワーカーやメンタルヘルスの専門家、緩和ケア専門家、あるいは聖職者カウンセラーと話し合うことが役立ちます。

本要約は、がんを患っている成人におけるがんへの適応、不安、苦悩について書かれたものです。

うつ病と心的外傷後ストレス障害については、以下のPDQの要約をご覧ください:


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正常な適応

がんの患者さんは、自身の人生のなかで疾患や治療の変化に対処するために適応を行う必要があります。

がん診断を受けて生きるには、人生における多くの事柄に適応する必要があります。正常な適応は、感情的な苦悩への対処法や、がんを患うことで生じる問題の解決法を学ぶことに関係します。がん患者さんは、全てに対して一度に適応するのではなく、自身の疾患と治療の変化に伴い、ある程度の期間を経て適応していきます。次のような場合に、患者さんは状況に適応する必要があります:


  • 診断の告知を受けたとき。

  • がんの治療中。

  • 治療が終了したとき。

  • がんの寛解を告げられたとき。

  • がんの再発を告げられたとき。

  • がんの生存者になったとき。

各種の対処法が患者さんの適応に役立ちます。

従来どおりの日常生活と仕事を継続でき、関心のある活動に取り組んで、ストレスに対処することができれば、患者さんは適応が意外と容易であることに気づくでしょう。

対処とは、人生で遭遇する状況に適応していくために、思考をめぐらせて行動を起こすことです。通常、対処法は、当人の性格(例えば、常に最高または最悪の状況を考えるとか、内気もしくは外向的など)に関係しています。

対処法には、特定の状況で思考をめぐらせて行動を起こすことが含まれます。例えば、がん治療の副作用を管理するために日常生活や仕事の計画を変更することは、1つの対処法です。対処法を使用すると、患者さんが日常生活において特定の問題や感情的な苦悩、がん自体に対処するために役立ちます。

うまく適応できている患者さんは、たいていの場合、がんへの対処に深く関与しています。そういった患者さんは、がんになった後も自分の人生に意義や重要性を見い出しています。 一方、うまく適応できない患者さんは、人間関係や現状から引きこもるようになり、希望を失ってしまう場合があります。現在、各種の対処法ががん生存者の生活の質に及ぼす影響についての研究が行われています。

がんによって起こる変化に適応する途中で、患者さんは苦悩を感じる場合があります。

患者さんががんによって生じる変化を管理あるいは制御しきれないと感じるとき、苦悩が生じます。診断や治療法が同じでも、それぞれの患者さんが抱く苦悩の程度は大きく異なります。診断や治療によって必要となるものがあまりない、あるいは多くの支援を得ることができると患者さんが感じていれば、苦悩は小さくなります。例えば、医療提供者吐き気に対する薬剤を投与して、患者さんが化学療法の副作用に適応するのを支援する場合などです。

個々の患者さんががんに対処する方法は、多くの身体的要因と感情的要因によって異なります。

以下の要因は、患者さんががんのストレスに対処する方法に影響を及ぼします:


  • がんの種類、がんの病期回復の見込み。

  • 診断時、治療中、寛解期、再発時など、どの段階に該当するか。

  • 患者さんの年齢。

  • 患者さんが治療を受けることができるか否か。

  • 患者さんが普段どの程度のストレスに対処できるか。

  • 患者さんが直前の1年間に経験した、就職や転居など人生におけるストレスの大きい出来事の数。

  • 患者さんが友人や家族から支援を受けられるか否か。

  • 他者の信念やがんについての恐怖から生じる社会的圧力。

がん患者さんは時期によって異なる対処技術を必要とします。

必要とされる対処技術は重要な時点ごとに変わります。具体的には以下のものがあります:

診断の告知時

がんに対する適応の過程は、診断が告知される前から始まります。原因不明の症状があるときや、がんの有無を確認するための検査を受けているときに、患者さんは心配や恐れを感じることがあります。

がんの診断は患者さんに精神的な苦痛を引き起こしますが、これは予測されている正常な反応です。診断を信じることができずに、「その結果は本当に正しいのですか」と医師に尋ねる患者さんもいます。感情が麻痺する患者さんや、精神的ショックを受ける患者さん、あるいは「こんな災難が自分に降りかかるはずはない」と思う患者さんもいます。また、患者さんの多くは「自分はがんで死ぬのだろうか」といった思いに駆られます。

多くの患者さんはものがよく考えられなくなり、医師が診断や治療法について重要なことを伝えようとしても、そうした情報を理解し覚えておくことが困難になります。患者さんはこの情報を後で確認できる手段を講じておくべきです。診察に誰かに付き添ってもらう、テープレコーダーを持参する、再度の診察を予約して医師に質問し、治療計画を確認する機会を設けるなどの手段が有効です。詳しい情報については、PDQがん医療におけるコミュニケーションに関する要約の医療チームとの話し方をご覧ください。

患者さんは診断を受け入れる時点から、次のような苦悩の症状を自覚し始めます:


患者さんががんとその治療法に関する情報を得て、それらを理解すると、徐々に希望が感じられるようになります。一般的に患者さんは、過去に利用した対処法を実施したり新たな方法を習得したりして、次第にがんを患っているという現状に適応します。このような時期には、疲労や睡眠障害、うつ病などの問題に対処するために、専門家の支援が有益になります。

がんの治療中

がんの治療を受けている間、患者さんは各種の対処技術を利用して治療のストレスに適応します。以下の項目に対する不安や恐れを感じることがあります:


  • 痛い思いをするかもしれない手技。

  • 脱毛、吐き気、嘔吐、疲労、痛みなどの副作用

  • 職場や自宅での日常活動の変化。

患者さんが短期的な不快と長期的な利益(余命の延長など)とを比較し、治療に「やるだけの価値がある」と納得できれば、多くの場合は十分に適応できます。治療中の患者さんは「生き延びられるだろうか」、「がんを全部無くすことができるのだろうか」、「どんな副作用が出るのだろうか」などの疑問を口にすることがあります。疲労や治療施設までの交通手段、仕事の日程に関する変化など、がんが原因となって生じる問題の対処法をみつけることが役に立ちます。

治療の終了時

がんの治療が終了する頃、患者さんは複雑な心境になることがあります。この時期には、治療が終わって、喜びや安心感がもたらされます。しかし、同時に再発の可能性が気になり始める時期でもあります。多くの患者さんは治療が終了したことを喜びますが、担当医に診てもらう機会が少なくなることを不安に感じます。他にも、職場や家庭生活への復帰について心配したり、健康に対して過度の懸念を抱いたりする場合があります。

寛解期の患者さんは、フォローアップの受診前に、がんの再発を心配してストレスを感じることがあります。検査結果が出るまでの間、場合によっては非常に強いストレスを感じるでしょう。

肯定的な感情と否定的な感情の両方を表現できる患者さんの方が、よく適応できます。患者さんが以下に該当する場合は、治療終了時や寛解期に受ける感情面のストレスによく対処できます。


  • 自分の感情に素直である。

  • 自分の感情を認識し、他者と共有することができる。

  • 正誤や良し悪しを考えずに自分の感情を受け入れることができ、それを克服しようという意志を持つ。

  • 自分の感情に耳を傾け受容してくれる人の支えがある。

がんの再発の告知時

がんが再発し、治療しても改善する見込みがない場合があります。その場合、治療計画は治癒を目的としたものから、患者さんの状態を快適にし、症状を緩和するためのものへと移行します。この変化は、患者さんにとって大きな不安となりうるものです。患者さんは精神的なショックを受け、その事実を信じられなくなる人もいます。この後、一定期間にわたって、うつ病や集中力の低下、死についての考えが止まらなくなるなどの苦悩が起こる場合があります。正常な適応の徴候には、以下のようなものがあります:


  • 悲しみと嘆きが起こる時期。

  • 神などの超越的な存在に対する怒りの感情。

  • 他人から離れて孤立することを望む時期。

  • あきらめの感情。

がんの再発に対する患者さんの適応はゆっくり進行します。がんが治癒することを期待しなくなり、別種の癒しの過程が始まります。この癒しは、死の可能性に直面しながらも様々な方法で生活を変容させることで、全てを立て直していく過程です。患者さんががんの再発に適応できるまで希望を持ち続けることは非常に重要です。霊的または宗教的な信念を持つことで、希望を失わずにいられる患者さんもいます。(詳しい情報については、PDQがん医療における霊性に関する要約をご覧ください。)

がんの生存者になったとき

患者さんは、がん治療の終了と長期的ながん生存者としての人生に何年もかけて適応します。がんの治療法が進歩した結果、一部の患者さんにとってがんは慢性疾患になっています。以下の項目は、がん生存者がその後の人生で直面した問題として、よく報告されるものです:


  • がんの再発に対する不安

  • 制御できなくなる感覚。

  • 不安と吐き気を引き起こす化学療法の記憶(においや光景など)。

  • がんやがん治療についての考えが止まらなくなったり、他者から隔絶した感覚や孤独感が生じたりするなど、心的外傷後ストレス障害の症状。

  • ボディーイメージセクシャリティーについての懸念。

ほとんどの患者さんはうまく適応し、なかにはがんを生き延びたことで人生に対する認識が深まった、何が最も重要なのかがわかった、以前よりも強固な霊的信条や信仰心を得たなどと報告する患者さんもいます。

その一方で、医学的問題を抱えている、支援してくれる友人や家族が少ない、金銭面の問題がある、がんとは無関係なメンタルヘルスの問題があるなどの理由で、うまく適応できない患者さんもいます。

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心理的苦悩と社会的苦悩

感情的、社会的、霊的な苦悩を感じていると、がん治療への対処が困難になることがあります。

がんを抱えている患者さんの大半は、苦悩を感じています。苦悩の感覚は、悲しみや恐怖から、うつ病パニック霊的信念の揺らぎ、孤独感、友人や家族から隔絶している感覚などの重大な問題に至るまで、多岐にわたります。

がんの各段階で苦悩している患者さんには、その苦悩に対する治療と支援が必要です。以下の期間中は、患者さんの苦悩に対する確認と治療が特に重要です:


  • 診断を受けた直後。

  • 治療の開始時。

  • 治療の終了時。

  • 治療終了後と寛解期の随時。

  • がんが再発したとき。

  • 治療の目的が治癒やがんの制御から、症状を軽減し生活の質を向上させる緩和療法に変更されたとき。

がんにうまく対処できていない患者さんは、自分の懸念や心配について専門家と話し合うことが役立つ場合があります。次のような専門家に相談することができます:


苦悩している患者さんは、様々な感情面のサポートや社会的支援を利用できます。

複数の研究によると、がんへの適応に問題がある患者さんは、以下のような感情面のサポートや社会的支援を含む治療を受けることが有益です:


これらの治療では、様々な方法を組み合わせて1回または複数回のセッションを行う場合があります。複数の研究によると、こうした療法を受けたがん患者さんは、受けなかった患者さんにはみられない、いくつかの利点を得ていました。うつ病や不安の程度が低い、あるいは悲観的になるなどの疾患や治療に関連する症状が軽いなどの利点です。これらの療法による支援効果が最も大きいのは、最も強い苦悩を抱えている部類の患者さんであるようです。しかし、これらの療法を受けた患者さんの生存期間は、受けなかった患者さんより長くはありませんでした。

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適応障害

適応障害は日常生活に深刻な問題を引き起こすことがあります。

適応障害は、ストレスの大きい出来事に対する患者さんの反応が以下のような場合に起こります:


  • 想定より大きな苦悩が生じている。

  • 自宅や職場での人間関係に悪影響を及ぼしているか、それらの場所で問題を引き起こしている。

  • うつ病不安症状、または他の感情的、社会的、行動的な問題が生じている。

がん患者さんの適応障害の原因には、次のようなものがあります:


通常、適応障害はストレスの大きい出来事から3ヵ月以内に発症し、その出来事の終了後、長ければ6ヵ月間にわたって続きます。患者さんによっては、いくつもの苦悩の原因が次々に生じ、慢性の適応障害が起こる場合があります。

適応障害は、大うつ病などのさらに重い精神障害に進行する恐れがあります。このような事態は成人よりも小児や青年に多くみられます。(詳しい情報については、PDQ小児の支持療法に関する要約をご覧ください。)

カウンセリングは適応障害の患者さんに役立つ場合があります。

個人間(一対一)またはグループでのカウンセリングは、適応障害がみられるがんの患者さんに有用であることが示されています。カウンセリングでは、患者さんの思考や感情、行動に焦点を当てた治療などが行われます。以下の方法は、患者さんの対処に役立つ可能性があります:


カウンセリングは抗不安薬または抗うつ薬と併用される場合があります。

カウンセリングは薬剤投与の前に試されるべき方法です。患者さんのなかには、カウンセリングが有効でない人や、重度の不安あるいはうつ病など、より重篤なメンタルヘルスの問題が生じている人もいます。こうした患者さんには、抗不安薬や抗うつ薬とカウンセリングの併用が有効な場合があります。(詳しい情報については、PDQうつ病に関する要約をご覧ください。)

現在実施中の臨床試験

NCIのがん臨床試験リストから、現在患者さんを受け入れている米国内の適応障害についての支持療法と緩和ケアの試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。臨床試験のリストは、場所、薬物、介入、他の基準によりさらに絞り込むことができます。

臨床試験に関する一般情報は、NCIのウェブサイトからも入手することができます。

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不安障害

不安障害は身体的または心理的ストレスにより生じることがある非常に強い恐怖です。

複数の研究によると、がん患者さんの約半数が何らかの不安を感じると述べ、約4分の1が大きな不安を感じると述べています。がんの患者さんは、時期によって異なる強さの不安を経験しています。患者さんの不安は、がんが転移したときや治療の強さが増したときに強くなることがあります。

一部の患者さんでは、不安の感情があまりにも強く起こり、がん治療に支障を来します。これは特に、がんの診断以前に強い不安を経験した患者さんに当てはまります。がんの診断時までに不安状態に陥ったことのない患者さんには、たいていの場合、がんに関連する不安障害は発生しません。

以下のいずれかに該当する患者さんは、がん治療の間に不安障害になりやすい傾向があります:


  • 不安障害の病歴がある。

  • 身体的または精神的外傷を受けた経験がある。

  • 診断時点で不安がみられた。

  • 精神的に支援してくれる友人や家族がほとんどいない。

  • 痛みが十分に制御されていない。

  • がんが治療で改善しない。

  • 入浴や食事などの日常活動に問題がある。

不安障害の診断は困難な場合があります。

がんに関連する正常な恐れと、不安障害のような異常に強い恐怖とを区別することは、ときに困難です。不安障害の診断は、不安の症状が患者さんの生活の質に及ぼす影響、がんの診断や治療以降に生じた症状の種類、症状が起こる時期、症状が継続する期間に基づいて下されます。

適応障害は以下に示すような深刻な症状の原因になり、日常生活に影響を及ぼします:


  • 常に心配を感じる。

  • 集中力が低下する。

  • ほとんどの時間に「考えを遮断」できない。

  • ほぼ毎日、夜間に眠れない。

  • ひとしきり泣くことが頻繁にある。

  • ほとんどの時間に恐怖を感じる。

  • 速脈、ドライマウス、手の震え、不穏状態、いらだちなどの症状がみられる。

  • 忙しく何かに携わることによる気晴らしなど、通常の方法では不安が緩和されない。

がん患者さんに起こる不安障害の原因は様々です。

がんの診断以外にも、以下の原因によってがん患者さんに不安が生じる場合があります。


これらの原因による不安は通常、原因自体を治療することで管理します。

過去に不安障害を経験した患者さんは、がんの診断によって再びその障害を起こす場合があります。

過去に不安障害になったことがある患者さんは、がんの診断を受けることで再び不安障害を起こす場合があります。こうした患者さんは極度の恐怖を感じたり、介護者に聞いた情報を覚えられなくなったり、医学検査や手技を最後まで受けられなかったりすることがあります。次のような症状がみられます:


  • 息切れ。

  • 発汗。

  • 失神。

  • 速脈。

がん患者さんにみられる不安障害のタイプは次のとおりです:
恐怖症

恐怖症とは、一定時間にわたって持続する何らかの状況や対象を恐れることです。恐怖症の人は一般的に強い不安を感じ、自分が恐れている状況や対象を避けようとします。例えば、閉所恐怖症の患者さんは磁気共鳴画像(MRI)スキャンなどの狭い空間内で行われる検査を嫌がります。

恐怖症になると、患者さんは検査や手技、もしくは治療を最後までやり遂げることが困難になります。専門家が各種の療法により恐怖症を治療します。

パニック障害

パニック障害の患者さんは、突然、パニック発作と呼ばれる強い不安を感じます。パニック障害では次のような症状がみられます:


  • 息切れ。

  • めまい。

  • 速脈。

  • ふるえ。

  • 大量の発汗。

  • の不快感。

  • 皮膚のチクチクとした痛み。

  • 心臓発作を起こすことへの恐れ。

  • 「気が狂う」ことへの恐れ。

パニック発作は場合により、数分かそれ以上にわたって持続します。発作後に不快感が数時間続くこともあります。パニック発作は薬物やトークセラピーにより治療されます。

強迫性障害

がんの診断以前に強迫性障害になったことがないがん患者さんに、この障害が起こることはまれです。

強迫性障害と診断されるケースは、患者さんが持続性(強迫性)の想念や考え、イメージを持ち、強迫行為(反復的な行動)をとることで、苦悩の感情を制御している場合です。強迫観念と強迫行為は、患者さんが労働に従事したり、通学したり、社会的な諸状況に関与したりする能力に影響を及ぼします。強迫行為の例には、頻繁な手洗いやドアに鍵をかけたかどうかを絶えず確認するなどの行動が挙げられます。強迫性障害の患者さんは、そうした観念や行為のためにがんの治療を最後までやり遂げられない場合があります。強迫性障害は薬物や個人間(一対一)のカウンセリングにより治療されます。

心的外傷後ストレス障害

この障害の詳しい情報については、PDQがん関連心的外傷後ストレスに関する要約をご覧ください。

全般性不安障害

全般性不安障害の患者さんは極端な不安や心配を常に抱いています。例えば、支えてくれる家族や友人がいるのに、誰にも看病してもらえない事態を恐れる場合があります。十分な資産と保険があるにもかかわらず、治療費を支払うことができない恐怖を感じることもあります。

全般性不安障害の人には、いらだちやすくなる、落ち着きがなくなる、めまいが生じる、筋肉がこわばる、息切れ、速脈、発汗、疲れやすくなるなどの症状が現れます。全般性不安障害は、患者さんが強い抑うつ状態になった後に生じる場合があります。

不安障害には様々な治療法があります。

不安障害の患者さんに対する治療法は、ストレスを管理する方法をはじめ、様々なものがあります。次のようなストレス管理法があります:


  • 問題に直接対処する。

  • 置かれた状況を解決すべき問題または試練として捉える。

  • 問題解決に必要な全ての情報と支援を得る。

  • 大きな問題や出来事をより小さな問題や作業に分割する。

  • 柔軟に構える。状況をありのままに受け入れる。

不安障害の患者さんには、自身のがんと治療選択肢を理解するための情報と支援が必要です。不安に対する心理学的治療も有効です。具体的には以下のものがあります:


  • 個人間(一対一)でのカウンセリング。

  • カップルや家族でのカウンセリング。

  • 危機カウンセリング。

  • 集団療法。

  • 自助グループ。

不安の症状を緩和するために、次の治療法も用いられます:


患者さんによっては、別の療法が有用な場合もあります。(詳しい情報については、この要約の心理的苦悩と社会的苦悩心理的苦悩と社会的苦悩のセクションをご覧ください。)

薬剤は単独で使用されるか、他の不安障害の治療法と併用されます。

患者さんがカウンセリングを望まない場合やカウンセリングを実施できない場合は、抗不安薬が用いられることがあります。この種の薬剤は、恐怖や心配などの感情や筋緊張といった不安の症状を軽減します。これにより、日中の苦悩を緩和し、不眠症を軽くすることができます。この種の薬剤は単独で使用されるか、他の療法と併用されます。

抗不安薬に対する依存が生じることを心配する患者さんもおられますが、そうした問題はがん患者さんにはあまりみられません。症状を緩和させるために必要な量の薬剤を投与し、改善するにつれて徐々に用量を少なくしていきます。

複数の研究により、抗うつ薬は不安障害の治療に有用であることが示されています。抗うつ薬による治療を受けている小児と10代の若者では、自殺志向の思考や行動をとるリスクが高くなるため、密接な監視が必要になります。(詳しい情報については、PDQうつ病に関する要約の治療セクションをご覧ください。)

現在実施中の臨床試験

NCIのがん臨床試験リストから、現在患者さんを受け入れている米国内の不安障害についての支持療法と緩和ケアの試験を調べることができます(なお、このサイトは日本語検索に対応しておりません。日本語でのタイトル検索は、こちらから)。臨床試験のリストは、場所、薬物、介入、他の基準によりさらに絞り込むことができます。

臨床試験に関する一般情報は、NCIのウェブサイトからも入手することができます。

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本要約の変更点(01/07/2015)

PDQ がん情報要約は定期的に見直され、新しい情報が利用可能になり次第更新されます。本セクションでは、上記の日付における本要約の最新変更点を記述しています。

本要約には編集上の変更が行われました。

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本PDQ要約について

PDQについて

PDQ(Physician Data Query:医師データ照会)は、米国国立がん研究所が提供する総括的ながん情報データベースです。PDQデータベースには、がんの予防や発見、遺伝学的情報、治療、支持療法、補完代替医療に関する最新かつ公表済みの情報を要約して収載しています。ほとんどの要約について、2つのバージョンが利用可能です。専門家向けの要約には、詳細な情報が専門用語で記載されています。患者さん向けの要約は、理解しやすい平易な表現を用いて書かれています。いずれの場合も、がんに関する正確かつ最新の情報を提供しています。また、ほとんどの要約はスペイン語版も利用可能です。

PDQはNCIが提供する1つのサービスです。NCIは、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)の一部であり、NIHは連邦政府における生物医学研究の中心機関です。PDQ要約は独立した医学文献のレビューに基づいて作成されたものであり、NCIまたはNIHの方針声明ではありません。

本要約の目的

このPDQがん情報要約では、正常な適応の問題や、社会心理的な苦痛および適応障害の病態生理と治療法に関する最新の情報を記載しています。患者さんとそのご家族および介護者に情報を提供し、支援することを目的としています。医療に関する決定を行うための正式なガイドラインや推奨を示すものではありません。

査読者および更新情報

PDQがん情報要約は、編集委員会が作成し、最新の情報に基づいて更新しています。編集委員会はがんの治療やがんに関する他の専門知識を有する専門家によって構成されています。要約は定期的に見直され、新しい情報があれば更新されます。各要約の日付("最終更新日")は、直近の更新日を表しています。

患者さん向けの本要約に記載された情報は、専門家向けバージョンより抜粋したものです。専門家向けバージョンは、PDQ Supportive and Palliative Care Editorial Boardが定期的に見直しを行い、必要に応じて更新しています。

臨床試験に関する情報

臨床試験とは、例えば、ある治療法が他の治療法より優れているかどうかなど、科学的疑問への答えを得るために実施される研究のことです。臨床試験は、過去の研究結果やこれまでに実験室で得られた情報に基づき実施されます。各試験では、がんの患者さんを助けるための新しくかつより良い方法を見つけ出すために、具体的な科学的疑問に答えを出していきます。治療臨床試験では、新しい治療法の影響やその効き目に関する情報を収集します。新しい治療法がすでに使用されている治療法よりも優れていることが臨床試験で示された場合、その新しい治療法が「標準」となる可能性があります。患者さんは臨床試験への参加を検討してもよいでしょう。臨床試験の中にはまだ治療を始めていない患者さんのみを対象としているものもあります。

PDQには臨床試験のリストが掲載されており、NCIのウェブサイトから臨床試験を検索することができます。また、PDQには、臨床試験に参加している多数のがん専門医のリストも掲載されています。より詳細な情報については、Cancer Information Service(+1-800-4-CANCER [+1-800-422-6237])にお問い合わせください。

本要約の使用許可について

PDQは登録商標です。PDQ文書の内容は本文として自由に使用することができますが、要約全体を示し、かつ定期的に更新を行わなければ、NCIのPDQがん情報要約としては認められません。しかしながら、“NCI's PDQ cancer information summary about breast cancer prevention states the risks in the following way:【ここに本要約からの抜粋を記載する】.”のような一文を書くことは許可されます。

本PDQ要約を引用する最善の方法は以下の通りです:

National Cancer Institute: PDQ® Adjustment to Cancer. Bethesda, MD: National Cancer Institute. Date last modified <MM/DD/YYYY>. Available at: http://www.cancer.gov/about-cancer/coping/feelings/anxiety-distress-pdq. Accessed <MM/DD/YYYY>.

本要約内の画像は、著者やイラストレーター、出版社より、PDQ要約内での使用に限定して、使用許可を得ています。PDQ要約から、その要約全体を使用せず画像のみを使用したい場合には、画像の所有者から許可を得なければなりません。その許可はNCIより与えることはできません。本要約内の画像の使用に関する情報は、多くの他のがん関連画像とともに、Visuals Onlineで入手可能です。Visuals Onlineには、2,000以上の科学関連の画像が収載されています。

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The NCI has booklets and other materials for patients, health professionals, and the public. These publications discuss types of cancer, methods of cancer treatment, coping with cancer, and clinical trials. Some publications provide information on tests for cancer, cancer causes and prevention, cancer statistics, and NCI research activities. NCI materials on these and other topics may be ordered online or printed directly from the NCI Publications Locator. These materials can also be ordered by telephone from the Cancer Information Service toll-free at 1-800-4-CANCER (1-800-422-6237).

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